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仮投下スレ

1管理人◆777Wt6LHaA★:2015/04/08(水) 14:21:51 ID:???
作品の仮投下はこちらのスレで。

77名無しさん:2015/04/17(金) 02:02:40 ID:IptqtqDI
MAP案を投下します
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org268691.png

78 ◆a1H5ynvB6A:2015/04/17(金) 18:55:42 ID:fRipwHbk
OP案投下します

79 ◆a1H5ynvB6A:2015/04/17(金) 18:57:01 ID:fRipwHbk
「突然だが今から君達にはゲームをしてもらおう」

全体的に薄暗いホールの前方にある壇上。
そこにだけスポットライトが浴びせられていて、白髪頭の初老の男はそう告げた。
そしてホールに集った者達は皆一様に唐突に投げかけられた言葉を理解しようとしていた。

(ついに始まるか、正真正銘のデスゲーム――殺し合いが……)

ただその中の一人、大田宗一郎は今から行われるゲームの内容について知っていた。
なぜ元海馬コーポレーションの重役ビッグ5の一人であるビッグ4の大田がそれを知っているのか。
それは大田がある目的からこのデスゲームを開催した主催者に協力しているからだ。

「君達にはこれから外界から孤絶された会場で最期の一人になるまで殺し合いをしてもらう、つまりはデスゲームだ」

ある種のざわめきを除けば、現在皆の不安で満ちたホールには先程から壇上の男の声しか響いていない。
そもそもここにいる参加者として集められた者達はついさっき多少の時間差はあるものの意識が戻ったばかりだ。
そのため現状を理解できずに戸惑って、現状を飲み込めず迂闊に口を開く事が出来ないのかもしれない。
だがそれにしてもいきなり理不尽なゲームに無理やり参加させられるところなのだ。
罵声や怒号の一つや二つ上がっても不思議ではないが、奇妙な事に誰からもそういった発言は出てこない。
それどころか皆一様にその場に突っ立ったまま壇上の男の話を聞いている。
異常な事に誰も動かず誰も喋りもしない。
だがその理由を知っている大田にとってはこの状況はただ単に想定されたものだった。
もっとも担当外の分野なので詳しくは知らないのだが。

「では詳しくルールの説明をしておこう。
 まずこのデスゲームだが、警視庁はもちろんスピードワゴン財団、聖堂教会、インキュベーター、765プロダクション、月峰神社、ダラーズ、大赦、ラブライブ!運営本部、鎮守府、共生の協力で開催される。
 また警視総監である私自ら説明している事からも、このデスゲームの重大さを実感してもらいたい。
 次に君達をそのまま殺し合わせるのは実力差から不都合があるので、こちらの方で多少手を加えさせてもらった。
 その代わり君達にはこのデイパックが支給される。
 この中には水や食料など様々なものが入っている、それこそデスゲームを有利に進められるような武器などのようなものもだ。
 そして君達に装着されている首輪についてだが――」

その瞬間、場の空気が一瞬緊迫した。
まるで歴戦の騎士の気迫に当てられたかのように。

「――ッ、このような令呪で私がいつまでも縛ら」

だがそれはすぐに霧散した。
今しがた壇上以外で初めて声を上げた高潔な騎士王の首と胴体が分かたれると共に。
そして次いでもう一つ首が飛び、無情にも説明は続けられた。

「では説明を続けよう。
 この首輪の前では誰もが平等に死ぬ事となる。
 今目にした通り、この中でも指折りの実力者であるセイバーでも、不死の吸血鬼であるDIOでも変わらない。
 その事を心に留めておいてほしい。
 この首輪が作動する条件は二つ。
 まずデスゲームを著しく妨害する行為を取った場合。
 次に開始から6時間ごとに行われる定期放送で指定されたエリアに入った場合。
 またその定期放送時にはそれまでの6時間で死んだ者も告げる事になる」
(早合点だったな、セイバー。
 これはお前たちの知っている令呪ではない。
 それにしても効果が弱まってセイバーが動くタイミングは予定通りだった。
 首輪の仕上がりは想定通りといったところか)

これこそデスゲーム開催にあたって大田が協力したもの、つまり首輪だ。
軍需産業時代の海馬コーポレーション兵器製造工場の元工場長として「工場の鬼軍曹」と呼ばれていた彼には様々な兵器に関するノウハウがあった。
それを今回の首輪開発に提供したのだ。
そしてそれはここまでほぼ予定通りの結果をもたらしていた。

80 ◆a1H5ynvB6A:2015/04/17(金) 18:58:06 ID:fRipwHbk
「最後にこのデスゲームで最期の一人となった者にはどんな願いでも叶える事を約束しよう。
 先程述べたように様々な組織が協力している私達ならばそれが可能だ」

このホールに集められた者達はデスゲームに参加するという手段を経て最期の一人という目的を達成しなければならない。
一方の大田もある意味では似たような立場にあると言える。
なにしろ大田が目的を達成するためには、この首輪が正常に作動する事が必要条件だったからだ。
そのためにわざわざ参加者の中に紛れて首輪の最終チェックを見届けているのだ。
他の参加者に手を出されないと知っていたが、それでも不安はあった。
だがそれももう終わりだ。
大田の見たところデスゲームのオープニングセレモニー的なイベントは予定通り滞りなく進められていた。
あとはある程度の経過を見守ったところで目的の報酬は与えられる事になっている。

「ではこれよりデスゲームを開始する。君達の健闘に期待している」

その言葉と共にホールにいた者の姿が一人また一人と消えていった。
大田はそれがデスゲームの会場に参加者が送られているためだと知っている。
そして同時にそれはデスゲームの本格的な開始を意味していた。

(それにしても協力組織に聞き覚えのないものがいくつかあったが……)

大田の知らないところで協力を申し出てきたのか、または参加者を殺し合いに仕向けるためのブラフか。
その真相がどこにあるのか太田は知らない。
だが今は目の前にまで迫った目的達成の瞬間が待ち遠しい。
そのために大田はこれまで苦労を重ねて――。

ボンッ

次の瞬間、壇上の警視総監が見守る中、ホールに響く虚しい爆発音と共に大田の首が宙を舞った。
次いで力を失った身体が床に倒れ込み、程なくして首が鈍い音を鳴らして落下した。
自分の死に関して何故という疑問を抱く暇さえなかった。
ただ死ぬ直前、ふとした拍子に見た光景が頭に残っていた。

(あれは、確かに……笑って……)

それは首輪の力を見せつけるために見せしめとして胴体から離れた生首。
不老不死の吸血鬼である悪のカリスマ、DIO。
その生首に張り付いた表情はまるでまだ生きているかのように笑っていた。
少なくとも大田にはそう見えて仕方なかった。

【バトル・ロワイアル 開始】
【残り61人】

【主催・進行】
【警視総監@こちら葛飾区亀有公園前派出所】

81 ◆a1H5ynvB6A:2015/04/17(金) 18:58:39 ID:fRipwHbk
投下終了です

82 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 20:56:11 ID:zErdc7jM
投下乙です。
OP案投下します。

83 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 20:57:05 ID:zErdc7jM
         ア・ア・アニロワ見るときは〜部屋を明るくして離れて見てね♪



闇の中に彼等はいた。

此処は何処なのか、自分は何時からこの場所にいるのか、何故こんな場所にいるのか、何も分からない。
状況を確かめようと周囲を見回してみても、この闇の中では朧げな人影を確認するのが精一杯である。
乏しい光から辛うじて判るのは、少なからぬ数の人間がこの空間に集められている、ということだけだった。

その場の誰もが自分の置かれた状況に困惑し、何らかの行動を起こそうとしていた、その時――

「諸君、目は覚めたかな?」

嘲りを含んだ声とともに、闇の一角が眩く照らされる。
突然出現した光の中では、巨躯を奇妙な衣装で包んだ男が一人、笑みを浮べて立っていた。

「ようこそ、私の『世界』へ」


美しい男だった。黄金の髪、怖ろしいほどに白い肌、その整った貌と隆々たる筋肉を纏いつつも均整の取れた肉体は
まるでイタリア・ルネサンス時代の巨匠が最高級の大理石から彫り出したような、完璧な『美』をこの世に顕現させている。
だがその場にいる者達が男から感じ取ったのは、美しいものが与える感動とは全く異なる『邪悪さ』――
心にドス黒い闇を持った悪人を惹きつけ、逆に正しい者や善良なる者を戦慄させる、禍々しい妖気だった。
その場の誰もが理解する。この男はただの人間ではない、魔人であると。言うなれば『闇の帝王』、あるいは『邪悪の化身』――

「テメェは……」
闇の中から、男のいる光へと近づく者があった。
光に近づくにつれ、闇に学生服と学帽、そして光の中の男に劣らぬ堂々たる体躯が照らし出される。

「テメェはDIO!!」
「そういう君は空条承太郎」

光の中に立つ金色の男・DIOは笑みを崩さぬままに
闇の中に立つ学生服の男・承太郎は怒りを秘めた無表情で
両者は光と闇の狭間で対峙した。

地響きのような轟音が聞こえそうな圧倒的なプレッシャーが、両者の間に流れる。

――しかし、その緊張を爆発させることなく、承太郎は口を開いた。
「何のつもりだ……」
「ほう……流石にこの状況で戦いを挑まないだけの冷静さはあるか」
承太郎の問いに嘲るような調子で返すと、DIOは彼を無視して他の者たちへと向き直る。


「失礼、自己紹介が遅れたね。
 私の名は『DIO』。君達『参加者』をこの世界へ招待した者だ」

闇の中に巻き起こる微かなざわめき、それを手で制し、DIOは言葉を続ける。

「諸君らをこの場に招いたのは他でもない。実は君達にちょっとした『頼み事』をしたいんだ。
 なに、そう難しいことを頼もうってんじゃあない……」

しばし芝居がかった短い間を挟んだ後、悪の帝王はその邪悪に満ちた目的の核心を口にする。


「つまり――これから君達には『殺し合い』をしてもらいたい」


その言葉に、場は静まりかえった。

84 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 20:57:47 ID:zErdc7jM
沈黙に自分の言葉が沁み込むのを悦しむように、DIOは笑顔で喋り続ける。

「なあ、全然大した事じゃあないだろう?
 世界中で誰もがやっている、『ありふれた行い』さ――それをしてもらいたい。
 私が君達に望むことは、ただそれだけなんだ――」
「DIO様!」

まるで神を拝跪するかのように、DIOの足元にしわくちゃの小さな影が身を投げ出した。

「なんだいエンヤ? 私の話に何か異存があるのかね?」
「めっ、滅相もない!DIO様の御為とあらば、この婆は命も惜しくはありませんですじゃ!
 じゃが……じゃが殺し合えというのは――」

エンヤと呼ばれた老婆はブルブルと震えたまま床に這い、汗みどろになって縋るようにDIOを見上げている。
その老婆に、DIOは不気味なほど優しい声で語りかけた。

「わかっているともエンヤ……深く愛しあっているお前たち母子を殺し合わせるなんて残酷な真似、私がするわけ無いじゃあないか……。
 だからこうしよう。『二名』だ」

そう言うとDIOは足元のエンヤ婆から目を離し、再び参加者全員を見渡す。

「二名……きっかり二名だ。参加者のうち生存者が残り二名になった時点で殺し合いは終了とする。
 つまり今から行う殺し合いより生還できるのは、最後に残った二名だけ――ということだ」

再びざわめきを取り戻した闇に向かって、DIOはいかにも楽しげに『殺し合い』の説明を続ける。

「二人が生還できる――どうだい? 『希望』の持てるルールだろう?
 愛する者を護ってもいい。信頼できるヤツ同士で組んでもいい。
 あるいはコバンザメのように強い奴に張り付いていくってのもいいかもしれないなァ――」

そう言いながら、DIOの目は少年少女を、戦友と共に連れて来られた娘達を、そして嘗て自分に忠誠を誓った男を
その場に集められた参加者達を蛇のように舐め回していく。

「おい!いい加減にしろ!」

だがそんな傲慢な帝王の独演に、割って入る者がいた。



「さっきから聞いてりゃ好き勝手なことばかり言いやがって!何が殺し合いだ!」

そう言いながらズケズケとDIOに近づいたのは、小柄だが厳つい身体に厳つい顔、角刈り頭に繋がり眉毛という
強烈なインパクトのある見た目の男だった。だが一見粗雑なその姿からは、何とも不思議な愛嬌が感じられる。

「……何か問題かね? 両津勘吉巡査長」
「問題しかないだろうが!」

DIOの放つ圧倒的な闇の妖気、プレッシャー――そんなものはどこ吹く風で、両津勘吉はがなり立てる。

「殺し合えといわれて殺し合うバカがどこにいる!こんなアホなことは今すぐやめてワシらをここから開放しろ!
 ついでにこの首輪も外せ!」

そう言う両津の首には、銀色に光る首輪が嵌められていた。いや両津だけではなく、この場にいる『参加者』のほぼ全員に首輪は嵌められている。

「ふむ、気に入ってもらえなかったかな?」
「当たり前だ!ワシに男に首輪つけられて喜ぶ趣味はなぁ〜い!」

85 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 20:58:22 ID:zErdc7jM
鼓膜を破らんばかりの両津の大声に、DIOは平静なままの声で冷たく応える。

「申し訳ないが両津巡査長、まだ説明が途中でね……静粛にしてもらいたい」
「なにぃ〜〜!?」

両津が一発ぶん殴るためにDIOに詰め寄ろうとしたその時、DIOのすぐ隣に蟠っていた闇の空間が明かりで照らされた。

「なっ……!」

思わず両津の足が止まる。
新たに照らされたその空間には一脚の椅子と、その上に座らされている幼い少女の姿があった。


「桜ッ!?」

闇の中で、顎鬚をたくわえた身なりのいい紳士が少女の名を叫ぶ。

その声に反応するように少女――遠坂桜――今の名は間桐桜――は俯いていた顔を上げる。
紫の髪に紅いリボン、仕立てのいい紫色のワンピースを纏った少女の愛らしい顔にはしかし
その年頃の子供にある溌剌とした表情も、それどころか人間らしい表情の一つも浮かぶことなく
ただ壊れた人形のような空虚がその瞳の中に映し出されているだけだった。

「貴様ぁ!その子供に何をした!!」
「おい誤解するなよ……この娘は連れてきた時からこうだったんだ」

両津の今までとは比べ物にならない怒りに満ちた怒号にも冷笑を崩さぬまま、DIOは少女の座る椅子の背後へと回る。

「全く困ったものだよ。これでは殺し合いにおいて使い物にならない……
 ――だが、君達が黙って話を聞いてくれるための人質程度にはなるんじゃあないか?」

次の瞬間、DIOの背後に人ともロボットともつかない異形の影が出現した。
その姿と突然の出現に、参加者達が大きくざわめく。

「な、何だそいつは!? お前の仲間か!?」
「これは私のスタンド『ザ・ワールド』
 『スタンド』とは生命の作り出すヴィジョン……まあ、超能力が可視化したものだと思ってくれればいい」
「超能力ゥ〜!? お前日暮の同類か!?」

両津の叫びに応えず、『ザ・ワールド』は拳を手刀の形にすると桜の座っている椅子へと振り下ろした。
まるでバターのように椅子の背もたれの上部分が切り飛ばされて床に転がる。
その手刀がもう少しずれていれば、背もたれごと少女の頭を切断していたことは誰の目にも明らかだった。

「では両津巡査長、そして暗がりの中にいる『正義の味方』の諸君も――
 今しばしお静かに傾聴願えるかね?」

倣岸に笑うDIOを睨みつけながら、両津は闇の中へと後退する。それと同時に暗闇の中からも悔しげな声が漏れ聞こえた。
その間、椅子に座らされた壊れた少女――間桐桜は自分の命が危機に瀕したというのに、身動き一つしなかった。

「……さて、今説明した『スタンド』だが――これは本来同じスタンド能力を持つもの同士にしか視認できない。
 だがこの会場においては全ての参加者がスタンドを目視することが可能になっている。見えないものに襲われて全滅――なんてのは味気ないからな。
 スタンドだけじゃあない。特殊な能力を持ったもの、強力すぎる力を持っているものには、ある程度の『制限』をかけさせてもらったよ。
 ――おい、どうやってかなんてのは聞くなよ。そこは重要な部分じゃあないんだから――
 全ては殺し合いの『公正さ』のためだ。『公正さこそルール』であり『ルールこそパワー』を生み出すんだからな……」

「今から君達『参加者』は殺し合いの『会場』へと送られる。
 送られた先には各々に食料等の活動に必要な基本支給品と『特殊支給品』の入ったデイパックが置かれている。
 『特殊支給品』は殺し合いの上で役に立つもの――武器や特別な性能を持った物品などで一人につき最大三つまで支給されている。
 もっとも、どの支給品がどのデイパックに入っているかは完全にランダムだがね……。役に立たない道具も混ざっているかもしれないが
 まあそれを引き当てたとしても腐らずに頑張ってくれ」

「君達が嵌めている『首輪』に内蔵された発信機で、君達の現在地と生死の如何は常にチェックさせてもらう。
 そして殺し合いの中で発生した『死亡者』は、6時間ごとに行う『定時放送』でその名前を読み上げる。
 パックの中には『参加者名簿』が入っているのでその都度チェックするといい……。
 参加者のうち生存者が『残り二名』になった時点で殺し合いは『終了』。生存者は『会場』より『帰還』できる。
 ――――どうだろう。大体のところはわかってもらえただろうか」

86 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 20:59:27 ID:zErdc7jM

最早反抗する者はいないと確信しての余裕か、DIOは桜の座る椅子の隣に立ち、微笑みながら滔々とおぞましい殺人ゲームの説明を続ける。
希望はないのか――参加者の中で心ある者達がそう絶望しかけた。その時だった。



「――少しいいかな」

「…………何かね」

DIOの説明を遮り、一人の男が闇の中から薄明かりへと姿を現す。

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

彼の姿を見て、その場に集められた誰もが仰天した。

オールバックに整えられた艶やかな黒髪。
大人のシブみを感じさせる、男前と呼んでいいマスク。
DIOや承太郎ほどの上背は無いが、鍛え抜かれた強靭な肉体。

そう強靭な肉体――その強靭な肉体を、彼は人目に惜しげもなく晒していた。
何故なら、彼は赤と黒の縞ネクタイと腕時計、そして股間部を覆う黒い海パン以外の何物をも身に付けていなかったからである。

海水浴の途中で紛れ込んだか――そう考えるにはネクタイが異様すぎる。
故に、その姿を目にした誰もが彼のことをこう考えざるを得ない。

(変態だーーーー!!)

と。


「君の名はDIOでいいのだな……。それなら私も名乗らせてもらおう。
 
        股間のモッコリ伊達じゃない!
          陸に事件が起きた時
         海パン一つで全て解決!
         特殊刑事課三羽烏の一人
          
            海パン刑事
                   只今参上!!」


(刑事かよ!!?)

