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【伝奇】東京ブリーチャーズ・肆【TRPG】

79 多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2017/10/21(土) 09:24:09
そうして続いたブリーチャーズの旅行の後半戦だったが、ついに東京へと帰る日が訪れた。
 それを迷い家の玄関で見送るのは、シロとぬらりひょん富嶽、女将の笑と従業員の一本ダタラであった。
>「シロのことは、儂らに任せておけ。ここなら人間の目は届かん、徐々に新しい環境に慣れることもできるぢゃろう」
 富嶽は見送りに立ち、そう請け負って、
>「……その言葉、信じるからね、お爺ちゃん」
 ポチがそれに応じた。
 シロはそこでようやく、シロという名が己の物であることに気付いたようで。
>「シロ……。皓。それが、わたしの名前ですか」
>「……わたしには、その名がいい名なのか。悪い名なのか。それはわかりませんが――」
>「誰かに名を呼ばれる。というのは、よいものですね」
 そんな風に呟く。その呟きに何か言いたいことがあるようにそわそわしているポチだったが、
結局口を開くことはできず、
>「皓はね、雪のように穢れなく輝く白って意味なんだ。とってもいい名前だよ!」
 と、ポチより先にノエルから、その名前についての説明が入ってしまった。
 へぇ、そういう意味なんだと祈は勉強した気になる。
博識なのは何百年と雪の女王の元でその資質を磨いた乃恵瑠の人格が統合されてる故だろうか。
咄嗟にこのような説明ができるのは流石である。。
>「……そうだな。キレェな名前が有って、それを呼んでくれる相手が居るってのは幸せだ。
>自分が今そこに居る事を認めて貰えるって事だからな」
 尾弐もシロに同意し、今シロが感じている幸せを改めて言葉にして伝えてやるのだった。
>「また、いつでも遊びにいらしてくださいね。従業員一同、心よりお待ち致しております」
 穏やかな笑みを浮かべ、心地良く送り出してくれる女将の笑。
笑はいつもにこやかで綺麗で、優しい人だった。
>「ああ、次は金払って普通に来るぜ。宿代代わりの労働は真っ平ごめんだからな」
「元気でね、笑さん。……あたしびんぼーだから多分もう来れないと思うけど。
ぬらりひょんのじっちゃんも、一本ダタラさんも元気でね」
 尾弐に続き、祈も別れの挨拶を交わす。
>「こちらの依頼をこなしたのをいいことに、思う存分飲み食いしおって。ほれ、さっさと東京へ帰れ。もうお主らに用はないわい」
 笑とは反対に苦い顔で、嫌味めいた言葉で送り出す富嶽。
祈の様々な質問にも答えることなく、のらりくらりと躱しきったぬらりひょん富嶽。
まったくもって食えない妖怪であったが、どこか憎めないお爺さんだったと祈は思う。
 無口で働き者な一本ダタラや、従業員の妖怪達。
趣のある旅館、木陰の涼しさ、温泉の熱。おいしいコーヒー牛乳。たまらないご馳走の数々。
その全てと……そして仲間になったばかりのシロとまでも今日でさよならだなんて。
そんな風に祈が少ししんみりした気持ちになっていると、シロが耳をぴくっと耳を振るわせて、口を開く。


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