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投下用SS一時置き場4th

140エンドロールは流れない -Meaning of Birth- 11:2016/11/30(水) 01:35:31 ID:tlYwzgK20


「何でだ?お前が俺の事を快く思ってないのは判る。だけどこんな所で死にたくない筈だ。
それに元の世界にお前の帰りを待つ仲間や友達だって―――」「―――お前の勝手な価値観で判断しないで欲しいね」

シンクは明らかに不愉快な表情を浮かべ、再びロイドの言葉を遮った。

「僕はお前と違って、僕自身を含めた全ての生き死にに興味は無い。元々僕の存在価値は元の世界でも、この世界でも無い。
空っぽの存在なのさ。だから脱出出来たとしても僕の居場所も、生きる目的も、何一つ存在しない」

感情の全く無い言葉に、リフィルは背筋に冷たい物が走るのを感じた。
仮面の下の素顔を垣間見た気がしたのだ。弟と年齢が大して変わらぬ少年が、
私達と同じ――否、それ以上の絶望をその身に宿している事に。
ロイドも同様だったのか、困惑の表情を浮かべながらシンクを見つめている。

「僕の世界には、フォミクリーと呼ばれる複製技術が存在する。それによって生み出された被験者の複製体――それをレプリカと呼ぶ。
僕やこの舞台に呼ばれた導師イオン、そしてルーク=フォン=ファブレがそれさ」
「なっ!?に…人間を…複製……!?」

突如告げられた事実に、ロイドは勿論、私も驚愕する。
大佐からその技術については聞かされていた。だがそれにより創られた人物が
他ならぬ目の前にいたと言う事に。

「僕は導師イオンが死ぬという預言で誕生した。そして―――1度は失敗作として廃棄されている」
「ッ!?…だから、なのか?…お前は捨てられた事や、その元凶となったフォミクリーや預言を…元いた世界を恨んでいるのか?」
「違うよ。生まれたからさ!導師イオンやルーク=フォン=ファブレみたいに代用品ですらない。ただ肉塊として生まれただけだ」

吐き捨てるように言うシンクに、私は漸く気付いた。この少年はここに来る前から絶望していたのだ。
だからこそ彼は希望を求めない。絶望の中で嘲笑い続けているのだと。

「馬鹿馬鹿しい…預言なんてものが無ければ、僕はこんな愚かしい生を受けずに済んだ」

…いや、絶望すらも無いのかもしれない。絶望的な状況下で、生を呪った少年は
全てを死地へ置いて来たのかもしれない。だから彼は止まらない――否、止められない。
ロイドは悲しみを湛えた表情でシンクに静かに訊ねる。

「…生まれてきて、何も得るものが無かったって言うのか?」
「無いよ。僕は空っぽさ」

即答――全てを否定した言葉にロイドは唇を噛み、手を強く握る。
それに構う事無く、シンクは言葉を続ける。

「だが構わない。そんな事は今の僕にはどうだっていいことだ。ロイド、お前が最期まで諦めないというのなら―――
―――今此処で、僕が意志も希望も、その残された命ごと壊してやるよ!」

そう言い、シンクは両掌を合わせる。同時に起こる凄まじいエネルギー。
雪が、瓦礫が宙を舞い、再び大地が鳴動し始める。

「こ、これは…!?」
「劣化してるとはいえ、導師と同じ第七音素の力…本気で戦えば只では済まない…!」

後方支援がメインである私でもさすがに判る。交渉も、説得も全て拒否―――。
それを言葉で無く、戦意と敵意、殺意――あらゆる悪意に乗せての返答。
ロイドもそれを悟ったのだろう。その瞳に諦めの光が宿る。

「―――どうしても、退かないんだな」

その言葉に返答は無い。最早戦いは避けられない。
ロイドは悲しそうに目を伏せたが、未練を断ち切るように両目を開き、剣を抜く。

「シンク…お前が何と言おうと、俺は絶対諦めない!必ずお前を止めて見せる!」
「…なら試してみようよ。お前と空っぽの僕、この狂った世界がどっちを生かそうとしてるのかさぁっ!」

その言葉と同時に、両者は大地を蹴り、両剣が、風を纏った拳が凄まじい速度と威力でぶつかり合う。
理想を諦めることの無い誓い多き剣士と、理想を否定する烈風の、熾烈な激闘が、ここに始まる――。


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