あまりにも思いがけない彼――海パン刑事の正体に、ほとんどの参加者が再び驚倒する。

しかし当の海パン刑事本人は自分に向けられる奇異の視線など気にもせず、その眼光は一線に桜の傍にいるDIOへと向けられていた。
再び地響きのような轟音が聞こえてきそうな圧倒的プレッシャーが、両者の間に流れる。

「DIO、君と話し合いがしたい」

スッと――あまりにも自然な動きだったので誰も認識できないほど自然に――海パン刑事の両手が動いた。
右手は海パンの右側の縁に、左手は海パンの左側の縁に
そして、そうであることがあたかも当たり前のように
次の瞬間、海パン刑事は一切の躊躇無く海パンを脱ぎ去っていた。

「きゃあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

闇の中の参加者達から絶叫が上がった。
海パンを脱ぎ捨てた海パン刑事は勿論モロダシ。股間のダーティーハリーまで全てを臆すところ無く天上天下に曝け出している。
女性の悲鳴と男性の一部感嘆嫉妬混じりの驚愕、それらを背に受けながら
海パン刑事はフルチンのまま、一歩、また一歩と、ゆっくりDIOに近づいていく。

87 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 21:00:48 ID:zErdc7jM

「恐れることはない。私は見ての通り、武器の類は一切持っていない丸腰だ」

股間に残っている武器を揺らし、雄雄しい筋肉を何らかのオイルでてらてらと輝かせながら
海パン刑事は静かに少女を人質とした凶悪犯に語りかける。

「裸の心で話し合おう。
 心を裸にして話せば、きっと理解し合えるはずだ」

それは身体まで裸になる必要があるのか。
一歩、また一歩とゆっくり近づく海パン刑事に対して、DIOは倣岸に構えたまま無言でいる。
その姿は、圧倒的優位に立って殺人ゲームのルールを説明していた先程までと全く変わりがない。


(違う……)

だが、百戦錬磨のギャンブラーや決闘者など、あるいは死線を潜り抜けてきた戦士や英雄などの
勝負の『流れ』を読むのに長けた参加者たちは、場の空気が確実に変化したことに気づいていた。
圧倒的だったDIOの邪悪なオーラに、僅かだが、しかし確実に『動揺』が走っている。
DIOの放つ妖気が、ただ静かに歩むだけの変態に切り拓かれているのだ。

(DIOが……DIOが引いている!!)


「さあ、君も服を脱ぎたまえ」

一歩、一歩、一歩
ゆっくりと、だが確実に、海パン刑事はDIOに接近する。

そして

「お互い、生まれたときは何も着ていない素っ裸だったはずだ――」

射程圏内に――

「さあ、裸になって話し合おう。生まれたままの裸の心で――」

――入った!!


「トウッ!」

目にも留まらぬ速度で、海パン刑事は常人を遥かに超えた高度へと跳躍した。
そのまま中空で超高速前転し、その勢いを乗せたまま股間を大開脚し、DIO目掛けて流星の如く落下する。
まるで熟練の波紋使いのような身のこなし!そして開脚された海パン刑事のデンジャラスゾーンの軌道は、確実にDIOの顔面を捉えていた。
これぞ海パン刑事の必殺技の一つ、ゴールデン・クラッシュである。

全ては一瞬の出来事であり、DIOが気づいた時にはもう遅い。
DIOの眼前には海パン刑事のリーサルウェポンが既に迫っていた。
なすすべも無くDIOの顔面にゴールデン・クラッシュが叩きつけられ、意識を刈り取られた悪の帝王は床にぶっ倒れる。


そうなると、誰もが予想していた。


「『世界(ザ・ワールド)』ッ!!」



何が起こったのか誰も理解できなかった。

結論から言おう。海パン刑事のゴールデン・クラッシュは空しく宙を切るに終わった。
そして、その直撃を受けるはずだったDIOは――

「なッ、なぜだッ!?」


┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨ ┣¨┣¨……


「一体何が起こったんだァーーーーーーーー!?」

一瞬のうちにッ!海パン刑事の背後へとその居場所を変えていた!

88 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 21:01:26 ID:zErdc7jM

DIOの顔は無表情で何も読み取ることが出来ない。その背後の中空にはザ・ワールドが衛兵の如く控えている。

誰も、何も認識できなかった。
催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなものでは断じてない。
もっと恐ろしいDIOの『能力』、その片鱗を目にして、誰もが息を呑む。


そう――――彼等以外は。

「今だ両津!」
「おう!」

DIOがスタンドもろとも椅子の傍から離れたその瞬間、両津勘吉は動いていた。
超能力に驚いてる暇などありはしない。
彼等の目的は最初からただ一つ、人質の少女――間桐桜の救出だった。

ほとんど野生動物的なスピードで椅子に駆け寄ると、両津は桜を抱き上げてしっかりと抱える。
そして矢のような速さでDIOから距離をとり、安全圏へと脱出した。
ごつい見た目からは想像もできないほど俊敏に行われた一連の救出作戦に、他の参加者達はしばし呆気に取られる。
だが一拍後、その場にいる誰もが理解した。悪党は倒せなかったものの、その魔手から人質の少女は助け出せたのだと。


「嬢ちゃん!大丈夫か!おいしっかりしろ!」

両津は腕に抱きかかえた人形のように無反応な少女に、大声で話しかける。
どうしようもなくダミ声で、耳を聾するようにうるさく、そして切実なその声に
今まで無反応だった桜がはじめて顔を上げ、両津を見た。

「おじ――さん――?」
「おう!お嬢ちゃん、もう大丈夫だ!もう心配いらねえぞ!」

そう言ってガハハと笑う、そのあまりに無骨で明け透けな両津の笑顔を見て
曇った硝子玉のようだった少女の瞳に、長らく失われていた輝きの光が再び灯った。




ピ――――――――――――――

耳障りな電子音の後に爆発音が続き、頚部を爆破された桜の頭部が床に転がった。
首の切断面からは血が噴き出し、抱えている両津の腕を赤く染めている。

「な――――――――」

何が起こったのか理解できない両津を光が包んだ。
まるで悲劇役者を、あるいは喜劇役者を映し出すように
呆然とする両津勘吉と、その腕に抱きかかえられた間桐桜の首の無い死体
そして流れ出る血の海に転がった、リボンを結わえた桜の首が、闇の中に照らし出されていた。


一瞬の静寂の後、再び悲鳴が巻き起こる。
だがそれは、先程とは比べ物にならない恐怖と絶望の絶叫だった。

悪魔の手から救い出されたと思った少女が、目の前で無惨に殺された――
照らし出された惨劇にただ叫ぶ者、涙を流す者、堪えきれず嘔吐する者、怒りに震える者、喜悦の声を噛み殺す者、あるいは何も感じない者

「桜――――」

その喧騒の中、眼前で娘の命を奪われた魔術師――遠坂時臣は小さく娘の名を呟いただけだった。
決して取り乱すまいと超人的な精神力で自分を律してはいたが、暗闇の中で彼の姿を観察している者がいたとすれば
彼が奥歯を砕けんばかりに噛み締め、その両手を爪が掌を突き破るほど固く握り締めていることに気がついただろう。

89 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 21:02:15 ID:zErdc7jM

「ククク…………」

そんな人々の恐慌を鎮めたのは、魔人の哄笑だった。

「アハハハハハハハハハハハハ―――――――――!!!!!!!!!」

DIOは笑う。目の前で起こった出来事が、愉しくて悦しくて仕方がないと言うように。

「クククク……失敬失敬。すっかり言うのを忘れていたが――
 君達の首輪には追跡装置以外に爆破装置も仕掛けてある。
 そして何時だろうと何処だろうと、私の意志一つで自由に爆破できるのさ……ご覧の通りにね」

三度起こった悲鳴を、DIOはまるで心地良い音楽でも聴くかのように楽しむ。

「さて、この首輪が爆破されるのは以下の三つの場合だ。

 ① 主催者に対して反抗的な態度をとった場合。
 ② 脱出しようと、地図に記された『会場』以外の場所に出た場合。
 ③ 我々が定めた禁止エリアに入った場合。

 禁止エリアについては詳しく説明しよう。
 『定時放送』の際、死亡者の名前と一緒に禁止エリアに指定される場所と禁止エリア化する時刻を発表する。
 つまり時間の経過につれて禁止エリアは増えていく――逃げたり隠れたりすることは難しくなっていく、ということだ。
 だから『定時放送』は聞き逃さないほうがいいぞ? 知らぬままウッカリ禁止エリアに入って爆死するなんてマヌケの死に方だからな……」

「それと――自分には首が無いから大丈夫、なんて思うヤツがいるかもしれないが、そういう考え方はしないほうがいい」

DIOの言葉に、ネコミミ型のフルフェイスヘルメットを被った影が微かに反応する。

「首輪を付けられない者にはそれ以外の特殊な処置が施してある。
 また自分達は首を千切られた程度では死なない――と思ってるヤツもいるかもしれないが君達も同じだ。
 諸君ら全員に、必ず死に至るような仕掛けが施されている。ハッタリだと思うなら試してみるかい? お奨めはしないがね……フフフ」

冷酷極まる邪悪な帝王の笑いが、それが嘘やハッタリでないことを何より雄弁に物語っていた。
既に、DIOに歯向かおうとする者はいない。
少なくとも、今、この場では。



「――ただ説明するだけだったはずが、少々長くお付き合いさせてしまったね。
 では最後に――『褒賞』の話をしよう」

そう告げると、DIOは再び参加者達を睥睨する。

「ただ殺し合え、生き残れと言われても気乗りのしない者もいるだろう。
 だからほんのささやかではあるが『生還者』に対しては『褒賞』を出すことにしたよ……。
 『どんな願いでも一つだけ叶えてあげよう』。
 無論、土くれの偽物なんかじゃあない。本当にどんな願いでも叶えてあげるよ、ただし『一つだけ』ね……」

「生還を許されるのは『二人』だが叶えられる願いは『一つだけ』――
 済まないね、こちらとしても願いを叶えるのは一つで精一杯なんだ。
 もしも『二人』の生還者の願いが異なるものだった場合は――『何らかの手段』で一つに決めてもらうしかないな」

まるで玩具を見下ろすかのように、DIOはその冷笑を止めない。

「『一つだけ』――だがその『一つだけ』は必ず叶えよう。
 たとえそれがこの世界の条理に反するものだとしても、だ。
 信じられないかい? だがそれが可能になるのさ。
 この殺し合いが終わる頃にはね――――」

90 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 21:02:57 ID:zErdc7jM
「この場に集められた者達は皆、特別に選ばれた『強いパワーを持った魂』の持ち主だ。
 全部で62名、そのうち60名の――おっと、さっき娘が一人首輪の爆破で死んだから残り59名か――の魂が捧げられることによって
 どのような願いでも叶えることが可能になるのさ。例えば――」

DIOの声がまるで囁くような、親しげなものへと変わる。

「死んだ人間を、既にない愛する者を甦らせたい――そう願ったことはないか?」
母を亡くした少女に、弟を亡くした少女に、恋人を失った男に、聖なるものを失った狂人に、DIOは優しく語りかける。

「あるいは、変わってしまった自分の身体を元に戻したい――普通の人間に戻りたい、なんてのはどうかな?」
戦うために、祈りによって、呪いによって、過酷な運命を背負わされた少女達に、その声は妖しく響く。

「至高の美を、不老の肉体を、世界の全てが自分に跪く絢爛たる永遠を手にしたいとは思わないかね?」
若く美しいアイドル達の耳を、誘惑の言葉が撫でる。

「もっと大きく出てもいい。『いかなる戦争、いかなる脅威をも根絶された、恒久的に平和な世界』――そんな夢を実現することも不可能ではないのだよ」
くたびれた無精髭の男に、戦うために存在する少女達に、邪悪な視線が向けられる。


「――まぁ、『信じられない』と言うのならそれでもいいさ。
 いずれにせよ君達が生きて還るためには、最後の二人になるまで殺し合わなけりゃならない。その事実は変わりはしないんだからな……
 長々と話してしまったが、これで説明は終わりだ。何か質問は――」

闇の中、一人の男が前に出る。学生服の偉丈夫、空条承太郎だった。

「――何かな? 承太郎」
「俺達の魂が目的なら、何故わざわざ殺し合わせる必要がある。
 テメーが全員の首輪を爆発すれば済む話だ――それなのに何故こんな回りくどい真似をする?」

生殺与奪を握られた――そんな状況においても、承太郎に揺らぎはない。

「それはな承太郎、『殺し合い』の中――命を奪い合う『戦い』の中でこそ、『もっとも強いパワー』が生まれるからだ」

DIOの言葉は相変わらず嘲りを含んでいるが、その中に偽りはない。

「“新しい時代の幕開けには必ず『試練』があり、それは必ず『戦い』と『流血』を伴う。
  『試練』は『供え物』だ。りっぱであるほど良い――”

 確かアメリカ合衆国23代大統領ファニー・ヴァレンタインの言葉だったか……よく言ったものだ。
 諸君らがこれより行う『殺し合い』とは、この『試練』に他ならない」

「しかし『試練』という言葉は少々大時代的過ぎるかな?
 それならばこの『殺し合い』は何と呼ぶべきか――

 命をチップにした『狂気のギャンブル』――
 あるいは『闇のゲーム』のほうがいいかね――

 いや、矢張りこう呼ぶのがもっとも相応しいだろうなぁ……」

今や全ての準備は整った。
邪悪の化身は選ばれし『参加者』達に宣告する。
死ぬよりも恐ろしい悪夢の開始を。

「では諸君、ゲームを始めようじゃないか。
 ようこそ『バトルロワイアル』の世界へ!!」


次の瞬間、空間を照らしていた光は全て掻き消え
世界は、血の匂いのする闇に包まれた。



【間桐桜@Fate/Zero 死亡】

参加者――【残り61名】

主催者【DIO@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】

         
         【バトルロワイアル 開始】

91 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 21:03:29 ID:zErdc7jM
投下終了です。

92 ◆YMrTHmirjk:2015/04/17(金) 22:12:21 ID:VdP2boIQ
OP案投下します

93ぼくと契約して、バトルロワイアルをしようよ! ◆YMrTHmirjk:2015/04/17(金) 22:13:32 ID:VdP2boIQ

「あなた」は暗闇の中で目を覚ます。
縛られているのか、身体は動かない。息はできるが、声も出せない。
唐突に訪れた束縛の中、なんとか状況を把握しようとした「あなた」の目の前に小さな猫……のような獣が現れた。

「やあ、目が覚めたね。突然で申し訳ないんだけど、君にはこれからあるところで殺し合いに参加してほしいんだ」

暗闇の中に赤い双眸が輝く。その獣は人の言葉を喋った。

「ぼくはキュウべえ。この殺し合いを円滑に進めるための調整役と思ってくれればいいよ」

キュウべえは小さな口で背後に置いてあったデイバッグをくわえ、引きずってくる。

「この中には数日分の食事と水、地図やライトなんかの基本的な道具が入ってる。
 それと一人ひとりに特別なアイテムも入れてあるよ。武器だったり乗り物だったり、まあ何かと役に立つものさ。
 君にはこれらを活用して、ぜひ最後の一人になるまで頑張ってもらいたいんだ」

キュウべえはデイバッグを「あなた」の足元へと押し付ける。
何かを問い返そうにも、言葉は喉元でせき止められたかのように発することができない。

「ごめんね、質問はできないようにしてあるんだ。
 これは君以外の他の参加者も同様でね、余計な情報を与えないためなんだ
 これから君を会場へ移動させるんだけど、向こうについたらそのバッグの中にルールを書いた本が入ってる。
 詳しいことはそれを確認してほしい」

キュウべえは短い前足で首を掻く…それは何らかの仕草に見えた。

「ここ、首のところにね、首輪があるのがわかるかい? ぼくじゃないよ、きみのね」

キュウべえがそう言うと、「あなた」は自分に首に金属の首輪が嵌められていることに気づく。

「その首輪には爆弾が仕掛けられているんだ。ある程度の緊張感がないと誰も真面目にやってくれないからね」

キュウべえがそう言うと、闇の中にパッと光が灯った。
「あなた」は思わず目を細める。その光の中心には、椅子に座らされ縛られた男性がいた。

「き、貴様ら! 私をロード・エルメロイと知っての狼藉か!? 私にこんなことをして、魔術協会が黙っていると思うなよ!」
「よく見ててね。もし君が首輪を外そうとしたり、後で指定する禁止エリアに入ったりすると……」
「おい、貴様! 聞いているのか! 私は時計塔の」

94ぼくと契約して、バトルロワイアルをしようよ! ◆YMrTHmirjk:2015/04/17(金) 22:14:05 ID:VdP2boIQ

キュウべえはどこからともなくボタンの付いた小さな機械を取り出して、前足で押した。
ボンッ!
爆竹が弾けるような音がして、縛られていた男がゆっくりと倒れた。
その首から上はなくなっていて、血が噴水のように吹き上がっていた。

「こうなるから、気をつけてね」

キュウべえの言葉が遠く聞こえる。
「あなた」の意識は、転がってきたロード・エルメロイと名乗った男の生首に釘付けになっていたからだ。

「もちろん、ぼくも無茶なことを言ってると思うよ。でもこれは、君にとっても得のある話なんだ。
 もし君が最後の一人になったら、ぼくは君の願いを何でも叶えてあげるよ!」

キュウべえはにこやかに言う。

「ぼくの言ってることが信用できないかい? それも当然だね。じゃあひとつ証拠を見せよう」

キュウべえはまた新たなスイッチを取り出して押す。
すると、転がっていた男の生首がひとりでに転がりだして、胴体に戻っていく。
「あなた」の見ている前で、男のまぶたがゆっくりと開かれる。

「……う、うう? 私は一体……?」
「この通り、死んだ人間だって生き返らせることができる! ぼくらは既に時間と因果を支配しているからね。不可能はないよ」
「お、おい貴様! いま、私に一体何をした!?」
「やれやれ、うるさいなあ。ケイネス、君は先に次の人のところに行っておいてよ。あと60回同じことを繰り返すんだから手間を取らせないでほしいな」

キュウべえが煩わしそうに言うと、男を照らしていた光が消え、男の気配もなくなった。
キュウべえが「あなた」に向き直る。

「これで一通りの説明は終わりかな。さっきも言ったけど、詳しいルールは配布した資料を読んでくれればわかるよ。
 ……さて、そろそろ時間だ。君を会場に送るね。他の参加者とは同時にスタートするから、時間的な有利不利はないよ」

