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尚六SS「永遠の行方」

687永遠の行方「王と麒麟(268/280)」:2013/12/01(日) 10:23:13
「だがそなたは違ったわけだ。六太に明かされていたのか?」
 恂生は困ったように笑って、また首を振った。
「別にそういうんじゃないけど。まあ、十年以上も付き合ってれば何となく。
たぶん街にも、俺と同じように気づかないふりをしている民は何人もいるん
じゃないかな」
「ほう」
「だって本人は隠したがってたみたいだから、気づかないふりをしてやるのが
気遣いってものでしょう」
 どこかおどけた表情で言った恂生に、尚隆も「なるほど」と苦笑した。
「それにここに来ていろいろ遊ぶことが六太は本当に好きみたいだった。でも
麒麟だって皆に知れたら、たぶんもう来られなくなる。そんなのは俺たちも寂
しいから」
「そうだな……」
「何にしても守真や悠子は知らないし、むしろ知らせたくはないです。俺は
こっちで恋人ができて結婚したから、故郷に帰ることを諦められた面もあるん
です。でも守真たちは違う。特に悠子は蓬莱に帰りたくて、六太が麒麟だって
知ったら無理難題を言うに決まってるから」
「麒麟は慈悲の生き物だからむげには断れず、困らせるだろうということか」
 だが恂生は肩をすくめると、あっさりこう言ってのけた。
「確かに六太は優しいです。できないことを頼まれたら、きっぱり断るくらい
優しい。それで傷つくのは悠子のほうなんだから、あの子は知らないほうがい
い」
「ほう……?」
 意外に思った尚隆が眉を上げると、恂生は「優しいってことは、優柔不断と
は違うでしょう?」と笑った。
「本当の優しさは、時には残酷に見えることがあると思います。六太はそれを
わかっていた」
「それはまた意外なことだな」




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