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*(‘‘)*楽園を目指して泣くようです
1
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/21(金) 23:20:29 ID:???
着ぐるみの頭が笑う。
( ・∀・)「さぁ、行こうか」
*(‘‘)*「何処へ行くの?」
( ・∀・)「君の行きたいところへ」
少々強く手を握られた。
ほら、と急かすように彼が前に出るので、私も仕方なく震える足を踏み出す。
踏み出した瞬間、周りがぱっと明るくなった気がするけれどたぶん気のせいだろう。
.
2
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/21(金) 23:22:15 ID:WrEy5xiE
1:その目はまだ開かない
.
3
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/21(金) 23:26:15 ID:WrEy5xiE
o川*゚ -゚)o「つまんない世界!」
私は商店街を歩きながら眉を潜めた。
色がない。色がないのだ。町は、私の小さな世界は、あまりに色彩を欠いている。
そんな私の叫びは商店街のざわめきに消えた。それがまた気に入らない。
今をときめく可愛い可愛い女子高生の私、青春真っ盛り、それなのに、それなのに!
ああ、カラフルでなければいけない!
ゆゆしき事態だ。
つまらないなんてダメだ。
何せ青春なのだ。せめて青色ぐらいは欲しいじゃないか!
o川*゚ -゚)o「いっそペンキでも持ってきてぶっかけてやろうか…」
ふらふらと歩きながら、頭の中で家にあったペンキを思い浮かべる。しかしすぐ苦い表情になった。
そうだ、全てが色彩を欠いているのだから、当然ペンキにも色はないのだ。
万策尽きたり。ふらふらとした足取りが、とぼとぼとした足取りになった。
このままきっと私は色のない青春を過ごすんだ。
4
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/21(金) 23:30:02 ID:WrEy5xiE
そのとき、どん、と誰かにぶつかった。
呆然と歩いていたせいで、注意力散漫になっていたのだろう。
慌ててすみませんと頭を下げる。
*(‘‘)*「いいえ、こっちこそごめんなさい。よく見てなかったです」
o川*゚ー゚)o「あ、いえ…」
ぶつかったらしい幼い女の子は、存外はきはきと喋った。
多少舌足らずだけれど、語気がしっかりしているのだ。少し面食らってしまった。
そろそろと視線を上げると、女の子が大人の男性と手を繋いでいるのがわかった。
男性、といっても顔は見えないので体つきからの憶測だ。
何故なら、彼?は着ぐるみの頭の部分だけを被っている珍妙な格好をしていたからだ。
服装は普通だったので、頭の異質さがとても目立つ。
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1488.jpg
5
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/21(金) 23:33:18 ID:WrEy5xiE
着ぐるみの男がわずかに身じろぎをした。
はっとして目を反らす。あまりにまじまじと見つめていたらしい。
女の子が少し笑った。
*(‘‘)*「だいじょーぶですよ、気にしなくて。
こいつがへんてこりんな格好してるのが悪いのです」
o川;゚ー゚)o「は、はぁ」
( ・∀・)
*(‘‘)*「やかましいです。悔しいならその頭脱ぎなさい」
(・∀・三・∀・)ブンブン
o川;゚ー゚)o(え? 今この人何か喋った…?)
訝しげな雰囲気に気がついたのか、女の子は「ああ」と思い出したように説明した。
曰く、この着ぐるみ頭の喋っていることは女の子にしか聞こえないとか。
6
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/21(金) 23:37:33 ID:WrEy5xiE
o川*゚ー゚)o「そんなことってあるのね」
*(‘‘)*「あるのです」
でも今の私にとってはそんなことより、色が無いことのほうがずっと大変な問題だったのでそこは流した。
*(‘‘)*「ところで、おねえさん」
o川*゚ー゚)o「ん、なぁに?」
*(‘‘)*「ぶつかった上に質問というのは心苦しいのですが…
お姉ちゃんの楽園を教えてくれませんか」
o川*゚ー゚)o「…楽園?」
女の子は「はい」と頷いた。
「私の楽園を見つける手がかりになるかもしれないので」とも言う。
神妙な顔をして、恐る恐る、何か秘密でも打ち明けるように。
*(‘‘)*「楽園…というか、それは言葉の綾ですね。
楽しいところ。良いところ。そんな感じのところなら何でも」
7
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/21(金) 23:40:20 ID:7CoilpBM
o川*゚ー゚)o「…漠然としてるね」
*(‘‘)*「ひろすぎる意味を持ってるっていうのはわかってます。
でも、私にもよくわからないのだから、仕方ないです」
( ・∀・)
*(‘‘)*「そうですね、おまえの言う通り、 逆に言えば、その人それぞれがたくさんの楽園を知っているってことになるです」
とっておきでしょうけれど、一つくらい教えていただけませんか、と礼儀正しくお辞儀をする女の子。
つられて着ぐるみの頭も下がっていった。
o川*゚ -゚)o「んー…そうね、教えてあげたいんだけど…」
*(‘‘)*「けど?」
o川*゚ -゚)o「残念ながら、私はそんなところ一つも知らないの」
( ・∀・)
*(‘‘)*「…へ?」
8
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/21(金) 23:43:04 ID:WrEy5xiE
o川*゚ -゚)o「つまんない世界だもの」
そう言って空を仰ぐ。
モノクロの空。いつでも曇っているみたいな空。
女の子はぽかんとした顔を数秒したのち、ふと無表情に戻って、その真っ黒な瞳で私をじっと見つめた。探るような視線。
*(‘‘)*「つまんない、とは」
o川*゚ -゚)o「色がないのよ。この町には」
*(‘‘)*「そうですね。ここは色の無い町だと聞きました。現に私たちも白黒です」
o川*゚ -゚)o「それってつまらないと思わない? なんだって、鮮やかな方が目立つし綺麗だし…」
*(‘‘)*「つまり、この町に不満があるですね?」
o川*゚ -゚)o「そー」
*(‘‘)*「ならば、出ていけばよいのでは? 私達だって、この町を出れば色を取り戻します」
9
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/21(金) 23:51:48 ID:WrEy5xiE
o川*゚ -゚)o「…ダメなのよ」
目を伏せる。視線の先には、モノクロの太もも。温度の無い私の体。
o川*゚ -゚)o「ここから出れば、旅人さんたちは色を持てるのね。色を見れるのね。私と違って。…いいなぁ」
あの真っ黒な瞳にはそのとき、どれだけ鮮やかな色が映るのだろう。
今の私にとっては、彼女のひとみにはただ吸い込まれそうな闇が見えるだけだ。
ねぇ、どんな色が見えるの?
濃い色?薄い色?明るい色?暗い色?冷たい色?暖かい色?ねぇ?ねぇ?ねぇ?
私にも、私にも。
ずるいじゃないかこの子に見えて私に見えないだなんて
そうだずるいんだみんなはずるをしている私を差し置いてずるいずるいずるい、
10
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/21(金) 23:58:45 ID:WrEy5xiE
o川* - )o
ぎゅう、と手を掴まれた。
はっとして我に返る。
( ・∀・)
o川*゚ -゚)o「あ…」
それでやっと気づいたのだけれど、私は女の子の目に片手を伸ばしていたのだった。
人差し指と中指を、まぶたに。
親指を下まつげに、向けて。
ちょうど今にも抉るようなかたちで。
その手はあの着ぐるみの男が掴んだことによって、彼女の眼前で止まっていた。
けれど、きっとあと数ミリで私の指は彼女の目にかけられ、ぐっと力をいれればぽろりと眼球がとれて、
撿撿その魅惑の視線は私の手中にあったのだろう。
なんて恐ろしいことを。
想像して震えた。私は一体何をしようとしていたのだろう。
11
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 00:05:35 ID:/ToSWoNU
( ・∀・)
男が手を離すと、私の腕は重力に従ってだらりとぶら下がった。
女の子はやっぱり黒い瞳で私を見つめている。
きっと責めているのだ、と思った。
*(‘‘)*「おねえちゃん」
o川; - )o「あ、あの、これは、これはちがうの」
*(‘‘)*「おねえちゃん」
o川; - )o「あ、ああ、もうやだ、なんで色が無いんだろう、やだ…」
*(‘‘)*「……」
o川; - )o「この町を出ても駄目なの、出たことはないけれど、もうこの町の色に染まりすぎてるから、きっと駄目なの…」
女の子の声が遠くに聞こえる。とても返事ができる状態ではなかった。
ぐらぐらと脳みそが溶けていくような感覚、ちらり、ちらりと舞う走馬灯のような何かが目の前を通りすぎていった。
その中にいた虚ろな目をした彼女は、ああ彼女は、…誰だっけ?
なにかをわすれているきがする。
急激に抽象的になった思考に悶えているうちに、女の子と着ぐるみの男はどこかへ行ってしまったようだった。
誰もいなくなった眼前は、いつも通りに商店街のざわめきで埋まっていった。
12
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 00:10:01 ID:/ToSWoNU
・
・
・
*(‘‘)*「他人のことなのに、まるで自分のことみたいに気分が悪くなったです」
*(‘‘)*「……」
*(‘‘)*「おねえちゃん、苦しそうでした。色がないのはそんなにだめですかね?」
( ・∀・)『さてね。少なくともあの子にとっては死活問題なんだと思うよ』
*(‘‘)*「…それは、そうですね。さて」
( ・∀・)『うん?』
*(‘‘)*「何が『うん?』ですか。さっさと次の町へ行くですよ」
( ・∀・)『…ドライだね。何とも思わないの?』
( ・∀・)
( ・∀・)『いや、思うはずは無かったね。失敬失敬』
*(‘‘)*「…? 何かムカつくのです。殴ってよいですか?」
( ・∀・)『それは却下で』
13
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 00:14:00 ID:/ToSWoNU
*(‘‘)*「…はぁ…じゃあ歩きますよ?」
( ・∀・)『いいや、それも却下だ』
*(‘‘)*「は? あれも却下これも却下って…
わたくしの行きたいところへ付いていくのでは無かったですか?」
( ・∀・)『ついていくんじゃない。導くんだよ』
*(‘‘)*
( ・∀・)『さぁ、あの子を救ってあげなくちゃ、君の行きたいところへは行けないよ』
*(‘‘)*「…脅迫に近いものを感じます」
( ・∀・)『ははは』
*(‘‘)*「そんな簡単に、救えなんて…無茶ぶりにも程があるですよ」
14
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 00:22:36 ID:/ToSWoNU
( ・∀・)『どうしたら救えるか、考えるんだね』
*(‘‘)*「それが無茶ぶりだって言ってるんですよ…ええと……町の外に連れ出すとか?」
( ・∀・)『なぜ? 外に出ても無駄だと言っていなかったかい?』
*(‘‘)*「それ、思い込んでるだけのように聞こえました。実際やったことないんでしょう?
やってみる価値はあると思うのです。ダメならダメとわかりますし。それに、」
( ・∀・)『うまくいけば色を与えられる。なるほどねぇ』
*(‘‘)*「ええ」
( ・∀・)
( ・∀・)『……まさか色を与えたら万事解決だなんて思ってないよね?』
*(‘‘)*「は」
15
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 00:23:56 ID:3DKrm2Nw
支援
16
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 00:26:48 ID:/ToSWoNU
*(‘‘)*「違うですか?」
( ・∀・)『僕にはね、思い込みっていうより自分を守っているように感じたな』
( ・∀・)『それに、たとえばおもちゃが欲しいとだだをこねる子供がいたとして
おもちゃを与えて泣き止ませるのは簡単だけど、それって何か違うと思わない?』
( ・∀・)『同じように、この場合問題は色の有る無しではなくて、
色のないこの世界を彼女がひどく嫌悪していることじゃないの』
*(‘‘)*
17
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 00:29:27 ID:/ToSWoNU
「お前の言うことは、よくわかりません…」
.
18
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 00:31:25 ID:/ToSWoNU
支援してもらったのに悪いのですが眠気がヤバイので明日に一話の続き投下しますごめんなさい
早ければ明日の朝。遅くて夕方です
19
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 00:32:42 ID:3DKrm2Nw
乙乙
続きが楽しみ
20
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 00:36:01 ID:KJ3QpzcI
おつ
21
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 02:17:34 ID:cGF8VWRE
おつ
22
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 02:19:16 ID:???
乙乙!
23
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 18:26:46 ID:/ToSWoNU
続き投下します
24
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 18:28:34 ID:/ToSWoNU
あの女の子がまた現れたのはすぐだった。せいぜい数時間後のことである。
しかし表情は妙に機嫌の悪そうな膨れっ面だった。
まさかこんなに早く鉢合わせるなんて予想外で、少しだけ目を丸くした。
そもそももう会わないと思っていたのに。
*(‘‘)*「お姉ちゃん、つまんない世界だって言ったですよね?」
o川;゚ー゚)o「え、う、うん」
ませた女の子の子供っぽい膨れっ面と、さっきまでのぐらぐらした記憶とが、
頭の中で混ざり合ってひどくちぐはぐだ。
若干の気まずさを感じて目を合わせられない。
戸惑う私を差し置いて彼女は小さく呟いた。
*(‘‘)*「……るのです」
o川*゚ー゚)o「え?」
*(‘‘)*「今日は遊びたくるのです!」
o川;゚ー゚)o「えええ?」
25
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 18:32:21 ID:/ToSWoNU
*(‘‘)*「私難しいことは分からないのです! ** だから、もう片っ端から楽しいことさせるです!
つまらないだなんてちっとも思わないように!!」
o川;゚ー゚)o「ちょっと待って、話が見えな…」
*(‘‘)*「この町のパンフレット買ったですよ!
