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【伝奇】東京ブリーチャーズ・壱【TRPG】

1 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:30:44
201X年、人類は科学文明の爛熟期を迎えた。
宇宙開発を推進し、深海を調査し。
すべての妖怪やオカルトは科学で解き明かされたかのように見えた。

――だが、妖怪は死滅していなかった!



都内、歌舞伎町。
不夜城を彩る煌びやかなネオンの光さえ当たらない、雑居ビルの僅かな隙間で、一組の男女がもつれ合っている。
若い女が仰向けに横たわる男に馬乗りになり、激しく息を喘がせている。
……しかし、それは人目を憚って繰り広げられる逢瀬などではない。
『喰って』いる。
女は耳まで裂けた口を大きく開くと、ノコギリのようなギザギザの歯で男の腹に噛み付き、はらわたを抉り出す。
まだ体温の残る肉を引き裂き、両手で臓腑を掴んでは貪り喰らう。
すでに絶息している男の身体が、グチャグチャという女の咀嚼に反応するかのように時折ビクンと痙攣する。
この世のものならぬ、酸鼻を極める食事の光景。
女は、人間ではなかった。

柔らかな臓物を、滴る血を存分に味わい、喉元をどす黒く染めた女が大きく仰け反って恍惚に目を細める。
だが、まだ喰い足りない。女は男の頭を両手で掴むと、頭蓋に収納された脳髄を味わおうと更に口を開いた。

――しかし。

ジャリ……という靴裏のこすれる音に、女は咄嗟に振り返った。
雑居ビルの間の細い路地裏、その出口に、数人の人影が立っている。
性別も年代もバラバラに見える、正体不明の一団。

「いやァ――お食事中のところスミマセンね。ちょォーッといいですか?」

一団の中央に佇む、古風な学生服にマントを羽織った――大正時代の学徒か何かのような姿の人影が、口を開く。
が、顔は見えない。その面貌は白い狐面に覆われており、中世的な声も相俟って少年か少女なのかも判然としない。
女は低く身構えた。食事を目撃した者は、すべて消さねばならない。
唇の端から鋭い牙が覗き、両手の爪が音を立てて伸びてゆく。その姿は明らかに人外の化生である。
だというのに、一団は一向に怖じる様子がない。依然として、女の逃げ道を塞ぐように佇立するのみ。

「こんな東京のド真ん中で、そうやって好き勝手絶頂に食べ物を喰い散らかされちゃ困るんですよねえ。美観を損ねる」
「2020年の東京オリンピック。ご存知ですか?それまでに、ボクたちはこの東京をすっかり綺麗にしなくちゃいけないんです」
「インフラ整備に、施設の建設。世界中から人々を迎えるために、この東京はやらなくちゃいけないことがゴマンとある」
「まぁ……その辺は人間のお偉いさんにやって頂くとして。人間じゃできないことは、ボクらの出番ってワケです」
「アナタたちのような《妖壊》を残らず葬り去る――ま、いわゆる害虫駆除ってヤツですか」

女が聞くと聞かざるとに拘らず、ぺらぺらと饒舌に狐面が喋る。
その全身から、蒼白い妖気が立ち昇る。他の者たちの姿が歪み、人ならぬ何かへと変貌してゆく――。
甲高い咆哮をあげ、女が一気に跳躍し襲い掛かってくる。

「東京オリンピック開催までの間に《妖壊》を殲滅し、この帝都東京をすっかり『漂白』する……」

狐面の背後にいる者たちが、女を迎え撃つ。

「そう。ボクらは――」

炎が、雷撃がビルとビルの隙間の袋小路で迸り、女の姿をした化生を一瞬で葬り去る。
狐面は白手袋を嵌めた右手を伸ばすと、消し炭となって爆散した女の残骸をひとつ抓んだ。
残骸をぐっと握り潰し、そして言う。

「――東京ブリーチャーズ」

199尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/13(金) 13:35:03
「逃げてくれんなよ、怪物共。俺のこの姿は連中に……特に、那須野の奴には見せる訳にはいかねぇんだからな」

退く事の出来なくなったコトリバコは、迫る尾弐に対し暫くの間混乱した様子を見せ……結局、彼等は己の力に縋る事となった。
状況を打開する為に、他者を理不尽に蹂躙する事の出来ていた己の力を信じ、反撃を試みたのである。

