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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

522尚六「夜這い」(1/2):2011/04/23(土) 10:16:49
「夜這いにきた」
 夜半、そんな莫迦なことを言いながら、尚隆が牀榻にもぐりこんできた。俺
はようやくうとうとしかけたところだったので、面倒臭そうに「あ、そう」と
答えて寝返りを打ち、彼に背を向けた。一ヶ月もどこをほっつき歩いていたの
やら。
「つれないな。せっかくみやげを持ってきたのに」
 そのまま無視していると、尚隆は続けた。
「そう冷たくするな。市井の女房連中は、亭主元気で留守がいいと平気でうそ
ぶくぞ」
「誰が亭主だ。阿呆」
「俺はこの国の主人だろうが」尚隆はおかしそうに答えた。
「で、俺が女房役ってか? ふざけんな」
 背を向けたままなじると、尚隆が衾の下の俺の太腿にそっと手をすべらせて
きたので、眠気の覚めた俺はあわてて腰を引いた。尚隆が含み笑いをする。
「そうすねるな。いつもいの一番におまえのところに帰ってくるだろうが。毎
度毎度ここに忍びこむのも大変なのだぞ」
 進入者が王とあっては、仁重殿の不寝番がことごとく見逃すに違いないこと
を知っていながら、いけしゃあしゃあとそんなことを言う。
「脂粉の匂いをぷんぷんさせながら、俺のそばに寄るなっての」
「ほう。やっぱりすねておるのか」
「何だよ?」
「今回は荒くれ男たちと漁に出ておってな。女には指一本触れておらん。脂粉
どころか潮と魚の臭いにまみれておるはずだが」
 黙りこんだ俺に尚隆はまた含み笑いをすると、後ろから俺の体に腕を回して
きた。
「おまえの肌に触れぬと、帰ってきた気がせん」
 そんなことをささやきながら首元に顔を埋めてきたので、俺は肩を揺らすよ
うにして尚隆の腕をふりほどこうとした。だが尚隆はしっかりと俺を捕らえて
離さない。俺は簡単に体の向きを変えさせられ、あおむけにされて彼に組み敷
かれていた。
「俺の帰る場所はここしかない」低い声で艶めいた睦言をささやきかけてくる。
「忘れたとは言わさぬぞ」
「忘れた」


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