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第三外典:無限聖杯戦争『冬木』

17名無しさん:2019/01/21(月) 22:12:51

夕焼け色に染まる街を、ルーク・カートライトは走り続ける。

違う。此処は知っている。だが知らない。この冬木という街を、確かに自分は知っている。当然だ。確かにボクはこの街の住民だ。そういう"役割"だ。
役割とはなんだ。分からない。何が疑問なんだ。分からない。だが、違う。何が違う。分からない。だが、確かにこの現状は違うのだと言い切れる。
叫びたいが、叫んだところでどうにもならないことは分かっている。ならば何故走り続けているのか。それも分からない。ただ、何かを探しているのは分かる。
何処に向かっているのか。分からないが、身体が勝手に動き出している。ただ間違いなく自分が確信しているのは、何かがおかしい、なんていう曖昧な不安と不満だけ。

『そうか、では、行くがいい。数多、夥しいまでの無名と、そしてそのマスター』

頭の中をズタズタに引き裂こうとするかのような、何者かも分からない声が響いている。それこそ内側から、張り裂けそうだった。
聞き覚えはある。だけれどどうしても思い出せない。これは、これは一体、何の声だった。

『俺の死体を踏み越えて、行軍を続ければいい。目の前にある、やるべき事を、無数にこなせ』

これはきっと、俺だけに向けたものじゃない。じゃあ、後は誰のために向けられたものだろう。
これは、これだけは忘れてはいけないことだと本能が叫んでいる。頭が張り裂けたって、指先から自分の体が解けたって、無数のデータに分解されたって。
忘れちゃいけない。いや、最初から忘れていない、のだろうか。

『怨讐に終わりは無い。燃え尽きるまで狂うがいい。何時か――――――"終わりが来るまで"』

それは呪いのように身体の内側に、内側に、浸透していく。一人で抱え切るには、余りにも重圧が過ぎる。
それは確かに自分の記憶の中から湧き出るものだというのに、それが自分を内側から潰そうとしているのがよく分かった、それを振り払う為に走り続けていた。
きっと正しいと、そう思っていた。


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