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タブンネ虐待スレ

256名無しさん:2014/05/18(日) 06:26:54 ID:2CNbzaKI0
ふと思いついたものを投下です
たまには願いが叶って報われるタブンネがいてもいいよね(ゲス顔)

257名無しさん:2014/05/18(日) 20:53:15 ID:DcPmx6eE0
>>256
いやいや報われてないってw
まあ「くずにくちゃん」、拾ってくれた恩に報いるために
いいサンドバッグになってね

258ある愛・護団体員の散策 ◆f70oZErA2w:2014/06/12(木) 20:36:49 ID:mZy82cJo0
ある晴れた日曜日。
俺の所属しているタブンネ愛・護団体はタブンネたちの生息地である森に来ていた。
タブンネの生息状況の調査を行うためだ。

「それでは3時間後にここに集合です。野生のポケモンや虐待愛好会に注意して散策を行ってください。
 なにかあったらすぐに私の携帯に連絡を入れてくださいね」

愛・護団体のリーダーがそう言うと、団体の人間は近くにいた者同士で声をかけあいグループを組んでいく。

グループ行動が苦手な俺としては、誰かといっしょに行動することは避けたい。
そのため、周りの人間に声をかけられる前にさっさと森の中へと入ることにした。







散策開始から約1時間。
途中で見つけたタブンネの巣や群れの位置を、GPSの位置情報と照らし合わせながら地図に書き込んでいく。
はっきり言うと面倒くさいのだが、タブンネたちの調査のためならば仕方がない。

前回までの調査との変化はほとんど見られない。これといって何も起こっていないのだろう。
今日はさらに奥の方を調べてみてもいいかもしれない。
これまで調査していない方へと足を向けてみることにした。

「…………ん?」

歩きはじめて数分。
俺の耳が子タブンネ特有の「チィチィ」という鳴き声をとらえた。
どうやら、この先にもタブンネが生息しているらしい。

259ある愛・護団体員の散策 ◆f70oZErA2w:2014/06/12(木) 20:40:40 ID:mZy82cJo0
鳴き声のする方向に向かってみると、そこにはタブンネの巣があった。
巣の真ん中に横たわる子タブンネが1匹と、子タブンネが大事そうに抱えているタマゴが1個。
子タブンネは弱っているようで、丁寧に編み込まれた草のベッドの上で弱々しい鳴き声を上げている。

http://dl6.getuploader.com/g/53998fec-1aa4-42e0-9f6c-369eb63022d0/kuso_buta_3131/8/kuso_buta_3131_8.jpg
(鉛筆書きですまんな。pass虐待アイドル)

俺の存在に気付いたのか、子タブンネの鳴き声がピタッと止まる。
キョロキョロとあたりを見回して俺の姿を見つけると、タマゴをキュッと抱えて「チィ、チィ」と再び鳴きはじめた。

その鳴き声の調子はさっきまでとは微妙に異なる。
助けを懇願しているのか、それとも、巣に近づいてきた外敵に対する威嚇か。

「ふむ」

そのままの位置にしゃがみ込み、遠目に子タブンネの様子を観察する。
子タブンネの体はかなり小さく、まだ離乳はできていないことがわかる。
おそらく排泄物であろう。タブンネ特有の白い尻尾は茶色く汚れてしまっている。
毛並みは整っておらずに色つやも悪い。手入れはされずに栄養状態も悪いようだ。

「ふーむ」

タブンネというポケモンは仲間意識が強く、家族への愛情はさらに強い。
離乳すらできていない子タブンネと、温める必要のあるタマゴを残して親タブンネが巣を離れるとは思えない。

子タブンネの様子からすれば、親であるタブンネは何日も巣に戻って来ていないのだろう。
つまり、この子タブンネの親であるタブンネはもう……

そこでハッと気づく。
集合時間が近づいてきている。すぐに戻らなくてはならない。

あわてて集合場所に戻る途中、森の少し奥まったところにあるものを見つけた。
木にぶら下げられた2匹のタブンネ。いや、タブンネの死体だ。

260ある愛・護団体員の散策 ◆f70oZErA2w:2014/06/12(木) 20:41:59 ID:mZy82cJo0
両手を縛り上げられた状態で並べて吊られている2匹のタブンネ。
顔面はひどく腫れ上がり、口や鼻、目の周りに茶色く乾いた血がこびりついている。
全身にはいくつもの切り裂かれた痕があり、腹からは腸がだらりとこぼれている。

2匹とも尻尾は切り取られており、肛門や陰部には木の枝が何本も刺さっている。
さらに観察してみると、ハート形の肉球や青い瞳はえぐり出されており、それがあるべき場所はぽっかりと穴が開いている。
切り取られた尻尾や、えぐり出された瞳、肉球はタブンネの死体の真下にあり、2匹の漏らした糞尿にまみれている。

何日もこの状態なのか、タブンネの死体からは腐った肉の臭いがしている。

おそらくこの死体を見てタブンネだとわかる人間はほとんどいない。

タブンネの死体を見慣れている人間でもない限り。
虐待されたタブンネを見たことがある人間でもない限り。
虐待された末に死んでしまったタブンネの姿を知ってる人間でもない限り。

2匹のタブンネの死体を見るのをやめて、急ぎ足で集合場所へと向かう。
集合場所にもどると、先に戻っていた愛・護団体のみんなが笑顔で俺を出迎える。

愛・護団体のリーダーのもとに行き、今日の調査結果を報告する。
前回までと変わりなし、と。

全員が集合するまで適当なところに腰を下ろして休憩しておく。
俺は道具の入ったリュックサックに目を向ける。正確には、その中に入っているタブンネのタマゴに。

愛・護団体というものはいい隠れ蓑だ。
そこに所属しているというだけで、タブンネを虐待している人間だとは思われなくなる。
真面目の活動に参加したうえで、報告を少しだけ捻じ曲げれば、誰にも疑われることなく今回のような役得もある。

生まれた瞬間から虐待を開始できることを思うと思わずにやけてしまう。
生まれたその時から、生まれてきたことを後悔するタブンネの日々が始まるのだ。

261ある愛・護団体員の散策 ◆f70oZErA2w:2014/06/12(木) 20:42:51 ID:mZy82cJo0
愛・護団体の活動を続けるその裏で、誰にも疑われることなくタブンネを虐待する。
リスクは低いのに得るものは大きい。これだから愛・護団体の活動はやめられない。

「今度は3ヶ月くらい生かしておこうかね……。じっくり楽しまないと、ね」







日が暮れはじめた森の中を1匹の子タブンネが這いずっている。
徐々に下がっていく気温に震えながら必死に這いまわる。

何日か前に人間に連れて行かれた両親は帰ってこない。
さらに、今日は別の人間が子タブンネが大事に抱えていたタマゴを持って行ってしまった。
自分の弟か妹になるはずの大事なタマゴだ。

両親にもう1度会うために。
大事なタマゴを取り戻すために。

ほとんど力の入らない手足を必死に動かして、子タブンネは森の中を這っていく。
目的地もわからないまま、暗くなってしまった森の中をのそのそと這いまわる。

子タブンネの動きは一晩中止まることはなかった。
執念のみで動き続け、必死に両親とタマゴを探す。
そのとき、森が明るくなり始めた。夜が明けたのだ。

徐々に明るくなっていく森の中。子タブンネはふと顔をあげる。
子タブンネの瞳が捉えたのは、木から吊るされた2匹のタブンネ。
それは、子タブンネが子タブンネが探し続けた両親の姿だった。

子タブンネは笑顔を浮かべ、残った気力を絞り出しながら両親のもとへと進んでいく。

(おしまい)

262 ◆f70oZErA2w:2014/06/12(木) 20:45:43 ID:mZy82cJo0
どうも「あいご」という単語がNGワードに指定されてるっぽい
なので「愛・護」という書き方で投下しました

稚拙な文章とイラストではありますが、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです

263名無しさん:2014/06/14(土) 19:28:40 ID:88Cn9eyg0
乙でした。
今ではイラストを投下する方もほとんどいませんので有難いことです。
子タブちゃんがこの後絶望で息絶えるのか、
肉食ポケモンに見つかって悲惨に食われるのか、
また卵の方の行く末など想像するとゾクゾクしますw GJ!
避難所やWikiは荒れ放題ですが、細々でもいいのでタブ虐の火を絶やさずに行きましょう。

264名無しさん:2014/06/18(水) 21:50:05 ID:RBDBr98I0
http://www62.atwiki.jp/keikenchi2
まだまだ移行中なので形だけですが新wiki作りました。
ここのリンクも既に貼ってあります。
荒らし対策のために移動したので、旧wikiからの作品移動のご協力お願いします。

265ナース:2014/06/19(木) 17:15:27 ID:Quz0kIgY0
第一部「ナースの門」


「たぶぅー!」「たぶねぇ!」「たぶぅ〜♪」

大きな部屋にたくさんのベビンネ達がひしめきあっています。その数はざっと見ても百匹
以上、ベビンネ達はそこでヨチヨチ走り回って遊んだり、昼寝をしたり、二匹で戯れ合っ
たりと思い思いに過ごしています。

ここは病院で働くナースタブンネの育成場、ここではタブンネを卵から立派なナースへと
育て上げ、イッシュ地方各地の医療施設へと送り出しています。

このベビンネ達は少し前に卵から産れたばかりの個体です。これからナースとして必要な
教育を受け、優秀なナースタブンネに成長していくのです。
ですがその前にある作業があります。

「たぶぅ?」
ベビンネ達がいる部屋の壁がグィーンという機械音をたてて動き出しました。そしてその
反対側の壁が開き、そこからベルトコンベアが現れます。
壁に押し出されたベビンネ達はコンベアの上に落ちます。しかし然程の高さはないので痛
みを感じることはありません。
「たぶ?」
コンベアの上で不思議そうな顔をするベビンネ達、昼寝をしていたベビンネはキュッキュッ
と目を擦って周りを見回します。
やがて、コンベアがゆっくりと動きはじめるとベビンネ達は楽しいのか「たぶねぇ♪」と
はしゃぎます。
少し進んだところには数台のアーム型ロボットがあり、ベビンネ達はそこでナースに適し
ている「いやしのこころ」と適していない「さいせいりょく」に分けられるのです。
いやしのこころベビンネはそのままコンベアで先に進みます。そして、さいせいりょくの
ベビンネはロボットに掴まれ、別のコンベアに乗せられます。

では、ナースに適していないさいせいりょくのベビンネ達はどうなるのでしょう?
「たぶぅ♪」「たぶねぇ〜♪」
さいせりょくのベビンネ達はいきなりロボットに掴まれて驚いたものの、やはりコンベア
が楽しいのか、小さな手足をパタパタと動かしてはしゃいでいます。これから自分達が
どうなるかも知らずに…
しばらく進むと、さいせいりょくベビンネ達の耳は鋭い機械音をとらえました。それと
同時に「たぶぅぅっ!!」と、コンベアの最前列にいたベビンネの悲鳴が響きます。
コンベアの先にはフードプロセッサーがあり、さいせいりょくベビンネは次々とミンチに
されていきます。

266ナース:2014/06/19(木) 17:16:46 ID:Quz0kIgY0
「たっ!たぶぅぅぅ!」「たぁぶぅーーー!!」
ベビンネ達は慌ててヨチヨチ走ってコンベアの動きに逆らいます。しかし産れて間もない
ベビンネはすぐに転んでしまい、抵抗空しくみんなミンチにされました。
さいせいりょくベビンネ全員の処分を終えると、フードプロセッサーからはニュルニュル
とミンチになったベビンネの肉が出てきます。
これは、後にベビンネを生産するママンネの餌になるのです。

数か月後、仕分けられたいやしのこころベビンネ達は一回り大きくなって子タブンネに成長
していました。

「たぶね♪」「たぶたぶぅ〜♪」
ベビンネ達が過ごしている部屋に育成場の職員が大きなスクリーンを持って入ってきました。
餌の時間と勘違いした何匹が職員に向かって甘えた声で鳴きますが、スクリーンを設置し
た職員はすぐに出て行ってしまいました。
職員が出て行ってすぐ、スクリーンに何かが映ります。

『タブンネちゃんお怪我を治してくれてありがとう!』
『たぶねぇ♪』

流れている映像は、病院で働いているナースタブンネの仕事風景です。

『タブンネ、この患者さんのお世話をたのむよ』
『たぶぅ♪』
『やっぱりタブンネは頼りになるなぁ』
『タブンネちゃんは働き者でいい子だね〜』
『たぶねぇ〜♪』

映像の中のタブンネは周りの人たちに温かい言葉をかけられながらとても楽しそうに仕事
をしています。子タブンネ達は映像に興味津々です。

『タブンネ、急患だっ!』
『たぶっ!』

今度は大怪我をしたポケモン達をナースタブンネがいやしのはどうや、いやしのこころを
使って手早く治していきます。
子タブンネ達はそれを見て「すごーい!」「かっこいいーっ!」等と声を上げます。
これがこの映像の目的です。
こういった医療の現場で活躍するナースタブンネの映像を見せることで幼いうちからタブンネに
ナースに対しての憧れ、興味を持たせるのです。

267ナース:2014/06/19(木) 17:21:08 ID:Quz0kIgY0
『タブンネ、みんなを助けてくれてありがとう!』
『さすがナースさんだね』
『たぶぅ♪』

そして最後に、急患をすべて治したナースタブンネがみんなから褒められて頭を撫でても
らっているところで映像は終わりました。

そんなナースタブンネ達の映像をひと月程子タブンネ達に見せ続けます。
何日かした頃には、子タブンネ達のナースに対する興味や憧れも大きくなり、いやしのはどうを
出そうと手をかざして頑張る者や、ナースごっこをして遊ぶ者等が現れます。

しかし、中には映像を流している最中に昼寝をしたり遊んでいたりと、ナースに全く興味
を示さない者も何匹か出ます。そういった者は他の者に悪影響なのですぐに職員がどこか
へ連れて行ってしまいます。


そして一か月経った頃、また職員が餌やり以外の目的で部屋に入ってきます。
「おーいタブンネ達!」
「たぶ?」「たぶね?]
「キミ達はあの映像のようなナースタブンネになりたくないかい?」
職員はニコニコしながら子タブンネ達に訊きます。
「たぶぅ!」「たぶねぇ!」
子タブンネ達はみんな大きく頷きました。
「よしっ、これからキミ達は立派なナースになるんだ。いっぱい勉強をしてみんな頑張っ
て優秀なナースタブンネになろう!」
子タブンネ達は憧れのナースになれると聞いて、青い瞳をキラキラと輝かせて喜びます。

ここから、ナースになるための教育が始まるのです。
まずはそれをいくつか紹介しましょう。


続く
少し長くなります、ちなみに三部構成の予定です

268名無しさん:2014/06/19(木) 17:41:42 ID:Quz0kIgY0
今思えば育成場より育成所の方が良かったかな?

269名無しさん:2014/06/19(木) 21:43:58 ID:bczFJWMw0
>>268
乙乙。最後まで生き残れる者がいるのか否や。
途中で選別された子タブの末路も是非!

