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: 【R-18】 やる夫は世紀末に生まれ落ちたようです　２

1： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:01:43 ID:cVUMLNOcSa
時間になりましたので、投下していきます。
2： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:02:43 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　　　　　　　　　　　　　〜　　【R-18】やる夫は世紀末に生まれ落ちたようです　　〜

　　　　　　　　　　　<注意事項>

　　　　　　　　　　　　・この物語は女神転生シリーズをもとにした二次創作です。

　　　　　　　　　　　　・これが初投下になります。過度な期待はせず、暖かい目でご視聴ください。

　　　　　　　　　　　　・この物語には過激な性描写、暴力描写が含まれます。

　　　　　　　　　　　　・この物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件などとは一切関係ありません。

　　　　　　　　　　　　　また、特定の犯罪行為を推奨するものではありませんのでご留意ください。

　　　　　　　　　　　　・職業柄、更新は不定期となる予定です。ご容赦ください。

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3： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:03:19 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│私は眠るのが怖い。　　　　　　　　　 │
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│私の夢は、誰かを不幸にする。　 　 │
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4： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:03:55 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　　　　　　　　　　　 　　_-―ィ―－--ヽi´　ﾉ　　　　∠_
　　　　　　　　　　　　　　　／　く　〈　　　　l　＼┌-－-∠i_　＼
　　　　　　　　　　　　　　　＞---－－－-_L　l　　　　　/ ）　　　ヽ/´｀＼
　　　　　　　　　　　　　／¨　　　　　　　　　　＼　　┌┘/　　／｀ヘ　　　i
　　　　　　　　　　　　　l　　　　　　　　　　　　　:::＼ l　　｀＼i´／　　＼　 l
　　　　　　　　　　　　　l　　　　　　　　　　　　　　:::::＼　　γﾉ　　　　　∠
　　　　　　　　　　　　　l　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::＼/　ν￣＞-＝- ┐
　　　　　　　　　　　　　l　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::::丶　／´　　　〉　/
　　　　　　　　　　　　　l　　,っっ-,　　　　　　　　:::::::::::::::::::::::ヽゝ__-―´　 /
　　　　　　ﾊ,　　　　　　l　〈 i /´νっ　　　　　　:::::::::::::::::::::::::::::::＼___＝┐´
　　　　　ゝヽ¨｀　´￣〈￣└ﾍｒγヽ/´￣ ／=＝==-::::__::::::::::::::::::::::::::::｀/
　　　　,-－－　　く´｀＝=ヾ´／´　/　／, -－丶　　　　｀ T::::_:::::::::::／
　　/´￣　｀　／ ´　　　　　〈　　/　/´_＿　_,　　　 　´ ＼ Y´　ヽ/
　/　　::::::::／　　　　　　　　∧　　V　i´r::::ゝi　　　 　,__､　i　l　　ζ〉つヽ___,ノｿﾉ__
　〉／ヽ／　　　　　　　　／i　 >　　ヽヽ ゞ=ｿ　 　　i!ゝィヽ y　l　Ｖ´γ>　　　　　/´
　《　　/　　　　∠´￣く´´　iV　　　　〉〝　　　　､　ヾ::ｿ i　l　ヽ　〉　　　＼_　　ν
　　　　＼　　　　　　　　＼ノλ/　入　 　/´¨_｀ヽ　　〟´ / 　/ /　　　　　＜´¨く
　　　　　＼　　　　　　　く　∧_〈　ヽ　　　ｌ　 　｀ｒ　　　ゝ≠イ　〈　　　　　　ヽ　ﾉ
　　　　　　＼　　　　　　　i l　ヽ-＞＼　　ヽ＿ノ　　　､/彡　i　κ=---　_　　Y
　　　　　　　　＼　　　ζ´ l　　iく　i　┘ヽ　__　_　イ´__＞く　ζ　｀¨--´　　　l
　　　　　　　　　＼　　｀ヽ i　　i之i　＞　i＝i　　K　／　　/　/　´､　　　　　　i
　　　　　　　　　ζ＼　く　i　　i　ト´ヽ_／　＼／┤l 　/　/　　/　　　　　　／
　　　　　　　　　　｀j l　　j l　　i　　ゝ＼　　／　V　l　　 /　ζ´　　　_　／
　　　　　　　　
　　　　　　　　┌───────────────────┐
　　　　　　　　│私は、イギリスのさる名家に生まれた。　　 　 .│
　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
　　　　　　　　│幼い頃の私は幸せだった。　　　　　　　　　 　 .│
　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
　　　　　　　　│父がいて、母がいて、そして兄がいた。　　 　 .│
　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
　　　　　　　　│私の最初の記憶。満ち足りた世界。　　　　 　 │
　　　　　　　　└───────────────────┘

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5： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:04:52 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　　　　　　　　　　　　 └ｰｰ──────────┬──┬──────────ｰ‐┘
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　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｀'≡============＝＝＝＝=============≡'´

┌───────────────────────────────────────────────┐
│私はよく夢を見た。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│だけど、それは他の人の夢とは明らかに違っていた。夢の中に「私」が登場することはない。　　　　　　　　　 　　 　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│夢の中で私はテレビでも見ているかのように、私の全く知らない人々の生活を眺めている。　　 　　 　　　　　　　.......│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│でも、たまに知っている顔が映ることもあった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│メイドの佐代子さんが古釘で指を怪我してしまったこと、執事のゴットバルトに可愛らしい恋人が出来たこと、　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│それを話すと皆は笑って否定するのだったが、数日後に夢の中の出来事は現実のものとなった。　　　　　　　　 　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│皆は怪訝な顔をしたけれど、大好きな兄だけは「ナナリーはなんでも知っている」と私を褒めてくれた。　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│それが幼い私にはなんだか誇らしかった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
└───────────────────────────────────────────────┘

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6： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:05:16 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　{ニニニニV _ニヽ !ニニニニニ,'ニニニニニニニニニニニ
　　　　.，ニニニニニ}ニ} }ニニニニ/ {ニニニニニニニニニニニ
　　　　 ∨ニニニニニニﾉニニニニ 从ニニニニニニニニニニニ
　　　　　 V_{ニニニニニ∨ニニニニニ ､ニニニニニニニニニニ
　　　　　　ヾ!ニニニニニ }ニニニニ＼ニト､ニニニニニニニ＞_
　　　　　　　}ニニニﾆニﾆi!ニニニニニヽﾆ, ＼ニニニニィ≦ニニ
　　　　　　　L_ニニニニﾆi!ニニァ-=ニニﾆ',ニニニニニニ 、ニニ
　　　　　　ー‐ ´＼ニニニ|ニ／　　 ｀￣｀ヽニニニニニニニ＼ニ
　　 　 　 　 .::.:.: 　 ゝｰ ､ニ／　　　　 　 /ﾆ{ニニニニニニニニ',ﾆ
　　　　　　　　　　　　　 }¨´　　　　　　　{ﾆﾆ＼ニニニニニニニニ
　　　　　　　　　　 ／　/　　　　 　 　 　 ，ニニ',ﾆニニニニニニニ
　　　　　　　 　 .ィ　　〈　　　　　　　　　 Уニニ∨:ニニニニニニﾆ
　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　,.ニニニニVﾆニニニニニニ
　　　　　　　　　/´￣　ヽ ＼__　　　　/ニニニニニ＼ニニニニニﾆ

┌─────────────────────────────────┐
│ある日、夢の中で父が知らない女性と抱き合っていた。　　　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│不思議に思った私は、無邪気にも父に尋ねた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│「あの女の人はだぁれ？暗めのブロンドの髪をした綺麗な女の人よ」　　　　　 　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│父は答えなかった。だけど、その唇は青ざめ、わなわなと震えていた。　　　　 　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│私は聞いてはいけないことを聞いてしまったのだと、幼心ながらに悟った。　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│その後、激しい口論の末、父と母は離婚した。それが私の最初の罪。　　　　 　 .│
└─────────────────────────────────┘

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7： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:05:50 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　　　 ／三三三二ニﾆ≡＝‐x､､､､
　　　　　∠,_=＝≡ﾆニ二三三三二ニﾆ≡＝‐‐===--- ,,,,.
　　　　 .!　.∧￣￣￣ ¨¨¨ '''''' ‐‐‐ -三二ニﾆ≡＝‐=＝≡ﾆニ三二ニﾆ≡＝‐‐==ﾆ `＜
　　　　 !　,' ||　　　　.,____　　　　　　　　　　￣￣¨ ''''‐‐=＝≡ﾆニ二三ゝ､,.三三二ニﾆ＝‐`＜
　　　　.! .,' _|| . 　 　 |!三三三!‐‐-==ｫｯ_______　　　　　　　　　　　　.!　　`|! .t¨¨ ￢ ‐‐--ｬ----`
　　　　' .,'　.|| . 　 　 |!三三三!　　　 i|.冖!i￢ T''' ‐-ｫｪﾆﾆﾆｭ.1三三l　　 .i.! l 　　　　　　! !〃
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===ﾆﾆﾆﾆｉ`|| 　 　 . |!三三三!　　　 i||¨ii¨ii~! .!　　　.||___!i__.|! !三三|!　　 !ｉ..!　　ｪ_____　 ., !　　　　　　　　　　　　　 ＞ '' ´三
三 二ニﾆﾟ',.|| 　 　 . |!三三三!==========ｫ斗ｭｪｪｪ||¨ii¨ii~|! !三三|!　 　!ｉ .!　　{__.!_.}　 .{.!　　　　　　　　　　 ＞ '' 三二ﾆ=＞
=≡ﾆニ二''ヾ_________|!ﾆﾆﾆﾆﾟ」_|!_|!_|!_|!_|! |! |! |!.|!.|!.|l.|¨|!¨|!¨|''!三三!　 　.{ ! !　　!　| .{　　!!　　　　　　 ＞ '' ´三二ニﾆ彡''´ !
二ニﾆ＝=‐ﾟ',三三二ニﾆ≡＝‐二ニﾆ≡亠亠=＝≡≠‐┴-ヽ---.┘､ 　.!.! !　　￣ ¨　　.!!　　 ＞ '' ´三二ニﾆ＞ ‐''´　　.l |
三三三三三_',‐=＝≡ﾆニ二三三二ニﾆ≡＝‐=＝≡ﾆニ二三二ニﾆ≡xｬ.､!_　　　　　 ＞ '' ´三二ニﾆ＞ ‐''´ lイ　　　　 l |
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ｫ‐‐--lｫｪ,===t===,ｫ┌-----ｫ　　ｨ''´　!.|..l　　　.[] ! ｢｢｢｢｢｢｢｢i !｢｢｢｢｢｢｢｢｢| |　　　 !.!　　.ｉ l!　　　　　l l　　　　　.! l l |　l　l　l:!
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.|　　　!.! |　　 |!　　|.! l　　　　 l　　　　　l l .l　　　　 }`|.|.|.|.|.|.|.|.! !..|.|.|.|.|.|.|.|.| |　　　 !.!　　 ｉ l　　　　　 l l　　　　　.| l l |　l　l　l:!

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│私と兄は母に引き取られた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│私たちは母に連れられ、母方の実家である日本に居を移すこととなった。　　　　　　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│それから数年は平和だった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│その頃にはもう、私は夢の内容を人に話すことがよくないことだと気づいていたし、　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│怖い夢を見たときはいつも、兄が私を慰めてくれた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
└────────────────────────────────────┘

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8： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:06:27 ID:cVUMLNOcSa


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V　／Y　ヽ　 ヽ　　　　l___　　　　　　　´ゝヽ　 ヽ、|ヽ|　い　　|::|　|ﾄ　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|ヽ
/|　いへ、|　　|　　　　/　　｀　　 　　　　 ヽ＼　　y　ゞ／　 　iｿ　ll　/::::::::::::::::::/lﾍ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
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ヽr´ 〉八_i＼:::|　八ヾ　ゞﾟ=彳　 　___,、　 　゜ｌ/i::::::ヽ_,　　　　_　∠　　〈　|ヽ／／　　V.,.,.,.,..:.,.,/ﾞ｀ﾞﾞﾞr
　　　　　_　ゝ=i |　　ヽ、ﾉ゜　　　/　V´¨｀ヽ/゜_ﾉノ｀´　　イ´　 /　l　/:::　|　/´ 　／-こﾆ≠´¨´￣｀il
　　／´　　｀く｀人｀-　＜゜　　　l　　,ゝ_；：ﾉ　ヽ、　 　　　|　　ｌ　 ／::::　　ヽ、／　i__　__,　-－＝≠i|＿_
ヽ/　　　　　つ　|　　　＼｀ヽ　、｀ニ_,イ｀¨ｿ、　　l　　　 　l　　| /　::::::　　　　|　　/ﾍ_=≠￣´　　　｜
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　　　　　　〈　　ヽ　　　　　く｀´ 〉´　　　ﾉ ゝ(｀ ､　｀-、　　〉＼　　:　　、´　　　　´｀ﾞ l´i ( ｀ﾍ　ヽ､|　jﾞﾞﾞ´
　　　　　　　ﾍ∧〉　　　∠ﾆ|　/こヽ　/　　く＼　＼　ヽ　く　　＼<ニ＿＞--------|　ﾄ |　 l　 / ／

┌─────────────────────────────────────────┐
│私が怖い夢を見ると、決まって兄は私にこう言うのだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│「大丈夫、ナナリー。それはただの夢だ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│　もし、本当に夢に見たことが起きるのだとしても、ナナリーが何かを起こしたってわけじゃない。　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│　ナナリーはただ夢を見ただけだよ。ナナリーは何も悪くない。大丈夫、大丈夫、大丈夫…」　　　 　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│兄は無根拠に大丈夫と繰り返した。だけど、私はその言葉にひどく励まされた。　　 　　　　　　　　 ....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│その呪文を繰り返し聞いているうちに、私は安心して再び眠りに落ちていった。　　　　　　　　　　　.....│
└─────────────────────────────────────────┘

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9： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:07:05 ID:cVUMLNOcSa


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┌───────────────────────────────────────┐
│平和な時間の終わりは、蝉の鳴き声とともにやってきた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│ある日、クラスの女の子が行方不明になった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│先生は学級会を開いて、「この中で何か知っている人はいませんか」と私たちに尋ねた。　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│私は彼女が見知らぬ男に連れられて、川に遊びに行くのを夢で見て知っていた。　　　　　　 　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│彼女の助けになるならと、私は思い切って手を挙げた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│「多分、××川で見つかると思います」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│結果、彼女は自宅から十キロ離れたその川の中流で見つかった。水死体として。　　　 　 　 ......│
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10： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:07:58 ID:cVUMLNOcSa


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　　　ﾘｰ-ki:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ| | 　Γ|丐〕iトっﾌ 　 辷彡}　7フ三刈ニニニニニﾆ∨ |l ｏ|　　　　　　　　 　 |
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　立 ち 入 り 禁 止　　K E E P　O U T　　　立 ち 入 り 禁 止　　K E E P　O U T　　　立 ち 入
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┌──────────────────────────────────┐
│首には絞殺された痕があったため、警察は事件性ありと判断したようだった。　 　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│「彼女をどこで見たの」　「彼女は誰かと一緒にいたの」　　　　　　　　　 　　　 　　......│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│大人たちは私に散々尋ねてきたけれど、私は答えることが出来なかった。　　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│それが私の二つ目の罪。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
└──────────────────────────────────┘

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11： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:08:31 ID:cVUMLNOcSa


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::::::::＼　　　＼::::::::::::::::::⌒ヽ}::::/ {:::::{｀丶､:::::::::::::::::,, -''7::ﾉ:::｀ヽ`:::::::＿／　／:::::　　...:::::::
::::::::::::::＼　 　 ＼＿＿::::::::::::::/　ﾑ::::｀丶､}:::::::::::::::{,, -'':::{::::::::::::}＼:::＼__／:::::::　...:::::::::::::::
....　::::::::::::＼＿＿＿／::::::::_ノヽ/::::＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ､:::::ﾐ::::::`ー-...＿　...::::::::::::::::::::
:::::::......　 ＿::::::＿::::::::::_, イ::::::::::}:::::::::::ﾍ:::{`ー─"´}:::::::__ノ::｀ヽ':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::´::::::￣:::::::`ｰ┘::::::::::::::::{::::::::::::::::ヽ`ー─ "::/￣:::::::::::::ヘ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ::::::::::::::::.....　　　.......:::::::::::::::::::::ミ丶､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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┌────────────────────────────────────────┐
│クラスのみんなは、私を死神や魔女などと呼んで口汚く罵った。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
│彼女の死は私のせいなのだろうか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
│私があんな夢を見たから、彼女は死んでしまったの？分からない。　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
│最早、私には何も分からない。私は本当に魔女なのかもしれない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
│私が消えれば悪夢は終わる？もし、そうなら私みたいな化物は死んでしまった方がいい。　　　......│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
│「大丈夫、ナナリーは何も悪くないよ。それどころか、お前は人に褒められることをしたんだ。　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
│　ナナリーは悪くなんかない。死ぬなんて言わないでくれ。大丈夫、大丈夫、大丈夫…」　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
│兄が私のそんな言葉を否定してくれる時だけ、私は安心して眠りにつけた。　　　　　　　　　　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
│自然、家にいる時間が長くなった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
└────────────────────────────────────────┘

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12： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:09:08 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　　　　　　　　　　　　　〃. : : : : : : : :' ⌒＼
　　　　　　　 　 　 　 　 〃⌒: : : : : : : : : :l: } : : : ﾊ
　　　　　　　　　　 　 　 {: : : : : : : : : : : :.:ﾉﾍ>､: : : :}ｰ､
　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : ﾉｰ-‐'　　　 ｛:_: : : : }
　　　　　　　　　　 　 {: : : : ::ｧ〜' ＿_ ,　 ､＿_ 〈: : : :.ﾉ
　　　　　　　　　　　　 >.ﾆ､::i y===≦´　,.≧==､〉: :〈　
　　　　　　　　　　　　｀{ ﾍ 寸{ ､＿_, }-‐i{ ､＿, }ﾊ!ノ　
　　　　　　　　　　　　　＼ｰ　ヽ--- '　　{ヽ---i ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　 ｀~',　　 　 　 ﾉ　　　l´
　　　　　　　　　　　　　　　r‐i:、 ' r-----ｭ　 /
　　　　　　　　　　　　　 -‐lヽl　＼ ￣こ´　／l- 、
　　　　　　 _　　-‐ '´　　　ヽ　ヽ　丶--- ' ／l　　＼_
　　 　 　 /　　 、　　　　　／ ＼　｀￣￣´ ／　　　　　｀丶、
　　　　　'　　 　 ＼　__,／。°　 丶---- '　　　　　　　 ,　　ヽ
　　　 　 |　　　　　 ヽ　 °　　　　　　　　　　　　　　 | /　　　|
　　　 　 |　　 　 　 　 ',　',　　　　　　　　　　　　　　 //　,　　 |

┌──────────────────────────────────┐
│恋人と家を出ていった母に代わって、兄は私の親代わりだった。　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│兄に連れられて、お医者様にも何度かかかかってはみたが、　　　　　　　　　　　......│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│なんだか仰々しい病名を私にあてがうだけ。何の効果も得られなかった。　　 　　 ..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│私にとっては兄のあの呪文こそが、唯一の精神安定薬だった。　　　　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│年頃の娘に四六時中つきまとわれるのというのも、　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│兄としてはつらいものがあったのだと思うが、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│それでも兄は嫌な顔一つ見せず、私の面倒を見てくれていた。　　　　　　　　　　　...│
└──────────────────────────────────┘

