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掌編小説スレ

55星屑の言葉:2006/07/28(金) 00:47:35

「ホラごっちん、ちゃんと・・・ちゃんと歩い、て・・・っ」
「よーしもーいっけんいこ〜」
「単に言いたいだけでしょそれ・・・ってか重いから!ホラってば!鍵は?鍵どこ?」
「どこだったかなー、さいふにつっこんだままかなー」
「ちょっと漁るよ?・・・カードキーってこういうとき不便だなぁもう・・・あ、あったあった。」



やっとの思いで宿泊しているフロアまで後藤を引きずり、後藤の部屋までたどりついた。
開けるよー、と前置きをして、石川はリーダーにカードキーを通す。



「着いたよごっつぁん。」
「んー?」
「お部屋だよ。」
「はーい。」
「・・・」



凄まじいほどの空返事ぶりに、一息つきつつ後藤を見やる。
頬の赤みが薄れている。
店内が暑かっただけなのだろうか。

そういえば、後藤と呑んだ数少ない体験を振り返ってみても、表情や態度にこれほど変化が出た記憶はない。

ホテルに宿泊だという安心感からか。
疲れていて酔いがまわるのが早かったのだろうか。
何にせよ、『酔い潰れる後藤』という珍しい現象を、石川はようやく少しだけ楽しんだ。

普段より、幼くなる。

カワイイなーなどと思いながら、それでもやはり身長は自分よりも幾分高い後藤を。
廊下を歩いてきた時と同様、引きずるようにベッドサイドまで運ぶ。



「ごっつぁん着替えは?」
「んー・・・ジャージ・・・」
「どこ?」
「かばんのなか・・・」



振り返れば、荷の解かれていないデイバッグ。



「・・・」



漁るのは面倒かもしれない。
と、いうよりもひっくり返した後の片付けが面倒だ。

石川は後藤の格好を足から順に眺める。

緩めのデニムにプリントのTシャツ。
このまま寝ても、それほど差し障りがないと、石川は勝手に判断し、勝手に納得した。



「よっし、ごっつぁん寝るぞー!」
「あーい。」



機嫌良く返事をして見せるが、石川に体重を預けたまま動こうという気配がない。
もはや石川も介抱することが当たり前のようにベッドの掛け布団を捲りあげ、後藤を座らせた。


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