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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

373名無しさん:2018/02/24(土) 22:10:47
「見ていれば分かるんだよ。
 歩法や人との距離の取り方、視線や筋肉の付き方、その他諸々の事を総合すると、扱う武器の種類や射程範囲が推測出来るようになるんだ。
 例えば、フェイトちゃんは両手持ちの槍か斧に近い武器じゃないかな?」
「あ、はい。
 斧、と言えると思います」
「すごーい」
「ホンマにわかるんやねぇ」

 素直な賞賛に恭也が苦笑を漏らす。
 不要に恥をかきたくはないのでそれなりに確信を持って口にしたのだが、実は、フェイトの所作から読み取れる情報は酷く曖昧だったため、少々不安に思っていたのだ。
 フェイトは武術単体についての練度がそれほど高くない(無論、基準は御神流である)上に、飛翔魔法を駆使した空戦を前提としているためか、歩法もそれほど熟練していない。
 更に言うなら、魔法を攻撃手段として持っている事から武器の間合いとイコールとなるはずの射程範囲が不鮮明だったのだ。
 勿論、これらは魔法が存在しない(正確には存在が認められていない)地球で発達した武術の視点での話だが。
 そんな訳でこっそりと安堵していた恭也に、対面に座る少年の視線が届く。特に感情を表していない表情であったが恭也には分かった。この視線には多分にからかいが含まれていると。
 彼の実力からすればフェイトの技能が読み取り難い事も分かっているだろうから、武器の推測が何割かの偶然を含んでいた事も見抜かれているだろう。
 バツが悪そうに僅かに視線を逸らしつつ、彼は初対面で見抜いたのだろうか?と考えている恭也は知らなかった。不破恭也が下着の柄を暴露してまで、フェイトに戦闘態勢を取らせて情報収集に勤しんだ事を。

「話を戻そう。
 容姿は兎も角、小太刀の二刀流と不破という姓。
 それらは俺達にとって無視する事が出来ないものだ。
 そして、俺には過去に、未来の自分と出会うという経験は無い。つまり、君は俺ではない。
 君は一体何者だ?」

 一般的には考慮の必要が無いはずのタイムワープを真面目に検討している辺り、高町兄も決して非常識な経験に事欠いていなかった事がよく分かる。
 そして、その非常識に対処出来る自分自身の存在が、負けず劣らず非常識なのだとは思っていない辺りが彼らの共通した非常識さなのだった。
 それは兎も角、視線を強めて恭也を見据える兄になのはは口を挟む事が出来なかった。
 兄の視線には敵意こそ含まれていなかったが虚偽を許さない鋭さがあったからだ。
 『別の世界からの漂流者』という説明だけで、果たして兄や姉、ひいては父の不信感を拭い去る事が出来るだろうか?
 更に、全てを突き放すような恭也の考えを変えられないかと悩んでいたなのはは、夕食後まであった筈の猶予が突然無くなった事に焦燥感を募らせた。
 そんななのはの心情を知ってか知らずか、高町兄は前言を翻す様に視線を緩めた。

「と、まあ、その辺りの事を説明しに来てくれたと思って良いのかな?」
「ええ」
「それなら予定通り父さん達が揃う夕食後にしようか」
「あ、そっか。だから、さっき私の事止めたんだね?」
「そう言う事だ」

 その兄妹の会話に少女達も安堵する。
 勿論、言葉の内容そのものにではなく、理性的な判断を下せる冷静さを失っていない事に、だ。たとえ不信感を煽るような事柄が並んでいようと、それだけで恭也を危険視したりはしないでくれているのだから。
 尤も、その何割かが、自分達の全幅の信頼を寄せる態度に因るものだとまでは3人共気付いていなかったが。
 だが、その結論で話を纏めるのであれば、彼もここまで回りくどい言い方をしなかっただろう。
 だから、この話題が終了したと思って気を緩めた美由希を含めた少女達とは対照的に、続く言葉を予想して僅かに眉間に皺を寄せる不破恭也と、予想されている事を承知して微かな笑みを浮かべる高町恭也が視線をぶつけ合っていた。
 2人の様子に気付いた妹達が口を開く前に、恭也が続く言葉を口にした。


「それじゃあ言葉の説明では分からない部分を見せて貰えるかな?」





続く


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