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尚六SS「永遠の行方」

96永遠の行方「呪(9)」:2008/09/20(土) 20:27:03
「単に可能性ということでしたら、いくらでも考えられます。そもそもあの謀
反のあと、さしたる事件は光州では起きていないのですから、真っ先に連想し
ても不思議はないかと。四百年以上前の元州の謀反となると、さすがに除外で
きましょうが、先ほど光候ご自身が雑談で拙におっしゃっていたように、寿命
のない神仙は十年も一年程度に感じてしまう嫌いがあります。したがってもし
首謀者が仙なら、二百年も数十年程度の感覚ということも考えられます。むろ
ん何十年も恨みをかかえたままという人間は少ないでしょうが、只人でもまれ
に昔の恨みをしつこく覚えていて事件を起こす輩はいますからね」
 朱衡の意見に、大司馬が「確かに考えられないことではないな」と腕組みを
して唸った。
「特に不遇をかこっているとか、不如意だとか、そういう輩はちょっとした恨
みでもあとを引きやすい。地位や生活に恵まれた者がそれに満足し、過去の遺
恨があったとしても水に流したり克服したりしやすいのとちょうど反対だ」
「光州の謀反の残党ですか」地官長大司徒が口を挟んだが、納得できないとい
う顔だった。「拙官は当時、官の末席を汚していたに過ぎなかったため、あの
乱には不案内ですが、それでもいまだに梁興に忠節を誓い、そのために危険を
犯してまで大がかりな呪を企む輩がいるというのは信じられません。王位の簒
奪に失敗した梁興は最後に籠城し、仙だった官吏はともかく、下仙にもならな
い、大勢の奄(げなん)奚(げじょ)がことごとく餓死したというではありま
せんか。ついに意を決した寵姫のひとりが閨で梁興を討って開城したときには、
州城中に遺体が散乱していたと聞きますが」
 すると、当時を思いだしたのだろう、六太が痛々しく顔をゆがめながら大司
徒に答えた。
「そうだ。あそこに充満していた死の匂いと深い怨嗟の痕跡に、俺は州城に近
づけなかった。何しろ籠城は半年にも渡ったからな。只人ならひとたまりもな
いし、たとえ仙でも食べものがなければ飢餓に苦しむ。奸計を用いて人質にし
た尚隆に脱出されたあとは、梁興には打つ手などなかった。なのに降伏を進言
した臣下をことごとく手打ちにし、現実から目を背けてひたすら城の奥にこも
っていた。確かに梁興に忠誠を誓う連中の仕業とは思えない。よしんば今回の
事件がかつての謀反の残党によるものだとしても、動機は別のところにあるは
ずだ」

- 続く -




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