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ペンギンの遊び小説

1ペンギン:2014/12/01(月) 22:46:59 ID:g3v2LSNo
 僕が小学校に上がる前――4歳から5歳にかけての頃――、午後から仕事で家にいなくなる母によって、僕は幼稚園や保育園に入れられる代わりに、仕事先の町の、神社の神主さんの一家に夜まで預けられていた。
何でも母が仕事の面接のために慣れない街をうろうろ歩き回っていると、そこの神主さんが声をかけて道を教えてくれ、幼い僕がいる事情を聞くと、仕事終わりまで面倒を見てあげようということになったということだ。
僕の父は会社員で毎晩夜遅くまで帰ってこない。

56ペンギン:2014/12/12(金) 06:16:57 ID:5EgsFJFs
 外で遊んでいても暗くなり始めたり、雨の日や、またあまり暑かったり寒すぎる日は山部さんの家の中で遊んだが、そういう時真希お姉さんは僕たちにお手玉や折り紙をして見せたり、教えたりしてくれた。
お母さん――山部のおばさん――に習ったそうだが、おばさんはめったにしてくれなかったし、お姉さんがそういった遊びを僕たちの目の前で器用にして見せて、教えてくれるのは楽しかった。
中に小豆の入った布の袋で出来たお手玉は持つだけならともかく、宙に放り投げて受け取るには僕たちの手はあまりに小さく、力も弱かったので、真希お姉さんがするのを見るだけだったが、折り紙は僕たちでも真似できた。
特に由香ちゃんが熱心で、お姉さんが折っている紙の上に、両手と膝をついた四つん這いの格好で顔をやって、常にない真剣な表情で目を見開いてじーっとお姉さんの折る様を眺めていた。
それでもいざ自分が折るとなると、子供の指が短く小さな手と思い通りに動かない腕でぎこちなく、きれいに上手くはいかなかったが、結局は僕よりだいぶのレパートリーを増やしたようだ。
真希お姉さんは家の中で座る時は下が板の間でも畳でもきちっとした正座で、僕たちに遊びを教えてくれる際もそうだったが、正座の状態から前屈みになって、白くて細く長い指で折り紙にきちんと整って折り目を付けていく様の姿はきれいで、時々前にかかる長い黒髪を横に払う際、ふわっとこちらに漂ってくる髪の匂いを嗅ぐたびに気持ちが宙に浮くような、幸せな気分になった。
雨の日など、外で遊ぶつもりなく、帰って最初からスカートに着替えた時は床の上に伸びる、スカートの丈下からの白いすねや足を見るのが好きで、さらに夏に丈が短いものを履いている場合は、座ることで裾の位置が上にずれた、きちっと閉じ合わされた両脚を正面から見て、膝頭や、少し覗く腿に見とれたりした。

57ペンギン:2014/12/12(金) 19:56:55 ID:5EgsFJFs
 神社に生まれた真希お姉さんはお父さんの山部さんを手伝って巫女の仕事もしていた。僕が初めて真希お姉さんの巫女姿を見たのは、山部さんの家に預けられて二週間ほどたった日だ。
その時はもう知り合ったばかりの由香ちゃんと子供同士の気安さで一緒にはしゃいだり遊んだりして、ここに預けられる前、母親に連れられて行った家の近所の公園でその時たまたま出会った同年代の子と遊ぶぐらいで、継続した友達関係を持つことのなかった僕は、由香ちゃんと遊びの経験の中で電気の刺激を与えるようにお互い気質や好みを分かり合って、急速に打ち解け始める新鮮な驚きと喜びの体験をしている最中の時期だった。
そのことは、恐らく僕より一つ小さく、恐らく僕が初めての同年代の友達だろう、由香ちゃんにとってもそうだろうと思われた。ふざけて笑いながら叩き合っている最中のふとした間にもそういう気持ちが空気を伝わって、出会って間もない僕たちの気持ちを確認して、固め合う実感をする時があった。
 真希お姉さんとも仲良くなり、最初は僕も由香ちゃんもちょっと遠慮していたが(僕が初めて会ったのは神社に預けられた初日だから由香ちゃんはいなかった。由香ちゃんはそれ以前からお母さんに神社に連れられてきていたから真希お姉さんのことは知っているはずだが、いざ実際に遊ぶとなると少し気後れを感じていたようだ)、
優しく僕たちを遊びに先導してくれるお姉さんに僕たちはすぐに懐いて、馴れ馴れしすぎるといっていいほどの態度で接するようになり、真希お姉さんはそんな僕たちにいつも笑いながら接してくれた。

58ペンギン:2014/12/12(金) 19:58:36 ID:5EgsFJFs
あれ、なんか違和感あると思ったら「接する」の濫用だ・・・

59ペンギン:2014/12/12(金) 20:05:04 ID:5EgsFJFs
 真希お姉さんとも仲良くなり、最初は僕も由香ちゃんもちょっと遠慮していたが(僕が初めて会ったのは神社に預けられた初日だから由香ちゃんはいなかった。由香ちゃんはそれ以前からお母さんに神社に連れられてきていたから真希お姉さんのことは知っているはずだが、いざ実際に遊ぶとなると少し気後れを感じていたようだ)、
優しく遊びに先導してくれるお姉さんに僕たちはすぐに懐いて、馴れ馴れしすぎるといっていいほどの態度で接するようになり、真希お姉さんはそんな僕たちにいつも笑いながら相手してくれた。

60ペンギン:2014/12/12(金) 20:10:36 ID:5EgsFJFs
やはり
「真希お姉さんはいつも笑いながらそんな僕たちの相手をしてくれた。」

約束通りの文章で行くのがいいな

61晒すスレの者 ◆iJwtISSDjM:2014/12/12(金) 20:16:24 ID:H3ql5bSU
何というか主人公が真希お姉さんの足に見とれる描写が上品だ

62ペンギン:2014/12/12(金) 20:20:21 ID:5EgsFJFs
>>61
うまく描写できないが、まあ書いているうちに経験値がたまってちゃんと書けるようにレベルアップすると思っています・・・
とにかく字数こなさないとにゃん

63ペンギン:2014/12/12(金) 20:23:44 ID:5EgsFJFs
今見返しても変な文章だ・・・
直さないと…

64ペンギン:2014/12/12(金) 20:31:45 ID:5EgsFJFs
>>55最後
「決して心配させるように遠く目の届かないところに外れることはしなかった。」


65ペンギン:2014/12/13(土) 17:29:08 ID:VCLR3eeA
 しとしと小雨が降る梅雨に入りかけの頃、南の縁側に面した和室で、座卓の上に雑誌を広げて読んでいる由香ちゃんのお母さんの横で、由香ちゃんが自分の家から持ってきた絵本を二人で並んで読んでいると、山部さんの敷地に通じる鉄の門扉がキィッと軽く軋む音が聞こえ、前庭の敷石の上をトントンと歩く靴の足音、玄関前でバサバサと傘に付いた水を払う音が続いて聞こえてきた。
足音の軽やかさとリズムから、真希お姉さんが帰ってきたことを知った僕たちはまた遊んでもらおうと、二人で片手ずつ両側を持っていた絵本を畳の上に放り出し、起き上がって我先にドタドタと廊下を玄関の方に駆けていった。
果たしてそこには、靴が並べて置いてある土間に立って、斜め下に向けて持った傘を柄を持っていないほうの手を使って付属のバンドで巻き畳もうとしている、長い髪の端の方をかすかに湿ったように濡れて黒光りさせた真希お姉さんが立っていたが、いつものように出迎える山部のおばさんは僕たちより早く玄関に到着しており、何やら二人で話し込んでいた。

66白レンの人 ◆EvBfxcIQ32:2014/12/13(土) 21:52:27 ID:y3.lUCrU
>>64
「決して〜」を受けるのは否定の言葉だから、「決して心配させないように、遠く目の届かないところに外れることはしなかった」とするべきじゃないだろうか?