270ナース:2014/06/20(金) 17:57:02 ID:Quz0kIgY0
「たぶぅ…たぶぅ…」
子タブンネ達は手先に全神経を集中させて何かをやっています。その手には、小さな針と
糸が握られています。
今、子タブンネ達がやっているのは針の穴に糸を通すという作業、一見ナースとは
何の関係もないように思われますが、これはとても大事なことなのです。

ナースというものは不器用ではいけません、うっかり危険な薬品を落としてしまったり、
医療器械を壊してしまったりしては大変ですからね。
なのでこうしてタブンネ達の手先を鍛えているのです。
「たぶぅぅ……」
しかし人間でも難しいこの作業、指が太いうえ不器用なタブンネには至難の業です。
この日の糸を通す針のノルマは30本、ノルマは日に日に増えていきます。
「たぶぅ…たぶね…」
小さな針の穴に何とか糸を通そうとプルプルと震える指先で奮闘する子タブンネ、なかなか
うまくいきません…
「たぶぅぅぅぅっ!!」
こちらの子タブンネはどうやら自分の手に針を刺してしまったようです。ハートの肉球からは
ぷくっと赤い血が浮き出ています。
「たぶんねぇ」「たぶ〜たぶ〜」
痛みにえぐえぐ泣いている子タブンネを他の子タブンネ達が励ましてあげます。まだ、
いやしのはどうが使えないので肉球をペロペロ舐めてやることしか出来ませんが、痛みは
大分楽になったらしく怪我をした子タブンネは笑顔でちょこんと頭を下げてお礼を言います。
そしてまた、子タブンネ達は作業を再開します。

夕方頃、作業をする子タブンネ達の元に職員がやってきました。
「たぁぶ…」「たぶねぇ…」
すると急に子タブンネ達は怯えだしたり、慌てだしたりします。
「やぁ、タブンネ達、今日もしっかりノルマは達成できたかな?」
職員はニコニコしながら子タブンネ達を見て回ります。
「おや?」
足を止める職員、その視線の先の子タブンネはブルブルと震えながら申し訳なさそうに
職員に対して「たぶぅ…」と鳴きます。
「キミ、26本しか糸を通してないじゃないか、いけないね〜ノルマは30本だろ?」
「たぶ…」
「26本だから足りなかった分4発だね」
そう言って職員はその子タブンネの頭をポカリポカリとげんこつで4発殴りました。

271ナース:2014/06/20(金) 17:58:34 ID:Quz0kIgY0
子タブンネは頭を押さえて涙目になりますが、構わず職員は別の子タブンネに目を向けて
「キミは17本だから13発だね」と13発殴ります。

時間内にノルマを達成できなかった子タブンネは足りなかった分だけこうしてげんこつを
浴びせられるのです。
少々厳しいかもしれませんが、何せナースは命を取り扱う現場で働く重要な役割、手緩く
いく訳にはいきません。

「ん、キミ、何を隠してるんだ?」
「た…たぶぅ…」
どうやらこの子タブンネは自分の尻尾の中に針を隠して、無くしてしまったことにしよう
としていたようです。

「ずるいことをするとどういうことになるかわかるよね?」
すると、今度は真っ赤に焼けた鏝を持った職員が入ってきました。
「たぶ…!たったぶぅ!たぁぶねぇぇ!!」
子タブンネは慌てて「ごめんなさい!ごめんなさい!もうしないからゆるして!」と必死
に懇願します。
しかし「もう遅いよ」と一言言って職員は子タブンネを押さえつけました。
「たぶっぅ!たぶぅ〜〜!!」
涙を流して逃れようと身を捩じらせる子タブンネ、もう一人の職員はそんな子タブンネに
鏝押し付けます。
「だぷぅーーー!!たぶっ!ぶぅーーーーー!!」
ジュ〜ッと肉が焼ける音と共に子タブンネの絶叫が響きます。他の子タブンネ達は目を
キュッとつぶって耳を押さえています。
鏝が離されると子タブンネのふっくらした黄色いお腹には痛々しい焼印が残りました。
「た…ぶぅ……」
子タブンネは空ろな目をしてポロポロと涙を流しています。

この焼印は、ナース失格を意味するもので、主にこの子タブンネのように反則行為をした
り、何度注意されても同じ失敗を繰り返したり、匙を投げたりした者に対してナース失格
と判断されて押されます。
焼印を押されたらもう一生ナースにはなれないと教えられている子タブンネ達にとって、
焼印を押されることは何よりも辛いことなのです。

焼印を押された子タブンネは、職員がどこかへ連れて行ってしまいます。

272ナース:2014/06/20(金) 18:00:27 ID:Quz0kIgY0
この糸を通す作業が終わると、次に行われるのは体力作り。
ナースは、夜中に急患が出て徹夜をしたり、患者をベッドに寝かせたり降ろしたり、
リハビリをする患者を支えたりと意外にも力のいる仕事です。

子タブンネ達は技マシンでかいりきを覚えさせられて、自分の体重より二倍の重さのある
患者に見立てた人形を担ぎ、職員監視の元何時間も歩かされます。
「たぁ……ぶぅぅ……!」
人形を背負ってヨタヨタと歩く子タブンネ達、どの子タブンネも辛そうに顔を歪めていま
す。
かいりきを覚えさせられたといっても、自分の二倍の重さがある人形を何時間も運ばされ
ては、子タブンネの体力ではとてももちません。
「たぶぅ…ねぇぇ…!」
しかし人形を落としたり降ろしたりしたらげんこつです。そしてそれを5回以上やったら
あの焼印を押されてしまいます。

「たぶ!たぶねぇぇ…!!」
少し小柄なこちらの子タブンネは必死な顔をして踏ん張っています。頭の5つのコブを見
る限り、もう次落としたら後がないようです。
「ねぇ……っ!たぶぅぅ……!!」
プルプルと全身を震わせながら一歩一歩進んでいますが今にも倒れてしまいそうな子タブ
ンネ…時折他の者に助けを求めますが他の子タブンネ達もそれどころではありません。
出来ることはせいぜい「がんばって!」「もうすこしだよ!」と声をかけてやることくらい
です。

「たぶっ!」
とうとう子タブンネは人形を落としてしまいました。地面に人形が転がると同時に子タブ
ンネの顔が絶望に染まります。
「たぶっ、たぶねぇ…」
「タブンネ、大切な患者さんを何度も落としちゃダメじゃないか、キミ、ナース失格だよ」
職員は先端が赤くなった鏝を取り出します。鏝自体に恐怖心を抱いている子タブンネは固
まって動けません。
「たぶぅぅたぶねぇぇ!」
子タブンネは目に涙を浮かべて謝りますが職員は容赦しません、問答無用で鏝を押し付け
ます。
「たぶゃぁアあああああ!!」

「これでキミはナースになれないよ、一生ね」
そう言って職員はイヤイヤと首を振って現実逃避しようとする子タブンネを連れて行きま
した。

273ナース:2014/06/20(金) 18:01:44 ID:Quz0kIgY0


このように、子タブンネ達はナースになるために勉強だけでなく、とても厳しい訓練も受
けるのです。
紹介したこの2つ以外にも子タブンネ達は様々な教育や訓練を受けます。
患者に対しての対応、薬品や医療器械の使い方、患者の症状の見分け方等々…

朝から晩まで子タブンネに休んでいる暇などありません、くる日もくる日も医療関係の物
とにらめっこ…過酷な訓練…人間でも耐え難いものです。

しかし子タブンネは、ナースになりたい!病気や怪我の人を救ってあげたい!その一心で
それを耐え抜きます。
子タブンネ達は職員の教育を受けるうちに、「タブンネにとってナースになることは
すべて、ナースになれないタブンネは廃ポケ同然」という意識が
形成されていたのです。



一年が経ちました…子タブンネ達はもうすっかり子タブンネではなく、成体のタブンネに
なっていました。
そこまでの間に、何十匹ものタブンネ達が焼印を押されて去っていき、ナース教育を始め
た頃に比べてタブンネの数は半分近くに減っていました。

「さて、タブンネ達、キミ達ももう立派な大人だ。いよいよナースタブンネとして必須の
技、いやしのはどうを教えよう」
「たぶねぇ〜♪」「たぶ〜♪」
職員が言うと、タブンネ達は歓喜の声をあげます。一年も一所懸命勉強をして、やっと
あの憧れの技を教えてもらえるのですからその喜びも大きいでしょう。
タブンネ達の脳裏にあの、いやしのはどうを使って患者を次々と治していくナースタブンネ
の姿が浮かびます。

「キミ達にいやしのはどうを教えてくれるのは実際に病院で活躍している現役のナース
タブンネだよ」
そう職員が説明すると、一匹のナースタブンネがタブンネ達の前に歩み出ました。
「たぶね♪」とチョコンとナースキャップの乗った頭を下げて挨拶するナースタブンネ。
タブンネ達は、ナースタブンネと、その頭に乗っているナースキャップに目を輝かせて
尊敬と憧れの視線を送ります。

274ナース:2014/06/20(金) 18:04:20 ID:Quz0kIgY0

そしていよいよナースタブンネ指揮の元、いやしのはどうの練習が始まりました。
「たぶぅぅ〜〜!」「たぶ〜〜!!」
両手を前に出して力を込めるタブンネ達、ナースタブンネは「あまり力を入れすぎないで、
患者さんのお怪我が治りますようにって願いを込めて!」と手取り足取り指導していきま
す。

練習を始めて数日後、一匹のタブンネの手先から小さな波動がふわりと出ました。
「たぶっ!」
それはほんの小さなものでしたが、タブンネ達にとっては大きな一歩です。
「たぶねぇ〜♪」「たぶぅ〜!」「たぶねー♪」
そのタブンネを囲んで他のタブンネ達は「すごいねー!」「やったね!」とまるで自分の
ことのように喜んでいます。

こうして、徐々にタブンネ達はナースタブンネの指導のおかげでいやしのはどうを使える
ようになっていきます。中には、なかなか覚えられずに泣いてしまうタブンネもいますが、
職員とは違い、ナースタブンネは優しい言葉をかけて励ましてくれます。
その甲斐もあり、それから数日もするとタブンネ達は全員いやしのはどうを使えるように
なりました。

「たぶたぶ〜♪」「たぶねぇ♪」
お互いいやしのはどうを出し合って喜び合うタブンネ達、これでもう自分達は立派な
ナースタブンネだ!どのタブンネもそれを確信していました。


しかし、まだこの育成場ではナースになるための最終試験が残っているのです。
タブンネ達がいやしのはどうを使えるようになってすぐにそれは行われました。

「タブンネ達、これからこの育成場を卒業するための最後の試験を行う!」
「たぶ?」「たぶねぇ?」
「一年間の苦労はすべてこの試験にかかっている!これに合格をしたらもうキミ達は立派
なナースタブンネだぞ!」

「たぶぅ…!」「たぶ…」
これに合格をすればナースになれる…しかしすべてがこの試験にかかっているという重圧…
タブンネ達は皆、緊張の面持ちを浮かべています。
「じゃあまずは内容を説明するぞ」
と職員は近くにあった大きな箱を機械で傾けて中からボロボロの何かを大量に出しました。

「たぶっ!?」「たぶねぇぇぇ!?」
タブンネ達はそれを見て悲鳴に近い声を上げます。
そのボロボロの何かとは、自分達と同じ「タブンネ」だったのです。
ボロンネ達はみんな、みねうちで徹底的に気付けられていたり、毒や火傷を食らっていた
りと、わずかに「たびゅ……たぶ……」と弱々しく呼吸しているだけでほとんど瀕死の状態です。

タブンネ達がさらに驚いたのは、ボロンネ達のお腹にあのナース失格の焼印が見えたから
です。
そう、このボロンネ達は今までに焼印を押されてどこかへ連れて行かれた曾ての同士達だ
ったのです。

275ナース:2014/06/20(金) 18:05:40 ID:Quz0kIgY0
「この重傷を負っているタブンネを治療して治す、それが最後の試験だ。もし治せずに
死なせたりした者はナース失格と見なして焼印だ、もう二度とナースにはなれない」
職員は説明を終えるとボロンネ達の前に出るようにタブンネ達に言います。
「それじゃあ…試験スタート!」


「たぶぅ、たぶねぇ!」
タブンネ達は慌てて触覚を胸に当ててボロンネの状態を確認します。やはり状況は最悪、
早く処置を施さなければ死んでしまいます。
「たぶねぇぇっ!」
触覚を胸から放すと、タブンネ達はいやしのはどうやいやしのこころでその状態に適した
治療をしていきます。

手際のいいタブンネは素早い判断で的確に治していきますが、うまくいかないタブンネも
何匹かいます。
「たぶ……!たぶねぇっ!」
このタブンネは火傷を負ったボロンネを治そうとしていますが、なかなかいやしのこころ
を発動できないでいます。どんなに「この子の火傷が治りますように」と願ってもボロンネ
の火傷は治りません…
「た………ぶ……ねぇぇ!」
ボロンネは「うぅ…苦しいよぉ……早く治してよぉ…」と苦悶の表情を浮かべてはぁはぁ
と喘いでいます。
「たぶぅぅ〜〜!」
仕方なくいやしのはどうを使おうとしますが、焦っているせいかボロンネに命中しません。
「た………びゅ………」
モタモタしているうちにボロンネは力尽きてしまいました。

「たぶぅぅぅぅんねぇぇぇっ!!」
触覚でボロンネが死んでしまったことを感じ取り、ワッと泣き崩れるタブンネ、
そんなタブンネの耳を職員は乱暴に掴みます。
「まともに治療もできない奴なんてナースにはなれないよ」
「たぶぅぅぅぅぅっ!!」

普段こういう時の対処法も教わっているタブンネ達ですが、それと、実際にやってみるこ
とでは大きな違いです。

276ナース:2014/06/20(金) 18:07:32 ID:Quz0kIgY0
他にも、毒の症状にも拘らずいやしのはどうを浴びせていたり、パニックになって何をす
れば良いのかわからなくなり、オロオロしていたり、手先が震えてうまくいやしのはどう
が当てられなかったりしているタブンネが出てきて、ボロンネ達は苦痛の末、死んでいき
ました。

「たぶぅねぇああぁ!!」
「ぷぅぅぅっ!!」
「たぶねーーー!」
焼印を押されていくタブンネ達、どのタブンネも仲間を死なせてしまった罪悪感と、もう
二度とナースにはなれないという絶望感に苛まれ、まるで死んだような目をして泣いてい
ます。

こうして最後の試験が終了しました。タブンネ達は最後の最後に改めて身を以て命の大切
さを学んだのでした…

翌日、試験に合格したタブンネ達は、イッシュ地方各地の病院に送られました。


「たぶ…たぶねぇ」
遂にずっと憧れていたナースになれたことに嬉しさが込み上げてくる半面、試験に落ちた
仲間、死んでしまった仲間のことを思うと複雑な気持ちになります。

そんな気持ちの中、タブンネは鏡の前に立ちました。
「たぶ…」
そこに映っていたのは、頭にナースキャップを乗せた、立派なナースタブンネでした。
タブンネの青い瞳からは涙が溢れてきます…

これからいっぱい仲間の分まで頑張って、たくさんの人の命を救ってあげよう!
そう心の中でタブンネは改めて誓うのでした。


その頃、育成場では試験に落ちたタブンネと怪我の治ったボロンネ達がフードプロセッサー
のコンベアに乗せられていました。




おわり

277名無しさん:2014/06/20(金) 20:00:04 ID:DlzCUhhg0
乙でした。
焼き鏝を押されてから1年以上も、サンドバッグとしてだけ生かされ続けるボロンネの姿とか想像するとニヤニヤしますw

278名無しさん:2014/06/21(土) 10:42:51 ID:Quz0kIgY0
一応第二部では送られた病院で働くタブンネの苦悩を書きたいと思います

279名無しさん:2014/06/21(土) 10:59:39 ID:PAYBwG720
避難所の避難所の方々お疲れ様です

RSリメイクに本スレとwikiが新しくなりました
新スレ
http://nozomi.2ch.net/test/read.cgi/poke/1403274315/
新wiki
http://www62.atwiki.jp/keikenchi2/

本スレは2010年のように1からまっさらな気持ちでやっていこうというコンセプトです
wikiは今度は管理人様がついているので安心して作品と投稿できます

もしよろしければですが本スレに作品がないのはさみしいので久々にポケモン板に作品投下したいなという作者様おりましたら是非新スレに投稿してください
これから皆様で楽しくタブ虐を成長させていきましょう、よろしくお願いいたします

280名無しさん:2014/06/21(土) 11:00:37 ID:PAYBwG720
RSリメイクの部分は宣伝のための文の消し忘れです
お気になさらずに

281管理人★:2014/06/23(月) 13:28:40 ID:???0
管理人です。これで証明になるでしょうか。
よろしくお願いします。

282サッカーごっこは母との別れ(1/2):2014/06/24(火) 23:04:08 ID:gGf4bRh20
「ミィ♪」「ミッミ♪」「ミミィ♪」

小さな空き地に子タブンネたちの楽しげな鳴き声が響く。
3匹の子タブンネが捨てられていたモンスターボールを楽しそうに蹴っている。
そんな子どもたちを、お母さんであるタブンネがニコニコと笑顔で見守っている。

近くにある商店街に設置されている街頭テレビ。
そこに映し出されていたのはサッカーの祭典ワールドカップ。
エサを探していた時に見たその映像はタブンネたちを興奮させた。

サッカーのルールはわからなくとも、画面越しに伝わってくる迫力や熱気はよくわかった。
空き地に捨てられていたモンスターボールを蹴ることで、雰囲気だけでも味わっているのだ。

「ミィ〜…………ミィッ!」

子タブンネの1匹が思いっきりモンスターボールを蹴飛ばす。
モンスターボールは大きくそれて、ニコニコと見守っていたお母さんタブンネのもとへと飛んでいった。

「ミッキャ!?」

飛んできたモンスターボールをお母さんタブンネは避けることができなかった。
ポコーンという軽い音を立てて、モンスターボールがお母さんタブンネの頭に直撃する。
突然のことに対応できず、お母さんタブンネがひっくり返る。

その光景を見て、子タブンネたちはあわててお母さんタブンネのもとに駆け寄っていく。
「ミィミィ」と鳴き声をあげながら、「ごめんなさい」「だいじょうぶ?」と倒れたお母さんの顔をのぞき込む。

お母さんタブンネはすぐに体を起こすと、子タブンネたちを安心させるように笑顔を向ける。
と、そのときである。
お母さんの頭に当たったモンスターボールがパカッと開いた。

「ミッ? ミィィッ!?」

タブンネたちが何か疑問を感じる前に、お母さんタブンネの体がモンスターボールの中に吸い込まれる。
目をパチクリとさせる子タブンネたちの前で、モンスターボールはパタンと閉じてしまった。

何が起こったかわからない子タブンネたちだったが、やがて鳴き声を上げ始める。
自分たちの目の前でお母さんが突然姿を消してしまった。
優しくて大好きなお母さんがいなくなってしまい、不安に襲われているのだ。

283サッカーごっこは母との別れ(2/2):2014/06/24(火) 23:04:45 ID:EVzb7IoA0
「ミィ! ミィミィ!!」

そのうち、子タブンネたちの1匹がモンスターボールを指さして激しく鳴きはじめる。
野生である子タブンネたちはモンスターボールのもっている機能は知らない。
だがそれでも、お母さんタブンネが消えてしまった原因が目の前のボールだということはなんとなくわかったのだ。

3匹でモンスターボールをペチペチと叩いたり、近くにあった石でゴツゴツと叩いてみたり。
色々なことを試してみるが、お母さんタブンネがモンスターボールから出てくる様子はない。

もともとは空き地に捨てられていたモンスターボール。おそらく壊れていたのだろう。
壊れていたはずのそれがたまたま作動し、お母さんを飲み込んでしまった。
そして、壊れていたということは正常に作動する保証はないということであり。
それはつまり、このモンスターボールが二度と開かない可能性もあるというわけで…………

それから数日たってワールドカップが終わるころ。
車につぶされてペシャンコになったモンスターボールと、その周りで涙を流す子タブンネたちの姿が目撃されたという。

(おしまい)

