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【伝奇】東京ブリーチャーズ・壱【TRPG】

198尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/13(金) 13:34:46
そのまま絶え間なく暴力は続いていったが……やがて、土煙で尾弐の姿が見えなくなった頃。
コトリバコ達は唐突にその手を休めた。
疲労?慈悲?……否。
彼等は自身が振るった暴力の結果を確認する為に、コトリバコ達はその拳を止めたのである。
彼等が脳裏に浮かべる土煙の向こう光景は、まるで挽肉の様にグズグズになり、力なく絶命している尾弐の姿。
あれだけの呪詛の酸を、暴力を、蹂躙を受けたのだ。丈夫な玩具と言えども壊れない筈が無い。

釣りあがる口元を隠す事も無く揃って、三つ子の子供の様に楽しげに嗤うコトリバコ。

そうして、土煙は晴れる。
向けられる視線。そこには……瓦礫に上半身が半ば埋もれ、力なく首を垂れる尾弐の姿があった。
瓦礫からはみ出た左腕は切り刻まれたかの様に血まみれで、一部の傷は肉の先。白い骨を露見させている。
更にその上半身からは、溶解液の効果であろう。今尚煙が上がっている。

その様子を見た3匹のコトリバコは、思ったよりも損壊が少ない事に若干不満げな様子を見せたが、
それでも再起不能と思うに十分な傷を与えた事への喜びの方が大きかったのであろう。
動かない尾弐の元へ、最後の仕上げ……いざ止めを刺さんと近づいていく。
そうして。とうとう尾弐の前まで辿り着いた『シッポウ』のコトリバコが、
その頭を喰らわんと大きく口を開き――――その直後。


風船が割れる様な音が響き、『シッポウ』の巨大な頭が、消し飛んだ。


突然の事態に思考が付いていかず、動きを止めたのは『ニホウ』『サンポウ』のコトリバコ。
呆然としながらも、原因を探るべくその異形の目を動かし見て見れば、そこには

「……あー、悪ぃな。オジサン、力加減間違えちまったわ」

瓦礫に埋まっていた上体を易々と立ち上げ、数刻前に那須野にデコピンを見舞った時と同じ様に、右腕を前に突き出している尾弐の姿。
いや……同じというには語弊があろう。
何故ならば、尾弐の突き出した右腕。その拳は、鉛の様に黒く禍々しく変化しているのだから。

そう。
加減の無い数多の暴力に晒され、呪詛により生み出された酸を浴びせられて、それでも尚。
尾弐黒尾は、健在であったのだ。
健在であり、尚且つコトリバコを確実に屠る機会を窺がっていたのである。

……コトリバコ達は、気付くべきだった。
最も損壊している尾弐の左腕、その傷が全て、彼らが持っていない『刃物による切傷』である事に。
嬉々として暴力を叩きつけている最中、尾弐が一度も苦悶の声を洩らしていなかった事に。

「さて、いい感じに大将達から見えねぇ程遠くに運んでくれたみてぇだし
 お前らも俺相手に十分自分勝手を楽しんでくれたみてぇだからな……もう、いいだろ」

そうして、瓦礫の山を発泡スチロールか何かの様に易々とかき分け抜け出した尾弐は、そのまま立ち上がり一つ歩を進める。
すると……それに呼応するかの様に、何か得体の知れない感覚に押されたコトリバコ達は、一歩後退した。
更に尾弐がもう一歩進めば、今度は二歩分後退する。三歩、四歩と進める内に、コトリバコが退く歩数は増え。
やがて『ニホウ』と『サンポウ』は、彼らがかつて感じた事のない悍ましい感覚に従い、尾弐へ完全に背を向けると、
急き立てられるかのように逃走を開始した。
それは、奪われた物として発生し、奪うモノとして存在してきた彼らからは縁遠い『恐怖』という感情によって齎された行動であった。

一目散に逃走するコトリバコ……だが、その逃走は直ぐに終わりを向ける事となる。

『禹歩』

那須野が先頃展開したその破魔の結界が、壁となり彼らの前に立ちはだかったのだ。
周囲一帯を覆う破魔の結界であるが……コトリバコ達を含む尾弐の周囲十m程には、
まるで浄化しきれない穢れでもあるかの様に、展開出来ておらず、
それが故に、コトリバコ達は周囲を結界に囲まれると言う、ある種の牢獄に囚われたかの様な状態となったのである


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