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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

575赤い果実(尚六)2/3:2017/09/19(火) 12:46:31
「どうした、六太。こっちを見ろ」
尚隆は六太の頰に手を添えて、自分のほうを向かせる。六太は酔ったように少し上気した顔で、視線は逸らしたままだった。
「尚隆……。お前は、なんともないのか?」
喘ぐように、六太が言う。
「なんともないが……。お前はどうしたんだ。その果実のせいか?」
「……かもしんない」
六太の瞳が動いて、尚隆と目が合う。その途端、閨でしか見せないような艶めいた表情をした六太に、尚隆は驚いた。
「尚隆……おれ、なんか変だ……」
六太はそう囁くと、尚隆の瞳を見つめながら、緩慢な動作で榻に手をついて身を起こし、榻の上に膝立ちになる。そのまま躙り寄って尚隆の肩に手を掛け、膝の上に跨ってきた。
「六太……」
尚隆は吸い寄せられる様に六太の顔を凝視する。柄にもなく、鼓動が速くなっているのを自覚していた。

六太は両手をゆっくりと動かして、尚隆の頭の後ろに回す。
「尚隆……」
掠れた甘い声で名を囁きながら六太が顔を近づけてきて、唇が重なる。尚隆の唇を割って六太の舌が口腔内に侵入してきた。六太の舌は、先程食した果実のように柔らかく甘く、絡んだ舌先から、痺れるような感覚が尚隆の身体に広がっていく。尚隆は六太の腰に腕を回し口づけに応じながら、六太が初めて見せる情欲的な誘いに、驚くと同時にひどく興奮していた。

長い口づけの後、六太は陶酔したような表情で尚隆を見つめた。
「……六太」
囁くように名を呼ぶと、六太は紅潮した顔を綻ばせる。
「尚隆……牀榻、行こう……」
こんなふうに直截に誘い文句を言われたこともない。尚隆は煽られた劣情をなんとか抑えながら、平静を装って笑う。
「……もう眠いのか、六太」
小さくかぶりを振った六太は、尚隆の頭を抱き寄せて耳元に口を寄せる。
尚隆の耳に六太の熱い吐息がかかり、軽く耳朶を噛まれた。
「……いますぐ……欲しい」
耳元で囁く六太の声は、これ以上ないほど官能的に響いた。
尚隆の理性はあっけなく弾け飛んだ。

・・・

悲鳴のような絶頂の声を上げて、六太の身体から力が抜けた。自分の胸の上に倒れかかってきた華奢な身体を、尚隆は受け止める。
「六太」
抱き締めて金髪を撫でながら名を呼んだが、六太は脱力したまま反応がなかった。気を失ったらしい。
繋がっていた身体を離してから、褥の上に六太の身体を横たえる。尚隆も寄り添うようにして横たわり、掛布を被った。
六太の顔はまだ少し紅潮していたが、疲労の色も見える。幾度も達したのだから無理もない。さすがに尚隆も疲労を感じていたが、それを遥かに上回る満足感があり、疲れは全く気にならなかった。

少し冷静になった頭で、尚隆は考える。
あの果実を食べてから、六太は明らかに様子がおかしかった。
酒に酔った時に似ている、と六太は言ったが、酒に酔ってもあんなふうに積極的になることは、今までなかった。むしろ、媚薬のようなものではないだろうか。
尚隆が食べても特に変化はなかったし、もし本当にそんな効果があるなら、それを隠して献上されるようなこともないだろう。
麒麟だけに効果のある媚薬。
そんな考えが浮かんで、尚隆は思わずほくそ笑む。もしそうだとしたら、これまでで最高の献上品だ、と尚隆は思う。
南国でしか採れないのが惜しい。雁でも作れないものだろうか。
とりあえず路木に願ってみようか。雁の南部なら育つ可能性はないか。人にとっては普通の果実として食べられるのだから、民のためになる。
そう考えて、尚隆は口の端で笑った。
なんと言い訳しようと、自分の欲望のためだ。取り繕うこともない。
暖かい場所でしか育たないなら、玄英宮で栽培させれば良い。玻璃の温室でも作れば完璧だろう。

しかし、あれを六太が食べる時に隣にいたのが自分で良かった。もちろん誰彼かまわず欲情するわけではないと思っているが、六太のあんな様子を他の誰かに見られたくない。
六太の寝顔を見つめ、その滑らかな頰と美しい金髪を撫でながら、尚隆は満足げに微笑した。


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