67ペンギン:2014/12/14(日) 07:09:39 ID:i2xRuk2g
>>66
私もそれを真っ先に考え、何度も検討したのですが(それが一番一般的ですからね)、結局別の形にしたんですよ
もっと進んで一段落してからまた考え直すかな

68ペンギン:2014/12/14(日) 07:15:38 ID:i2xRuk2g
しかしそうだな
>>66の通りに元のところを直しとこう

69ペンギン:2014/12/14(日) 08:41:53 ID:i2xRuk2g
「――雨なのにごめんねえ。お父さんから帰ったらすぐに伝えてくれって言われてね――」
「――ううん、わかった。すぐ着替えるから――」
 足を止めてぼーっと立ち尽くしている僕たちに二人が気付くと、おばさんがこちらに近づいてきて、僕たちに向かって屈みこんで顔を近づけながら言った。いつもの癖で目を細めて困ったような申し訳なさそうな顔をしている。その間に真希お姉さんは手際よく傘を巻き畳むと、傘立てに差し込んで、靴を脱いで家に上がっていた。
「ごめんなさいね。これから真希ちゃん、ちょっとお父さんのお手伝いしなくちゃいけなくて、一緒に遊んであげられないの」
 ぽかんと顔を見上げている僕たちのそばに今度は真希お姉さんがおばさんの横に並んで立ち、
「二人ともごめんね」
と、やはり屈みこんで少し悲しそうに微笑みかけ、鞄を持っていない空いた手で僕たちの頭を順番に撫でると、
「じゃあ、シャワー浴びてから着替えるから――」
「うん。ごめんなさいね」
とおばさんと言葉を交わすと、廊下の奥に進んで自室の方へと曲がって姿を消した。

70ペンギン:2014/12/14(日) 20:45:05 ID:i2xRuk2g
 僕たちは突っ立ってそんな真希お姉さんを見送っていたが、やがて由香ちゃんが姿の見えなくなった真希お姉さんを追いかけようと、ダッと走り出そうとすると、おばさんがそのふっくらした体を素早く由香ちゃんの前に動かし、その足を止めさせた。
「いい子だから今日はおとなしくしててね?」
 腿に手を突いて屈みこんで、優しく微笑みながらあやしつけるような言い方だったが、立ち止まった由香ちゃんと、離れて立っている僕に横からすり抜けることのできないよう注意を巡らせているさまが体全体の緊張から伝わり、それまで大抵の子供ながらのわがままを通すことのできた僕たちも今回は無理だと思わされた。そうこうしているうちに、廊下の奥の突き当りを、右側の自室の方に曲がった真希お姉さんが制服姿のまま左の方に進んで一瞬姿を現してまた消すのが見えた。
いつも構ってくれる二人が慌ただしい空気の中で動いているようで、廊下に立ったままの僕はぽつんと置いていかれたような気がした。その思いは、通り抜けさせまいとしているおばさんの横から、少しだけ真希お姉さんが再び姿を見せた廊下の奥を体を傾けて、目を細めた不満と不安が入り混じったような表情で凝視している由香ちゃんも同じようだった。

71ペンギン:2014/12/15(月) 00:45:27 ID:L.mrftSY
「その思いは由香ちゃんも同じようで、通り抜けさせまいとしているおばさんの横から、先ほど真希お姉さんが再び少しだけ姿を見せた廊下の奥の方を体を傾けて凝視する、目を細めた不満と不安を入り混じらせた表情にそれが現れていた。 」

72ペンギン:2014/12/16(火) 19:25:19 ID:KyOYPScc
 由香ちゃんのお母さんが玄関の廊下に出て来た。和服でなく、ボタン留めの灰がかった白のブラウスに、膝の下までかかる黄土色のスカートの洋服姿だ。
元いた縁側に面した和室から広い屋敷の廊下を通ってここに出てきたところだが、玄関廊下の東奥の突き当りを見ながら立ち尽くしている僕たちと、その前をふさぐように立っている山部のおばさんをしばらく見ているうちに、何やら事情を察したように目と口を開き、息を吸い込みながら背を伸ばした。
「――あら、真希ちゃんまたお手伝いするの?」
 山部のおばさんが由香ちゃんのお母さんに気付いて、由香ちゃんに向けて屈めていた腰を伸ばす。由香ちゃんもお母さんの方にぐるんと首を回して見上げ、それを見た山部のおばさんはもうすり抜けられることはなさそうだと判断したのか、息を吐きながら体の緊張を解いた。
「――ええ、そうなの。午前中に電話があったんだけど、こちらに観光旅行にいらっしってる敬老会の団体の方たちがこの神社をぜひ皆で見学に参拝したいとおっしゃってね。お父さんだけじゃ相手できないし、真希ちゃんに手伝ってもらおうと思ってね」
「真希ちゃんしっかり者でお手伝いもしてえらいわねえ。美人さんだし。何時ごろいらっしゃるの?」
「暗くなる前に来るだろうから、もうそろそろだと思うんだけどね――」
 どうやら由香ちゃんのお母さんは事情を知っていそうだ。由香ちゃんが口をへの字にし、瞳孔を狭めて目を見開いた、不満が入り混じった物問いたげな目でお母さんの方を見上げている。
回した首で顎をツンと突き出し、無意識になのか、微かに体全体を左右に捻って回しながら揺らしており、事情を知りたいのと、やはり真希お姉さんと遊ぶことのできない不満を表明しているような、駄々をこねている仕草に映った。

