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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

272小閑者:2017/11/19(日) 10:59:29
「遠隔操作でそんなことまで出来るのか?」
「自分自身の様なものだからな。どの程度の距離までかは知らないが、艦内程度なら大した距離ではないんだろう。
 話を戻すぞ?
 解析出来なかった理由のもう1つの可能性はプログラムデータの暗号化だ」
「…機密か。そう言えば魔導技術の蒐集が本分だったな」
「ああ。
 他者から情報を隠蔽したとしても不思議じゃない。
 暗号だったとすればそれを解読するには10年単位の期間が必要になるそうだ」

 言葉が途切れる。
 防衛プログラムの再起動が何時になるか分かっている訳ではないが、仮にも「無限再生」などと呼ばれる程の機能を持っているのだから月単位と考えることすら楽観的だろう。
 だが、恭也は勿論、クロノとてデバイスの機構について専門的な知識は持ち合わせていない。専門家が解析不可能と判断したならそれを覆す手段など持ち合わせている筈がなかった。

「…リインフォースが言語の翻訳方法や暗号の解読方法を知っている、と言うことは無いか?」
「彼女なら僕達がプログラム解析で躓くことを予想出来ただろうからな。
 解読方法を教えてこないと言うことは、知らないのだろうとは思っていたんだが、先ほど確認したら謝罪の言葉が返ってきた」
「…クソッ」

 力無く悪態を吐いた恭也が、不意に顔を上げて入り口を見やる。
 それに倣ってクロノもドアの方へ顔を向けるが一向にドアが開く様子はなかった。
 気配とやらで人が居ることを察知できる恭也が視線を向けたので、てっきり誰かが入室してくるのかと思ったのだ。
 怪訝に思ったクロノが問いかける前に恭也の零した言葉が耳に届いた。

「どうして、誰も来ない…?」
「…恭也?誰か来る予定なのか?」
「違う。状況は分かっている筈なのにヴォルケンリッター達が何故1人も来ていない?」
「…あの子が目を覚ました時に不安がらせないように傍にいるんじゃないのか?」
「子供じゃないんだ、全員が揃ってる必要はないだろう」
「いや、9歳は十分子供だろう」
「ヴォルケンリッターの事だ!
 こちらにいても出来る事が無いのは変わらないかも知れないが、何かしらの情報が得られる可能性だってあるんだぞ!?」
「…管理局に期待してなかったんじゃないのか?
 端から解析出来ないと」
「藁にも縋りたい現状でそんな贅沢を言うほどの馬鹿じゃない…
 医務局の状況は!?」
「落ち着いてくれ。
 あの子の症状に変化があれば連絡が来ることになってる。大丈夫だ」
「そんな事を言ってるんじゃッ…
 お前、何か知っているな?」

 それほどおかしな反応は返していない積もりだったが、やはり不自然だっただろうか?
 騙し通せると思っていた訳ではないが、思いの外あっさりとばれたな。いや、予想通り、と言うべきか。

 諦観したクロノは、威圧感を増していく恭也を刺激しないように意識してゆっくしりた口調で語りだした。

「僕達はリインフォースからの提案を受け入れたんだ。
 魔導書の解析に成功し、防御プログラムの修正か削除が出来ればそれで良し。
 出来なかった場合には、魔導書からヴォルケンリッターの存在を切り離し、魔導書を破壊する、と」
「っ!
 …切り離す、とは?」

 「魔導書の破壊」と聞いても辛うじて理性をつなぎ止めている恭也に痛々しさすら感じながら、変わらぬ口調でクロノが答える。

「守護騎士プログラムはリンカーコアを形成し、それを核として実体を生み出すものだそうだ。
 そして、一度顕現すれば基本的に魔導書との交信を行う必要がない。
 だから、リインフォースの裁量と外部からの補助を受ければ、マスターであるはやての承認が無くとも独立させる事が出来るそうだ。
 独立、つまり魔導書から切り離してしまうと、以降は消滅しても二度と再起動は出来なくなる。つまり、人間の死と同等になる。
 代わりに、魔導書が破壊されても影響を受けなくなる」
「…問題が無い様に聞こえるが、それなら隠しておく理由がないな。
 リインフォースはどうなる?」
「…彼女の役割は魔導書の管制だ。
 当然、魔導書とも密接に関わっているし、顕現していても彼女自身はリンカーコアを形成している訳じゃない。言ってしまえば、彼女の核は魔導書そのものだ。
 リインフォースは、魔導書を破壊すれば存在する術を失うことになる」

 クロノはそれだけ告げると、黙って恭也の反応を伺った。


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