とりあえずここのパンケーキ一緒に食べましょう! 私パンケーキ大好き!!」
o川;゚д゚)o「だから待ってってば! って言うかそれただのそっちの好みだよね!?」
私の反論もむなしく、女の子はさっさと先に行こうとしている。
先程とは違う戸惑いに包まれている私の背中を着ぐるみ頭がぐいぐいと押した。あんたも共犯か。
ため息をつく。
…仕方ない。どうせ暇だし、白黒で味気ないパンケーキを食べるのもいいかもしれない。
26
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 18:37:40 ID:/ToSWoNU
***
*(‘‘)*「パンケーキ美味しいですね」
o川*゚ -゚)o「そうかなぁ? 白黒だしなんか焦げてるみたいに見えるなぁ」
*(‘‘)*「見た目と美味しさは関係ないですよ」
結論から言うと、正直パンケーキは思った以上に美味しかった。パンフレットに載るだけある。
でもそれが何だかますます悔しい。
o川*゚ -゚)o「んー…でもさ、たとえば汚い盛り付けの料理があったとするじゃん?
そういうのって、それだけで不味い気がしない?」
*(‘‘)*「それは店側の怠慢が見えて信用できないからですよ。衛生面とか。
でもここの料理は白黒にならざるを得なかっただけですし」
o川;゚ー゚)o「…君何歳なの? 改めて思ったけど妙に大人びてるねぇ」
完全に論破されたような気がしてますます悔しくて、話題を変えた。
しかし答えは返ってこなかった。女の子はパンケーキをもう一枚頼むのに忙しいらしい。
着ぐるみ頭は飲み食いせず、じっと私を見つめている。
なんだこのよくわからない空間は。
27
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 18:50:17 ID:/ToSWoNU
脱力しつつも、パンケーキを運ぶ手だけは動いた。行動は素直だなぁ、とさらに脱力してしまった。
*(‘‘)*「あ、次はカラオケですよ」
o川;゚ー゚)o「えっまだ続くのこれ!?」
*(‘‘)*「あったりまえです!」
女の子はパンケーキをメロンジュースで飲み下すと、私を指差して言った。
*(‘‘)*「お姉ちゃんが楽しくなるまで続けてやるから、覚悟するですよ!」
28
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 18:56:50 ID:3DKrm2Nw
支援
29
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 19:02:30 ID:/ToSWoNU
宣言通り私たちはカラオケに行くことになった。
女の子はドレミの歌を熱唱したし、私も何だかんだで色々歌ってしまった。
持ち曲も少ないし、歌に自信はないのだけれど。
BGMの音はうるさかった。ジュースは甘すぎた。でも不思議と嫌な気分にはならなかった。
強いて言うなら、着ぐるみ頭が歌うときのサイレントさだけは気まずかったかもしれない。
それからも、女の子はパンフレットをめくり良さそうなところを見つけるとすぐ向かった。
私はただ忙しなく引かれる腕のまま、ついていくのみである。
o川*゚ -゚)o(なんでこの子はこんなことするんだろう)
わけがわからなかった。
こんなことをしたって私が色を貰えるわけでは決して無いし。
仮に貰えたとしても、彼女が私に色を与えて何の得がある?
何か理由があるのだろうか。
最初機嫌が悪そうだったし、天性のお人好しというわけでもないのだろう。
棄した。
30
:
前レス最後の一行はミス
:2014/03/22(土) 19:08:05 ID:/ToSWoNU
でも理由って何だろう?
こんな、目を抉ろうとした私に対して何の理由があるんだろう?
誰かから頼まれた? 頼まれる? なぜ?
考えても答えは出なかった。
…どうせ出たとしても憶測にしかならないだろう。私は思考を放棄した。
後で聞けばいいのだ。それが確実だ。
ああ、でも、さっきから傍若無人なこの子がちゃんと答えてくれるだろうか。
本日二度目のため息をついた。
それを目敏く見ていた女の子が「まだため息なんてついてるですか!」と鬼の形相で叫んだ。怖い。
*(;‘‘)*「くそ〜! どうしたら楽しくなるですかぁぁぁ!」
( ・∀・)
*(;‘‘)*「お前も何か手伝うです! …駄目!? 何がですかこのへんちくりん頭!」
o川*゚ -゚)o
o川*゚ー゚)o
31
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 19:15:07 ID:/ToSWoNU
足からたっぷりとした疲労を感じる。こんなに動いたのは久々だ。
明日はたぶん筋肉痛だろう。なんだかババ臭いなぁ、と苦笑する。
*(‘‘)*「あ、お姉ちゃん笑ったです、楽しいですか!?」
女の子が振り返る。目敏いだけでなく耳敏くもあるらしい。
o川*゚ -゚)o「笑ってまーせんっ」
こんどは女の子が苦笑した。そうだ。気づかなくていい。
私はつまらないことが嫌いなのだ。
だからこのまま、気づかないまま続いていけばいい。
少なくとも今は退屈ではないのだから。
o川*゚ -゚)o
o川*- -)o(…楽しいわけではない。絶対に)
周りの景色にまだ色は無い。
所詮白黒なこの世界なんだから、まだまだつまらないにきまっている。
32
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 19:22:51 ID:/ToSWoNU
*(;‘‘)*「うう〜、もうパンフレットで良さそうなところはほとんど回っちゃったのです…
小さいから割と回れちゃいますね…くっそぉ!」
o川*゚ -゚)o「もうおしまい?」
*(;‘‘)*「ま、まだです、まだ! まだ展望台が残ってます!」
彼女はパンフレットの最後のほうを捲って、また走り出した。
彼女も疲れているんだろう。だいぶスピードが落ちてきている。
もうやめちゃえばいいのになぁ。
*鼹鮄庫沼罅E庫沼罎*。
昔々、私がまだ小さくて色が無いことに不満なんてなかったころ、来た覚えがある。
風が冷たくて、高くて、見える景色もやたらと貧相ですこぶる微妙な感想を抱いたような。
33
:
文字化けしてるからもう一度
:2014/03/22(土) 19:23:50 ID:/ToSWoNU
*(;‘‘)*「うう〜、もうパンフレットで良さそうなところはほとんど回っちゃったのです…
小さいから割と回れちゃいますね…くっそぉ!」
o川*゚ -゚)o「もうおしまい?」
*(;‘‘)*「ま、まだです、まだ! まだ展望台が残ってます!」
彼女はパンフレットの最後のほうを捲って、また走り出した。
彼女も疲れているんだろう。だいぶスピードが落ちてきている。
もうやめちゃえばいいのになぁ。
…展望台。展望台か。
昔々、私がまだ小さくて色が無いことに不満なんてなかったころ、来た覚えがある。
風が冷たくて、高くて、見える景色もやたらと貧相ですこぶる微妙な感想を抱いたような。
34
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 19:29:53 ID:/ToSWoNU
展望台っていうのは、上から見た景色が多様な色を持っているから楽しいのだと思う。
たとえばコンクリートジャングルの奥に青い海が見えるとか。
夕暮れの景色に照らされた町だとか。
夜の暗い空間に色とりどりの星みたいに光る電飾だとか。
そういうものが一望できるから楽しいのだ。
どこも同じ色をしたこの町を上から見て何が楽しいというのだろう。
なのに、彼女は目を輝かせて階段を上っていく。レトロで今に壊れてもおかしくないような階段を足早く上っていく。
*(‘‘)*「着きましたよー!」
風が寒い。高い。古くさい。色がない。
いったいどこのパンフレットがこんな場所を紹介しているのだ。パンケーキとの落差が凄い。
*(‘‘)*「おおー! さっきまで遊んできた場所が見えるですー!」
手すりにつかまって騒ぐ彼女につられて、町を見下ろす。
35
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 19:35:33 ID:/ToSWoNU
期待なんかしていなかった。
やっぱり、見えたのは白黒だった。
たぶん昔見たのとあまり変わらない景色なのだろう。
o川*゚ -゚)o「あれ…」
なのに、なんでだ。
なんでこんなに、綺麗で楽しいんだ。
.
36
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 19:41:11 ID:/ToSWoNU
o川;゚ -゚)o「え…あれ?」
思わず手すりから身を乗り出した。
色は無い。うん。無い。間違いない。
景色だって変わらない。
そうだ、あそこはパンケーキのお店。
あそこは、カラオケ屋さん。
こっちは、そのあと行った民芸品の店。
そっちは、偉人の像。写真を撮ってきた。
あっちは…*鼹*
o川*゚ -゚)o
*鼹類修Δい┐弌∈F譔鵑蕕覆韻譴个修鵑幣貊蝓△匹海砲△襪里*見当すらつかなかったんだろうな。
o川*゚ -゚)o
o川*゚ -゚)o(ああ、じゃあ…そういうこと、なのかな)
37
:
また文字化けしたので
:2014/03/22(土) 19:41:50 ID:/ToSWoNU
o川;゚ -゚)o「え…あれ?」
思わず手すりから身を乗り出した。
色は無い。うん。無い。間違いない。
景色だって変わらない。
そうだ、あそこはパンケーキのお店。
あそこは、カラオケ屋さん。
こっちは、そのあと行った民芸品の店。
そっちは、偉人の像。写真を撮ってきた。
あっちは…
o川*゚ -゚)o
…そういえば、今日回らなければそんな場所、どこにあるのか見当すらつかなかったんだろうな。
o川*゚ -゚)o
o川*゚ -゚)o(ああ、じゃあ…そういうこと、なのかな)
38
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 19:49:13 ID:/ToSWoNU
*(‘‘)*「お姉ちゃんじっとして動かないのです…」ヒソヒソ
( ・∀・)『改めて町の全体が白黒なのを見て絶望しているとか?』
*(‘‘)*「うわー…よく考えたらその可能性大いにありますね…展望台とかチョーダウトじゃないですか」ヒソヒソ
( ・∀・)『いくら苦し紛れとはいえまずかったんじゃないのー?』ニヤニヤ
*(;‘‘)*「う、うるさいですね…笑ってんじゃねぇです」
( ・∀・)『着ぐるみの顔は変えられんよ』
*(;‘‘)*「中身のほうですよ、声で笑ってるってわかるです。…あれ、そういえばお前の中身って見たこと無…」
( ・∀・)『おっと。見てごらん』
*(‘‘)*「へ?」
39
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 19:53:20 ID:/ToSWoNU
( ・∀・)『お嬢さんが今にも柵を乗り越えようとしているよ』
*(;‘‘)*「は!? あああほんとだぁぁぁぁ待って! 待って下さいお姉ちゃん!! 早まるんじゃねぇです!!」
o川;゚ー゚)o「わ、わぁ、なになに!? 落ちる落ちる!」
*(;‘‘)*「落ちるもくそも今落ちようとしてたじゃねぇですか! この町に改めて絶望して!!」
o川;゚ー゚)o「えええ何それ違うわよー! 私はこの手すりに座ろうとしただけだよ?」
*(‘‘)*「えっ?」
o川*゚ー゚)o「手すり越しで見えないところあるじゃない? そこの景色が見たくて」
*(‘‘)*
*(‘‘)*「…随分気に入ったんですね?」
40
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 20:03:36 ID:/ToSWoNU
o川*゚ー゚)o「ん…なんか楽しいから」
*(‘‘)*「! 楽しいですか?」
o川*゚ー゚)o「君たちと行ったところとかさー、そういうの見てるうちにさ、
だんだん他の細かいところも見えてきてさ…行ってた小学校とか、おばあちゃんの家とか…」
o川*゚ー゚)o「そりゃあ色なんか無いよ? こうやって改めて見るの、ちょっと辛い部分はあるけど」
o川*゚ー゚)o「でもね、思い出もいっしょに見てるみたいな気持ちになったの」
*(‘‘)*「……」
o川*゚ー゚)o「なんかさー! そうやって見たら全部馬鹿馬鹿しくなったのね!」
o川*゚ー゚)o「色は確かにあると派手で、目立つし、ちょっと楽しくなるかもしれないけどさ。
でもそれって見た目だけの話なんだよね…」
o川*- -)o「所詮表面だけのことなんだなって。大事なものはその裏にあるんだな、って」
41
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 20:06:05 ID:/ToSWoNU
*(‘‘)*「そ」
*(‘‘)*「そうですよ! この町楽しかったですよ! 色なんかなくたって! パンケーキ美味しいし!」
( ・∀・)『最後のは君の趣味だよね』
o川*゚ー゚)o「あはは。そう言ってもらえると嬉しいな」
o川*゚ -゚)o´
o川*゚ー゚)o「…そうだ、ここだよ。強いて言うなら」
*(‘‘)*「何がです?」
o川*゚ー゚)o「ほら、何だっけ」
o川*゚ー゚)o「楽園。私の楽園」
42
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 20:08:27 ID:/ToSWoNU
私はそう言って町を眺めた。
白と黒にも、案外多彩な表情ができるもんなんだな、と思いながら。
http://i.imgur.com/Rs83Od0.jpg
ひょっとしたら白と黒にしかできない表情なのかもしれない。この町にしか、できない表情なのかもしれない。
43
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 20:10:35 ID:/ToSWoNU
( ・∀・)『おお、消えたね』
*(‘‘)*「?」
( ・∀・)『悪い気配がほとんど消えた。もう大丈夫だよ』
*(‘‘)*「ほとんど、ですか」
( ・∀・)『そりゃ、1日そこらでは全部は消えない。でも充分だよ』
( ・∀・)『これ以上のことは、彼女だけでなんとかできる。むしろ、こっちが手を貸すのは野暮だね』
*(‘‘)*「そうですか。…こんなんだけでいいんですね」
( ・∀・)『自分が大したこと無いと思っていることが、相手に大きな影響を及ぼすことはよくあることだよ』
( ・∀・)『良くも悪くもね』
*(‘‘)*「そうですか…」
44
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 20:20:06 ID:/ToSWoNU
( ・∀・)『さて、それじゃあ行こうか』
*(‘‘)*「楽園、ここじゃないんですか」
( ・∀・)『ここであって、ここではない』
*(‘‘)*「…だからお前の言うことよくわかりません。もっと分かりやすく喋ってください」
( ・∀・)『ははは』
*(‘‘)*「笑ってんじゃねぇですよ、もう…」
( ・∀・)『何にせよ、僕は導かなきゃいけないんだ。進むしかないんだよ』
*(‘‘)*「…それもよくわかりませんからね?」
( ・∀・)『ははは』
そして私たちはその場を後にしました。
けれど彼女を置いてしまったのが気になって、何度も振り返りました。
そこには、いつまでもいつまでも町を見つめる、彼女の背中だけがあるのでした。
45
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 20:20:40 ID:/ToSWoNU
1話終わり。もうちっとだけ続くんじゃ。
投下期間内に終わる気がしないけど頑張ります。
46
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 20:23:27 ID:cGF8VWRE
おつ
47
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 20:38:54 ID:???
