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尚六SS「永遠の行方」

756永遠の行方「遠い記憶(39/57)」:2017/04/03(月) 19:19:14

 意外にも朱衡は白沢と話が合うようだった。あれ以来、朱衡は何度か白沢の
官邸に呼ばれて話をしたらしく、そればかりか帷湍のことも紹介したという。
ただし帷湍のほうは「表面上はにこやかなのに、太保はあれでかなり押しが強
いし図太い。裏で何を考えてるのかわからん。俺は苦手だな」と、当初の朱衡
と同じく、まだかなり警戒しているようだ。
 しばらくぶりに白沢と曠世が仁重殿を訪れたとき、朱衡も予定を合わせて訪
問してきた。極力笑顔を見せようと六太が心がけていると、朱衡は安堵したよ
うに「お元気になったようですね。何よりです」と挨拶してきた。
 白沢は太保として与えられた領地を視察してきたそうで、ついでに胥徒に管
理を任せていた領内の自邸の様子も見てきたという。もっとも太保として大半
は宮城内の官邸で過ごすのだろうから、滅多に自邸には行かないだろうが。
「ところでまだ補修されていない堤について、どのくらいあるのか帷湍に調べ
てもらいました」
 ひとしきり雑談を交わしたあと、朱衡が切りだした。帷湍は地を整える遂人
だ。国内の治水状況についても詳しいものの、他州の情報となると、実際に水
害が起きるか州侯が報告するかしないかぎりは中央に伝わりにくいものだ。だ
から朱衡が教えられたのも十数ヶ所に留まるが、現実に何らかの問題がある河
川はもっと多いだろう。
「それでもわかっているだけで十数ヶ所もあるのか」六太が憂いを込めて言っ
た。
「漉水の頑朴沿岸のように梟王に堤を切られた場所はもちろん、単に手入れが
行き届いていないだけだが危険な河川も挙げたそうです」
 もともと頑朴沿岸だけが氾濫の危機にあったわけではない。あの場所がこと
さら取り上げられていたのは、源泉が首都州にある大河ということと、何より
州侯気取りだった斡由が州都近くの堤ゆえに整備を強く求めたためだ。当然、
国府まで情報が届いていない、または高位の官の住まいから遠いとして放置さ
れている河川はさらにあるだろう。




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