キュウべえはふるふると前足を振った。それは別れのサインであるようだった。

「それじゃあね。君の願いがエントロピーを凌駕することを祈っているよ!」

それを最後に、「あなた」の意識は途絶えた。
こうして、バトルロワイアルの幕が上がった。



【ケイネス・エルメロイ・アーチボルト@Fate/Zero 死亡】
主催者【キュウべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
         
【バトルロワイアル 開始】

95ぼくと契約して、バトルロワイアルをしようよ! ◆YMrTHmirjk:2015/04/17(金) 22:14:52 ID:VdP2boIQ
投下終了です

96 ◆kdN026sJVA:2015/04/17(金) 23:55:42 HOST:KD124211244016.ppp-bb.dion.ne.jp
投下します

97 ◆ur4vKVfv.g:2015/04/17(金) 23:56:38 HOST:ZM012197.ppp.dion.ne.jp
OP案投下します

98 ◆kdN026sJVA:2015/04/17(金) 23:56:46 HOST:KD124211244016.ppp-bb.dion.ne.jp
 「目覚めよ」
黒髪の男が語り掛けると、そこにいた数十名の男女は一斉に目を覚ました。
みな不思議そうに辺りをきょろきょろ見渡し状況の確認を急いでいたが、間髪入れずに続けられた言葉に思考を停止する。
 「これから君たちには殺し合いをしてもらいます」
男はとても愉快そうに、非常識な事を言う。
 「名乗り忘れていました。 私の名はクロウ・リード。 魔術師です。 それでは殺し合いのルールを語らせていただきます」
一同が呆然とする中、クロウは続ける。
 「ルールは単純。 最後の一人になるまで殺しあっていただくだけです。 無論、優勝者には賞品を用意してます。
 三つだけ、願いを叶えて差し上げましょう。 どんな願いでも結構です。 まぁ私を殺したいという願いでもお受けしますよ?」
そして男は首輪を指さす。
 「皆さんが付けている首輪。 それが枷です。 殺し合いの会場から出た時点で爆発します。
 あと六時間ごとに放送を掛けます。 そこで死亡された方を発表させていただきます。
 さらに禁止エリア、というものも発表します。 そこに一歩でも踏み入っても首輪は爆発しますのでご注意を。
 あぁ、放送から30分は無事なようにしますのでご安心を。
 このホールから順番に出て行ってもらいますが、ホールから出た時点で殺し合いのスタートです。
 その際にディパックをお渡しします。 中には筆記用具と水と食料が入ってます。
 あと便利なアイテムが三つ入ってますので、ご利用ください。
 えぇっと、なにかご質問はありますか?」

そこで猶予が与えられて一同がざわつく。
困惑するもの、泣き出すもの、そして…憤慨する者。

 「てめぇ! ふざけんじゃねぇぞ!」
 「待って、城之内くん!」
 「でもよ、遊戯! 殺し合いさせるだなんてトンチキなこと言い出す奴、許せるかよ!」
城之内と呼ばれた少年はまっすぐクロウを指さし言い放つ。
 「おまえを倒して、こんなふざけたこと、辞めさせてやる! 俺のターン、ドロー!」
そういっていつの間にか持っていたカードから一枚を抜き出す。 次の瞬間
 「レッドアイズ・ブラックドラゴン!」
 「ワンターン召喚?!」
 「そうだぜ、海馬! お前との戦いの為に編み出したとっておきだ!」
 「凄いよ、城之内君! 早すぎて全然見えなかった!」
 「おうよ! さぁクロウ・リード! これでもくらって目を覚ましやがれ黒炎弾! プレイヤーにダイレクトアタック!」
突如、何故か出現した巨大な竜が猛烈な炎を浴びせる。 しかし
 「なるほど。 この会場内でカードが使えるように実体化するようにしていることを察知していたとは流石です。 ですが」
巨大な鏡が突如出現し、あっさりと炎は打ち消された。 打ち消された。
 「な、なにぃ?!」
少年に驚愕の暇はあまりなかった。 間抜けな音がして城之内の首から上が消し飛ぶ。

 「城之内くぅぅうぅぅぅぅぅぅん!」
遊戯と呼ばれた少年の声が空しく響く。
 「残念ながらこのホールの中での攻撃行為、ならびに運営に対する攻撃は即座にBANです。
 おや、もう聞こえてないですかね。 注意し忘れていました。 すみません」

99 ◆kdN026sJVA:2015/04/17(金) 23:57:24 HOST:KD124211244016.ppp-bb.dion.ne.jp
反省する様子もなくクロウは続ける。
 「質問などはもうないですね? まぁ私自身への文句や苦情はここでおっしゃられても、はぁそうですかとしか返せません。
 あとこの殺し合いの運営・管理は他の方に委託しております。
 私が直接管理してもいいのですが、それでは紅茶が飲めませんからね。
 ご紹介しましょう。 共生の方々です」

ぞろぞろと現れた黒服サングラスの面々に一同の中で一際異彩を放つ老人が驚愕の表情を浮かべる。
 「おまえたち!? なぜわしを裏切った!」
黒服の一人が申し訳なさそうに口を開く。
 「見せられたのです、鷲巣さま!」
 「見せられただと?!」
鷲巣はなおも驚愕の表情を浮かべる。
黒服の男は恐る恐る、しかし確実に言葉を紡ぐ。
 「そうです! 鷲巣様が息絶え、そしてアカギめがあろうことか鷲巣様の後頭部を踏みつけている姿を!」
 「なんじゃとおお?!」
鷲巣はぐらんと揺れ、そして倒れそうになるも踏みとどまった。
 「鷲巣様は東京大空襲の中、ごく普通に歩かれていても無傷でおられましょう! それほどの強運! それほどの豪運!
 なれど、そのアカギめには勝てないのだと、このクロウ・リードの予言に出てしまったのです!」
老人は怒りの表情を浮かべながらも、しかし恍惚として顔を緩める。
 「そうかそうか。 ここでなら、アカギをアカギの奴を…フフフ…殺れるということ!」
 「その通りでございます、鷲巣様!」
主従の微笑ましい一幕は幕を閉じた。

 「よろしいですか? では彼らにこれから先の運営はお任せしました。 
 参加者の皆さんはこれから名簿をランダムに読み上げますので、呼ばれた方は出口に向かってください。
 扉を抜けた先は各人違う場所になりますので、扉の先で待ち伏せしても効果は薄いと思いますよ?」
クロウの最後の付けたしに、幾人かが当てが外れたようにため息をつく。
 「それではお願いしますね」
クロウは黒服たちにそういうと、舞台から立ち去った。

100 ◆kdN026sJVA:2015/04/17(金) 23:58:33 HOST:KD124211244016.ppp-bb.dion.ne.jp
舞台を降りたクロウは、いや、もはや姿を少年のそれに変えていた。
その黒髪の少年に、白い、なんとも奇妙な動物が人語で語り掛ける。
 「お疲れ様、いや、これからが本番かな?」
赤い瞳で見つめる。
 「えぇ、これからです。 柊沢エリオルとして、参加者としてのバトルロワイヤルはね」
 「それにしても面倒なことをしたものだ。 そのまま主催としてさくらという少女を見守ればいいものを」
 「それが出来ないと判断したから、クロウはこのような場を設けたのですよ」
エリオルはそう答えて、「扉」の前に立つ。
 「影武者の方が扉を通られた後に、僕がここを通る。 それでバトルロワイヤルスタートです」
少年は扉をくぐった。

バトルロワイヤル
スタート

101 ◆kdN026sJVA:2015/04/17(金) 23:59:21 HOST:KD124211244016.ppp-bb.dion.ne.jp
投下終了です。

102 ◆ur4vKVfv.g:2015/04/18(土) 00:02:25 HOST:ZM012197.ppp.dion.ne.jp
【1】

『生きている人、いますか?』

【2】

『詰まる所、お前たちは異分子である』

タールを流し込んだかのような暗闇に声が響いた。
どこからでも通ってくる抑揚のない男の声は、現在の状況を極端に表している。
一mm先も見通せない、どこまでも広がる闇。

『異分子とは言葉通りにとってくれて構わない。多数のものと違う思想、種類、性質、体質。ジグソーパズルは知ってるか? 一枚の絵をいくつかの欠片に分けて、ばらばらにしたものを再度組み直すゲームだ。

ここでいう一枚の絵とはお前たちの世界であり、欠片とはそこに存在する者たちーーそう、お前たちのことだ。
欠片は欠片でも、意味合いは全く違うがな。

余分な欠片はゴミ箱に。当たり前のことだ、廃棄しないでいたらいつかは溢れちまう。
瞬きする間もなくお前たちは終わっていた。否、終わらされてしまった、の方が正しいか。
だが、人間であれ動物であれ世界に存在している以上、文句の言えない出来事はある。

大気中の空気や来襲する地震に、理不尽だとケチはつけられない。生まれてきたことを後悔することはあっても、在ることは否定してはならない。
いわば今回お前たちに起こった現象は、偶然、たまたま、運悪く、起こってしまった不慮の事故みたいなもんだ。

さて、前置きが長くなったがルールの説明といこう。
お前たちにはこれから、七十二時間ーー三日間の間生き残りを賭けたゲームをしてもらう。
なに、別に難しいことを言ってるんじゃない。社会にも生存競争という言葉があるだろう。生きているということは、それだけで他者を食い命をかけている。

もっとも、この場所に限って言えば少し意味合いが違う。
揚げ足を取るのは好きではないんでな。俺の言葉に言霊なんて便利なものはないが、この地この場所で生き残れれば、無事元の世界へ戻れることを保証しよう。

まぁ、これはただの伝言だがな
俺はゲームを円滑に進める進行役でしかない。謎解きならお前たちだけでやってくれ。
そんなものは俺の役目じゃない。

103 ◆ur4vKVfv.g:2015/04/18(土) 00:04:25 HOST:ZM012197.ppp.dion.ne.jp
参加者にはデイパックが支給されている。
中には、会場の地図に参加者名簿、三日間を過ごすのに最低限必要なものと、その他不明な支給品が入っている。

不明な支給品の類にはもちろん武器などといった物も入っている。
どう使うかはお前たち次第だがな。他者を蹴落とすなり、害ある者から自身を守る正当防衛の道具として使用しても構わん。

会場である場所は時間の経過と共に崩壊していく。
地図にはエリアが振り分けられている。六時間ごとに指定したエリアが消えていく。
眠っていたら放送を聞き逃してエリアごと消失しました、なんて阿呆なことにならないようにな。

ゲームである以上ルールが存在する。
生き残りをかけた、とは言ったが、な。十人でも二十人でも構わん。最悪、いや最高か。誰も死ぬことなく全員生存なんて未来の可能性もゼロではない。

そう、ゼロではない。

三日間だ。始まりから家に篭っていても、ひたすら逃げ続けるのも構わん。
だが、しかし、な。働かざるもの食うべからず、という言葉がある。
停止していても状況は変わらん。生き残るためには行動は必須だ。

十人でも二十人でも、全員生存可能とは言ったがな
それを掴めるのはお前たちが脱出出来たらの話だ
勘違いをしないよう先に言っておくが、この場所から脱出出来るのは一人だけだ

これは変えることのできない絶対のルールだ
馬鹿なことは考えるなよ。生き残れるのは一人だ

世界は崩壊していくぞ
希望なんて観測的なものは消し飛んで行く。奇跡という言葉は砂の城のごとく崩れていく
死にたくないのならただ生き残れ。そう、最後の瞬間までな

自己紹介が遅れたな。俺の名は、提督とでも呼ぶがいい。
随分と昔に捨てた名前だが、お前たちが呼ぶ分にはこれ以上ないだろう。
最後に
俺はただ語るだけだ。物語の結末などに興味は微塵もないが、お前たち自身には関心を持っている。
故に激励の言葉を送ろう。

ーー死ぬ気で足掻けよ』

【3】

男にとって『彼女』たちは家族のような存在であり、同時に羨望の対象でもある。
長い時間を共にし、数々の戦場を駆け回った戦友でもあった。
嬉しいことも、悲しいことも共有してきた。男の人生は決して夢のような人生とは言えなかったが、後ろを向き後悔だけはしなかったことがただ一つの誇りであった。

ーーそんなものは虚像に過ぎなかったわけだが。

「まるで出来の良い人形劇だな。
お茶会を開くにも趣味が悪すぎる。
死者蘇生だと言うは易いが……下らん。
ままごとをしたいのなら、ひとりで遊んでいればいいものを……化物が」

心底嫌そうに顔を歪めながら、男は椅子に大きく腰をかけた。
これは自らを提督と名乗る男の始まりの話。

進行役【提督@?】


※六時間ごとにエリアが消えていきます
※六時間ごとに死者の放送をしていきます
※名簿には五十一人の名前が載っています。残りの十名は六時間ごとにランダムで表示されていきます
※元凶はQBです

104 ◆ur4vKVfv.g:2015/04/18(土) 00:05:20 HOST:ZM012197.ppp.dion.ne.jp
投下終了です

105 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:51:57 ID:rHFmitM.
補完SS書き終わったので投下します

106 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:52:29 ID:rHFmitM.
○月○日

この日、鎮守府に極秘任務が下された。
軍上層部はある島において、何者かによる不穏な実験がされているという情報を掴んだ。
どうやら核を用いた実験をしているらしく核実験を止めさせ、解体して無力化するが我々に与えられた。
メンバーは機械工作に長けた技術者16名、護衛の海軍中隊24名
深海凄艦の出現に備えて長門、陸奥、大井、北上、赤城、睦月の小隊6名
それを指揮する役割として選ばれた提督、合わせて47名が目的の島に向け旅立つことになった。
場所は艦娘の燃料では到底たどり着くことの出来ない場所にあるため
長距離移動用の大型船を用いて移動する。
非常時に備えて水や食料、補給用の燃料や弾薬は多めに用意された。


○月×日

出発してから二週間後、目的地である島に到着した。
報告者の通り、大気は放射能によって汚染されていたので、防護服を装備して上陸した。
艦装を外すことになるが、それでも軍人として勤めを果たすために艦娘の同行も許可された。
島を探索している内に、戦闘が起こったと思われる形跡が至る所に発見する。

民宿を発見した我々は内部への調査を始めた。
そこでも戦闘の傷跡が残されており、窓ガラスがいくつも割れ、一部の壁が破壊されていた。
一室にて白骨死体を発見、胸元に銃創の痕あり。
衣類はぼろきれのように朽ちており、死後から相当の年月が経っていると推測される。
遺体の傍で落ちていたバッグからは何かの名簿と地図が記されていた。
両方とも風化が進んでおり、名簿は読み取れなかったが地図はこの島の物であることが分かった。

民宿での調査を終えた頃、日が沈みかけていたので今日の調査は中断し船に帰還した。
明日から地図の情報を頼りに他の施設の調査を進める。
銃殺された死体を見たせいか、同行者の中に不安の声を出す者もいる。
迅速に調査を終える必要があるだろう。
この島に来てからというもの、なんだか空気が非常に重苦しい。

107 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:53:35 ID:rHFmitM.
○月△日

廃村へ調査を行った所、白骨死体が三つも発見された。
一つはナイフを持った死体、もう一つは拳銃を持った死体、最後は首を吊って自殺した死体。
自殺した死体の近くで放置されていたバッグにはメモ帳が発見された。
『ころすのもころされるのもぼくはいやだ さきにあのよへいってきます みなさんさよなら』と書かれていた。
もしや、この島で人間同士の殺し合いを強要されていたのだろうか?

次々と死体を見たショックで睦月と軍人二人がホームシックにかかった。
睦月はまだ幼く、軍人二人もまだ10代の若い人間である。
凄惨な光景を見て、不安で心が押しつぶされたのだろう。
提督の配慮により、三人は調査が終わるまで船内での休息を命じられた。

島にいくつも点在しているアンテナを調査した所、恐るべき事が分かった。
アンテナには核が仕込まれていた。
もし島に点在するアンテナ全てに核が仕掛けられているとしたらかなりの数である。
我々はいつ爆発するかも分からない核の排除を迅速に進めた。

一つめの核は無事に無力化出来た。
解除した技術者の話では設置した人物の技術不足か、それとも急いで設置したのか。
非常にシンプルな構造であり、それほど時間を労せずして解除が可能だという。

核の解除は技術者と軍人達に任せ、提督と艦娘は島の謎を解き明かすための調査をする事になった。
技術的知識の無い艦娘は未探索エリアの調査に回した方が効率が良いとの提督の考えだ。
その案に隊員達は納得し、二手に分かれて行動することになった。


○月□日

船で待機している三人の容体はまだ安定していない。
本人達は大丈夫だと言って皆を心配させないよう振る舞っているが
ろくに眠っていないのか目の下にくまが出来ており、若干やつれ気味だ。

島の中央にある防災試験センターへの調査を開始した我々は
電子機器が生きており、使用できる事に気が付いた。
この島で何が起きていたか残されているデータを一つ一つ読み上げた。

『第1回バトルロワイアル 参加者72名 優勝者○○○○○ 一族の永遠の繁栄を願いとし帰還する』
『第2回バトルロワイアル 参加者68名 優勝者無し 最後に生き残った一人が隠し持った爆弾を使い主催者を道連れに自爆』
『第3回バトルロワイアル 参加者56名 優勝者○○○○ この技術力を全て自分の物にしたいと願い、次の企画の主催者となる』
『第4回バトルロワイアル―――』

『バトルロワイアル』という単語がデータの中にいくつも浮かび上がった。
このバトルロワイアルによって島の中で殺し合いを続けられていたのだ、それも何度も繰り返されて。
ページを進めていくと、最後に作成された項目に『この島に連れてこられた者たちへ』と書かれたファイルを見つけた。
そのファイルを開くと殺し合いで生き残った人間らしき者のメッセージが記されていた。

108 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:54:17 ID:rHFmitM.
『俺たちはバトルロワイアルという糞ったれな殺し合いゲームに巻き込まれた人間だ。
 みんなで力を合わせて、殺し合いを企てた連中を何とか打倒する事に成功した。
 だけどそれだけではバトルロワイアルは止まらないんだ。よく聞いてほしい』

『この島にはバトルロワイアルを繰り返してきた歴史がある。
 その歴史は運命による力で強制されていたんだ。
 突拍子も無い話で信じられないかもしれない。
 それでもバトルロワイアルを繰り返させようとする力は確実に働いているんだ』

『主催者を殺害してバトルロワイアルは一度終了させた。
 俺たちは10人生き残った。そして脱出するための算段も付いた。その時だ
 この島に眠る超技術を見つけた仲間の一人が突然狂いだして、他の仲間たちを殺しまわった。
 島はバトルロワイアルの破壊を許さなかった。生き残った10人で再び殺し合わせようとした』