乙!
好きな雰囲気
48
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 21:13:14 ID:3DKrm2Nw
乙乙
49
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 21:50:36 ID:???
乙乙!イラスト使ってくれてありがとうございました。
続きが楽しみです。
50
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/22(土) 23:07:40 ID:???
乙 モノクロもいいもんだ
51
:
ブーン系の名無しさん
:2014/05/03(土) 22:01:52 ID:???
>>10
の文字化けなんだろうな
とりあえずまだまだ待つよ
52
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:12:37 ID:???
*(‘‘)*「気づいたらめっちゃ時間経ってた…」
*(‘‘)*「もう見てるヤツいないでしょうけど、途中までだけど第二話投下するです…」
*(‘‘)*「そんな中途半端でなぜこの時期に、って、とりあえず逃亡はしないという意思を伝えるためです」
*(‘‘)*「言い訳をさせてもらうならリアルが忙しかった。マジヤバかった。許してくださいです」テヘペロ
というわけで土下座しながら投下します
53
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:15:28 ID:WqEQVaOY
原っぱで遊んでいるとき、それは唐突に落ちてきました。どさりと、妙に重い音で。
草むらをかき分けかき分け、やっと君を見て、少し驚きました。僕と姿形が全然違ったから。
そろそろと、そのとても大きな目を開けた君も、僕を見て少し驚いたようでした。
でも、目が合ったそのときから、僕らは友達になれそうな気がしたんです。
.
54
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:16:32 ID:WqEQVaOY
2 .その耳は聞こえている
.
55
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:18:10 ID:WqEQVaOY
( ><)「ぽぽちゃーん! ぽぽちゃーん!」
(*‘ω‘ *)「ぽ? なんだビロードかっぽ」
(;><)「なんかその言い方酷いんです」
昼御飯を食べ終わると家を飛び出して、隣のぽぽちゃんの家に行きます。
小学校が休みの日の決まり事なんです。
(*‘ω‘ *)「冗談だっぽ。…で、今日もあの原っぱでいいのかっぽ?」
( ><)「はい!」
決まり事にはもう少し続きがあるんです。
家に行って、ぽぽちゃんを連れ出して。
そしてあの雑草ぼうぼうの空き地へいくこと。**
僕らの町は団地が続くところで、なんてことない、どこにでもありそうな町です。
でもひとつ、この町には僕らしか知らない秘密があります。
それは団地外れの原っぱに、宇宙人がいるということなんです。
.
56
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:20:45 ID:WqEQVaOY
( ><)「おーい、ワカ君!」
( <●><●>)"
(*‘ω‘ *)「っぽ! いたっぽ」
( <●><●>)ノシ
彼は雑草の間から顔を出して元気に手を降りました。
いきなり見たら驚くでしょうその大きな目にももう慣れました。
僕ら三人は、いつもここで遊んでいるんです。
もう数ヵ月は経つと思います。さすがに見慣れてはくるというものです。
( ><)「今日はボール持ってきたんです! サッカーしましょうサッカー!」
( <●><●>)"「?」
( ><)「あ、サッカーっていうのはえーっと…こう、こうやって蹴って、」
57
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:22:50 ID:WqEQVaOY
ボールを地面に置いて、ジェスチャーでサッカーを表現します。
ぽぽちゃんもキーパー役になったりして手伝ってくれました。
彼はこっちの遊びも言葉もぜんぜん知りません。
そりゃあ宇宙人だから。
でも僕らがこうやって一生懸命伝えれば、最後には絶対理解してくれます。
今までもそうやって教えて来たんです。
おかげで、鬼ごっことかかくれんぼとか、基本的な遊びはできるようになりました。
彼…ワカ君も楽しそうでした。分かるんです。
彼は口がないから喋れはしないけど、ときどき目を細めて二、三回頷く、それだけで。
ああ、楽しいんだなって、分かるんです。
( ><)「で、それで、あそこのゴールにボールをエイヤッ!と。わかりますか?」
( <●><●>)´
ヽ( <●><●>)ノシ
(*‘ω‘ *)「解ったっぽいっぽ」
(*><)「よぅし、じゃあ始めましょうか!」
「あのー、誰かいるですかー?」
( ><)「!」
(*‘ω‘ *)「!」
ヽ( <●><●>)ノ
58
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:25:19 ID:WqEQVaOY
僕らはさっとワカ君を茂みに隠しました。
ここには滅多に誰も来ないのに、一体誰が来たのでしょう。
警戒する僕らの視線の先、曲がり角からちょっと頭を出した声の主は僕らより少しだけ年上であろう、女の子でした。
*(‘‘)*「あ、いたです。どうもどうも。ちょっとお尋ねするです」
(;><)「だ、誰…?」
*(‘‘)*「しがない通行人です」
( ・∀・)
(;*‘ω‘ *)「ぽ…? なんだっぽあの頭」
女の子の次に出てきたのは、着ぐるみの頭だけを被った男の人でした。
…顔が見えないので何とも言えませんが、たぶん、体つき的に男でしょう。
女の子が小さいので、身長差が目立ちます。
着ぐるみの分だけ高くなっているのかもしれませんが…。
59
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:25:19 ID:???
見てるぞ
60
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:28:47 ID:WqEQVaOY
*(‘‘)*「この先って町ですかね?」
( ><)「そ、そうですけど…えと、旅人さんですか?」
*(‘‘)*「旅人? 旅人なんですかね?」
( ・∀・)
*(‘‘)*「えーと、要するに違うんですね? お前遠回しな言い方好きすぎですよ」
着ぐるみ頭のほうに向かってしかめっ面する女の子。あれ?何か喋ったのでしょうか?
聞こえなかったけれど、ひょっとしたら声がすこぶる小さいのかもしれません。
僕らの怪訝そうな顔に気がついたらしく、女の子は振り向いて「あ、そうそう」と言いました。
*(‘‘)*「こいつの言うこと、私にしか聞こえないらしいのです。…これ毎回言わなきゃなんないですか?」
( ・∀・)
*(‘‘)*「え? もういいって、それはそれでどういう…」
(;><)「あ、そ、そんなこともアルンデスネ」
しまった、そんなこと気にしてる場合じゃありません。
僕らの後ろで小さくなっているワカ君を、どうにかして隠し通さねばならないのです。
61
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:31:09 ID:WqEQVaOY
*(‘‘)*「ああ、じゃあありがとうでした、私たちは町へ行きます」
(;*‘ω‘ *)「ぽ、でもそんな格好でいっちゃ…」
(;><)(ぽぽちゃん、言ってる場合じゃないんです!)ボソッ
(;*‘ω‘ *)(ぽ…)
彼女達がどうなろうと知ったことではありません。
しょせん、赤の他人ってやつなのですから。
僕らの最優先事項とはかけ離れます。
奇妙な二人組を見送って、やっと一息つきました。
そっと後ろからワカ君を引き寄せてみます。ワカ君はそろりと僕らの目を覗きました。
僕は大丈夫だよ、と言うように笑いました。
しかし、ワカ君の視線は横に逸れてしまいました。何か気に入らないことでもあるのでしょうか。
…いや、これは横に逸れたと言うよりは…後ろに逸れてる?
僕は視線を追うように振り返りました。
*(‘‘)*「あ、一つ聞き忘れてたのです」
(;><)「のわぁ!?」
62
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:33:00 ID:WqEQVaOY
*(‘‘)*「楽園、に、つい…て…」
戻ってきてしまったのでしょう、さっきの女の子が後ろにいました。なんということでしょう。
僕らの小さな宇宙人はバッチリと、その子の視界に入ってしまいました。
*(‘‘)*「…………何ですかこれ」
(;><)「こここここっこれはそのぅ…」
(;*‘ω‘ *)「ちがうんだっぽ、これは犬みたいな何かだっぽ」
*(‘‘)*「目がデカくて獣耳でもなくて口もない犬とかザンシンですねぇ」
(;><)「あうぅぅ…」
女の子はその鋭い目でワカ君を睨み付けています。
僕らはすっかり震え上がりました。見つかってしまったら何もかも終わりです。
(;><)「あ、あのう!」
*(‘‘)*「何です?」
( ><)「何でも…何でもするから…」
(。><)「ワカ君のことみんなに言わないで下さい…!」
63
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:34:49 ID:WqEQVaOY
*(‘‘)*「…ハイ?」
(。><)「バレたら…バレたら…」
(*;ω; *)「ワカ、きっとひどい目に合うっぽ…!」
女の子はさめざめと泣き始めた僕らを見下ろして首を傾げました。
その後ろから着ぐるみ頭が現れます。
着ぐるみ頭は女の子の耳元に顔を寄せると、多分何か言ったのでしょう、
女の子がちらりと目配せしてため息をつきました。
それから彼女はコツンと軽く僕の頭を叩いて言いました。
*(‘‘)*「悲しみに暮れているところ悪いですが、私には全く状況が掴めません。
何せ私この町に来たことないですし」
(。><)「あ、え…? う…」
*(;‘‘)*「ええい泣くのやめやめ!!」
女の子は僕らの頭をがしがしと乱暴に撫でます。
押さえつけるような仕草です。
けれどその不器用な撫で方にむしろ安心して、涙が引っ込んでいきました。
64
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:37:37 ID:WqEQVaOY
*(‘‘)*「それで、何ですって? ワカ? バレる? 何の話ですか」
大分落ち着いて来たころ、女の子は呆れたような口調で言いました。
それでやっと僕は説明をすっぽかしていたことに気がつきました。
( ><)「ええと…この子は宇宙人なんです」
*(‘‘)*「ああ、宇宙人だったのですね」
(;*‘ω‘ *)「気づいて無かったのかっぽ…」
*(‘‘)*「着ぐるみ頭とかモノクロの町とかあるので、こういう生き物もいるのかと」
( ・∀・)
あっけらかんと言い放つ女の子は、この町だけで暮らしてきた僕らの目には随分風変わりに見えました。
宇宙人だということにもっと突っ込まれると思っていましたが、何とも思っていないようです。
着ぐるみ頭はともかく、女の子は普通だと思っていましたがそれは見た目だけの話なのかもしれません。
( ><)「そ、そうですか。それで、ワカ君っていうのはこの宇宙人の名前なんです」
(*‘ω‘ *)「ぽ! 名前わかんないから、私たちが最近流行ってるゲームのラスボスの名前をつけたんだっぽ!」
65
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:40:16 ID:LcuWIxv2
*(‘‘)*「ラスボスのわりにあっさりした名前ですね」
(*><)「でもカッコイイんですよ! 目が大きいところが似てるんです」
僕はつい力説しました。ぽぽちゃんも大きく頷いてくれます。
女の子は興味無さそうに「そうですか」と呟きました。
ちょっとがっかりしましたが、知らないのだから仕方ありません。
*(‘‘)*「それで、なんでこんな隠すようなことに繋がるですか」
( ><)「そ、それは…そりゃ、そうでしょう?」
*(‘‘)*「騒ぎになるからですか」
(*‘ω‘ *)「それもあるっぽ。
でも、そのあときっと殺されてしまうっぽ? そっちのほうが怖いっぽ」
*(‘‘)*「え、ころ…?」
( ><)「だってワカ君は変わってますから」
66
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:43:07 ID:LcuWIxv2
女の子が怪訝そうな顔をしました。隣の着ぐるみ頭はじっとこちらを見つめています。
*(‘‘)*「変わってると、殺されるですか」
( ><)「殺されはしなくっても、ひどい目には合うでしょうし…少なくとも僕達と会うことは出来なくなると思うんです」
*(‘‘)*「変わってるだけで?」
(*‘ω‘ *)「だけって…大変なことだっぽ?」
女の子の顔つきが変わりました。睨むような探るような視線です。
僕はそれに少し気圧されましたが、どうしてそんな視線を向けるのかわからないのでどうしようもありません。
そのまま話を続けます。
( ><)「変わってちゃダメ。人と同じじゃなきゃダメ。そうやって教わったんです。違うんですか?」
67
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 21:55:26 ID:LcuWIxv2
*(‘‘)*「うーん…私は昔の記憶がないのでなんとも言えませんが…前の町ではたぶんそんなことなかったと思うです。
あの、私が気づかなかっただけでそれが常識なのですか?」
( ・∀・)
*(‘‘)*「そんなことはない。ここだけなんですね?」
( ・∀・)"
(;*‘ω‘ *)「ぽ? マジかっぽ?」
(;><)「え?」
何を言っているのでしょう。冗談かなにかでしょうか?