先ず行われたのは、『ニホウ』による溶解液の噴射。それは、あらゆるモノを溶かす呪詛の毒である。

「毒で俺を殺りたきゃ――――神さんから貰った酒に盛って飲ませるなりしやがれ」

だが、それは今の尾弐に対しては僅かに皮膚を焼く程度の効果しか齎す事は出来ず……まるで用を成さなかった。
当然である。呪詛は上位の呪詛で塗りつぶせる。ならば、呪詛で出来た溶解性の毒液が、『今の』尾弐に通用する筈が無いのだ。
そのまま尾弐が右手で溶解液を噴き出し続けるニホウの頭を叩くと……まるで巨大な鉄槌でも振り下ろされたかの様に
ニホウの頭は潰れ、地面にめり込んでしまった。

続いて行われたのは、『サンポウ』による巨体を利用した押し潰し。
数百キロはあろうかというその重量は、並みの人間であれば床の染みに出来る程のものである。が

「じゃれ付くんじゃねぇ。いつまで赤ん坊のつもりでいやがんだ。怪物が」

尾弐の右腕一本により、その巨体は受け止められてしまった。
いや、それだけではない。尾弐が力を込めると、サンポウの巨体は中空に放り投げられ、
そのままその胴体を尾弐の拳により貫かれてしまったのである。

そして最後に、尾弐の背後から襲い掛かってきたのは頭部の再生をようやく果たした『シッポウ』のコトリバコ。
シッポウは、最初に奇襲を成功させたのと同じように尾弐の左側面へ向けてその巨大な拳を振るう。が

「不意打ちで首を落とせなかった時点で、お前さん達に勝ち目はねぇよ。諦めろ」

尾弐は、振るわれたその拳を右手で受け止めると、そのままシッポウの指を二本掴み――――骨ごと力任せに引き抜いてしまった。

・・・
かくして尾弐の眼前に広がるのは、阿鼻叫喚。粘液に塗れ、苦痛にのた打ち回る3匹のコトリバコ達の光景。
先程までの愉悦の色は遥か遠く、恐怖と苦痛から逃れようともがき暴れる異形の赤子の姿は、いっそ哀れですらある。
……だが、尾弐はそんなコトリバコ達を見ても眉ひとつ動かす事はなかった。
尾弐は、ただ淡々と。底の見えない闇の様な色の瞳で見据えながら口を開く。

「どんな理由があろうと、自分の意思で自分の望む通りに他人を殺した奴に救いなんてモンがあると思うな。
 人を呪わば穴二つ……人を殺す事を楽しんじまったテメェらは、もう哀れな犠牲者じゃねぇ。
 同情される事すら許されねぇ、立派な『コトリバコ』って名前の怪物なんだよ」

そうして尾弐は、必死に逃げようともがくコトリバコ……『シッポウ』のすぐ側まで近づくと、拳を振り上げ。

「だから――――テメェらみてぇな怪物の相手は、同じ怪物で十分だ」

その胴体へと右手を突き刺し……体内から小さな木箱を、無理矢理に取り出した。

200尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/13(金) 13:35:19
尾弐が取り出したその木箱は、他のコトリバコ達のものとは違い、核となる嬰児の魂と呪詛が融合してしまったかの様に変形してしまっている。
まるで心臓の様に脈打ち、色はどす黒く変色しているコトリバコ。
己の体から取り出された其れを、『シッポウ』のコトリバコは必死になって取り戻そうと腕を伸ばすが……その手が届く前に

尾弐の右手は、小箱を握りつぶした。

箱が潰れるのと同時に苦痛の叫び声を上げながらドロドロに溶解し消滅する、コトリバコの異形の赤子としての姿。
だが尾弐は、その悲鳴すらも気にする事は無く、『ニホウ』『サンポウ』と、順々に小箱を破砕していく。
コトリバコの体液に塗れながら、無表情に淡々とその作業をこなしていく尾弐の様子は、
ある意味ではコトリバコよりも余程怪物じみていた。




