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尚六SS「永遠の行方」

635永遠の行方「王と麒麟(230)」:2013/04/25(木) 19:15:23
景麒によると、麒麟は王といると嬉しく離れるとつらい気持ちになるそうです。
だったら毎日延王の近くに置けば、眠っているとはいえ延麒も嬉しく感じ、そ
れが良い作用を及ぼす可能性も――」
「確かに麒麟は王を慕う生きものと聞くが、果たしてどうかな。特に六太の場
合は、必要以上には俺に近づかなかったからな。つきあいの長さを思えば互い
に相手のことを知りつくしていてもいいはずだが、現状はほど遠い。というこ
とは実際のところ、あまり親しいとも近しいとも言えないのかもしれん」
 陽子の言葉を遮った尚隆はそう言い、同意を求めるかのように、同じ麒麟で
ある景麒を見た。
「慕う――というのとは違うと思いますが」ややあって、景麒は慎重な様子で
答えた。
「ふん?」
「王のそばにいると嬉しいという麒麟の感情は好悪とは無関係なのです。した
がって延台輔が延王を個人的にどのように思っておられようと、主上がおっ
しゃったように近くで生活なさるほうが望ましいのは確かです。王とともにあ
ることを切望するのは麒麟の本質ですから」
「好悪と無関係というのがぴんとこないな」陽子は首をかしげた。「だって王
の近くにいたいと思うわけだろう?」
「そうです」
 景麒はうなずいたものの、口下手な彼はそれ以上うまく説明できないよう
だった。だがさらに聞き出すうちに、ふと思いついたらしい尚隆が尋ねた、
「水のようなものか?」と。水は人が生きるのに不可欠だ。それがある場所に
住みたいと思うし、断たれれば苦しいが、自身の好悪の感情とは何の関係もな
い。せいぜいまずい水よりはうまい水を欲する程度だ。
 景麒は即座に「王と麒麟の関係に比するものなど存在しません」と否定した
ものの、最終的に部分的な比喩としては認めたのだった。
「なるほど、王は麒麟にとっての水か……」
「つまり生命の源にも等しいということですね」
 視線を床に落とした尚隆が低く笑うのへ、陽子は彼が皮肉な考えに囚われぬ
よう即座に言った。目を上げて彼女を見た尚隆に微笑して続ける。




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