そんなの、ご飯の前には「いただきます」というくらい当たり前のことです。
けれど女の子の目付きはまだ鋭いままで、冗談など言い出すように見えませんでした。
変わっているのは、まさか、この町のほうだと言うのでしょうか?
*(‘‘)*「でもここでは常識。こんな変わってる存在のワカ君とやらが居ると知れたら排除されてしまう。
なるほど、やっと把握できたです。で、ここには人はあまり来ないのですね?」
(;><)「あ、は、はい。町の入り口も逆側だし…こんな外れの“変わったところ”、誰も来ないんです」
*(‘‘)*「さっきの話聞いた後だと説得力あるですね。ふむふむ、私たちは逆から来てしまったわけですね」
68
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:05:08 ID:LcuWIxv2
*(‘‘)*「…あれ、君たちはこんな“変わったところ”にいてよいのですか?」
(;><)「ほんとは駄目なんです。でも、ワカ君がいるから」
(*‘ω‘ *)「友達のためなら仕方ないっぽ。
それに私たちはまだ子供だし、“わけがよく解ってなくてついうっかり”変なところにいてもまぁ普通の範疇だっぽ」
( ><)「いざとなったら『ここって入ったらいけなかったんですか!? わかんないんです!』って言ってやるんです」
*(‘‘)*「…君たちはなかなか可愛くない、勇気あるクソガキですね」
女の子はニヤリとして言いました。僕らもニヤリとします。
ワカ君はそんな僕らをじっと見つめていました。
何を思っているのでしょう。
僕も全てがわかるわけではありません。
ぽぽちゃんはニヤリとしたあと、ハッとしてすぐ口角を元に戻して険しい顔になって言いました。
(;*‘ω‘ *)「でも…それもバラされたらおわりだっぽ! 頼むっぽ! 話さないで欲しいっぽ」
*(‘‘)*「ふーむ、バラしてもメリットないですし…」
( ><)「じゃ、じゃあ」
69
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:12:36 ID:LcuWIxv2
僕は期待して女の子を見ました。しかし女の子は実に意地悪な顔でこう言ったのです。
*(‘‘)*「でもバラさなくてもメリットないですよねぇ…」
(;><)「!?」
*(‘‘)*「やっぱり、それ相応の対価がないとですねぇ…」
(;*‘ω‘ *)「なんだっぽ、金か、酒か、家庭かっぽ!?」
*(‘‘)*「違…いや、何ですか家庭って。私この短時間でそんなにワルいヤツだと思われてるですか」
じゃあ何ですか、と僕が聞くと彼女は黙ってこっちへ進んできました。
そして僕の足元にしゃがみこんで…
70
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:16:54 ID:LcuWIxv2
***
*(‘‘)*「それじゃ、サッカー始めるですよー!」
(*><)「よっしゃ来いです!」
( <●><●>)ノシ
(*‘ω‘ *)
*(‘‘)*「どうしたですかぽぽちゃんとやら、浮かない顔ですね」
(*‘ω‘ *)「黙ってやるかわりに一緒に遊べっていうのは結構予想外だったんだっぽ」
*(‘‘)*「そうですかね?」
(*‘ω‘ *)「やっぱあんた変わってるっぽ」
*(‘‘)*「私、殺されるですか?」クスクス
(*‘ω‘ *)「笑い事じゃねぇっぽ」
71
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:19:39 ID:LcuWIxv2
( ><)「まだ始めないんですか?」
僕は向かい合っている女の子に問いかけました。
それを聞いて女の子は足を振りかぶります。始めるようです。
身構えた直後、ボスッと鈍い音が聞こえました。
(;*‘ω‘ *)「全然飛んでねぇっぽ!」
*(;‘‘)*「お、おかしいですねぇこんな筈ではハハハ」
(*><)「貰ったんです! ほらワカ君!」
三三三( <●><●>)ノシ
*(;‘‘)*「予想外にワカ君早い! 短足なのに!」
(*‘ω‘ *)「足どころか全部短いっぽ…」
ぽぽちゃんが呆れながら走ってきます。
ぽぽちゃんは運動神経がいいほうなので、このスピードではそのうち追い付かれてしまうでしょう。
僕がパスと言うと、ワカ君は素直にこちらに蹴ってきました。上手くは無いけれど、ボールを回すには充分です。
72
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:23:13 ID:LcuWIxv2
僕がボールを受け取ると、目の前に女の子が現れました。
*(‘‘)*「ぬはははは! さっきのお返ししてやるです!」
(;><)「うわわっ」
女の子がボールを狙って突進してきました。
けれど狙いがずれていて僕の足ばかり引っ掛かります。むしろ危ないです。
試合開始のフリーキックでもわかりますが、恐らくあまり得意ではないのでしょう。
僕は隙を狙って、思いきってボールを蹴りました。
少しして、ゴールの位置と決めていた場所の雑草が揺れました。
( ・∀・)/ バッ (←審判役)
(*><)「やったんです! 一点リードなんです!」
ヾ(*<●><●>)ノシ
*(;‘‘)*「難しいですねサッカー…」
(*‘ω‘ *)「とりあえずボール以外にも色々目を向けてみるといいっぽ」
73
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:26:46 ID:LcuWIxv2
女の子は負けてしまったものの、目をきらきらさせていました。
それはワカ君と同じ好奇心いっぱいの目で、僕はふと、ワカ君と女の子はにているなぁと感じたのでした。
けれどすぐ頭を振りました。ワカ君は宇宙人、女の子は人間。
多少女の子だって変わっているとはいえ、人間だという根本のところは変わっていません。
それなのに、似てるなんて変な考えでしょう?
僕はそんな頭の中を振り切って声をかけました。
( ><)「第二ラウンドなんです! 次も勝ちますよー!」
(*‘ω‘ *)「ぽっぽ、次はぶちのめすっぽ」
*(‘‘)*「言い方こわっ」
( <●><●>)b
( ><)´
( ><)「そうだ、その前に…えーと、きみ!」
*(‘‘)*「はい?」
74
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:30:28 ID:QcwWfxdA
( ><)「名前、何て言うんですか?」
*(‘‘)*「なまえ? ワカとかビロとかぽっぽとかそういう?」
( ><)「そうそう、僕はビロードなんです」
*(‘‘)*「…そういえば何なんですかね?」
(*‘ω‘ *)「えっ」
女の子が首を捻ります。
僕は少し驚くと共にやっぱり変わっているからかなと思いましたが、そこで昔の記憶がないと言っていたことを思い出しました。
それなら何なのかわからなくても自然なことです。
( ><)「じゃあ僕が、ワカ君みたいに命名しましょうか?」
( <●><●>)ノシ
(*‘ω‘ *)「私も考えるっぽ」
*(‘‘)*「うーん…そうしてもらいましょうk…え?」
肯定しかけて、彼女は着ぐるみ頭のほうを振り返りました。
75
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:33:30 ID:LcuWIxv2
( ・∀・)
*(‘‘)*「はぁ。そう。そうですか。何でそれ今まで言わなかったです?」
( ・∀・)
*(‘‘)*「無かったんですか。ふぅん…」
女の子は着ぐるみのほうを難しい顔で見つめましたが、しばらくすると諦めたように目を伏せました。
( ><)「どうかしましたか?」
*(‘‘)*「あ、いや、私の名前あるみたいです。こいつが知ってるらしくて」
(*‘ω‘ *)「ぽ! 聞かせてくれっぽ」
*(‘‘)*「ええ、私の名前は、」
「ヘリカル。ヘリカルというらしい、です」
***
.
76
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:43:28 ID:LcuWIxv2
*(‘‘)*「ああー、くたくたなのです」
( ・∀・)『あの子たちは元気だね』
*(‘‘)*「そうですね。まだ遊んでます。若いって良いですねぇ」
( ・∀・)『ババくさいよ』
*(‘‘)*「一応この町まで歩いてからのこの運動なんですよ?」
*(‘‘)*「やたら歩きましたからね。だれかさんが迷ったせいで。…あれ、ここって町の反対側なんですよね」
( ・∀・)『そうだね』
*(‘‘)*「…迷って裏側について、たまたまこんな変なイベントに遭遇するとか話が出来すぎな気がしますけど…?」
( ・∀・)
(・∀・ )
*(‘‘)*「おいお前。こっち見ろです」
77
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:45:21 ID:LcuWIxv2
*(‘‘)*「やっぱお前誘導してたですね?」
( ・∀・)『人聞きの悪い。導いたんだよ』
*(‘‘)*「それならそうと言うです、回りくどいことしやがって」
( ・∀・)『だって伝えたら、純粋な反応ができなくなるじゃないか』
*(‘‘)*「だってじゃありません。…今度は、あの宇宙人救えとか言うですか?」
( ・∀・)『…んー……ちょっと違うかな。だってさ、彼らは既に幸せだろ』
*(‘‘)*「確かに、そう見えますね。ワカとやらは喋らないので実際どうかはわかりませんが」
( ・∀・)『いや、間違いなく幸せだよ。幸せだってめっちゃ言ってるし』
*(‘‘)*「は?」
( ・∀・)『こんな人たちに出会えて私は幸せだって言ってたよ』
*(‘‘)*「は、え? お前何でわかるですか」
78
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:49:28 ID:LcuWIxv2
( ・∀・)『僕ちょっと特殊だから、彼の声聞こえるんだよね』
*(;‘‘)*「えええ!? じゃあ通訳になってやって下さいよ! 伝えたらきっと喜びますよ」
( ・∀・)『必要ないよ。何も言語だけが伝達手段じゃない。
ほら、さっきも言ったけど現に言葉なんか無くても彼らは幸せじゃないか』
*(‘‘)*「ぐぬぬ…確かにそれはそうですね…」
( ・∀・)『でもさ、不完全なんだ』
*(‘‘)*「不完全?」
( ・∀・)『そう。隠して隠して…隠し通して。それでやっとこの幸せがある』
*(‘‘)*
79
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:53:55 ID:LcuWIxv2
( ・∀・)『そうさ、彼らは幸せだ。よい友人がいて。でも不幸せなんだ』
( ・∀・)『不幸なんだよ。根本のところでは救いを求めている』
( ・∀・)『君が救うのは宇宙人くんだけじゃない』
*(‘‘)*
*(--)* ハァ
*(‘‘)*「相変わらずお前、言い方解りづらいです」
( ・∀・)『そのままを言ってるだけなんだけどな』
*(‘‘)*「ぼんやりとはわかりますけど」
( ・∀・)『ははは、成長したね』
*(‘‘)*「お前も成長するです」
( ・∀・)『おっと手厳しい』
80
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:55:27 ID:LcuWIxv2
*(‘‘)*「…と、もうだいぶ暗くなってきましたね。そういえば宿を探してなかったですが…」
( ・∀・)『…ふむ。そうだね、君は探してくるといい。僕はなるべく人目につかないところで野宿するよ』
*(‘‘)*「は? なんでお前野宿ですか」
( ・∀・)『さすがに着ぐるみ頭は“変わり”すぎだからね』
*(‘‘)*「いや脱げですマジで」
( ・∀・)『嫌だね』
*(‘‘)*「嫌って、それで野宿ってお前…」
( ・∀・)『僕が嫌なんじゃないよ。たぶん君が嫌だろうから…いや、嫌と思ってしまうようになるという方が正しいか』
*(‘‘)*「別に不細工でも私、気にしないですけど?」
81
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 22:57:53 ID:LcuWIxv2
( ・∀・)『なんで不細工が前提なの? ま、とにかく僕の顔に相当する部分は見ないほうがいいのさ』
*(‘‘)*「だからなんd」
( ・∀・)『ねぇ「ヘリカル」、』
( ・∀・)『世の中にはね…見ないほうがいいものもあるんだよ』
*(‘‘)*「……肩めっちゃ掴まないでくれませんか、痛いです」
( ・∀・)『そうだね。痛いのは嫌だよね。だからダメだ』
*(‘‘)*「返事になってないです。…お前、声がマジですよ」
( ・∀・)『僕はいつでも真面目だよ?』
*(‘‘)*「嘘つくんじゃねぇです」
82
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 23:01:46 ID:LcuWIxv2
*(‘‘)*「…ハァ。まぁそんなに嫌なら見ないですよ。お前と違って趣味悪くないんで」
( ・∀・)『一言余計だよ』
*(‘‘)*「肩、離して下さい」
( ・∀・)『痛がってるの少し面白いからもうちょっと』
*(‘‘)*「くたばりやがれです」
私は無理やり体をひねって手を振り、そのまま歩いて、ビロード達を呼びました。
宿を探すと言うと、ビロードとやらが「うちが宿屋を営んでいるから泊まるといいんです」と非常に好都合なことを提案してくれました。
ここは素直にお言葉に甘えることにするです。
着ぐるみ糞野郎はさっきまで私の肩を掴んでいたその大きな手を一瞬だけ強く握って、
その後なにも無かったかのように突っ立ちました。
何だったんですかね? まぁどうでもいいですけど。
痛む肩を擦ったとき、後ろから私にしか聞こえない笑い声が聞こえた気がして、ため息をつきました。
***
.