73ペンギン:2014/12/16(火) 22:45:34 ID:KyOYPScc
「――さ、そういうわけだから佳くん(佳太が僕の名前だ)も由香ちゃんもあっちで大人しくしましょうね」
 由香ちゃんのお母さんが僕と、依然物問いたそうに見上げる由香ちゃんの横に回り込む。
お母さんが動くのに合わせて、その顔にぴったりと貼りつけた視線を外すことなくぐるりと首を回して追い続ける由香ちゃんに構わず、山部のおばさんとの間に立った由香ちゃんのお母さんは膝と腰を曲げて屈みこむと、僕たちのいる両側に両腕と手を広げて回し、横からすくうようにすることで僕たちに半ば強制的に動くよう促した。
「そうだ、せっかくだからあとでこの子達に見せてあげてもいい? 私も久しぶりに見たいし」
 直接押して動かすわけではないが、軽く触れた状態から抱え込むようにして圧力をかけて、不服な僕たちを元いた部屋に向かう廊下に押し戻そうとしながら、由香ちゃんのお母さんが山部のおばさんの方を振り向きながら言った。
「ええ、もちろんいいわよ。二人ともごめんなさいね。あとで真希ちゃんに会わせてあげるから」
 目を細めて首を傾げ、頬に手を当てて山部のおばさんが言った。
僕は依然何が起こっているのかわからなかったが、今では、いずれ僕たちも起こっていることに参加させてもらえそうなことに気付いて、半ば納得した形で不満は薄れ、徐々にこれから起こることへの期待が気持ちを多く占めるようになっていった。
由香ちゃんもまだ少し口を尖らせたままで、少々不満が残っているようだが、僕と同じでそれなりに納得したらしいことは狭めていた瞳孔が少し柔らかく広がって元に戻り、大人しくお母さんに促されるままに向きを変えて元いた部屋へと歩き出すことからわかった。

74ペンギン:2014/12/20(土) 14:26:48 ID:8gwSEeZE
 僕たちが縁側に面した部屋に戻って、二人並んでくっついて座卓に向かって座り、いつもお絵描き用にと何枚か用意されている広告チラシの白い裏側にクレヨンで落書きしていると
(さっきまで読んでいた絵本は、そのうち呼んでもらえるかもしれない真希お姉さんが今していることが気になって続きを読む気になれず、
僕が何となく座卓に向かってそこに用意されたチラシとクレヨンを手に取り、手を動かすことで気持ちを紛らわせられるお絵描きを始めると、
由香ちゃんもそんな僕を見てその気になったのか、にこーっと笑いながら隣に座り、僕の描いてるチラシに横から身を乗り出して一緒に描き始め、時々僕の描いた絵に落書き攻撃を加えてくる事もあった)、
ガラガラと玄関の引き戸の開く音が聞こえ、
「どうだー、もう準備は出来たかー」
と、山部のおじさんが家の中に呼びかけるよく通る声が続けて聞こえて来た。

75ペンギン:2014/12/20(土) 15:26:38 ID:8gwSEeZE
 パタパタとおばさんのスリッパの廊下を走る音が微かに聞こえた。続いて、何を言っているかわからないが、何やら二人で話をしているこもった声の音が玄関の方から届いて来る。
すると、由香ちゃんのお母さんが座卓の上に乗せた雑誌をパタンと閉じて、座布団の上の正座の状態から立ち上がった。
それを見た僕たちはチラシの上に屈みこんでいた頭を由香ちゃんのお母さんの方に見上げ、黙って襖を開けて出ていこうとする姿を、座ったままの体と首を大きくねじって二人で目で追っていたが、その後ろ姿に特に拒否の雰囲気を感じなかった僕は、チラシの上にクレヨンを放り出し、ばっと大急ぎで立ち上がった。
由香ちゃんは隣の僕の動きに何が起こったのかよくわからない風で、口を半開きにして、ぱちくりした目で立ち上がった僕の方を見上げていたが、何だかよくわからないままに、置いて行かれるのは嫌だと判断したらしく、すぐに自分もクレヨンをコロンと放った小さな手を座卓の上に突き、急いで立ち上がった。

76ペンギン:2014/12/22(月) 00:10:31 ID:Wwb24ckY
 僕たちが由香ちゃんのお母さんを追ってドタドタと駈け出すと、ちょうどお母さんが玄関の廊下に出たところでその後ろ姿に追い付いた。玄関の土間に立って奥さんと向かい合っていた山部のおじさんは僕たちの足音と、廊下の角から顔を出した由香ちゃんのお母さんに反応して顔をこちらの方に振り向けた。
いつも神社の仕事をしている時の、上腕の肩近くの辺りで前面に縦に切れ込みが入り、腰から脚の膝の辺りにかけて前と後ろに垂れた形で布が伸びている紺の和服と(当時は知らなかったが、狩衣【かりぎぬ】というらしい)、黒の烏帽子に紫の袴だ。上腕の切れ込みから下に着た服の白い地が覗いている。おじさんは由香ちゃんのお母さんと顔を合わせると目を見開いて軽く頭を下げた。
「――あら、真希ちゃんまたお手伝いするみたいね」
 由香ちゃんのお母さんの言葉を聞くと、おじさんは目を細め、口の端を上げて軽く微笑んだ。
「もうすぐ敬老会の方たちが見えられるので手伝わせようと思いましてね」
「ほんとにもう、よく出来た娘さんねえ」由香ちゃんのお母さんが手を胸の高さにかかげて、腕を軽く一振りして手首を揺らしながら言うと、山部のおじさんはますます口の端を持ち上げ、相好を崩して微笑んだ。
「そうそう、この子たちにも――由香ちゃんのお母さんはおじさんの方を向いたまま、左手で横に立っている僕たちの頭を後ろからすくうようにして、おじさんの目につくように軽く前に押し出した――真希ちゃんの巫女さん姿見せてあげたいんだけどいいですか?」
 由香ちゃんのお母さんが言うと、山部のおじさんは目を開いて、少し背筋を伸ばしてのけぞりながらこっちの方を見た。
「――もちろん構いませんよ。二人にはもっと神社の事に興味を持ってほしいし、由香ちゃんにも将来は巫女さんになってもらおうかな」おじさんが由香ちゃんの方を見ると、目が合った由香ちゃんは何を言われてるかよくわからないまま、おずおずと微笑んだ。
続いて僕の方に目を移し、「佳太君にも将来は神主になってもらえると嬉しいな」微笑んだ柔らかい顔つきだが、真っ直ぐ僕の目を見て言った。僕も由香ちゃんと同じように、訳も分からず笑い返すしかできなかった。

77ペンギン:2014/12/23(火) 22:05:56 ID:TSbZPlaY
「で、まだなのか」おじさんが奥さんの方を向いて言った。
「もうそろそろだと思いますけど――」
 山部のおばさんがちょっと焦って困ったように廊下の奥を見渡すと、丁度突き当りの左右に曲がり角が分かれた左の方から真希お姉さんが出てくるところだった。
ただ、いつもと違うのは、上に白い和服、下に赤い袴姿で(白装束に緋袴らしい。袴は山部のおじさん――真希お姉さんのお父さん――が履いているのとは違って、脚に合わせて股で分かれておらず、スカートのように一つの裾で広がる形で、行灯袴というらしかった)、前髪を生え際で分けて後ろにひっつめた長い黒髪を白い‘のし’で束ねた(‘のし’の名称も、それが檀紙という高級な和紙の種類であることも無論当時の僕は知らなかった)姿で、
今まで見たことのない服装もだが、その着ている服自体のしわ一つなく、おろしたてのような感じが、簡単に触れることでしわくちゃにして台無しにしてはいけないような気ちを起こさせて近寄りがたかった。
いつもと同じ優しげな表情の真希お姉さん自身も、ひっつめて後ろに束ねた髪型のせいでどこか少し張り詰めた印象を与え、普段より小さな歩幅での慎重な歩き方もその感じを強めた。
真希お姉さんが突き当りの角を曲がって姿を現し、廊下を少しこちらに進んできたところで由香ちゃんが走って行こうとして、お母さんにすぐにその両肩を後ろから押さえて止められたが、いつもと違って特にじたばたしようとせず、じっと立ち尽くして真希お姉さんの姿を見つめていたことから、由香ちゃんもいつもと違う雰囲気を真希お姉さんに強く感じ取っていたらしい。
真希お姉さんもそんな由香ちゃんの方をゆっくり歩きながらちらと見て軽く微笑みかけるだけだった。

