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精霊を性的に愛でるスレ Part.3

298名無しの魔法使いさん:2015/05/04(月) 12:32:36 ID:Y8G30gzI
「月が綺麗ですね」
「え?」

ここは魔界の一城。
複雑で怪奇に絡んだ回廊から少し外れた大図書館の片隅。
文武で言えば紛れもなく文である僕は、立場も低く軽視され、気付けばこの図書館の整理係に落ち着いていた。
魔族ではあるが争いごとは好きではないし、この閑職は本が好きな自分には天職ではないかと考える。
そこで出会ったのが彼女、レメモ・ビブリ。
間違いなく天使である彼女がなぜ魔界にいるのかといえば…魔族の研究、らしい。
そんな彼女がある日ふと、前述の言葉を僕にかけてきたのだ。

「つ、つき? ……?」

勿論魔界の城の奥から月が見えるべくもない。
唐突な言葉にクエスチョンマークを浮かべる僕に、レメモは顔を赤くして開いていた本でそれを隠す。
天使云々を置いておいても変わった娘だと思う。
イザーク様からも捨て置けと言われているので、誰も彼女に手出ししようとはしなかったが。
はじめは会話すらお互いにたどたどしかったけれど、半年も立つ頃には大分打ち解けた、つもりでいる。
でも時々理解が及ばないのはもう、仕方ない事だろう。
……それでも最近はより知りたいと思ってしまうのだが。

「う…ううん、なんでもないの」
「…そう? でも月なんて暫く見てないな、今度見に行こうか?」

インドア派とインドア派の会話にしては、頑張ったほうだろう。
彼女は本の向こうで暫く考えてから、小さく頷いてくれた。
小さくもしっかりとした反応に胸をなでおろす僕。
すると徐ろにレメモが椅子から立ち上がり、こちらへ近づいてきた。
ほっそりとした体。身長は僕よりも大分小さい。
何事かと目を瞬かせていると…唐突に、彼女が読んでいた本が僕の胸元にぽすっと押し付けられた。

「これ、読んでおいて」
「?? …ソーセキ・ナツメ…? 伝記…自伝かな? でもなんで」
「いいから、出かけるまでに読んでね」

まだ顔が赤いままのレメモ。
普段はどことなく悪戯っぽい彼女の、少しだけ真剣な様子に首肯して本を受け取った。

……………。


そしてその日の自宅。
月、が見える場所は魔界でも限られているが故に、窓からそれは見えなかったけれど。
預けられた本をあっという間に読み終えた僕は…。

「死んでもいいな」

レメモの顔を思い出して、そう呟くのだった。


(僕はレメモちゃんとこんな恋愛がしたいにゃ!)




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