『……結局生き残ったのは俺一人だ。
 この異常な技術を使って、逆に殺し合いを妨害してやる。それが俺に出来る運命に対する復讐だ。
 超技術を使い核を作り出した俺は島全土を放射能で覆った。
 参加者同士の殺し合いがお望みなら、参加者以外によって死をもたらされる環境に変えてしまうんだ。
 こんな発想が思いついて実行してしまう時点でもう俺の正気は失っているのかもしれないな』

『いいか?この島に来た人間は一刻も早く立ち去るんだ。
 核が残っている限り、殺し合わせようとする修正力は弱いはずだ。
 殺し合いを望む運命は核の脅威を取り除くために修正が働く。
 体内の免疫が進入した病原菌を除去しようと活動するようにね。
 もし、核の脅威が全て取り除かれたらその時、再びバトルロワイアルは必ず始まる。
 まるで初めから殺し合いを目論んでいたかのように、誰かがバトルロワイアルを運営するだろう。
 そういう運命を背負わされてしまうんだ』

『俺はもう限界だ……。
 沢山の人間の血が見たい。絶望が見たい。死が見たい。
 そんな心の闇が俺の精神を徐々に蝕んでいくのが分かるんだ。
 俺はそんな悪鬼になりたくない。
 人の命を弄びながら生きる怪物になるぐらいなら俺は人間として死を受け入れることにした。
 どうか、こんな悲劇が二度と起こらないよう祈りを込めながら引き金を引こう。
 さよなら愛する者よ。愛する故郷よ。最期にもう一度会いたかった……』

109 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:55:02 ID:rHFmitM.
非常に信じがたい内容であった。
もしや核を解除させないようにと夢物語を並べているのでは?とも思える。
だが妙に信憑性があった。
過去に参加したMI作戦でも歴史通りに繰り返そうとする修正力は確かに感じ取れたからだ。
このバトルロワイアルを繰り返す島の話も本当なのかもしれない。
我々は一通り室内を調べた後、船内にて隊員達にこの情報を伝える事にした。


○月▽日

隊員達を防災試験センターへ集合させた。
実際に彼らにデータを見せることで島の現状をより理解してもらうためだ。
半信半疑だった隊員達も監視カメラによって撮影された過去の殺し合いの映像をモニター越しで目の当たりにして
実際に行われていたことは全員理解できた。
だが歴史の修正力という存在に関しては馬鹿馬鹿しい迷信であると否定する者も少なくなかった。
引き続き核の機能停止を行うべきだと主張する意見と
殺し合いが再び始まる可能性があるから迂闊に解除するべきでないと主張する意見に別れた。

それぞれの意見を聞き入れた提督は、核の無力化を行った後に、回収したデータと共に速やかに本部に帰還する方針を立てた。
軍人として、物理的証拠の無い現状で歴史の修正力を真に受けるわけにはいかない。
仮に歴史の修正力が真実であったとしても素早く撤退すれば、殺し合いが始まるより早く抜け出すことが可能だろう。
きっと提督はそう考えていたのだろう。

倉庫の中にある首輪が発見された。
本来は参加者の首に装着され、中に仕込まれた爆薬で従わない人間を殺害する為に作られていたらしいが
この首輪は爆薬を取り外され、放射能から身を守る力場を発すると説明書に書かれていた。
島に点在するアンテナの一キロ以内にいる限り効力を発揮し、核の機能を解除してもそれは失われないという事が分かった。

これがあれば防護服無しでも活動が可能となり、我々艦娘は艦装を装着する事ができる。
だがもしそれが偽りであった場合、放射能が自らの体を蝕み死が訪れる。
あまりにもリスクが大きい行為であるため、装着を見送ろうとした時
提督は首輪を手に取ると、防護服を外し自らの首へと装着した。
周囲が危険だと静止の声をかけるが、提督は一切迷うことなく地上へと出ていった。
放射能に汚染された大地にその身を晒した提督は大きく深呼吸を数回繰り返す。
軍人達は冷や汗を掻きながら提督の姿を見守った。

数分の時間が流れた、提督の体に一切の変化は見られない。
首輪の効果は真実であった、提督が自ら体を張って真偽を確かめたのだ。
その提督の覚悟に報いるために艦娘達も後に続いて首輪を装着した。
軍人達は最初は拒否を続けたが数十分の時間が流れても
誰一人不調を訴える者がいないと知るや、殆どの人間が首輪を付けての行動を選んだ。
防護服の窮屈さから解放されたのが嬉しいのか、笑顔を取り戻す兵は少なくなかった。
4人ほど警戒を解かず、防護服を徹底して脱ぎたがらない技術者もいたが強要するべきでは無いと彼らの意思を優先させた。

110 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:55:37 ID:rHFmitM.
△月○日

それから二日が経ち、島に設置されたアンテナの核全てを無力化する事に成功した。
艦装が装着可能になったことで水上にあるアンテナも
艦娘達の引率により技術者を効率良く運び出せるようになり短時間で核の解除が可能になった。
その甲斐もあって予定より早く任務を終える事ができた。

あとはこの島から脱出し、得られた情報を本部に報告するだけだ。
島から帰れると知ると、ホームシックにかかった軍人二名と睦月は随分と喜んでいた。
それだけ心細い思いをしていたのだろう。

船が動き出し島から遠ざかり始めたその時、激しい爆発音が起きて船が火の海に包まれた。
弾薬庫に積まれた火薬の数々が爆発を起こしたらしい。
船内の破壊や浸水が激しく、船は1時間足らずで海の底へと沈んだ。
決死の救助を行ったが技術者2名、軍人4名が事故により命を落とした。
提督も人命救助のために単独で燃え盛る通路を突き進んだまま行方不明に。

あの提督が死んだとは思えない。
提督がいつでも戻ってこられるよう最善の行動を取り迎え入れられるように。
生き残った我々は島に再上陸して救難信号を出して、救助を待つことになった。

軍人達の精神状態が非常に不安定になっている。
核を解除したせいで自分たちはこの島に閉じ込められた。
バトルロワイアルが始まろうとしているんだと、嘆く者が後を絶たない。
特に帰りを楽しみにしていた睦月と若い軍人二人は涙を流しながら帰りたいと呟いていた。


△月X日

次の日、一人の技術者が案を持ち出した。
核の解除が原因でバトルロワイアルが始まろうとしているなら
もう一度、装置を起動させれば殺し合いが起こらずに済むのではないだろうか?と。
生き残りたい一心で賛同する者と、迷信のために更に危険を犯すべきでないと否定する者に二分された。
提案した技術者は装置の起動を行うのは自分一人でも構わないと話した。

無力化した核の装置を再起動する案は賛同しかねるが
このままでは隊員達の精神はどんどん悪化するのみだ。
彼らの精神の安定を兼ねて脱出の目途が立つまで、エリア一つ分のみの核を再起動する方針で進められた。

111 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:56:39 ID:rHFmitM.
不慮の事故が起こった場合を想定して、陸地から離れた海上であるМ1の核を再起動する方向へ話が進められた。
起動を行うのは、先ほど案を考えた技術者1名と目的地へと引率するために北上が自ら立候補を挙げた。
大井は北上の動向を強く反対したが、北上本人による真摯な説得を受け渋々と了承した。

我々は海岸にて待機し目的地であるМ1へ向かう二人を見送った。
船内事故で既に6名の命が失われている。
これ以上の犠牲者が出ないようにと神頼みしている兵達もいた。
息の詰まるような緊張状態の中でひたすら二人の返りを待った。
一瞬、思わず目を覆うほどの眩い光が水上から放たれた。
光の後に続いて轟音が響き渡り、押し寄せてくる大波が海岸を飲み込んだ。

М1で設置されたアンテナが消滅している。
核の起動に失敗し爆発が起こったのだ。
死体を確認するまでもなく既に二人の命が失われたのは明白だった。
大井は北上の名を何度も呼びながら、爆心地へ向かおうとした。
М1のアンテナが消滅した今、あそこへ向かえば首輪の効果が発揮されずに放射能をその身に受けることになる。
我々は大井を押さえつけ、冷静さを取り戻すよう説得をした。
大切なパートナーを失ったのは分かるが、だからこそ今は落ち着いて対処しなければならない。
隊員達も落ち着いて考えようと言葉に出して周りをなだめている。
いや、正確には自分自身に言い聞かせているのだろう。
この場にいる全ての人間が恐怖と不安で押しつぶされそうになっているのだ。

船が沈んだ今、寝泊りする場所を失った我々は、廃村へ向かいそこで寝泊りすることになった。
建築物は古いが雨風を凌げる場所はここが一番近く、心身共に疲弊した状態で遠出するべきではないと判断された。
大井は一人にしてほしい。と小さな一軒家に閉じこもった。
一人で落ち着く時間が必要なのだと考え、我々は彼女の意思を尊重した。
現在の死者は8名、これ以上増やすわけにはいかない。
必ず生きて帰らなければ。


△月□日

黎明まで時間が経った時、次々と銃声が鳴り響き、隊員達が目を覚ました。
外へ出ると何者かが銃を乱射して隊員を一人、また一人と命を刈り取っているのを発見した。
暗闇で顔がよく見えない、誰が撃っているのか。
銃口から放たれる一瞬の火が持ち主の顔を僅かに照らし、その謎を明かした。

それは返り血を浴び、狂気の笑みを宿した大井だった。
彼女は対応の遅れた兵士達を次々と射殺し続けた。
凶行を止めるべく威嚇射撃をして説得しようとするが
大井は高笑いを繰り返し、こちらに向けて銃を放った。

陸奥は私を庇い、銃弾をその身に大量に浴びながら艦砲射撃を放ち
大井の胸に風穴を空け、彼女の行動は停止した。
陸奥は致命傷を受けていた、涙を流す私の手を優しく握ると
自分の分まで長く生きてほしいと言い残して、息を引き取った。

多大な犠牲が起こった。
外では大井に射殺された軍人11名、技術者2名と
大井の泊まっていた一軒家に一番近い家の中には
眠っている状態で射殺された軍人8名の死体が発見された。
大井、陸奥を合わせて23名が闇の中で命を失った。

112 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:57:17 ID:rHFmitM.
だがこれで終わりでは無かった。
狂気はまるで流行り病のように伝染していった。
一人の軍人が叫んだ。バトルロワイアルは始まっている。相手を殺さなければ俺たちは殺されると。
銃口を私に向けた。大井の凶行を目の当たりにして、人間よりも力を持った艦娘を恐れたのだ。
赤城は狂乱に満ちた空気を静めるべく説得を始めた。
皆さん運命に負けないで、呪われた歴史を繰り返してはいけない、そう懇願するように叫んだ。

しかし無常にも軍人達の心には届かなかった。
軍人の放った銃弾が赤城の体を撃ち抜いた。
撃たれてもなお赤城は抵抗することなく、説得を続けた。
銃弾が赤城の頭に命中した。脳漿を撒き散らしながら赤城が倒れた。

他の軍人が雄叫びをあげながら赤城を射殺した軍人を撃ち殺した。
それに呼応するように軍人達が次々と銃を構えて無差別な撃ち合いが始まった。
説得が不可能な状態だと察した私は、泣き叫ぶ睦月の腕を掴み逃走しようとすると
一軒家の隅で震えている二人の人間を発見した。
彼らはホームシックにかかった若い軍人達だった。
大井の銃声を聞いてからずっと室内で震えていたのだ。

彼らを見捨てるわけにはいかない。
私が声をかけると最初は警戒していたがなんとか説得に応じて、行動を共にすることが出来た。
二人の若い軍人を連れて廃村から脱出しようとしたところで、背後から銃声が響いた。
廃村で殺し合っていた軍人の一人が私たちを追撃に来たのだ。
このままでは睦月達が危ない。
私が殿として相手を引きつけてる間に、三人は先に逃走するよう指示を出した。
灯台を待ち合わせ場所として伝えた後、威嚇射撃を逃走の合図にして撃ち放った。

威嚇射撃に怯むも軍人は攻撃を止めようとはしなかった。
こちらに戦う意思は無いと伝えるも、全く聞き入れようとしない。
命を奪うしかないのか、決断を迫られた時、軍人が背後からの銃撃で倒れた。
軍人が息絶えるのを確認してから、撃った人物が姿を現した。
彼らは生き残りの技術者だった。
廃村から脱出した技術者の一人が長門を探して追いかけていたのだ。

技術者は、首輪だけでは危険だと言って防護服を渡し着る様に薦められた。
私は技術者の言う通りに艦装を外して防護服を着ると、技術者は伝えたい事があると言って
防災試験センターへと連れてこられた。
睦月達の事も伝えるが技術者が言うには緊急の用事なので最優先して欲しいとのことだった。

113 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:58:16 ID:rHFmitM.
防災試験センターのモニターを覗くと新たな事実が発見された。
地上の大気が時間が経つごとに徐々に浄化されていくのがデータで明らかになっていた。
現段階では首輪や防護服が無ければ、すぐに命が奪われる状況だが
そう遠くない未来で放射能の消えた島になるのは確実であった。

だが良い情報ばかりではなかった。
そんな嬉しいニュースを台無しにして絶望を与えるほどのデータも映し出された。

『第○○回 バトルロワイアル 開始予定 参加者 61名』

今まで無かった項目である。
参加者の欄を覗くとそこには吹雪、金剛、加賀の名前があった。
今までの出来事からして情報は偽りでないと分かる。
この三人が次の殺し合いの参加者に選ばれたのは明白であった。
なんとか止める手立ては無いのか。

核を出来るだけ再起動させよう、と技術者が言い出した。
また爆発を起こすかもしれないが、起きないかもしれない。
どの道、脱出が不可能ならやれるだけのことをやってみたい。
技術者は強い意志で私に言い聞かせた。

私もそれに賛同をした。
途中で諦めていては歴史の流れを止める事など絶対に不可能だ。
私はバトルロワイアルの打破に全力を注ぐ。
このレポートを見ている者は絶対に殺し合いに乗らないでほしい。
そして出来れば、この情報を軍に伝えてほしい。
君たちの無事と勝利を願っている。


「レポートの作成はこれで終わりにしよう。あとは生きて帰れたら続きを……ん?」

新たな情報がモニターに表示された。
そこにはこう書かれていた。

『参加者1名 先行投下開始 世界の意思を阻もうとする者を速やかに排除せよ』

「なんだ……これは……?」

不穏な文章が流れると同時に近くから落下音が響いた。
外へ出た長門が目にした者は巨大な球状の金属の塊であった。

(世界の意思を阻もうとする者、それは私達のことか?ならば、あれは……敵)

防護服を脱いだ長門は艦装を取り付けて戦闘態勢に入り様子を伺う。
すると金属の塊の扉らしき物が開かれ、内部が露わになった。
内部には椅子が有り、それに座っている人物がいる。
その者がゆっくりと起き上がると長門を睨みつけて、憎しみに満ちた唸り声をあげた。

114 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:59:13 ID:rHFmitM.
「――――――■■■■■■■■■■!!!!」
「これは……!?」

全身から邪気に満ちたオーラを放つその者は、黒いフルプレートを全身に着込んでおり
頭部にある視界を確保するスペースからは赤い光を発していた。
明らかに普通の人間ではない。

「■■■■■!!」

言葉にならない唸り声と共に鎧の男は、大地を蹴り一瞬にて長門の眼前にまで迫る。
右腕を使って思いっきりぶん殴る。それは何の技術も込められてない単純な暴力。
ただ圧倒的な身体能力の差によって長門はその攻撃を防ぎきれない。
辛うじて間に合った両腕でのガードすら弾いて腹部へとめり込ませた。

「ガハッ!……くっ、こんなところで私はァ!!」

戦艦級を遥かに凌駕するパワーを持つ存在。
今まで出会ったことの無い強敵だが諦める訳にはいかない。
この負の連鎖を断ち切るまで絶対に倒れない。
砲撃を鎧の男に向けて撃ち放った。

鎧の男は機敏な動きで砲撃を次々と回避した。
相手は力だけではない。
スピードも圧倒的であった。

砲撃を避けながら鎧の男は、球体へと下がっていった。
逃亡を図ろうとするのかと長門は一瞬思った。
それは間違いであるとすぐに気付いた。

「……ッ!?まずい!!」
「――――■■■■!!!!」

鎧の男が球体から取り出したのはМ202ロケットランチャー。
手に取ったそれは、徐々にどす黒く変色していった。
長門は直感で、黒いロケットランチャーは異常であると理解した。
ロケットランチャーが長門に向けられるよりも速く、森の奥へ向かって駆け出した。
木々に囲まれた場所なら、直撃だけは避けられる、そう判断しての行動だった。
間違った判断では無い、普通のロケットランチャーであればの話だが。

放たれたロケット弾は障害物に当たる事無く、慣性を無視した変則的な動きで
木々を躱しながら長門に向かって突き進む。
その弾道は持ち主の意思によって自在に動き回る。
回避しようとも、目標に当たるまで追い続けるのをやめない。
なぜロケットランチャーにそんな超常的な力が備わっているのか。

全ては鎧の男による能力によってもたらされた力であった。
彼は聖杯戦争によってバーサーカーのクラスで召喚されたサーヴァントである。
サーヴァントには宝具と呼ばれる切り札がある。
このバーサーカーが持つ宝具の一つに『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』がある
その効果は自らが手にした物を、己の宝具として支配する事で通常の武器ですら常軌を逸した力を与えることが出来る。

115 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:59:58 ID:rHFmitM.
ロケット弾が木々の隙間を縫うような動きで長門の眼前へと迫った。
直撃は避けられない、と長門が心の中でつぶやいた。
その瞬間、弾頭は空中で爆ぜた。
爆風が長門を包み、衝撃に煽られて彼女の体は吹き飛ばされた。
ロケット弾が長門に直撃することなく、爆発した原因は第三者からによる襲撃だった。

「くたばれぇッ!!!!」

廃村から生き延びた軍人が視界に移ったバーサーカーを敵と見なして銃弾を撃ち放ち
鎧に被弾してバーサーカーの集中力を阻害し、ロケット弾の制御力を奪ったのだ。
軍人は長門支援したのではない。
もし先に見かけたのが長門だったら彼女に銃口を向けていたであろう。

「■■■■■■――!!」

軍人の方へと視線を向けたバーサーカーは攻撃対象を変えた。
銃弾を浴びつつも傷一つ付かないバーサーカーは軍人のいる方向へゆっくりと歩く。

「銃が効かねぇ!?く、くるな化け物ォオオ!!!」

懇願に近い叫び声を挙げながら銃弾をバラめくが、弾薬が空となり
バーサーカーの進行を止める手立ては無くなった。
男は背を向けて逃げようとするがバーサーカーの左手が彼の肩を押さえつけ
強制的にうつ伏せにされる。