284名無しさん:2014/06/24(火) 23:11:41 ID:EVzb7IoA0
ワールドカップだったから書いてみましたがサッカー関係ないね!
そして1分とたたずになんでID変わってるし……

285ナース:2014/06/25(水) 23:31:19 ID:Quz0kIgY0
第二部「怪物病棟」


ここはイッシュ地方の某病院、そこに一匹のナースタブンネが働くことになってから一か月
が経ちました。
最初は色々と不安なところがありましたが、優しい医院長や同僚の看護婦達が色々と教え
てくれたり、アドバイスしてくれたおかげで、今ではすっかりナースの仕事に慣れていま
した。

「おおっタブンネ、今日も頑張れよ」
「たぶねぇ♪」
病院の人達に優しい言葉をかけられて、今日もタブンネは楽しそうにナースの仕事をして
います。病院の廊下を歩くと、患者さん達も「あら、タブンネちゃんは今日もかわいいわ
ね」「頑張ってね、ナースさん」等と声をかけてくれます。タブンネはそれに笑顔で
「たぶね♪」と答えます


「あっ、タブンネだっ!オーイ、タブンネーー!」
笑顔で患者さん達に挨拶しながら廊下を歩くタブンネに男の子が駆け寄ってきました。
「タブンネ、この前は僕のポケモンを治してくれてありがとう!」
男の子は、少し前にタブンネがいやしのはどうで治療したポケモンのトレーナーでした。
「おかげでもう元気になって走り回ってるよ、タブンネが治してくれたおかげだよ!」
「たぶぅ♪」
男の子にお礼を言われ、タブンネはとても嬉しい気持ちになりました。
ナースタブンネにとって一番幸せなのはこういう瞬間なのかもしれません。

その余韻に浸っているタブンネに「おはよう」と医院長が声をかけます。
「今日もお仕事頼むよ」
「たぶねぇ♪」

タブンネが毎朝病院でやっている仕事は、病室の患者さん達を一人一人診て、熱等を計っ
たりするというものでした。

286ナース:2014/06/25(水) 23:32:31 ID:Quz0kIgY0

道具を持って一部屋ずつ見て回ったタブンネ、残すところはあと一室です。

「たぶ…」
しかしその病室の前に立つと、タブンネの足はピタリと止まりました。ずっと楽しそうに
していたタブンネの顔からは笑顔は消え、不安そうな面持ちになっています。

タブンネが躊躇するのも無理はありません、実はこの病室に一週間程前から入院している
ロアーさんという中年の男は、何かと医師や看護婦に文句をつけては大声で怒鳴ったり
暴れたりする、所謂モンスター患者で、医師と看護婦の間ではそこそこ有名でした。

そのロアーさんにタブンネはとくに目を付けられていて、いつも集中的に苛められるのです。


「たぶぅ…」
意を決してタブンネはロアーさんの病室に入りました。

「何だ、豚か」
ベッドに寝転がっていたロアーさんが鋭い目でタブンネのことを睨み付けます。
「た、たぶね?たぶねぇ」
それでもタブンネは笑顔を作り、「ご気分どうですか?」と訊きました。
「気分も糞もねぇよっ、こんなかったいベッドで一日中寝かされて、肩が痛いわっ!」
ロアーさんは早速文句を言います。
「たぶねぇ…」

「おいっ」
さらに気遣うタブンネに自分の肩を指差して肩揉みを要求します。
まだ他の仕事があったタブンネですが、大切な患者さんの要求なので揉んであげました。
「何だよ、全然気持ち良くないな、もっと強く揉めよ」
「たぶっ、たぶぅ!」
「いてて!今度は強すぎるわボケッ!」
ロアーさんはタブンネの頭をげんこつで殴りました。
「たぶぅぅ……」
タブンネは育成場の怖かった職員のことを思い出して泣いてしまいそうになりましたが、
ぐっと堪えてペコリと謝ります。

287ナース:2014/06/25(水) 23:33:48 ID:Quz0kIgY0
「まったく、ここの病院の奴は肩揉みの一つもまともにできないのかっ!」
「たぁぶんねぇ……」
「多分じゃねぇんだよっ!」
理不尽な理由で怒鳴りつけるロアーさん、タブンネの耳にはそれがジンジンと響きます。
しかし耳を押さえることはできません、タブンネはひたすら頭を下げて謝り続けました。


病室を出た頃には、タブンネの顔は暗く沈み、目には涙が浮かんでいました。

お昼頃、タブンネは患者さんの部屋にお昼のご飯を持っていく仕事をします。
もちろんロアーさんの病室も例外ではありません。
タブンネは食事を乗せた盆を持ってロアーさんの病室に入ります。
今日のメニューはタブンネがロアーさんのために作ったお粥、医院長からロアーさんの病
状を聞いて、それに合わせて一所懸命作りました。

「たぶね♪」とタブンネはロアーさんにお粥を差し出しました。
しかしロアーさんはそれを見て露骨に不満そうな顔をします。
「何だこれは?」
「たぶぅね♪」

「ふざけるなっ!」
「たぶぅ!?」
ロアーさんはいきなりタブンネを怒鳴りつけました。驚いたタブンネは危うくお粥を落と
しそうになります。
「いつまでこんなどろどろした歯応えのないもん食わせるんだ!もっとまともな飯持って
こいっ!」
「たぶ、たぶねぇ、たぶ…」
気持ちはわかりますが、ロアーさんは医院長から今はそういうものしか口にしてはいけな
いと言われている患者なので仕方がありません、タブンネは何とかロアーさんを説得しよ
うとします。

「こんなもん食えるかっ!」
ロアーさんはタブンネの持っているお粥の器を叩き飛ばしました。タブンネは零れたお粥
を頭から被り、大事なナースキャップに大きな染みができてしまいました。

「たぶぅぅぅ…」
涙目になりながらタブンネはベタベタになってしまった体と床を雑巾で拭いて、転がって
いる器と盆を片付けました。
「作り直して来いよ」
「たぶ……」

288ナース:2014/06/25(水) 23:35:10 ID:Quz0kIgY0

その日の夜、タブンネは更衣室で一匹泣いてしまいました。
「たぶぅね……」
どうしてロアーさんは怒ってばっかりなんだろう…タブンネは一生懸命頑張ってるつもり
なのに…
染みの付いたナースキャップを眺めてタブンネは溜息をつきます。
タブンネのどこがいけないんだろう…何だか心がズキズキするよぅ…

ふと、育成場にいた時のことをタブンネは思い出しました。
怖かった育成場の職員も、言われたことをちゃんとやったり、今までできなかったことが
できるようになったりした時はちゃんと褒めてくれました。でもロアーさんは何をしても
怒ってばかりです…

ロアーさんが怒るのはもしかしてタブンネがまだロアーさんの満足のいく対応ができてな
いからなのかな…?もっと頑張ってしっかりやればロアーさんも褒めてくれるのかな…?


明日からもっともっと頑張って、きっとロアーさんに認めてもらおう。
タブンネはそう決めました。


しかしそのタブンネの思いとは裏腹に、ロアーさんの自分勝手な行為はどんどんエスカレート
していきます…その度にタブンネの体や心は大きく傷付けられます…
時折心配した患者さんが「大丈夫?医院長さんに言ってあげようか?」等と声をかけてく
れますが、タブンネは笑顔で大丈夫ですと答えます。
他の患者さんには余計な心配をかけたくないというタブンネの配慮でした。そして何より、
医院長には迷惑をかけたくなかったのです。

しかしタブンネにも限界というものがあります…ある日、とうとう耐えられなくなったタ
ブンネは、新しく入った後輩のラッキーにロアーさんの病室の仕事を任せました。

「たぶぅぅ…」
任せたものの、タブンネはその間不安で不安で仕方がありませんでした。今頃ロアーさん
にどんな目に遭わされているか…それを想像するとタブンネの心は罪悪感でいっぱいにな
ります。

「らきぃ♪」
しばらくして、ラッキーが戻ってくると、その無事な様子にタブンネはホッと胸を撫で下
ろしました。
そして、ラッキーにロアーさんの様子を訊きました。
ラッキーの話では、多少の悪態は吐かれたが、それ以上のことはされなかったということ
でした。

289ナース:2014/06/25(水) 23:35:57 ID:Quz0kIgY0
「たぶ……」
安堵すると同時に疑問を抱くタブンネ。
どうしてだろう…いつもタブンネには怒ったり暴力を振るったりするのに…

そうかっ!もしかしてラッキーちゃんの対応がタブンネのよりも良かったから…
だからロアーさんは怒らなかったんだ!
ならタブンネもラッキーちゃんと同じ風にすればロアーさんも怒らない筈!

そう合点したタブンネはラッキーに、ロアーさんに対してどういう対応をしたのかを詳し
く訊きました。


翌朝、タブンネは自信満々でロアーさんの病室の戸をノックして入りました。
「たぁぶ♪」

「おい、お前何で昨日こなかった?」
そんなタブンネにロアーさんは開口一番に訊きました。

「たぶ……っ」
回答に困りました。まさか、ロアーさんが怖かったからだとは言えません。

「お前、俺と顔合わせたくないから他の奴にやらせたんだろ?」
ロアーさんは見透かしたように言いました。
「たぶね、たぶたぶぅ〜〜!」
首を横に振って否定するタブンネですが、言われていることはほとんど事実なのでそれ以上
の否定はできません。

「嘘を言うなっ!」
「た……っ」
「俺のことが嫌だったんだろ?俺の世話なんかしたくなかったんだろ?」
ロアーさんはタブンネの肩を掴んでガクガク揺すります。
「た……たぶね…!たぶねぇぇっ!」
「ナースが患者さんを選り好みしていいと思ってるのかっ!!」
そう言うとロアーさんはタブンネの柔らかいお腹を病人とは思えない程の力で殴りました。
「たぶぅぅぅう!!」
勢いでタブンネは机に激突し、上に置いてあった花瓶が床に落ちて割れました。
腹を殴られたタブンネは苦しさから、その破片の上に手をついてしまいます。
「たぶ!ねぇぇぇっ!」

290ナース:2014/06/25(水) 23:36:50 ID:1LIZCliQ0
ピンク色をしたハート型の肉球には深々と花瓶の破片が刺さり、そこから血が溢れ出てき
ます。

「たぶぅぅ…」
なるべく突き刺さった破片に触れないように痛みを耐えながら肉球をペロペロ舐めるタブ
ンネ、それもロアーさんには気に食わなかったようで「お前は患者さんより自分の怪我の
方が優先なのか!?」とタブンネの足を踏みつけました。
「たぶねぇ……!」

「不愉快だ、責任者だっ!誰か責任者を呼んでこいっ!」
責任者とは明らかに医院長のことです。タブンネは説得しようとしますが、ロアーさんは
聞く耳を持ちません…


「どうしたんですか!?」
そこに間の悪いことに医院長が音を聞きつけてか、他の患者さんに呼ばれてか知りません
が病室に入ってきました。
「おう、ちょーどいいところに来たな、あんたが医院長だろ?」


その後、タブンネと医院長は30分以上もロアーさんに「おたくの病院じゃ一体ナースにど
ういった教育をしてんだっ!」等と、文句や罵倒を浴びせられました。
その間医院長は「申し訳ありませんでした!」「この子(タブンネ)には悪気はなかったん
です」とひたすら頭を下げ続けていました…
その姿を見て、タブンネはいつもロアーさんに怒られている時以上に悲しい気持ちになり
ました。

タブンネのせいで医院長さんまで怒られちゃった…あんなに頭を下げてロアーさんに謝っ
てるよぅ……医院長さん、ごめんなさい、本当にごめんなさい…!

自分の仕出かしたことで医院長まで巻き込んでしまった申し訳ない気持ちでタブンネの心
は張り裂けそうです。

291ナース:2014/06/25(水) 23:37:39 ID:Quz0kIgY0

「たぁぶ…」
病室を出ると、タブンネは医院長に謝りました。

「何、気にすることはないさ、病院で働いてればよくあることだよ」
医院長はタブンネを怒ることなくポンと肩に手を置いて慰めます。

「しかしキミもそんな患者さんからも目を背けてはいけないよ、たとえどんな人であろう
とうちの大切な患者さんだ」
「たぶねぇぇ……」
「地道に向き合っていけばいつかはロアーさんもわかってくれる日が来るさ、しかしそれ
までの間、キミはしっかりとロアーさんに向き合ってあげないといけないよ?なぁに、何
か心配事があったらすぐにボクが相談に乗ってあげるよ」
「ぷぅ…」
そう医院長に言われてもタブンネにはもう自信がありませんでした。タブンネの大きな耳
は力なく垂れ下がり、しょんぼりとしています。
そんなタブンネの気持ちを察したように医院長は言いました。
「忘れてはいけないよ、キミはナースなんだ」

「たぶっ……!」
その言葉を聞いてタブンネはハッと顔を上げます。
「大丈夫だ、キミならかならずできるっ!もっと自分に自信を持って胸を張りなさい」
「たぶぅ!」
医院長の言葉にタブンネは、ほんの少しですが勇気付けられました。
「よしよしその意気だ。 あっそうそう、後でボクの部屋に来なさい、怪我の治療をして
あげるから」
タブンネは医院長の優しさに涙をぽろぽろと流しました。



しかしそれから数日後に事件は起こりました…

292ナース:2014/06/25(水) 23:38:38 ID:Quz0kIgY0
その日タブンネはいつものように朝の仕事を終え、廊下を歩いていると背後から「オーイ、
タブンネー!」と、この前の男の子が駆け寄ってきました。

「タブンネ、実は大ニュースがあるんだよ!」
「たぶ?」
「この前タブンネが治してくれたボクのポケモンが卵を産んだんだよ!」と男の子は手に
抱えていた卵をタブンネに見せます。
「たぶっ!たぶね、たぶねぇ〜〜♪」
タブンネは喜んで新しい命の誕生を祝う言葉を男の子にかけてあげました。男の子は楽し
そうに笑っています。

「そこでちょっとタブンネに頼みがあるんだよ」
「たぶ?」
「明日からボク、家族で出掛けるんだけどその間タブンネにこの卵を預かっていてほしい
んだ!タブンネなら信頼できるし、もしも卵が孵ってもナースさんだから安心だしね」

もちろんタブンネは二つ返事でそれを引き受けて卵を受け取りました。
「たぶ、たぶねぇ〜♪」
卵に耳を当ててみると中からコトコトと音がします。まるで「はやくうまれてきたいよぅ」
という声が聞こえてくるようです。
タブンネは卵をギュッと抱き締めました。
最近辛いことばかりありましたが、この小さな卵はタブンネに大きな希望を与えてくれた
ような気がしました。


「おいっ」
その時、その声がタブンネを呼び止めました。
振り向いて見るとそこにいたのはやはり病室から顔を覗かせたロアーさんでした。
「ちょっとこい」
ロアーさんは乱暴なので卵を持ったままでは危ないと思ったタブンネは「今はちょっと…」
と言いたげに抱いた卵を見せますが、「いいからこい」とロアーさんは睨み付けます。
タブンネはそれに恐れをなして仕方なく従いました。

ベッドに戻るとロアーさんは背中を向けて座り「肩揉め、この前注意したからちっとは
やり方覚えただろ」と指示しました。
「たぶぅ、たぶねぇ…」
タブンネは両手が卵で塞がっているのでそれはできません、卵を置きにいかせてくれとロ
アーさんに頼みましたが、「俺は今揉んでほしいんだっ!そんな卵より俺優先だっ!」と
分かってくれません…

293ナース:2014/06/25(水) 23:39:36 ID:Quz0kIgY0
「たぶぅ、たぶねぇ…」
「あーっもう、そんな卵なんか床にでも置いときゃいいだろっ!」
痺れを切らしたロアーさんはタブンネが大事そうに抱えている卵を奪い取ろうと手をかけ
ました。
「たっ!?たぶぅぅ!たぶぅんねぇぇっ!!」
慌ててとられまいと卵を引っ張るタブンネ。
「おいっ、放せよっ!コイツ…」
「たぶぅ!たぶぅぅぅ……っ!」
ロアーさんとタブンネは引っ張り合いになりました。この卵は自分を信頼してくれた男の子
から預かった大切な物です、放す訳にはいきません。

「おわっ!」
不意に手が滑り、卵がロアーさんの手から放れました。
「たぶっねぇぇぇ!?」
そのまま引っ張っていた勢いでタブンネはドスンと尻餅をつきます。
「たぶぅっ!」
タブンネは慌てて卵の安全を確認しようとしますが、そこには卵はありません。
それと同時にグチャッと後ろで嫌な音がしました…

「たぶ…………っ!」
恐る恐る振り返ると、そこには無残に潰れた卵がありました…
「た……たぶ……たぶねぇええええええっ!!!」
「あーあ、俺知らねーよ」



卵が割れてしまったことを知った男の子ははじめ、呆然とした様子でしたが、そのうち
ブルブルと震えだし、大声で泣き出しました。
そして、「お前なんてナースじゃないっ!卵殺し!ボクの卵をかえせっ!」とタブンネを
ポカポカとたたきながら責め立てました。
その男の子の泣き声と責める言葉の一つ一つがタブンネに深く突き刺さっていきます…
最早タブンネはたたかれようが責められようがされるがままでした。
自分は卵を殺してしまった…男の子を悲しませてしまった…自分に期待をかけてくれた医
院長にまた迷惑をかけてしまった… 自分はナース失格…


その夜タブンネは医院長の机の上に辞表を置いて病院を出ていきました…
戻ってきた医院長は、ぎこちない平仮名で書かれたタブンネの辞表に気が付きました。

294ナース:2014/06/25(水) 23:41:03 ID:Quz0kIgY0


医院長はそれを見てすぐに、二人の人間を自分の部屋に呼びました。
少しして、部屋に入ってきた二人…それは、あの男の子とロアーさんでした。

「あの豚がやっと出て行ったぞ、お前達のおかげだ」
そう言って医院長は二人の頭を撫でます。
すると二人の姿は歪み、ゾロアとゾロアークに姿を変えました。

「長い間あんな役をやらせて悪かったね、ゾロアーク、お前も名演技だったぞ、ゾロア」
照れ笑いをする二人、いや、二匹はどうやら医院長のポケモンのようです。
「まったく、前の医院長がタブンネなんて引き受けちゃったせいでこっちが大迷惑だよ…」


実はこの医院長、大のタブンネ嫌いで、毎日自分の病院で働くタブンネに対して憎悪して
いました。
しかし医院長と言えど簡単に正当な理由も無しにタブンネを病院から追い出すことはでき
ません、そこで思い付いたのがモンスター患者でした。
ゾロアークにモンスター患者ロアーを演じてもらい、タブンネを肉体的にも精神的にも
追い詰めて自分から病院を辞めさせようと考えたのです…
自分は飽くまで良い医院長を演じつつ、裏ではゾロアークにタブンネに対してどういった
仕打ちをすれば良いのかを指示していました。

そして、どうせ辞めさせるのならついでに自分にはナースの資格が無いということをわからせて
やろうと、ゾロアに男の子に化けてもらい、今回の卵割り事件を意図的に起こしたのでした…

すると、ゾロアがその時の卵の件は大丈夫なのかと不安そうに医院長に訊きました。
「ああ、問題はない、あの卵はタブンネ食肉加工場からもらったものだ。しかし本当は
関係のない命まで奪いたくはなかったんだがね…だがあの豚は無駄に聴力があるから無精卵
じゃすぐに気付かれる恐れがあったからな…
まぁ、とにかく辞めてくれて良かった。まったく、いやしのはどうが使えるというだけで
ナース気取りで媚びた面して毎日毎日ボクの病院の床を踏まれるのは心底腹立たしかった
からね、やっぱりナースはラッキーじゃないとな」

最後に医院長は窓の外を見ながら呟いた。
「ポケットモンスターペイシェントってか…」


終わり

何か今回もやたらと長くなったな…
そもそもゾロアークって人間語話せたっけ?