83
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 23:03:13 ID:LcuWIxv2
( ><)「僕の家に行く前に…少しだけ注意があるんです」
*(‘‘)*「何ですか?」
町の外れと団地のちょうど境目のあたりで、僕は立ち止まりました。
( ><)「一つ。僕はみんなの前ではこんな口調になるよ」
*(‘‘)*「うわっ今まで敬語だっただけにめっちゃ違和感」
( ><)「さっきまでのほうが、僕らしくて僕は好きなんです。でも…」
*(‘‘)*「それも変わってるからダメってやつですか」
( ><)「そうです。別にお坊ちゃんとして育てられたわけでもないのに誰にでも敬語な小学生なんておかしいんです」
ヘリカルちゃんは「そうですかね?」と、ひょいと首を傾げました。
僕は「そうですよ」と返します。
84
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 23:04:59 ID:LcuWIxv2
*(‘‘)*「あ、じゃあ私も変えた方がいいですか? 君と、さして年も違わないでしょうし」
( ><)「ああ、ええと…旅人さんは『変わってる』ことが結構、なんていうんですか、最初から、えーと、ぜん、ぜん…」
*(‘‘)*「前提?」
( ><)「そう、前提です、前提になってますから。ちょっと口調がおかしいぐらいは見逃してくれると思います。
着ぐるみさんは見た目からして『変わりすぎ』だから絶対ダメでしょうけど、
ヘリカルちゃんは見た目普通ですしショックは少ないかと」
*(‘‘)*「基準がよくわからないですね。最早『変わってる』と『普通』がよくわからなくなってきたです」
( ><)「そりゃヘリカルちゃんは変わってますから、基準もわからないでしょう」
*(‘‘)*「だーかーら、その私が変わってるっていう定義が謎なんですよ。だいたい、私のこと変わってる変わってる言うですけど、
私からしたら、そんなことで排除するだの排除されるだの、そっちのほうが余程変わってるですよ」
( ><)「あ、二つ目の注意はそれです」
*(‘‘)*「へ?」
僕はヘリカルちゃんにずい、と2本指をつきだしました。
不思議そうに口を半開きにしています。
( ><)「この町に入ったからには、この町のルールを否定しないでほしいんです」
彼女は痛いところを突かれたような顔をしました。
85
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 23:06:36 ID:LcuWIxv2
*(‘‘)*「…それは、『おかしい』からではなくて、失礼だから、ということで良いですか?」
( ><)「ぶっちゃけそうです。ヘリカルちゃんも前言ってましたよね? その土地にはその土地のルールがあるって。
不思議に思うのは仕方ないかもしれません。でも、否定するのはやめてほしいんです」
*(‘‘)*「これは失礼したです。気をつけます」
ヘリカルちゃんは後ろ頭をかきながら、軽く頭を下げました。ちょっと言い方がきつかったかもしれません。
僕もひょいと頭を下げます。
( ><)「…よし、これで注意は終わりです。それじゃあ、行こうか」
86
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 23:11:29 ID:LcuWIxv2
僕の家、もとい宿屋は町の中心部のあたりにあります。
理由は簡単、そのほうがもうかるからです。
もうかるということは、人がたくさんいるということで、ヘリカルちゃんは当然、たくさんの人の目が集まりました。
*(;‘‘)*「めっちゃ見られてるですね」
( ><)「よその人が来るの、久しぶりだから余計めずらしいんだと思うよ」
落ち着かないようで、キョロキョロとあちこちに視線を向けています。
*(‘‘)*「カフェ、本屋、カラオケ、ブティック…へー、結構いろんなお店あるですね」
( ><)「一応町のど真ん中だし」
*(‘‘)*「パンケーキは売ってるですか?」
(;><)「ぱ、 パンケーキ? たぶん、そこのカフェにあると思うけど…」
*(‘‘)*「よし、 後で行くです」
ものすごく真面目な顔をして言うヘリカルちゃんに僕はちょっと吹き出しました。
ちょっと大人っぽい印象がある女の子が真面目にこんなこと言ったら、吹き出してしまうものでしょう。
87
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 23:15:59 ID:LcuWIxv2
( ><)「ただいまー!」
勢いよくドアを開けると、シチューのいい匂いが漂ってきました。
夜ご飯の仕込みをしているのでしょう。
受け付けにいるお母さんが「おかえり」と笑ってから、おや、という顔をしました。
視線はヘリカルちゃんのほうに向いています。
( ><)「この人、泊まりたいっていうから案内したんだけど、部屋ってまだ空いてるよね?」
*(‘‘)*「突然すみませんです」
こりゃまた可愛らしいお客さんだこと。
お母さんはそうほほえんで、手続きをするためにヘリカルちゃんを呼びました。
僕は手続きのあいだ、ちょっとタイクツだったので窓の外をながめました。
雲行きがどうもあやしいな。ワカ君はだいじょうぶかなぁ。
できることなら、この温かいお部屋にワカ君も泊めてあげたいのだけれど…。
無理なこととは分かっています。けれどちょっぴり納得いきません。
この考えは「変」なのでしょうか?
変わった生き物と関わっちゃいけない。
関わっていたら隠さなきゃならない。
けど、友達には優しくするっていうのもまた、「ふつう」なのでしょう。
ううん、なんだか僕までこんがらがってきました。
88
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 23:18:40 ID:LcuWIxv2
*(‘‘)*「どうしたです?」
考え込んでいると、手続きを終えたヘリカルゃんがこちらを覗きこんできました。
(;><)「あ、えっと、なんでもないんで、…なんでもないよ。部屋はどこ? 案内しようか」
しどろもどろになりながらも答えます。
ヘリカルちゃんはすこしだけ首をかたむけて、けれど対して気に留めなかったようです。
「じゃあお願いするです」とぞんざいにカギを渡してきました。
カギの部屋番号を確認して歩き出します。
横目で見た窓の外では、いよいよ雨が降りだしてきていました。
89
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 23:22:19 ID:LcuWIxv2
ヘリカルちゃんはぶっきらぼうながらも、ちゃんと礼儀はわかっているようで、
お母さんやお父さんの機嫌を損ねることもありませんでした。
むしろ、気に入られているようにすら見えました。
*(‘‘)*「やべぇです! このシチューめちゃうめぇです! おかわりいただけるですか!」
「あらあらヘリカルちゃん、あんまり急いで食べるとお腹壊すわよ? うふふ」
うれしそうにシチューのおかわりをつぐお母さんに、ホッとするような、ちょっと妬いてしまうような。
*(‘‘)*「むむむ、パンケーキの次くらいの好物になりそうですよこれ」
( ><)「まぁ気に入ってくれたならよかったよ」
*(‘‘)*「おいしいことはいいことでふ」モグモグ
(;><)「食べながら喋らないで…」
まぁ、よかった。そう、よかったんです。
ヘリカルちゃんが変わってるからとひどい目にあったら、連れてきた僕のせいにもなってしまいます。
お互いにとって、問題のないことはいいことです。
このままなんの問題もなく過ぎていきそうなので、ひとまず安心でしょう。
そう、なんの問題もなく ──。
.
90
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 23:28:25 ID:LcuWIxv2
今日はここまで
続きはいつになるかわからないけど今月中には
一応3話構成の予定なので、百物語が始まってしまうまでには終わらせたいところ
見てる報告ありがとうございます。土下座します
*(‘‘)*「とりあえず逃亡はしないから覚悟しやがれです」
91
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/22(日) 23:40:30 ID:???
覚悟して待つです
乙
92
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/23(月) 03:04:49 ID:???
待ってた 乙乙
93
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/23(月) 08:21:46 ID:???
乙
謎が多いが面白い
他に何か書いている作品があれば教えて欲しい
94
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/23(月) 20:40:44 ID:???
>>85
「その土地にはその土地のルールがあるって。」とビロードが言っていますが、
「他では違うかもしれないけど、ここでは常識なんだって。」に脳内変換お願いします。書き直すの忘れてました
過去作については、最終話投下後でお願いしますです。
まぁ雰囲気小説の短編ばかりですが…
95
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/24(火) 08:13:41 ID:???
乙!
投下再会嬉しいぜ!
今後の展開かわ楽しみだな
96
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/25(水) 00:07:13 ID:???
おつ!
( ><)の警戒心がよく分かる描写だった
前より厄介そうだがどう落とすのか楽しみだ
97
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/27(金) 20:57:39 ID:G/YPErJI
*(‘‘)*「今日は私の誕生日だそうですね」
( ・∀・)『メタいよ「ヘリカル」』
*(‘‘)*「祝うがいいです」
( ・∀・)『はいはいおめでとう』
*(‘‘)*「ぞんざいすぎるです。オトメゴコロのわからないやつですね」
( ・∀・)『え?ロマンチックに言おうか?
おめでとう。君が産まれてきてくれたことは70億分の1の奇跡だね』
*(;‘‘)*「マジでやめろです」オエッ
( ・∀・)『横暴だなぁ…』
ヘリカルおめでとう、今日誕生日なんですね
絶賛執筆中ですもう少々お待ちを
98
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/27(金) 21:04:15 ID:???
がんばれ!
99
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/30(月) 22:37:51 ID:OicLGdWM
ゆったりと投下します
たぶん日付跨ぐ、今月中じゃねえじゃんって感じだけどそこはごめん
100
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/30(月) 22:44:34 ID:OicLGdWM
*(--)*「んん…」
*(‘‘)* パチッ
夜中突然目が覚めてしまいました。
温かい毛布。適切な室温。なんの問題もないはずなのに、なんで起きてしまったのか。
うろうろと周りを見渡していると、突如ピカッと室内が光りました。
次いでゴロゴロという、お腹の奥に響く音。
なるほど、カーテンを閉め忘れていたです。そこに更にこの音。目も覚めるってものです。
*(-‘)*「まったく…」
だるい体を動かして、のろのろと窓に近づきます。
*(‘‘)*「…ん?」
私の部屋は二階なのですが、玄関のすぐ上にある場所です。
なので、窓から下を覗くとダイレクトに玄関が見えるわけですが…。
こんな夜更けに人だかりが出来ています。
何やら言い争うような声も、窓を閉めているというのに聞こえます。
玄関のうすぼんやりとした光で確認できた人は、おかみさんとご主人さんと、その他おおぜい。
夜中に泊めてくれという団体客が来たのかと思いましたが、どうもおかしい。
こんな雷雨の中、部屋にも入らずなぜあんなところで人だかりを作っているのでしょう。
*(‘‘)*「…あらら?」
そのうち人だかりは、おかみさんとご主人さんを連れて足早に去ってしまいました。
はて。何なのでしょう。ご両親が夜に家を開けるだなんて、ビロードもいるでしょうに。
101
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/30(月) 22:49:19 ID:OicLGdWM
それから、玄関に駆け寄る小さな影が見えました。
小さな影がふと、こちらを見上げました。ばっちりと目が合います。
*(‘‘)*「あっ、ぽぽちゃんではないですか」
ぼんやりとした光の中なので憶測も混じりますが、随分険しい顔をしていたように思うです。
ぽぽちゃんが勢いよく玄関に飛び込んだのを確認して、私は何か騒ぐものがおさまらなくて、胸を押さえました。
どたどた、と急くような大きな足音と共に、部屋に飛び込んできたぽぽちゃんはそのまま私にすがり付いたのです。
(;*‘ω‘ *)「へ、ヘリカル! ビロが…、ワカが、それでっ、」
(*;ω‘ *) 「うっ…」
ぽぽちゃんは嗚咽を漏らし始めました。
最初のときといい、説明能力がないのですかね?
けれど、最初と違って何が何やらさっぱりというわけではありません。
ビロ。ワカ。そしてせいぜい数時間の仲の私にすがり付いたこと。
私にとってはあまりにも早く、彼女たちにとっては「とうとう」、それが起こってしまったのだろうと。
雷が私たちを照らしました。
私は何を言っていいか分からず、そのまま立ち尽くすだけです。
102
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/30(月) 22:55:16 ID:OicLGdWM
数分間嗚咽だけを漏らしていたぽぽちゃんは、やっと少し落ち着いたのか嗚咽混じりに語り始めました。
(*;ω; *)「ワカ、見つかったんだっぽ」
*(‘‘)*「…でしょうね。先ほどビロードの両親が連れていかれたのもそれですか?」
(*;ω; *)「そうだっぽ」
*(‘‘)*「ふむ…しかし何故です? あんな変わったところ、誰も来ないのでは?」
(*;ω; *)「……ワカ、優しいから…」
*(‘‘)*「?」
(*;ω; *)「優しいし、何も知らないから、だから…」
また戻り始めた嗚咽に言葉を引っ掛からせながら喋ります。
私はそれを見て、悲しいんだろうなぁと漠然と思いました。
他人事のように漠然と。
同情したりするものなのでしょうか?
不思議と、そんな感情は抜け落ちたみたいに湧いてこないのです。
(*;ω; *)「だから、忘れていったサッカーボール、持ってきちゃったんだっぽ」
103
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/30(月) 23:00:39 ID:OicLGdWM
ぽぽちゃんが詰まりながら話した経緯はこうです。
まず、ビロードはサッカーボールを忘れていってしまった。確かに、私と一緒に歩いていたときボールを持っていませんでした。
ぽぽちゃんも、てっきりビロードが持っていったものだと思って忘れていったサッカーボールにも気づかなかったのだそうです。
ただ一人、ワカ君はサッカーボールに気がつきました。
しかし、もう二人とも帰ってしまった後。
それで、ワカ君はサッカーボールをビロードに届けようと、こっそり夜中に街へ忍び込んだのです。
*(‘‘)*「わからないですね。別に明日渡せば良かったではないですか」
(*;ω; *)「よくないんだっぽ。とくに今日は」
*(‘‘)*「今日は…?」
(*;ω; *)「…別に、ヘリカルたちのせいにするわけじゃないけど。今日は誰もくるはずのないあの空き地に、
誰かが来たっていう、普通じゃない日だったっぽ。
ワカ、たぶん、絶対に誰もこない場所じゃないんだって、思い知ったと思うんだっぽ」
*(‘‘)*「はあ」
(*;ω; *)「ワカ、優しいから、自分は最悪、別に見つかってもいいって言うと思うっぽ。
でも。あのサッカーボールがビロードのものと知れたら…」
*(;‘‘)*「! なるほど…自分が見つかっただけなら、ビロードや君との関連性はバレないわけですね」
(*;ω; *)「そう、私達と遊んでるの、誰も知らないっぽ。でも、サッカーボールからバレる可能性はあるんだっぽ。
私達があれだけ必死に隠してるんだっぽ、多分、バレたらどうなるか、ワカもなんとなく解ってたと思うっぽ」
104
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/30(月) 23:09:50 ID:gm29UX8o
*(;‘‘)*「でもやっぱり、それなら尚更サッカーボールを町まで持ってくるのは危険すぎるのでは?