78ペンギン:2014/12/24(水) 20:37:45 ID:2Yc96jJw
やはり街中にあるでかい神社で巫女に無縁というのはおかしいから書き直した
それ以前のとこもいろいろ手加える必要あるが、まあ先に進もう

79ペンギン:2014/12/24(水) 20:42:23 ID:2Yc96jJw
「で、まだなのか」おじさんが奥さんの方を向いて言った。
「もうそろそろだと思いますけど――」
 山部のおばさんがちょっと焦って困ったように廊下の奥を見渡すと、丁度突き当りの左右に曲がり角が分かれた左の方から真希お姉さんが出てくるところだった。
ただ、いつもと違うのは、上に白い和服、下に赤い袴の服装に(白装束に緋袴らしい。袴は山部のおじさん――真希お姉さんのお父さん――が履いているのとは違って、脚に合わせて股で分かれておらず、スカートのように一つの裾で広がる形で、行灯袴というらしかった)、前髪を生え際で分けて後ろにひっつめた長い黒髪を白い‘のし’で束ねた(‘のし’の名称も、それが檀紙という高級な和紙の種類であることも無論当時の僕は知らなかった)、巫女さんの姿だった。僕たちが湯枝神社に来ている時、アルバイトで働いているらしき巫女さんは何度か見、その人たちもきれいだったが、緋袴の上に白装束を着た真希お姉さんはすらりとした背の高さが際立ち、普段接している姿からかけ離れた様が一層強い印象を与え、それまで見た他の巫女さんたちの姿の記憶を色褪せるものにした。
真希お姉さんはいつもと同じ優しげな表情だったが、ひっつめて後ろに束ねた髪型が大きな眼を目立たせているものの、額から生え際にかけてどこか少し張り詰めた印象をこちらに与えて近寄りがたく、普段より小さな歩幅での慎重な歩き方もその感じを強めた。
真希お姉さんが突き当りの角を曲がって姿を現し、廊下を少しこちらに進んできたところで由香ちゃんが走って行こうとして、お母さんにすぐにその両肩を後ろから押さえて止められたが、いつもと違って特にじたばたしようとせず、じっと立ち尽くしてその姿を見つめていたことから、由香ちゃんもいつもと違う雰囲気を強く感じ取っていたらしい。
真希お姉さんもそんな由香ちゃんの方をゆっくり歩きながらちらと見て軽く微笑みかけるだけだった。

80ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/11(日) 01:18:47 ID:LkQP.F3o
結局>>79でなく、>>77で行くことにした

81ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/11(日) 03:45:31 ID:LkQP.F3o
「おお、準備できたのか」
 山部のおじさんが言うと、真希お姉さんは土間に立っているおじさんの正面で立ち止まり、手を腰の前で重ねてこくんと頷いた。
「――ならそろそろお見えになる頃だから行くぞ。今日は社務所も開けるからな。――少し雨が降ってるけどまあ大丈夫だろう」
 右手でいつでも開けられるよう、左手に持った傘の柄を持ち替えて、開け放しの玄関戸から出て行こうとするおじさんの背中に由香ちゃんのお母さんが声をかけた。
「お仕事の具合、この二人にもお見せしていい?」
「構わんですよ。この雨ですからちょっと厄介ですがな」
 山部のおじさんは振り返らずに返事すると、敷居を跨いで外に出たところで立ち止まり、右手を加えて傘を操作した。しばらくすると、バッと傘が開き、おじさんはその傘を差して雨を避けることの出来る庇の下から脱け出すと、玄関と門の間につながっている敷石の上に足を乗せて、今出てきた玄関の方に振り返って真希お姉さんを待って立った。
「――じゃ、私も手伝いに行くから――」
 真希お姉さんがお母さん――山部のおばさん――の方を向いて言った。
「うん。お父さんも言ってたけど、雨降ってるけどお願いね」
 おばさんが目を細めて頷くと、真希お姉さんはもう、おばさんがすでに土間に用意して出していたらしい、藁色(材質はスポンジだったようだが)に赤い鼻緒の草履に白足袋を履いた足を差し入れていた。傘立てから傘を抜き出し、軒先で家の中の方を向いて立って待っているおじさんの前に立つと、自分も傘を開け、二人で神社の境内の方へと、連れ立って敷石の上を歩いて行った。

82ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/11(日) 04:26:53 ID:LkQP.F3o
「さあさあ、私たちも早く出なきゃ!」
 いきなり大声を出した由香ちゃんのお母さんに僕たちはびっくりした。屈んで僕たちに手を添えて、そのまま足を進めて土間の方に押し出しながら、振り返って山部のおばさんの方に言う。
「――すみませんけど、この子たちのレインコートお願いできないでしょうか。ご主人と真希ちゃんの仕事ぶり見せてあげたいので」
「――え、ええ、わかったわ」
 山部のおばさんは屋敷の軒下に吊るしてある僕と由香ちゃんのレインコートを取りに、パタパタと廊下の奥へ走って行った。その間に由香ちゃんのお母さんはぐいぐいと僕たちを土間に押し出して、靴を履かせる。小さい手で、靴を履くのに手間取る由香ちゃんに対し、玄関にしゃがんだ後ろからじれったそうに腕と体を伸ばして、足を掴んで靴を無理やりはめ込んでいった。由香ちゃんはその間、あまりのことで何かわからず、ぽかんとした表情をしていた。
 やがて山部のおばさんが両手に僕たちの――僕のは水色、由香ちゃんのはピンク色――レインコートを抱えて慌ただしく廊下を戻ってきた。まだ僕たちが来た時の雨水は完全に落とせていないようだが、手に持ったり、家の中を持って進んで水が垂れない程度には水気が落とせているらしい。
「わざわざすみません。――じゃ、これからお二人の仕事、この二人に見せてあげますね」
 自分も靴を履いて土間の上から、山部のおばさんからレインコートを受け取りながら由香ちゃんのお母さんが言った。
「――ええ、伊波さんもお気をつけて」
 傾けた顔の頬に右手を添えて言う。
「大した雨じゃないし、大丈夫ですよ」
 僕と由香ちゃんにレインコートを渡し、由香ちゃんの方にはまたも体に手を回してぞんざいに着せながら言う。自分も傘立てから、自分が来た時の傘を取り出した。
「――それじゃ。――さ、行くわよ」
 後の言葉はまだ事態がよくわかっていないらしく、のろのろと外に向かって歩き出した由香ちゃんに対して、後ろから背中を押しながら言った言葉だった。

83ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/12(月) 00:33:15 ID:7Vvt/fRI
 僕たちがしとしと雨の降る中、レインコートと長靴で、先を立って歩く由香ちゃんのお母さんの後について門から鳥居をくぐって境内に入ると(小雨のせいか、普段は多い参拝客も二人ほど拝殿に向かってお参りしているだけだった)、普段は閉じられている社務所の北側の引き戸が開け放されていた。東西の側面4メートル、片側が参道に面した南北の縦の長さが8メートルほどの、長方形の木造の社務所の、参道側の社務所正面の陳列棚の上に何かこまごました物が並んだほか、室内の端に並べられた棚の上や仕切りの中に紙やら、何かに使う道具らしい物やらが散らかって(僕にはそう見えた)置かれた中で、山部のおじさんと真希お姉さんが何やら忙しく動き回っていた。
 僕と由香ちゃんが雨の中ぼーっと立ち尽くしてその様を眺めていると、由香ちゃんのお母さんが言った。
「これからお二人は大勢来るお客さんたちのため、お仕事するの。ちょっと私たちも正面に回ってみましょうか」
 再び先に立って歩き出した由香ちゃんのお母さんについて、僕たちは参道側の、社務所の正面に回り込んだ。

84ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/12(月) 22:05:18 ID:7Vvt/fRI
 普段は閉じられている、正面の、曇りガラスに木枠の格子窓が引き開けられていた。
大人の腰かそれより少し低いくらいの高さで、さらに木の板の張り出しが窓の下枠のところから突き出ていて、まだ小さい僕には一生懸命背伸びして何とかその張り出しの上から開けられた窓の中を覗き込めるぐらいで、さらに小さい由香ちゃんは背伸びしても頭が届かず、ちょっと離れたところから斜めに見通すのがやっとで、近づくと張り出しに邪魔されて社務所の中はほとんど見えないようだった。
 立てた人差し指を口に当て、好奇心のもの欲しさの目で、一生懸命背伸びして中を覗き込もうとする由香ちゃんに、巫女姿の真希お姉さんが窓からぴょこんと上半身を出し、張り出し板の上に両手をついて、そんな由香ちゃんを見下ろしながら優しく微笑みかけた。と、同時に由香ちゃんのお母さんが由香ちゃんを抱え上げ、窓を通して社務所の中がよく見えるように抱っこして持った。
なおも人差し指を口に当てたまま、じーっと中を物珍しげに見つめる由香ちゃんに対し、真希お姉さんは張り出しに手をついたまま見上げてまた微笑みかけた。
 僕も一生懸命背伸びして窓の中を見ようとした。
張り出しの他、窓の下の木枠が邪魔だったが、それでも社務所の内側のすぐ窓際に置いてある木箱はこちらに対して斜めに傾斜して向いており、そんな僕にも見やすい角度で、箱の中に入っているものを一通り見ることが出来た。
木箱は外枠が低く底が浅く、中が細かく仕切られており、それぞれの小部屋の中には布で出来た長方形だったり丸かったりして、横に筋がいくつも入ったように見えるちょっと変わった紐が付いているものや、長方形の折りたたんだ白い紙の上に墨で何やら僕には読めない難しい漢字が縦に書かれているものが入っていた。
あと、木箱とは別に、これも斜めに見やすい様に置かれた平らな木の板の上に色々な飾りがついた大きな矢が何本かあり、木箱と矢のそれらに並んで、水平な棚の上に直接、上に小さい長方形の穴が開いたきりの筒も立てて置いてあった。

85ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/12(月) 23:37:33 ID:7Vvt/fRI
傾けて置いてある木箱の仕切り部屋ごとの下――手前――側に、それぞれ手書きのペン文字で置いてあるものの名前と値段が書かれた小さな白い厚紙が立ち、矢が置いてある木の板の方はその下端と窓枠の間に挟まれた位置に、置いてある長い筒の方は棚の上に直接名前と値段とが書かれた紙がテープで貼られていた。

86ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/14(水) 03:59:32 ID:nNjd1xGI
「あれがお守り、あの紙でたたまれているのが神符。あの矢は破魔矢というのよ」
 僕たちに見やすいように、張り出しの上についた手を離して社務所の窓の内側に上体を戻した真希お姉さんの前で、お母さんが抱っこした由香ちゃんを持ち替えて動かしやすいようにした右手で順に指差しながら、由香ちゃんと恐らく僕にもわかるように、社務所に並べてある物の名前を教えてくれた。
「由香ちゃんにも買ってあげようか。何がいい?」
 お母さんが首を曲げて抱っこした由香ちゃんの顔を覗き込むと、依然口に親指と人差し指を当てたままじーっと並べられた物を眺めている由香ちゃんは、やがてちゅぱと口に当てた指を少し中に突っ込んで舌でなめとると、口から出したその右手を斜め下に伸ばし、濡れた人差し指の指先を向けて、
「あれ」
と言った。距離は離れていたが、位置と、自分の娘の好みそうなものから見当をつけたお母さんは、由香ちゃんを抱っこしたまま苦労して膝を曲げて体を落とし、窮屈そうに右手を伸ばすと、小さく丸く赤い、さっきお守りといったらしい物を指先でつまみ上げて、由香ちゃんの顔の前にぶら下げて再び顔を覗き込んで訊いた。
「これ?」
 再び二本の指を口の中に戻してちゅぱちゅぱやっていた由香ちゃんはそれを聞くと、こくんとうなずいた。その間真希お姉さんはそんな二人の方を微笑みながら眺めていた。

87ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/14(水) 04:00:19 ID:nNjd1xGI
「佳くんにも買ってあげるよ。何がいい?」
 由香ちゃんのお母さんが由香ちゃんに今しがた取ったばかりのお守りを渡し、両腕でうまく抱き直すのとあやすのを兼ねて、ゆさゆさと抱っこした由香ちゃんを揺らしながら、抱えたその体越しに首を伸ばしてこっちの方を見下ろして言ってきた。その間由香ちゃんは揺らされながらも、受け取った赤いお守りを両手の指先で紐をつまんで顔の前に持ち上げながら、じーっと眺めていた。両手の指先につまんだお守りが動きに合わせて一緒にゆらゆらと揺れた。
 僕は木箱の中に並べられた物を見渡した。今度は真希お姉さんはこっちの方を見たが、背伸びして一生懸命置かれたものを張り出し越しに見ようとする僕に対し、申し訳なさそうに微笑みかけるばかりだった。やがて、真希お姉さんが僕に見やすいようにと、箱の両端に手をかけ、角度をもっと上げてさらに見やすくするか、張り出しの上に箱を移動させようとするかしようとする時、僕は「これ」と、同じものがいくつかある箱の中の一室を指さした。
 箱に両手をかけた真希お姉さんが顔をうつむけて、僕が背伸びしたままぴょんと飛び跳ねながら、張り出しの上に腕を伸ばして指差した物を確認すると、それを白く細長い指で箱から少しつまみ上げて、軽く振って言った。
「これ?」
微笑みながら訊いてくる。僕はうなずいた。

88ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/15(木) 04:47:46 ID:kY3YNYZA
あれ、何やってんだろ
雨の日のはずなのに描写がおかしい
しばらく間を空けたおかげでぼけてる

89ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/17(土) 04:00:23 ID:NBn3fmkE
>>84から先を訂正して貼る

90ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/17(土) 04:02:03 ID:NBn3fmkE
 再び先に立って歩き出した由香ちゃんのお母さんについて、参道側の、社務所の正面に回り込むと、普段は閉じられている正面の、木枠に曇りガラスがはめられている格子窓が引き開けられていた。
僕は中を見ようとしたが、大人の腰かそれより少し低いくらいの高さに、30センチほどの奥行の木の板の張り出しが窓の下枠のところから突き出ていて、まだ小さい僕には一生懸命背伸びして何とかその張り出しの上から開けられた窓の中を覗き込めるぐらいで、
さらに小さい由香ちゃんは背伸びしても頭が届かず、ちょっと離れたところから斜めに見通すのがやっとで、近づくと張り出しに邪魔されて社務所の中はほとんど見えないようだった。

91ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/17(土) 04:03:27 ID:NBn3fmkE
 由香ちゃんが曲げてくっつけた親指と人差し指を口に当て、好奇心のもの欲しさの目で、一生懸命背伸びして中を覗き込もうとしていると、巫女姿の真希お姉さんが窓からぴょこんと上半身を出し、社務所の庇で雨から守られて乾いている張り出し板の上に両手をついて、由香ちゃんを見下ろしながら優しく微笑みかけた。
と、由香ちゃんのお母さんがしゃがみ込むと、手に持った傘を首と肩の間に挟み、空けた両手を由香ちゃんの脇の下に差し込んで、由香ちゃんの着る雨に濡れたレインコートで自分の服と体を濡らさないように、腕を伸ばして自分と持ったその体との距離を取り、傘を首に挟んだまま窮屈そうに持ち上げて立った。
社務所の中がよく見えるように持ち上げられた由香ちゃんは、時々レインコートのパーカーから滴る水滴の一部を髪や顔に受けながら、なおも親指と人差し指を口に当てたまま、じーっと中を物珍しげに見つめ、そんな由香ちゃんに対し、真希お姉さんは張り出しに手をついたまま、顔を見上げてまた微笑みかけた。

92ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/17(土) 04:04:32 ID:NBn3fmkE
 僕も、しとしとした小雨ながら、時間がたって量が溜まり、滴となってパーカーの縁から滑り落ちる水滴に顔や髪を濡らされ、邪魔されながら一生懸命背伸びして窓の中を見ようとした。
張り出しの他、窓の下の木枠が邪魔だったが、それでも社務所の内側のすぐ窓際に置いてある木箱はこちらに対して斜めに傾斜して向いており、そんな僕にも見やすい角度で、箱の中に入っているものを一通り見ることが出来た。
木箱は外枠が低く底が浅く、中が細かく仕切られており、それぞれの小部屋の中には布で出来た長方形だったり丸かったりして、横に筋がいくつも入ったように見えるちょっと変わった紐が付いているものや、長方形の折りたたんだ白い紙の上に墨で何やら僕には読めない難しい漢字が縦に書かれているものが入っていた。
あと、木箱とは別に、これも斜めに見やすい様に置かれた平らな木の板の上に色々な飾りがついた大きな矢が何本かあり、木箱と矢のそれらに並んで、水平な棚の上に直接、上に小さい長方形の穴が開いたきりの木の筒も立てて置いてあった。
傾けて置いてある木箱の仕切り部屋ごとの下――手前――側に、それぞれ手書きのペン文字で置いてあるものの名前と値段が書かれた小さな白い厚紙が立ち、矢が置いてある木の板の方はその下端と窓枠の間に挟まれた位置に、置いてある長い筒の方は棚の上に直接名前と値段とが書かれた紙がテープで貼られていた。

93ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/17(土) 04:05:12 ID:NBn3fmkE
「あれがお守り、あの紙でたたまれているのが神符。あの矢は破魔矢というのよ」
 僕たちに見やすいように、張り出しの上についた手を離して社務所の窓の内側に上体を戻した真希お姉さんの前で、お母さんが後ろから持ち上げた由香ちゃんの向きと角度を変えることでそれぞれを示し、由香ちゃんと恐らく僕にもわかるように、社務所に並べてある物の名前を教えてくれた。
持ち上げるだけならともかく、さすがに傘を首に挟んだまま体勢を維持して動かすのは難しそうに見えた。

94ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/17(土) 04:06:13 ID:NBn3fmkE
「由香ちゃんに買ってあげるよ。何にする?」
 無理な体勢を続けて少しこわばった声だったが、お母さんが持ち上げた由香ちゃんに後ろから優しく話しかけた。口に親指と人差し指を当てたままじーっと並べられた物を眺めている由香ちゃんは、やがてちゅぱと口に当てた指を少し中に突っ込んで、舌を出して二本の指の間のえらの部分ごとべろりと付いた水滴をなめとると、口から出したその右手を斜め下に伸ばし、人差し指の先を向けて、
「あれ」
と言った。口でなめとった親指と人差し指周りの部分にまた上から雨の滴が降り落ち、とどまった。由香ちゃんが指差した物と社務所に置いているものの距離は離れていたが、指の角度と、自分の娘の好みそうなものから見当をつけたお母さんは、「――よいしょ」と言って社務所の正面まで分かれている、今は雨で濡れている参道の石畳の上に由香ちゃんを降ろした。
すぐに右の首と肩に挟んだ傘を右手に持ち、解放されたという風に軽々と左手に柄を持ち替えると、空けた利き腕を伸ばして、社務所に置かれた木箱の中から小さく丸く赤い、さっきお守りというものだと僕たちに説明した物を指先でつまんで取った。
張り出し板の、覗き込むことの出来ない社務所の中の部分の角度に当てた視線から、お母さんがお守りをつまみ上げて視界に入ったその動きに合わせて首をぐるりと振り向けて目で追い、最後にお母さんがつまんだそのお守りを、雨を受けないように由香ちゃんごと傘で覆いながらしゃがみこんで、由香ちゃんの目の前にぶら下げて、
「これ?」
と訊くと、由香ちゃんは顔の間近に来たそのお守りに寄り目でじっと視線を合わせ、こくんとうなずいた。お母さんが由香ちゃんにお守りを渡す。その間真希お姉さんはそんな二人の様子を微笑みながら眺めていた。

95ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/17(土) 04:06:59 ID:NBn3fmkE
「佳くんにも買ってあげようか。どれにする?」
 由香ちゃんのお母さんが僕に訊いてきた。
 僕はそれを聞くと、再び背伸びして木箱の中に並べられた物を見渡した。真希お姉さんは二人に向けた顔をこっちに向けたが、背伸びして一生懸命置かれたものを張り出し越しに見ようとする僕に対し、申し訳なさそうに微笑みかけるばかりだった。
やがて、真希お姉さんが僕に見やすいようにと、箱の両端に手をかけ、角度をもっと上げてさらに見やすくするか、張り出しの上に箱を移動させようとするかしようとする時、僕は「これ」と、同じものがいくつかある箱の中の一室を指さした。
 箱に両手をかけた真希お姉さんが顔をうつむけて、僕が背伸びしたままぴょんと飛び跳ねながら、張り出しの上に腕を伸ばして指差した物を確認すると(上に伸ばした僕の腕のむき出しの手と、レインコートの袖に付いた雨滴で張り出しの上に点々と水跡がついた)、それを白く細長い指で箱から少しつまみ上げて、軽く振って言った。
「これ?」
微笑みながら訊いてくる。僕はうなずいた。

96ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/17(土) 04:07:53 ID:NBn3fmkE
 僕が選んだのは由香ちゃんが選んだ丸く小さいお守りの色違いの、青色のやつだった。本当は二回りくらい大きくて長方形で平べったい、これも青色――というより紺色――のが欲しかったが、そっちは500円で、由香ちゃんと、僕が今回選んだ小さくて丸いやつの300円より高く、よその子供の僕が由香ちゃんを差し置いてそれより高いものを選ぶのは気が引けたのだ。

97ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/18(日) 06:46:13 ID:BOdnDgy2
「それでいいのね?」
 由香ちゃんのお母さんが僕に訊いてくる。僕は真希お姉さんからそちらに首を向けて、またうなずいた。由香ちゃんのお母さんが真希お姉さんから青い小さなお守りを受け取り、それをこちらに渡してくる。
「――じゃ、この二つと――、あとせっかくだからおみくじもお願いしようかしら――こら! 由香! ふらふらしてないでこっち来なさい!」
 僕にお守りを渡した後、スカートのポケットから黒いがま口の小銭入れを取り出そうとしていたお母さんが後ろの方を振り向いて言った。
振り向いた先では由香ちゃんが、本体が雨に濡れないように、指先で紐をつまんだ両手のひらを上にドーム状に覆うように持ったお守りを顔のそばに近づけてじーっと見つめながらよちよちと、石畳の上の参道と社務所の分かれる辺りまで歩いて出て行っていくところだった。
ちょうどさっきまで拝殿にお参りをしていた中年の男性の参拝客が一人参道を歩いて鳥居の出口に向かって歩いていくところで、傘を差して参道の左端を歩いていたその人はそんな由香ちゃんの方を横目に観察しながら通り過ぎようとしていたが、由香ちゃんがふらふらと参道の方に出、ぶつかりそうになるのを体をよじってかわした。

98ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/18(日) 06:46:47 ID:BOdnDgy2
「由香!」
 お母さんが本格的に体を後ろに向けて由香ちゃんに対し怒鳴りつける。傘を差したまま申し訳なさそうにぺこぺことその参拝客に対し頭を下げもした。参拝客の方は気にしないようにとでもいう風ににっこり笑って、こちらも会釈して返すと、最後に優しく由香ちゃんの方を見つめてそのまま鳥居の方へと歩き去って行った。
「早くこっちに来なさい!」
 お母さんが右手に小銭入れを持ったまま少し怖い顔をして由香ちゃんの方を差し招くと、由香ちゃんはお守りから目を離し、指でつまんだ右手をだらんと横に下げてよちよちとこちらに戻ってきた。ピンクのレインコートに長靴のその格好で不器用に体を揺らしながら歩くたびにレインコートの大きな皺が動きに合わせて位置や形を変え、新たに雨滴を受けながらも、由香ちゃんのその動きでわしわしと表面の水滴を左右に弾き落としてもいった。
もはや雨に濡れることは気にしていないのか、無造作に横に投げ出された右手に持ったお守りを、僕のそばに来て前に立った由香ちゃんは腕を勢いよくあげて僕の顔の前にかざし、にこーっと笑って、
「お揃い」
と言った。どうやら僕が両手で体の前に持った青いお守りをこちらに近づくまでの間に見ていたようだ。僕も思わず笑うと手を上げ、並べるようにして由香ちゃんのお守りのすぐ横に僕のお守りを持ち上げた。

99ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/18(日) 06:57:21 ID:BOdnDgy2
「お揃い」
と言った。どうやら僕が両手で体の前に持った青いお守りをこちらに近づくまでの間に見ていたようだ。僕も思わず笑うと手を上げ、並べるようにして由香ちゃんのお守りのすぐ横に僕のお守りを持ち上げると、
「うん」
と、笑いながらうなずいた。これにしてよかったと思った。

100ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/18(日) 21:49:47 ID:BOdnDgy2
 そんな僕たちの方を由香ちゃんのお母さんがちらりと振り向いて、「二人ともおみくじするわよ」と声をかけてきた。僕たちを見る目の瞳孔が少し開き、心なしかいつもより声と表情が柔らかいように感じられた。真希お姉さんはそんな僕たちの様子を見て相好を崩して微笑んでいるばかりだった。
「佳くんはおみくじは初めて?」
 右手に持った小銭入れを傘の柄を持ったままの左手に近づけ、手慣れた様子で器用にその左手の空いた指でがま口の金具を外し開け、中から取り出した小銭を、「初穂料800円となります」と言う真希お姉さんに渡しながら由香ちゃんのお母さんは訊いてきた。お姉さんがお釣りを渡さなかったところを見るとちょうどそれだけの金額だったようだ。
 僕はうなずいた。と、いってもおみくじ自体どんなものかわからなかったのだが。由香ちゃんのお母さんは真希お姉さんが両手で持って渡す、棚のこちらから向って右端に置いてあった木の筒を片手で掴んで受け取ると、
「この筒を下に向けて振ってね――」由香ちゃんのお母さんは筒を水平より少し傾けて、筒の上を向いていた面を僕たちに見えるように下に向けると、傘の柄を持った左手の人差し指を伸ばし、筒の上面に小さく開いた長方形の穴を指差した。
「――この穴から出てきた木の棒を神主さんか巫女さんに渡すの」筒を持った右手を少し動かして社務所の方を示して言った。普段親しく話している二人の名前を直接言わないのは、こういう神社――おみくじのやり方――一般の作法の事を言っているのと、現に今仕事をしている二人に敬意を表してのことだというのは僕にもわかった。
神主さん――山部のおじさん――の方は社務所の受付の僕たちの対応をさっきから巫女の真希お姉さんに任せきりにして、その後ろの社務所の奥内部でさっきから何やらごそごそ整理らしきことをしていた。

101ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/19(月) 21:00:42 ID:x2Z2R49.
「それでもらった紙に運勢が書いてあってね、それが神様のお告げなんだけど――まあ占いみたいなものよ。――とりあえずやってみる? 重いから落とさないように気を付けてね」
 僕は、さっき買ってもらったお守りをレインコートの底の深い横ポケットに奥深く押し込むと、由香ちゃんのお母さんが再び穴の開いたほうを上に向け戻して渡してきたおみくじの筒を受け取った。言われた通り、小さな僕には重かった。
僕がしっかり両手で持つまで、受け取る間由香ちゃんのお母さんは慎重に渡してくれたのだが、それでもお母さんが手を離した途端ずっしり僕の腕に重さがかかり、その重さで前につんのめってしまった。木の筒と、中にたくさん入っている木の札とかのせいだろう。動くたびに中でからからと音が鳴った。
僕は言われた通り、小さな穴の開いた方を下に向けようと、両腕で抱くようにして重さを支えながら、慎重に持った手と腕で筒を動かした。すでにしとしと降る雨を受け始めているとはいえ、レインコートの袖と胸の部分で大幅に筒が濡れてしまうからしたくなかったが、落とさないためには仕方なかった。
そんな僕の方を、筒を渡した由香ちゃんのお母さんと、再び張り出し板の上に手をついて身を乗り出した真希お姉さんは心配そうに見ており、由香ちゃんは脇にお守りをだらんと下げて持ったまま、ぽかんと僕の様子を眺めていた。
僕はそれらを意識すると一層力が強く入り、少し扱いやすくなるのを感じた。僕は男の子だし、弱味を見せたくなかったのだ。

102ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/19(月) 21:01:22 ID:x2Z2R49.
 うまく上下逆さまに持ち替えると小さな両手で掴むとも挟み込むともいうように筒を持ち、振ろうとした。
――が、このままだと濡れた石畳の上に出てくる木の札が落ちてしまう。僕はそれでいいのかという風にちらりと、身を乗り出してこちらを見守る真希お姉さんの方を見上げたが、それを受けた真希お姉さんは見守る心配そうな表情を少し和らげて、大丈夫という風にこくりとうなずいた。
僕はまだ少し気が引けたが、両手というより両腕をぶんぶん上下縦に振った。降ってきた雨と、僕のレインコートに付いていた雨滴とで木の表面が濡れてはいるが、それほど滑りやすくはなく、六角形の形もしっかり両手で挟み持つのに役立った。
からんと細長いお箸のような、言われた通りの木の札が濡れた石畳の上に落ちた。両手がふさがっている僕のために、由香ちゃんのお母さんが傘を持った左手を肩の辺りに固定しながら素早く屈みこんで、空いた右手で拾った。

103ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/20(火) 06:01:52 ID:.cKRl4ZA
 由香ちゃんのお母さんは拾った竹札の端を手首を返して素早くちらりと見ると、その見た端の方を僕の顔の前に差し出して僕に見えるようにした。墨で何やら書かれていたが、漢字で僕には読めない。
由香ちゃんのお母さんは僕にしばらく見せた後、拾った時から差した傘で雨を受けないようにして、木筒から石畳の上に落ちた時ほんの少し濡れたきりの竹の札を真希お姉さんに手渡した。真希お姉さんはそれを受け取ると、
「七番ですね」
と言って、受け取った竹札を脇に置くと、社務所の内側で屈みこんで何やらごそごそやり始めた。小さな僕には張り出しが邪魔するのと、高さが足りないので見えず、何やら漁る音だけが聞こえる。
「はい」
 真希お姉さんが何やら折りたたんだ紙を由香ちゃんのお母さんに渡そうとした。由香ちゃんは手を出したが、それを受け取ろうとはせず、出した手をぶんぶんと振ると、
「あー、由香の分もするし、後で一緒に受け取って見ることにするわ」
と言った。真希お姉さんは笑って、両手で指し出そうとした紙を竹札と同じ、脇に置いた。
 由香ちゃんのお母さんが手を差し出すと、僕はまた両腕で抱えて木筒の上下を元に戻して(さっきからの扱いで少し慣れたので、今度は割と楽に出来た)、それを由香ちゃんのお母さんに渡した。
受け取ったお母さんは雨に濡れたそれを念のため滑らないようにと、左手に傘を持ち、受け取った右手一本で自分の白のブラウスに軽くごしごし木筒を回しながらこすり、水分を幾分拭き取ってから今度は由香ちゃんに渡そうとしたが、
ふと思い直して、両手を上に差し伸ばす由香ちゃんのそばに屈み込むと、木筒を差し出し、両手でぎゅっと由香ちゃんがそれを掴んでも、持った右手を離そうとせず、一人ではその重さに耐えられない由香ちゃんのために、あまりその動きを邪魔しない程度に手伝って持ち支えた。

104ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/20(火) 06:30:02 ID:.cKRl4ZA
 由香ちゃんが両手に持った筒を上下にぶんぶんと、傍から見ると乱暴そうにも見える勢いで振る。ものすごく真剣な表情だった。腕どころか、首、背中、腰や足まで前後上下にゆらゆら揺れており、木筒の動きに合わせて一緒に動く、お母さんの持ち支えた手も危うくすっぽ抜けそうになるほどだった。由香ちゃんの横にしゃがんだお母さんはその様子で苦笑するほかなかった。
 カランと勢いよく一本の竹札が濡れた石畳の上に落ちる。由香ちゃんは札が出る際に振った勢いで最後に体全体を一揺れさせると、動きを止めた。地面に落ちた竹札を依然真剣そうな表情でじーっと見つめる。先ほどまでと違い、はっきり見る対象が出来たからその眼に色が宿り、その雰囲気を強めていた。

105ペンギン ◆aTogMd7XVM:2015/01/21(水) 06:21:48 ID:py0bH1RE
 お母さんが立ち上がりながら右手に持った木筒を由香ちゃんの手から離そうと持ち上げると、由香ちゃんはそれに逆らわず、持ったというよりは、今は手をかけただけの両手を木筒と一緒に引かれるままだらんと伸ばし、最後に伸び切った腕の手を完全に離すと、力の抜けたその両腕がぶらんと下に落ちた。
その間中落ちた札に目を当てたままで、引かれて持ちあがる両腕で体と首がねじれたようになっていた。
由香ちゃんのお母さんは素早く木筒を張り出しの上に置いて、すぐに僕の時と同じように屈み込んで空いた手で札を拾おうとしていたようだが、置こうとした木筒を両手を差し出した真希お姉さんが受け取っている間に、
手を離した由香ちゃんが素早くお尻を突き出した格好で膝を曲げてしゃがみ込むと、左腕をぴんと斜め後ろに伸ばし、まっすぐ伸ばした右腕の手をそのまま地面の上に置くようにして落ちた札をちょんと拾った。
拾った札を由香ちゃんは見ようともせずに、お母さんにも渡さず、直接真希お姉さんの方に向けて背伸びして伸ばした腕を差し出し、由香ちゃんのお母さんから受け取った木筒を社務所の元の位置に戻した真希お姉さんは再び窓から身を乗り出し、張り出しの上に精一杯伸ばされた手から竹札を受け取った。


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