295名無しさん:2014/06/27(金) 19:45:57 ID:mj.Cmnt20
乙。ロアーさんってゾロアークだったのねw
しかしタブンネ嫌いなら即刻実力行使に出ればいいのに
なんという気の長い作戦なんだ

296おなら:2014/07/05(土) 11:49:22 ID:Quz0kIgY0
うちのタブンネさんにおならの出やすくなる芋類、豆類、乳製品をたくさん食べさせて一緒に町へ出かけるんだ。

「ミ……ミィィ…」
少ししたら急にタブンネさんは苦しそうな顔になったよ、短い手でお尻を押さえて必死に出すまいと頑張ってる。
卵の頃から人間の元で育ったもんだからおならをするのが恥ずかしいことだってわかるんだね。
でももう限界みたい、お尻からプスップスッってガスが漏れてる。

ぷっ!

とうとう可愛らしい音をたてておならが出ちゃったね。
タブンネさんは顔を真っ赤にして俯いてる。
「おいタブンネ、臭いじゃないか、おならするなよ。お・な・ら」
人目を引くように大き目の声で、とくにおならという単語を強調して注意してあげるとタブンネさんは恥ずかしさのあまり両手で顔を覆って泣き出しちゃった。
何かすごく可愛らしかったからタブンネさんがおならをする度にこんな調子で注意してあげたよ。
周りの人達の小さな笑い声やヒソヒソ声も耳が良くて聞こえちゃうもんだからタブンネさんはギュッと耳を握ってぷるぷる震えてるよ。

帰りにヒウンシティの姓名判断師の所に寄ってタブンネさんのNNを「タブタンク」に変えてもらったんだ。
タブンネさんは改名の話をしてる間ずっと目をつぶってイヤイヤ首を振ってたよ。

早速大勢の人がいる前で新しい名前を呼んであげるとタブンネさんは小さな声で「…ミィ」って返事してくれたけど、
小さすぎてよく聞こえなかったから「え?もっとハッキリ返事してよ」ってちょっといじわるなこと言ってあげたんだ。
そしたらタブンネさん、青い目からポロポロと涙を落としながら「ミィィ!!」って大きな声で返事してくれたよ。

「よくできました、やっぱりタブタンクはいい子だね♪」
そう言って頭を撫でて褒めてあげたらタブンネさんはもっと顔を赤くして道の真ん中でうずくまっちゃった。

夜、家に帰ってもまだおならの止まらないタブンネさん、心なしか白い尻尾がうっすら茶色く見えるよ。
仕方ないから「今日はお前臭いから外で寝ろよ」と家を追い出して庭に出した大型の水槽の中にタブンネさんを入れて蓋をしたんだ。
そしたらタブンネさんは「おそとはくらくてこわいよぅ!」とばかりにガラスにべったりくっついてうるさく泣くんだ。
だから中にロウソクも入れてあげたんだ。これで少しは明るくなるよ。
未だおならを出しながらミィミィ泣いてるタブンネさんを無視して家に戻る。

しばらくして、ボワッと音がして外が明るくなったと思ったらタブンネさんの悲鳴がきこえたよ、どうしたんだろぅ?


おわり

297ナース:2014/07/24(木) 10:49:35 ID:Quz0kIgY0
最終部「森の医者」



卵割り事件で大きなショックと責任を感じ、自ら病院を出て行ったタブンネ…

病院を辞めて三日間、タブンネはフラフラとあてもなく森の中を彷徨っていました。
生まれてからずっと育成場で育ってきたタブンネには、もう帰る場所などないのです。

「たぶぅ……」
ほとんどまともに食事もとれていないタブンネのポッテリしていたお腹はすっかり引っ込
み、絶え間なくキュルキュルと音をたてています。
体もボロボロで、所々血が滲んでいます。
育成場育ちのタブンネにとって、野生の世界はとても厳しいものだったのでしょう。

「た…ぶ…ぅね…」
とうとうタブンネはその場に倒れ、動けなくなってしまいました。立ち上がろうにも手足
に力が入りません…
「た…ぶ…」
生きることに絶望していたタブンネは、そのままゆっくりと目を閉じました。






「…たぶぅ?」

どのくらいの時間が経ったでしょうか…
タブンネが目を覚ますと、そこは柔らかい干し草のベッドの上でした。
自分の体を見てみると、怪我をしていた箇所も薬草等でしっかりと治療されています。

…ここはどこ? あの世…?

タブンネがどういうことかわからずに周りを見回していると、数匹のタブンネがそこに入
ってきました。
「たぶ〜!」「たぶねぇ♪」「たぶね!」
そのタブンネ達はタブンネが目を覚ましたのを見て
「あっ、目を覚ましたよ!」「よかったぁ!」と喜びの声をあげます。

「たぶ、たぶたぶぅ〜、たぶねぇ?」
そんなタブンネ達にタブンネは、ここはどこ?わたしはどうなっちゃったの?あなた達は
だぁれ?と次々と質問を投げかけます。

タブンネ達のうち、一匹がそれを説明してくれました。

ここは野生のタブンネ達が集まった集落で、食べ物を探しに出掛けた若いオスンネ達が
森で倒れているタブンネのことを発見して、この集落まで運んできてくれたんだそうです。

298ナース:2014/07/24(木) 10:50:53 ID:Quz0kIgY0
何日かして、怪我の治ったタブンネはこの集落の一員として暮らすことになりました。
集落の仲間達はみんなとても優しく、親切で、傷付いたタブンネの心を徐々に癒してくれ
ました。

そんなある日、食べ物を探しに行ったオスンネ達が大怪我を負って集落に帰ってきました。

「たぶ!?」「たぶねぇぇ!?」
驚きの声をあげる集落のタブンネ達、どうやら人間の経験値目当ての狩りに遭ったようです。
オスンネ達はみんな重傷で、中には自力で立てない者や、火傷を負った者、意識のない者
までいます。

慌てて治療を始める集落のタブンネ達、傷口をペロペロ舐めてやったり、木の実を使った
りして治そうとしますが、予想以上にオスンネ達の状態がひどいのと、重傷者の数が多い
のとで、みんな手間取っています。
どんどん弱っていくオスンネ達…
ここのタブンネ達は誰もいやしのはどうを覚えていないようです。


「たぶ!?」
騒ぎに気付いたタブンネもオスンネに駆け寄って治療に参加します。
「たぶぅ〜!!」
タブンネはいやしのはどうを放ち、次々とオスンネ達を治していきます。
そして火傷を負った者はいやしのこころで、いやしのはどうも効かない者には近くに生え
ていたふっかつ草を使うなどして、育成場で習った医療の知識や経験を駆使して的確な
治療を施していき、ものの数十分ですべてのオスンネを治してしまいました。

「たぶぅ!?」「たぶねぇ!!」
その手際の良さ、判断力、初めて目にするいやしのはどうに集落のタブンネ達は驚愕します。


タブンネはその後、その医療技術、ここのタブンネ以上の木の実や薬草の知識、いやしのはどうが
使える等といったことが買われ、この集落で一番偉い長老タブンネに、ここのお医者さん
になってくれないかと頼まれました。

本当は卵割り事件のこともあり、そういった仕事はあまり気が進まなかったタブンネでし
たが、ここのタブンネ達には助けてもらった恩もあったので引き受けることにしました。

この日から、タブンネの集落の医者としての生活が始まりました。
タブンネの元には毎日いろんな怪我を負ったタブンネや病気のタブンネが運ばれてきます。
タブンネは優しくそれらの患者さんを治療してあげます。
タブンネの評判はたちまち集落全体へと広まりました。

299ナース:2014/07/24(木) 10:53:17 ID:Quz0kIgY0
医者としての日々はとても大変でした。でもとても遣り甲斐のあるものでもありました。

ナースではないものの、患者を救い、希望を持たせてあげる仕事ということは変わりません。
みんなから信頼され、必要とされ、怪我や病気を治してあげればとても喜んでもらえる…
まさに幼い頃タブンネの抱いた理想の姿でした。

そして時は流れ…



「ボクと結婚してください!」

ある日タブンネは若いオスンネに告白を受けました。
このオスンネとは怪我を治してあげた縁で親しい関係になっていたタブンネ、
もちろんその告白を受け入れました。

そして二匹は集落中のタブンネ達に祝福されてめでたく結婚をしました。

「たぶぅ〜♪」「たぶたぶ♪」
そのうち二匹の間に小さな子タブンネも産れ、三匹で幸せな家庭を築きました。

仕事と子育てを両立しなくてはならないので、前以上に生活は忙しくなりましたが、
それでも毎日充実した日々でした。

たまに子タブンネを自分の職場に連れて行ってあげると、患者のタブンネ達も可愛がって
くれます。

「たぶ♪」「たぶねぇ〜♪」
仕事が終わって家に帰ったら子タブンネのお世話、夜になれば夫タブンネが美味しい木の実
をたくさん持って帰って来てみんなで楽しい晩ご飯…
可愛い子供に優しい夫…タブンネにとって夢のような幸せな結婚生活…
そんな生活の中、育成場や病院での苦しかったことや辛かったこと、そして卵割り事件の
記憶も薄れていき、遠い記憶の底へと埋もれていきました。


つづく

最早最後はナースほとんど関係なしだな

300名無しさん:2014/07/24(木) 21:07:25 ID:qj4nWPaM0
乙です。タブンネちゃんたら思い切り高いところまで登ってるようですが、梯子を外されるのが楽しみw

301名無しさん:2014/07/25(金) 00:02:21 ID:5JJUWPqI0
おつ
ageていく過程も楽しむのもタブ虐の醍醐味の一つと言う奴ですわ。
ニヤニヤが止まらないww

302ナース:2014/07/26(土) 10:11:55 ID:Quz0kIgY0

つづき



しかしそんな幸せな生活も長くは続きませんでした…



その日、一人の人間が集落に入ってきました。

「たぶ…?」「たぶねぇ…!?」「たぶぅ…」
自分達を狩る存在である人間が現れたことにタブンネ達は動揺します。

「…ここがタブンネの集落か」
そう呟くと人間はモンスターボールを数個手に取り
「ペンドラー、ヌケニン、ヘルガー出てこい」と三匹のポケモンを出しました。
人間の目的は明らかです。タブンネ達は不安そうな鳴き声をあげます。
いつものように仕事をしていたタブンネも、騒ぎに気付いて外に出てみます。


「たぶねぇっ!」
すると、ひしめきあうタブンネ達を掻き分けて一匹のがたいの良いタブンネが出てきて、
人間の前に立ち塞がりました。
「たぶぅ!」
「ふぅん、お前がこの集落で一番強い奴か」
人間は馬鹿にしたような笑みを浮かべて、ペンドラーに相手にしてやれと指示します。


「たぶぅぅぅ!!」
がたいの良いタブンネはペンドラーに向かって猛スピードでとっしんを仕掛けます。
他のタブンネ達は「がんばれっ!」「あんなやつやっつけちゃえ!」とエールを送ります。

しかしその攻撃は素早い動きによってかわされ、そのままタブンネは大木に激突しました。
「たぶねぇぇぇえ!!」
痛みにぶつけた顔を押さえるタブンネ、ペンドラーはそんなタブンネに向けてメガホーン
を放ちます。
「だぁぅぅぅっ!!」
メガホーンは大木ごとタブンネを貫通し、大きな風穴をあけました…


「た……!」「たぶね……!!」
集落一の力自慢がいとも簡単にやられてしまった…
はじめは何が起こったかわからない風だったタブンネ達でしたが、ことの重大さに気付いてか、
悲鳴をあげてあっちこっちに逃げ出しました。
中にはベビンネや木の実を抱えて逃げようとする者もいます。

303ナース:2014/07/26(土) 10:15:18 ID:Quz0kIgY0
「逃がすかよ、出てこいドーブル!くろいまなざしだ」
人間が新たなポケモンを出して指示をすると何故か逃げられなくなってしまうタブンネ達…
「たぶぅ!?」「ぶぅ!?」「ねぇぇ!!」
どんなに短い足をバタバタ動かしても逃げられないという状況にタブンネ達は困惑します。


「…たぶっ!」
もう戦うしかない…そう思ったのか、集落のオスンネはメスンネや幼い子タブンネを後ろ
の方にやり、自分達は前にでて戦闘態勢に入ります。

「やれ」
人間が言うと三匹は一斉に襲いかかってきました。
オスンネ達も一斉に攻撃を始めます。
「たぶーーー!!」「ねぇぇーーーっ!!」
まずは一番体の小さなヌケニンに集中的にとっしんを仕掛けるオスンネ達、
しかし当然それは命中する筈もなく、オスンネ同士で正面衝突してしまいます。

鼻血を出しながら地面を転がり回るオスンネの手足をヌケニンは切り落とし、動けなくなった
ところをペンドラーがハードローラーでひき潰していきます。
「んねっ!んねぇぇ!!」「たったぶぁあぁ!!」
手足が再起不能になり、いも虫のように這ってハードローラーから逃れようとするオスンネ
達、メスンネや子タブンネはその光景に悲鳴をあげますがすぐにそんな余裕もヘルガーの
炎によって掻き消されてしまいます。
「たびゃぁああっ!!」「ぴぃぃぃぃぃ!!」
炎に包まれながら走り回るメスンネと子タブンネ、動けないオスンネはただただそれを
泣きながら見ているしかありません。
炎は集落の建物にも燃え移り、たちまち集落は地獄絵図と化します。


「たぶっ、たぶぅぅ!たぶね!」
そして医者であるタブンネの元には次々と重傷の仲間達が運ばれてきました。
下半身がぺしゃんこに潰されて腸の飛び出した者、腕を両方とも切り落とされた者、
眼球が飛び出してブラブラとぶら下がっている者、全身大火傷で皮膚が爛れて血管が浮き
出ている者等々…
とにかくみんな恐ろしくひどい有様でした。

304ナース:2014/07/26(土) 10:17:17 ID:Quz0kIgY0
それは小さな子タブンネやベビンネも例外ではなく、中には息絶えてしまった子もいましたが、
ひっきりなしに重傷患者が運ばれてくるのでそれを悲しんでいる暇すらありません…
治しても治しても治してもきりがなく、ほかのメスンネ達や夫のタブンネの協力のお陰で
なんとかギリギリ追いついている状態です。

「ぅう…いたいよぉ…」「たちゅけてぇ……」「あつい…あついぃ…」「ヒリヒリするよぅ…」

仲間の苦しそうな声を聞くとタブンネは焦ります。
しかしそれでパニックになったりしてはいけません。
冷静に判断をして治していかなければ…ほんの少しの判断ミスが文字通り命取りになるの
です。


「…おかしいな、結構倒した筈なのにまだ出てくるぞ…」
しかし人間はその異変に気が付きました。

周りを見回してみた人間は、メスンネ達が怪我をした者をタブンネの元へ運んでいるのを
発見しました。
「なるほど、あいつが怪我を負った奴を治していた訳か… ヌケ二ン、やれ、」
ヌケニンははかいこうせんでタブンネの手伝いをしていたメスンネ達を吹き飛ばしました。

「たぶっ!?」
一瞬で消えてしまった仲間達…そこで初めて人間に自分の存在を知られてしまったことに
タブンネは気付きます。
「お前、この集落の医者か、いやしのはどうが使えるところを見るとレベルはそこそこのようだな」
「た…ぶ…たぶ……っ」
人間に嫌な笑みを向けられたタブンネは体が強張って動けません…
たとえ動けたとしても患者を見捨てて逃げる訳にもいきません…
(それ以前にくろいまなざしで逃げられない)

「たぶ、たぶね、たぶねぇ!」
タブンネは勇気を出して人間に訴えました。
なんでこんなことをするの…?どうして私達のことを傷付けるの…?みんなこんなに苦しんでるんだよ…?
タブンネがどんなに訴えても人間は表情一つ変えず、冷酷な目をタブンネに向け続けています。
その目を見てタブンネは病院で働いていた頃の患者、ロアーさんを思い出しました。

…もうダメだ攻撃される! そう思ったタブンネはキュッと目をつぶりました。

305ナース:2014/07/26(土) 10:19:35 ID:Quz0kIgY0


「たぶーー!」「たぶねっ!」
その時、二匹のタブンネが飛び出してきてタブンネの前に立ちました。

「たぶぅ!」

その二匹は、タブンネの夫と子供でした。
二匹はママに手を出すな!とばかりに両手を広げて人間を威嚇します。
「へぇ、そいつらがお前の旦那とガキか?素晴らしい家族愛だね」
と、人間はすぐに察したように言いました。

「たぶーーっ!たぶね!」
ここは危ないよ!子供を連れて逃げて!とタブンネが言っても夫タブンネは首を横に振って
動こうとはしません。体を張ってタブンネを守る覚悟が出来ているようです。

「ドーブル、雌タブンネにかいふくふうじといえき、ペンドラーとヌケニンは旦那とガキ
にそれぞれどくどくとおにびだ」

「たっ…!」「たびゅぅ…!!」
「たぶぅ!?」
「さ、お前の旦那とガキは毒と火傷を負っちゃったよ、医者ならしっかり治してあげな」

突然苦悶の表情を浮かべて地面に突っ伏す二匹、タブンネは二匹の様子を見てすぐにどう
いう状態なのかを理解しました

まずは毒と火傷で減ってしまった分の体力をいやしのはどうで回復させようと手先に力を込めるタブンネ。
「た、たぶねぇ!?」
しかしタブンネの手先からはいやしのはどうは出てきません、
何度も何度も力を込めても何も出ません…

どうして…!?まだ使えなくなるほど使ってないのに何で…!?