そうして、3つのコトリバコを破壊した尾弐は……そのまま、ドサリと瓦礫へと座り込んだ。

「あー、痛ぇ……年甲斐も無く気張り過ぎたかねぇ」

いかな頑強な尾弐とはいえ、あれだけの攻撃を受ければ流石に完全に無傷とはいかない。
最も大きな傷は破魔の刃を作る為に自分で切り刻んだ左腕だが、それ以外にも小さな傷が、尾弐の全身の皮膚に刻まれている。
着込んでいた喪服も一部を残してすっかり融解してしまった為、ブリーチャーズの面々と合流する前にそこらの店で現地調達する必要があるだろう。

「まあ、それでも……こんだけの『呪詛』の塊を喰らえば、ちったぁ目的に近づけた、かね」

そう呟いた尾弐は、自身の右手……先程まで黒く変色していたその拳に一度視線を落とし、黙りこんでいたが、
……暫くして、他のブリーチャーズの面々が戦闘を行っているであろう区域へと視線を向ける。

「ムジナの奴に任せた以上、万が一にも死人が出る様な事はねぇだろうが……一応、急いで戻るとするか」

そう言って、立ち上がる尾弐。
道中の無人と化した服飾店でレザージャケットを勝手に借り受けた彼は、大分距離が開いてしまった仲間たちの元へと向かう。

201品岡ムジナ ◇VO3bAk5naQ:2018/04/13(金) 13:35:43
ずだだだだ、と不格好なガニ股走りでロッポウから逃げる品岡。
無論敵から目を背けて無防備を晒しているわけではない。ちゃんと背中に目を生やしている。
追って飛んでくる粘液を目視し、ジグザグに動いて躱しながら疾走する。

「あかん息切れてきた……!煙草やめよっかなもう……!」

タールに塗れた肺が酸素を求めて律動し、水際の金魚のようにパクパクと喘ぐ。
肉体疲労とは無縁の妖怪と言えど、今日は朝から色々妖術を使いすぎた。
元々そこまで妖力の残高に自信のあるほうでない品岡は露骨に足運びの精彩を欠く。
ロッポウの足音がすぐ背後まで迫ってくる……!

>「――スリップ」

横合いから鈴の鳴るような声がしたが早いか路面が突如凍りつき、疾走していたロッポウが足を取られた。
重量感のある転倒の音が響き、走りながら吐いていたゲロが明後日の方向に飛んで街灯を溶かす。

「でかした優男!」

出現したアイスバーンの主は、何故か精肉屋の庇の上でチューブ容器を名残惜しそうにちゅうちゅう吸っているノエル。
涙の出るような好アシストだった。
思わぬ加勢に調子を取り戻した品岡は振り向きざまに、抜け目なく再装填を終わらせていたトカレフを撃つ。
二発、三発。相変わらずの糞エイムで無駄玉が遠くを穿つが、一発がロッポウの右半身に命中した。

「よっしゃ、弾ぜろやクソガキ!」

間断なく妖力を遮断し弾頭の形状変化を解除、廃車のフレームに復元する。
体内で異物を膨張させられたロッポウはイッポウと同じ末路を――辿らなかった。
廃車はロッポウのすぐ後方に現れた。

「なんやと……!」

着弾観測から弾頭の復元、その一瞬の間隙を縫って、ロッポウは被弾箇所を自らえぐり取ったのだ。
虚空に放られたロッポウの肉片が、出現した廃車によって押し潰される。
深く抉られた傷口からは緑の体液が溢れ、それが地面を焦がす頃には傷が塞がってしまった。
ケ枯れには、至らない。

「そら学べ言うたのはワシやけど……適応早すぎるんとちゃうか」

イッポウがケ枯れさせられた原因を即座に理解し、その対策まで完璧にやってのける。
最悪の霊災、最凶呪具の付喪神。わかりきっていたことではあるが、やはり怪異としての格が違う。
ヒトを殺す為の呪いは、より効率よく殺す為に――殺し続ける為に、進化を続けている。

――!…………――!!!