持ってるところすら見られるのはまずいのに…」
そう問うと、ぽぽちゃんは「多分だけど」と推測を話始めました。
たぶん、ワカにとっては『あの場所にある』ってだけで居てもたってもいられなかったんだと思う。
最低でも町の近くに転がしておけば、ただの忘れ物だと思われる。
『ワカのいる場所にある』ってことがきっと問題だったんだ、とのこと。
自分を犠牲にしてでも守りたいと思っているなら、無い話では無いような気がするです。
しかしこれはあくまで推測。
ついつい色々引っ掛かって聞いてしまいましたが、直接見たわけではないのです。確証などありません。
今大事なのは、ワカ君が見つかったということ、そして──
*(;‘‘)*「そして、その自己犠牲もむなしく、ビロードとの関連性がばれてしまったわけですよね」
(*;ω; *)「!! そう! そうなんだっぽ!!」
ぽぽちゃんは叫んでからえづきました。
とりあえず落ち着けです、と背中をさすります。
ぽぽちゃんは息を整えきるより前に、それこそ「居てもたってもいられない」という雰囲気で言いました。
(*;ω; *)「ワカは…上手くやったんだっぽ。サッカーボールはワカとは遠く離れて転がってたらしいっぽ。
でも、ワカ自身は見つかったんだっぽ…」
105
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/30(月) 23:20:58 ID:OicLGdWM
ここは何より「普通」が大事で、「変」はこの上なく迫害される。
だから勿論彼女たちの危惧ど かし、そこまでならワカ君も想定内だったのでしょう。
ぽぽちゃん曰く、この町で重罪である「変わったこと」が起きた場合、
多少変わっている程度なら役人がその場で裁いて終了、ということもあるようです。
しかしワカ君は「変わりすぎ」でした。
こういう場合は町中の人たちで、どうするかを決めるために召集がかかるそうです。
当然、こんな夜中ですがビロードの家にも召集がかかったのです。
(*;ω; *)「ビロード、バカだから、ワカのことだってわかると、暴れて暴れて…」
*(‘‘)*「そう、でしょうね」
(*;ω; *)「役人さんのところまでまっしぐらだっぽ。バカだっぽ、ほんとに、バカだっぽ…」
*(‘‘)*「……」
彼女たちは昼間言っていたです。
変わってたら殺される、そうでなくてもひどい目に合うと。
じゃあ変わってるやつをかばうヤツは?
たぶん、変わってるやつをかばう変わってるヤツになるのでしょう。
そうだとすると、ビロードは…
106
:
訂正
:2014/06/30(月) 23:22:01 ID:OicLGdWM
ここは何より「普通」が大事で、「変」はこの上なく迫害される。
だから勿論彼女たちの危惧どおり、ワカ君も捕まってしまいました。
しかし、そこまでならワカ君も想定内だったのでしょう。
ぽぽちゃん曰く、この町で重罪である「変わったこと」が起きた場合、
多少変わっている程度なら役人がその場で裁いて終了、ということもあるようです。
しかしワカ君は「変わりすぎ」でした。
こういう場合は町中の人たちで、どうするかを決めるために召集がかかるそうです。
当然、こんな夜中ですがビロードの家にも召集がかかったのです。
(*;ω; *)「ビロード、バカだから、ワカのことだってわかると、暴れて暴れて…」
*(‘‘)*「そう、でしょうね」
(*;ω; *)「役人さんのところまでまっしぐらだっぽ。バカだっぽ、ほんとに、バカだっぽ…」
*(‘‘)*「……」
彼女たちは昼間言っていたです。
変わってたら殺される、そうでなくてもひどい目に合うと。
じゃあ変わってるやつをかばうヤツは?
たぶん、変わってるやつをかばう変わってるヤツになるのでしょう。
そうだとすると、ビロードは…
107
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/30(月) 23:28:34 ID:OicLGdWM
*(‘‘)*(どいつもこいつも、自己犠牲が好きですね)
哀れだとか。怒りだとか。
そういうものはモノクロのお姉ちゃんのときと同様、ちっとも湧いてこないのです。
変わりに浮かんだのはそんな冷めた感想で。
*(‘‘)*「…君は、ビロードよりバカではないのですね」
(*;ω; *)「……」
ひゅっと息を吸う音が聞こえて、ぽぽちゃんがぴたりと泣き声を止めました。
*(‘‘)*「暴れたり、飛び出したりしないですから」
うなるような声がぽぽちゃんから聞こえるです。
唇を噛んで、戻して、また噛んで、それからぽぽちゃんは小さな声で言いました。
(*;ω; *)「…私は最低だっぽ」
*(‘‘)*「さいてい、ですか」
(*;ω; *)「と、友達、なら。ビロードみたいに一も二もなく飛び出すのが『ふつう』なのに。
こ、こ、怖くて、私、怖くて」
(*;ω; *)「うちのお父さんやお母さんが、ビロードがそんなことになったって聞いて、私のほうを見たっぽ。
仲良しで、いっしょに遊んでたから、お前も関係あるんじゃないかって」
(*;ω; *)「私、もうどうしていいかわかんなくて、私…。
ヘリカルにこんなこと、言ったって何にもならないのに、さいていなのに、それでも何かしなきゃって。
あ、頭の中、ぐちゃぐちゃで…」
108
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/30(月) 23:36:08 ID:OicLGdWM
*(‘‘)*
*(--)*
私は、着ぐるみ糞野郎との会話を思い出しました。
彼女たちの幸せは、隠して隠して隠し通した先にある。
私が救うのは、ワカ君だけじゃない。
──非力な者には、逆らいがたいルールが存在するのでしょう。
どうしてそうなのか、を知ることすらできないまま、無抵抗に従わざるを得ないルール。
「周りがそうしているから」。そんな理由で、何となく従うルール。
きっとどこにでも存在するルール。
言ってしまえば、前のモノクロのお姉ちゃんだって、町の色というルールに無抵抗で従っていました。
大人になって、抵抗する力がつけば。
この場合、はっきり言うとこの町を出ていってしまえば、多少は逃れることはできるのでしょう。
でも彼女たちは子供で、非力だった。
無抵抗でルールに押し潰されるのが当然のところで、彼女たちは踏ん張っていたのです。
*(‘‘)*(…さて。それで私は、どうしよう?って感じですね)
109
:
ブーン系の名無しさん
:2014/06/30(月) 23:38:44 ID:???
支援!
110
:
※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです
:2014/06/30(月) 23:43:10 ID:OicLGdWM
この肝心なときにいない着ぐるみ糞野郎は、例えば何て言うでしょう?
「君がワカ君を町から連れ出してやれ」と言うですかね?
…いいや。それはないです。
前もそうでした。与えるんじゃだめなんだって。
ていうか、今審議に掛けられて死刑にされそうになっているであろう修羅場から連れ出せる気がそもそもしないです。
*(‘‘)*(それに…そうです、「私はどうしよう?」じゃないです。
こうなると「私はどうしたいか?どうすべきか?」でしょうね)
どうしたいか。
どうすべきか。
どうしたら、自分が納得するか?
私は…私は。ワカ君には死んでほしくありません。
ビロードにだって死んでほしくありません。
当然、ぽぽちゃんだって。
死にはしなかったとしてもひどい目に会うのなら、それはそれで由々しき事態です。
*(‘‘)*(それはどうして?)
…どうしてって。
……だって。
.
111
:
※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです
:2014/06/30(月) 23:50:05 ID:OicLGdWM
私はその答えを二、三度考えて、それでも全部同じ答えに辿り着くのを確認すると、
すがり付いているぽぽちゃんをなるべくゆっくり引き剥がしてから走り出しました。
そうと決まればこうしちゃいられないからです。
ぽぽちゃんは制止の言葉を言いかけて、そのまま固まりました。
ちらっと振り返ってみれば、少しの安心と強烈な後悔が混ざった顔で口を半開きにしています。
きっとこうなることくらい、彼女も予想はついていたのでしょう。
.
112
:
※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです
:2014/07/01(火) 00:04:23 ID:e6.XqA/s
***
(#><)「ワカ君を離してください。ワカ君は悪くないんです!」
僕は何度目か解らないことを大声で言いました。
暴れているのに、僕は大人たちに押さえられています。
僕が暴れているのを見て、お母さんがとても悲しそうな顔をするのもとびきり良くありません。
いけないことをしてるんだって、嫌な気持ちが吹き出してきます。
ワカ君は僕とは違って暴れたり叫んだりしていません。
…もっとも、口が無いのだから叫ぶことはできないんですが。
ただ大きな目でじっと、僕のほうを見つめています。
気持ちはあまり読みとれませんでしたが、しいて言うなら悲しそうな感じがしました。
雷雨が僕たちの体を濡らしていきます。
ピカッと辺り一面が光って、役人さんとお父さんが話し合っている間で、ワカ君がきっぱりと見えました。
http://livedoor.blogimg.jp/colored_pencil/imgs/0/1/0163c364.png
.
113
:
※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです
:2014/07/01(火) 00:12:47 ID:e6.XqA/s
周りでは僕を放って、この「へんないきもの」をどうするかを話し合っています。
ちらほらと刑を軽くしてもいいんじゃないかという声も聞こえますが、やはり死刑という方向が強いようです。
そして、僕の処分に対しても話されています。
耳を塞ぎたくなるような言葉ばかり。
僕は歯軋りをしました。
変わってるから。
変わってるから。
普通じゃないから。
理解が及ばないから。
理解が及ばないことは、怖いから。
当然といえば当然なのでしょう。
たとえば、僕はお化けが怖いけれど、
お化けがなんてことない普通の自然現象なんだ、と、もし解っていればそれほどは怖くないでしょう。
たぶん、そういうことなのだと思います。
怖いことは不幸だ。
怖いことは普通じゃない。
普通じゃないと、幸せになれない。
今までも──そして今ですら、疑うことのできない真実です。
事実、「普通じゃない」ことをしてしまった僕は、今とても悲しいのですから。
114
:
※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです
:2014/07/01(火) 00:17:01 ID:e6.XqA/s
( ><)「ワカ君は…ワカ君は…」
(。><)「…ワカ、君」
でも、でも、どうしても納得できないんです。
普通が幸せで、正しいことだってわかってるのに。
でも。
だってワカ君、悪くないんです。
ワカ君、何も悪いことしてないんです。
ただちょっと変わってただけなんです。
嫌がらせをしようとか、そういう意味で変わってるわけでもきっとないんです。
最初からそうだったんです。
( <●><●>)「……」
ワカ君を見るみんなの目は、驚くほど冷えきっていました。
ワカ君ほど変わった存在じゃなかったけれど、こうした審議に参加したことはあります。
そのとき、僕もこんな目を向けていたのでしょうか?
何だか、自分が恐ろしくなりました。
115
:
※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです
:2014/07/01(火) 00:25:44 ID:e6.XqA/s
( ´_ゝ`)「どーする、このヘンテコ。村のやつらは死刑って方向の声が強いが」
(´・ω・`)「しかし、強く反発してるヤツも一人いるじゃないか」
/ ゚、。 /「しょせん一人だろう。それも子供。わけがわかってないに違いない。
大人数と、たった一人の子供。普通、どっちの意見を通すかね」
( ´_ゝ`)「普通、大人数だな」
/ ゚、。 /「そうだろ。決まりだ。…子供の処分は、あとで考えよう」
役人さんたちが話し合います。
僕の手の届かないところで、どんどん話が進んでいきます。
僕はまた暴れて、言葉にならない叫びを上げました。
音量としてはとどいているはずなのに、ちっとも届く気がしません。
涙やら雨粒やらで、顔をぐちゃぐちゃにしながら、悔しさと絶望の中役人さんの声を聞きました。
( ´_ゝ`)「皆、聞け! 処分内容を確定するぞ。こいつの処分は──」
116
:
※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです
:2014/07/01(火) 00:29:35 ID:e6.XqA/s
「──待つです! ここにも反対してるヤツがいるですよ!」
.