「おねがいだぁ……命だけは助けてくれ……殺さないでぎ、ぎゃああああああああ!!!!」

バーサーカーの右腕は軍人の頭部を鷲掴みにして。そのまま上に引き上げた。
頭部は脊髄ごと、胴体から引き抜かれて首から大量の血が噴出した。
右腕に持った頭部を道端に投げ捨てると、長門が逃走した方角を見つめたあと立ち去った。
長門の殺害は後回しにされたようだ。


数時間後……


日が沈み、辺りが薄暗くなっていく中でアンテナに設置された核を再起動している人物がいた。
防災試験センターにて長門と別れて行動していた技術者である。
今の所、核の暴発が起こる事なく一人でいくつもの核の起動に成功していた。

116 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:00:37 ID:rHFmitM.
「これで8カ所目か。これでバトルロワイアルを封じる事が出来ればいいが……ん?」
「■■■■■■!!」
「誰だお前は!?来るな……うわああああああああああああ!!!!」

道中で角材を手にしたバーサーカーは技術者の頭部に向かって振り下ろし
頭蓋骨を砕き、肉片を地べたにバラまいた。
バーサーカーは長門よりも核の再起動を進めている技術者の命を優先して狙わせたのだ。
もっともバーサーカー本人からすれば闘争本能に身を任せているだけに過ぎないのだが
この島でバトルロワイアルを繰り返そうとする歴史の修正力が
無意識の内に、バーサーカーを突き動かしていた。

核を暴発させれば汚染の浄化に更に時間を費やす事になり
参加者同士を殺し合わせる時間が長引いてしまう。
それを解決するためのテコ入れとして一足先にバーサーカーをこの島に投入した。
本能で動き回るバーサーカーは、歴史通りに事を進めるのに御しやすく。
不要な行為を働こうとする人間の駆除を優先させた。
自我の無い怪物達が参加者として呼ばれたのも、それが理由となっている。

「■■■■■■」

技術者を殺害したバーサーカーは歩きだす。
残りの邪魔者を始末させようとする歴史の修正力の流れに引きずられて。


その頃、長門は森の中で意識を取り戻した。
ロケット弾の爆発を受けて吹き飛んだ長門は、後頭部を強く打って
数時間ほど眠っていたのだ。

「……くっ、頭が痛い……意識を失っていたのか」

長門が辺りを見渡すと日が沈みかけていた。
周辺には襲撃者の姿は無い。
何とか逃げ切れたのだと理解は出来た。

肉体の負傷状況を確かめる。
中破しているが艦装は正常に働く。
戦闘の続行は可能だ。

「―――!?睦月達が危ない……」

もし、あの襲撃者が灯台に向かえば待機している若い軍人と睦月の命が狙われる。
長門は急ぎ、灯台へと向かった。
無事でいてほしいと心の中で強く願いながら。

117 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:01:12 ID:rHFmitM.
「はぁ……はぁ……よかった………無事か……」

息を切らしながらも灯台へと着いた長門は
灯台で戦闘が行われた形跡が一切無い所を見て安心した。
睦月達がロケットランチャーを持った鎧の男と遭遇せずに済んだのは不幸中の幸いだった。

彼らの無事を直接確かめるべく、長門は灯台へと入った。
ドアを開けても三人の姿は見えない。
どこかへ行ったのか?それとも奥の部屋で待機しているのか?

「心配するな長門だ!お前たち無事か!?」

返事は無い。
一階にはいないようだ。上の階へ向かい探す。
室内の明かりが二階の部屋にある隙間から漏れている。
三人はそこにいるのか?長門はドアをゆっくりと押して部屋の中へ入った。

「―――ッ!?お……お前たちぃ!!」

そこは無残な光景が広がっていた。
若い軍人二人は、全裸になって睦月を犯していた。
一人は睦月の膣内に挿入して、ひたすら腰を振り続け
もう一人は自らの陰茎を睦月の口内に向け喉元まで押し当てていた。
睦月の意識は朦朧としていて、セーラー服はビリビリに引き裂かれており
服としての役目を果たしておらず
体中に擦り傷や痣が見られ
陰部には大量の血と精液が溢れた跡が惨たらしく残っていた。

彼らは嫌がる睦月にひたすら暴行を加えて
抵抗する気力を奪ってから強姦を繰り返していた。
その睦月の変わり果てた姿を見て、長門は怒りに震えた。

「お前たちが何をやったか分かっているのかァ!!!!」

長門は二人の軍人を思いっきり殴りつけた。
戦艦級の拳をまともに受けた二人は意識を失って倒れる。
怒りに飲まれながらもぎりぎりの所で理性を残していた長門は
彼らを殺さずに気絶させるだけに留めた。

118 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:01:46 ID:rHFmitM.
「すまない睦月……私がもっと速く駆けつけていれば……」
「……………………」

睦月は答えない。
光を失った瞳は、彼らが装備していたアサルトライフルを見つめていた。

「……?何をしている睦月!?」

アサルトライフルを拾い上げた睦月は
気絶している軍人二人に銃口を向けると、そのまま引き金を引いた。
放たれた銃弾は軍人達の体に着弾して命を奪った。

「止めるんだ睦月!!……ぐっ」
「…………うごかないでください」

睦月は牽制するように長門に銃を向けた。
長門に銃を向けたままゆっくりと睦月は部屋を出た。
睦月の後を追う長門、睦月の行き先は灯台の屋上だった。
まさか……と不安がよぎる。
長門は屋上への扉を開けた。
足元にはアサルトライフルが捨ててあった。
睦月は屋上の柵を越えて身を乗り出していた。

「死んでは駄目だッ!!睦月!!!!」
「…………ごめんね………吹雪ちゃん…………」

睦月は柵を握っていた手を放して、身を投げ捨てた。



「………さよ…………なら………」



どさりと命を散らす小さな音が、長門の心に深く大きく突き刺さった。

119 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:03:00 ID:rHFmitM.
「うぐっ……うわああああああああああああ!!!!!!!!
 どうして……どうしてこんなことになってしまうんだぁ!!
 私は……私は皆をたすけたかっただけのにぃいいい!!!!」

今まで気丈に振る舞っていた長門だったが、ついに心に限界がきた。
守ろうとしてきた仲間たちが次々と死んでいく地獄のような世界に
長門の精神も崩壊寸前であった。

「たすけて……たすけてください提督………うう……
 ……まだ挫折するわけにはいかない……吹雪たちを助けなければ……」

涙を流し続けたあと、まだ守らなければならない人物がいる事を思い出した長門は
防災試験センターに向かった。



23時30分 バトルロワイアル開始まであと30分


防災試験センターに到着した長門は、新たなメッセージが届いてるのに気づきそれを開いた。

「まさか……これは提督の……」

メッセージの送信者に提督の名があった。
内容は0時00分にバトルロワイアルの参加者がこの島に搬送されてくる。
私は参加者達に指示を与えて、導いてほしいとのこと。
伝える指示は同封されたメッセージの中に記されている。
そのあとは提督が引き続き、私に指令を出すと書かれていた。

「さすが提督だ。我々から離れた所でそこまでの考えを張り巡らしていたとは……」

もうすぐで0時になる。
今度こそ守り抜いて見せる。


0時00分 バトルロワイアル開始

120 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:03:37 ID:rHFmitM.
「……ふう、彼らに通信は届いたのだろうか?いや、提督の指示に間違いはない。必ず上手く行くはずだ」

今の長門にとって唯一の心の支えは提督だった。
提督を信じることで、精神のバランスが保っていられる状況だった。
長門はもう己のみの力を全く信じられなくなっていた。

その時、防災センターのゲートが轟音と共に破壊された。

「なにごとだ!?」
「――――■■■■■■!!!!」

ロケット弾を撃ち、ゲートを破壊したバーサーカーが現れた。
歴史の修正力が長門を抹消させようとしていた。

「貴様ぁあああああああああ!!!!」

バーサーカーの姿を見た長門は憎しみを露わにして艦砲射撃を放った。
宝具と化した角材を使って、バーサーカーは砲撃を受け止めるも直撃と共に粉砕され吹き飛ぶ。

「お前さえいなければッ!!睦月は死なずに済んだぁああああああああ!!」

バーサーカーが起き上がる隙も与えずに次々と砲撃を放ち続けた。
長門はこの島で初めて、本気で相手を殺害しようとしている。
殺意を込めた攻撃がバーサーカーの肉体に傷を増やしていく。
このままおめおめと倒されてくれるバーサーカーでは無かった。
ダメージを受けつつも起き上がると、長門へ向け走り出し
長門の喉元へ向けて手刀を放った。

長門は体を反らす事で首を掠める程度に抑え
カウンターでバーサーカーの頭部を殴りつけて怯ませた。
これが原因となり勝敗が決まった。

「ぐぐっ……ごほっ!!」

長門の敗北である。
バーサーカーの手刀が長門の首輪に掠り、機能を停止させたのだ。
目や鼻や口から血が溢れ、零れ落ちる。

その時、新たなメッセージが届いた。
提督からである。
長門は助けを求めるようにコンソールに向かい、メッセージを開いて目を通した。

『長門よ 任務ご苦労 ゆっくりおやすみ』

「‥‥な、なぜ‥‥」

提督は知っていたのか?
私があいつと戦い、命を落とすのも。
そんなはずは無い、提督は私たちを助けるために奮闘しているはずだ。

「‥‥これも‥‥なにか考えが、あっての‥‥そうか!私がこの役目になったのは‥‥」

まさか提督はこのバトルロワイアルの主催者になったのか?
主催者である提督に捨て駒として切り捨てられて殺されたのか……。

 誰に看取られることもなく、悲しみと絶望で凝り固まった鬼の形相で、その少女は息することをやめた。


 コンソールだけが、目に悪い光で彼女を照らしていた。

121 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:04:16 ID:rHFmitM.
バーサーカーはゆっくりと長門の死体に近づいた。
長門の体を起こすと、指を長門の胸から体内へと差し込み
ある物を掴み取って引き抜いた。
それは長門の心臓だった。
バーサーカーは長門の心臓を食らい、魔力を補充した。
そして艦装を引き剥がすと、自らの武器として持ち出し
防災試験センターから立ち去った。

【G-5/防災試験センター/1日目/深夜】

【バーサーカー@Fate/Zero】
[状態]:魔力消費(小)、ダメージ(小)
[装備]:М202ロケットランチャー2/4 長門の艦装
[道具]:無し
[思考]
1:本能のままに行動する
※歴史の修正力によって無意識の内に動かされています。
核の脅威が完全に消えない限りは本格的な殺し合いは制限されます。
ただしバトルロワイアルの破綻に関わる行為をした参加者は積極的に狙います。

【主催】

【提督@艦隊これくしょん -艦これ-】

※舞台は『歴史の修正力@艦隊これくしょん -艦これ-』によって殺し合いの歴史を繰り返している島です。
※島には超常的な技術力が眠っており、誰もが主催者になりうる可能性をもっています。
※現在は参加者同士を殺し合わせようとする力は働いていませんが、放射能の汚染が浄化され
島のどこかのエリアにある8カ所の核が全て無力化された時、参加者を殺し合わせようとする修正力が働きます。
※前回バトルロワイアルの参加者及び調査に向かった軍人達の死体が島に放置されています。

 技術者16名 死亡
 海軍中隊24名 死亡

【長門@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】
【陸奥@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】
【大井@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】
【北上@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】
【赤城@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】
【睦月@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】

122 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:05:00 ID:rHFmitM.
投下終了です
展開の都合上、見せしめ枠を少し増やしました

123名無しさん:2015/04/25(土) 03:11:27 ID:1rSSqo5Y
投下乙です。
スゲーことになってんゾ〜これ〜(賞賛)

124 ◆777Wt6LHaA:2015/04/25(土) 03:39:26 ID:YEb88iWY
投下乙です

まさか核と放射線がロワを止める救世主だったとは……
核の総数が8個ということは、バトルロワイヤルの本格的な始動は08:00以降か

125名無しさん:2015/04/25(土) 03:44:34 ID:65kfErB.
アンテナの範囲外に出ると首輪が機能しなくなって死ぬので、アンテナがあるエリアを繋げないと移動できずに8時間以内に全滅する事になりますね。

126名無しさん:2015/04/25(土) 07:12:16 ID:kRi9Ctok
こんな濃くて面白いOP(+補完)を見たのは初めてです
すごい

127 ◆qB2O9LoFeA:2015/04/25(土) 10:10:28 ID:69ZfG7ic
投下乙でした

こういう話好きです、そりゃもう
倒しようのない主催というのもドンピシャです

ただ、睦月のPTSD・レイプ・自殺というコンボは企画的にセーフなのかが課題になるかと
ある意味見せしめの一人ですが、ここは議論は必要になるのではないでしょうか

128名無しさん:2015/04/25(土) 10:22:16 ID:kRi9Ctok
>>125
アンテナはたくさんあってそのうち8個だけ核つきってことじゃね?

129名無しさん:2015/04/25(土) 10:24:00 ID:z4JFCKJU
漫画版バトルロワイヤルではレイプ描写あるけど、キャラを「合法的」に
陵辱する連中が続出しそうな気がするから、個人的には修正するのがいいんではないだろうかと思う。

130名無しさん:2015/04/25(土) 16:33:16 ID:kRi9Ctok
児ポ法等で規制が厳しくなるとリアルで予想されるなか最後の砦であるネット創作物にも自主規制の波が!ただただ悲しい。

131 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 10:13:03 ID:I39YXPGs
投下します。

132 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 10:13:47 ID:I39YXPGs
プロデューサー.1
「あの、すいません。ここがどこか知りませんか?」
「……………………………」
「………あの…」
「……………………………」

懐中電灯片手に深夜に少女にしつこく話しかける男性とそれを無視して歩き続ける少女
まるで悪質なスカウトマンかナンパのような光景だが、話しかけているスーツにメガネの男性
通称「プロデューサー」はいたって真面目であった。
記憶では事務所で仕事を片付けていてそろそろ帰ろうとしていた気がする。
その時、うたた寝でもしてしまったのか一瞬意識が暗転してしまったと思ったら、
気が付け見知らぬ丘に飛ばされていた。見える範囲の周囲には建物はない。標高は低く、遠くに海が見える。
まるで冗談のような現象。自分自身でもこれが現実なのか信じられない。自分は夢でも見ているのか。
あの一瞬のうたた寝のように感じたのは実はもっと長い時間でその間ここまで連れてこられたのか?
現実感が湧かず、酔っているわけでも眠いわけでもないのに、足元はふわふわと感じ、
眼は冷めているのに思考は鈍くなっている。

タブレットを見ると様々な情報が映し出された。曰く「正午になると一つ目の核爆弾が爆発」だの
「近くにいると放射性障害で死に至る」だの、現実離れした言葉も頭によく入ってこない。
ただ首につけられた、外し方もわからない「首輪」だけは妙に冷たい感触を伝えてくる。
そしてタブレットに表示された名簿に載っている765プロのアイドルたちと、かつて961プロにいた天ヶ瀬冬馬。
本当にこんな状況にアイドルたちも巻き込まれているのか?だとしたらなんとかして会って安心させなければ。
すぐにポケットに入っていた携帯も使ってみたが…圏外で全くどうにもならない。
出会う方法も分からず、ふらふらと夜の島(なのだろうか。)の道を歩いていると、
最近の青い街夜灯のような光を見つけ、誘われるようにふらふらと引き寄せられていった。
そこにいたのは、真っ白な顔に鬼火のような光を左目に灯した少女だった。

空母ヲ級.1
彼女の最後の記憶は轟音と光、そして直後に訪れる静寂と闇だった。
彼女は沈んだ。艦を憎悪し沈めることが使命の彼女はその役割を果たせることなく沈んた。
ただ沈む瞬間は憎悪も後悔も、達成感も満足感も彼女は感じなかった。
的確に打ち込まれた駆逐艦の魚雷は、苦しみも伝わる間もなく彼女の意識を暗い海の底へと沈めた。
もしかしたら最早何もできずに沈みながら、苦しむ必要も無くなった彼女はある意味救われたのかもしれない。

意識が戻る
昏い静寂から叩き起こされたにも関わらず、頭は事務的に周囲の状況から拾い集めた情報を処理していき、
ここは島らしいことや、放射能というものが蔓延していることを理解する。
おそらく他の深海棲艦達との通信が通じないのもそれが原因だろう。
だが、そのように拾い集めた情報の他に、彼女はある確信を持っている。
「艦むす」はどこかにいる。
なぜ轟沈したはずの自分が修復しているのか分からないが、自分が再び存在している以上、倒すべき艦むすもどこかにいる。
それは根拠も理屈も何もない、盲信とでも言えるようなものだったが、とにかく彼女はその前提を行動に組み込んだ。

海上戦闘に特化した自分の体は陸上では十分な性能を発揮できない
艦むすを沈めるために彼女は海へ向かって進路をとった。
海では艦むすも陸地より性能が向上するので単純に有利になるわけではないのだが、
これは殆ど海に棲むモノの本能による選択だった。そういうものなのだ。
その彼女に接近する何かを発見し、彼女は一瞥だけする。
「あの、すいません。ここがどこか知りませんか?」
発見した時から感じていたがやはり艦むすではない。艦むすに宿る艦艇の魂を感じない。
 人類。おそらく成体。多分オス。艤装・武装の類なし。
 結論―――脅威なし
彼女は気に留めることなく歩き続ける。
海上を制圧し人類社会にとっての脅威である彼女達だが人間自体に特に興味はない。
彼女達が憎悪(興味)を向け沈めようとするのは艦やその魂を持つ艦むす、その基地等のみ。
彼女達はそういう存在だった。

133 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 10:14:26 ID:I39YXPGs
プロデューサー.2
(もしかして俺、勘違いしてる?この子、恰好が変なだけでこの状況とは関係ないのか?)
そう。勘違いである。
例えばデパートや量販店の売り場で、スーツ姿の客を店員と間違えて声をかけてしまった経験はないだろうか。
また、京都で街中を歩いてる舞妓におおはしゃぎして写真を撮ると、実は舞妓体験をしているただの一般人だったりする。
人は服装や外見に惑わされやすい生き物であり、特に馴れない場所でそれっぽい人をその場に関係ある人物として思い込む事がある。
異常な状況に奇抜な格好で現れた少女に対し、何か知っているのではないかと過剰な期待を抱いてしまったのだ。
少女が無口で迷いもなく歩いていることも、ここに慣れた地元住民のようなものだと思っていたのだが…。
(それにしてもすごい格好の子だなこの子。水着みたいなスーツ着て、顔も真っ白で、油の匂いがするし
 めちゃくちゃ大きな帽子被ってて、目のあたりがライトみたいなので光ってて…。何かのコスプレかな。
 というかこの状況、俺すごく不審者っぽいな…夜だし、警察に会ったら捕まるかも…。)
何も返事をせずズンズン進んでいくヲ級に、今まで5分ほど熱心に、時にはたどたどしい英語も使って話しかけ続けていたのだ。
普段なら最初に無視された時点で話しかけるのを諦めただろう。
だがあまりに異常な状況に彼女を唯一見つけた手がかりのように思って必死になってしまったのだ。
冷静に考えれば単に気味悪がられて無視されているのかもしれない。知らない土地で動揺していたとはいえ、恥ずかしくなる。
もし彼女も自分と同じように巻き込まれたのだとしたらなおさらだ。
他の人を探すか、明るくなるまで待つか、どこか街にまで行く方法はないか…と足を止めて距離をとったところで
少女も、ピタリと立ち止まった。