ロッポウは吠える。
その轟きにイッポウのような品岡を揶揄する響きはなく、純粋な己を鼓舞する叫び。
味方を破壊され、孤立し、自分を滅ぼせる相手とおそらく初めて対峙したコトリバコに、最早愉悦の色はない。
ただ人間を嬲り殺すだけだった呪詛の化身が、己が敵を滅する戦士と化し始めていた。

「しんどいなぁ、付き合いきれんわ。ちゅうても見逃してくれるわけやないよな。
 ええで、とことん付き合うたるわ。……大人やからな」

ボコ、ボコ、ボコ……と地面に穿たれた複数の穴から廃車のフレームが生える。
それらの圧縮に使っていた妖力を止め、わずかではあるが回復はできた。
氷の棘付きスレッジハンマーを片手で構え、重心を落とす。

「……行くでコトリバコ、ジブンの好きなじゃれ合いや」

202品岡ムジナ ◇VO3bAk5naQ:2018/04/13(金) 13:36:19
刹那、品岡の姿がロッポウの視界から消えた。
十歩ほど離れたアスファルトが擦れる音、一瞬だけ現れた品岡が更にブレて消える。
品岡の姿を捉えたロッポウが粘液を吐く頃には最早的はそこにない。
形状変化で足の骨を強力なバネに変え、鞠のように跳ね回っているのだ。

「っつおらぁ!」

バネの加速そのままに、横合いからハンマーがロッポウの顔面を捉えた。
氷の棘が赤子の表皮を一瞬で凍結させ、次いで打撃がそれを砕く。
そうして二度、三度と少しづつではあるが、確実にコトリバコの体積を削いでいく。

「修復する隙なんぞやるかいな」

祈ほどの強烈な速力はないが、ロッポウの反応速度を超えられればそれで十分。
復元弾頭のように一撃では仕留められなくとも、このまま一方的な攻勢に持ち込み続ければ、いずれはケ枯れさせられる!

ロッポウが息を吸い込んだ。粘液を吐く予備動作だ。
しかしその射出口たる巨大なあぎとは明後日の方を向いている。
コトリバコの恐るべき学習能力が、品岡の機動力をバネによる直線的なものと見抜いた。
彼の一瞬後の位置を予測してそこ目掛けて粘液を吐きかける。
果たして、放物線を描く粘液の先に品岡が現れた。

「浅いわ」

地面のアスファルトがめくれあがり、粘液に対する壁となった。
溶けゆく壁の向こうからハンマーが飛び、コトリバコの下顎を砕いた。
痛みに悲鳴じみた叫びを上げながらもロッポウの両眼は品岡を睨めつける。
ボコンボコンと身体を蠕動させながら赤子の唇が蕾のようにすぼまった。

(何するつもりや……距離開けたほうがええな)

ただならぬ動きに警戒する品岡は二歩、三歩とバネ足でバックステップ。
踏んだ地面が隆起し、都合三枚の壁が品岡とロッポウの間に形成された。
ロッポウの身体がかつてないほどに、体積にして倍ほども膨れ上がる。
キィ……と甲高い音で鳴いて唇から粘液が噴き出した。

「それしかできんのかい、芸が無いのぉ――」

鼻で笑った品岡の右腕に激痛が奔った。
さながら水鉄砲の要領で射出口を狭め速度と圧力を増した粘液が三枚の壁を一瞬で貫通し、その先の品岡を撃ち抜いていた。

「あ……?ああああああああっ!?」

圧縮粘液に穿たれた右腕が毒々しく変色し、煙を立てながら腐食の範囲を広げていく。
品岡はたまらず情けない悲鳴を上げながら左手で右の腕を掴み、形状変化で引き千切って捨てた。
握ったスレッジハンマーごと地面に放られた右腕が、溶解してアスファルトの染みと化した。

「前言撤回や。頭使っとるやないか……」

自切した右腕が戻らない。コトリバコの呪いの一部が残っているのだ。
形状変化で強引に腕を作ることも考えたが、残り少ない妖力を無駄には出来なかった。
品岡は潔く腕を諦めて再び走る。彼のいた場所にロッポウが轟音を立てて着地した。

「おのれが……!」

残った左腕で拳銃を撃つ。利き腕を失い回避しながらの射撃では当然当たらない。
ロッポウが距離を詰める。牽制に鉛玉をばら撒きながら少しでも距離を取る。
趨勢は完全に逆転し、品岡は防戦一方だった。
片腕でできる攻撃などたかが知れているし、何よりノエルの妖術のかかったハンマーを落としたのが痛い。
現状コトリバコに対して有効な打撃の放てる唯一の武器だった。


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