117
:
※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです
:2014/07/01(火) 00:34:05 ID:e6.XqA/s
僕は素早く振り向きました。
みんなの視線もそちらを向きます。
審議の人だかりから少し離れて、ぴんと背筋を張った小さなシルエットが、雷の光で浮かび上がりました。
その後ろの、とても見覚えのある女の子も。
*(‘‘)*「間に合ったですね。あぶねーあぶねー、です」
(;*‘ω‘ *)「……」
(;><)「ぽぽちゃん! ──ヘリカルちゃん!」
ぽぽちゃんは控えめに縮こまっていました。
お父さんとお母さんも驚いて目をみはります。
/ ゚、。 /「…椿ぽっぽと、誰だ?」
( ´_ゝ`)「うちのじゃないな」
*(‘‘)*「ヘリカル、ですよ。しがない通行人です。ちょっと、そこのワカ君と関わりがあるだけの」
118
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 05:21:48 ID:CB6mwMH2
思ったより早く寝落ちてしまったorz
今夜21時ごろから再開します。途切れ途切れですみません
119
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 21:10:27 ID:2aMVxAPc
再開します
120
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 21:14:34 ID:2aMVxAPc
/ ゚、。 /「要するによそ者なわけだな? 一体何をしに来た」
*(‘‘)*「異議を唱えに来たです。ワカ君を殺すとかチョー意味わからないですからね」
/ ゚、。 /「…よそ者のくせにうちのルールに口を挟む気か? それは…」
/** 、 /( _ゝ )「"変"なことだな」(´ ω `)
役人さんのぞっとするような低い声に、不安と恐怖が噴き出します。
ぽぽちゃんもびくりと身を震わせていました。
当のヘリカルちゃんは平然とした顔で「そうですかねぇ」なんて言って、こちらに向かってきます。
*(‘‘)*「いきなり現れていきなり異議を唱えるのは変かもしれないですが、でもね、役人さんとやら。
私とワカ君、ビロードもですが、友達なので。
友達が殺されそうだったらそりゃ反対するのが「普通」ではないですか?」*鼹*
( ><)「とも、だち…」
*(‘‘)*「ええ、友達ですよ」
ヘリカルちゃんがあの鋭い目で僕を見つめて言います。
*(‘‘)*「一緒に遊んだではないですか。違うのですか?」
へらりと口元は笑いながら。
121
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 21:21:47 ID:2aMVxAPc
*(‘‘)*「それに、もうあの場所は私の楽園です。楽しい場所です。
前のモノクロお姉ちゃんのときも、いっしょに遊んでいっしょに楽しくて…あそこも私の楽園でもあります。
私の楽園を一つとして欠けさせるわけにはいきません」
/ ゚、。 /「何の話だ?」
*(‘‘)*「すみませんです。今のは意味がわからなくても結構です」
( ´_ゝ`)「やっぱり変なヤツだな」
場は、突然の見知らない乱入者で騒然としていました。
あれは誰だ。ヘリカルとかいうらしい。知らない名だな。よそ者か。あの宇宙人を連れ込んだのもアイツか?
そんな憶測が飛び交います。
役人さんが声を張り上げて一旦場を沈めました。
( ´_ゝ`)「みんな、静かに! 一つ一つ整理していこう。まず、この変なやつはヘリカルというらしい」
/ ゚、。 /「ビロードの知り合いらしいな。一緒に遊んだとか言ってる。まことか?」
(;><)「…うん」
(´・ω・`)「変なやつは集まるものなのかね。やれやれ。親は? 反応していたが、知っていたのか?」
お父さんとお母さんが、うちの宿にとめたという旨を伝えます。
まさか宇宙人と三人で遊んでいたということは知らなかったとも。
122
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 21:30:16 ID:2aMVxAPc
(´・ω・`)「ふぅん、嘘ではなさそうだ。そうなるとやはり変なのは宇宙人、ビロード、それに一人増えるというわけだな」
( ´_ゝ`)「ヘリカルだったか? お前がこの宇宙人を連れ込んだという可能性は?」
*(‘‘)*「ここで初めて会ったですよ。証拠はないですが、嘘はつきません」
( ´_ゝ`)「ここで初めて…? おいお前、わかってるのか? コイツを庇ったらお前もただじゃ済まないんだぞ」
*(‘‘)*「あのですねぇ、傷つこうとしてる友達救うのに、私だけ無傷でいられるなんて思ってないですよ」
ヘリカルちゃんは相変わらず淡々と、スッパリ答えます。僕のように暴れるでもなく。
冷静というよりは、僕の目には何かが足りないように見えました。
焦りとか、怒りとか、恐怖とか。そういうものが抜け落ちているような、そんな印象です。
(;´_ゝ`)「おいおい、正気かよ。ここで初めて会ったやつのために命かけるってのか? ほんとに変だな!」
*(;‘‘)*「あーもう! 普通だとか変だとかうんざりなのです! ぶっちゃけそんなもん心底どーでもいいですよ!」
*(‘‘)*「私はただ、自分が納得いくように動いてるだけです!」
命知らずに感じるくらい、役人さんに啖呵を切ってヘリカルちゃんは胸を張りました。
123
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 21:38:53 ID:2aMVxAPc
/ ゚、。 /「それはわかったが、それで、どう異論を唱えるつもりだ?」
*(‘‘)*「ワカ君わるくない。何もしてない。見逃せです。こんなところでしょうか」
(;´_ゝ`)そ「ビロードと変わらねぇ!」
(;><)「一気にカッコ悪い!」
*(‘‘)*「いやー、でも真理ですし」
古い漫画のように、ずっこけてしまいそうになりました。
ヘリカルちゃんは曖昧に苦笑いしています。いや、わらってる場合じゃないんです。
/ ゚、。 /「何も悪いことしてなくはないぞ。うちでは普通じゃないとダメなことを分かりつつ、不法滞在していたんだ」
*(‘‘)*「あの、それずっと聞きたかったんですけど。その普通ってなんですか?」
/ ゚、。 /「…は?」**
ヘリカルちゃんは役人さんに問いかけてから、僕のほうを振り向きました。
僕は大丈夫だと頷いてみせます。
たぶん、「失礼だから否定しないでくれ」と言った件でしょう。
最早こうなっては、失礼だとか言ってられません。
ヘリカルちゃんは僕が頷いたのを確認すると、また前を向きました。
124
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 21:47:00 ID:e6.XqA/s
*(‘‘)*「さて、もう一度問いますね。基準は何ですか? 姿かたちですか? しゃべり方ですか? 出身ですか?」
/ ゚、。 /「…決まってるだろ。全てだ」
ヘリカルちゃんがしかめっ面をします。
あからさまに納得いっていないようです。
*(‘‘)*「全てとは曖昧な。誰の基準なんですか?」
(´・ω・`)「誰のって、みんなのだよ。みんなが変だっていったらそれは変だろ」
( ´_ゝ`)「変なことを聞くんだな」
当然といった顔の役人さん。
周りのみんなも深く頷いています。
僕も少し前までは、同じようにしていたのでしょう。
ヘリカルちゃんはそんな圧倒的な多勢に無勢でも、ますます顔つきを険しくしてみせました。
そして、口を開いて。
ため息をつくときと同じように、一息にこう言いました。
*(‘‘)*「そうですか、では、「変」が殺されるほど悪いことだっていうのは「普通」ですか?」
( ´_ゝ`)「……そんなの、決まって、」
役人さんが言葉尻を引っ込めました。
ヘリカルちゃんの発した言葉は、水に投げ込まれた小石のように波紋を作って、僕らの価値観を揺らしました。
125
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 21:53:12 ID:e6.XqA/s
(´・ω・`)「わ…悪いことに、決まってる、だ、ろ…?」
歯切れ悪く役人さんが返します。
すかさず、ヘリカルちゃんは突っ込みました。
*(‘‘)*「なぜです? 私、モノクロの町に行ったですけど、いろんな人がいましたよ。
モノクロの町に住んでるくせに、モノクロが嫌いな人もいました。でも悪いとは誰も言わなかったです。
ましてや殺すだなんて、誰も」
(;´・ω・`)「それは…その町の価値観が変わってるんだ。そもそもモノクロなんて変だろ?」
*(‘‘)*「モノクロであることと、価値観に何の関連性があるんですか?」
周りのみんなにも動揺が広がります。
急に投げ込まれた矛盾に戸惑っているのでしょう。
殺されるほど悪いということが普通かどうか、言われてみれば考えたことがありませんでした。
ただ、変だと殺されるというルールが当たり前にあっただけです。
当たり前と普通は、似ているようで少し違います。
当たり前は、普通かどうか疑う間もなくそこにあるものだからです。
*(‘‘)*「まぁ、変なやつは嫌われるってならわかるですよ。人間は変なやつを嫌うものです。
でも、だったら殺していいですか? そんな極端なこと、聞いたことないですよ」
*(‘‘)*「私は変とかよりも、変だということによって正当化された殺しのほうが、悪いことのように思えます。
126
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 21:58:21 ID:e6.XqA/s
役人さんは渋い顔をしています。
混乱した場に、弱々しく声が上がりました。
(;*‘ω‘ *)「わ、私も…変っていうのが殺されるほど悪いことだと思えない…っぽ」
ずっとヘリカルちゃんのだいぶ後ろの方で、縮こまっていたぽぽちゃんでした。
ヘリカルちゃんは進んで反論しにきたので止められなかったけれど、ぽぽちゃんはその気がないようなので、
巻き込まなくてよかったと密かに思っていたのですが…。
(;><)「…ぽぽちゃ、」
止めようとして、言葉を飲み込みました。
ぽぽちゃんは明らかに震えていました。
ここで自分も反論したことがどういうことなのか、誰よりもわかっているのでしょう。
でもその震えからは覚悟も感じられました。
これだけ怯えていてもなお、異議を唱えたのです。
今さら僕が止めても意味はないでしょう。
どれだけ押さえつけられても、暴れるのを止めなかった僕のように。
(;*‘ω‘ *)「へ、変は、悪いことなのかもしれないっぽ。でも…どうして殺されなきゃならないんだっぽ」
(;*‘ω‘ *)「わ、わ、私も、ワカと遊んだっぽ…たの、楽しかった。楽しかったんだっぽ。だから、ずっと頭のなか、ぐちゃぐちゃになりそうだった」
(;*‘ω‘ *)「変なことは悪いこと、っていうの、私には否定、できないっぽ。昔からそうだったから、今さらできないっぽ」
ぽぽちゃんは雷雨で濡れたパジャマの端を強く掴みながら、声を絞り出しました。
127
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 22:07:01 ID:e6.XqA/s
周りはさっきまでがウソのように静まり返っています。
まだ反対者が出てきたことに驚いているのか、それともその言葉を聞き入っているのかはわかりません。
ただひとつ、ぽぽちゃんは今までのどんなときより必死でした。
(;*‘ω‘ *)「で、でも、悪くっても仲良くすること、できるんだっぽ。殺さなくても、悪いの、どうにかできると思うんだっぽ。
殺さなくても、もっと良い方法があると思うんだっぽ」
だから私は、ワカを殺すの反対だっぽ。
最後に呟くように異議を唱えて、ぽぽちゃんは俯きました。
ぽぽちゃんのお母さんがどうして、と顔を覆ったのが見えます。
僕は複雑な気持ちになりました。
ぽぽちゃんが僕の味方だとはっきりわかって嬉しいけれど、
まるでさっきまでの僕を見ているような気分だったんです。
( ><)「…ぽぽちゃん」
何を言えばいいか解らなくて、僕はただ呼びました。
ぽぽちゃんは俯いていた顔を上げて、口だけで笑いました。
震えていて、ひどく歪だったけれど。
そして、もう何人か震えている人がいました。
ぽぽちゃんとはまるで違う理由で。
128
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 22:19:47 ID:e6.XqA/s
:/; 、 /:「何でだ、おかしいだろ、変だろ…」
*(‘‘)*「…役人さん、今の彼女の言葉に反論できるですか?」
:(;´ ω `): 「う、…うるさい」
*(‘‘)*「あなたたちよりもずぅっと、私ですら年が下の、こんな幼い女の子でも解ることが解らないのですか?」
:(; _ゝ ):「黙れ…黙れ!」
役人さんたちが爆発寸前といったように震えていました。
この村の中でも特に、村のルールを重んじてきた人たち。
一際矛盾を感じているようです。
*(‘‘)*「ちゃんと、答えるです!」
ヘリカルちゃんが焦れったそうに言ったその瞬間、それは爆発しました。
129
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 22:32:12 ID:e6.XqA/s
( ゚_ゝ )「ダマレダマレダマレェェェェ!! ヘンナモノはヘンなんだヨォォォォォォォォォォ!!!!!!」
役人さんが狂ったように叫びだしました。
とっさに、僕は一歩後ずさります。
いいえ、僕だけではありません。
その場にいた人は、たった一人を除いて全員後ずさりました。
ヘリカルちゃんだけは険しい顔で役人さんを見つめています。
その姿からはやっぱり、恐怖などは感じられません。
余程肝が据わっているのでしょうか。
(´゚ω `)「ナニガヘンナコトはコロサレルほどじゃナイダヨォォォォォォ!! キベンをツカイヤガッテ!! ヨソモノガァァァァァ!!!!」
/ ゚д /「ワルイコトニきまってるダロォォォォォ!! コロス!!! コロセェ!!!!!」
*(‘‘)*「…話にならないのです」
130
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 22:40:20 ID:e6.XqA/s
ワカくんは狂ったように叫ぶ役人さんを見て、困ったような目をしました。
ワカくんにもよくわからないのでしょう。
僕にだってよくわかりません。
(´゚ω ` )「デシャバッテンジャねーぞこのヨソモノのクソガキガァァァァァ!!!」
*(‘‘)*「……ハァ…この町のみなさん、こんな人たちを今まで信用して審議を任せていたんです?」
/ ゚д /「コロス!!! コロス!!!」
(;><)「…頭がおかしくなりそうなんです」
(;*‘ω‘ *)「私はぐちゃぐちゃだった頭が一周回ってすっきりしてきっぽ…なのにさっきより震えが止まらないっぽ…」
変なヤツが悪いのは、理解が及ばなくて怖いから。
そうさっき、僕は考えました。
でも今は、この何よりも普通だと思っていた役人さんのほうが、ワカくんより理解が及びません。
呆然とする僕らの前で、役人さんは更に理解が及ばない行動に走りました。
( ゚_ゝ )「ヘンナヤツメ! コロス!!!」
/ ゚д /「コロス!!!」
(´゚ω `)「コロス!!!」
役人さんたちが、懐から短剣を取り出したのです。
131
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 22:51:09 ID:e6.XqA/s
(;><)「っ!?」
そのままヘリカルちゃんのところへ向かっていきます。
妙にくねった動きです。暴走した感情のままに走っているような。
止める間もなく、ヘリカルちゃんの至近距離に三人の大人が詰め寄りました。
短剣を向けられた彼女は、ひょいと首をかしげて見せました。
*(‘‘)*「私を殺すですか」
/ ゚д /「ヘンダカラコロス!!! バをミダス、ケシカランヤツ!!!!」
(´゚ω `)「イノチゴイをしロ!!」
対照的なほどにヘリカルちゃんは平然としていました。
ハッとして僕はヘリカルちゃんの元へ走り出します。こうしちゃいられません。
ぽぽちゃんも一歩遅れて走り出しました。
僕を押さえつけていた手は、役人さんの変貌ぶりでもう力は抜けていました。
*(‘‘)*「私を殺したって、何の解決にもなりませんよ!」
突き抜けるような声でヘリカルちゃんは叫びました。
役人さんはかき消すように、だまれ、とまた叫びます。
132
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 23:01:56 ID:e6.XqA/s
短剣がヘリカルちゃんに牙をむきました。
(;><)「ヘリカルちゃん!!」
僕が伸ばした手はずいぶんと遠く届かず、牙はヘリカルちゃんにむかって一直線に襲いかかり──
*(;‘‘)*
.
