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【艦これ】艦隊これくしょんでエロパロ18

933930:2016/06/06(月) 00:57:23 ID:921OSk/2
どれぐらいの時間が経ったのか、気が付くと私はシートに座り船を漕いでいた。
車内には日の光が満ちて、青々とした田園風景の中を電車はゆっくりと走っている。
カタン、カタンと規則的に揺られながら、穏やかな日差しに照らされてのどかな景色を見るでもなく眺めている。
これは夢なのか、それとも――
不意に電車がスピードを緩め、田んぼの真ん中で停車した。
駅、と言うより土塁と呼んだ方が近いような土を盛り上げただけのホームが見えて、私は不意にここが目的地だったような気がして席を立った。
ホームには聞き覚えのない駅名が記されている。表記からして終点ではない様だが、この次の駅も前の駅も聞き覚えがない。

「どこなんだ?ここは……」
思わずつぶやく。
田んぼの真ん中に走る単線。駅の周りは田畑に囲まれ、まっすぐに伸びた畦道が続いている。
遠くを見ると高く緑の山々が連なり、この辺り一帯はその山々に囲まれた場所であることが分かる。
のどかで、知らない場所の筈なのにどこか懐かしい、日本の田舎のステレオタイプな風景。

「提督」
懐かしい声、懐かしい呼び名に振り返る。
ホームの端に忘れようはずもない人。伊勢。今は艤装を外している、私の最初の戦艦。
「お待ちしていました」
最後にあった時と同じ屈託のない笑顔。優しく、柔らかな声。
温かいものが一筋頬を伝った。

「行きましょう。皆待ってますよ」
感無量とはこういう事を言うのだろう。
これが現実なのか、それとも幻なのか、そんな事はどうでもいい。
何か言いたい。けれど胸がいっぱいで何も言えない。ただ彼女の背中を追う様に後についていくことしか出来ない。

涙で歪んだ視界をごしごしこすって畦道を歩く。
遠くに軽トラが走っていく。ぽつぽつと田畑の隙間に点在する民家。路肩に放置された泥だらけのトラクター。死にたくなるぐらい懐かしい風景。
そんな景色の中を歩き続け、野菜の無人販売所のある角を曲がった時だった。

「司令官!」
振り返った先には里山のふもとに建つ、木造一階建ての、この村同様古く寂れた学校。その校門の前に立つ一人の少女。
セーラー服姿で長いサイドテール。健康的な少し日に焼けた肌。屈託のない愛らしい笑顔。柔らかな懐かしい声。
忘れもしない。大切な娘。

「綾波……」
名前しか言えなかった。それ以上は泣き声にしかならなかった。
泣きながら、子供のように大泣きしながら彼女を抱きしめた。
「おかえりなさい、司令官」
綾波の声もまた涙ぐんでいたのは、気のせいではないだろう。




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