「た……ぶ…」「ぶっ…ぐぅ…」
タブンネがあたふたしている間にも夫タブンネと子タブンネはどんどん弱っていきます。
「おや、どうしたのかな?もしかして医者なのにいやしのはどうが使えないにかな?」
「たぶ…」

306ナース:2014/07/26(土) 10:22:13 ID:Quz0kIgY0
もう何故いやしのはどうが使えないのか考えている暇もありません。
体力回復を諦めたタブンネはいやしのこころで毒を治そうと子タブンネをギュッと抱き締めます。
「た…ちゃぶぅ…ねぇぇ……」
「たっ!?」
子タブンネの様子は一向に変わりません。タブンネはもっと強く子タブンネを抱き締めます。
「たびゅん…ねぇぇ…!!」
それでも子タブンネは吐血しながら「ママ…くるし…よ…」と苦しむばかり…
いつもならすぐに発動する筈のいやしのこころ…いやしのはどうに続いてこれではさすが
のタブンネも冷静さを失ってしまいます。
「たぶ〜っ!?たぶね、たぶねぇぇ〜〜!!」
「どうした?まさか毒も治せないのかな?」
人間は面白そうに慌てふためくタブンネの様子を見ています。

「た…ぶっ!…たぶんねぇぇ!!」
オロオロしているタブンネに夫タブンネは火傷に苦しみながらも「木の実を使うんだ!」とアドバイスしました。
木の実に気付いてハッとしたタブンネはすぐに木の実を二つ持ってきました。
毒と火傷はモモンの実とチーゴの実で治せる筈です。
これで夫と子供を救える…タブンネが子タブンネに木の実を渡そうとしたその時、
タブンネの手からパッと木の実は消えてしまいました。
驚いたタブンネ、次に夫タブンネに渡そうとした木の実も消えてしまいます。
「たぶぅ!ねぇ!たっ、たぶ〜〜!?」
タブンネは完全になす術がなくなってしまいました。

どうして!?何で何もできないの!?どうして肝心な時に…!


「……た……ぶ……」「ぷぅ…ぅ……」
かいふくふうじの効果が切れた頃には夫タブンネも子タブンネも既に力尽きていました…

「たぶ?たぶねぇ!!」
いくら体を揺すっても二匹の反応はありません、やっと使えるようになった木の実を口の
中に突っ込んでもボロボロと血の混ざった唾液と一緒に零れ落ちるばかり…
タブンネはわかっていました。もう二匹が死んでしまったことを…
でもとてもその現実を受け入れることができないのです。

「あ〜あ、死んじゃったよ、お前がちゃんと治せないから…ひどいね、医者のくせに大切な
家族を見殺しにしちゃうなんてさ、旦那もガキも『くるしいよ、くるしいよ、どうしてたすけてくれないの?』って
思いながら死んでいったんだろうなぁ…」
「た……た……ぶぅ……」
最早タブンネは放心状態でした。

307ナース:2014/07/26(土) 10:24:52 ID:Quz0kIgY0
「さて、回復役も機能しなくなったことだし、これでスムーズにいくな。みんな、やっていいぞ」

「たぁぶぅんねぇぇぇ!!」「たびゃぁぁああ!!」「ぶねぇぇぇぇ!!」










「…たぶぅ?」
日の暮れる頃、タブンネは目を覚ましました。
「ぶねっ!?」
体を起こした瞬間電流のような痛みが全身に走ります。

辺りを見回してみると、たくさんあった集落の建物はすべて壊滅し、瓦礫の山と化していました。
所々まだ燃えている部分もあります。
そしてその周りには仲間達の惨殺体が…
煎餅のように潰れてしまっている者、毒で悶絶の表情のまま力尽きている者、
体の原形をとどめていない者…いずれも共通しているのはみんな見るに堪えない姿だということ…
「た……ぶ……」
みんなみんな死んでしまった、優しかった夫も、いつも甘えてきていたふわふわでとっても
あたたかかった子供も、結婚を祝ってくれた集落の仲間も…今はもう冷たい肉の塊…
タブンネは他のタブンネ達よりも少しレベルが高かった為、こうして生き残ってしまったのです。



仲間の死体を目にして、育成場の最終試験がタブンネの脳裏にフラッシュバックしました。
「たぁぁぁ……ぶぅぅ……!」
それと医者にも拘わらず家族を救えなかった無力感、罪悪感、喪失感…
様々な感情がタブンネの頭の中をぐるぐると巡ります。
「た……たぶぅぅぅ!!」
タブンネは泣き崩れました。
自分の人生の中で一番幸せを感じることのできたここでの暮らしや結婚生活…
故にそれを一瞬で奪われてしまった悲しみは如何程のものか…
タブンネは辺りが暗くなっていくのも構わず泣き続けました。




一晩中泣き明かしたタブンネは、傷だらけの体でフラフラと森の中を彷徨っていました。
病院を出て行ったばかりの頃とほとんど同じ光景です。
ただ強いてその時とは違うところを挙げてみろと言うのであれば、今のタブンネはその時
以上に重く、暗く、陰鬱な気分になっているということでしょうか…

「たぶぅ…たぶぅ…」
集落もなくなってしまい、タブンネの帰る場所はいよいよどこにもありません、
ただ、泣き腫らした目でひたすら歩き続けるタブンネ、その姿はまるで自分の死に場所を
探している風にも見えなくはありません。

308ナース:2014/07/26(土) 10:30:04 ID:Quz0kIgY0




しばらく歩き続けたタブンネは、ある建物の前まで辿り着きました。

その建物は、タブンネの故郷「ナースタブンネ育成場」でした。

行き場を無くしたタブンネは無意識のうちに、自分の生まれ育った古里のような存在であるこの育成場に足を運んでいたのです。

育成場を前にタブンネはいろいろなことを思い出しました。
一人でも多くの患者さんの命を救ってあげる立派なナースになるんだ!
それを胸に厳しい訓練を耐えてきた日々…
そして遂にナースになれた時の喜びと決意…
たくさんの人を助けたい、希望を持たせてあげたい、そう思いながらどんな時も必死になって頑張ってきた…
それがどうしてこんなことになってしまったのか…
それを思うともうとっくに枯れた筈の涙が溢れてきます…


「ん、あれタブンネじゃないか?」「あ、ホントだ、どうしたんだろ?」
そんなタブンネの存在に気が付いた育成場の職員二人が駆け寄ってきました。タブンネにとってはとても懐かしい顔です。
「ひどい怪我じゃないか、今すぐ治療してやんないと!」

こうして治療が施され、一命を取り留めたタブンネ、今は温かい医務室のベッドですやすやと眠っています。




そのベッドの横でタブンネを助けた職員二人が話していました。
「いやー、なかなかの良個体値だし、いい雌のタブンネが見付かりましたね先輩」
「ああ、昨日ベビンネ生産用のタブンネが一匹死んじゃって替えのタブンネはどうしようかと思ったが、コイツなら申し分ないな」



目を覚ませばタブンネはさっそく鎖で繋がれ、無理矢理人工授精をさせられて大量の卵を産まされる、
その卵は抱いてあげることも許されずにすべて回収されてしまう。
そして与えられる餌は自分の産んだ子供達のミンチ肉…
一日中繋がれたまま卵を産まされ続ける、何の娯楽も楽しみもない苦痛に満ちた日々が死ぬまで続くのです。

ベッドで安らかに眠るタブンネ…彼女はまだ知らない、本当の地獄はこれからだということを…



おわり


書き始めてから一か月もかかってしまった…
長くなってすいません

309名無しさん:2014/07/26(土) 19:58:37 ID:58M3sX7.0
乙乙
やはりタブンネには幸せなど似合わないということですね
狩られて虐待されて産む機械にされてこそ輝く、それがタブンネ

310名無しさん:2014/08/15(金) 12:52:10 ID:Km20ZVDk0
メガタブンネきましたね。いやしのこころだからシングルじゃ効果無しの特性になったけど。
どんなネタが作れるだろう?

自分が思いつくストーリーの順序的では、
ダブル向けなのに火力なし&硬いだけだから放置→アタッカーは頑張ってくれるけどメガタブvs相手残り2体→集中砲火で痛い目に→負けた罰でトレーナーに〆られる
くらいかなぁ…

311名無しさん:2014/08/15(金) 13:15:30 ID:Quz0kIgY0
気まぐれに書いてみるわメガネタじゃないけど


太陽がギンギンに照り付ける蒸し暑い中、草むらの中を麦わら帽子を被り、手に虫取り網を持った少年が歩いています。

少年は数日前にカント―地方からこのイッシュ地方に家族と共に引っ越してきたばかり、
新しい家では両親は引越したばかりで忙しく、退屈になった少年は近くの草むらに虫取りに来たのです。
少年はカント―に住んでいた頃も虫取りが大好きで、よく森でキャタピー等を捕まえていました。
「この地方にはどんな虫がいるんだろうな〜」
未知の土地に住む未知の虫に少年は心を躍らせています。

ガサガサッ

その時、少年の近くの草が揺れました。
「お、虫か?」
反射的にその部分に網を振り下ろした少年。
「チ、チィィ!チィィ!」
「…ん、何だこりゃ?」
網を持ち上げてみると、中にはピンク色をした小さなチビンネが入っていました。
「チィィィ!チュピィィ!」
初めて見るイッシュ地方のポケモンが珍しいらしく、少年は網の中でパタパタ手足を動かしてもがくチビンネをしげしげと見詰めています。

「何だろこれ…?虫、じゃないよな、尻尾あるし…」
網からチビンネを掴み出し、観察する少年。
「でも触覚みたいのもあるぞ」
と少年はチビンネの大きな耳の下にあるフニフニの触角をつんつん引っ張ります。
「チィ!ヂィィー!ヂィィー!」
触角は相当敏感な器官なのか、チビンネは触角を押さえてさらに泣きながら暴れます。
「まっ、いいや、後で図鑑で調べてみよ!」
そう言って少年は持ってきた虫かごにチビンネを押し込み、蓋をしました。
チビンネの頭が天井に届くか届かないかの狭い虫かご…
当然チビンネは「ここからだして!」とばかりにアクリルの壁をペチペチとたたきますが、未知のポケモンを捕まえて若干興奮気味の少年にはそんなことは気になりません。
少年はチビンネを入れた虫かごを持って走って家まで帰りました。
「チビッ!フィ!ヂィィ!ヂギィ!」
その際チビンネは何度も何度も天井に頭をぶつけました。

312名無しさん:2014/08/15(金) 13:19:10 ID:Quz0kIgY0

「ねぇママ!ピンクのポケモンを捕まえたんだけどこれ何てポケモンだと思う?虫かな?」
新しい家の玄関に駆け込んだ少年は母親に見せるようにして手に持った虫かごを差し出します。

「ん、ちょっと今は忙しいから後にしてよ、あっ、あと虫の入った虫かごなんて汚いから家の中に入れないでよ!」
「ちぇーっ」
でも少年の母親は虫かごに目もくれませんでした。
仕方なく少年は虫かごを外に置いて家の中から図鑑を持ってきました。
しかし少年が持っているのはカント―の図鑑、当然タブンネのことは載っていません。
「あれ〜…載ってないな、もしかしてこれ珍しい奴なのか?」

「チィチィ!」
すると、図鑑を眺める少年に対してチビンネが大き目の声で鳴きました。
少年が目をやると、チビンネは自分のポッテリした黄色いお腹を押さえて何かを訴えています。
「あぁ、腹が減ったのか」と少年はすぐにチビンネの言わんとすることがわかりましたが、何を食べさせれば良いのかわかりません。

「このピンクいのって何食べるんだろーな…全然わかんないや、キャタピーみたいに葉っぱとか草でも食べるのかな?」
少年はそのへんに生えていた雑草を無造作に引っこ抜くとそれを虫かごの中に入れました。
「チ!?チィィ!」
その際雑草の根っこについていた土が大量にチビンネの顔にかかりました。
「ヂィィ…ペッ!ペッ!」
青い瞳をゴシゴシ擦りながら小さな舌を出して口の中に入ってしまった土を吐き出すチビンネ。
ついでに少年はそのへんに落ちていたアイスのカップ(ゴミ)も拾い、そこに水を入れてそれも虫かごに入れました。
いきなり雑草を入れられてチビンネは少年の意図がわからず「チィィ…」と困惑します。
「腹減ったんだろ?餌と水だよ」

それを聞いてチビンネはこんなのたべられないよ!と鳴きますが少年は
「あー、ボクも腹減ったな〜、おやつ食ってこよーっと!」と家に戻ってしまいました。

313名無しさん:2014/08/16(土) 11:42:36 ID:Quz0kIgY0
「チィィ…」
ガックリと項垂れるチビンネ、せめて喉を潤そうとアイスのカップを覗き込んでみます。
しかしカップの中の水は溶けたアイスの残りと土が混ざり合っていて、とても飲めたものではありません…
一方少年は、冷蔵庫の中からよく冷えたオボンの実を出して皮を剥き始めました。

シャクシャクと少年がオボンを食べる音をチビンネの良い耳がキャッチしました。
チビンネが音のする方を見ると、窓越しにオボンを食べる少年の姿が映りました。
「チィー!チィチィ!チィィー!」
チビンネをそれを指差して「それがたべたいよぅ!」と大声で鳴いて訴えますが少年は「よく鳴くポケモンだなー」と気付いてくれません。
結局少年はオボンをすべて食べてしまい、未だチィチィオボンを要求するチビンネの元へと戻ってきました。
「何だ、全然食べてないじゃん」
虫かごの中を覗いて少年は言いました。
「チィィ!チィチィ!」
チビンネは両手でオボンの形を作って必死に少年に伝えようとしています。
残念ながらそれも少年には伝わらず、少年はチビンネを虫かごから掴み出して食べさせようと口元に草を当ててきます。
「ヂィ〜!チィィ!」
当然チビンネは顔をプイッと背けてそれを拒否します。

「食べないなぁ…」
「ピィィィ!」
少年がさらに草をを押し付けると、草の先端がチビンネの目に当たってしまいました。
悲鳴をあげて青い瞳を押さえるチビンネ、少年はその隙を見逃さず、すかさずその口の中に草をつっこみました。
「チギィ!?エッ、エッエッ!?」
喉の奥を突かれたチビンネは強烈な吐き気に襲われます。そして背中をプルプルと震わせながら朝に食べた木の実を吐き出してしまいました。
少年は驚いてチビンネを持つ手を放してしまいます。
自分の出した嘔吐物の上にペシャリと音をたてて落ちたチビンネはその酸っぱい臭いに顔を顰めながらもよちよちとした足取りで逃げようとしましたが、ヌルヌルした嘔吐物で足が滑らせて転んでしまいます。
「うわぁ、ばっちいなぁ…」
耳の先を摘まんでチビンネを持ち上げる少年。
チビンネは自分の耳に全体重がかかり、苦痛の表情を浮かべています。

