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第三外典:無限聖杯戦争『冬木』

7名無しさん:2018/11/26(月) 22:41:46



 
教室に入れば、なんだか今日はいつもより教室が静かな気がした。
周りの学友に軽い挨拶をしながら自身の机に……いつもは女子達が囲んでいて騒がしい後ろの席が、どうにも今日は静かであった。
席の主はそこに不機嫌そうに頬杖をついて座っていた。間桐凱音。途方もない自信家で、少々難のある性格を覆す程度に顔が良い。
個人的にあまり好くタイプの人間ではないのだが、いつの間にやら腐れ縁を築いていた、一応……友人、と言える間柄だろうか。
……基本的に一方的に話しかけられるだけではあるが。

「なんだよ、服装検査ってさぁ! 髪を切れだのボタンを留めろだの、鬱陶しんだよ、なぁ赤霧!」

「ちゃんとしてないほうが悪いと思うけど……ふっ」

確かに彼の姿は、いつも着崩したそれとは違って、きっちりとボタンを留められていた。
捻くれた顔立ちにその姿は何ともアンバランス。無表情に対応しようかと思っていたが、思わず笑いが口の端から漏れ出てしまっていた。

「な、何だよお前まで!! ……ったく、ほんとガキばっかりで嫌になるよ、やっぱりさぁ、乳臭いガキどもじゃなくて如月先生みたいな……」

つらつらと語り出した間桐を尻目に、ぐるりと教室を見渡した。
今日、この教室だけだろうか。校門前はあんなに賑わっていたというのに、空席が目立つようだった。まだ教室にいない生徒もいるだろうが。
それにしたって、おかしい。隣の席には、いつも一緒にいたはずの……友達……ではなくて。

「……あれ、私の隣って、誰だっけ」

「はぁ? お前の隣はずっと空席だったろ」

思わず漏れ出た呟きに、バカを見る瞳で間桐がこちらを見据える。それはいつもことなので、やはりスルーしておくとして。
……そうだっただろうか。言われてみるとそんな気もしてきた。……だが、やはりそこにはどうしても忘れてはいけない何かがあった気がしてならない。
記憶を手繰ろうとするが、ホームルーム開始の時間を告げるチャイムが鳴り響いてそれを遮断した。結構長い間、自分はそうしていたらしい。

「……大丈夫か、お前?」

珍しく、間桐の心配する声が背中からかけられた。


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