そしてふらり、とよろけると、
そのまま路上に倒れこんだ。

「どうしました!」

少女の帽子が地面に当たると「ゴン!」という硬い音が鳴り響いた。
どうやら帽子だと思っていたものはヘルメットのようなものだったらしい。
慌てて傍にかけより声をかけるが呻き声がするだけで、懐中電灯で照らされた少女は片側しかない表情で
苦しげな表情を浮かべていた。

空母ヲ級.2
海を目指し歩行していると人類のオスがついてきて何か話しかけてきたが、彼女の眼中にはなかった。
こういうことは海上でもよくあることで、背びれのついた哺乳類が並走してきたり音波を飛ばしたりしてきたものだ。
移動を妨げるべく前に立ちはだかるわけでもないので、特に何もせずに放置して思考に没頭する。

彼女は考える。
海に辿り着くにはまだ時間がかかる。
それまでに自分の身を守るために艦載機の製造を始めるべきだと。

空母ヲ級型の深海棲艦は体内の各種資源を原料に、武装を持ったドローンを帽子のような部分で生み出す能力をもつ。
それぞれ自動的に戦闘や索敵をこなす便利な兵器だが、一体一体は非常に弱いため通常の戦闘では何十体も製造する必要がある。
製造した艦載機は頭上に溜めておき、戦闘時には出撃させるのだ。

艦載機の製造を開始して、まず製造速度が遅いことに気づいた。
一度轟沈した影響がまだ残っているのかもしれない。それでもまず一体を生み出す。
続いて二体目の製造を開始。一体目の時より更に製造速度が遅い。
やはり艦載機を生み出す部位になんらかの障害が発生しているのだろうか?
その時、彼女は何かに気づいた。何か、が具体的に何かは分からない。
おそらく身体に異常が発生しているのだろうが、一体どのような異常が発生しているのか全く判断できない
今までに体感したことのない未知の感覚だった。
二体目が、一体目より時間をかけて完成する。
僅かな時間だけ彼女は違和感の原因のわからないまま三体目の製造を始めるか否かについて逡巡する。
原因も不明、体の不調も多数で対応もできない
この感覚の正体を掴もうとする。艦載機が製造や艤装での移動の際に資源や燃料が枯渇した時の感覚に似ている気がするが、
艦載機の原料は20体は製造できるほどあり、艤装はそもそもこの地に来てまだ使っておらず、燃料の消費などない。

彼女は、得体のしれない違和感より、艦載機が足りないという確実に存在するリスクを減らすことを選んだ。
彼女は知らなかった。その初めての感覚が、一体どのような意味を持つのか。
どれほど危険なサインだったのかということを。

三体目の製造を開始
まるで徐々に体が締め付けられ潰れるような感覚と同時に体の内側が空っぽになっていくような、矛盾した不快感が彼女を襲う
二体目より更に時間をかけて三体目の製造が完了したとき、
浮上と轟沈の感覚が混ざったような感覚が加わり
彼女の意識は飛んだ

134 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 10:15:20 ID:I39YXPGs
プロデューサー.3
「もしもし!大丈夫ですか!」
突然倒れた目の前の少女を道の端に寄せ声をかける。
息はしている。動悸もある。だが突然倒れてぐったりとしたままだ。
少女の体調に対応するかのように、左目の位置で輝く光も遭遇した時と比べて弱弱しくなっている。
貧血だろうか。寝かせた方がいいと思い頭の帽子を外そうとしたが、
どうしても外れないので仕方なくそのまま地面に寝かせる。
携帯で救急車を呼ぼうとするが、
「やっぱり圏外か…。」
その時、うっすらと少女が目を開ける。
「大丈夫ですか?今から人を呼びに行きにいくので、ここでじっとしててください。」
こんな夜中に女の子を一人放置していいか少し迷ったが、この少女、服のせいかもしれないがかなり重い。背負ることは無理だし、
自分1人で誰かを呼びに行ったほうがすぐに人と出会えるだろう。

そうして立ち上がろうとしたプロデューサーの腕を、いきなり少女はガシッと掴んだ。
「痛っ!?」
その力は倒れている少女と思えないほど強い。ひょっとしたら大人の男ぐらいあるかもしれない。
道路脇の乏しい街灯以外に光源の無い闇の中、まるで顔の片側が存在しないように見える少女の眼光を直視し
プロデューサーは一瞬その眼差しになぜかゾクッとした悪寒を感じる。
まるでこの世のものではない、幽霊のような存在を見たような。バカバカしいが例えるならそんな感じ。
目を逸らせなくなったプロデューサーと少女はそのまま見つめ合い


 ぐーーーーー

少女の腹の音が盛大に鳴った
先ほどからの気まずい沈黙(気まずさを感じているのはプロデューサーだけなのだが)は依然そのままだが

 ぐーーーーーーーーーーーーーーー

多分気のせいだと思うのだが、少女の無表情の瞳が何かを訴えているように感じるのは全くの気のせいだろうか。
なんとなーく、事務所に帰ったらラーメンがなくて落ち込んでいる貴音を思い出す。

 ぐーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

空母ヲ級.3
なぜその人類の手を掴んだのか
彼女にも論理的な説明は不可能だろう
ただ、もし彼女が言葉を話せたら、こう言っていたかもしれない。

 ハラ…ヘッタ
 ナンカ…クワセロ…

【深夜:L4。なだらかな丘で北、東に海が見える】
【プロデューサー@THE IDOLM@STER】
[状態]:健康。いまいち状況を理解しきれていない。
[服装]:いつものスーツ姿
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 ポケットに入ってた携帯(通話機能使用不可。首輪のおかげで故障はしていない)
[思考]
基本:765のアイドル達と合流して元の場所に帰る。
1:倒れた少女(ヲ級)を心配。
2:誰か状況がわかる人に会いたい。
3:アイドル達と元の場所に帰る
[備考]時期はアニメ終了後


【空母ヲ級@艦隊これくしょん -艦これ-】
[状態]:無理やり艦載機を製造し、空腹のあまり倒れる。隻眼、初めて感じる空腹に困惑、制限に困惑
[服装]:なし(杖、艤装は体の一部)
[装備]:杖、艤装(体の一部)、艦載機×3(上に収納)、艤装の燃料満タン、艦載機の材料約20体分
    無理をして艦載機を製造したため、早朝まで製造ができません。
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:艦むすを沈める
1:空腹に困惑
2:海に行く(深海棲艦の本能)
3:艦むすを沈める
[備考]時期は吹雪に轟沈させられた後
制限:艦載機の製造は1時間に1つ程度。数は最大で約20まで。
   肉体に制限がかかり、艦載機の製造に大きく体力を消耗し、空腹になる。

爆弾:正午(12:00)にどこかで最初の核爆弾が爆発します。

135名無しさん:2015/04/26(日) 10:17:17 ID:I39YXPGs
投下終了です。
プロデューサーの口調が迷いましたが、女の子でも初対面の人なら普通に敬語だろうと思ってそう書きました。
爆弾を設定しました。

136 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 11:43:50 ID:2tGByUo2
投下乙です。
プロデューサー、空母の餌食にならなくてよかったね。
投下します。

137 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 11:47:40 ID:2tGByUo2
「なんでこんな目に遭わなきゃならねえんだよ」
この俺、ホルホースが溜め息と共に発した第一声はこれだった。
『バステト女神』のマライアと『セト神』のアレッシーがジョースター一行に敗北したことをDIOに報告しに行き、奴にいい加減にジョースター一行を殺しに行ってこいと脅され、奴らのもとへと向かうために準備して眠りについたらこの様だ。
暗殺しに出かけようとしたらいつの間にか放射能だらけの島に隔離されていた。
確たる証拠はねえが、こんなこと出来るのはDIOの野郎くらいしか心当たりはねえ。
殺しに行けと命令された奴にこんなことされりゃ、文句の一つは出るさ。
とにもかくにも、どうやら生き残るためにはこの首輪が必要となるわけで。もし24時間誰も救助に来なければ確実にオダブツで。
「いったいぜんたい、どうしろっつーんだよ」
あまりのどうしようもなさに、またも溜め息をついちまった。

いくら愚痴を零しても仕方ないので、配られたデイパックの中身を確認する。
(非常食と水に、メタルマッチに方位磁針、それにホイッスルと...なんだこりゃ、板?)
この薄っぺらい板は何に使うんだ?機械みてえだが
とりあえず適当にイジッてみると、急に板が光りだした。
「うおっ!な、なんだこりゃ?」
なんだかよくわからないので、しばらく触らずに観察していると、やがて明かりは消えてしまった。
「なんだ、ただのライトか。こんな形にするなら、普通の懐中電灯でも配ればいいものを」
光る板は置いておき、もう一度デイパックの中身を探ってみる。
「おっ、こいつは」
デイパックの奥底で見つけたのは、一本の禁煙パイプ。
ラッキー、ちょうど気分的に禁煙してみようかと思っていたんだ。
「...とはならねえよなぁ。せめて、もう少し食糧があればなぁ」
荷物を詰め直し、何度目かの溜め息をつき、この建物を捜索することにした。

138 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 11:52:46 ID:2tGByUo2
(ちぃ、こうも暗くちゃロクに捜索もできねえぜ)
先の板盤のようなライトを使ってみるが、精々見えるのは手元くらいだ。
ちと勿体ない気もするが、メタルマッチを擦り合わせ、火を起こす。
普段はライター派だからあまり使うことは無いが、一回で無事成功した。
俺の部屋は最上階の三階だったようで、階段は下りしかねえ。
とりあえず片っ端から部屋を探し回っているが、あるのは精々医療器具だけ。その医療器具も放射線のことがあるので、うかつには触れない。
そして、どの部屋も電気が通っていないようで、スイッチを押してもウンともスンともいわない。
そうこうしている内に、俺が辿りついたのは一階の院長室。
そしてこの部屋も探し回るが、やはりなにも無し。
諦めてここから出ようと、火を消そうとしたときだった。



ギシ...ギシ...

床の軋む音が聞こえる。
おいおい、俺以外にも誰かいるってのか?
俺としたことが、考え無しに火を使ったのは迂闊だったか。
反射的に、右手から『皇帝』...拳銃のスタンドの像を出す。
床の軋む音は、院長室の前でピタリと止まった。
考えられるのはふたつ。一つは、俺と同じような被害者。もう一つは、俺をこんなところに連れてきやがった野郎ってことだ。
この際、どっちでも構わねえ。とっ捕まえて情報を手に入れてやる。
扉に向けて『皇帝』を構え、扉が開くのを待つ。
しかし、来訪者は一向に扉を開けない。
気のせいだったのか?いや、そんなはずはないと気を入れなおす。
(なぜ出てこねえ...いいぜ、出てこねえならこっちから向かってやらぁ)
俺が引き金にかけた指に力を込めた時





「あ、あの、誰かいるんですか?私、暁美ほむらって言います。わけがわからないうちにこんなところにきてて、その..」
コンコンと、ドアを叩く音と共に聞こえたのは、可愛らしく幼い声だった。

139 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 11:55:25 ID:2tGByUo2



「暁美ほむらちゃんね。お互い災難だったな」
長い黒髪で、丸眼鏡をかけたこの女の子は暁美ほむらというそうだ。
ふむ、子供とはいえ、なかなかの別嬪さんじゃあねえか。こりゃ、将来に期待だな。
「はい。わ、わたし、病院で寝てたはずなんですけど、いつのまにかあんな球の中に」
「俺も似たようなもんさ。けどまあ、他にも人がいるってのは安心できるぜ」
「そ、そうですよね。友達も巻き込まれてしまったのは残念ですけど、みんなで力を合わせればなんとかなりますよね」
「おおそうさ。だからなにも心配はいらねえよ」
彼女を安心させるための言葉とは裏腹に、俺はとてつもない不安感に駆られていた。

(他に人間がいるだけでなく、この子には知り合いが巻き込まれていただとぉ?いよいよもって胡散臭くなってきたぜ)
もしも自分一人だけなら、最初の通信の言葉から判断して、なにかの事故であることが、納得はできないが理解はできる。
だが、こうも何人も、それも人によっては知り合いが巻き込まれているとなると、もはやただの事故とは思えなくなる。
おまけに、ご丁寧に俺たちを一人ずつあの球体に押し込めた挙句、食糧やらを配る始末。どう考えても人為的なものだ。
それだけじゃあねえ。この首輪、こいつは確かに俺たちの生命線だが、これがまた厄介なシロモノだ。
この首輪は外せば機能を停止する。24時間ぶんしかエネルギーが無いコイツだが、言い方を変えれば、外しちまえば24時間ぶんのエネルギーを確保できるっつーことだ。
と、なるとだ。もし時間切れが迫っても状況が好転しなかった場合、他にいる人間の首輪を奪っちまえば、残った時間だけ生き延びることができるわけだ。
もちろん、時間ギリギリだといくら首輪を回収しても、一分や二分じゃ焼石に水だ。他の首輪が必要かどうかはなるべく早く決断した方がいい。
この島にいったい何人送り込まれてきたのかは知らねえが、俺のような勘のいいやつはこの事実に気付いているころだろう。
ほんと、とんでもねえことに巻き込まれたもんだぜ。

140 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 11:58:06 ID:2tGByUo2
ここまで思考重ねていると、ふと、一つの疑問が生じた。
「ところでほむらちゃん。なんで、友達がここにいるってわかったんだ?」
冷静に考えれば当然の疑問だ。俺もお嬢さんも全く別のところで目が覚めた。なら、なぜ友人がこの島にいると言い切れるのだろうか。
「デイパックにタブレットが入っていたので、それでわかりました。ホル・ホースさんのデイパックにはありませんでしたか?」
「タブレット?」
「これです、これ」
ほむらちゃんが取り出したのは、俺のと同じ機械の板。
「ああ、そいつか。あるにはあるんだが、俺のはただのライトらしいんだ。ほら見てくれよこれ」
横のボタンをカチリと押し、光をつける。その行程を何度か見せつけると、ほむらちゃんは理解したかのように、ポンと手をうった。
「ひょっとして、タブレットを知らないんですか?」
「...えっ?」


「これをこうすれば...はい」
俺のタブレットなるものを、彼女は説明を加えながらいとも簡単に使いこなしてみせた。
「すげえな。ほむらちゃん、こういうものには強いのか」
「そういうわけじゃないんですけどね。結構流行ってますし」
彼女の手際には素直に感心したが、同時にまた些細な問題が浮かんできた。
(妙だな...いくら最新の機械とはいえ、俺が知らないはずはないんだがな)
そう、俺はホルホース。世界中にガールフレンドがいるし、殺し屋なんてやってるもんだから、かなりの情報網はあると自負している。
なのに、この少女が知っていて、俺が知らないとはどういうことだろうか。
「えと、この名簿ってファイルにみんなの名前があったんですけど」
「どれどれ」
そんな疑問も、名簿を見た瞬間に見事に吹き飛んでしまった。

141 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 12:00:08 ID:2tGByUo2
「なんじゃあこりゃああ!?どうなってんだよこいつはよぉ!?」



思わず、そんなことを叫び出してしまったほどのびっくり仰天ニュース。
「ど、どうしたんですか?」
「い、いやあ、慣れない機械だからよ、つい驚いちまって...最近の機械はスゲエんだなぁ〜」
「は、はぁ...」
なんとか誤魔化したが、内心はめちゃくちゃビビッてた。
この名簿を見る限り、俺の知る名前は全部で5人。
空条承太郎とJ.P.ポルナレフ。
まさか、俺が狙うべき敵であるこいつらも巻き込まれていたとは。この二人、特にポルナレフには会いたくねえ。
生きていたとはいえ、目の前でアヴドゥルを撃ったことは忘れてねえだろうし、なんといっても、俺はポルナレフの妹を殺した男の相棒だった。ポルナレフは俺と出会えば、即座に殺す気でかかってくるだろう。
ラバーソウル。
確かこいつは、承太郎に再起不能にされたはずだが、なんでいやがるんだ。
こいつは強さは本物だが、まず信用できねえ。奴も殺し屋の端くれだ。おそらく首輪のことは勘づいているだろう。一時的には協力できるにしても、俺たちの首輪やら食糧やらを奪うために、隙を突いて殺しに来ることはほぼ間違いない。
そして、最もここにいちゃいけねえ奴らがいる。
それは、俺の元相棒J・ガイルの旦那とその母親エンヤ婆だ。
J・ガイルは強姦だの殺人だのを好き放題やる男だ。そんな奴と組んでいたことが知れれば、俺の立場はかなり悪くなる。それに、奴の性格上、助けに行くのが間に合わなかったことを逆恨みして俺を殺しにきても不思議じゃねえ。
エンヤ婆に至っては、俺がJ・ガイルの手助けをしなかったと勘違いしているため、俺を必ず殺そうとする。事実、一度殺されかけたし、疑いを晴らそうにも話が通じねえ。
だが、J・ガイルは既にポルナレフに殺され、エンヤ婆も肉の芽の暴走で死んだはずだ。
それがここにいるってことは...間違いねえ。疑惑は確信に変わった。
なにが目的かは知らねえが、この件に関してDIOは必ず一枚噛んでいる。

142 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 12:05:32 ID:2tGByUo2
奴は吸血鬼だ。今はほとんどやっていないが、昔は屍生人を作っていたと聞かされたことがある。館にいた"ヌケサク"とかいうあだ名の自称吸血鬼がいるが、おそらくやつがそうだ。
J・ガイルとエンヤ婆がその屍生人ならば、ここにいることも矛盾はない。だが、"ヌケサク"がそうであるように、自我までは完全には無くならないようだ。
結論、俺の知り合いはほぼ全て敵。協力なんてできるわけがねえ!
ほむらちゃんと違って信頼できるお友達がいねえんだよ、俺には!
かといって、奴らと遭遇した時に勝てるか?いや、無理だ。
タイマンならほぼ無敵といっていい承太郎。肉を己の身に纏わりつかせれば物理攻撃に対して実質無敵のラバーソウル。光速で動くスタンドを使うJ・ガイル。実体の捉えられない霧のスタンドを使うエンヤ婆。
どいつもこいつも俺とは相性が最悪だ!かろうじてポルナレフには勝機があるが、奴も奴でかなり手強い。接近されればまず勝てないし、俺のスタンドのタネも見られちまってるしで、少なくとも無傷ですむとは考えにくい。
こういう状況をなんつーんだっけ?ああ、そうだ。昔の言葉でいう、四面楚歌ってやつだ。
...い、いや、まだ希望がないわけじゃあねえ。
こうなれば、俺が生き残る手段はひとつ。どうにか周囲を利用して、目立たず地道に行動し、23時50分を待つしかねえ。放射能さえやりすごせば、あとは正義感の強い奴らを言いくるめればなんとか...
とはいえ、連れが女の子一人じゃ心もとない。なにより、俺は女には誰よりも優しい男。美人だろうがブスだろうが尊敬しているからだ。利用もするし、嘘もつくが、なるべく女は死なせたくはない。
災難に縁も所縁もない砂漠のオアシスなら喜んでエスコートするところだが、生憎この島は猛獣だらけのジャングルでさえ裸足で逃げ出すほどに危険な島だ。女の子を矢面に立たせるのは論外だが、俺が先導するのもマズイ。
どうにか頼れる男を探し出し、俺たち二人のリーダーとしたい。行動しているのはあくまでそいつで、俺たちはついて行っているだけ。そうすりゃ、あまり目立つこともないだろう。
俺は誰かと組んで初めて真価を発揮できる男。№1より№2。それが俺の人生哲学だ。文句あっか!


