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凍てつく殺意@読者参加型推理サスペンス

41二十五 ◆olN4KPV2jU:2013/10/07(月) 17:56:33
「何をそんな気難しそうな顔してんの?」
考え込んでいる伊佐治の肩を、鈴がポンと軽く叩いた。
「あ・・・いえ、なんでもないです」
「父さんの事なら放っておいていいわよ、いつもあんなノリだから」
いつの間にか毒島と変顔合戦になっている六郎を、呆れたように見ながら言う。
「そういえば、鈴さんって看護師さんなんですね」
「あら、やっぱ意外だった?」
意地悪そうにニヤッと笑う。
「いえ、そんな事はないです。ただ、私も医療の道を志望しているので、ちょっと興味があって」
「そうなの?言っとくけど、この道は厳しいしきっついわよー?勉強もそうだし、仕事もね」
確かに、人の命を預かる現場なのだから、それもそうだろう。鈴もいい加減そうに見えるが、仕事自体には真摯に取り組んでいるとの事だった。

皆の様子を見ていた妙子が、手をぱんぱんと叩く。
「さあさ、楽しいおしゃべりも一旦止めましょう。お料理が冷めてしまうわ」
いつの間にか温め直したスープを、平林が席に並べていた。
「おっと、そうだった。さっきまで遭難しとったんじゃからな」
そう言うと、六郎はシャンパンを持って自分の席へと戻る。それにつられて、皆も席に着いた。
席に着いたのを見計らって、六郎はコホンと咳払いをしてグラスを上げる。
「それでは、今宵の偶然の出会いを祝して、乾杯」
5人の前にはポテトポタージュとフランスパン、それにチーズと小さなオムレツが並べられている。暖かいスープは、冷え切った体に染み渡るようだった。
蟻原と影山は、お酒を取りあえず一口いただく。非常に美味しいシャンパンだったものの、あまり飲み過ぎてスタンドの制御に不備があっては大変なので、控えめにする事にした。
シャンパングラスを置きながら、蟻原は思い出したように六郎に質問した。
「そうだ、鍵村さん。電話をお借りする事はできますか?」
「あ!わ、私も借りたいです!この山って携帯電話が圏外ですし!」
蟻原の質問に、影山も飛びついた。そこにいる全員が、自分達の無事を家族やツアー会社に知らせておきたかった。
「ええ、もちろん構いませんよ」
妙子がテーブルの近くにある電話に案内する。
蟻原が受話器を取って、番号を押した。しかし、何の音もしない。
「?・・・おかしい、何も聞こえない」
「話し中なのでは?」
「いや、呼び出しの音も、何も聞こえないんだ」
外に屋根から落ちた雪の音が静かに響いた。


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