314名無しさん:2014/08/16(土) 11:43:53 ID:Quz0kIgY0

「洗ってやんないとな」と少年はチビンネをバケツに放り込むと庭の蛇口がある所まで運びました。
蛇口の下にバケツを置いて水を出す少年。
「チ!?チィィ!チィィ!」
バケツにはどんどん水が溜まっていきます。チビンネはぴょんぴょん跳ねて短い手でバケツの縁につかまろうとしますがなかなかうまくいきません、例えつかめたとしてもそのままよじ登るだけの力はチビンネにはありません。
そうしている間にも水嵩はどんどん増していき、遂にチビンネの身長よりも高くなりました。
「チビィィ!ガボッガバッチプッ!ごボッ!」
沈んでは浮くを繰り返しながら必死に手を伸ばして鳴き、少年に助けを求めるチビンネ。
少年はチビンネを見ているだけで手を差し伸べようとはしません。
「チボ、チバッ!ごボゴボ……」
チビンネが意識を失いそうになった時、やっと少年の手がチビンネを救い上げました。
「よーし汚れ落ちたな!」
「チヒィ…チヒィ…ヂィィ…」
全身のフワフワの毛が濡れたことにより、体にピッタリとくっつき、苦しそうに肩でゼエゼエ息をしているチビンネ。
少年はそんなチビンネを再びあの狭い虫かごに戻しました。チビンネには最早抵抗をする体力も残っていませんでした。
「もしかして今は腹減ってないのかな?それともボクがいるから食べないのかな?じゃあしばらく昼寝でもしてこようかな」
少年が離れていった後も、チビンネは暫しの間動けませんでした。

しばらくして大分楽になり、濡れていた体もすっかり乾いたチビンネ、
しかしそんなチビンネを新たな苦しみが襲います。夏の灼熱の暑さです。
「チィ…チィ…」
虫かごの中の壁や天井の蓋は透明なので日光は通しますが風は通しません、まさに蒸されるような暑さです。
せっかく乾いた体も流れ出る汗でぐっしょりと濡れてしまいました。
喉も先程水を大量に飲んだのが嘘のようにカラカラです。
水を飲もうにも虫かごの中にはあの汚水しかありません。
「ヂィ〜…!チィチィチィ…!!」
チビンネは窓越しに少年に向けて鳴きますが少年はクーラーの効いた部屋でぐっすりと眠っています。
「チィ……」

チビンネはしばらくアクリルの壁をたたき続けましたが状況は変わりません。
仕方なくチビンネは少しでも日光を避けようと少年の入れてくれた葉っぱや草の影に入りました。
そのまま日が暮れて夜になりました。

315名無しさん:2014/08/16(土) 11:45:05 ID:Quz0kIgY0

二日目

「ヂィィ…」
夜は暑さが大分マシだったものの、慣れない環境であまりよく眠れなかったチビンネ、目の下には大きな隈ができています。
その上昨日はほとんどまともな食事に有り付くことができなかったので黄色いお腹は絶え間なく鳴っています。
少年がチビンネの様子を見にきました。
「あっれ〜…、やっぱ全然草食べてないぞ…?」
「チィ…チィチィ!」
チビンネはアクリルの壁をカリカリと引っ掻きながら少年に向けて可愛らしい声で鳴きます。
その表情からは「もうここからだして!」「ちゃんとしたたべものをちょうだい!」という思いが窺えます。

「ん〜、コイツ肉食なのかな?よし、じゃあ今日はこのピンクの餌を探そう!捕まえた場所の近くを探せば見付かる筈だ!」
「チィィ?」
餌を探してくれると聞いてチビンネの顔に微かに期待の色が浮かびます。
さっそく少年は虫かごを持って昨日チビンネを捕まえた付近を散策してみました。

少し歩いてみると道路に突き当たりました。
車もあまり通っていない様子だったので渡ろうとする少年。
すると、焼けるように熱くなっているアスファルトの地面に恐らく車に轢かれたのか、ペチャンコに潰れて死んでいるフシデを発見しました。
「あっ、虫が潰れてる…肉食ならもしかしてこれ食うかな?」
アクリル越しに触角で少年の考えていることを知ったチビンネはフルフル首を振ってイヤイヤしています。

「うわッ!痛っ!」
フシデの死骸を拾おうとした少年が悲鳴を上げました。
フシデの毒の棘が無造作に拾おうとした少年の掌に刺さってしまったのです。
「痛ぇな…何だこれ…?」

316名無しさん:2014/08/16(土) 11:46:15 ID:Quz0kIgY0
棘の刺さった部分は腫れ上がり、ジンジン激痛が走ります。
「う…気分も悪くなってきた…」
そのうち頭もクラクラとしてきました。相当強力な毒だったようです。
そんな少年とは対照的にチビンネは虫かごに潰れた虫を入れられる危険を一時的に回避できてホッと胸を撫で下ろしています。

パァァ…

「ん…?あれっ?」
急に少年の気分が楽になりました。手の痛みも引いていくのがわかります。
どうやらチビンネの特性いやしのこころが発動して少年の毒を治したようです。
掌の腫れも治り、不思議そうな顔をしている少年はチビンネに目を向けました。
「これ、もしかしてお前の能力なのか?」
不本意ながら少年の毒を治したチビンネはコクリと小さく頷きました。
「へぇーっすげぇな、何て技使ったんだろ?やっぱポケモンってすげぇな!」

結局その後、少年は器用に木の枝を使い、フシデの死骸の一部を千切って虫かごに入れました。
「食べるかなー?」
興味深そうに虫かごを覗く少年。
「チィィ…」
もちろんチビンネは毒のあるフシデの死骸など食べることはできません。
いやしのこころは他人の毒は治せても自分の毒は治せないのです。
そもそも本来タブンネはオレンやオボン等の甘い木の実を好むポケモンで、虫の死骸や草など食べられたものじゃありません。


しかしその夜、遂にチビンネの飢えと渇きは限界に達しました。
二日間何も飲まず食わずで泣いたり汗をかいたりしたのだから生命力の強いタブンネと言ってもさすがに無理はありません。
かなり抵抗はありましたが、仕方なくチビンネは二日間まったく手を付けなかったアイスのカップの水を口にしました。
「ヂィィ〜…」
土の混ざった生温かい水はとても不快な味でした。
チビンネの口の中では細かな砂がジャリジャリと音をたてています。
そして一心不乱に草も口に突っ込みました。
「チィ…ヂブッ、チゲッ…フィィ…」
何度も何度も嘔吐きながらチビンネは草を噛み続けました。

317名無しさん:2014/08/16(土) 11:47:17 ID:Quz0kIgY0

三日目

「ヂィィ…チュピィ…」
チビンネは朝から酷い腹痛に苦しめられていました。
虫かごの端で体をキュッとエビのように丸めてお腹を押さえているチビンネ、どうやら昨夜の食事がまずかったようです。
「チィ〜、チィ…チィ…」
チビンネのお尻からはドロドロの排泄物が流れ出て白かった尻尾を茶色く染めています。
いつも尻尾には気を使っていたチビンネ、いつもならうんちをした時はママンネが舐めて拭き取ってくれるのですが今はそれを気にしている余裕はありません。

その頃、少年は蒲団の上で体温計を脇の下に挟んで横になっていました。
「あら、微熱みたいね、今日一日蒲団で横になってなさいよ」
「えーっ、これくらい平気だよママーっ」
少年は夏風邪をひいてしまったようです。


「あーあ、暇だな〜…」
退屈を持て余す少年。子供にとって一日中何もしないでただ寝ているだけというのはかなり苦痛になるようです。
夜にしっかりと睡眠をとってしまったので眠ることもできません。

「…あっ、そうだ!」
思い出したように起き上がった少年は、窓の外に置いてある虫かごからチビンネを出しました。
「チュ、チィィ!?」
ティッシュを取って乱暴にチビンネのお尻と尻尾に付いた排泄物を擦り取った少年はチビンネに言いました。
「なぁ、昨日ボクが気分悪くなったのを治したあれで風邪を治してよ」
「チィィ?」
首を傾げるチビンネを少年はそのまま部屋の中に入れました。
部屋はスーッとクーラーが効いていて、チビンネが気持ちいいなと思ったのも束の間、少年はチビンネを持ったまま布団に入ります。
「チッチィ、チィチィ!?」
驚いて蒲団から抜け出そうとするチビンネを少年は押さえます。
自分の体に(チビンネを)密着させた方が効果があると思っているようです。

318名無しさん:2014/08/18(月) 21:53:36 ID:SuK43xO.0
乙乙。子供って虫をつかまえても、飽きたり飼い方が下手だったりですぐ死なせるもんですからね。
酷い目に遭いまくるチビンネちゃんが可愛いw 続きは気長にお待ちします。

319名無しさん:2014/08/21(木) 13:53:23 ID:Quz0kIgY0
期待

320名無しさん:2014/08/23(土) 11:04:40 ID:Quz0kIgY0
「ヂィ〜、チィチィ!チュィ〜!」
暑苦しく、息苦しい蒲団の中でバタバタもがくチビンネ、少年はそんなことはお構いなしです。
「まだ治んないなー、昨日はすぐ治ったのに」
「チィィ!チィィ!」
もちろんいやしのこころでは毒は治っても風邪は治りません。
純粋にチビンネの能力は悪い症状を治せるものだと思っている少年にチビンネが説明する余地はありません。
そのうえ腹痛も重なり、チビンネにとっては二重の苦しみです。
「あ、蒲団汚すなよ!」
チビンネの様子に気付いた少年はチビンネの肛門にティッシュを詰めました。
「チィ!チギュィィ!ピィィ…」
チビンネはお尻に手を伸ばしてティッシュを取ろうとしていますが短い手ではなかなかうまくいきません。
腸の中で行き場を失った排泄物が溜まり、チビンネのお腹にはさらに激痛が走ります。
「フィィ…フィィ…」
外側からも内側からも責められ、チビンネの意識はボ〜ッと遠退いていきます。

この地獄は、少年の母親が気付いて注意するまで続きました…


「フィィ…フィィ…」
夜になり、何とか自力で肛門のティッシュを取り除くことのできたチビンネ、
腹痛は治まりましたが、ぐったりと横になってハァハァ喘いでいます。
顔を真っ赤にして大量の汗を流している様子から察するに、チビンネは少年の風邪を移されてしまったようです。
長時間一緒にくっついていたのだから無理はありません。
「ヂィィィ…チィ…」
もうチビンネの命は消えかけていました。最早自力で立つことすらできません。


「ミィ!」
その時、チビンネの耳が成体タブンネの鳴き声を捕らえました。
その鳴き声をきいて、チビンネの力なく垂れ下がっていた大きな耳がピクリと反応します。
チビンネは虫かごの外に目を向けました。

チビンネは、ぼやける視界に映ったその顔を見て、パァッと顔を輝かせました。
それは、チビンネの母親でした。チビンネの鳴き声をききつけてここまで助けに来たのです。
「チィ…!チィチィ…」
アクリルの壁に手を付いて母親に向けて鳴くチビンネ。
「ミィミィ!ミィ〜〜!」
お母さんタブンネは慌ててチビンネを虫かごから出して、いやしのはどうをしてあげます。
お母さんタブンネの優しい波動のおかげで体力の回復したチビンネは大分気分が楽になりました。
「ミィ、ミィィ〜!」
お母さんタブンネは泣きながらチビンネを抱き締めます。
くすぐったかったのか、チビンネはひさしぶりに「チィィ♪」と笑顔を見せました。


「あれっ、ピンクがいなくなっちゃった!」
翌朝、少年が目にしたのはひっくり返った空の虫かごでした。
チビンネはきっとお母さんタブンネと一緒に森に帰ったのでしょう。
チビンネと過ごした三日間は、少年にとって良い一夏の思い出になったことでしょう。

おわり

321チビンネside:2014/08/23(土) 11:55:31 ID:Quz0kIgY0

私、タブンネ、まだちっちゃな子供のタブンネさんなの。
今日はママと一緒にお散歩してたんだけどね、チョウチョウさんをおいかけてたらはぐれて迷子になっちゃったの…

ぐすん…もういっぱい歩いてあんよが痛いのにちっともママが見つからないよぅ…
ハートの肉球もズキズキ痛むよぅ…

あっ、向こうの方から何か近付いてくる!きっとママだ!ママはお耳がいいからタブンネのことを見つけてくれたんだ!
ママー、タブンネはここだよーっ

ガサガサッ

きゃあぁ!なにこれっ!
タブンネが草を揺らしていばしょを教えようとしたらいきなり頭の上から網が落ちてきたの!
びっくりして逃げようとしたんだけど網がからまって抜けられないよぅ…

タブンネがもがいてたら今度は大きな手が入ってきてタブンネのことをつかんだの、助けてくれるのかな?
…えっ、もしかしてタブンネのことつかんでるのって…人間さん?
大変!人間さんはタブンネ達のことをいじめるこわい生物だってママが言ってた!すぐに逃げなくちゃ!
でも人間さんはがっちりタブンネのことつかんでて、どんなに暴れてもはなしてくれないの…
しかも人間さん、タブンネの大切な触角をつまんで引っ張るの!
いたいっ!やめてよぉ!触角はタブンネにとって気持ちを読み取る大切なところなんだよ!

ぐす…引っ張られた触角を押さえて泣いてたら人間さん、タブンネのことを小さな箱の中に入れたんだ。
壁が全部透明の狭い箱…タブンネ、すっごく不安な気持ちになったの…
それで泣きながら人間さんに何度もここから出してよぅってお願いしたんだけど、人間さんは全然聞いてくれないの。
タブンネ、これからどうなっちゃうの…?ママ、早く助けにきてよぅ!


…うぐぅ…いたいよぅ…人間さんがタブンネの入った箱を持ったまま乱暴に走ったからいっぱい頭をぶつけちゃった…
タブンネの頭にまるでダグトリオさんみたいなコブがたくさんできてる…
ママにいやしのはどうしてもらいたいよぅ…ぐすん

やっと人間さんが止まってくれたと思ったら、そこは大きなお家の中だったの、この人間さんの住んでるお家みたい…
お家の奥で女の人が忙しそうにしてる、あれがきっと人間さんのママね。
人間さんのママを見たらね、タブンネ、ひらめいたんだ!
いくら恐い人間さんでも、ママなら優しいはずだってね!だってタブンネのママもすっごく優しいもん。
きっとこの人間さんにタブンネのことを出してくれるように言ってくれるはず!
そう思って、タブンネは人間さんのママに向かってかわいく鳴いて助けを求めたの。

322チビンネside:2014/08/23(土) 11:58:14 ID:Quz0kIgY0

…でも、人間さんのママは見向きもしてくれなかったの…
そのうえタブンネのことを「虫」って言ったの…ひどいよっ!タブンネは虫なんかじゃないよ!

人間さんは一旦タブンネを入れた箱を外に置いてお家の中に戻っていったの。
そのあいだにここから出ようと思って透明な壁をひっかいてみたけど、カリカリ音が鳴るばっかり…
同じ透明な氷ならすぐに割れるのにどうしてぇ…

そうしてる間にも人間さんが戻ってきちゃった…
戻ってきた人間さんは何か本みたいのを読んでるの、何の本だろう?
そんなことを考えてたらタブンネのお腹が急にキュルキュルって鳴ったんだ。
そういえばお腹がすいたな…朝木の実を食べてそれっきりで何も食べてないもんなぁ…

ねぇねぇ人間さん、お腹がすいたよぅ、なにかタブンネにたべものちょうだいよぉ!
タブンネ、人間さんにもわかるようにお腹を押さえて訴えたんだ。そしたら何とか人間さんにも伝わったみたい!

あれっ、人間さん、草をぬいてどうするの?
…えっ、どうして中に入れるの?
うぐっ、ペッ!ペッ!おめめに根っこについた土が入っていたいよぉぉ…お口の中にも入っちゃった…
ぺっ、ぺっ!変な味…

えっ、もしかしてこれを食べろっていうの…!?だってこれ草だよ?こんなの食べられないよ!
ママが草なんか食べたらお腹を壊しちゃうって言ってたもん!
あ…人間さん、またお家に戻っちゃった…

しかたないからタブンネ、のどもカラカラだったから人間さんが草と一緒に入れてくれたお水を飲むことにしたんだ。
でもお水の入った入れ物を覗いてびっくり!土がまざってて茶色ににごってるの!
タブンネ、いつもきれいな川のお水を飲んでるからこんな汚いお水飲めないよぉ…

シャク、シャク…

タブンネが困ってたらきき覚えのある音がきこえたの、タブンネのお耳はママと同じで小さな音でもとってもよくきこえるんだ。
それで音のする方を見てみたら、人間さんが木の実を食べてたの。
あれはタブンネの大好物のオボンの実、人間さんはとってもおいしそうに食べてるの!
人間さん、タブンネそれが食べたい!オボン、タブンネにちょうだいよぉ!
あ〜っ、何で全部食べちゃうの!?ひどいよぅ!

木の実を食べ終わった人間さんが戻ってきたからタブンネ、諦めないでオボンをちょうだいってお願いしたんだけど、
人間さんは全然わかってくれないの。
それどころか草を持って無理やりタブンネに食べさせようとするの!
いやだっ、草なんか食べたくないよっ、やめてぇ!
いたいっ!草がおめめに当たっちゃった…おめめが痛……エッ!?いやっ…エグッ!?草をお口に入れないで!!
うっ、うぇぇぇぇぇっ!おぇぇぇぇっ!

うぅ、吐いちゃった… うわぁ!
人間さんはタブンネのことをタブンネが出しちゃったものの上に落としたの…

323チビンネside:2014/08/23(土) 11:59:41 ID:Quz0kIgY0
朝にママがせっかくととのえてくれた毛並みがベトベトになっちゃった…
うわぁ…すっごくすっぱくて臭いよう…この臭いいやだよぅぅ…
でも人間さんが手を放した今なら逃げられるかも!
そう思って走ろうとしたけど、すべって転んじゃった…ぐすっ

また人間さんに捕まってバケツの中に放り込まれちゃった。
人間さんはタブンネのことを洗ってくれるって言ってるけど、何だかすごく不安だよぅ。
つめたいっ!
人間さんがバケツを地面に置いたと思ったら上から雨みたいにお水が降ってきたの!
お水はどんどんたまっていくよ、このままじゃおぼれちゃうよ!