「あ、あの、ホル・ホースさん」
「なんだ?」
「ここ、病院なんですけど、近くにアンテナがありますよね」
「そうだな」
「一時間ごとに島の端からアンテナが爆発するって書いてあるんですけど、ここが一番最初みたいです」
「...にゃにいいいい!?」


あ、危なかった。タブレットの使い方を教えて貰ってなけりゃ何も知らずにうろついてオダブツの可能性は大だったぜ。
まったく、ツイてるのかツイてねえのか...ああ、どうにか生き延びてえなぁ。



【I-8/病院/一日目/深夜】

【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]健康
[服装]普段のカウボーイスタイル
[装備]禁煙パイプ(支給品)
[道具]支給品一式
[思考]
基本:どうにかして生き延びてこんな島からオサラバしたい。死にたくねえんだよ、俺は!
1.知り合いには遭遇したくない。(特に承太郎、ポルナレフ、エンヤ婆)
2.ほむらと共に、頼れる『相棒』を探す。また、ほむらと行動することによって自分は無害であることを周囲にアピールする
3.余裕があればほむらの知り合いも探す
4.女はなるべく死なせたくない。


※参戦時期は、DIOの能力を見せつけられてから、ジョースター一行を倒しにいくために移動している最中からです。
※この島での出来事は、DIOが一枚噛んでると疑っています。
※J・ガイルとエンヤ婆については二人とも屍生人だと思っています。

143 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 12:08:17 ID:2tGByUo2
魔女...それは絶望を撒き散らす災厄の使い。そして、絶望に沈んだ魔法少女たちが最後に成り果てる呪われた姿。
かつて私は幾度となく同じ時間を繰り返し、その残酷な運命に抗おうと戦った。
そして最後は
一人の少女の犠牲によって
希望と絶望を巡る残酷な連鎖は断ち切られ
世界は新しい理へと導かれた
...そう、導かれたはず、だったのに...




ど う し て こ う な っ た。


気が付いたら、いつの間にか黒い球体に押し込まれていて、核がどうのとか首輪がどうのとかわけのわからないことになっていた。
消える直前に、まどかがリボンを託してくれたのは憶えている。そしてまた会おうと約束したことも憶えている。
その結果がこの様だ。
とりあえず状況整理をするために、荷物の整理をして、入っていたタブレットを弄ってみれば、上がってきたのは多くの名前。
調べてみると、なんとこの島には61人もの人間が集められていた。
そして、その中には見知った名前が4つ。
美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子...そして、鹿目まどか。
まどかがここにいることは、胸が締め付けられる想いだったが、同時に疑問も湧いてきた。

144 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 12:14:33 ID:2tGByUo2
世界の改変が進む最中、インキュベーターの声は、『まどかは全ての時間軸から消え去り、誰も認識できないし干渉することもできない』と告げた。
つまり、誰もまどかを知るものはいないはずなのだ。
なのに、ここにいるというのはどう考えても矛盾している。
...いや、この『鹿目まどか』が私の知る『鹿目まどか』と同一人物だとは限らない。
魔法少女とも見滝原市ともなんの関係もない『鹿目まどか』という同姓同名の人間かもしれない。むしろ、そちらの方が可能性は高い。


とにかく、いまは情報がほしい。
とりあえず辺りを散策すること約10分。見えてきたのは、年季が入った古病院。
MAPを見返してみると、ここの近くにはアンテナがあるようだ。
一時間ごとに島の端からアンテナは爆発を起こすと書いてあるが、どうやらここが一番最初に爆発するらしい。
とはいえ、この情報を信じれば、爆発までにはまだ時間があり、15分もあれば余裕で爆発圏外に出れるので、今の内に調べれることは調べておくことにした。
だが、病院へと入る前に気付いたのだが、棟内三階がわずかに明るくなった。
どうやら、中にいる何者かが火を使ったようだ。
私は近くの木に身を潜めながら、その灯りの主のあとを目で追うことにした。



灯りの主は、どうやら片っ端から部屋を探し回っているようだ。
と、すると、あの通信の主が生存者を探し回っているのか、それとも他に巻き込まれた被害者の60人の内の一人か...
なんにせよ、接触する価値はありそうだ。灯りの主が一階に下りた頃合いを見て、私も病院へと足を踏み入れる。
とはいえ、今までの時間軸とは一味もふた味も違う。今までの接し方だと、あの優しいまどかにさえ警戒されていた。今までで一番警戒されなかったのは...
その結論に辿りつき、溜め息をつきながらデイパックを探る。
(まさか、またあの頃に戻る必要があるなんてね)
取り出したのは、誰の物かは知らない丸眼鏡。掛けてみると眩暈がした。度が合っていないぶんは、魔力で補おう。
今の私は、無力でなにもできない、大嫌いなあの頃の私だ。
意を決して、院長室のドアを叩く。

「あ、あの、誰かいるんですか?私、暁美ほむらって言います。わけがわからないうちにこんなところにきてて、その..」



【I-8/病院/一日目/深夜】



【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康
[服装]:見滝原中学の制服
[装備]:ソウルジェム(指輪形態) 寺井洋一の眼鏡@こちら葛飾区亀有公園前派出所
[道具]:支給品一式  その他不明支給品1〜2
[思考]
基本:とにかく情報を集める
1.とりあえずまどかを保護する
2.無力な少女を装い、ホル・ホースを利用してとにかく情報を集める。



※参戦時期は、最終話で概念となったまどかにリボンを託された直後からです。世界が改変しきる前です。
※現在、まどかのリボンは持っていません。会場内のどこかにあるか、他者の支給品に紛れている可能性はあります。
※まどかの存在に疑問を抱いています。シャルロッテに関しては、名前を『お菓子の魔女』と認識しているため、魔女だということに気付いていません。
※使える魔法は時間停止の盾です。制限の為、時間を撒き戻す能力は使えません。また、停止できる時間にも限界があります。

145 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 12:19:42 ID:2tGByUo2
投下終了です。
タイトルは『ホル・ホースと暁美ほむら』です。
>>142の一部が文字化けしていますが

�・1より�・2→ナンバー1よりナンバー2 です。

最初の起爆場所を設定しました。
誤字・脱字・その他問題があればご指摘お願いします。

146名無しさん:2015/04/26(日) 13:07:13 ID:CwsCJBRU
投下乙です

ヲ級は一体どうなるんだと思ったが艦娘限定マーダーか
最初の爆発は12時からって事だけど「1時間ごとに爆破する」と明言してるOPと矛盾してない?


>ホルホースと暁美ほむら
確かにホルホースはビックリするぐらい四面楚歌だな
でも首輪のエネルギーに頭が回る辺り流石殺し屋と言ったところか

147名無しさん:2015/04/26(日) 13:53:14 ID:Jr4PnYUs
投下乙です

艦むすと遭遇しない限りはヲ級もおとなしくしてるだろうし、プロデューサーはひとまず安全そう
ほむらとホルホースは実はほむらのほうが危ないのか

爆発は一時間に一発と言っているので、では最初の爆発を二つの投下話から【I8病院付近で12時に爆発】としてそこから一時間に一発ずつ爆発していくのはどうでしょう
こうすると参加者に【半日以内に島の中央部に移動する】という目的を持たせられますし

148 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 14:48:37 ID:I39YXPGs
>>146
1時間ごと、というのがいつからなのかわからなかったので12時から1時間ごとに、13時、14時…19時にしました。
参加キャラが状況を理解したり、話し合ったり、または戦ったりする時間があったほうがいいかと思ったので。

149名無しさん:2015/04/26(日) 15:21:46 ID:CwsCJBRU
>>148
なるほど
てっきり1時から爆破だと思い込んでました
となると早速作品同士の矛盾が起こってしまったけどどうしたものか……

150 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 16:17:51 ID:I39YXPGs
まだ仮投下の段階ですので変えるのは可能です
(私の場合1文消すだけですし…)
とりあえずもう1日様子を見たい…
予約していらっしゃる方は爆破にどのくらい触れていらっしゃるのか…
できるだけ全員のつじつまが合うようにしたいところです

151 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 23:48:22 ID:I39YXPGs
爆発時間への言及を削除して投下しました。

152 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/27(月) 02:20:12 ID:oePjqcqg
仮投下スレに投下したものに微修正を加えて投下しました。
あってもなくてもいい程度の修正ですので、気にしないでください。
例)ホル・ホースの状態表の思考欄の追加
などです

153 ◆fuYuujilTw:2015/04/27(月) 19:33:52 ID:RG0vsj1k
投下します。

154オリンピックにゃまだ早い ◆fuYuujilTw:2015/04/27(月) 19:35:59 ID:RG0vsj1k
「なんなんだよ……」

日暮熟睡男はこの訳の分からない状況に戸惑いを覚えていた。

目が覚めたら民宿のような建物の中にいて、首には首輪がつけられている。
確か最後の記憶は、火星で眠りについたものだった。
両さんだったら、中川さんの力を借りて自分を起こしにくることは容易いだろう。
とりあえず、今の状況を知ることが先だ。

「……おかしいな」

うまくいかない。
起きたばかりだから、なまっているのだろうか。
気を取り直し、ディパックの中を確認する。

「なんだこれ……」

見覚えのない機械。
透視を試みたところ、非常に複雑な構造をしているようだ。

「よく分かんないや……」

水に食料、メタルマッチ、方位磁石、紙切れ。
まるで遭難したみたいだと思った。

そしてなぜか週刊誌。随分と美人な人が表紙を飾っている。
どうやら歌手のインタビューらしい。
中身を見てみる。
自分が知らない間に政権も交代したらしい。

「!!」

ある箇所に目が止まる。

155オリンピックにゃまだ早い ◆fuYuujilTw:2015/04/27(月) 19:37:52 ID:RG0vsj1k

「……またか……」

怒りがふつふつと涌き起こる。
ここがどこなのか、そんなことはどうでもよくなった。
ただ怒りだけが心を塗りつぶしていくのだった。
オーラが体を包んでいく。
大きな音と共に、日暮のいる部屋が滅茶苦茶になっていった。


つけるだけで治る?新薬認証まであと半年!本当に効くか、と題された記事は
日暮に大きな勘違いを生んだ。
今が2011年であるという勘違いを。

【G-3/民宿内部 /一日目/深夜】

【日暮熟睡男@こちら葛飾区亀有公園前派出所】
[状態]:暴走
[服装]:パジャマ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、週刊現代の真実@THE IDOLM@STER
[思考]
基本:怒り
1:怒り
2:怒り
3:怒り
[備考]
*参戦時期はアニメ第357話以降。
*火を見ると瞬間移動します。
*ギャグ補正は解除されています。

能力の制限について
・修正力の影響で未来の予知は出来ませんが、
 誰かが近づいてくることを察知する程度の能力はあります。
・テレポーテーションは最大5m程度です。
・念力は本気を出せば人をバラバラにすることの出来る程度の威力です。
・エネルギー光線の射程は10m程度。雷に撃たれる程度の威力があります。
・地面から最大で1m程度浮くことが出来ます。
・首輪を透視することはできません。

作中の年代について
こち亀第357話の年代は2004年となっています。
アイマス第1話では2011年のカレンダーが登場しており、第22話がクリスマスの話であることから、
「週刊現代の真実」が登場した第21話時点ではまだ2011年であることが分かります。

156オリンピックにゃまだ早い ◆fuYuujilTw:2015/04/27(月) 19:38:30 ID:RG0vsj1k
投下を終了します。

157名無しさん:2015/04/27(月) 21:20:52 ID:yPNuVyi.
投下乙です
やっぱりオリンピック前から参戦かー
にしても能力はがチート過ぎて笑うわwwww

158 ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 00:03:47 ID:qTWNeUvc
李小狼、キャスターを投下します

159リトルボーイfat.‥‥ ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 00:08:14 ID:qTWNeUvc



 李小狼は頭を振った。

 気絶していたのか寝過ぎたのか、それはわからないが、微かな衝撃と音を感じて目覚めたとき自分が真っ暗い空間にいることに気づいた。
 立ち上がろうとしてよろける。立ち眩みのような体のダルさと自分がおかれている状況をいぶかしんでいると、今度は扉のようなものが開かれた。

(‥‥なんだ‥‥これ‥‥?)

 意味不明。

 全くわけのわからない状況にとりあえず自分の頬をつねってみる。痛い。

(‥‥夢じゃない、のか、それなら。)
「クロウカード‥‥?」

 とりあえず最初にクロウカードを疑ってみる。意識を集中させれば、幻や結界の類いに近いものは感じる気がする。だがしかし、同時に何かが違うとも感じた。

(周りを調べるか。)

 足下にあったハデなデイパックを掴んでドアから外に出る。オレンジ色のそれはいかにも『非常用』という感じがして、なにか災害にでも巻き込まれたかのような感じがした。

 と、そのときだった。
 足にあたるデイパックの感覚に思わず足を止める。そのまま外側から確かめると、それが一度は触れたことのあるもののように思われた。独特なラッパのような形のそれに、足を止めてしばし考える。頭に思い浮かんだのはある道具だ。もしこれが小狼の想像どうりの物ならば、それはこの状況にうってつけのアイテムと言える。

「開けていい、よな‥‥?」

 しかし小狼は迷った。
 気がつけば見知らぬところにいた自分。その側にあったそれは、あまりにも怪しかった。ハデなオレンジ色もどことなく毒キノコや毒ヘビを連想させる。そもそも自分の物でもないカバンを開けるのはどうかというのもある。

 手に取り考えること一分弱。「非常時だから」と自分を納得させて、意を決して開けた。

「ふぅ‥‥やっぱりこれか。」

 どことなく声に安堵が交じる。予想どうりの形をしたそれ����拡声器を手に取ると、小狼はトリガーを引いた。

160リトルボーイfat.‥‥ ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 00:11:11 ID:qTWNeUvc



 李小狼は頭を振った。

 気絶していたのか寝過ぎたのか、それはわからないが、微かな衝撃と音を感じて目覚めたとき自分が真っ暗い空間にいることに気づいた。
 立ち上がろうとしてよろける。立ち眩みのような体のダルさと自分がおかれている状況をいぶかしんでいると、今度は扉のようなものが開かれた。

(‥‥なんだ‥‥これ‥‥?)

 意味不明。

 全くわけのわからない状況にとりあえず自分の頬をつねってみる。痛い。

(‥‥夢じゃない、のか、それなら。)
「クロウカード‥‥?」

 とりあえず最初にクロウカードを疑ってみる。意識を集中させれば、幻や結界の類いに近いものは感じる気がする。だがしかし、同時に何かが違うとも感じた。

(周りを調べるか。)

 足下にあったハデなデイパックを掴んでドアから外に出る。オレンジ色のそれはいかにも『非常用』という感じがして、なにか災害にでも巻き込まれたかのような感じがした。

 と、そのときだった。
 足にあたるデイパックの感覚に思わず足を止める。そのまま外側から確かめると、それが一度は触れたことのあるもののように思われた。独特なラッパのような形のそれに、足を止めてしばし考える。頭に思い浮かんだのはある道具だ。もしこれが小狼の想像どうりの物ならば、それはこの状況にうってつけのアイテムと言える。

「開けていい、よな‥‥?」

 しかし小狼は迷った。
 気がつけば見知らぬところにいた自分。その側にあったそれは、あまりにも怪しかった。ハデなオレンジ色もどことなく毒キノコや毒ヘビを連想させる。そもそも自分の物でもないカバンを開けるのはどうかというのもある。

 手に取り考えること一分弱。「非常時だから」と自分を納得させて、意を決して開けた。

「ふぅ‥‥やっぱりこれか。」

 どことなく声に安堵が交じる。予想どうりの形をしたそれ━━拡声器を手に取ると、小狼はトリガーを引いた。

161リトルボーイfat.‥‥ ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 00:21:11 ID:qTWNeUvc



(使わなきゃ良かった‥‥)
「少年、怖がらなくていい。私もこのような異常な状況には少し心得がある。今は、あの声の言うとうり島の中央へと向かうのが賢明だろう。」

 廃村で拡声器を使い周囲に呼びかけた小狼。それから数分で一人の男に遭遇した。長身でオールバック、そして目と目が離れすぎている独特な顔。そしてなりより、剣呑で異様な雰囲気の男。

「おお、名乗りを忘れていた‥‥私は、青髭。こちらの名前で呼ばれるほうが多いので、君もこの名で呼んでくれたまえ。」
「‥‥リ‥‥レイ・シウラァン。」
「レイ‥‥いや、東洋なのでシウラァンが名前か‥‥よろしく、シウラァン。」
「よ、よろしく‥‥」

 青髭、ことジル・ド・レィ。第四次聖杯戦争においてキャスターのクラスで召喚され、中盤で脱落しながらも冬木市を混乱に追いやったサーヴァント。
 その男が小狼が、この不可思議な状況で巡りあった人物だった。

(なんなんだコイツ‥‥人間か?)

