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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

372名無しさん:2018/02/24(土) 22:08:51
 我が事の様に嬉しそうにシグナムの自慢をするはやての様子に、微かに目尻を下げながら恭也が続けて述べた。

「なるほどね。
 日常の、特に図書館に居る時の美由希は、本に囲まれてる嬉しさに惚けてて表情や雰囲気では『闘う者』には見えないから、それが見抜けるのはかなりの力量だろうね。
 出来るなら一度魔法抜きで手合わせ願いたいな」
「伝えときます。シグナムも喜ぶ思います。
 でも、本人は、魔法抜きだと恭也さんに10本中5本は取れへんだろうって悔しがっとりましたよ」
「え?俺に?」
「あ、スイマセン。
 高町さんやのうて、こっちの恭也さんです」
「ああ、そうか、済まん」

 流石に同じ場所に同じ名前が2人いるとややこしい。
 この子達が『恭也』と言ったら彼の事だと思った方が良さそうだが、反射的に反応するのを抑えるのは難しいだろう。
 そんな事を考えていた恭也は、先ほどから彼が会話に参加していない事に思い至り、何の気無しに話を振ってみた。

「そういえば、八神君の腕前もまだ見た事がなかったね。
 相当な剣腕なのは見て取れるけど、機会があれば一度手合わせして貰えないかな?」

 その言葉に反応を示したのは、彼ではなく少女達だった。
 怯えているのだろうか?
 表情を強ばらせ、それでも口を挟まない少女達を不思議に思い、向けようとした意識を引き留めようとするように彼が口を開いた。

「不破です」
「…え?」
「『八神』の姓は事情があってはやてに借りていたんです。
 本名は不破。
 不破恭也です」
「ええ!?
 不破って、え!?どう言う事!?だって、それじゃあ、」
「美由希、落ち着け」
「だ、だって恭ちゃん!」
「いいから落ち着け」

 完全に取り乱した美由希に対して、恭也は僅かに目を見張るだけで直後には平静を取り戻していた。
 そんな恭也に通じる高町兄の自制心の強さを見ても尚、少女達は思う。
 やはり、不破恭也と高町恭也は違うのだ、と。

 恭也なら、あの状況、あのタイミングで伝家の宝刀を振るわないなんて有り得ない!

 そんな馬鹿げた事を可愛い妹達が考えているとは露ほども知らず、高町兄妹は恭也を真剣に見据えていた。

「『この世に偶然なんて無い。全ては必然だ』」

 唐突に切り出された高町兄の台詞に困惑する女性4人に対して、男2人は感情を読ませないよく似た仏頂面をつき合わせたまま話を進めた。

「そういう考え方があるのは知っているし、きっとそれは本当のことなんだろう。
 だが、『因果の繋がりを知る術』を持たない俺には、例え『それ』が必然であっても何を意味するのか理解出来ない。
 そして、無闇に恐れたり過剰に警戒する事は、思考から柔軟性を奪い、本当に必要な時にとっさの対応が出来なくなる。
 だから、不要な警戒を解くために、俺は『偶然は存在する』と考える事にしている」

 話の内容が理解出来ているか確認するために言葉を切ると、彼が微かに苦笑している事に気付いた。既に恭也が言いたい事は察しているのだろう。
 それでも妹達に説明するために話を再開した。

「勿論、全てを偶然として捨ててしまう訳にはいかない。
 だから、直接的な危険性のない事象だったとしても、3つ重なれば警戒する事にしてる。
 そして、君の存在の不自然さについては、不破の姓で偶然が3つ揃った事になる」
「2つじゃないの?
 お兄ちゃんとよく似てる事と苗字の事でしょ?」
「3つ目は彼の剣術が小太刀の二刀流であることだ」

 恭也への警戒を解きたいなのはが兄の考えを否定しようとするが、即座に答えが返された。
 高町家ではなのは以外知らないはずのその回答にフェイトとはやてが反射的になのはを見やる。
 恭也の事を話したのかと問いかける視線に、なのはは慌てて勢いよく首を左右に振る。
 そんなやり取りに僅かに苦笑を漏らした兄が妹をフォローするように言葉を足した。


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