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【艦これ】艦隊これくしょんでエロパロ13 (避難所2)

140名無しの紳士提督:2014/07/23(水) 23:33:13 ID:osZLnTUA
 (三)

濃紺に濃紺をただ只管に重ねて作られたような、蒼黒の世界。
重い水圧が、鉄の総身を軋ませる。
気が付くと、赤城は仄暗い水底にいた。


加賀さんもきっと、私の事を嫌いになったに違いない。
いいえ――提督だって、戦えない空母に用は無い。といって愛人の立場でいるなど、自分にも彼にも似合わない
だろう。
でも。鎮守府を去ったとしても、何処へ行けば佳いというのか。ならばもっと頑張って――しかし一体、何を、
どうやって?


虚ろな心で仮初めの秘書艦として一日を過ごしたのち、提督不在の一人寝の夜。そんな堂々巡りの迷妄に鬱々と
嬲られながら、自室の暗闇の中、膝を抱えて寝台の上にいた――はず、なのに。
魚影以外に訪れる者もなく、多くの死を抱えたままの永遠の静寂――海底。何十年も見慣れたその世界に自分は
再び還っていた。

ここがやはり、愚かにも挑み、敗けて沈んだ、私の正しい居場所なのか。
冷たい海水と安らかな暗闇に身を任せた消失寸前の意識が、そう悟った途端――


――轟、と。
かつて沈降し着底して以来の、はるか遠くまで響く鐘のような一瞬の鈍く低い音が、暗い海中の静寂を破った。

聴き違えではない――その証に、やがて物言わぬ重たい鉄の塊であるそれ自身が静かに震え、軋み、水圧の牢獄
に泥を舞わせながら数十年ぶりに、海底に蠢いていた。
そして何か力強い意志に引かれるように、それは冷たい海の底から離れ――灯火の無い隧道のような暗黒の世界
の中、静かにその巨大な残骸は浮上を始めた。

見えぬほどに、ゆっくりと。しかし、確かに。

暗い海中を彷徨っていた、小さな小さな海蛍のような灯光が、其に次々と寄り添い、身に溶け込むように消えて
ゆく。そのたび、微かに暖かい何かが錆びた精神を照らした。

無限にも感じた時の果て、鏡のような水面が見えてきた。
両手。両脚。――黒髪。乳房。
近づくにつれ、そこへ映る自身はいつしか錆び尽くした醜い鉄塊から、瑞々しい斯良多麻の肌と射干玉の髪とを
持った娘の裸形の像を結んでゆく。
やがて世界の際、極限まで近づいたその鏡像とひとつになり――そして深海と同じく暗闇の支配する夜の海上へ
艦娘の姿をもって坐々と静かに浮かび上がる。

そう思った、次の瞬間。


赤城は、満開の夜桜の下にいた。




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