 思わず小狼は心の中で愚痴を言った。否、それは本人にもわからない嫌悪感の現れだった。男からでる雰囲気、佇まい。その全てが小狼に、最大限の警戒を強いていた。
 突発的に偽名を名乗る━━もっともそれは、単に読み方の違いではあるが━━という、普段ならまずしないような行動。
 それをせずにはいられないほど、全身全霊をかけて男に相対していた。

162名無しさん:2015/04/29(水) 00:23:39 ID:l9x/zq42
いやよく読め、飛ばしてないよ
すげえわかりづらいけど

163名無しさん:2015/04/29(水) 00:34:12 ID:2CeLpKYI
ジル・ド・レェですよ

164リトルボーイfat.‥‥ ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 01:13:21 ID:qTWNeUvc
すぃません最後のレスが投下されていませんでした。キャスターの部分と共に投下します。

165リトルボーイfat.‥‥ ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 01:14:50 ID:qTWNeUvc



(使わなきゃ良かった‥‥)
「少年、怖がらなくていい。私もこのような異常な状況には少し心得がある。今は、あの声の言うとうり島の中央へと向かうのが賢明だろう。」

 廃村で拡声器を使い周囲に呼びかけた小狼。それから数分で一人の男に遭遇した。長身でオールバック、そして目と目が離れすぎている独特な顔。そしてなりより、剣呑で異様な雰囲気の男。

「おお、名乗りを忘れていた‥‥私は、青髭。こちらの名前で呼ばれるほうが多いので、君もこの名で呼んでくれたまえ。」
「‥‥リ‥‥レイ・シウラァン。」
「レイ‥‥いや、東洋なのでシウラァンが名前か‥‥よろしく、シウラァン。」
「よ、よろしく‥‥」

 青髭、ことジル・ド・レェ。第四次聖杯戦争においてキャスターのクラスで召喚され、中盤で脱落しながらも冬木市を混乱に追いやったサーヴァント。
 その男が小狼が、この不可思議な状況で巡りあった人物だった。

(なんなんだコイツ‥‥人間か?)

 思わず小狼は心の中で愚痴を言った。否、それは本人にもわからない嫌悪感の現れだった。男からでる雰囲気、佇まい。その全てが小狼に、最大限の警戒を強いていた。
 突発的に偽名を名乗る━━もっともそれは、単に読み方の違いではあるが━━という、普段ならまずしないような行動。
 それをせずにはいられないほど、全身全霊をかけて男に相対していた。

166リトルボーイfat.‥‥ ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 01:16:25 ID:qTWNeUvc



(こんなに怯えて‥‥まあこのようことになっては無理もないか‥‥)

 一方のキャスターは怯えている理由が自分にあるとは気づかずそんなことを考えていた。
 もちろん、普段の彼ならば自分に向けられるその感情を察しないはずがない。だが、それは小狼に対しては当てはまらなかった。

 理由はいくつかある。

 一つはキャスターから見れば、肉付きから小狼が子供という範疇に入らないと判断されたこと。
 一つはやはりキャスターから見れば、その精神性が子供とは言いがたいものがあるということ。

 ようするにストライクゾーンから微妙に外れているのである。

(しかし、常人なら震えて何もできなくなるのか‥‥?それなら、仮のパートナーとしては、合格か‥‥私の目も曇ってはいないようだ‥‥)
「シウラァン、実は私はまだこの鞄を改めていないのだ。互いに何を持っているかを、ここで確認するというのはどうだろう?」
「(何が狙いだ)!‥‥いや‥‥(断るのは怪しいよな)‥‥わかった。やろう‥‥」
「うむ、それではさっそく。」
(ここは年長者が先導せねばな。)

 小狼が自分を警戒していることに気づかず、キャスターは話を進める。
 小狼もキャスターの言っていること事態はおかしいと言えるようなものはなく、従うしかない。

(落ち着け‥‥怪しいけど、怪しいけどいい人かも‥‥)
(リュウノスケ、あなたも巻き込まれているかもしれませんね‥‥確認する手がないのがつらい‥‥)

 全く心が噛み合わないまま、二人は手近な廃屋に入り支給品を確認し始めた。


 と、その時だ。

 小狼とキャスターはほぼ同時にあるアイテムを手に取った。見覚えのないそれに、思わず互いに顔を見合わせる。

「あの、これって‥‥」
「シウラァン、一ついいかね?」
「「この板はなんだ?」」

 同時に取り出したタブレット。
 それについての疑問が、二人が初めて心を通じさせたものだった。



【I3/廃村/1日/深夜】

【李小狼@カードキャプターさくら】
[状態]:キャスターへの生理的な嫌悪と無自覚な怯え、強いストレス。
[服装]:制服。
[装備]:なし。
[道具]:デイパック一式(内ランダム支給品の一つは拡声器)
[思考]
基本:この男(キャスター)は信用できない‥‥
1:どうしてこんなことに‥‥
2:出来ればキャスターと離れたい。
[備考]
●出展時期は少なくとも四年生の頃よりあとです。
●キャスターとの接触が心理的な悪影響をもたらしています。
●キャスターの名前を『青髭』で認識しています。
●タブレットがなんなのかがわかりません。
●最初の放送を聞き逃しました。

【キャスター@fate/zero】
[状態]:魔力パスなし
[服装]:いつものアレ
[装備]:なし
[道具]:デイパック一式
[思考]
基本:まずは状況確認。
1:これ(タブレット)は一体?
2:リュウノスケが巻き込まれていないといいのですが‥‥
3:とりあえず、島の中央へ行きますか。
4:李小狼はとりあえずの同行者たりえると判断。
[備考]
●李小狼の名前をレイ・シウラァンと発音します。
●タブレットがなんなのかがわかりません。

167 ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 01:19:42 ID:qTWNeUvc
投下終了です
キャスターの真名を間違えたこと、ならびに投下の遅延を発生させてしまい申し訳ありませんでした。

168 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 13:52:50 ID:Z.vv4No2
仮投下します

169 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 13:53:44 ID:Z.vv4No2
「マミさん!」

少女は沈んでいた顔を一気に明るくしてマミに抱き着いた。
豊満な胸に少女の顔が沈み込む。

「まどかちゃん、よかった…」

マミはまどかの頭を一撫ですると、ほぅっと一息をつく。
とにかくもマミは不安であった。
目が覚めればいきなり森の中。
しかも核爆弾が投下されたことを放送され、放射線から身を守る首輪のバッテリーは残り一日分。
冗談としか思えない、夢だと信じたい。
そんな言いようのない焦燥と恐怖、叫びだしてどこかへ飛んでいきたいとさえ思った矢先の邂逅である。
我儘すぎるが、誰かとこの恐怖を共有したかった。
孤独を紛らわせ、忘れたかった。
そしてそれが叶ったとき。
巴マミは鹿目まどかを絶対に守ると、そう誓った。

「もう絶対にマミさんと離れないから! だから…」

自分の心を見透かされたように、それは自分の台詞じゃないかと思うほどに。
まどかの言葉はマミの心を代弁した。
ただ、まどかの目には恐怖ですがる者とはまた違う感情が込められていたのだが、マミにそれに気づく余裕は無かった。
暖かく、やさしく強く抱きしめあっていた二人であったが、不意にまどかの体がぶるっと震えた。

「…あの、マミさん」

前言を撤回することの恥ずかしさか、生理現象を告げる恥ずかしさか。
マミはなんとなく本意を察してまどかを解放した。

「あぁ、うん、ほっとしたからね」
「あ、はははは…すぐ戻りますから!」

言ってまどかは森の茂みの中へと駆けていった。
夜の森にまた一人取り残されたマミではあったが、先ほどまでとは全く違う安定感を持っていた。
だから多少待たされていても立ち続けられていた。
だからどれだけ時間が経っていたのか分かっていなかった。
やがて茂みが動く。
待ち人来る。
そう思って振り返ったマミが観たのは山のように大きな男の姿であった。

170 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 13:55:21 ID:Z.vv4No2
「やぁお嬢さん。 俺の名前はラバーソール。 あなたは?」

茂みから出てきたのは、オールバックのやや残念なハンサム顔の男である。
自信たっぷりに表情豊かに聞いてくるフレンドリーさはナンパでもしてるかのようだ。
異様なのはその身長。 ヒグマかと思うが程のデカさ。 パースが狂ってるとしか言いようがない。

「わたしは巴マミ。 …まどかさんを、女の子を見かけませんでしたか?」

マミは突然、大男がやってきた方向へと駆けて行った少女の消息が急に気になってきた。
いやな予感がする。
安心したからと言って目を離すべきではなかった。
そればかりではなくそっぽを向いて安心感に浸っている場合ではなかった。
焦燥はある意味で裏切られなかった。

「まどかさん? 鹿目まどかさん! 見滝原中学校二年生の14歳! 四人家族の長女で美樹さやかが友人の鹿目まどかさんですね?!」

すらすらと、マミでもあまり知らないパーソナルデータが語られる。

「なぜそれを?!」
「学生手帳ってなこと細かくデータが書かれてるもんだなぁ〜?
 こんなもん詳細に書き込んだところで、誘拐犯に情報を与えるだけだって分からんのかねぇ? んん? 」

そういって取り出したピンク色の手帳をぺらぺらとめくる。

「ほら見ろよ、こんなに写真がたくさん貼られてるぜ〜? 交友関係丸わかりだよなぁ〜? 便利でたまらねぇぜ〜!
 んん〜だけどお前の顔は見当たらんなぁ〜?! あんたお友達じゃなかったのかい?」

もはや取り繕うしぐささえ見せずに男は手帳を読み上げ続ける。
マミの冷静さは脆くも崩れ去った。

「まどかさんをどうしたの?!」
「あぁ〜間抜けにも一人で目の前に現れたからよぉ〜? 食っちまったよ。 頭からな」

銃声が鳴り響いた。 大男の顔に一発。 瞬時の抜き打ちである。
だが男は崩れ落ちない。 悠然と立ち尽くしたまま。
マスケットを構えるマミに驚愕の表情が浮かぶ。

「危ねぇなぁ〜!? 死んだらどうするんだよ、巴先輩よぉ〜!」

顔の下半分を失いながらもマミを見つめる視線は外さない。
いや、ダメージを受けたように見えない。

171 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 13:57:10 ID:Z.vv4No2
一発、二発、三発。
ならばと続けざまに発砲。
男の体はその都度波打つが、身体が大きく弾けるが、倒れない。

「効かないんだよ、スカタンがぁ〜! 俺のスタンド、イエローテンパランスはすべての衝撃を無効にする!
 お前の攻撃なんて、赤ん坊の屁のように無力なんだよぉ〜〜! 」
「なら!」

マミの手から放たれたリボンが大男の崩れ去りつつある身体を縛り付ける。

「動きを止めて数を撃つ!」

無数のマスケット銃がマミの周囲に浮かび、その全てが火を噴く!
しかし硝煙の晴れた先に見えたのは、ややスケールが縮んだ男の姿であった。 縮んだと言っても180はある。

「だから効かねぇっていってんだろうが、糞ガキがぁ!」
「それがあなたの本当の体ね?」
「だからどうした! お前の攻撃はすべて受け切った! 今度は…」
「ティロ・フィナーレ」

呟くように宣言したマミの正面に巨大なマスケットが出現する。
口径はマミの頭を超える。
直撃した際の威力に関しては言うまでもない。

「痛っ!」

唐突にか細い悲鳴が上がる。
ラバーソールのものでも、マミのものでもない。
少女の声。


「あーぁ、あんなメクラに打ちまくるもんだから、あたっちまったじゃねぇか…鹿目まどかちゃんによぉ〜?」

ラバーソールがニヤリと笑うと、体を覆う肉の塊、スタンド・イエローテンパランスからもろりと少女の体が抜け出る。
まどかである。

172 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 13:58:58 ID:Z.vv4No2
「そのまま撃ってみろ! 鹿目まどかも死ぬことになるぜ? えぇ? 巴先輩?」

まどかを前に押し出し、男のハンサムな顔が凶悪にゆがむ。
躊躇するマミを見たのか、それとも咄嗟に叫んだのか。

「マミさん! 私のことはいいから! わたしのことはいいから撃って!」

その一言がマミを縛り付けた。 
…そんなことは出来ない。

「こんな事言ってるぜぇ? 巴先輩よぉ〜。 なんなら逃げてもいいんだぜ?(そうしたら俺は詰むけどな!)」

そうである。
ラバーソールは防御力こそ堅牢であるものの、スピード、攻撃力においてあまり得意ではない。
全力で逃げられたら追い付けない。
もし承太郎などに泣きつかれたら迎撃されるだろう。
タイマンなら負ける気はしないが、仲間を引き連れられたら確実にとは言えない。
いや、むしろ圧倒的に不利!
ゆえにここで決着をつけたいのだ。
ゆえにここで巴マミを殺しておきたいのだ。
24時間の命の担保である首輪と、食料を奪うためにも。

ラバーソールは金で雇われた男である。
こんなところに連れ出されて命の危険性に立たされて、しかも一銭にもならないとかやってられないのだ。
一刻も早くここから出て行きたい。 しかしそれには時間が必要だ。
その猶予がもたらされる首輪はぜひとも数を抑えておきたい。
なるべく早い段階で、大量に。
だから目の前にまどかが飛び込んできたのは僥倖であった。
捕まえたときに視線がある一点を見つめたのはラッキーだった。
その先に仲間がいると直感できたから。
しかしこんな体力を浪費する相手だったとはアンラッキーだ。
だからここで始末する。
確実にッ!

そして…マミは銃を降ろした。
マミはまどかを犠牲にするなんてできなかった。
一人に戻るなんて耐えられなかった。
得たものを失うなんて考えられなかった。
それが決定的な損失を意味するとしても。
出来なかった。

「マミさん!」

まどかが叫ぶ。 まただ。
また止められない。 また目の前で死んでしまう。

「よく決断できたな、巴マミ。 よく出来ましたと褒めてやるよ」

ズカズカとまどかを抱えながら歩を進める。
そしてゼロ距離。
荒い鼻息をぶつけながら宣告する。

「そして、死ね」

マミの頭からスタンド・イエローテンパランスが襲い掛かる。
マミは観念したかのように目を閉じ。
そしてその顔は身体から失われた。

173 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 14:06:55 ID:Z.vv4No2
ラバーソールは高笑いを挙げる。
まどかはマミの名を絶叫する。
駆け寄ろうとするまどかをラバーソールは苦も無く引き止めた。

「おまえにはまだまだ働いてもらわないとなぁ? この美樹さやかっての、お前の友達だろ?」
「さやかちゃんも?!」

ラバーソールの言葉にまどかは振り返る。
それに当然の答えを浴びせようとした、にやにやしたハンサム顔を、ラバーソールは一瞬にして引きつらせる。
ラバーソールの異変にまどかもその視線の先に振り向く。

そこには首を失ったマミの姿。
倒れていない。
立ち上がった姿がそこにあった。
ゆっくりと腕を上げ、ずるずると足を引きずりながら前に。
ラバーソールの居る所へ歩いていく。

「ば、化け物がぁ!」

余裕なんて吹き飛んだ。
ラバーソールは四方八方からスタンドでマミの体を包む。
イエローテンパランスは包み込んだ対象を消化・吸収するっ!
そっくりそのままスタンドに包まれたマミの体くらいならあっという間に消化できるはずである。
だが、出来ない。

黒い光が上がり、イエローテンパランスの消化能力に並ぶ再生能力で、マミの体は復元していく。
いや、完全な復元ではない。
マミの体が復元するたび、異様な肉の塊に変換されていく。
とにかくも再生に全力を傾けているのだ。
ゆえに元の形など形成することなど後回しなのだ。

(まどかちゃんだけは守る!)

そんなマミの意思だけが、マミの体を突き動かしていた。
ソウルジェムの限界などとうに過ぎている。
ただまどかを守りたいがために、少女は限界を超え、人としての姿を捨てた。

174 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 14:12:53 ID:Z.vv4No2
ソウルジェムが高速で黒く鈍る。
彼女の体を包む光も、神聖さからは遠く離れたおぞましい瘴気にも見える。
光と同様、彼女の体自体も人間とは遠く離れた姿。
そう、それはもう魔物。
そこまでしても闘い続けるマミの姿に、まどかは叫ぶしかなかった。

「もうやめて、マミさん!もう、やめて…」

止めなくてはいけないのに、またここで死なせるわけにはいかないのに。無力な自分を悔いていたのに。
涙でもう、それ以上言葉を続けることは出来なかった。

一瞬、それをみたマミであったものは優しい表情を浮かべたように見えた。
顔などとうの昔に無くなったのに。
そして最後の抵抗を始める。再生能力はついにラバーソールのそれを超えた。
あとは膨張すれば勝てる。
それはラバーソールにも理解できた。

「糞がぁ!」

なんの意味もない言葉を上げるしか出来ない。
この先の絶望は彼にすら予想できた。

だが、天使が現れた。

175 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 14:17:02 ID:Z.vv4No2
光の塊。
そうとしか言えない輝度。
しかしまどかもラバーソールもそれを天使としか見えなかった。
そして、おそらくはマミであったものにしかその本質はつかめぬであろう。
それはまどかであった。

アルティメットまどか。
魔女を救済するもの。

アルティメットまどかはマミの体をやさしく抱きしめる。
もういいんだよ、と。
もう闘わなくてもいいんだよと。

それで、マミは止まれた。
魔女にならずに済んだ。
そのまま命を果てることができた。
少女のままの魂で。

真夜中の森の中に星が現れたかのような光の柱が浮かび。
そして消えた。

176 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 14:29:59 ID:Z.vv4No2
光が収まった時、そこにはラバーソールとまどかしかいなかった。
マミであったものもマミもそこにはいない。
まるで存在自体が抹消されたかのように。
いや、確かにそこにいたことも激闘を繰り広げていたことも記憶にある。
マミだけがそっくりそのまま消え去ったのだ。

数瞬、呆気にとられていたラバーソールではあったが、そこに落ちている首輪…おそらくはマミが身に着けていたものであろう…を
同じく呆然としているまどかに放ってよこした。

「おまえのものだ。 とっておけ」
「え…?」

それ以上何も言わず、ラバーソールはへたれこんでいるまどかの腕を取って強引に立たせた。
そのまま歩を進める。
あまりに目立ちすぎたからだ。
光の柱など浮かび上がったのだ。 だれかが襲撃してくる危険性がある。
少なくとも自分なら襲うだろう。
その前に場所を移動しなくてはならない。
首輪を渡したのは…おそらくは毒気を抜かれたためだろう、と彼は思いこんだ。

まどかも、振り返ってマミが居た場所を見つめると「ごめんね」とつぶやくのみで、もう二度と振り返らなかった。


【F6/森/1日/深夜】

【鹿目まどか@まどかマギカ】
[状態]:健康
[服装]:制服。
[装備]:なし。
[道具]:デイパック一式、巴マミの首輪
[思考]
基本:生きる
1:マミの分まで生きる
2:とりあえずはラバーソールの言う事を聞く
[備考]
●四話以降からの参戦

【ラバーソール@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康(軽い疲労感)
[服装]:スタンド一丁
[装備]:なし
[道具]:デイパック一式、食料・水二日分
[思考]
基本:脱出
1:美樹さやか等を始末し首輪を回収する
2:まどかはエサなので生かして連れまわし利用する
3:出来れば承太郎を倒したいが優先順位はかなり低い


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