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尚六SS「永遠の行方」

570永遠の行方「王と麒麟(178)」:2013/02/26(火) 19:07:56

「しばらく光州に連絡していませんでしたが、そろそろ現状の詳細を知らせる使者を立て
てはどうでしょう。目立った成果はありませんが、向こうは事件の発生地でもあります。
あまり連絡を疎にするのもどうかと」
 六官と次官とで打ち合わせをしていた際、朱衡はさりげなく提案した。内容の性質にも
よるが、余州とのやりとりも基本的に秋官の担当だから、提案すること自体は不自然では
ない。
 尚隆が朱衡と連れ立って仁重殿を訪れた先日、尚隆ははっきり「帷湍のせいではない」
と口にしていた。それを伝えるだけでも帷湍の気持ちは違うだろう。
 だが大司馬や太宰は顔を見合わせ、やれやれといった風情で頭を振った。
「何も今、光侯を慮る必要はなかろう。だいたい光州からの情報もとうに大した内容では
なくなっているのだ」
「そうだな。台輔をお救いする目処が立ったならまだしも、それどころではない状況だ」
「いえ、だからこそ、ある程度の配慮は必要ではないでしょうか。国難の折、諸侯諸官は
一丸となって事に当たらねばなりません」
 言葉を選んで答えた朱衡だが、ふたりは肩をすくめて見せた。それへ朱衡はあえて話を
続けることはせず、やわらかく微笑んだ。
「ではとりあえず現状のまま様子を見るということでよろしいでしょうか」
「いいのではないかな。まあ光侯と親交の深い大司寇にしてみれば、何かと便宜を図りた
いのだろうが」大司馬はそう言って鼻を鳴らした。「もし光州から有益な情報が上がって
くるようなことがあれば、そのときに考えれば良かろう。ところで大宗伯。先ほどの占人
の件だが――」
 議題が移る中、六官の様子を鑑みた朱衡は内心の失望を隠しつつ、何か目立った成果が
上がるまで、光州については話題にすることも控えたほうが良さそうだと判断した。向こ
うで手がかりが見つかる可能性は残されている。しかし六太が昏睡状態であることを知る
者は帷湍と令尹だけだし、今に至るまで有望な情報が出てきていない現実を考えると望み
薄だろう。成果がないのに帷湍と親しい自分が話題に出したり連絡を密にすると、主君が
襲われたときの衝撃による光州侯への反感を容易に思い出されるのみならず、内朝六官の
不和のもとになりかねない。




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