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尚六SS「永遠の行方」

294永遠の行方「呪(198)」★オリキャラ中心★:2010/03/11(木) 00:15:07
 思わせぶりな事件を起こして王をおびき出すという策は、今思いつくままに
口にしただけで裏付けも何もなかった。しかし口に出してみれば我ながら悪い
考えではないように思えたし、何よりも浣蓮の行動を制限するのに、これ以上
良い口実はなかった。
「ねえ、浣蓮。わたしもおまえも、梁興の操り人形で終わっていいわけがない
わ。だからあの呪はあくまでわたしたち自身のために使いましょう。光州が滅
びようと滅びまいと、今さらそんなことはどうでもいい。櫃の呪は王の興味を
引くような事件を起こすことに利用し、そうしてわたしたちをこんな境遇に追
いやった王が苦悩するさまをとっくり鑑賞するの。でもそのためには不用意に
術を試して人目を引くような危険は冒さず、まずはあの書類を隅から隅まで調
べて慎重に策を練らなければね」
 浣蓮はまじまじと暁紅を見つめていたが、ようやく分別は取り戻したらしく、
ここしばらく彼女の目に宿っていた狂おしくもぎらついた光はやわらいでいた。
「確かにそうです……」考えこみながら答える。「それに――そう、光州に戻
ってきたばかりのわたしたちですから、昔のように一時的な監視がついていな
いともかぎりませんね……。だとしたら少し不用心でした。これからはもっと
慎重に事を運ばなければ。ここまで待ったんですもの、もう何年か待つ程度の
ことは我慢できます」
「数年なんて、神仙にはあっという間よ。さほど待ったと思わないうちに、き
っと機会は訪れるわ」
「おっしゃるとおりです。疑いを抱かれないよう、数年はここで静かに暮らし
て――そうだわ、どうせなら靖州に、首都関弓に行きませんか?」
「関弓?」
「はい。王がひんぱんに街を歩いているというのが本当なら、この目で王を見
ることができるかも知れませんよ。通いつめている妓楼でもわかれば待ち伏せ
だってできます。よしんば見かけることができなくても、王に関する噂を集め
ることはできるんじゃないでしょうか。そうすればずっと罠を張りやすくなり
ます」
 暁紅は考えこんだ。すばらしい誘惑ではあったが、浣蓮が言い出しただけに、
どこかにまずい点がないかと警戒のままに頭の中でさらった。




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