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13： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:09:37 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,..,,_　　　／　＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　ヽ.〉／　　 　 〉 .!_ __
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／ 　 　 .／ ヽ　　　／／／ ヽヽ
　　　 　 　 　 　 　　　　　　 ,..---...,,_　　　..＜ ＼___ ／　　 　｀¨¨.／／　　　 〉l
　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　､＞´　 　 　 ／　　　　 　 ／ <　　　　／/
　 　 　 　 　 　　　　　　 {　　　　　　　＼ 　 　 .／.　　　　　 ／　　　ヽ.__／ , ′
　 　 　 　 　 　　　　　　 ﾍ　　　　　　　　＞..／.　　　　　 ／　　　　＿_　 ／
.　　　　 　　　　　　 ／￣.ﾍ　　　　　 　 　 　 ＞...　 　 ／　　　　／　 ヽヽ
.　　　 　　　　　　 /　　 　 .ﾍ..　　　　　　　　　　　＞<　　　　 ／　　 　 / !
　　　　　　　　　　{..:::..　　 　 ヽ:::...　　　　　　　　　　　＞... ／ ヽ　　 ／ .'、
　 　 　　　　　　 ,.ﾍ:::::::::..　　 　 ＼::::..　　　　 　　　　　　　 ＞...　｀¨..:::, ′＼
　　　　　　　　 / 　ﾍ:::::::::::::... 　 　 ＼:::::..　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼／　　 　 ＼
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　 　　　　　　 ∧::::::::. 　 ヽ::::::::::::::::.　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼　　　　 ∨
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┌─────────────────────────────────────────┐
│私は幸福だった。私が罪悪感で押しつぶされそうになったときは、　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│いつも兄が横にいて「大丈夫だ、お前は悪くない」と励ましてくれた。　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│私の手を握りながら、「お前は生きてていいんだ」と言ってくれた。何度も、何度も。　　　　　　　　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│私にとって、兄は世界のすべてだった。兄がいてくれさえすれば、他に何もいらなかった。　　　　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│一度は失ったはずの、あの満ち足りた世界。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
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14： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:10:09 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 爪:l::::ヽ::::＼¨´ } 　 　 　 |/l/　 }:::ﾄ!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ノ　ヘ.::.::ﾄxヘ、　｀ t一ｧ　 /　 .ｲ|从
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 メ、 ─‐`┐. _ 　／,r',仆､l、 ﾞー‐-　　 .._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／　 　 　 ｀二丁{､｢￣ヽﾞﾏヽ ｆ 　 　 　 　 　 ＞‐‐､
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／　　　 　 .ｲ｣ /} }／〉､　　ヽﾏk｣`　　　　　 ／ 　　　i
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│　　それなのに…　.│
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15： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:10:50 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　　 /　　　ﾉ　／　　　　/////////! ∧_,_,'!,ヾソ
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　 　 i　 /　!　　イ////////////////////////.::/.:::::::.::::::::/. .:::!:::::::::::. : :. :::.:::::ﾍﾞ ｀=-ｭ､
　 　 l　(　 !　 /////////////////////////i′:′.: .:.::::::/.::::.:::l、:､:::::::.　::. l::::::::ﾊー､ ｀=-ｭ､
　　　!　ヽ i　 ∨///////////////////////|:::::i ::: :: :!:::/.:: .:/.:jヘ､＼:: .::::::ﾄ､:::::::ﾄ､//｀て｀ﾞ ｀=-ｭ､
　　 　!　 j|　　 !///////////////////////|:::::l: :. ::::l:/|::!::/}:/ ,rｧ≠fﾄ､::::::|/.::::ﾄ|////７ー-ｭ｀ﾞ ｀=-ｭ､
　　　　! （ !　　|/////////////////////// |:::::|::::::::::|ｋl::|:{ /　 ｨ代fiﾂ:::::::::{::::::::ﾄ|///////////ヽ_＿｀ﾞ ｀ヽ,
　　　　 ! ! .|　　!///////////////////////l:i{::ﾄ､::ゝ㌘f沁′ 　　￣ |:::/:/ l::::i:|//////////////<｀ー｀　{ｿ
　　　　　!ヽ',　　!///////////////////////爪:l::::ヽ::::＼¨´ } 　 　 　 |/l/　 }:::ﾄ!////=-‐''''ヾ/////ヽ　 r'/
　　　　　 ヽ ',　 ∨////////////////////ノ　ヘ.::.::ﾄxヘ、　｀ t一ｧ　 /　 .ｲ|从‐'''｀　　　　　　∨////l　 ﾞ´
　　　　　　　ヾ　 ∨//>､/////-<//////////////メ、 ─‐`┐. _ 　／,r',仆､l、 ﾞー‐-　　 .._　　 ∨///!
　　　　　　　　 ＼ ∨/i　ヾ//　　　ヾ///////// ／　 　 　 ｀二丁{､｢￣ヽﾞﾏヽ ｆ 　 　 　 　 　 ＞‐‐､∨/ソ
　　　　　　　　　　　∨､　　´　　　　　ヾ-' ｀ーﾞ／　　　 　 .ｲ｣ /} }／〉､　　ヽﾏk｣`　　　　　 ／ 　　　i//
　　　　　　　　　　　 ∨7　　　　 　 　 　 　 ｒ'´ 　　　　∠　 -‐〈/　 {/iﾊ　　 ﾒ}　 　 i 　 　 .′　 　 　l//{
　　　　　　　　　　　　ｿ　　　　　　　　　　　{　　　`rｲ　　　 　 　 　 　 } }　　| |　　　i　　 /　 　 　 　 l/ﾊ
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／{ ／／ ｜ ヽ　　　　　　　 | |　　{ ＞ニニＶ　 /　　　　/ j
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　',　　　　　　|} 丶、 　 ﾄ､ヽ　 　 　 　 　 　 ＼|/　　 ／　 　 .ｲ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┌────────────────────┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│　　ああ…　わたしはどうしようもなく魔女だ。　.....│
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16： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:11:31 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .＼　ゝ=≦　。s≦
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　　　　　　　　　　┌───────────────────────────────────────┐
　　　　　　　　　　│経験上、夢に見た出来事を変えることが出来ないのは分かっていた。　　　　　　　　　　　　　　...│
　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
　　　　　　　　　　│兄を救うためには、自分が死ぬしかないと思った。私が死ねば、悪夢はきっと終わる。 　 　 ......│
　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
　　　　　　　　　　│何の根拠もなかったけれど、その時の私は兄を助けることで頭がいっぱいだった。　　　　　 　 .│
　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
　　　　　　　　　　│兄が仕事の打ち合わせのために出かけたのを機に、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
　　　　　　　　　　│以前お医者様から処方されたきり、そのままにしていた薬を手当たり次第に飲み下した。　　　.│
　　　　　　　　　　└───────────────────────────────────────┘

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17： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:11:59 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　.|　　　　r==,、　　　∥∥_/_/_/_/_/_/　./
　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　 .|　　　　｀＝´　　　∥∥_/_/_/_/_/_/ ./
　　　　　　　──────‐ヽ──────‐.|──────‐∥──────/───
　　　　　　　＼　　　　　　　　　ヽ　　 ＿＿＿＿_|＿＿＿＿＿＿.∥＿＿＿＿＿__/＿__
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　　　　　　　　ヾヽ ヽ￣￣￣￣｀ヽ il　　　　　　　|　　　　　　　φ　　　　　　　/　　　　n「i .|　 i
　　　　　　　──ヾ-ヽ────‐ヽil────‐|────‐∥────‐/──nl^| i!.| .|　.|
　　　　　　　、＿＿_ヽ ヽ＿＿＿＿.',i!＿＿＿＿_|＿＿＿＿.∥＿＿＿＿/＿＿__.|.| .| | | .|　.|
　　　　　　　ヽ,　　　 l^l^h、,,,,,,,,,,,,,,,,,,i^h　　　　　 .|　　　　　 ∥　　　　　 /,,,,,,,,,,,,_／|.| .| |.| .|　.|
　　　　　　　＿_ヽ＿∥i |.ト|:::|　　|::::| l|＿＿＿＿|＿＿＿_∥＿＿＿_/li三三三.|　.|| ..| || .|　.|
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　　　　　　　三三ﾆij　l .|ﾆl:::i　　.l:::l　. |三三三三三三三三三三三三l::|l::::::::::::::::i ..|l　.| |l　i　.|
　　　　　　　　　　 ij　.| .| ,l:::i　　.l:::l　　|::::::: : : : : :: : : :::: : :　　　::::: :: : ::l::|i::::::::::::::::l ..|i　.i |l　.|　|
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│目が覚めると、そこは病院だった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│どうやら、近所の方が異常に気づいて救急車を呼んでくださったらしい。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│一時は極めて危険な状態だったとのことだが、おかげさまでこうして生きている。　　　　　　　　　　　　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│妹が意識不明の重体で病院に担ぎ込まれたと聞いた兄は、恐らくパニックを起こしたのだろう。　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│兄は半狂乱になって病院に車を走らせたが、その運転は常軌を遥かに逸していたようだ。　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│兄が九度目の信号無視をしたところで、横から来たトラックと衝突した。兄は即死だったという。　　　　 ....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│お医者様が語るその話を聞きながら、私は兄と見た古い映画のことをぼんやりと思い出していた。　　......│
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18： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:12:44 ID:cVUMLNOcSa


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┌───────────────────────────────────┐
│私は泣いた。涙はとめどもなく流れた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
│大粒の涙はこの大地を埋め尽くし、ここに新しい海をつくるかのように溢れた。　　 　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
│願わくば、私は涙の海の底に深く沈んでしまいますように。　　　　　　　　　　　　　　　...│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
│だけれど、私の悲しみの総量に比べて涙の量はあまりにもちっぽけだ。　　　　　　 　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
│最早、涙は枯れ果ててしまった。瞳は無慈悲な現実を映すだけ。　　　　　　　　　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
│兄は死んだ。私は生きてる。これが私の最後の罪。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
└───────────────────────────────────┘

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19： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:13:14 ID:cVUMLNOcSa


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┌─────────────────────────────────────────┐
│ああ、神様。あなたがもし本当におられるのだとしたら、相当底意地の悪い御方に違いない。　　 　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│私に罪があると仰るのですか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│ああ、神様。私は存在しているだけで人を傷つけてしまう女です。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│もし、死すら私に許されていないのだとしたら、私はどうやってこの罪を償えばいいのでしょう？　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│ああ、神様。お兄様は私に罪はないと言ってくださいました。何度も、何度も、何度も、何度も。　 　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│人に罪があると説かれるあなたより、お兄様の方がずっと高尚なお方ではないでしょうか？　　 　......│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│ああ、神様。私にとってはお兄様こそが神様でした。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│大丈夫だと言ってほしい。お前は大丈夫だよ、問題はないよと言ってほしいのです。　　　　　　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│ああ、お兄様…　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
└─────────────────────────────────────────┘

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20： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:14:36 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　 　 　 　 ,l　 .;'.　　'　　　, -=- ､　　　 , -‐== 、　　`　　.i.　 l
　　　　　　　　 ,ｆ'L..:;l　　　　　/三二ﾆﾆ`ヽ〃ﾆﾆニ三i　　　　　ト､rヽ
　　　　　　　 .l,　,ｲ/! .ｉ　　　 i´　　　 　 　 　 　 　 　 ,'　 　 .ｌ　 ｌ!ヽ.`.|
　　　　　　　 ﾉ,l　/ ｌ　ｉ 　 　 .',　　　　　　　　　　 　 ,'　 ,　　l.　 iヽ_ﾉ!'i
　　　　　　 〃,／...,' .:;ｌ　　　　.i　　　　　　　　 　 　 ｉ　 ::　　ヽ:.　ヽヽiﾊ
　　　　　,.ｲ/.'　　 '..::/　　　:　 l＿＿,, -'　　 '-,,＿__ヽ. ヽ:.　　ヽ:.　 ヽ`,ﾍ　　　　　　　　　　大丈夫だ、ナナリー。
.　 　 ,.イ ,ｲ,' .:　 .:::,ｲ.　　 .:　 /'´ ￣ｌ｀　　　　 '´l￣｀ ヽ ヽ:.　　　,:: 　 ｉ i ＼
　,.イ　／, ｲi　:　:::/　,　 .::;　, '　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ∨';:.　 　 ;:.　 l l､　 ヽ、　　　　　　お前は悪くなんかない。
'´　　 .;.イ:::ハ::. ::,'　 ｉ　.::;',ｲーﾓ元テ-　　　　　 -ﾓ元テ- 〉ｉ::: .　　l::　,',i!ﾍ　 　 ヽ、
　 .,.イ..::,.ｲ .,':iヽ;::i　 l　:::i ハ. ｀｀￣´　 　 　 　 　 ｀￣´´ .,',.i.l:::　　 ｉ: /iｲi、ﾍ;:::..　　ヽ　　　 お前はお兄様を殺してなんかいない。
.'´..:;.イ　 :/:,'　 i:.', .i:i. ::.'i ｉ::ﾍ.　 　 　 　 　 ,.　　　 　 　 ./.:ﾉ,'::　.:l ,': i lハﾍ　 ` ､:::::... ヽ
,.イ 　 ..:;ｲ:/.　.,'::::i: lﾊ.:::::`ミ==‐'.　　 　 　 ｌ:　　　　 ､_,=彡':::: ..:,'ｲ::: ',＿ノ:.ヽ . 　 ヽ、::　　　大丈夫だ、大丈夫、大丈夫…
　,.イ::,ｲ:::/ _ノ::::/..;'::::l::::::. i. ',　li`　、　　.‐ ‐　　　,.イ ｉ:i::,' ,: i.:::i::i:::::.∧　 ﾄ;::::`...､ 　 ﾍ;
,ｲ.:;:ｲ::::;ｲ ￣フｲ::;i:::::,'::i::::: ｌｉ:ｉ...i.l〈＼＞. _　　_ ＜l／〉l.:ｌ,'::i!: l::;::ｌ:';::::::ﾊl　 ｌ iヽ,::::::..ヽ、.`
.;:ｲ:::::;ｲi!.　 ´:::::!/ｉ::i:,'::;!:::::.i::ｌl ,' l　ヽ `ヽ、`´,ィ'´　./ .l:::l!:i.l:: ∨ ヽ､__,. 　.:i .lﾍ:ﾍ:::::::...`.､
'::::::,ｲ!l l! 　 ::::::.l|::ｌ:ｌl::::i::i::,':::.i ／)　,l､ （⌒)}{(⌒） /, .(＼'i!.ヽ、i!`ー'´　　,'　ｌ ﾊ:.ﾊ:::::::::



　　　　　　　　　　　　　　　　　　┌───────┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　│　 …本当に？　..│
　　　　　　　　　　　　　　　　　　└───────┘



　　　　 　 　 　 ,l　 .;'.　　'　　　, -=- ､　　　 , -‐== 、　　`　　.i.　 l
　　　　　　　　 ,ｆ'L..:;l　　　　　/三二ﾆﾆ`ヽ〃ﾆﾆニ三i　　　　　ト､rヽ
　　　　　　　 .l,　,ｲ/! .ｉ　　　 i´　　　 　 　 　 　 　 　 ,'　 　 .ｌ　 ｌ!ヽ.`.|
　　　　　　　 ﾉ,l　/ ｌ　ｉ 　 　 .',　　　　　　　　　　 　 ,'　 ,　　l.　 iヽ_ﾉ!'i
　　　　　　 〃,／...,' .:;ｌ　　　　.i　　　　　　　　 　 　 ｉ　 ::　　ヽ:.　ヽヽiﾊ
　　　　　,.ｲ/.'　　 '..::/　　　:　 l＿＿,, -'　　 '-,,＿__ヽ. ヽ:.　　ヽ:.　 ヽ`,ﾍ　　　　　　　　
.　 　 ,.イ ,ｲ,' .:　 .:::,ｲ.　　 .:　 /'´ ￣ｌ｀　　　　 '´l￣｀ ヽ ヽ:.　　　,:: 　 ｉ i ＼
　,.イ　／, ｲi　:　:::/　,　 .::;　, '　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ∨';:.　 　 ;:.　 l l､　 ヽ、　　　　
'´　　 .;.イ:::ハ::. ::,'　 ｉ　.::;',ｲーﾓ元テ-　　　　　 -ﾓ元テ- 〉ｉ::: .　　l::　,',i!ﾍ　 　 ヽ、　　　　　・・・・・。
　 .,.イ..::,.ｲ .,':iヽ;::i　 l　:::i ハ. ｀｀￣´　 　 　 　 　 ｀￣´´ .,',.i.l:::　　 ｉ: /iｲi、ﾍ;:::..　　ヽ　
.'´..:;.イ　 :/:,'　 i:.', .i:i. ::.'i ｉ::ﾍ.　 　 　 　 　 ,.　　　 　 　 ./.:ﾉ,'::　.:l ,': i lハﾍ　 ` ､:::::... ヽ
,.イ 　 ..:;ｲ:/.　.,'::::i: lﾊ.:::::`ミ==‐'.　　 　 　 ｌ:　　　　 ､_,=彡':::: ..:,'ｲ::: ',＿ノ:.ヽ . 　 ヽ、::　
　,.イ::,ｲ:::/ _ノ::::/..;'::::l::::::. i. ',　li`　、　　.‐ ‐　　　,.イ ｉ:i::,' ,: i.:::i::i:::::.∧　 ﾄ;::::`...､ 　 ﾍ;
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.;:ｲ:::::;ｲi!.　 ´:::::!/ｉ::i:,'::;!:::::.i::ｌl ,' l　ヽ `ヽ、`´,ィ'´　./ .l:::l!:i.l:: ∨ ヽ､__,. 　.:i .lﾍ:ﾍ:::::::...`.､
'::::::,ｲ!l l! 　 ::::::.l|::ｌ:ｌl::::i::i::,':::.i ／)　,l､ （⌒)}{(⌒） /, .(＼'i!.ヽ、i!`ー'´　　,'　ｌ ﾊ:.ﾊ:::::::::

┌────────────────────────────────┐
│私は救われたかった。もう、長いこと眠ってはいない。　　　　　　　　　　　　　　.│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│お兄様の口調を真似てはみたが、何の効果を得ることもできなかった。　　......│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│誰かに大丈夫だと言ってほしい。一切の躊躇もなく。　　　　　　　　　　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│お前は問題ないんだって。お兄様を殺してはいないんだって。　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│誰かに手を握ってほしい。この手の震えを止めるくらいに強く。　　　　　　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│お前は生きてていいんだって、そう言ってほしい。　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
└────────────────────────────────┘

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21： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:15:23 ID:cVUMLNOcSa


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　　┌───────────────────┐　
　　│　　…そして今日、あの方が訪れたのです。　 │　
　　└───────────────────┘　

