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尚六SS「永遠の行方」

17幕間(3/E):2007/12/02(日) 00:19:39
「任せる」尚隆はそう言ってから、思いだしたように言葉をつなげた。「――
ああ、長楽殿と玉華殿の周囲の園林も整えさせろ。あの辺は仁重殿と違って大
きな花木が少ないから、今のままでは華やぎがなくて六太がつまらんだろう。
どの季節でもいろいろな花を見られたほうがいい。それも桃とか梅とか、あり
ふれたものがよかろうな。気取ったものはいらん」
「かしこまりまして」
「もっともさすがに冬に花は無理だろうが……。そうだな、長楽殿のそばに小
さな温室を作らせるか」
「温室……でございますか?」
「ああ、以前戴で見た。玻璃で作った建物の中で草木を育てるから、戴の厳し
い冬でも花が咲くのだ。慶の玻璃宮も似たようなものだが、あれほど豪勢なも
のになると逆に六太の好みではないだろう。それから後宮の梅林にあるような
小川と池も周囲に作ってくれ。そこに魚でも放して泳がせれば六太が喜ぶだろ
う。この季節は水遊びもできるしな」
「なかなか大がかりでございますな」
 さすがに呆れたのかと思って、ようやく尚隆が白沢の顔を見やると、白沢は
穏やかな微笑を浮かべていた。尚隆も笑って返す。
「なに、これまでほとんど手を入れてこなかったのだ、園丁たちも張り合いが
出よう」
「ではさっそく」
 白沢は丁寧に頭を下げると、こちらは状況がよくわからずに目を白黒させて
いた何人かの官を引き連れて、執務室を出ていった。そして一息いれるべく女
官に茶の用意をさせた尚隆は顎に手をやって、はてさて何か六太がほしがって
いる物があったかどうか、あれこれと記憶を探りはじめた。




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