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避難所スレ

149『主はまたつむじ風の中からヨブに答えられた』 ◆OSPfO9RMfA:2014/12/30(火) 19:32:11 ID:2tV2E4L20



 アンデルセンとジナコは孤児院の離れに存在する礼拝堂に入った。
 アンデルセンは事前に公衆電話で何人たりとも礼拝堂に入らぬよう、ハインケルに指示をした。
 新都の事件の重要参考人であるジナコを匿うことは、犯人隠匿の罪に当たる。アンデルセンはマスターであり、この街が作られた物と知っているが故に気にならないが、ハインケル達はNPCであり、彼らにとってはこの街が全てだ。牧師の業務行為として無罪となった判例もあるが、それでもハインケル達に迷惑が掛かるのは避けられない。
 彼らに迷惑を掛けぬよう、アンデルセンは理由を言わずに指示を出し、ハインケルは理由を聞かず承諾した。堅い信頼関係が、それを為した。

「すまぬがここで少し待って貰おう。廃教会に行く前に、孤児院の様子を見ておきたい」

 アンデルセンはジナコにそう断りをいれる。アーカードとヴラド三世の戦いを見届ける意味でも、ジナコを匿う意味でも、廃教会の方が都合がいいだろう。
 だが、アンデルセンは自身の役割である院長として、孤児院の様子を確認しておきたかった。それに加え、食料を用意するという理由もある。中間地点として、この礼拝堂を利用する形だ。

「神父さん……一つ、良いッスか?」
「何だ?」

 礼拝堂に着くまで沈黙を保っていたジナコが、顔をうつむかせたまま小さな声で尋ねる。
 アンデルセンは彼女の言葉を待った。

「アタシ、何もしていない……悪いこと、何もしていない。なのに、どうして……どうして……」

 ジナコはうつむいていた顔を上げる。

「どうして、神様はアタシを助けてくれないんッスか?! どうして神様はアタシにこんなことするんッスか?!」

 涙を流し、泣きじゃくり、まるで子供のようにわめきながらアンデルセンに問いかける。

「『主はまたつむじ風の中からヨブに答えられた』」

 アンデルセンは静かな声で答える。

「えっ……?」
「『あなたはなお、わたしに責任を負わそうとするのか。あなたはわたしを非とし、自分を是としようとするのか』」
「……?」

 アンデルセンの言葉の意味が分からず、ジナコは押し黙った。

「旧約聖書、ヨブ記、第40章の6節と8節。簡単に言えば、『お前は自身を正当化するために、主が間違っていると言うのか?』と言う主の問いかけだ」
「い、いや、アタシ、そんな――」
「その気持ち、わからんでもない」
「……え?」


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