　　　　 　 　 　 　 ／::::　　　　　 　 　 　 　 ､:＼
　　　　　　　　　 /／::::　　　　　　　　 　 　 :::＼:ヽ
　　　　 　 　 　 ｲ::／:::::.......　　 　 　 ,　 　 .::::＼:ヽ!
　　　　　　　　　i/:::／::,::::::::::::......../ ,ﾊ.',...:＼::::::::ヽ!
　 　 　 　 　 　 ｲ〃/://,::, ::://::/::/:,!l､ヽ＼:ヽ::ヽﾄ
　　　　　　　　　i;ｲ/:;.ｲﾉｲ／jﾊ/ l/ノ ' j;ﾊヾjヾ}::_ﾐﾞ　　　　　　　　　ナナリー・ランペルージさんですね。突然の訪問で失礼致します。
　　　　　　　　　 ハﾍｨ 　 　 　 ､　,.　 　 　 ヽ.}fハ
　　　　　　　　　 ', ﾊｆ{､,＞=ヮ‐､j_i_rｒ=ヮ＜__/ij､ j　　 　 　 　 　 　 私は東京教区の司教を務めております碇ゲンドウと申します。
　　　　　　 　 　 Λ ﾐj {::`ーｧ７´〉ヽ:`ｰ‐':ﾉ,. iﾘ ∧
　　　　 　 　 　 /:::::7ヾ,｀フ´./ ./｀!　｀￣´ ' jfイ:::::＼　　　　　　　　御父上から、あなたのことはかねがね。
　　　　 　 _,. -〈::::::::｢｀Y´ ／／　ﾉ‐'^ _　　,ｲ! j::::::::::::|＼
　 _,, -‐''´::::::::::::', ::｜/ ./　/　 /―ｧ'´ 〉ｨﾁ'' /::::::::::: j::::::｀ヽ､_　　　本日はあなたにお願いがあって、伺ったのですが…
ﾞ´::::::::::::::::::::::::::::: ヽﾉ,' ノ　/　 /.,,／ ,.ｨｆjﾙ''／:::::::::::: /::::::::::::::::::｀¨
::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　'′ 〈／ .,.ｲ屮‐'´|:::::::::::::::,.'::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::i　　　　　　　　r'￣　　　,|:::::::::／:::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::|　 　 　 　 　 /＿ _,　‐'　|_,／:::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::',.　 　 　 　 /　 　 　 　 ｢::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::



　　　 　 　 　 /: : : : :, ---- ､: :/ : : : : : : : : : : : : : : : : ＼: : : : : : :ヽ
　　　　　　　 ': : : : :/, --- ､ﾐ〉／三三ミヽ: : : : : : : : : : : :}: : : : : : : :'.
　　　　　　　 |: : : : |´　　　　｀ー――― ミ､: : : : : : : : : :/ : : :∨: : : :'.
　　　　　　　 }: : : : |　　　　　　　 　 　 　 　 ∨: : : : : : : :} : : : : ∨: : : '.　　 　 　 　 お父様から私のことを…？
　　　　　　　ｲ: : : : |　　　　　　　　　 　 　 　 |: : : |: : : : :ﾄ: : : : : :|: : : : :
　　　　　　.':/: : : : :}---'　　 　 ､　　 　 　 　 }: : : {: : : : : :∨: : : :}: : : : :　　 　 　 　 …申し訳ありませんが、両親は既に離縁しておりまして、
　 　 　 ／:/ : : : : / r- ､　　　　 ｀'''ー--､　/: : : :.∨: : : : :∨: : :' : : : : |
　　　　{: : : /: : : ∧ l 　 　 　 　 　 -r-､　｀｛: : :{: : :∨: : : : : ヽ: |:|: : : : |　　　 　 　 今の私と父には戸籍上のつながりしかないのです。
　　　　∨: {: : : /: ∧､＿__　　　　　 |　 ｀ 　∨: ∨: : :､: : : : : /: |:|: : : : l
　　　 　 ＼＼: 乂:{: }　￣　l　　　　 ､　　　　　､: ∨: : ∨: : :/: :ｲ:|: : : : :'. 　 　 　 　 私から父に何かを取次ぐことは出来かねますので、
　　　　　　 ヽ: V:ー: :.　　 /　　　　　｀ ＝＝''　} : ｝: : : }: : ｛: :/ : |: : : : : '.
　　　　　　　ﾉ:人 : : 込、 ヽ 　 　 　 　 　 　 ／イ八 : 人 : ∨ : : |: : : : : : .　　　　　 もし、そのようなご用件ならお引き取りを…
　　　　　　ー/: : ): / : : ＼　 v､　　　　　 　 ／:ｨ: : ／: : : ー: : : :|: : : : : : :'.
　　　 　 　 ,: : ー: ': : : : : : :ヽ 　　　　　　　/:／: : /: : : : :/: : : : :∧: : : : : : : ､
　　　　　／: : : ／: : : : , --- ｀ ‐‐　r=≦ ｛/{ : : ｛ : : : イ : : : : / : }: : : : : : : :＼
　　　 , : : : : ／: :＞ ´/　　/￣　　　}　　　　从: : :｝:/: : : : : : : : : : |: : : ＼ : : : : ＼
　　 /: : : :,: : : :/　 　 {　　｛　　　　　|　　　 　 /:イ: : : : : : : : : : : : /: : : : : ＼ : : : : ＼
　　｛: : : : {: : :,　　　　| 　　|　 ､　　 ﾉ　　　　 ／: ／ : : : : : : : : ／､: : : : : : : :＼: : : : :
　　 |: : : : |: : {　　　　∨　∧　 ＼　　　　　 /: ／ : : : : : : : : イ　　 ＼: : : : : : : :ヽ: : :

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22： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:16:10 ID:cVUMLNOcSa


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　 　|/|/{|/:::::::::::::::::/ ／　　　　　 ﾊ::::::::　　 　
　　　　　〈r＿_ヽ |/L､､,,,,,,,,,,,,,,,,__　ﾉ＼::
　 　 　　　>r‐t.ﾊ　７/´::ヘｿ_｀ヽ＿／ﾐ:　　　　 いえ、そのような類のお願いではないのですが…
　 　 　　 （.ヽ:フﾘ⌒ﾍ､:ヽ￣::::_ノ￣　 ﾐ:
　 　 　　　`┬彳　　　　￣￣　　/　 ﾐ::　　　　 …失礼。目がひどく充血されてますね。隈もひどいようだ。
　　　　　　　ヽく.　 __〉、　　　　..:::::::::ﾐ:::
　　　 　　　　　V::::::＿ ..＿ 、 .:::::::ﾊﾐ::::　　　 　 もしかすると、ここ数日眠られてないのではないですか？
　　　 　　　　　∧::::::::＿ 　　　,,､ﾊN::::::
　　　　　　　　 」|i;;;::::;;ii,,..... ..､ﾊ||ﾄﾐ'': : :　　　　　あなたが何に思い悩んでおられるのか私には分かりませんが、
　　　　　　　　　ﾊ从||||||||||||||ﾄNﾐ''／:::
　　　　　　　　　　∠//"`-"ー'イ:::::::::::　　　　　あなたが罪の意識に苛まれているのはわかります。
　　　　　　　　　　|:::::|〉: : : : :「::::::::::::::::::
　 　 　　　　　_／:::::::|: : : : : :|:::::::::::::::::::
　　　　　　_／::::::::::::└: : : : :」::::::::::::::::::



　　　　　 　 　 　 j: :/: :＿ ,;､､;,;,＿_:!: : : : :
　　　　　　　　　/ r'／;;:='ﾍk￢-､__｀: : : : :
　　　　　　　 _,ｲ （/='゛_r斤:|｢｀ヾｧｰ-｀ ニ　　　　　末席ながら、私も主にお仕えするものです。
　　　　　 　 ｢:|;ゞ-|:::::ｉ:::::{ﾘ::||_,ノ'″
　　　　　 　 |::l欠"ｌヽｌ::::::ﾃ〃゛;　　 　 　 　 　 　 　 もし、差し支えなければあなたが何に思い悩んでおられるのか、
　　　 　 　 ／: : :l　ゞ--‐'＾"´
　　 　 ,､‐'´: : : : : l　　　　　　　　　　　　　_　　　　 私に告白しては頂けないでしょうか？
　 　 〈 ￣｀ ｰ-￢:卜、　　　　　　　　　 ,.:':
　　　　｀`丶,￣`　'＾｀ヽ　　　　　　　　,:':　　　　　　 もしかすると、何かの力になれるやもしれません。
　　　　　　　| ＿　　　　　　　　　　　/
　　　　　　　ヽャ‐‐-__､、　 ヽ
　　　　　　　　,〕!ニ､=-'’　　 |
　　　　　　 　 L、
　　　 　 　 　 　 l

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23： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:16:52 ID:cVUMLNOcSa


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　　　　　　{　 　 　 /: : ／. : : : -‐: : : : :ヽ}´: : : : : : .＼
　　　　　　 ＼　　/:{:.:/. : ／. : : : : : : : ‐-∨／: :￣｀ : ヽ
　　　　　　／{　 .'{:{:{ { : /. : /. : : : : : ___: : :Y´: : : : : : . ＼　　　　　…司教様。私は罪深き魔女なのです。
　 　 　 ／　 {　/{:{:{ y}: { : /. ;. : : :∠三ﾆミﾑ=ニヽ: : : : : :}　　　
　　　 /　 　 {　': {:{:y' }:.:}:/ :/. : {: {　　　　　 　 ｀ﾞ＾}: : : / :　　　　　私が夢に見たものは、近いうちに必ず現実になります。
.　　 〈　　／{/. : ／. : : :,'／ . : : ヽ}　　,　　 　 　 /. : : {: /
　　　 ヽ/　,/. : ,' : : : :／. : : :/.: :}/=ﾆ´　　 ＼　 {: : : : {:{{　　 　 　 私は幸せな家庭を壊した上、級友と最愛の兄を殺めました。
　 　 　 {／. : : {: : : : ｛:. : : :/. :／　 ﾞ　　　 /ヽ｀＾ 〉、: :.ヽ:ヽ
　　　／ . : : : ハ : : : { }: }: {:./ﾐ==彡　　　 ､ ＿ /: }: : : : :} ﾊ　 　　 私は眠るのが怖いのです。私の夢は、誰かを不幸にします。
　 ／. : : : :／ :/:}: : }: }:}: }: {:{　　　　　　 :　 ｀~^.: :/ . : : /.: :,
／. : : : : ´ :ｰ=彡ｲ/: { }:,': :ヽゝ-'　　　　 '　　 / :/. : : :/: ／　 　 　 司教様。あなたが私を救ってくださるというなら、
: : : ／. : : :´: : : : {{: : :}{: : :/t ｀　.　 ´　｀　 .イ{: :{: : :{/: /
: : ': -‐: :, .-‐=ﾆ:.:{ヽ:}:}{: :/､ {ぅｧ-≧z＜:_{_:_:}ﾊ: {: : :{､: {　　 　 　 　 いますぐ私を捕らえて火刑に処しては下さいませんか。
: : : : : :/.:.-:､:.:.:.:.:.:.:.:.jﾉヽ{　`T7三7/)}:.:.:.:.:.:.:':.:.jハ: :}}:ヽゝ-'
: : : : : {:.:.:.:.:.:｀:.:.､:.:.:.:.:.}t' ＼ {:{　〃 {_}:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,:.:.V/: : .＼　　 　 　 私は疲れ果てました。もう、こんな悪夢は終わりにしたいのです。
: : : : : {:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:}__)　 {:{　{{　ﾉ}:.:.:}:.:.:.:.:.:./.:.:.:}' : : : : : .ヽ



　　/::::::::::::/|/|／::::|／:::::/イ　　N:::::::::::
　 　|/|/{|/:::::::::::::::::/ ／　　　　　 ﾊ::::::::　　　　　
　　　　　〈r＿_ヽ |/L､､,,,,,,,,,,,,,,,,__　ﾉ＼::
　 　 　　　>r‐t.ﾊ　７/´::ヘｿ_｀ヽ＿／ﾐ:　　　　　　…あなたが未来に起きることを夢に見るというのは聞いております。
　 　 　　 （.ヽ:フﾘ⌒ﾍ､:ヽ￣::::_ノ￣　 ﾐ:
　 　 　　　`┬彳　　　　￣￣　　/　 ﾐ::　　　　　　 実を言えば、私がこちらに出向いたのも、
　　　　　　　ヽく.　 __〉、　　　　..:::::::::ﾐ:::
　　　 　　　　　V::::::＿ ..＿ 、 .:::::::ﾊﾐ::::::　　　　　　そのことであなたに手を貸して頂きたいからなのです。
　　　 　　　　　∧::::::::＿ 　　　,,､ﾊN::::::
　　　　　　　　 」|i;;;::::;;ii,,..... ..､ﾊ||ﾄﾐ'': : ::　　　　　　 ですが、あなたは重大な勘違いをしておられるようだ…
　　　　　　　　　ﾊ从||||||||||||||ﾄNﾐ''／:::
　　　　　　　　　　∠//"`-"ー'イ:::::::::::
　　　　　　　　　　|:::::|〉: : : : :「::::::::::::::::::
　 　 　　　　　_／:::::::|: : : : : :|:::::::::::::::::::
　　　　　　_／::::::::::::└: : : : :」::::::::::::::::::

-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡

24： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:17:38 ID:cVUMLNOcSa


-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-

　　　　 　 　 　 　 ／::::　　　　　 　 　 　 　 ､:＼
　　　　　　　　　 /／::::　　　　　　　　 　 　 :::＼:ヽ　　　　　　　　　　あなたはご自分が夢に見たために、ご友人やお兄さんが亡くなられたと思っているようですが…
　　　　 　 　 　 ｲ::／:::::.......　　 　 　 ,　 　 .::::＼:ヽ!　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　i/:::／::,::::::::::::......../ ,ﾊ.',...:＼::::::::ヽ!　　　　　 　 　 　 それは違います。
　 　 　 　 　 　 ｲ〃/://,::, ::://::/::/:,!l､ヽ＼:ヽ::ヽﾄ　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　i;ｲ/:;.ｲﾉｲ／jﾊ/ l/ノ ' j;ﾊヾjヾ}::_ﾐﾞ　 　 　 　 　 　 　 あなたは未来に起こることを予知しただけです。
　　　　　　　　　 ハﾍｨ 　 　 　 ､　,.　 　 　 ヽ.}fハ　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　 ', ﾊｆ{､,＞=ヮ‐､j_i_rｒ=ヮ＜__/ij､ j　　　　　　 　 　 　 あなたはご友人やお兄さんの死には何も関与していません。
　　　　　　 　 　 Λ ﾐj {::`ーｧ７´〉ヽ:`ｰ‐':ﾉ,. iﾘ ∧　　　　　　　　　　
　　　　 　 　 　 /:::::7ヾ,｀フ´./ ./｀!　｀￣´ ' jfイ:::::＼ 　 　 　 　 　 　 あなたの周囲の人々の死は総て主の意志によるものです。
　　　　 　 _,. -〈::::::::｢｀Y´ ／／　ﾉ‐'^ _　　,ｲ! j::::::::::::|＼　　　　　　　
　 _,, -‐''´::::::::::::', ::｜/ ./　/　 /―ｧ'´ 〉ｨﾁ'' /::::::::::: j::::::｀ヽ､_　 　 　 人は主の定めた運命を変えることなどできません。
ﾞ´::::::::::::::::::::::::::::: ヽﾉ,' ノ　/　 /.,,／ ,.ｨｆjﾙ''／:::::::::::: /::::::::::::::::::｀¨　　
::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　'′ 〈／ .,.ｲ屮‐'´|:::::::::::::::,.'::::::::::::::::::::::::::　 　 魔女が人の運命を操るとは、誰の言葉を真に受けたのかは分かりませんが…
:::::::::::::::::::::::::::::::::::i　　　　　　　　r'￣　　　,|:::::::::／:::::::::::::::::::::::::::::　　
:::::::::::::::::::::::::::::::::::|　 　 　 　 　 /＿ _,　‐'　|_,／:::::::::::::::::::::::::::::::::::　 　 まったく荒唐無稽な話ですよ。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::',.　 　 　 　 /　 　 　 　 ｢::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-

25： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:18:19 ID:cVUMLNOcSa


-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-

　　　　　 　 　 　 j: :/: :＿ ,;､､;,;,＿_:!: : : : :
　　　　　　　　　/ r'／;;:='ﾍk￢-､__｀: : : : :　　　　　…魔女。思えば、中世の教徒たちも罪深きことをしたものだ。
　　　　　　　 _,ｲ （/='゛_r斤:|｢｀ヾｧｰ-｀ ニ
　　　　　 　 ｢:|;ゞ-|:::::ｉ:::::{ﾘ::||_,ノ'″　　　　　　　　　魔女もメシアンも、偉大なる主の前では平等に無価値だというのに…
　　　　　 　 |::l欠"ｌヽｌ::::::ﾃ〃゛;
　　　 　 　 ／: : :l　ゞ--‐'＾"´　　　 　 　 　 　 　 　 …それは兎も角として、御安心なさい。あなたには罪などありません。
　　 　 ,､‐'´: : : : : l　　　　　　　　　　　　　_　　　
　 　 〈 ￣｀ ｰ-￢:卜、　　　　　　　　　 ,.:':　　　　　 もう、自分を痛めつける必要などないのです。
　　　　｀`丶,￣`　'＾｀ヽ　　　　　　　　,:':　　　　　　
　　　　　　　| ＿　　　　　　　　　　　/　　　 　 　 　 差し支えなければ、その震える手を握っていてあげましょう。ですから、少し眠りなさい。
　　　　　　　ヽャ‐‐-__､、　 ヽ
　　　　　　　　,〕!ニ､=-'’　　 |　　　　　　 　 　 　 　 大丈夫。あなたが良き行いをしていれば、きっと神の国でお兄さんともまた会えますよ。
　　　　　　 　 L、
　　　 　 　 　 　 l

-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-

26： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:20:07 ID:cVUMLNOcSa
-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=

　　　　　　　　　/ 　 /　　　　　ヽ=ﾆミ　、: : : : : : : : : : : :}:/. : : : : : : : : : }
　　　　　　　　　{　　{　　　　　　/　　 ｀ｰヽ: : : : : : : : :_:／. : : : : : : : : //
　　　　　　　　　ヽ＿＼　　 　 /　 　 　 　 } ｰ=ﾆ三ア. : : : : : :/ . : : : : {
　　　　　　　　　/ 　 ／｀ 7^Y 　 　 　 　 /ﾆ二三:ｱ . : : : : : /. : : : : : : .ヽ
　　　　 　 　 　 { 　 '　/ /　 ﾊ　　 　 r＜: : : : :-={ : : : : : {: :{ : : : : : : : : : }
.　　　　　　 　 /　/　 '　{　　　　　__ノ. : : ｀: :‐- : .ヽ : : : : '; {: : : : : : : : : /
　　　　　　 　 {／ 　 {　 {　　　　 ｛: : : : : :/. : : : : : :{＼ : : : ヽ : : : : : :／
　　　 　 　 ／　　 　 {　 {　 　 　 /. : : : :/. : /. : :/. ﾊ　V : : : .Ｖ. : : ハ
　　　　 . :/　　　　　　　 '.ｰ--‐ ' : : : ／. : /. : :/. : : .ヽ_}: :} : : } : : {　 }
　　 ／ :ム-ｧ―- ､　　　 V. : : :-ｧ: ´: : , : : : :/ : /. : : } } /. : / { : .ヽ厶ｨ′
　 / . : /　/. : : :／ ＼　　 '. : :／. : : ／. : :／ ／. :ｰ=彡': : : {: :ﾊ : ＼-'′
.　{: : : {　.' : : :/. : ／ :｀ｰ- ': : : -‐: : : : ／ ／. :ノ:/: :,　{: {: : {: {: :}: : : .ヽ
　 }: : ∧ {: : : : : ´ : : : : : -‐=: : : :=‐-=ﾆ: : : : ´／:／､,.ﾍ:{ ､: : :Ｖ. : }: }: }
／. : {: ／. : : : : : : : : ´: : : : : : : : : : : : : : -‐: :´／ヽ／_> ヽ:ヽ: : : : :}/}/
: : : ／. : : : : : ／. : : : : :ｧ':.:.￣￣:.:.:.:.‐--‐:tｧ_´ /:/ /〉⌒ヽ}: ﾊ }: :/／
: :./ . : : : : : :/ . : : :／: :{:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i:.:.:.:}　|/:/イ/ .:.:.:.:.ﾑ'　}ﾙ'