タブンネ、バケツから出るために一生懸命ジャンプしたけど、どうしてもとどかない…
そうしてる間にもお水がたまっていって、ジャンプもできなくなっちゃった。
ガッ!ガバッゴボッ苦しいよぉ!プハッ、助けてぇぇ!!
あんよがバケツの底につかなくなって、タブンネ、お魚さんみたいにうまく泳げないから必死になって人間さんに助けを求めたんだけど、人間さんはじっと見てるだけなの。
見てないで助けてっ!ゴボゴボ…!パッ!
あんよに力を込めてせっかくお水の上に出てもすぐに沈んじゃう、
大声で鳴いたらお口の中にお水がガバガバはいってくるよぅ…
もうダメ、死んじゃう!って思ったらやっと人間さんが助けてくれたの…

いっぱいお水を飲んじゃってタブンネのお腹からたぷたぷ音がするよ…
タブンネ、息が苦しくてそのまま動けなくなっちゃった…


…ぅう、あついよぉ…
しばらく横になってたらやっと動けるようになったけど、さっきまで雲に隠れてたおひさまが顔を出してすっごく暑いの。
風も全然こなくって周りの空気もあつくなってきたよう…
いつもならママが大きな葉っぱを使ってタブンネのことをあおいでくれるのに…
汗がいっぱい出てきて何だかまたのどがかわいてきちゃった。
お水はさっきたくさん飲んだのにな…お水飲みたいけどここには汚いお水しかないし…

人間さん、あついよぅ!のどがかわいたよぅ!って壁をたたいて鳴いたけど、やっぱり人間さんは気付いてくれない…
人間さんは涼しそうにしてぐっすり眠ってる…あのお部屋の中は涼しいのかな?
タブンネはこんなに暑い思いをしてるのに…
仕方がないから人間さんの入れてくれた葉っぱの下に入ったの、ここならおひさまが隠れるから少しでも涼しくなるかなって思って。
でも、それでもムンムンするよぅ…ママ早く助けにきて…

324チビンネside:2014/08/24(日) 00:24:42 ID:Quz0kIgY0
二日目

朝がきたみたい…、でもタブンネ、夜ほとんど眠れなかったよ…
だっていつもはフカフカの干し草でできたベッドで寝てるんだもん、
こんな固い床の上でなんか眠れないよ…早くここから出たいよぅ…

キュルル…キュルル…

あ、お腹が鳴ってる…お腹がすいたよぅ…おいしい木の実が食べたいよぅ…


しばらくして、人間さんが起きてお家から出てきたの。人間さんはまだタブンネが草を食べると思ってるみたい。
人間さん!タブンネは虫ポケモンさんみたいに草なんか食べられないの!オボンをちょうだいよぅ!
昨日から何度も何度も言ってもわかってもらえなかったけど、今度はタブンネの必死な思いが伝わったのか人間さんもわかってくれたみたい!
タブンネの食べ物をさがしてくれるって言ってくれたんだ!

さっそく人間さんはタブンネの入った箱を持って草むらの中を歩いて食べ物をさがしてるの。
はやく木の実を見つけてほしいな。

少ししたら大きな道に出たの、人間さんはそこを渡ろうとしたんだけど、何でか足を止めたんだ。
どうしたんだろう?って思ってタブンネも人間さんと同じ方を見てみたら、おせんべいみたいにペシャンコになって潰れてるフシデさんが目に入ったの。
タブンネ思わず目をおおっちゃった、だってすごく気持ち悪かったんだもん…

でも人間さんはずっとフシデさんのことを見てるの、タブンネ、何だかいやな予感がしたから触角を壁に当ててみたんだ。
触角を通して人間さんの考えてることが頭の中に流れてくる。

『コイツ、もしかしてこれ食べるかな…』

タブンネ、頭の中がパニックになっちゃった。
人間さん、草の次はフシデさんをタブンネに食べさせようとしてる!
タブンネそんなのたべられないよぅ!いやだぁ!!


…あれっ?人間さん、おててを押さえてどうしたの?何だかすごく痛そうにしてる…
あっ、そうか、人間さんはフシデさんの毒の棘でけがをしちゃったんだ。
きっとタブンネにひどいいじわるばっかりしたからバチが当たったんだね。
ママもわるいことをしたらバチが当たるって言ってたもん!
これでフシデさんを食べさせられずに済みそう!

325チビンネside:2014/08/24(日) 00:25:49 ID:Quz0kIgY0
パァァ…

そう思ったんだけど、タブンネのいやしのこころが人間さんの毒を治しちゃったの…
人間さん、また元気になっちゃった…

人間さんはタブンネに毒を治したのはお前なのか?って訊いてきたよ。
もしかしてお礼にここから出してくれるかも!って思ってタブンネ、うんってうなずいたの。
そしたら人間さん、すごいってタブンネのことほめてくれたけど、箱からは出してくれなかったんだ…
それどころか、フシデさんの一部を千切って箱の中に入れたの!
信じられないよ…タブンネは人間さんのことを助けてあげたのに…
どうしてこんなことばっかりするの…?

タブンネがフシデさんを食べるかどうか人間さんずっと見てる…
タブンネ、フシデさんなんて食べられないのに…
フシデさんに触るとさっきの人間さんみたいに毒の棘でおけがをしちゃうもん。
…そういえば、前に一度フシデさんの棘でおけがをしちゃったことがあったっけ…
その時はママがいやしのこころでタブンネの毒を治してくれたな…ママ…



ママが助けにきてくれるまでの辛抱だって、ずっとがまんしてきたけど…
もうお腹ペコペコでげんかいだよぅ…のどもカラカラでお口の中がカピカピする…
このままじゃ、タブンネ死んじゃうよぉ…
でも…ここにあるのは汚いお水と葉っぱとフシデさんの一部だけ…
どれもお口に入れたくないものばかりだよぉ…

でも…でももう、がまんできない!
タブンネ、生まれて初めて汚れたお水を飲んだんだ。
うぅ…まずい…じゃりじゃりしててはぐきのすきまにいっぱい細かい砂が入ってくるよ…
まるで水たまりを飲んでるみたい…
でも、のどがカラカラだから、飲むのが止まらなっくていっぱい飲んじゃった。
それで今度は草も食べたの、これしか食べるものがなかったから勇気を出してお口に入れたんだ。
タブンネ、すごくみじめで悲しくて、まずくて…ポロポロ涙の粒を落として泣いちゃった…
こんなまずい草じゃなくて甘くておいしい木の実が食べたいのに…

326チビンネside:2014/08/24(日) 00:27:14 ID:Quz0kIgY0
三日目

朝になってね、タブンネ、お腹が痛くて目が覚めたの。
い、いたい…まるでお腹を冷やされたみたい…!
あぁっ…何だかうんちが出そう!
うんちをもらしちゃうなんて恥ずかしかったから一生懸命頑張ったんだけど、泥みたいなうんちがいっぱい出ちゃった…
ぶりゅぶりゅっていやな音がしてお尻に生温かい触感がして気持ち悪かったけど、それよりお腹が痛くっていたくって…
やっぱりママの言った通り草は食べちゃダメだったんだ…
何でタブンネがいつもこんな目にあうの…?
人間さんはいつタブンネを解放してくれるの…?

そんなことを考えてたらまた人間さんの手がタブンネをつかんで箱から出したんだ。
今日は何をするのかな…?タブンネ、こわくて震えが止まらなかったの…

でも、人間さんはタブンネのうんちで汚れちゃったお尻と尻尾をちょっと乱暴だけどきれいに拭いてくれたんだ。
もしかしたら解放してくれるのかな?

タブンネが期待してたら人間さん、昨日のあれで熱を治してってタブンネに言ったの
えっ、昨日のあれってなんのこと?ねつってなぁに…?

あれ、人間さんはタブンネをお部屋の中に入れたよ?
お部屋の中はまるで冬がきたみたいに涼しくて気持ちよかったの、タブンネこんなのはじめて!
お外はジトジト暑いのに中はヒンヤリしてるなんて不思議!

プゴッ!?
人間さんはいきなりタブンネのことを白くてモフモフした何かに入れたの!
目の前がまっ暗になってタブンネ、びっくりしてすぐに出ようとしたんだけど、人間さんの手が押さえつけるの!
モゴモゴ…あつくていきもできくってくるしいよ…
この白いのいや!出たいよぅ!人間さんやめ……うっ、またお腹が痛くなってきちゃったよ…
またうんちが出そうだよぉ…

そしたら人間さん、今度は、汚すなよ!ってタブンネのお尻の穴に何かを詰めたの!
汚してほしくないなら何でタブンネを入れるの!?
お尻に何か詰まってるなんて気持ち悪いよぉ…とってよぉ!
うんしょ、うんしょ…おててを伸ばしても全然とどかなくってとれないよぉ…
うぁ…お腹の中で何か暴れてるみたいにいたい…!

もうもらしちゃってもいいからお尻の中のものをとらなくちゃ!
でも、やっぱりおててが届かないし、白いモフモフが邪魔をしてとれないよぅ…
それに…なんだか…頭が…クラクラしてきた…よ…
タブンネ、そのまま気を失っちゃった。

327チビンネside:2014/08/24(日) 00:28:37 ID:Quz0kIgY0

目が覚めたら、夜になってて、いつのまにか箱の中に戻されてたの…
もうタブンネの邪魔をするモフモフはなくなってたから、何とか体を丸めてお尻の穴につまったものをとったんだ。
ドピュ、ピババババ…
たまってたうんちが滝みたいにたくさん出ちゃった…
タブンネのピンクの体…もうドロドロでボロボロ…
体を葉っぱで拭こうとしたけど…もう…うごくこともできないよぅ…
体が…熱くなってきて…目の前がぐるぐるする…
タブンネ…もう死んじゃうのかな…?最後に…ママに会いたかったよぅ…


「ミィ!」

…あれっ、何だかなつかしい声がきこえたよ…
この声…とってもあたたかい気持ちになるやさしい鳴き声…もしかして…
タブンネ、声のした方を見てみたんだ。

ママ!

おめめがよく見えなかったけど、見まちがえるはずのない、ママの優しいお顔が見えたの…!
ママ…助けにきてくれたんだね、タブンネ、ずっと信じてたよ。
ママのお顔を見たら嬉しくって、タブンネ少し元気が出たよ!
ママはすぐにタブンネを箱から出して、ペロペロなめて体の汚れを落としてくれたんだ。
それでいやしのはどうもしてくれたの。
ママの魔法の波動でタブンネ、すごく楽になったよ。

ママはもうぜったいタブンネのことをはなさないからねって抱きしめてくれたの。
ふわふわであったかいママの匂いがするよ。キャハハ、何だかくすぐったいな♪
タブンネもママのことをはなさないよってギュッとママのことを抱きしめたの。



そのあとママにだっこしてもらってタブンネ、ひさしぶりにタブンネのお家に帰ったんだ。
お家にはママの集めた木の実がいっぱい!やっとおいしい木の実が食べられる♪

タブンネがママに木の実を食べさせてもらおうとしてたら、お外で何かズシ、ズシ、って足音みたいのがきこえたの。
何の足音だろうって思ってたら、とつぜんお家の中に大きなポケモンさんが入ってきたの!
あれはたしかペンドラーさん!何でペンドラーさんがタブンネのお家に!?
ママはタブンネを後ろにしてペンドラーさんを威嚇してる…タブンネ、恐くってママの尻尾にお顔をうめてぶるぶる震えてたの。

「ミビャァァァアア!!!」
そしたら急にママの体が持ち上がったの!よく見たらペンドラーさんの角がママに突き刺さってる!
そんな、ママ!どうして!?ママぁ!!
ママはペンドラーさんの角に串刺しになってぐったりしてるよぉ!
タブンネがママに向かって泣いてたら、ペンドラーさんが恐い目で睨みつけながら言ったの。

「あなたね…うちの子供を踏み潰して殺したのは…」
えっ…なんのこと?ぜんぜんわからないよ…
「とぼけないで…じゃあ何であなたから私の子供の匂いがするの…?」
え…もしかして、ペンドラーさん、あのフシデさんのママなの…?
ち、ちがうよ、フシデさんは最初から潰れてたんだよ!匂いがついてたのは人間さんがタブンネと一緒の箱にフシデさんの一部を…

きゃ、やめてっ!助け…きゃあああああああっ!!!!!


おわり

328名無しさん:2014/08/24(日) 20:50:32 ID:kQmcczcE0
乙乙!

本編がハッピーエンドだったので、物足りないけどたまにはいいかと思ってたら、
すべて最後のオチのための伏線だったとはお見事!

ちなみに本編も含めてタイトルをつけていただけませんかね
管理人さんもまとめやすくなると思いますので

329名無しさん:2014/08/25(月) 12:29:30 ID:Quz0kIgY0
このオチは想像してなかったww

330名無しさん:2014/08/25(月) 12:33:26 ID:Quz0kIgY0
すまん、ミスった。
このオチは実は自分でも想像してなかったww
タイトルはどうしようか…
とりあえず安直に「虫取り少年とチビンネ」で

332名無しさん:2015/01/05(月) 04:28:33 ID:T.Z0LUl.0
最後のレス5か月前か…
役目を終えたのか、それとも人が居ないのか

333条件つき:2015/02/22(日) 02:26:09 ID:BChVU2Ww0
タブンネといえば、以前は(いろんな意味で)大人気のポケモンであったが、
最近はそこまで人気のあるポケモンというわけでもなく、頭を抱えるブリーダーも多いという。
友人もそんなブリーダーの一人ではあったが、処分する前にダメもとで俺に訊いてみることにしたらしい。

友人との付き合いは長かったし、断る理由もとくにない。タブンネ自体にも興味はあったし。
そういうわけで「ある条件」をつけることでタブンネを引き取ることにした。

ちなみに、俺が引き取らなかったらどうするのか訊いてみたところ
「……ミキサーかプロセッサにでもかけて、親のタブンネに食べさせるよ」
悲しそうな顔をしながら、そんなとんでもないことを言ってきた。

よくわからないやつである。







夕食後、ソファーにすわってテレビを観る。
俺のとなりにはタブンネ。俺と同じようにソファーにすわってテレビを観ている。
ときおり毛づくろいをしているところから、とくに興味を惹かれる番組ではないらしい。

「ちょっとリモコンとるよー」

そう言って、わざと遠くに置いたリモコンに体ごと手を伸ばす。
そのときにタブンネの足に俺の膝が乗る。もちろんわざとである。
体重を思いっきりかけると、驚いたタブンネの口から「ミッキャ!?」という鳴き声が上がる。

「ごめんごめん」と言いながら足をどけると、涙目で俺のことを見上げるタブンネの顔。
その顔を見てると、ついついイタズラ心が湧いてくる。このまま終わらせるのはもったいない。
今度はテーブル上に置いてある木の実に手を伸ばす。もちろん、タブンネの足に膝を乗せて。

「タブンネごめんね。ほら、お詫びにこれをあげるよ」

テーブルからとった木の実をタブンネに渡すと、タブンネの顔が笑顔に変わる。
タブンネはニコニコと笑いながら木の実にかぶりつき「ミフォッ!?」と吹き出した。
木の実にかぶりついた姿勢のまま固まるタブンネ。その体は小刻みに震えている。

タブンネに渡したのはマトマの実。とても辛い。

334条件つき:2015/02/22(日) 02:27:41 ID:CcfBaAO20
おいしい木の実だと思って口に入れたら激辛だったのだからこの反応は当然だ。
タブンネの瞳にはみるみる涙がたまっていく。

床にをティッシュで拭きながら「おいしくなかった?」と心配しているふりをする。
「ミ……ミィィ♪」と無理して笑顔を浮かべるタブンネ。
心が優しいタブンネには、人の親切を無下にすることなどできないのだ。

さて、タブンネといえば、人の考えていることがわかるポケモンである。
ここまでやられる前に俺が何をしようとしているか察知できていいはずである。
タブンネにそれができない理由は、俺がタブンネを引き取るときに出した「ある条件」が原因である。
俺が出した条件。

それは、タブンネの触覚を切り取ることだ。

前もってこっちの考えを知られていては、心の準備をされてしまう。
それではタブンネをいじめたときの反応が楽しめない。
タブンネが油断しているときにいじめるからこそ、タブンネはおもしろい反応を見せてくれるのだ。

触覚を切り取る条件を友人に伝えると怪訝な顔をされたが、
「プライバシーを大事にしたいから」と適当な理由をつけると「ああ、なるほど」と納得していた。
本当によくわからないやつである。



マトマの実を食べさせたタブンネにお詫びの印としてオボンの実を渡す。
いじめ続けるだけでは、タブンネがこっちに不信感を持ってしまう。
そうやって警戒されてしまえばいじめる機会そのものが減ってしまう。

適度にメリハリをつけながら、うまくタイミングをはかってタブンネに仕掛ける。
タブンネからの信頼を失わずにいじめ続けるためには、なかなかに頭を使うのだ。

適度にタブンネいじめを楽しんだら布団に向かう。
一晩中タブンネで楽しんでもいいのだが、夜更かしは厳禁。明日も朝は早いのだ。
一週間ぶりに大音量の目覚まし時計をセットして置いておく。
タブンネの頭の、すぐ横に。







ジリリリリリリリ!!
「ミッピィィィィィッ?!」

うん。朝の目覚めはタブンネの悲鳴にかぎるね。

(おわり)

335名無しさん:2015/02/26(木) 20:09:48 ID:zs0OlQvw0
久々の投下乙です
飴と鞭、涙と笑顔のスパイラルの中でこそタブンネは輝く
ミキサー直行でない分幸せだねタブンネちゃん

