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避難所スレ

150『主はまたつむじ風の中からヨブに答えられた』 ◆OSPfO9RMfA:2014/12/30(火) 19:32:28 ID:2tV2E4L20

 慌てて否定しようとするジナコだが、肯定したアンデルセンに思わず呆けてしまう。
 アンデルセンは長椅子に座り、ジナコに背を向ける。

「戦争、流行病、天災、人災、化け物……この世は全知全能の主が作ったにしては、苦難が多すぎる。『どうして悪いことをしていないのに、私がこんな目にあわないといけないのか』。そう主に嘆く気持ちは分からんでも無い。第3章11節、『なにゆえ、わたしは胎から出て、死ななかったのか。腹から出たとき息が絶えなかったのか』。義人であるヨブですら、数多の苦難を前に、己が生まれたことを呪った」
「……」

 アンデルセンの語りに、ジナコは泣きやみ、黙って聞き入った。

「だが違うのだ。世界は我ら人間の為にあるわけではない。主の前には俺も、お前も、矮小な一人の生き物にすぎん。主が与えし苦難の理由を、たかが人間が分かるよしもない」
「じゃあ、アタシはどうすれば……」
「苦難を受け入れよ」

 アンデルセンはそう宣告する。

「苦難に対し、『間違ってる』『私は悪いことをしていないのにどうして』と否定して目を背けるのではなく、主から与えられた苦難を無知なる人間として素直に受け入れるのだ。勿論、それは決して容易いことではない。だが、苦難を受け入れれば、新たな発見があるだろう」

 アンデルセンはそこまで語ると立ち上がる。

「食事を持ってくる。少し待っていろ」

 アンデルセンは背を向けたまま、礼拝堂を出て行く。
 ジナコはその背を見守ったまま、立ちつくしていた。

「……苦難を、受け入れる……」

 静寂に満ちた礼拝堂に、ジナコの小さな声が響いた。


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