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【伝奇】東京ブリーチャーズ・肆【TRPG】

184那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2017/12/02(土) 21:15:09
チカチカと、女子トイレ天井の蛍光管が頼りなげに明滅している。
それはあたかも、絶望の中に何とか希望を見出そうとする――儚い可能性に縋ろうとする今の祈の心にも似て、甚だ不安定な明かりだ。
きっと、長くはもたない。早晩蛍光管は切れて、二度と光らなくなってしまうことだろう。
そして――すべて暗黒に包まれてしまう。一条の光さえ差さない、真闇に変わる。

赤マントの言葉を否定しろ、という祈の言葉に、尾弐は従わなかった。
それは、赤マントの言葉が虚言でないということの確かな証拠。真実の証明。
祈の両親の死に、尾弐と橘音のふたりが深く関与していることは間違いない。
そして、それがふたりにとって『祈に言えないこと』であるということも。

一度疑い始めるときりがない。今まで告げられた優しい言葉が、温かな振る舞いが。
すべて嘘と偽りに満ち満ちた行いであったかのようにさえ思えてしまう。
とはいえ、いつまでもそうしてはいられない。
この『きさらぎ駅』には祈とノエル、ポチ、そして尾弐の四人しかいないのだ。ここから出るには、否応なしに仲間と話すしかない。
……はずだった。

「……そこに誰かいるのか?」

トイレの入口の方で声がする。それはノエルともポチとも、まして尾弐とも違う声。

「もう終電は出たし、トイレの中にいても誰も来ないよ。そんなところにいないで、出てきなさい」
「参ったな……。家出少女か?多いんだよなあ。駅の施錠ができないじゃないか」

祈が何らかの返事をすると、声の主はぶつくさと独り言をぼやいた。二十代後半くらいの、男の声だ。
どうやら、この『きさらぎ駅』の駅員のようである。こんな人界の外にある秘境駅に駅員がいるとは驚く他ない。

「ここは君がいるべき場所じゃない。家に帰りなさい、きっと君のご両親も心配しているはずだよ」

駅員らしき男は女子トイレの入口に佇み、個室に籠ったままの祈を諭す。


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