337名無しさん:2015/06/05(金) 09:16:05 ID:ELxh0iKI0
ここにせよ避難所にせよ人がいない……
タブンネに関する話題がないから仕方ないことではあるけど

338名無しさん:2015/08/22(土) 22:42:34 ID:dPUO9/ps0
タブ虐は廃れてしまった

339名無しさん:2015/08/23(日) 05:51:22 ID:CcfBaAO20
知ってる

340ホウエンの鳴き声(その1):2015/09/22(火) 09:45:50 ID:g9TclDjY0
「チィ……チィ……」

ホウエン地方のとある山。
親を求めて、子タブンネたちが必死に鳴いている。
生まれてから間もないようで、その声はひどく弱々しい。

「ミィ……ミィ……」

ホウエン地方のバトルリゾート。
タマゴを持っていかれ、親タブンネが悲痛な声で鳴いている。
何日も鳴き続け、掠れてしまった声がとても痛々しい。

メガタブンネ。
その存在がホウエン地方で確認されてから
ホウエン地方のタブンネたちを取り巻く環境は少し変わった。
タブンネは、ホウエン地方においてかなり希少なポケモンだ。
だからこそ、タブンネを手に入れた人は大切にしてきた。
だが、一部のトレーナーはそれを良しとしなかった。
手に入れたタブンネが自分の望むような個体であるとはかぎらない。
トレーナーたちは理想的な個体が手に入るまでタマゴを産ませ続けた。

341ホウエンの鳴き声(その2):2015/09/22(火) 09:48:22 ID:g9TclDjY0

親タブンネがタマゴを抱いて温める時間など与えない。
産んだらその場でタマゴを取り上げ、人工孵化器に放り込む。
生まれた子タブンネはボックスに保管する。優秀な個体であれば育てるが、
そうでないなら、ある程度たまったところで廃棄する。
多くの子タブンネたちが親の温もりを知らないまま処分されていく。

「チィ……チィ……」

廃棄処分された子タブンネたちは鳴き続ける。力尽きるその時まで。
親タブンネが自分たちを迎えに来ることなどないと知らずに。

「ミィ……ミィ……」

強制的にタマゴを産まされ、涙を流しながら親タブンネは鳴き続ける。
奪われたわが子が幸せであることを願いながら。
そんなことはありえないと思いながら。

「チィチィ」「ミィミィ」

引き離されたタブンネ親子の鳴き声が、今日もホウエンのどこかで聞こえている。

(おしまい)

342名無しさん:2015/09/23(水) 23:50:13 ID:zHWH3e8E0
乙です
虐待もせずに単に放棄するなんてもったいないな、何て優しい人達だ

343名無しさん:2015/11/04(水) 21:59:17 ID:BChVU2Ww0
ここのところ朝晩の冷え込みがきつくなってきた
タブンネたちは寒さに震えているのだろうかと妄想してみたが
あいつらイッシュ全土に生息してるから環境への適応力は案外高いのかもしれない

344名無しさん:2015/11/11(水) 19:43:42 ID:by2oWmrc0
前回の書き込みから1週間になるが何の反応もない
避難所のほうも丸1ヶ月書き込みがないし、もう誰もいないんだろうか

345牢獄のベビンネ(その1):2015/11/21(土) 18:48:18 ID:3MuVXqTg0
郊外に一軒家を買った。中古だが、一国一城の主というのは良い気分だ。
前の持ち主がバイク好きだったとかで、しっかりした防音設備がなされた
ガレージが備え付けられていたのが、購入に踏み切った理由の一つでもあった。
後方にはドアも据え付けられていて、母屋の勝手口との出入りも簡単だ。
これなら将来、車やバイクを買ってエンジンを多少吹かしても、近所に迷惑はかからないだろう。
だがそのガレージと防音設備は、全く違う形で役に立つ事になるのだった。

引っ越して間もなく、片付けも終わらない内に出張があり、1週間家を留守にして帰ってきた日の事だ。

何もないはずの庭の隅の方に草むらのようなものとピンク色の物体が見えて、俺はぎょっとなった。
タブンネだ。しかも10匹ほどのベビンネまでいる。
草むらのようなものは藁や雑草だった。俺が留守の間に勝手に忍び込んで巣を作ったらしい。
卵の殻が散らばっているところからして、ここで産卵し、子供が生まれたのだろう。
「ミッミッ♪」「チィチィ♪チィチィ♪」
俺が帰ってきたのにも全く気づいていないらしく、楽しげな鳴き声が聞こえた。

思わず頭に血が上った。俺だってまだ新居でろくにくつろいでいないというのに、
無断で居座った上にガキまで産みやがって……!

「てめえっ!」
カバンを放り投げた俺は、タブンネめがけてダッシュした。
「ミミッ!?」
足音でようやくタブンネは気づいたようだが、次の瞬間、その顔面に俺の靴がめり込む。

346牢獄のベビンネ(その2):2015/11/21(土) 18:49:15 ID:3MuVXqTg0
「ブギャアッ!!」
ぶっ倒れたところにストンピングの雨嵐を降らせた。
「この野郎!人んちに忍び込んで勝手にガキを産むたぁ、ふざけんじゃねえぞ!!」
「ミギャァ!!ミヒィ!!ミヒィィィ!!」
半死半生になったところで両方の触覚を固結びにしてやった。
「ミッ!……ヒギャァァァ!!」
これでは立って歩く事すらできまい。ざまあみろだ。

「チィチィチィ!」「チィチィチィ!」
ベビンネ達はもがき苦しむ母親を囲み、しっかりしてと言いたげにチィチィ鳴いている。
健気だが馬鹿な連中だ。さっさと逃げればいいものを。
俺はガレージに行き、引っ越しの時使った大き目のダンボール箱を一つ持ってきた。
ベビンネを片っ端から引っ掴んでダンボール箱に放り込んでいく。
「チィチィ!?」「チピィッ!」
有無を言わさず全員ぶち込んでガムテープで蓋をした。さすがに重い。
「ミィィッ…ミギャ!!」
母親にもう一発蹴りをくれてから、何とか箱を抱えてガレージまで運び、シャッターを下ろす。
こいつらの処置は後で考えるとして……まずは母親だ。
「もしもし、保健所ですか。タブンネを捕獲したので引き取りに来てもらえますか」

連絡してしばらくすると、白衣を着た保健所の職員がやって来た。
「ミッ!?ミィーッ!!ミィーッ!!」
どこかに連れて行かれると悟ったタブンネは抵抗するが、あっという間に車の檻に入れられる。
「ミィィーーーーッ!!」
子供を求めて檻の隙間から手を伸ばすが、扉は閉められ、車は走り去っていった。

子供の事を心配している場合じゃないのにな。保健所で待っているのは薬殺処分だ。
俺に蹴りまくられた苦痛に比べれば、楽に死ねるだろう。

さて、残るはあの騒がしいベビンネどもだが……仮に解放してやったとしても、
こんな生まれたてのチビが野生で生きていくのは不可能だろう。
だったらさっさと母親の後を追わせてやるのが、せめてもの慈悲というものだ。
とは言え、ただ始末するのも能がない。迷惑料代わりに俺を少々楽しませてからにしてもらおうか。

347牢獄のベビンネ(その3):2015/11/21(土) 18:49:58 ID:3MuVXqTg0
早速、近くのホームセンターに行き、ポケモン用の組み立て式ケージを買ってきた。
ちょっとした荷物だったが、気分が高揚していたのでさほど苦にはならなかった。
あのベビンネ達をどんな目に遭わせてやろうかと想像すると、自然と笑みがこぼれてしまう。

ガレージのシャッターを開けると、ダンボール箱の中ではベビンネ達が暴れているらしく、
チィチィという大合唱と共に箱が揺れている。元気なものだ。
シャッターを下ろし、ガレージ内の蛍光灯をつけてケージを組み立て始める。
そこそこの大きさの代物だった。縦1メートル、横2メートル、高さ1メートル。
ベビンネ共にはやや広すぎる気もするが、逃げ惑う姿を見たかったのであえて大きいサイズにした。
床板はない。ガレージのコンクリートの地べたの上に、直に設置する。
快適な生活などさせるつもりはないから、これでよいのである。

さあ、牢獄の完成だ。もちろんベビンネどもは全員無期懲役だ。

組み立てを完了した俺は、ダンボール箱を抱え上げ、ケージの上でひっくり返した。
「チピピィ!」「チッ、チィィッ!」
ベビンネ達はころころと落下して、チィチィ騒いでいる。
改めて数えてみたら12匹もいた。よくもまあこれだけ大量に産んだものだ。
ケージの中で右往左往しながら、ベビンネ達は閉じ込められたことを理解したらしい。
俺に向かって「ここから出せ」とばかりに抗議している様子だ。

知ったことではない。お前らは囚人なのだからな。囚人には囚人らしい番号をつけてやろう。

348牢獄のベビンネ(その4):2015/11/21(土) 18:51:57 ID:3MuVXqTg0
俺は家の中から油性マジックを持ってきた。そしてベビンネの1匹を掴み出す。
「チィッ!?チィィー!!」
放せ放せとばかりにベビンネは手足をジタバタさせて暴れるが、
俺はその腹に大きく「1」と殴り書きした。背中にも書く。これでこいつは囚人「1号」というわけだ。
1号をケージの中に放り入れ、逃げ惑う奴らを次々ひっ捕まえて2、3、4と番号を振ってゆく。
12匹全部に振り終えると、ベビンネ達は必死でその番号を消そうとあがいていた。
手でゴシゴシこする者や、他の奴の文字を舌で舐めて消そうとする者などいろいろいたが、
油性マジックが簡単に落ちるわけがない。

字が消えないとわかると、皆一様に表情が暗くなり、大半が「チィチィ…」とベソをかき始めた。
タブンネのピンクの毛皮は自慢のチャームポイントだ。
ガキ共とはいえ、それを汚されたのはショックだったのだろう。
だが泣き寝入りしない奴も数匹いた。こんな仕打ちをした俺を許せないとばかりに、
中でも特に「チィチィチィ!チィ!」と声高に騒ぐ奴が1匹いる。
真っ先に番号を振ったこいつは1号。明らかに怒っている顔だ。

わかっていないようだな、お前らの生殺与奪を握っているのは俺の方なのだ。
まずは見せしめが必要か。反抗的な奴は長生きできない事を教えてやろう。

349牢獄のベビンネ(その5):2015/11/21(土) 18:53:35 ID:3MuVXqTg0
ケージが束ねられていたビニールの紐を1本手にする。1メートル弱くらいの長さだ。
先の方を結んで輪を作り、騒いでいる1号の首に引っ掛けて吊り上げた。
「チッピィィ!?」
宙吊りにされてもがく1号を、ケージの外からベビンネ達の真ん前に突きつけた。
「チュヒィィ!キュゥゥ…ヒィィーッ!!」「チィチィーッ!」「チィチィ!」
絞首刑になった1号は舌を突き出し、口をパクパクさせてもがくが、暴れるだけ首は絞まっていく。
それを何とか助けようと、チィチィ叫びながら手を伸ばすケージの中のベビンネ達。無駄な努力だ。
「チギィィ……ィッ……」
やがて1号の動きが止まった。足がだらんと垂れ、絶命する。

「チィィーッ!!」
泣き叫ぶベビンネ達の中に、舌を突き出して苦悶の表情を浮かべた1号の死体を、紐ごと放り込んだ。
わらわらと取り囲み、揺さぶったりしているが、生き返るわけがない。
兄弟の死を実感したらしいベビンネ達は「チィチィ…」とさめざめ泣き始めた。
「おい、お前ら」
俺の声にベビンネ達はびくっとして振り返る。
「わかっただろう、俺に逆らう奴はこうなるんだ。命が惜しければ少しは大人しくするんだな」
言葉はわからなくても、大体俺の感情は読み取れるのだろう。
悔しそうな目で睨みつける者や、怯えてプルプル震えている者など、反応は様々だ。
それを見比べ、俺はニヤニヤ笑っていた。面白い、実に面白い。こいつは当分楽しめそうだ。


(つづく)

350名無しさん:2015/11/21(土) 18:55:15 ID:3MuVXqTg0
以前書きかけていたものを投下しました。
続きはのんびり書きます。気長にお付き合い下さい。

351名無しさん:2015/11/23(月) 21:16:58 ID:5XmtiJHg0
続きに期待

352牢獄のベビンネ(その6):2015/12/16(水) 19:00:26 ID:c8ld4ffg0
餓死させるのはいつでもできるから、とりあえずは餌を与えて元気でいてもらう事にする。
俺は家の中に戻り、一番大きい大皿とミルクを用意してガレージに引き返した。
ベビンネ達はまだ1号の死体を囲んで悲しみに暮れている。
その輪から少し離れたところに、ミルクの大皿を置いた。
「おら、飯だぞ」

反応はここでいくつかに分かれた。
よっぽど腹が減っていたのか、絞首刑にされた1号の事も忘れて「チィチィ♪」と笑顔でミルクを啜り始める無邪気な者が6匹。
兄弟を殺した俺の差し出した食事に手をつけてよいものかどうか迷っている者が3匹。
そして残るのは、その程度では懐柔されず俺に憎悪を燃やす者だ。2匹が俺の方を睨んでいる。3号と8号だ。
その2匹は暢気にミルクを飲んでいるベビンネ達に、「チィチィ!チィ!!」と何やら訴えている。
そんなものに騙されちゃだめだ、あの人間は兄弟の仇なんだぞとでも説得しているのだろう。

それで結構、非常にわかりやすい。お前ら2匹を黙らせれば不満分子はいなくなるという訳だ。
俺は段ボール箱の中から工具箱を出し、その中からニッパーを取り出した。
そして素早く手を伸ばし、3号と8号をケージの中から掴み出した。
8号を足で踏みつけて逃げられないようにしてから、3号を掴んでケージの中のベビンネ達に突き付ける。
「チィィーッ!?」「チィッ!チィーッ!!」
ミルクを飲んでいた6匹と、逡巡していた3匹もさすがに驚いてこちらを見る。
俺はそいつらに見せ付けるように、3号の左の触覚をニッパーで切断した。

353牢獄のベビンネ(その7):2015/12/16(水) 19:01:21 ID:c8ld4ffg0
「ヂギャァァァァァァァ!!!」
タブンネの体の中でも最も敏感な部位である触覚を切られ、3号は肺から絞り出すような絶叫を上げた。
そいつをケージの中に放り投げ、今度は8号の方の尻尾を切り落とす。
「ピギィィーーーーッ!!!」
同じように泣き叫ぶ8号をケージに投げ入れた。2匹は切られた部位を押さえてのた打ち回っている。
残りの9匹はどうしたらよいかわからず、おろおろしているばかりだ。いやしのはどうなど誰も覚えていないだろうしな。

2匹はいつ止むともしれず悲鳴を上げ続けているので、ちょっと気になった。
このガレージの防音設備なら多少泣こうが喚こうが外には音は漏れないはずだが、もし近所に聞かれたらさすがに体裁が悪い。
ちょっとシャッターを上げて外に出て、シャッターを再び下ろし、耳を澄ませてみる。
何かかすかに音が聞こえるがほとんどわからない。ベビンネが騒いでいると気づく者などいないだろう。
これで一安心だ。心置きなく思いっきり悲鳴を上げさせてやるからな。

シャッターを上げて再びガレージの中に入る。叫び疲れたのか、3号と8号の悲鳴はだいぶトーンが落ちていた。
よく見ると切断された傷跡をペロペロ舐めて癒そうとしている奴がいる。野生の本能といったところか。
残りの連中は何やらチィチィ語りかけ、慰めているようだ。だが2匹のショックは大きく、プルプル震えている。

354牢獄のベビンネ(その8):2015/12/16(水) 19:04:03 ID:c8ld4ffg0
これでほとんど俺に反抗する気はなくなっただろう。だが、念の為とどめを刺しておこうか。

俺は灰皿と煙草を持ってきて一服した。そして灰皿の中にさっき切った3号の触覚と8号の尻尾を入れる。
「おい、こっち見ろよ」
ベビンネ達に声をかけてから、尻尾にライターで火をつけると、ふわふわの尻尾はメラメラ燃え出した。触覚にも引火する。
「チィィィィ!!」「ヒィィーー!!」
泣きじゃくっていた2匹は、自分の大切な部位が燃やされている事に気づくと、叫び声を上げながらケージに取り付いた。
ケージの隙間から精一杯手を伸ばすが、それも空しく尻尾と触覚は燃え尽きて真っ黒な炭になってしまった。
「チヒィィィ…チィィ…」
ケージに取りすがったまま、2匹は泣き崩れた。

だが俺は更に追い討ちをかける。ケージを掴んでいる3号と8号の手に、たて続けに煙草の火を押し付けたのだ。
「ヂギャァーッ!!」
再び転げ回る2匹を見て笑いながら、俺はベビンネ達に言った。
「もうわかったな?生意気な態度を取る奴は容赦しない、次はこれ以上の苦痛を味わわせてやる」
ベビンネ達は完全に縮み上がっていた。抱き合って目に涙を浮かべ「チィィ…」と怯えている。
触覚なしと尻尾なしにされた3号と8号も、もはや抵抗する気力は消え失せたと見えて、
火傷した手を押さえたまま、ペタンと腹這いになってガタガタ震えていた。

その態度は俺の嗜虐心を大いに満足させた。煙草を吸い終えた俺はガレージから出る。
次はどうやって痛めつけるか、アイデアがどんどん湧き出てくる。再び俺の頬に笑みが浮かんだ。


(つづく)

355名無しさん:2015/12/19(土) 18:47:38 ID:5XmtiJHg0
残り11匹の最期が楽しみ


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