　　　　　　┌───────┐
　　　　　　│　　その方は…　│
　　　　　　└───────┘



┌───────────────────────┐
│その方は異教の衣を身にまとい、　　　　　　　　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　........│
│異教の言葉で語られました。　　　　　　　　　　　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.........│
│ですが、私にはわかりました。　　　　　　　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│その方は、私の神様がお使わしになったのだと。　　　　│
└───────────────────────┘

: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/
､ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /　〉
.　､: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ／　/`ー─-　_
　　＼ : : : : : : : : : : : : : : ／　／　　　　　　　｀丶
　　　 ＼ : : : : : : : : : : ／　／　　　　　　　　　 　 ＼
　　　　　＼: : : : :_ - " ＞´　 ＼　　　　　　　　　　　｀ヽ
　　　　　　　ー "､_ -　　　　　　丶　_　　　　　　　　　 　',
　　　　　　　　　　　　 ',　　　　　　　 ､￣ ／￣￣ ',　 _ノ ',｀丶
　　　　　　　　　　　　　丶　　　　　　 }／／ ‐ ､ ＿＼丶 _}　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　f´-ヽl「_ﾌ ',　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼　_ｆ⌒',ｰ '　',　　 ',￣｀ヽ　　　　　　　＼- ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　 丶 ',￣ ､　 　',　　 ',､ __ﾉ　　　　　　　　/　ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼､　丶-ｲ`ー'　　　　　　　　　_ イ　　　ﾍ-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣　　 ￣￣￣￣`ーr─≦　　　　 ／　∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨　　　　 ／　　　 ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { ∨_ ＞ ´　 　 　 　 ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 丶　　　　　　　　　 　 ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∨　　　　　　　　　　∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ∨　　　　　　　　　　∧

　　　　　　　　　　　　　　　　　　┌─────────┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　│ああ、神様。　　　　　 │
　　　　　　　　　　　　　　　　　　│　　　私だけの神様。..│
　　　　　　　　　　　　　　　　　　│　　　　　アーメン…......│
　　　　　　　　　　　　　　　　　　└─────────┘

-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=≡=-=

27： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:21:03 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　---------==============ニニニニニ三三三ニニニニニ==============---------

　　　　　　　　　　　　　　　　-----========ニニニニ三ニニニニ========-----
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　----====ニニニ====----
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ---===---
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　-
　　　　　 __＿＿_/ｱ＿＿,､　　　　　　　　 /ｱ　　　　　　　　 　 /ｱ　　　　 /ｱ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./ｱ
　　　　　', 二二7/二二,､¨´　　　　,＿＿//＿＿＿＿,､　 _＿// ,､ .,､＿_//＿_,､　　　　　　　　　　　　　 ./.ｱ　　//
　　　　　//￣￣￣￣7/'　　　　　 '´￣７/￣￣７.ﾉ￣´ 　'￣￣7/'//￣7/￣.7/　　　　　　　　　　　　　 /ナ＝ｧ./＝＝'`
　　　　.//二二二二//　　　◯　　　　//　　　 //　　　　　　　ﾉ/.//＝//＝//　 ＿/ｱ.,､ ,_＿＿__,､　 ,ノノ　　//
　　　 //＿＿＿＿//　　　　　　　　ノメ=､-､ //　　　　　_ ／,ｲ //＿//＿//　 ,'__//￣　 ￣￣￣´-"'ﾆ＿__//__＿,､
　,_＿ﾆ二二二二二＿,､　　　　　　￣　　¨冫<　　　 -='-7/ (ﾉ -'￣7/ ￣`´　//7/7/ー=ｧ.r＝='`　　' ￣ ７/ ￣￣´
　'´_,-''フ￣　ヾ､｀ヽ,￣´　　　　　　　 _,．-'ノ^ヾヽ　　　 .//　　　　 //　　　　 //7/7/　　/./　　　　　　　 .//
-='- '''　　　　　.｀､ノ　　　　　　_,,-=='-' ￣　　 `､_）　　//　　　　.//　　　　　`'ｹ/ﾆ'､　 .//　iヽ　　._＿＿//_＿＿,､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀´　　　　｀´　　　　'￣7/￣´　 ,iﾉ＿_」 ｝　'￣￣￣￣￣￣´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 //　　［,二 ─'´し'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀´

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〜やる夫は世紀末に生まれ落ちたようです〜

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第二話　『 　嵐からの隠れ場所 　』

　　　　　　---------==============ニニニニニ三三三ニニニニニ==============---------

　　　　　　　　　　　　　　　　-----========ニニニニ三ニニニニ========-----
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　----====ニニニ====----
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ---===---
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　-

28： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:21:38 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ,_ z=＝＝＝=,r-　.,,_
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 .　:　´　　　　　　 / ,/ ￣ Т"''t.,_
　　　　　　　　　　　　　　　／.　　　　　　　　　/ ,/　＿_　l 　 ', {l
　　　　　　　 　 　 　 　 ／, '　　 　 　 　 ＿ ン.ヽ| /　　 ｝｣＿ ', {l　　　　　ﾌﾞｵｵｵ･･･
　　　　　　　　　　　 ‐''　¨¨¨　￣￣__　　　　　　 | ――′|　 ,,} ﾞl
.　　　　　,　　´　　　　　　　 ,.　'' ´_ 　 ヽ　　　　　l　 　 　 ''l　　l　l
　 　 　 /　　　　　　　 　 ／'　　　　j　 ﾉ　　　　　 | 　 　 　 |　 .!zj
　　 　 ir二＞-＜二三 /＿ ,,,.　 -‐ "　　　 ,ｫｪ ､ | 　 　 　 |　 |i''il
　　　 ｚ-ｨェｪｪｪｪｪｪｪｭ＿＿＿_ ＿_,,..　-‐'/;i;i;i;ｉ;i:::l 　 　 　 |　_!| j|
　 　 |　 ｀二 二,¨¨¨¨′ 　 　 . . . .　　　 /;j''¨¨'ｉ;ｉ||　　　,. ＜ 'l;i;ｉ;j
　　　Vlｴ| 　 　 |―ｭ　 　 ＿＿　　　 　 .';i;l　 　 l;i:|,. ＜　　 　 ￣
.　　　ヽﾆ―---ニﾆ　 　 　 {l ﾉ}　 　 　 |;ｉ;ｌ　　　ｌ;ｉ|
　　　　　¨'''ー-=ニ ........... 二二　　= -rl;i;i;i;､__,.;i:i;'
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ':i;i;i;i;i;i;i;i;i'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ￣￣

29： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:22:40 ID:cVUMLNOcSa

　　　　　　　　　 ___
　　　　　　　　'’　 　 ＞‐━　､
　　　 　 '’　　　　／::::::::::::::::::::::＼
　＿/　　　　　 }/:::::::::::::::::::::::::::::::::}
/　/　　　　｀ヽﾊ:::::::::::::::::::::::::::::::::ｲ
　　 　 　 　 　 ∨〉:::::::::::::::::::: ／￣/}　　　　　　　　　　　銭形さん、一つお聞きしてもいいですか？
　　　　　　　　　∨〉:::::::::::::／　　 〈/
　　 　 　 　 　 　 `⌒¨¨¨´　　 　 /__
ﾆ‐　_　　　　　　　　 　 　 　 　 イ::::::::＼
ニニニ　_　　 　 　 　 　 　 ／::::::＼＼::::＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　γ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
ニニニニ　_　　　 　　__彡′:::::::::::::}::::}:ﾊ::: ＼　　　　　　　　 　　　　　　　　　　｜　　ん？　なんだ、急に改まって　　　|
ニニニニニ　_　　　 ／::::::::::::::::: ／／／}:::::::∧　　　　　　　 　　　　　 　　　　　乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ノ
ニニニニニニ　_　,.::::::::::::::::::::／／／／::::／::::|
ニニニニニニニ}/::::::::::::::::／／／／::::／::::::::::|
ニニニニニニ‐ ﾉ::::::::::::／／／／::::／::::::::::::::::|
ニニニニニ‐／:、＿／／／／::::／:::::::::::::::::／＼
ニニニニ ／:::::＼___／／／::::／:::::::::::::::::／　　　丶



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　゛　 ＿＿＿　　　　 l::::::l
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ　　　　　　　￣¨ ‐ 　 !:::/
::::::::::::::::::::::::::∧:::::l　　　　　　　　　　/　　i:::{　　　　　ずっと不思議に思ってたんです。
::::::::::::::::::::::::::l　l:::ﾘ　　　　　　　　＿　　 /}:lヾ
:::::::::::::::::::::::::l　 l/　　　 　 ヽ￣¨rr､ 　 /　ﾘ　　　　　 うちの課は優秀な刑事が多いじゃないですか。
∧:::::::::::::::::::l　　　　　　　 　 ＼_lﾉ　　 l
　}::::::::::::::::Ⅳ　　　　　　　　　　ヾ　 　 l　　　　　　　　どう贔屓目に見たって、僕なんか及びもつかない人ばかりだ。
　ﾘ:::ﾉ＼::::',　　　　　　　　　　　　　　　l
　／　　 ｀ー　　　　　　　 　 　 　 　 　 ',　　　　　　　なのに今回、どうして銭形さんは僕を相方に選んでくれたのかなって…
≧s｡＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ､
ニニニﾆ≧s｡　　　　　　　　　 　 　 　　　丶　　　　　不満があるわけじゃないんです。ただ、不思議で…
ニニニニニニ≧s｡　　　　　　　　 -　__...ｨ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／
ニニニニニニニニﾆヽ　　　　　 　 /ニニヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／ニ
ニニニニニニニニニﾆヽ　　　 　　;ニニニﾑ＿__　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／ニニ
ニニニニニニニニニﾆﾆﾑ￣¨¨T´ニニニニニニ＼　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 _ -／ニニニ
ニニニニニニニニニニニi　 ィ´ニニニニニニニニニ≧=s｡__　　　　　　　　 　 　 _　-=ニ／ニニニニ
ニニニニニニニニニニニﾆ≧≦ﾆヽニニニニニニニニニニﾆ≧s｡_　 　_ -==ﾆニニニ／ニニニニニ
ニニニニニニニニニニニニニニﾆﾆ＼ニニニニニニニニニニニニ-=ニニニニﾆﾆ／ニニニニニニ
ニニニニニニニニニニニニニニニニニニ=-=ニニニニニニ‐=ニニニニニニニ／ニニニニニニニ
ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニﾆ≧s｡ニニニニニニニニニ／ニニニニニニニニ

30：令和もどこかの名無しさん：2020/08/28(金) 23:22:46 ID:qWNB.PhQ00
あれ？次スレ立てたんだ

前のスレはどうするのかな
31： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:24:27 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　　　　　／　　｀ー＜＿　　　　}
　　　　　　　　　　　<　　　　　　　　　　　　〈
　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　├─--- ､_
　　　　　　　　　　　 　 〉　　＿＿＿＿＿＿ハ　　　　 /
　　　　　　　　　　　　「￣￣ : : : : : : : : : : : ／　　　　/
　　　　　　　　 　　／|: : : : : : : : : : : : :＿／　　　　／
　　　　　　　　　／　 |,. --──　'´￣　　　 __,. -‐′ ＼　　　　　　　　　　　　　足立。それは違うぞ。
　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　 _,,. ｧ'´ヽﾄ､　　　　＼
　　　　　　∠＿＿,.　ｨ‐t‐┬‐ｧ─‐ヽ´:|　{　．} !ﾉ　　 　 　 ＼　　　　　　　　　　 お前が思っている以上に、お前は頼りになる奴だ。
　　　　　　　　／　　/ r-|: :}　{　　　・} :|　ﾄ- ′}　　　　　　　 ＼
　　　　　　 ／　　　 {　!（.|: :|　 ゝ‐‐ ′:!　|　　 |　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　それにな、俺はこんなことが起こった時には、
　　　　　 /　　　　　 ＼ヽ|: :|　 　 　 　 ｨ ´ ) 　 |　　　　　　　　　 ヽ
.　　　　 /　　　　　　　 ヽ_ﾍ:ヽ　 　 　 　 ￣　　 |　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　お前と組むと前々から決めとった。
　　　　/　　　　　　　　 　 ﾊ: {　 　 　 　 __,.　ィ　〉　　　　　　　　　　ヽ
　　　 /　　 　 　 　 　 　 /　ヽ|i　　／￣‐　￣　ゝ　　　　　　　　　　 ﾍ
　 　 /　　　　　　　　　　|　　 ＼ 　ｰ'´　／　　 _ノ　　　　　　　　　　　ヽ─-､＿
/￣７　　　　　　　　　　 |　 　 　｀ヽ　　　 ／￣ ﾊ　　　　　　　　　　　　iﾆ=-
／'7　　　　　　　　　　　|　　　　 　 >‐ヤ′　　 | }　　　　　　　　　　　　|
　└‐‐----　,＿　　 　 ﾄ､　　　 ／::::::::ヽ　　　/ .|　　　　__,.　-─　'´￣
　　　　　　　　　 ＞　　 |　ヽ　 ハ:::::::::::::::>､　/　 |　　＜´
　　　　　　　　／　　 　 |　　∨　 ヽ::::::::/　 ∨ 　 |　　　｀ヽ､



　 　 ,.-…━…-ミノ)__
/{／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::､:.:＼
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::ﾄ､}､:.:.:.ヽ._,
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::/　　ヽ:::::く 　 　 　 　 　 　 　 以前から、僕を相棒にすると？
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:rﾐ 　 　 V:}
:.:.:.:.:.:.:.:.:.::|:::.:.:.:.:.:.:.:.､:::} 　-一'　!{　　　　　　　　　　　何故です？僕は飛びぬけて優秀な刑事じゃありません。
:.:.:.:.:.:.:.:.::::{::::.:.:.:.:.:.:.:.::::「 　z=-　}:＼
:.:.:.:.:.:.:.:::::r‐ﾐ::::.::.:.:::::V 　 〈 {ﾘ　{:「｀　　　　　 　 　 　 今回の事件にしたって、発見できたのはほとんど運…みたいなものです。
::､,:v'::::::::i{　〉､:::::::::::::} 　 　 　 　V
:::::::::::::::::八 、)wＮヽﾉ 　　　　 　 ＼　　 　 　 　 　 　 僕の実力ってわけじゃあない。
:::::::::::::::::::::::ヽ. _　　　 　 　 　 　　_ノ
ヽ:::::::::::::::::::/　ﾊ　　　u　　　　　　　　　　　　 　 　 　 銭形さんはどうしてそんな僕をに買ってくれるんですか？
ノイ:::::::::::::( 　 {　　 　 　 　 ´￣ 〉
　 从/'_V¨｀ 　　　　＼　　　　　{
.丿　　　￣　‐ミ 　 　/｀ ｰ-　..ノ
ニ≧‐- 　. 　　　 ｀ ＜ヽ

32： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:25:38 ID:cVUMLNOcSa


　 　 　 　 /　　　　　　　　　　〈
　　　　　/ヽ､　　　　　　　　　 {
　　,. -‐〈: : : :`'''‐--------‐‐'､`ヽ､
‐'´　　　 ヽ､: : : : : : : : : : : : : : : :〉　 ｀`ヽ､
:､　　　　　　｀`ヽ､_: : : : : : _,. ‐ '´　　　　　>
　｀ヽ､_　　　　　　 ￣￣￣　　　　　　__／　　　　　　　　　　　　　　　…俺が以前、ICPOに出向してたって話はうちの連中から聞いてるよな？
　　　 |¨i`ヽ､_　　　　　　　　 _,. -t_''´
-‐‐‐ァ（|::i´{. ` ｡‐--‐‐｡ '´「 |:::|)|＼￣`ー---- ､　　　　　　　　　　 俺も昔はルパン専任捜査官なんて大層な肩書を与えられてな。
--ァ′!､|::! ヽ___ノ|　|ヽ＿ノ　|::|ﾉ 　 ヽ──-- ､__｀ヽ- ､
. /　　　 |::|　　　　|　|　ヽ　　 |::!　　　 ヽ￣￣`ヽ､ ヽﾉ　 ｀ヽ､　　　　 奴の噂を聞くことがあれば、西へ東へ寝る間も惜しんで駆け回ったもんだ。
/　　 　 .|::|　　　 r　　　　　　.|:|　　　　　ヽ　　　　｀7　 　 　 ヽ　　　　　　　　　　　　　
　　　　 ∧}　　　 `ー'　 　 _,ｨ|:|ﾍ　　　　　ﾍ　　　　i　　　　　 i　　　　…しかし、奴が死んでからというもの、そんな熱意もどこかへ吹き飛んで行った。　
　　　　/ | 〉､__,.　-‐‐ 'ﾆ二/.|/| i　　　　　　i　 ヽ　!　　　　　 |　　　　　　
　　 　 {　|（　`ー-　,,＿__ノ /　| |　　　　　　 !　　Y　　　　　　|　　　　日本に戻ってきてからも、胸を占めていたのは虚しいという感情だけ。　　
　　　　|　|/　　 　 ‐- 　 　 }　 .|　!　　　　　　i　　 |　　　　　　|　　　　
　　　　|　|＼＿,,.>､_　　　ノ　　|　|　　　 　／　 　 |　 } 　 　　.|　　　　警察手帳を返して、田舎に引っ込むことも考えていた。　　　
ヽ､.　　|　.!　　　／{ `ーｲ＼　 .|　|　　　／　　　　 | ./　　　　ｲ　　　　　　
　 ＞　|　 |　 ／　 ヽ＿/　　＼|　 !　 <　　　 　 　 |/　　　／ .|　　　　そんな時だ。お前に出会ったのは。
／ 　　|　 |／　　　 / j ヽ　　　　　|　　＼　　　　　|　　／　　 |



　　　　　　　　　７:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.､ ＿_
　　　　　　　　 ,::::::::::::::::::::::＼::::､:::, :::::::::::::::::::::::::::::::::::::∠
　　　　　　 　 /::::::::::::::::::v'｀¨ 　 }ﾉ　｀　}:::,:::::::::::::::::::ｰ‐ ¨　　
　　　　　　　 , イ::::::::::::/　　　　　　　　　　ヾ:::::::::::::::!_
　　　　　 　 　 /:::::::::::i:!　　　　　　　-─一　i/::::|ヽ!¨´　　　　『 かつては意欲に満ち溢れ、入庁してきた前途有望な青年だったのだろう。
　　　　 　 　ｰ=┐::::::::| 　 -‐　　 　 　 ＿_ 　 }:::::i .′
　　　　　　　 　 _〉::::::::i ´　___　　　　　' {::} }i ﾉ'i::::/　　　　　　　 それが突然の左遷。そいつの思い描いていた警察官への道のりは頓挫した。
　　　　　 　 　 ｀¨ ヾ:::::.　ｉ{ {::}　　.　　 　 　　　}'/:､
　　　　　　　 　 　 　 }::､:.、 　 　　i 　 　 　 　 .:::i｀¨　　　　　　　熱意は完全に行き場を失って、意気消沈している。そんな面をしていたよ。
　 　 　 　 　 　 　 　 ´　＼:　　 　 ､　　　　　 :::∧
　　　　　　　　　　　　　　　 ､　 　 　 ＿_　　/ :　　　　　　　　 　ああ、こいつも俺と同じなんだ。俺はそう思った。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　´　‐‐　　 , 　:{ i
　　　　　　　　　　　　　　　 　.ｲ ､ヽ　__ ／　 /　!ﾑ　　　　　　　 俺は自分の境遇をお前に重ねて見ていたんだ 』
　　　　　　　　　　　　　　ｘ≦/|　 } 　 　 　,　' 　 ﾆム　
　　　　　　　　　　　　／ﾆ/'ニ′ ､　　_／　　　 ;ﾆニ|ヽ　　　　　
　　　_　　 -‐　…≦ﾆニ7ﾆﾆ:　 ∧ ､　|〉 　 　 / ﾆニiﾆﾆ＼

33： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:26:24 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　　　　　　‐-:､　_
　　　　　　　　　　 ;-::::::::-ヽ:`-｀:ヽ_
　　　　　　　　;-‐´:::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　_,-‐´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ｧ
　　　　´_,フ::ヽ::::/ヽﾊfヽ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　⌒ｱ:::::｀V　　　　｀ヽ}ヽ:::::::::}:::::::::::::｀;
　　　　　/::::i::::/　 _　　　､_＿ヽ:::::i:::::::::::::::;`
　　　　　{::::ヽ:} ￣｀　　　　　￣ }/l::::}:::::::;｀
　　　　　ﾉｲ:ヽﾄ ,-=､ヽ 　 ｨ＝‐-､ }:ﾉ´}::;゛　　　　　　・・・・・・・。
　　　　　　|::「　i!Ｔij　 | 　 fTir　　'ﾚ　ﾊ::i_　　　
　　　　　　ﾊﾊ　￣ 　,　　　　　　　　‐'::::}
　　　　　　　　 ',　　　､‐,　　　　　　ﾉ;:::::ﾊ
　　　　　　　　　ヽ 　 _ ＿ _ 　　 ／ ｌ/｀'
　　　　　　　　　　ヽ　　　　　 ／　 ﾒ ヽ｀ヽ
　　　　　　　　　..‐''´､ー‐〃 　 .／ 　./:::::::}::＼
　　　　　　..-''~:::/:::::::lヽ　　　／ 　　./::::::::l::::::::::＼
　　　　..‐''~: :::::/:::::::::l　/､ヽ/＼　　/:::::::::::!::::::::::::: .＼
　 　 ｌ´: : :::::::::/:::::::::::{v'　!`゛´i　 ､/::::::::::::::!:::::::::::::::::::: / ､
　 　ｌ　::::::::::::::ヽ_:::::::i　　 `､＿}　/:::::::､- ┘::::::::::::::::::::::::::: ｌ
　　ｌ　::::::::::::::::/:::::::::l　　　 〉　ヽｌ:::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::: ｌ
　 ｌ　:::::::::::::::ヽ:::::::::l　　　;′ 　.l:::::::::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ｌ



　 　 　 　 /　　　　　　　　　　〈
　　　　　/ヽ､　　　　　　　　　 {
　　,. -‐〈: : : :`'''‐--------‐‐'､`ヽ､　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 だが、お前は俺とは違った。
‐'´　　　 ヽ､: : : : : : : : : : : : : : : :〉　 ｀`ヽ､
:､　　　　　　｀`ヽ､_: : : : : : _,. ‐ '´　　　　　>　　　　　　　　 　 　 　 確かに異動してきた頃のお前は無気力で自堕落な面があった。
　｀ヽ､_　　　　　　 ￣￣￣　　　　　　__／
　　　 |¨i`ヽ､_　　　　　　　　 _,. -t_''´　　　　　　　　　　　　　　　　 だが、数か月もするうちにやる気を取り戻し、主に聞き込みや取り調べといった分野でその能力を発揮した。
-‐‐‐ァ（|::i´{. ` ｡‐--‐‐｡ '´「 |:::|)|＼￣`ー---- ､
--ァ′!､|::! ヽ___ノ|　|ヽ＿ノ　|::|ﾉ 　 ヽ──-- ､__｀ヽ- ､　　　　　 被害者だけでなく被疑者に対しても、時間をかけて親身に話を聞くお前のやり方に首をかしげる刑事も多い。
. /　　　 |::|　　　　|　|　ヽ　　 |::!　　　 ヽ￣￣`ヽ､ ヽﾉ　 ｀ヽ､
/　　 　 .|::|　　　 r　　　　　　.|:|　　　　　ヽ　　　　｀7　 　 　 ヽ:　　 だが、その一方で被害者側や加害者側からは慕われる。
　　　　 ∧}　　　 `ー'　 　 _,ｨ|:|ﾍ　　　　　ﾍ　　　　i　　　　　 i
　　　　/ | 〉､__,.　-‐‐ 'ﾆ二/.|/| i　　　　　　i　 ヽ　!　　　　　 |　　　俺たちが扱っているのは生まれつきの悪鬼でもなければ、
　　 　 {　|（　`ー-　,,＿__ノ /　| |　　　　　　 !　　Y　　　　　　|
　　　　|　|/　　 　 ‐- 　 　 }　 .|　!　　　　　　i　　 |　　　　　　|　　　そうなることが最初から決まっていた哀れな子羊でもない。
　　　　|　|＼＿,,.>､_　　　ノ　　|　|　　　 　／　 　 |　 } 　 　　.|
ヽ､.　　|　.!　　　／{ `ーｲ＼　 .|　|　　　／　　　　 | ./　　　　ｲ　　　人間なんだ。俺はお前からそれを教わった。
　 ＞　|　 |　 ／　 ヽ＿/　　＼|　 !　 <　　　 　 　 |/　　　／ .|
／ 　　|　 |／　　　 / j ヽ　　　　　|　　＼　　　　　|　　／　　 |

34： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:27:00 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　　 　 　 {　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　 　 〉　,. --────--ﾍ　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　/ ／: : : : : : : : : : : : : : :}　　　　　　　　 　 　 　　刑事は犯罪者の思考を読み、その行動パターンを予測しなければならない。
　　　　　　　　　　　　|´: : : ,.. --────‐┴- ､
　　　　　　　　　　, -┴‐ '´＿＿＿＿＿＿＿＿＿ﾆ‐ 　 　 　 　 　 　 だが、犯罪者を理解しようとすればするほど、そいつに対して情が湧いてくるもんだ。
　　　　　　　 ,. -ﾆ-┬ '´了彡ﾆ＝ミ　ｲﾆ=ﾐ }　　　／
　　　　　　＜￣　　 |:::::::〈 　 { 　 ・)|　|・　 }./___／　　 　 　 　 　 　 　 そいつが死んだとあれば、自分の半身をもがれたような気持ちになる。
　　　　　　　 ｀ー--.{⌒i:::| 　 `ｰ '　|　|ー ' ∨}
　　　　　 　 　 ,. - ´| （.|:::| 　 　 　 (___)　　 /ﾉ-､　　　 　 　 　 　 　 　 俺はそんな気分を一度味わっただけで、打ちのめされちまった。
　　　　　　　／　　　＼_|::|　　　　　　　　　 |}　　｀ヽ､
　　　　　 ／　　　　　　',:::|　r-＝ﾆ ‐ ､　　 |}　　　　 ＼　　　　 　 　 　 もう、誰も理解したくはない。刑事なんてまっぴらだと、そう思っちまった。
　　　　／　　　　　　　　彡　＼　　　　｀＞〈　　　　　　 ＼
　　 ／　　　　　　　　　　ヽ　　 ￣二￣ 　 <　　　 　 　 　 ＼　 　 　 　 その点、お前は立派だよ。何度傷ついても、人と関わろうとする。
　 ./　　　　　　　　　　　　| ＼　 　 , ､　　 ノ　　　　　　　　　ヽ
　/　　 　 　 　 　 　 　 　 |＼ `ｰ '´　 `ﾄ<　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　何度拒まれても、人を理解しようと努める。
く　　　　　　　　　　　　　 | 　 ￣￣￣￣＼　　　　　　　　　 　 ノ
　＞ ､ 　 　 　 　 　 　 　 |　　 　 ／⌒＼　ヽ　　　　　　 _　‐ ´　　　　　たとえ、それが情報収集という名目の上に立っていたとしてもな、
´　　　｀＞､　　　　　　　∧　　／! : : : : ∧ .∧　　 　 ／｀ヽ､
-‐ '´￣　　 ｀ヽ､　　　 ./　ﾍ／　 ＼: : :/　∨ i　　 ＜⌒`ヽ､ ミヽ　　 　 俺はお前を尊敬するよ。
　　　　　　_　- ´　 　 /　　　　　　 /⌒i　　　 |　　 　 ｀ヽ､　　　　
　__　-‐　´　　　　　 /　　　　　　 /: : : :|　　　|　　　　　　 ｀ヽ　



　　: : : : : : : : : : : ,:.:.:; ' : : : : : :}:::::::/ヽ:::::::::::ﾄ､
　　: : : : : ,　´ ヽ;:::::/ : :|.: .:.:.:.:/彡' - ､_::::::::::.､ヽ
　　: : : : : {　　　{:::ｉ':.:.:.:.}:::::::::/ 　 _ ==､ ヽ ::::::}
　　: : : : : :、　 　､:{::::::∧:∧{　　　ヾ} /}i　_::::ﾄ､
　　: :／:.:, : ヽ　 　i::::/　}′　 　 　 У 　 vヾ
　　:/.:.:./: : .:.ｰ ':　 :::{　 　 　　　　　　　　　＼
　　::::::/:／::::::::;' |　 　 　　　　　　　 　　__　 　ヽ　　　　　…銭形さん。僕は、そんな大層なものじゃありません。
　　:::::{;'::::::::/:/　: 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｀　_ノ
　　:::::;':/¨´ ｉ'　　＼　　　　　　　 ‐　　_　　}　　　　　　　　僕はただ……
　　 }::{.′ i　 　　　　 　 　 　　　　　 　｀Y
　　ノ ､ 　 |　　　　　 　 　_ 　 　 　 　　 .′
　 ﾆﾆ≫ _　､　 　 　 　 　　　　　 　 　　}
　 ﾆﾆﾆﾆﾆ≫ _　　　　　　 　 __｀ 　 　 ノ
　 ﾆ､ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ≫ _　　　 ／
　 二＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ≫　<_
　 ﾆﾆﾆ ｀マﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ/ｧ

35： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:27:31 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　 ,　、
、　　　　　 /..........ｰ・・ミ
|　　　　　 /＿_.................|
γL＿＿/ﾆﾆﾆﾆﾆ=-　ｆ　　　　　　　　　　
ﾉ /｀　-....｀ーﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!　　　　　　 　 　　　別にお前が100％善意でやってるなんて思っちゃいないさ。
.ノ　　　 l:l｀r r-r-、二二ﾆ=-
　　　　 .l:l .じ | じﾘ　l::l´l￣￣　　　　 　　 　だけど、お前に救われた奴は大勢いる。
　　　　 .l:l　ﾉ｜　　 .l::lｦ 、
　　／.....!:! ｀ ´　　_ ,'::l/.....＼　　　　　　 　　俺が刑事に再び価値を見いだせたもな、実を言えばお前のおかげなんだ。
　,.............ﾘ-＜ニン 」::|.............ヽ
,...............ノ　　-　　 , Y..................ヽ　　　　　 　署内にはお前のことを半人前呼ばわりする輩がいるが、
...、.........ゝチ⌒ 〜 ノ｝......................>＿_
.....＼........//　ｨヘ　　｝................／............|　　　そういう奴らに「足立はすげえんだぞ」ってことを俺は教えてやりたいんだ。
――’.../fl んﾆノヽ .｝......-=<―┐.../...|
............../;;' V/ﾆ|　 レ｝;|...................|Ⅳ . .|　 　 だから、足立。このヤマを二人で挙げて、手柄を総取りしてよ。
.............';;;;i　,:'ﾆﾆ　　 ,;;;,....................!/ ......|
...........,;;;;;;|　!ﾆﾆﾆ　 ,:';;;|................../ . ......|　 　 奴らの驚く顔を肴に祝杯でも上げようじゃねえか。
..........V;;;;;! ,ﾆﾆﾆﾆ /;;;;;;................,:'.............|
...........l;;;;;;| |ﾆﾆﾆﾆ’;;;;;;;|............./ ..............|　　　
...........|;;;;;;Vﾆﾆﾆﾆ|;;;;;;;;;|...........,:' . .............|



　　　　　　　　　　　 　(L＿,__
　　　　　　　　　 　 ／::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　　　　〃:::::::::::::::::::::::::::ﾐ:.､
　　　　　 　 　 　 」i:::::::::::::::::::::::::::::::}
　　　　 　 　 　 　 .{:::::::::::::::::::::::/}::ﾊ
　　　　　　 　 　 　 ヾ:::::＿::::::〃 '　}　　　　　銭形さん…
　　　　　　　　 　 　 _Y´_. .ヽ'/_/
　　　　　　　　 　　/三三三ﾆﾕ_　　　　　　　そんな、ぼくのことを…
　　　　　　 　__／ニﾆ/ニニニニ≧=:、
　　　　　 　〃ニニニ{ニニニニﾆ〃ﾆﾑ
　 　 　 　 /:{二二ﾆﾆ|ニニ二二/ニ二ム
　　　　　 .{= ニニニニニニニﾆ{ニニﾆﾆ} 　
　 　 　 　 lﾆﾏニニニニニニニ ニニﾆﾆﾑ_
　 　 　 　 |ニﾏ二ニﾆlニニニニﾆVニニﾆ}ヽ.

36： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:28:01 ID:cVUMLNOcSa


　 　 　 　 /　　　　　　　　　　〈
　　　　　/ヽ､　　　　　　　　　 {
　　,. -‐〈: : : :`'''‐--------‐‐'､`ヽ､
‐'´　　　 ヽ､: : : : : : : : : : : : : : : :〉　 ｀`ヽ､
:､　　　　　　｀`ヽ､_: : : : : : _,. ‐ '´　　　　　>
　｀ヽ､_　　　　　　 ￣￣￣　　　　　　__／
　　　 |¨i`ヽ､_　　　　　　　　 _,. -t_''´　　　　　　　　　　　　　　　　　　…野郎相手に気持ち悪い話をしちまったな。忘れてくれ、足立。
-‐‐‐ァ（|::i´{. ` ｡‐--‐‐｡ '´「 |:::|)|＼￣`ー---- ､
--ァ′!､|::! ヽ___ノ|　|ヽ＿ノ　|::|ﾉ 　 ヽ──-- ､__｀ヽ- ､　　　　　　　ただ、俺がお前を信頼してるってこと、それだけは覚えておいてくれ。
. /　　　 |::|　　　　|　|　ヽ　　 |::!　　　 ヽ￣￣`ヽ､ ヽﾉ　 ｀ヽ､
/　　 　 .|::|　　　 r　　　　　　.|:|　　　　　ヽ　　　　｀7　 　 　 ヽ　　　　さて、当座の目標物はメシアより飯屋だ。腹が減っては何とやらってな。
　　　　 ∧}　　　 `ー'　 　 _,ｨ|:|ﾍ　　　　　ﾍ　　　　i　　　　　 i
　　　　/ | 〉､__,.　-‐‐ 'ﾆ二/.|/| i　　　　　　i　 ヽ　!　　　　　 |　　　　足立、そこの駐車場に車つけてくれ。
　　 　 {　|（　`ー-　,,＿__ノ /　| |　　　　　　 !　　Y　　　　　　|
　　　　|　|/　　 　 ‐- 　 　 }　 .|　!　　　　　　i　　 |　　　　　　|　　　　連中が尾行してきてることも考慮して、残りの距離は徒歩で稼ごう。
　　　　|　|＼＿,,.>､_　　　ノ　　|　|　　　 　／　 　 |　 } 　 　　.|
ヽ､.　　|　.!　　　／{ `ーｲ＼　 .|　|　　　／　　　　 | ./　　　　ｲ
　 ＞　|　 |　 ／　 ヽ＿/　　＼|　 !　 <　　　 　 　 |/　　　／ .|
／ 　　|　 |／　　　 / j ヽ　　　　　|　　＼　　　　　|　　／　　 |

37： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:29:07 ID:cVUMLNOcSa


　 | | :|　 　 |　 _､＜＞''"　　　||_, ‐ ¨　　　　　　　　　 _　-ﾆ⌒.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:___/.:.:.:.:.:.:.:.|
　 | | :|　　_､＜＞''"|| x===ミ''"＿＿　　　 ＿　 -　 ¨.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_　 -=　¨.:.:.:. |.:.:.:.:.: .:.:.|
　 | | :|＜＞|　　　 ／.:.:.:.:.:.:.:. ＼.:.:.:.:.:.￣／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_,.　-=　~.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :.: |.:.:.:.:.:. :.:.|
　 | | :|'" 　 |　-ァﾟ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`､.:.:.:／.:.:.:.:_,.　-= ~.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＿⊥_.:.:.:.:.::..|
　 | |_｣ ‐ ¨　　,:ﾞ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.Ｙ-‐　'"~.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:__ 　 -=ﾆ二二ﾆ=-＼.:.:.::.|
　 | |　　 　 _,,/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:..:.::.:.:.:..:.:_,.　　-=ﾆ二ﾆ=-　T ¨”: : : : : : :: : ::|＼|
　 |-‐　 "~.:.:′.:.:め.:.:し..:や.:.:.:.:.:._｣　 -==ﾆ二ﾆ=-　 "~ : : : : : :.::｜: : : : : :::: :::::: :.::|
　ﾉ_ ﾆ=-.:.:'"|.:.:.:.:.:.:.:.:._,,　　-=ﾆ二二ﾆ=-幵”:.:｜: : : : : : : : : : : : :∧ : : : : : ::: :: :::.:.:|
「.:.:.:.:.: .:.:_　 -=ﾆ二二ﾆ=-'　¨　|| 　 | |　 | |: : :∧: : : : : : : : : : : :/　‘，: : : : ::: : ::: :｜
L-=ﾆ二二l丁|丁￣　　　|_,､　-|| 　 | |＿|_ｌ: :/　‘， : : : : : : : : :｀¨¨¨´ : : :: :::: : : ::.::|
| |─ｒ… ﾆ|｜|｜|￣￣ﾞ|　　　__||￣_| l__　| : :｀¨¨´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::::::: : .:.:|
| |ニi|ｉ 丁丁|｜|｜ 　　:|　|￣.:.:||｜ | |　| |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :: :: : :: : : : :: :.::.:|
| |　|:|ｉ ｜｜|｜|｜　　 :|　|.:.: .: ||｜ | |　| |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :::: : : : : ::: : :: :.:.|
| |　|:|ｉ ｜｜|｜|｜ 　 匚］|.:.: .: ||｜ | |　| |: : : : : : : : : : : : : : : : : :: : :: : : : : : : : : : : |
| |　|:|ｉ ｜｜|｜|└─‐┘_|__.:.:.:||｜ | l￣￣|　 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :|
| |　|:|ｉ ｜｜|｜|　 ./￣l　　 |─||｜ | |:　　｜ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |
| |　|:| |￣￣|｜|　/　 ￣/￣___,||｜ | |.　　｜ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :::::::: :|
| |　|:| |￣￣|｜|:/　 　 /ミ彡~¨||｜ | |＿___|　 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :: |
|_|___,| |二二|｜/＿___/ ≦≧.__||｜ | |　　　　￣￣””¨¨　　　　─￣二⊥￣￣~~ﾞ丁¨¨¨
ﾆ=- |_| 　　 |┴| |¨了|￣|　 |　 ||└Τ ''..┬　弌ｖ　　　　　ｖ%%x　　　　　　￣￣””｜
　　　　斗f七Iて_~ └=ﾆ_｀¨´￣-二_ﾆ=-⊥　＿|￣　ｰ┬丁　'ー┬ｭ ｗ※※v,　　｜
　　　　　　　　　　ﾆ=-　　_~^'' |　　 　 ~"''　ｰ-=二_ﾆ=-∟|___　　 | | |￣　 ¨ﾞ丁:!　 |
　　　　　　　＜::::::::::::::::::::::_　- ⌒ﾆ=-　 _　　　　　　~"'　┬-=ﾆ三ﾆ┴　..,,_　 |_,|　｜
　　　　　　　　　＞-=ﾆ⌒　　　　　　　　⌒ﾆ=-　　_　　　 | 　 　 ~"''　ｰ-=ﾆ王,_ 　｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣二ﾆ=‐　　　__　　　　　　　”^''|
　
＼ｶｶｶｶｯ／
【西暦1999年7月26日[昼]　東京・水道橋　お食事処 めしや】＿

38： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:29:54 ID:cVUMLNOcSa


　　 　 　 　 　 　 ＿＿＿＿
　　　　　 　 　 ／ 　　 　 　 ＼
　　　　　　　／　⌒　　⌒ 　　＼　　　　 　いらっしゃいませー
　　　　　 ／　（⌒）　 （⌒）　 　 ＼
　　 　 　 | 　 '" （__人__） "'　 　 　|　　　　二名様ですかお？
　　　　　 ＼　　　｀ー ´　　　　 ／
　　　　　　／ ゝ　　 　 　 　 ィ'ヽ　　　　　 今、テーブル席片づけますんでこちらをお使いくださいお。
　　　　 ／ 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　 /　　 ｨ　　　　　　　　　 r 　 ＼
　　　 | 　 `||　＿＿＿＿ 　＿|＿＿_ヽ
　　　 /⌒ヾ＿＼＿＿／＿＼＿＿／ｒ－、
　　　　　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣



　　　　　　　 ,　、
、　　　　　 /..........ｰ・・ミ
|　　　　　 /＿_.................|
γL＿＿/ﾆﾆﾆﾆﾆ=-　ｆ
ﾉ /｀　-....｀ーﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!
.ノ　　　 l:l｀r r-r-、二二ﾆ=-　　　　　　　　いや、すまないが奥の個室を使わせて欲しいんだ。
　　　　 .l:l .じ | じﾘ　l::l´l￣￣
　　　　 .l:l　ﾉ｜　　 .l::lｦ 、　　　　　　　　　 空いてるかな？
　　／.....!:! ｀ ´　　_ ,'::l/.....＼
　,.............ﾘ-＜ニン 」::|.............ヽ
,...............ノ　　-　　 , Y..................ヽ
...、.........ゝチ⌒ 〜 ノ｝......................>＿_
.....＼........//　ｨヘ　　｝................／............|
――’.../fl んﾆノヽ .｝......-=<―┐.../...|
............../;;' V/ﾆ|　 レ｝;|...................|Ⅳ . .|
.............';;;;i　,:'ﾆﾆ　　 ,;;;,....................!/ ......|
...........,;;;;;;|　!ﾆﾆﾆ　 ,:';;;|................../ . ......|

39： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:30:26 ID:cVUMLNOcSa


　 　 　　　＿＿＿_
　 　　　／_ノ　 ヽ、＼　　　　　　　　　　　　えっと…　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　／（ ●） 　（●）.＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 _人_人_人_人_人_人_人人人人_
　 ／　　　（__人__）　　u. ＼　　　　　　　　　すみませんが、奥の個室は夜間御利用頂くお客様に限_）　　　　　　　　　　 　　　　　 （_
　 |ｎi 7　　 ｀ ⌒´　　　　.　|ｎ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_）　あら、　　　　　　　　　　　 （_
l^l | | ｌ ,/)　　　　　　U 　l^l.| | /）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_）　　刑事さんじゃないの！　（
', U ! ﾚ' /　　　　　　.　.　| U ﾚ'/／)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _）　　　　　　　　　　　　　　　　 （
{　　　 〈　　　　　　　　　ﾉ　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y
..i,　　 　."⊃　　　　ｒニ 　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　."'""⌒´　　　　　　　`''""''''　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　



　　　　　　　　　　　　　　　-‐………‐-ミ
　　　　　　　 　　 ､丶`　　　　　　　 　 ＼_）｀`丶、
　　　　　　　　／　　　　 　 ／　　＿＿　 ⌒＼　 ＼
　　　 　 　 ／　 　 　 　 ／　 ／.::::w）.:::ヽ　 　 ヽ
　　　　　 　 　 /　 　 ／　 ／'"⌒｀｀｀¨¨ミ､
　　　　 /　　 /　　　 　 ／　　　　　　　　 ミ､
　　　　　 　 /　　　　／　-――-　　　　　ミ､　 |　　　 　 　 　 　 久しぶりじゃない！今日はどうしたの？
　　　　　　　　　　/,　　　 ＿＿　　　　　　 ミ､ 八
　　　 ｉ　　　　　 //　 　 〃Jハ''㍉　　　　ﾉ⌒ヽ　＼　 　 　 　 　 この辺りに来る用事でも…
　　　 |　 |　 　 xミ　　　　 ∨ツ　　　　　〃}　 } }＼
　　　 |　 |　　 /:似　　　　 ¨¨´　　　　　' γ,ノ ﾉ　　　　　　　　　 …もしかして、この間の事件の調査って感じ？
　　　 |　 | 　　 r ' 　 　　　　　　　　　　{　У／
　　　 |　 |　　 ハ　　　　　　　　　　　　　　８､　 ＼　　　　　　　　　
　　　 |　八　　 八　 ､　　 ノ　　　　　　 .:::台 ＼ _ ／
　　　 |　ｉ 　､　　　 ､　　　　　　　　　..:::::::::○　∨⌒
　　　 |　|　　＼　 　 ＼　　　　　.....:::::::　　　 　 |
　 　 人　､＿___＼ ＼:个　―＝　　　　　　　　 |＼
　　　　 ｀¨¨¨¨¨¨¨⌒＞―{ ノ 八　　　　　　　　ト　＼
　　　　　　　　　　　/　　／／ ノ ＼＿＿　 -= ノ―
　　　　　　　　　 ／　　（⌒ ７´-=ﾆ二二二／￣
　　　　　　　　 く　　　ノ⌒ン　　　　　　 ／
　　　　　　　　／＼ （⌒ン/{　　　＿___/　 　 　 ＿＿
　　　　　　 ／ 　　/⌒ン人__＿　 -= 〈_　-= ¨
　　　 　 ／　__/⌒＞'.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{/

40： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:31:03 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　　 　 　 {　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　 　 〉　,. --────--ﾍ
　　　　　　　　　　　　/ ／: : : : : : : : : : : : : : :}
　　　　　　　　　　　　|´: : : ,.. --────‐┴- ､
　　　　　　　　　　, -┴‐ '´＿＿＿＿＿＿＿＿＿ﾆ‐
　　　　　　　 ,. -ﾆ-┬ '´了彡ﾆ＝ミ　ｲﾆ=ﾐ }　　　／
　　　　　　＜￣　　 |:::::::〈 　 { 　 ・)|　|・　 }./___／　　 　 　 　 　 やぁ、ご無沙汰してます、奥さん。
　　　　　　　 ｀ー--.{⌒i:::| 　 `ｰ '　|　|ー ' ∨}
　　　　　 　 　 ,. - ´| （.|:::| 　 　 　 (___)　　 /ﾉ-､　　　　　　　　　…まぁ、そんなところです。
　　　　　　　／　　　＼_|::|　　　　　　　　　 |}　　｀ヽ､
　　　　　 ／　　　　　　',:::|　r-＝ﾆ ‐ ､　　 |}　　　　 ＼　　　　　 すみませんが、奥の個室を使わせてもらえませんかな。
　　　　／　　　　　　　　彡　＼　　　　｀＞〈　　　　　　 ＼
　　 ／　　　　　　　　　　ヽ　　 ￣二￣ 　 <　　　 　 　 　 ＼
　 ./　　　　　　　　　　　　| ＼　 　 , ､　　 ノ　　　　　　　　　ヽ
　/　　 　 　 　 　 　 　 　 |＼ `ｰ '´　 `ﾄ<　　　　　　　　　　　 ヽ
く　　　　　　　　　　　　　 | 　 ￣￣￣￣＼　　　　　　　　　 　 ノ
　＞ ､ 　 　 　 　 　 　 　 |　　 　 ／⌒＼　ヽ　　　　　　 _　‐ ´
´　　　｀＞､　　　　　　　∧　　／! : : : : ∧ .∧　　 　 ／｀ヽ､
-‐ '´￣　　 ｀ヽ､　　　 ./　ﾍ／　 ＼: : :/　∨ i　　 ＜⌒`ヽ､ ミヽ--､　　　　　　　　　　　　
　　　　　　_　- ´　 　 /　　　　　　 /⌒i　　　 |　　 　 ｀ヽ､　　　　　　ヽ
　__　-‐　´　　　　　 /　　　　　　 /: : : :|　　　|　　　　　　 ｀ヽ　　　　　ヽ



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 ､丶´￣　＞--ミ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　. : : :__／　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／　　　､:〈　　　 　　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／"⌒､　　 ＼　　 　 　 ヽ
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /　　/　/　　 　　＼ 　　＼　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　/　/　　 　 ／￣＼￣　＼　 ＼　　　　　　 　あら、また捜査会議でも開くの？
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /　　/　/　 　　　　 斗ャﾐ＼　　 ＼　　｜
　　　　　　　　　 　 　　 　 　 　 /　/'⌒ 　　　　　J/ﾘ 〉| ＼ｒ― ＼　|　　　　　　こんな汚いところでよければどうぞ、どうぞ。
　　　　　　　　　　　　　　　ｉ 　 　 /{ xfか　 　 　 ｀¨´　 |　{ {） } }: : V
　　　　　　　　　　　　　　　|　　 ,　八 Jリ　 }　　 　 　 八　V //: : : |　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　| 　 　　∧ ¨´　　ヽ　 ＿　 　 ＼ ○ : : : |
　　　　　　　　　　　　　　 八 　 　 : ∧　　　く 　　　}　　　　＼ : : : 八　　　　　　やる夫ー！
　　　　　　　　　　　　　　　　 ､　　 : :込 　 　 ＼_ ,ノ　 ／　 |: : :.／
　　　　　　　　　　　　 　 ／⌒ ＼　: ○:｀ﾆ=-. 　 　_／　　　| ／　　　　　　　　　ちょっと三丁目の紺野さんのお宅まで出前行ってきてー！
　　　　　　　　　　ノ⌒ /　 ⌒　＼＼: : : : ＼: : : :}　_　　-‐―┐
　　　　　　 ／⌒＼＿人　-――-＼＼: : : : :_: r二=-‐￢／￣ ＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿/＼／＼/＼／|＿
　 　 ＿　/ 　-―- ＼＿＼　　　 ／ ｀¨¨ ／/／⌒)　 ／　-―-　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　　 　　　　　　　／
／ /⌒Ｖ／　　　　 ／　　｀¨¨¨´　　__ ／ レ'　 ／/／　／⌒ヽ　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　＜　　了解だお　 ＞
　ノ　　 (　＿＿ ／　　　　　　　 ／／__／__／　ノ　 ／ 　 　 　 ＼ |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　／　 　　　　　　　　＼
　　　/／　　　　　　　　　 　 _ノ＞'. : : '": : .::::∨ /　　　　　　　　　｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　￣|／＼/＼/＼/￣
乂 ／　　　　　　　　　　　／.: :: :: ,: .:::::::::::::::::::::∨　　　　 　 　 　 |　|
/　　　　　　　　　　　　　 {.::: .: ::./.::::::::::::::::::::::::::::{　 　 　 ／ 　 　 |,ノ
　　　　　　　　　　　 　 　 }.::::::::::{.::::::::::::::::::::::::::::::|＿___／　　　　 /

41： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:31:45 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　　　　　／　　｀ー＜＿　　　　}
　　　　　　　　　　　<　　　　　　　　　　　　〈
　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　├─--- ､_
　　　　　　　　　　　 　 〉　　＿＿＿＿＿＿ハ　　　　 /
　　　　　　　　　　　　「￣￣ : : : : : : : : : : : ／　　　　/
　　　　　　　　 　　／|: : : : : : : : : : : : :＿／　　　　／
　　　　　　　　　／　 |,. --──　'´￣　　　 __,. -‐′ ＼
　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　 _,,. ｧ'´ヽﾄ､　　　　＼
　　　　　　∠＿＿,.　ｨ‐t‐┬‐ｧ─‐ヽ´:|　{　．} !ﾉ　　 　 　 ＼　　　　　　　　　　　　　　 ……？
　　　　　　　　／　　/ r-|: :}　{　　　・} :|　ﾄ- ′}　　　　　　　 ＼　　　　　　
　　　　　　 ／　　　 {　!（.|: :|　 ゝ‐‐ ′:!　|　　 |　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　奥さん、彼は新しく雇った従業員の方か何かで？
　　　　　 /　　　　　 ＼ヽ|: :|　 　 　 　 ｨ ´ ) 　 |　　　　　　　　　 ヽ
.　　　　 /　　　　　　　 ヽ_ﾍ:ヽ　 　 　 　 ￣　　 |　　　　　　　　　　ヽ
　　　　/　　　　　　　　 　 ﾊ: {　 　 　 　 __,.　ィ　〉　　　　　　　　　　ヽ
　　　 /　　 　 　 　 　 　 /　ヽ|i　　／￣‐　￣　ゝ　　　　　　　　　　 ﾍ
　 　 /　　　　　　　　　　|　　 ＼ 　ｰ'´　／　　 _ノ　　　　　　　　　　　ヽ─-､＿
/￣７　　　　　　　　　　 |　 　 　｀ヽ　　　 ／￣ ﾊ　　　　　　　　　　　　iﾆ=-
／'7　　　　　　　　　　　|　　　　 　 >‐ヤ′　　 | }　　　　　　　　　　　　|
　└‐‐----　,＿　　 　 ﾄ､　　　 ／::::::::ヽ　　　/ .|　　　　__,.　-─　'´￣
　　　　　　　　　 ＞　　 |　ヽ　 ハ:::::::::::::::>､　/　 |　　＜´
　　　　　　　　／　　 　 |　　∨　 ヽ::::::::/　 ∨ 　 |　　　｀ヽ､



　　　　　　　,.　 ´￣ ｀v ─- ､_
　　 　 　 ／ // ⌒ヽ/-‐-　　　ヽ
　 　 　 / / /ム三i}/ﾆ三｀ヽ＼ ､ ヽ
.　　　 /ｌ l //三ミ ┴- ﾆ ｀ヽ＼　ヽ l
　　　//| l /l'´　　　　　　 ヽ ヽ_ヽ　l l
　　 〃l.| |ｌ l　　　 ｰ ''' ￣　 VKﾐiヽ l l
　　 ll /l| l　l／　　　 ｫ迄ﾗ　 Vﾉﾉｌ | l l　　　　　　　　　　　　　やだわ、刑事さん。
　　 V/l| l　ｌ ,ｨ戉　　　 ,,,,　　,l´/lV / ﾊ
　　　 l､| |　|ﾊ ゞ′、　　 　 /:: Vlﾊ ノ 〉〉　　　　　　　　　　　 あれはやる夫ですよ、うちの息子。
　 　 　 |l l　l　ヽ''''　<フ 　 /:::　 ﾙヽ_彡′
　 　 　 |ヽl l　 |､l｀ 7ｧ - イ:::: ／,...-┴‐‐-.､　　　　　　　　　　もう長いこと顔合わせてないから、分からなかったでしょ。
　　　　 ヽ |ﾊ　ヽl │ﾉ ノ/ 〉' ／,.... -─-､:.:.:＼
　　　　　　T 7ヽﾉノ-< /ﾑ{〉':／:.: _＿_ :.:.:.ヽ:.:.:.ヽ　　　　　 　　やる夫ももう十七歳よ、あたしも年取るわけよね。
　　　 　 　 ヽﾊ_V/ ﾊ 7´/／:.:.／:.:.:.:.:.:.｀ヽ:.:l:.:.:.:.:ヽ
　　　　　　　　{　l /ノ,ｨ/:/:,.-" '´ ￣ ｀ヽ:.:.:.:.!:.:.:.:.l:ヽ　　
　　　　　　　　 Y く／:lﾟ／／　　　　　　　ヽ:.|:.l:.:.:.l:.:ヽ
　　　　　　　　　7:::::::::ｌ::V　　　　　　／　　 l:.:.:l:.:.:.l:.:.:
　　　　　　　　 /:::::::::::ﾄ/　　　　 　 ′　　　!:l:.:l:.:.:.l:.:.:
　　　　　 　 　 ｌ::::::::::: / 　 　 　 , ′/　　　l:.ｌ:.:ｌ:.:.:.lY´
　　　　　 　 　 ヽ:::::: /　　 　 ／::｀.く=--- l:.l:.:.l:.:.|:l:.l
　　　　　　 　 　 ヽ: ′ 　 , ':::::: -=ﾆ二:::: ｌ:.:ｌ:.ﾉ:.:.|:.l:ヽ
　　　　　　　　 　 /　　　/::￣∠7:::::::::::::: l:.:.:l:.:.:.:.|:.:l:.:
.　　　　　　　 　 /　　　/弋´ :::::::::::::::::::::: l:.:.:.ｌ､_:.:|:/､
　　　　　　　　 /　　　/　　 ＼:::-===ﾆ彡:ヽ-─ ^:::l

42： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:32:21 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　 _／: : : : ＼　　　　　　　｀`ヽ､
　　　　　　　　!､　　　　　　　　　　　　　_ -‐'´: : : : : : : : ヽ　　　　　　　 ／
　　　　　　　　　｀Z　　　　　　　　　__／: : : : : : : : : : _ -‐'´　　　　　 ／
　　　　　　　　　 __＞i　　　　　 _／: : : : : : : : : _ -‐'´　　　　　　 _／￣￣｀
　　　　　　　　／　　「｀`ー‐‐'´: : : : : : : : : __／　　　　　　　 _,イ
　　　　　　 ／　　 　 |: : : : : : : : : : : : : :_／　　　　　　_ -‐､'´:::::ヽ　　　　／
　 　 　 　 / 　 　 　 ､|_: : : : : : : : _ -‐'´　　　　　　_／{　　 ヽ::::::::} 　　／
　　　　　/　　　　　　　￣￣￣￣　　　　　　 _ -イ::::::::| i⌒　}:::::::| _／
　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　,. -‐i´:::::::ヾ::::::i |｀ヽ　i::_／
　　／　　　　　　　　　　　　　　 ,. -‐・´　　ﾉ::::　　 ∨:::| !_ -‐'´　　　　　　　　　　　(やる夫くんだと…？そんな馬鹿な…
　　￣￣｀ヽ､＿＿＿__,. ┬､‐1´ i:::｀ー‐‐'´　　　 　i::／
　　　　 ／￣　　　　　　　i:::`´ヽ. l　｀`ヽ､　　　　_／¨　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それに彼の姿はやる夫くんとはあまりに…)
　　　／　　　　　　　　　　ヽ::::丿　　ヽ　　_,. -‐'´
　 ／　　　　　　　　　　　　 ヽゝ､＿_ノ　　｀`ヽ､　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　γ´´´￣￣￣￣￣￣ヽ
／　　　　　　　　　　　　　　　i　　　　　　　　　 ｀ヽ､　　　　　　　 ／　 i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　{　　　刑事さん？　　 }
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 >　＿ 　 　 ＿,.,＿_　ヽ､　　　　 ／　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 ゝ､＿＿＿＿＿＿＿人
　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼＼ ￣￣　　　　 ｀ヽ　}　　　/　　　/
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ( 　 `ー──----‐'´ .|　　 /　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,>　　::::::::::::　　　　　　|　　/　　　/