133
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 23:05:58 ID:e6.XqA/s
「それ」に気がついたのは、しばらくたってからでした。
具体的に言うと、ずいぶん遠く届かなかったはずの僕の手がヘリカルちゃんに届いた時です。
( ><)「…あれ?」
ヘリカルちゃんは僕が触れたときにゆっくりと振り返りました。
そして一言、ぽつりと呟きました。
*(;‘‘)*「……とまってる、です」
ヘリカルちゃんのほんの目の前、その位置から微動だにしない短剣と──時が止まったかのように、凄まじい表情のまま固まった役人さんを指差しながら。
いいえ。時がとまった「かのように」ではありません。
僕は周りを見渡しました。
雷雨の雨粒が空中で止まっています。
時が、止まっているんです。
***
.
134
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 23:15:59 ID:e6.XqA/s
(;><)「うわぁぁぁぁぁぁっ!? なにこれ!!!」
*(;‘‘)*「ここで尋ねるのもアレですが…これは普通ですか?」
(;*‘ω‘ *)「んなわけねぇっぽ!」
私ことヘリカルと、ビロードと、ぽぽちゃんと、今のろのろとこちらへ歩いてきたワカ君。
それ以外のものが全て止まっているです、私でもさすがにこれは驚かざるを得ません。
とりあえず短剣から離れるです。ていうかこの凄まじい表情の役人さんずっと見てるの不快です。
命拾いというものですかね。
『全くさ、ヘリカルを殺そうだなんて身の程知らずにも程があるよね』
わぁわぁ騒ぐビロードとぽぽちゃんの声の合間から、糞ほど聞き覚えのある声が上空から聞こえました。
( ・∀・)『それはこいつらには決められないことなのにさ。思わず止めちゃったよ』
*(;‘‘)*「! 着ぐるみ糞野郎!」
( ・∀・)『やぁ「ヘリカr…えっ何そのいきなり辛辣な呼び名』
木の上から現れたのは、あの野郎でした。
肝心なときに全くいなかったあの野郎です。
135
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 23:24:42 ID:e6.XqA/s
*(;‘‘)*「おいお前、口ぶりからしてお前の仕業ですか、これ」
( ・∀・)『まぁ、そんなところ。ヘリカルを殺すとかバカなこと言ってたからね。さすがにそれはダメだからね』
*(;‘‘)* 「いやだからって、どうして時が止められるですか」
( ・∀・)『この世界の大きな一部だからね』
*(;‘‘)*「せ、説明になってねぇです!」
( ・∀・)『どうどう。まぁ今はそれよりすべきことがあるでしょ』
*(‘‘)*「すべきこと?」
( ・∀・)『こいつらは僕がなんとかすらからさー。そっちのワカ君たちのことどうにかしなよ』
*(‘‘)*「どうにかって」
役人さんの手を逃れ、自由になったワカ君。
ビロードやぽぽちゃんは、現状はとりあえず置いといて三人で抱き締めあっています。
*(‘‘)*「この隙にワカ君をこの町から出せってことです?」
( ・∀・)『近いね。えっとね、僕の知り合いに、ワカ君のこと預かってくれそうな人がいるから。どうするか聞いてほしいんだ』
*(‘‘)*「……」
( ・∀・)『なに?』
*(‘‘)*「いや、矛盾してるなと」
( ・∀・)『何が?』
136
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 23:31:59 ID:e6.XqA/s
*(‘‘)*「まず、最初からそうしろです」
( ・∀・)『だから、全部与えちゃ意味がないんだって』
*(‘‘)*「もうひとつありますよ。これは与えるのに値しませんかね」
( ・∀・)『するね。でも全部じゃない。彼らはもう十分悩んだだろ。ヘリカルも救ってた。
こいつらも、なすすべがなくなってた』
結果的にヘリカルにその矛先が行ったんだけどね。バカなやつ。
そう独り言を言うように着ぐるみ頭は言いました。
なんででしょう、こいつらが私を殺しそうになったという話題になるといきなりこいつすごい威圧感あるんですが。
前の目を持ってかれそうになったときはそうでもなかったくせに。
( ・∀・)『もうこのままじゃヘリカルが殺されることでしか収集つかなそうだったからね。やむなしだよ』
*(‘‘)*「…私、救ってたですか? 救いきれてない気がしますけど」
( ・∀・)『九割がたできてたよ。少なくともビロードだけじゃワカ君はもう殺されていただろうし、
ぽぽちゃんも勇気づけた。ワカ君も味方が増えてすごく安心してるよ。
ワカ君、耳は聞こえるけど口はないからさ。みんなの心無い言葉を聞くことしかできないんだ。
だから些細なことでもすごく救われるんだよ」
137
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 23:41:22 ID:e6.XqA/s
着ぐるみ頭は相変わらず、全てを知っているような口ぶり…いえ、本当に全てを知っているのでしょう。
見透かされたような言い方が少しだけ癪にさわるです。
*(‘‘)*「…あとの一割は?」
( ・∀・)『今からするんだよ。ほら行っておいで』
ぐいっと押してくる手を払い除けながら、私はワカ君たちの方へ歩きます。
*(‘‘)*「ワカ君、ビロード、ぽぽちゃん!」
笑いあっている彼らに声をかけると、三人とも同時にこちらを向きました。
( ><)「あ、ヘリカルちゃん」
*(‘‘)*「意外と平然としてますね、君たち」
(*‘ω‘ *)「驚きがカンストしてもう全部放り投げたんだっぽ」
( <●><●>)ノシ
( ><)「それで、何ですか?」
*(‘‘)*「着ぐるみ頭から聞いたんですけど、ワカ君を預かってくれそうな人がいるらしいんですよ」
( <●><●>)"
138
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 23:48:31 ID:e6.XqA/s
( ><)「預かってくれそうな人…」
(*‘ω‘ *)「それはどこにいるんだっぽ」
*(‘‘)*「あー、それはまだ聞いてみないとわかりません。アイツの知り合いらしいです」
(;><)「はぁ」
*(‘‘)*「その人に任せれば、少なくともこの町ほどびくびくしなくて済みます。最低限の平安も保証されるでしょう。
アイツも、酷いようにするつもりはないと思うのでそこは信用していいです」
*(‘‘)*「君たちが大人になって、ルールにきつく縛られるようではなくなったら、町を出て会うことができると思うです。
でも、逆に言えばそれまで会うことはできません。何年も何年も、君たちが大人になるまで」
( ><)
(*‘ω‘ *)
( <●><●>)
*(‘‘)*「近くにいないと、色々薄れていくものです。何年も経ったころ、そっくり今のままとは限りません。
…君たちはどうしたいですか?」
139
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/01(火) 23:55:30 ID:e6.XqA/s
三人は顔を見合わせました。
ワカ君が二、三度瞬きをします。
( ><)「…そんなの…」
(*‘ω‘ *)「ねぇ…」
( <●><●>)ノ
ぼそぼそと囁きあってから、三人はすっくと立ち上がりました。
そして、ワカ君を前に持ってきます。
ちょうど私に渡すように。
*(‘‘)*「…本当にそれでいいのですか?」
( ><)「…遠く離れても、何年経っても」
(*‘ω‘ *)「姿形が変わっても。ワカがワカであるかぎり、私たちは友達だっぽ」
( <●><●>)σ
( ><)「そうですね、ヘリカルちゃんも」
聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなセリフを言ってのけました。
私は頭を掻いてから、わかりました、と短く返しました。
140
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/02(水) 00:03:52 ID:WSbLzXAo
*(‘‘)*「着ぐるみ糞野郎、聞くまでもなかったようです」
( ・∀・)『そうみたいだね。その呼び名やめて』
*(‘‘)*「そういえば役人さんたちどうしたんですか」
( ・∀・)『ああ、それなら、この町全体の記憶を昨日に戻しておいたから。
このままこっそりワカ君を連れ出して、知り合いに会いにいけばいい』
さらっととんでもねぇこと言ったですコイツ。
そうでした、まだ問題は山積みです。
コイツについて結局、何一つわかっていません。
私は着ぐるみ頭の腕を掴みました。そのまま近くへ引き寄せます。
いつものように、のらりくらりと避けられないように。
*(‘‘)*「一つだけ聞いておきたいことがあるです」
( ・∀・)『…何かな』
*(‘‘)*「お前、何者ですか」
三人がこちらを見ているのが背後の視線でわかりました。
ビロードが「確かにこんなの変わりすぎってレベルじゃないんです…」と呟いたのが聞こえます。
普通と変わっているで判断するあたりは、もう癖みたいなものなのでしょう。
141
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/02(水) 00:12:50 ID:WSbLzXAo
( ・∀・)『何者?』
きょとんとした声音で着ぐるみ頭は首を傾げました。
*(‘‘)*「ええ。時を止めるとか、記憶を戻すとか、正直言ってもう「そんなこともあるんですね」で済まされるレベル超えてるです。
答えろです。お前は何者ですか?」
( ・∀・)『何者…何者か』
まるで咀嚼をするようになんどもおうむ返しをします。
少し間をあけてくすくす、と笑い声。
( ・∀・)『僕が何者かだって!?』
着ぐるみ頭は芝居じみた仕草で片手を広げて見せました。
( ・∀・)『そんなの、君が一番よくわかってるはずじゃないか!!』
*(‘‘)*「…!?」
142
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/02(水) 00:17:51 ID:WSbLzXAo
それからあっさりと私の腕を振りほどくと、素早く私と距離を取りました。
( ・∀・)『でもね、「ヘリカル」は知らなくてもいいんだよ。それでも知りたいなら…南へ行くといい。僕の知り合いもそこにいるはずだ』
( ・∀・)『それじゃあね、「ヘリカル」。もう会うことはないかもしれないな』
*(;‘‘)*「は? ちょ、待っ──」
( ・∀・)『ばいばい』
手を振る彼が見えるのと、目の前が雷でぴかっと光るのは同時でした。
そのまま視界はホワイトアウトして──
143
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/02(水) 00:22:02 ID:WSbLzXAo
*(--)*
*(‘‘)*
──目覚めたときには空き地でした。
宿屋に置いていたはずの荷物もすべて傍らにあって、それから。
( <●><●>)ノシ
ワカくんが心配そうに私の頭を擦っているのも見えました。
*(‘‘)*
*(--)* ハァ
*(‘‘)*「…嫌な夢でも見たような気分です」
( <●><●>)「?」
*(‘‘)*「何でもありません。行きましょうか。あの着ぐるみバカと、その知り合いの元へ」
私は、嵐のような、無くなってしまったであろうあの夜のことを思い出しながら、
なんとなく痛む頭を擦って、宇宙人と南へ歩き出したのです。
(最終話へ続く)
144
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/02(水) 00:24:41 ID:WSbLzXAo
途中着ぐるみ頭が普通にヘリカルと呼んでいますが「ヘリカル」に変換お願いします
あと**みたいに文字化け?してるのがありますがただの空白のはずです…
次回投下はいつになるかわかりませんが百物語までには完結させたいと思ってます
昨日支援してくださった方ありがとうございました
145
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/02(水) 00:39:53 ID:???
どうするのかと思ってたが( ・∀・)無双だったか
勇気振り絞ったぽぽちゃんカッコ良かった
二日間おつ
146
:
ブーン系の名無しさん
:2014/07/07(月) 21:36:22 ID:h4nuy1CM
おつ
まっすぐでいいなあ
147
:
ブーン系の名無しさん
:2014/08/03(日) 23:46:25 ID:???
まだ未完成な感じで申し訳ないのですが、まとめましたという報告に伺いました
http://snowed.s601.xrea.com/library/paradise/
一つ質問なのですが、サブタイトル前の(話数後の)記号は表記揺れでしょうか…?
TOPでは削ってしまってるのですが意図があるものでしたら土下座しながらすぐに差し替えます
最終話投下楽しみに待ってます
148
:
ブーン系の名無しさん
:2014/08/10(日) 01:13:12 ID:???
百物語始まっちゃったぞー
149
:
ブーン系の名無しさん
:2015/02/19(木) 02:09:51 ID:???
おっわっらっなっいっでー
150
:
ブーン系の名無しさん
:2015/04/27(月) 03:13:10 ID:???
続いてーー))
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