　　　　　　　　　　　　　＿ ､丶´￣ ヽ
　　　　　　　　　　 ／　／　　　 : : : : }-――-ミ
　　　　　　　 　 ／　／　　　　/: : : : :}＿___　 　 ＼
　　　　　　　　∥　　 '　 　　 /''"¨¨⌒¨¨ ヽ　/'　　 ＼
　　　　　　　　{{ /　/　　　/ |　　　　　　　　〈　 /　　　ヽ
　　　　　　　　∨　　　　 / i |　 　／￣￣ 　 ∨ /　 ＼
　　　　　　　　,　　　 　 /＿ |　　 　 斗＝ミ､　∨
　　　　　　　　　　　　　 x=ミ　　　　　Ｊ/ ﾊ ⌒　v'⌒ヽ　:|
　　　 　 　 　 |　 　 　 Y　ﾉハ　　　　∨rク　　　 〈⌒ i: : |　　　　　　　　　　どうしたの？
　　　 　 　 　 |　　 　 从　Vンr'　　 　 　　　 　 　 'ノ,人: |
　　　　　　　 八　　 /: : ゝ　　　 　 　 　 　 　 　 /i〉´|: : ,　　　　　　　　　　 急に黙っちゃって。
　 　 　 　 　 {　　､　: : :.ﾊ　　 　 r ､　 　　　　　ｲ○:人 /
　　 　 　 　 人　　＼: : :込　　　　　　　　　／/: : : : :／　　　　　　　　　　　 …何か、うちのやる夫が何か気に障ることでもした？
　　　　　 　 　 ｀¨¨¨¨＼: :个　　　__,,..　　　　,: : : :／
　　　　　　　　　　 　　/⌒メ　 ⌒７'￣￣￣ V¨¨´　＿＿
　　　　　　 　　 ＿＿人／　 ）　ノ¨¨¨¨¨¨¨¨ ＞'"　　 　　｀丶、
　　　　　　　／　　 （／ ｀¨¨¨厂　_　　-‐＜
　　　　　　/　　 「￣―‐r―彡　　　　 /　　)　　 　 　　　 　 　 |
　　　　 　 {　 ／⌒＞-彡ノ 　　　　　 {　　　　　　　／　　　 　 |
　　　　　／⌒ヽ／　　/　　／　　 　 ノ　　　　　 ／　　　　　　 |

43： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:32:48 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　 ,　、
、　　　　　 /..........ｰ・・ミ
|　　　　　 /＿_.................|
γL＿＿/ﾆﾆﾆﾆﾆ=-　ｆ
ﾉ /｀　-....｀ーﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!
.ノ　　　 l:l｀r r-r-、二二ﾆ=-
　　　　 .l:l .じ | じﾘ　l::l´l￣￣　　　　　　　　　　　　…いや、失礼。
　　　　 .l:l　ﾉ｜　u .l::lｦ 、
　　／.....!:! ｀ ´　　_ ,'::l/.....＼　　　　　　　　　　　　 少し、昔のことを思い出していました。
　,.............ﾘ-＜ニン 」::|.............ヽ
,...............ノ　　-　　 , Y..................ヽ　　　　　　　　　　 そうですか、あのやる夫くんが高校生に。
...、.........ゝチ⌒ 〜 ノ｝......................>＿_
.....＼........//　ｨヘ　　｝................／............|　　　　　　　本当に時間がたつのは早いものですな。
――’.../fl んﾆノヽ .｝......-=<―┐.../...|
............../;;' V/ﾆ|　 レ｝;|...................|Ⅳ . .|
.............';;;;i　,:'ﾆﾆ　　 ,;;;,....................!/ ......|
...........,;;;;;;|　!ﾆﾆﾆ　 ,:';;;|................../ . ......|
..........V;;;;;! ,ﾆﾆﾆﾆ /;;;;;;................,:'.............|
...........l;;;;;;| |ﾆﾆﾆﾆ’;;;;;;;|............./ ..............|
...........|;;;;;;Vﾆﾆﾆﾆ|;;;;;;;;;|...........,:' . .............|



　　　　　　　　　　　　　　　-‐………‐-ミ
　　　　　　　 　　 ､丶`　　　　　　　 　 ＼_）｀`丶、
　　　　　　　　／　　　　 　 ／　　＿＿　 ⌒＼　 ＼
　　　 　 　 ／　 　 　 　 ／　 ／.::::w）.:::ヽ　 　 ヽ
　　　　　 　 　 /　 　 ／　 ／'"⌒｀｀｀¨¨ミ､
　　　　 /　　 /　　　 　 ／　　　　　　　　 ミ､
　　　　　 　 /　　　　／　-――-　　　　　ミ､　 |
　　　　　　　　　　/,　　　 ＿＿　　　　　　 ミ､ 八
　　　 ｉ　　　　　 //　 　 〃Jハ''㍉　　　　ﾉ⌒ヽ　＼　　　　　ウフフ。本当にね。
　　　 |　 |　 　 xミ　　　　 ∨ツ　　　　　〃}　 } }＼
　　　 |　 |　　 /:似　　　　 ¨¨´　　　　　' γ,ノ ﾉ　　　　　　　年を取ると身体にガタがきて、昔のようにはいかなくなるのだけれど、
　　　 |　 | 　　 r ' 　 　　　　　　　　　　{　У／
　　　 |　 |　　 ハ　　　　　　　　　　　　　　８､　 ＼　　　　　　あの子が色々と手伝ってくれるから…
　　　 |　八　　 八　 ､　　 ノ　　　　　　 .:::台 ＼ _ ／
　　　 |　ｉ 　､　　　 ､　　　　　　　　　..:::::::::○　∨⌒　　　　　 私も旦那も、なんとかやっていけるわ。
　　　 |　|　　＼　 　 ＼　　　　　.....:::::::　　　 　 |
　 　 人　､＿___＼ ＼:个　―＝　　　　　　　　 |＼　　　　　　それじゃあ、奥の個室で待ってて。すぐ、お冷もって注文聞きに伺うから。
　　　　 ｀¨¨¨¨¨¨¨⌒＞―{ ノ 八　　　　　　　　ト　＼
　　　　　　　　　　　/　　／／ ノ ＼＿＿　 -= ノ―
　　　　　　　　　 ／　　（⌒ ７´-=ﾆ二二二／￣
　　　　　　　　 く　　　ノ⌒ン　　　　　　 ／
　　　　　　　　／＼ （⌒ン/{　　　＿___/　 　 　 ＿＿
　　　　　　 ／ 　　/⌒ン人__＿　 -= 〈_　-= ¨
　　　 　 ／　__/⌒＞'.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{/

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　　　　　　　　　　　　＿＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ´　　　　　　　　　　 ｀丶、
　　　　　　　　　´　　　　　　 ｀'マ¨¨¨¨¨¨二二二二二¨¨¨¨¨¨¨¨¨ア´　　　_____　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　／ ＿＿爻爻爻爻爻＼　　 /　　　　　　　 ＼　　　　　　　　‐‐／￣￣｀`'＜ノ＼
　　　　　/　　〉.:.:.:.:.:.:.:V/爻-─-ミﾍ　 ′ ｡О∵Ｏ◯。　　　 ./　　　 ‐‐‐{.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀'くノ＼　　　　　:,
　　　　　|　　〉へ、.:.:.:.√｜　　 ／Y|　|　 0◯ｏ○ﾟ-℃　｜　,′　　‐‐ｧ'´: : :.:.:.:.:::::::::::::::::.:.:＼ノ＼　　　　′
　　　　　i　 〈.:.:.:.:.:＼.:.|　_｣　 　 {＿}； .|　 し○ﾆ。оのo｜　|　　　‐‐{::::::::.:.:.:.:.:.:.:＼.:.:.:.::::::::::::＼ノ:,
　　　　 ハ　 ＼.:.:.:.:.:.:>'´,.-＼　 〉　/　|　 ○o‐０○ ‰ﾟ　|　｜　　　ノ:Y;:;:::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼.:.:.:.:、:::::∨(　　　　|
　　　　|　∧　　｀"ア´　 {､　 j／　/　　:.　　⌒""⌒´ 　 / 　 |　　　に;:;{ﾐ;:;:::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:)ｈ.:.:.∨( 　 　 |
　　　　|　　 ＼　　{＿＿_〉￣　 ／　　　｀¨ﾟア¨¨¨¨¨¨'㍉　　　,　　　Y⌒ﾏi:i:ﾐ;ﾐ;､、.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＾'.:.:.::::∨
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　　　　|　　　　　　　　 /　 ノ° 　 Ｏ　　 　 Ｏ　。　∨/:;.:,:;.:, : :＼／: : : :.::.:.:.　　　　　　　　　　　　　　 |
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　　　　　＼　　　　 　 |　し'°　　 　 Ｏ　。o　　_∂ ∧‘,:;.:,:;.:,: : : : : : :::::::::::::/　 ,　　　　　　　　　　／
　　　　　　 ＼　　　　　　 〈　　:.　　　。...:　　　 ﾝ　./ ∧ ヽ;:;:::::::::::::::::.:.:.:.: ／　 /　　　　　　　　 .／
　　　　　　　　＼＿　　 ＼ )°　(. . : '⌒　　 。ﾟ ／　　 ＼ 丶､: : :::;::;::,．'゜　／　　　　　 　＿／
　　　　　　　　　　　￣￣　｀　　。'⌒　o　｡oﾟ　'ﾞ一一一一＞｡,｀"""´＿　　 ￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　￣￣￣　　　　　　　　　　　　￣￣



　　　　　　　　　-=彡:::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　/::::::::::/ﾊﾘﾙ＼:::::::::::ミ=-
　　　　　　 　 　 ,i':::::::,i'　　　　 　 ヽ:::::::::i}
　　　　　　　　 ,i'::::::::ﾐ-　　　　ー--}:::::::::i}　　　 いやぁ、こいつは美味そうだぁ。
　　　　　　　　　'i::::::{／　ヽ　 r=＝xﾚ::::l::/
　　　　　　　　　/:::ril r=-　　 　 　 ｿ/):/　　　　毎食、カップ麺かコンビニ弁当の寂しい身の上じゃ、
　　　　　　　　　　ヽﾍ　　　 i　　　　 i:iN
　 　 　 　 　 　 　 　 ﾊ　　、　　ﾌ　/ィ　　　　　 この家庭的なラインナップは見ただけで涙が出ますねぇ。
　　　　　　　　　　　　 ＞　　　　／i
　　　　　　　　　　　　　　　i　¨　 ／l
　　　　　　　　　＿ 　-=/ﾆl｀"'x'"　/ﾍ＝=-　 ＿
　　 　 　 　 /ﾆiニﾆﾆﾆ/ニi　/=ﾍ /二」二二二,i'二i

45： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:33:50 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ｨﾍ／
　　　　　　　　　　　　 ｀__ ノ　　　　　　　 ,'　　　　　　　 　 　　／ .）／
.　 _＿＿＿＿＿＿　　　　 ユ.　　　　 　 (:'　　　　 　 　 　 ／イ)／
.／∨======＝＝.∧　　 　　ツ.　　 ',　　)）　　　　　　　ｨヾヽ／
ﾏ:::::∨.＼／＼／＼∧　 　 　 ｰ┼”..}　 /(　　　　　　　 弋,イ
.ﾏ:::::∨／＼／＼／ ∧　　 　 ノ | ヽ し': :ヽ
..ﾏ::::::∨__／＼／＼　∧　　　　（(,ｲ: :　　:: :V）　　 　 　 　 　 ／¨⌒｀ヽ
　ﾏ::::::∨ ＼／＼／＼∧　　　 ､ゝ: :　　　: :(ﾉ}　　　　　　　Y′　　　　|
.　ﾏ:::::::∨／＼／＼／ ∧ 　　　ヽ: :: :　 : :: :/　　　　　 　 /　　　　　 /
.　 ﾏ:::::::∨__／.＼／＼ .∧　　　　ゝ;:; :;从;ノ　　　　　　.／　　 　 　 /
.　　ﾏ:::::::∨ .＼／＼／ヽ∧　　┌───────i／ヽ_　 　 　 ./
　　 .ﾏ:::::::∨.／＼／====∧.二二ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ|　　 ｰ-─ ／
.　　　ﾏ:::::::∨＝＝ヽ:::::::::::| |＼／＼／＼／＼／|三|　　　　　 /
　　　 ｀￣￣　　　　）::::::::::| |／＼／＼／＼／＼|三|.　　　　 /
　　　　ソ´⌒￣￣￣へ──'ﾆt‐‐ .／＼／＼／|三|　　　　 .|
　　　 /　　　　　　　〃　　　　 l￣ヽ ヽ／＼／＼￣ﾘ　　　　 .|
　　　 |　　　　 　　　 ゝ　　　　.|　　|　 ）　／＼／＼|　　　　　|



　　　　　　　　 ;,
　　　　　　　　.,;'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　.::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 γ´￣￣￣￣￣｀ヽ
　　　　　　,,;;　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　　　フーッ…　　　|
　　　　　,,;:,:;;:;、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 乂＿＿＿＿＿＿_ ﾉ
　　　　　＼　　＼　 　　　　　　　　　　　　　　　　　＿,,-ー-ーー-ー-ー-ー
　　　　　　 ＼:.:... ＼　　　　　　　 　 _,, _,,-ー''""~
　　　　　　　　＼:.:... ＼　　　_,,-ー''',ｰ''　　　　　　'"~~`　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　 　＼.:.::. ＼／ 　,,-''"　　　_,,-''
　　　　　　　　　　　＼.:.:.. ＼／　　 ,,-''"　　　　　　　,　　...........
　　　　　　　　　　　／＼.:.::....>、／　　　　　　　_,,-ー '''"}::::::::::::::::::.............
　　　　　　　　　　/　　／＼;;;;;ノ　　　　 .::ヽ,,-''":.:.:..::.:.:.:..};;:::::::::::.......　　　　　　　　ノ
　　　　　　　　　/　／::... 　／.::　　　.:::::／ー-,,＿.::..:.::..:.}ノ　　　　　 .::::::_,,-'ー-''
　　　　　　　　　／:::...　／　　　　　.::／. . : : : 　　 ~"' 'ノ　　　　 ..::::::,,-'.::::
　　　　　　　／　ゝ　／ヽ 　 　 ,,_ ／. . : : : : 　　　　 ／　　　　ヽ.::::/...::::::
　　　　　　 /　 ノ　/ 　 ノ 　　..:ノ.: : : : :　　　 　　／::.　　 　 　..::/.::::::
　　　　　　（"-'　 （ー''"　　.:／.:::　　　 　　　　／,,r、　　 　..:.／.:::::::::
　　　　　　　"''ー 　"''ー-''~...:::　　　 　　 　 　{ .（　 `ヽ .:.:／.::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　　　　 　　 ヽ .ヽ､_,,ノ.....:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 　 　 　 　 `''ー''

46： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:34:19 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　　　　　／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀:く
　　　　　　　 　　ｰ=彡.:.:／.:／}／}ノ＼:.:.:.:.:ヽ
　　　　　　　　 ｀¨７.:.:.:./:/:/_＿　 　 　 ヽﾉ.:.:.i
　　　　　　　　　　ﾊr=ﾐ.:.|.:{　__　｀　　＿　}:.:.:.|
　　　 　 　 　 　 　 i| ni.:.i.:ﾄ7_ハ　 　 __　｀X:.:ﾄ､
　　　　　　　 　 　 　ゝ-Vv　　　 　ｌ ｲ_ﾊノ.:.:/　　　　　　…本当に美味そうに煙草を吸いますよね。
　　　　　　　　 　　　从{　　　　　　,　　彡イﾊ
　　　　　　　　　　　,ﾉｲ 　､ ＼ 　__,　 , ′　　　　　　　　銭形さんは。
　　　　　　　　　　　_{ﾉ 　　＼　　　／
　　　　　　 　 　 ／八 ＼　 　｀¨〈、　　　　　　　　　　　 中々、青少年には見せがたい光景だなあ。
　 　 　 　 　 -=ﾆ}ニ厶　 ＼　　ノ　ﾐ:､
　 　 xz=≦ニﾆﾆ|ニ=- ＼　/ヽ_∧ |二=-
　 〃三ヽニニニ|ニニ= 　 ハ::::::::} -=ﾆニニニヽ
　 {ニニニﾏニニニニニ　 　　V::」　-=ニ二ニ=-
　 .}ニニニ=二ニニニﾆ=-　　　ｌ:::::.　-=二二二=
　　-=二二ニ ﾆ7ニニﾆ=- 　　 |:::::::.　-=ﾆﾆニニ
　　 |ニニニニV＼二ニﾆ=-　　|::::::::::.　-=ﾆニ二
　　 l二二二二|ﾆﾆ＼二ﾆ=- 　 :::::::::::::. -=ﾆニ二
　　　-=ニニニ|ﾆz==ミﾆニ=- 　ｉ:::::::::::. -=ﾆニ二
　　.〈ニニニﾆ／　 　、＼:=-　　|:::::::::::::. -=ﾆﾆニ
　 　 }ﾆﾆ__ ／　　＼　＼ﾉﾆ- 　 l:::::::::::::::. -=ニニ
　　 fｴ7/ 　.ﾍ　＼ 　>イ二=-　 ｌ:::::::::::::::::.ｉニニﾆ
　　 iﾆ{ { __」i个 ＿Y´i l|ニﾆ=-　:::::::::::::::::::|ニニﾆ
　　 |ﾆ、　_」 l|ノﾆﾆ| l i |ニニ=- |::::::::::::::::::|ニニﾆ



　　　　　　　　　　　ヽ　　　　 __ イニニニニ≫'´　　 _ ィ彡'´
　　　　　　　　　　　　V≠ニニニニニ=＝''´　　 x≪///ハ
　　　　　　　　　　　　 }二二二二≠´ 　　　 x≪////≫─ ､
　　　　　　　　　　　 イ⌒¨　 ´　　　　　x≪ミ} 　 ミ//| r　ヽ ',　　　　　　　　　　　 何を言っていやがる。
　　　　　　　．　 ´　　　　　　　　　x≪≫''⌒Y　　 }//i　>　　 }＿＿＿
　　　　 ≠　　 　＿_　.斗r弋え ﾍ==彳ゞ'′ 八　　V/| {　　 /￣≧=‐-}　　　　　　署内やパトカーで吸うと若い連中が煙たがるんでな。
　　　｀￣￣￣ 　 　 　 ∧ ｰ彡}　　　ヾ ￣´ 　　　　}/|_ ．イ　´　　　 /　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　 '.　　 i　　　　　　¨　　　r≦´ 　　　　　　　 /　　　　　　　飯時の一服が俺にとって至福の一時なんだよ。
　　　　　　　　　　　　　　∧ 　 ′　　　　　　　 　 ヽ　　　　　　　　　}　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　 ／　ﾍ　{　　_,　　　　　　　　/ﾐ　　　　　　　 /{ 　　　　　　　 …取るんじゃねえぞ。
　　　　　　　　．　　 ´　 　从　｀¨´　　　　　　　 　ヾj　　 　 　 　 /ハ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　γ´´´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　　　　　＜　　　　　　・＝===──-　 _　　ヽ　｀ミ/　　　　　　　　イへ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　　取りませんよ、そんなもの　 　 　}
　　　　　　 ヽ　　　　　　 　　 } ー----　 ｀ヽ 」　　| 　 　 　 　 　 ／　y'⌒ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ゝ､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿人
　　　　　　　　＼ 　 　 　 　 /　　/　　　　　　　 ／　　　　　 ｰ=彡 ､　ゝ--彳｀
　　　　　　　　　 >､　　　 　 ゝ _人　　　＿ 　イ　　　　　　　　　　　 ｀　 ．

47： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:34:52 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　　　　　　‐-:､　_
　　　　　　　　　　 ;-::::::::-ヽ:`-｀:ヽ_
　　　　　　　　;-‐´:::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　_,-‐´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ｧ
　　　　´_,フ::ヽ::::/ヽﾊfヽ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　⌒ｱ:::::｀V　　　　｀ヽ}ヽ:::::::::}:::::::::::::｀;
　　　　　/::::i::::/　 _　　　　＿ ヽ::::i:::::::::::::::;`　　　　　　　　喫煙者に対して、風あたりの強い世の中ですからねえ。
　　　　　{::::ヽ:} ￣｀　　　´　　｀ }/l::::}:::::::;｀
　　　　　ﾉｲ:ヽﾄ ,-=､ヽ 　 ｨ＝‐-､ }:ﾉ´}::;゛　　　　　　　　 　…ところで銭形さん、あのやる夫とかいう少年がどうかしたんですか？
　　　　　　|::「 〈　ｉ_} │　　 　し'　ﾚ　ﾊ::i_
　　　　　　ﾊﾊ　　　　,　　　　　　　　‐'::::}　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　γ´´´￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ　
　　　　　　　　 ',　　　､‐,　　　　　　ﾉ;:::::ﾊ　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　{　　　気づいてたのか…　 　}　
　　　　　　　　　ヽ 　､_ ＿ _ ノ　／ ｌ/｀'　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ゝ､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿人
　　　　　　　　　　ヽ　　　　　 ／　 ﾒ ヽ｀ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　..‐''´､ー‐〃 　 .／ 　./:::::::}::＼　　　　　　 そりゃ分かりますよ、さっきから話しかけても上の空ですもん。
　　　　　　..-''~:::/:::::::lヽ　　　／ 　　./::::::::l::::::::::＼
　　　　..‐''~: :::::/:::::::::l　/､ヽ/＼　　/:::::::::::!::::::::::::: .＼　　　 あの感じじゃ、奥さんも絶対怪しんでますね…
　 　 ｌ´: : :::::::::/:::::::::::{v'　!`゛´i　 ､/::::::::::::::!:::::::::::::::::::: / ､
　 　ｌ　::::::::::::::ヽ_:::::::i　　 `､＿}　/:::::::､- ┘::::::::::::::::::::::::::: ｌ
　　ｌ　::::::::::::::::/:::::::::l　　　 〉　ヽｌ:::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::: ｌ
　 ｌ　:::::::::::::::ヽ:::::::::l　　　;′ 　.l:::::::::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ｌ



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　___
　　　　　　　　　　　　　　.┌―‐''" 　`‐､
　　　　　　　　　　　　　　 f　　_ ．---､.ノ
　　　　　　　　　　　　　　,ﾉ三三三三三!
　　　　　　　　　　　_, ‐'~=ニ＿＿＿＿二ヽ､、
　　　　　　　　　 ｨﾆ-‐‐ |::::::::::::::::::::::::::::::::!￣￣ヽ､
　　　　　　　　　 !　　　　!_::, ---ｰ-､._::::::!　　__, -’　　　　　　　　そうか…
　　　　　　　　　　' ｰr-''"　　　　　　　｀`‐ﾆ~
　　　　　　　　　　r'' 　　　　--　　-､.＿　　 `ヽ､_　　　　　　　　　しまったな、気を遣ったつもりだったが…
　　　　　　　　　l"___, --ｰﾆ-ィ　　　　　ニ== ､_　|､
　　　　　_r二ニ`ー''"´~ 　　 ', 　　　　　　　　　''ｰｰニ┬-､　　　　　　　　　 γ´´´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　　　l￣~~　　　　　　　　　　 l 　　　　　　　　　　　　　/￣ヽ　　　　　　　　　 {　　　　銭形さんは嘘が下手ですからね… 　 　 }
　　 /　　　　　　　　　　　　　.!　　　　　　　　　　　　 ./ 　　　'　　　　　　　　　ゝ､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿人
　　｜　　　　　　　　　　　　｜　　　　　　　　　　　　｜　　　 !
　　ノ　　!　　　　　　　　　　 l　　　　　　　　　　　　　j′　　　!
　 ヽ 　　.!　　　　　　　　　　!　　　　　　　　　　　　　|　　　　 |

48： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:35:16 ID:cVUMLNOcSa


　　 ｰ=彡ｲ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ミ:.､
　　　.ィ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
　　 /{::::/:::::,イ V ﾊ＼}＼ﾉ＼::::::}:::::::::::V
　　　 i::{:::::/ ＿_ 　 　 　＿__ ヽ:ﾉ:::::::::::iﾄ
　 　 　V:::{´ ＿__　　　　＿__ ｀ﾊ::::::::::::ﾘ
　　 　 ｲ/::V´ {_ﾊ 　 　/　 {_ﾊ ﾉｲ::::::乂　　　　…まぁ、それはともかく教えてくださいよ。
　 　 　 ' ﾄﾊ ｀￣ 　}　 　｀￣´ 　ｲ:/ 丿
　　 　 　 ､{　　　　　　　 　 　　 /:::::ﾊ　　　　　一体、あの少年の何が気にかかるというんです？
　　　　　　　　　　｀ ´　　　　 　/'ﾉ/
　　　　 　　　 、　ｰ 　 -‐　　,彡Y　　　　　　　 似てない親子だとは思いますが、僕の気になった点といえばそれくらいで…
　　　　　　 　　＼　 　　 　／ 　 ﾄ､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　／{/≧=━ 　　　　/ }ﾑ=ミ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 γ´´´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　　　　　 ／=i= Ｖ////.′　 ／ /=ﾊ二＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　　　死んでいるんだ… 　 　 }
　　　　 -=ﾆﾆ}=　＼／　__／ 　 -=/ニニ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿人
　　 -=ﾆﾆ二7ﾆ　 .ィl　}　,､　　/ニ′二ﾆ　　　　
　-=ニニニ/ニｉ /::{ V　//}　/ﾆﾆi二二ﾆ　　　　…え？なんですって？
-=二二二/ﾆ= v .ゞ━=ミ. 　 -=ﾆ|二ニﾆ
ﾆニニ二/ニ=- 　{:::::::::::::}　ヽ-=ﾆ|二ニﾆ
二二二/ニニ=-　V::::::::/ 　 -=ニ|二ニﾆ

49： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:35:42 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　 _／: : : : ＼　　　　　　　｀`ヽ､
　　　　　　　　!､　　　　　　　　　　　　　_ -‐'´: : : : : : : : ヽ　　　　　　　 ／
　　　　　　　　　｀Z　　　　　　　　　__／: : : : : : : : : : _ -‐'´　　　　　 ／
　　　　　　　　　 __＞i　　　　　 _／: : : : : : : : : _ -‐'´　　　　　　 _／￣￣｀　　　　　
　　　　　　　　／　　「｀`ー‐‐'´: : : : : : : : : __／　　　　　　　 _,イ
　　　　　　 ／　　 　 |: : : : : : : : : : : : : :_／　　　　　　_ -‐､'´:::::ヽ　　　　／　　 …亡くなったんだよ、やる夫くんは。
　 　 　 　 / 　 　 　 ､|_: : : : : : : : _ -‐'´　　　　　　_／{　　 ヽ::::::::} 　　／
　　　　　/　　　　　　　￣￣￣￣　　　　　　 _ -イ::::::::| i⌒　}:::::::| _／　　　　　　六年前に心疾患でな。
　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　,. -‐i´:::::::ヾ::::::i |｀ヽ　i::_／
　　／　　　　　　　　　　　　　　 ,. -‐・´　　ﾉ::::　　 ∨:::| !_ -‐'´　　　　　　　　　　朝、両親が起こしに行くと布団の中で、
　　￣￣｀ヽ､＿＿＿__,. ┬､‐1´ i:::｀ー‐‐'´　　u　　i::／
　　　　 ／￣　　　　　　　i:::`´ヽ. l　｀`ヽ､　　　　_／¨　　　　　　 　 　 　 　 　 　 冷たくなっていたそうだ…。
　　　／　　　　　　　　　　ヽ::::丿　　ヽ　　_,. -‐'´
　 ／　　　　　　　　　　　　 ヽゝ､＿_ノ　　｀`ヽ､　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　
／　　　　　　　　　　　　　　　i　　　　　　　　　 ｀ヽ､　　　　　　　 ／　 i
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 >　＿ 　 　 ＿,.,＿_　ヽ､　　　　 ／　　/　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼＼ ￣￣　　　　 ｀ヽ　}　　　/　　　/
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ( 　 `ー──----‐'´ .|　　 /　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,>　　::::::::::::　　　　　　|　　/　　　/



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,､-''"　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／|　 /　　　 　./
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 / 　 !./　　　　　_L --　､
　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　 V　　　　／　　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　∠⌒ヽ　　.|　_∠￣｀＼　 　 　 　 ヽ　　　　 元から心臓は丈夫ではなかったそうだが、
　　　　　　　　　　　　　 　 ＞⌒`ヽ /￣ ヽ,　　 　l　　 , --- ､|
　　　＿_　　　　　　　　 /´ ＿_.彡　　　 　 |　　　 |-<´-､　　　　　　　傍目にはそうと分からないくらい活発でやんちゃな子供だった。
　　/　　 ヽ　　　　　　　ﾚ´/　 /　　l⌒`ヽ. ﾄ､　　 |.　｀l　ヽ
　　l.　　　 ヽ　　　　　　　 |　　ヽ,　 ヽ､ へ,il　 |　,/!　 .| 　 |　　　　　　よく店の前で、友達とチャンバラごっこをしているのを見かけたよ。
　 　 `ｰ　<　＼　　　　　　|　　 _ `ｰr‐' .l i::l　 レr∠..ノ､　 |
　　　 　 　 ＼　＼　　　　 |　　l　ヽﾉ　　Lkj　　 lj.l_, ┘　` '　　　　　　…それが突然だ。両親はひどく打ちのめされたろう。
　　　　　　　　＼　＼　　　L_　i ゝ　 　"" ┌-､` .|
　　　　　　　　　 ＼　 ＼__＜二ｰrｰ､ 　 　 `ｰ' ,ノ　　　　　　　　　　　 この店もやる夫くんがなくなってから、しばらく閉めていたんだ。
　　　　　　　　　　　＼／ /´./ __/T」 `　､___,､イ,＿
　　　　　　　　　　　　 〉´ ﾚｲ　|　 |ヽ､＿＿_ >　 'ｰ' ヽ　　　　　　　 　 思えば、あの頃からだな。俺がこの店に来なくなったのは…
　　　　　　　　　　　／ ,ｲ'/　　ヽ, ｡ >､__,.ノ　　　　　　 l,　　　　　　
　　　　　　　　 r- ' .／　,ﾉ　　　 <　　　>､.-､　　　 　 　l､　　　　　　　
　　　　　　　　 ゝ／　　 /　　　　 ＼／ 　 >､ `ｰ-､＿　　l
　　　　　　　　　　　　 /　　　 __,-､ /`ヾ´　　 ヽ､ 人　 `ヽ!

50： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:36:06 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　　　 _ノ.:.:.ﾊ)、.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
　　　　　　　　　　 ∠:Y　　＼ﾄ､.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
　　　　　　　　　　　　 l　　　　　＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　 ＼ﾄ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
　　　　　　　　　　　　　　　-──　　　 ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
　　　　　　　　　　　　 ヽ　 　」___　　　　　}:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:　　　　…ちょっと待ってください。
　　　　　　　　　　　　　 }　 　{:「￣ヽ　　 ﾉｲ:.:.:.:.:.:.:.: ｲ }.:.:.:
　　　　　　　　　　　 　 / 　 　￣ 　 　 　 jィ.:.:.: イ） /:.:.:.:　　　　　その話が本当だとすると、あのやる夫と呼ばれている少年、
　　　　　　　　　　　　、　　　　　　　 　U　　}／__ .ィ.:.:.:.:.:.:
　　　　　　　　　　　　 ｀ﾌ／⌒ヽ __　　　　 　 　 　ﾉィ八:.:_　　　　彼は一体誰だというんです？
　　　　　　　　　　 　 ｆ´_　-=ミ、 }　)　 　　　.′　　/
　　　　　　　　　 　 〃 　 -=ミ_У /　　　 ／　　　 　　　／
　　　　　　　　　　　{ ´￣￣￣)　/_ ＜ 　 　　／ 　 　 , -=
　　　　　　　　　　　{　´ ￣￣｝ ' 　　　＞ミ／　 　　　/ﾆﾆ
　　　　　 　 　 　 　 } 　rマ　ﾉ　 -=ニﾑ＼_＼　　 　 -=ﾆﾆ
　　　　　　　　　 　 ﾊ 　}　У-=ニニニﾑ l::{　ヽ.　　-=ﾆニ
　　　　　　　　／〃_ 　ﾉ／=ニニニニ=-　::､/:ハ/二二二



　　　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　 __ イニニニニ≫'´　　 _ ィ彡'´
　　　　　　　　　　　　V≠ニニニニニ=＝''´　　 x≪///ハ
　　　　　　　　　　　　 }二二二二≠´ 　　　 x≪////≫─ ､
　　　　　　　　　　　 イ⌒¨　 ´　　　　　x≪ミ} 　 ミ//| r　ヽ ',　　　　　　　　　　　 さあな…
　　　　　　　．　 ´　　　　　　　　　x≪≫''⌒Y　　 }//i　>　　 }＿＿＿
　　　　 ≠　　 　＿_　.斗r弋え ﾍ==彳ゞ'′ 八　　V/| {　　 /￣≧=‐-}　　　　　　少なくとも、彼がやる夫くんでないってことだけは確かだ。
　　　｀￣￣￣ 　 　 　 ∧ ｰ彡}　　　ヾ ￣´ 　　　　}/|_ ．イ　´　　　 /
　　　　　　　　 　 　 　 　 '.　　 i　　　　　　¨　　　r≦´ 　　　　　　　 /　　　　　　　…だが、もしかするとただの従業員って線が正解なのかもしれんな。
　　　　　　　　　 　 　 　 ∧ 　 ′　　　　　　　 　 ヽ　　　　　　　　　}
　　　　　　 　 　 　 　 ／　ﾍ　{　　_,　　　　　　　　/ﾐ　　　　　　　 /{　　 　 　 　 　 子供を亡くした母親がその事実を受け止めきれず、
　　　　 　 　　．　　 ´　 　从　｀¨´　　　　　　　 　ヾj　　 　 　 　 /ハ
　　　　　＜　　　　　　・＝===──-　 _　　ヽ　｀ミ/　　　　　　　　イへ　　　　　　 余所の家の子を息子に重ね見てしまう。よく聞く話だ。
　　　　　　 ヽ　　　　　　 　　 } ー----　 ｀ヽ 」　　| 　 　 　 　 　 ／　y'⌒ヽ
　　　　　　　　＼ 　 　 　 　 /　　/　　　　　　　 ／　　　　　 ｰ=彡 ､　ゝ--彳｀　
　　　　　　　　　 >､　　　 　 ゝ _人　　　＿ 　イ　　　　　　　　　　　 ｀　 ．
　　　 　　 　x≪≫´ヽ　　　 ／　　　¨「　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ ー-　
　　　「￣　 ´　　　 ／　 　/⌒ヽ__ /　}

51： ◆eOa8Dqqjo.：2020/08/28(金) 23:36:33 ID:cVUMLNOcSa


　　　　　　　　　　　　　　, ／　　　＿＿
　　　　　　　　　　　　　 (:(　 z=.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:￣ミ:.､
　　　　　　　　　　　　　　ゝ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ 　__
　　　　　　　　　　　　 ／.:.:.:.:.:.､:.:ト:.:.:卜 :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.く　｀ヽ
　　　　　　　　 　 　 ./:.:.:.{.:.:./　ヽ!　ヽ} 　ヽﾄ､.:.:.:.:.:.:.:.
　　　　　　　　 　 　 {:.:.:.:.:ﾄ､{ 　 　 　 　 ＿＿ }ィ:.:.:.:.:.}
　　　　　　　　　　 　}:.:.:.:.:! ´￣｀ヽ 　 ´　　　　 }.:}.:.:〃:
　　　　　　　　　　 ,ノ.:.:.:.:.| 　 ─ 　 　 　 _─　,ﾉｲ.:.:.ゝ　　　銭形さんが、御自分の説に納得されているようには
　　　　　　　　 　 ￣{.:.:.:.:.:〃￣甘　}　　 ￣甘 /.:.::ﾉ
　　　　　　　 　 　 　 )ﾊ.:.:.＼｀¨¨　〈　 　 ｀¨¨ ノイ.:r　　　　 僕には見えないのですが…
　　　　　　　　　 　 ノ　}ﾍ 「｀　　　 　 　　　　　ｲ.:′
　　　　　　　　　　　　　　ヽ.:.　　　　＿_　　　　//
　　　　　　　　　　　　　　　)ﾉ ､　　(_＿_)　 　.ｨ:(
　　　　　　　　　　　　 　 　 j:ハ＼ 　 ‐　　／ l
　　　　　　　　　　　　　　 　　rく}　=━=彡 　 |ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　 　{　＼__　 　 　 ノ ｲ
　　　　　　　　　　　　　-=T¨　　 　 /} 「￣　 / |ミ:
　　　　　　　‐=ニニ7二二!　　　　/ {　! } 　 　 l二二ﾊニニ=‐
　　 -=ニニニニ二7ニﾆﾆ| 、 　 ∧,」_」 :　　　/ ﾆﾆニﾊ二ニニニニ=-
　 /ムニニニニニ7二二ﾆ　＼,/:::::}　　_∧　/　|ﾆ二二ﾊニニニニニﾑﾊ
　 =ニ}二二二ﾆﾆ7二ニニ　　　 ゝ…==ミﾊ/ 　 !ニニ二ﾊﾆﾆ二二二{ニ=　



　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｲ⌒ヽ、　／＼ ／　　　 ノ`‐-ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ゝ　　　｀'‐-＜ ヽ ‐- イ　　　 　 { ｀　　
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ、　　　　　　｀ ＜　　　　　　/ ｀　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　ォ、 　 　 　 　 　 ｀ ＜＿__（　　　　　　…足立。世の中には、色んな家庭がある。
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／　／　{　ヽ、　　　　　　　　　　　｀
　　　　　 ,　 ィ"´¨¨¨￣二ニニﾆ７"　 ィ、　 　 ﾄ　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　 そのすべてが正常ってわけにはいかんだろうが、
　　　　 / 八、 ）〃"´ ｨヽ,,,,r-,〃ゞﾍ< イ^ヽ　　ﾄ、　　　　 ヽ、
.　　　 / , '　　イ[::::≧::::7、r≦／:::::＞ﾊ 　 !　　{、　ヽ　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　そうでないからといって違法だとも限らんのが現実だ。
　　　/　{　／::::::¨ゞ/::::/ヽ７"＞<、イ=ｲ　 ,'　　 {　ヽ　　 ヽ、
.　　/　 ゝ,'　 ヾ:::' /=ﾐ ヽ、 ヽ､弋ノ/(ｼ　 ﾘ　　　ヽ、　　　　　`ヽ 、　　　　　　　　　 アンバランスな状態でしか、成り立たない家族だってある。
　 ｲk"ィへ　＿　弋ｼ' ::::::::｀`イ >／く　 /}　　　　　 ｀≧=‐-　 、　　　　　　 _,
　　', 、　　ヽ　　 ≧＝= =＝≦彡イ　　 ,'　　　　　　　　　　　　 ｀¨¨‐-‐ "´　　　　　刑事にだって侵してはならない領域はあるだろう。
..　　', ヽ、　へ　三三::]　　　　　　 　 イj
　　　ヽ、　｀¨ ＝=‐----　'''''''''' "´　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　｀≧＝=―----　=亡＿≧イ´
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