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吸血王の島<知念×北斗中心>

306華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/07(金) 17:46:13 ID:2KlcS6Xo
<北斗視点>

「え? 新たな吸魂鬼――ですか?」

屋敷の中で、俺は博貴さんに聞き返した。
すると、彼は頷く。

「はい。また北斗様が通われていた学校を狙わんとする吸魂鬼が、出現したようです。それが誰なのかはまだ――」

「そうですか――知念くんと太陽さんは、謹慎中だ。暫くは大丈夫だと思っていたんだけど――まだ、現れるのか」

博貴さんの言っている事が本当だとすると、また大我や優吾達が狙われるかもしれない。
夜中のうちに学校に潜入すれば、昼間は外に出なくてもいいかもしれない。
そうすれば、優吾達の様子も見れる。
そう考えた俺は、玉座から立ち上がった。

「あっれー? 北斗様、出かけるの?」

「何処へ行くのかなー?」

玉座の両隣では、翔央くんと玲央くんがいた。

「ごめんね、2人共。暫く留守にするんだ。知念くんと太陽さんが逃げないよう、見張ってて。博貴さん、暫く屋敷をお願いします」

「「はーい♪」」

「かしこまりました。いってらっしゃいませ――北斗様」

翔央くんと玲央くん、博貴さんに見送られ、俺はフッと姿を消した。

307風海人:2013/06/07(金) 18:04:01 ID:sTFDruFc
続きまってます

308枝琉:2013/06/08(土) 06:04:50 ID:1e8qRJ1M
私の好きな嶺亜くんのお話ですか?
楽しみにしてます。

ふぁいとです!

309ひー ◆2nWshnhXe2:2013/06/13(木) 22:44:14 ID:8N6q9feI
華乃さんっ 久しぶりで〜す(。≧∇≦。)
忙しくてあまり来れなくてすみませんm(__)m
元気ですか?
内容忘れちゃったので今最初から全部読んじゃいました(笑)
ドキドキわくわくです((o(^∇^)o))

310華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/15(土) 21:41:33 ID:2KlcS6Xo
風海人さん>ありがとうございます!
続き、頑張ります!

枝琉さん>ありがとうございます!
ええ、今回は嶺亜くんのお話です。
これからも頑張ります!

ひーさん>ありがとうございます!
何とか元気で頑張っています(^v^)
物語は、いよいよ佳境に入るかも?
これからも頑張りますね!

311華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/15(土) 21:47:51 ID:2KlcS6Xo
それから俺は、夜中の学校に潜入し、一夜を明かした。
そして、朝が来た――。

「おはよう!」

「おはようございまーす!」

登校してきた生徒達が、それぞれ教室に入っていく。
中には、優吾や樹、ジェシー、大我、慎ちゃんもいる。
大我――前よりは落ち着いてきたみたいだな。
勿論、彼らに俺の姿は見えていない。
隠れているからな。

「――ん?」

1人だけ、そう――たった1人だけ、暗い雰囲気の男の子が登校してきた。
優吾達や龍太郎くんのクラスとは別の教室に入っていく。
何だろう。
気になるな――俺は、姿を消したまま、そっとそのクラスに入って行く。
すると――。

「おい、みんな見てみろよ。また点取り虫が来たぜ」

ある男子が、その子を見てそう言った。
でも、彼は気にせず自分の席に向かっていた。
いや、気にしていないわけじゃない。
無視しているんだ。

312華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/15(土) 21:54:48 ID:2KlcS6Xo
落書きだらけの机に、教科書とノートを置いて、予習を始めた。

「おい、中村。いつまでそんな態度でいるんだよ?」

「あーあ、汚い机。かわいそうだから、嶺亜きゅんの机、綺麗にしてやるよ!」

クラスメート達は、その子の名を口にしながら、あるモノを持ってくる。
この子――中村嶺亜くんっていうのか。
って、そうじゃなくて!
誰も、彼を助けに入らないのか!?

「ほぉら、綺麗になるだろ!」

バシャッ

あるモノ――バケツに入った水を、中村嶺亜くんにかけた。

「………」

けれど、嶺亜くんは何も言い返さない。
びしょ濡れになりながらも、予習を続けている。
その姿を見て、クラスメート達は嗤っていた。
下級生や上級生達も――。

「ぎゃはは、めっちゃ受けるんだけど!」

「よかったなぁ、中村! 綺麗になったじゃん!」

何て奴らだ――!
俺も、かつて人間――生きていた頃、似たようないじめを受けてきた。
けど、これはあまりにも酷すぎる!

「………」

嶺亜くんは、ただ黙って、予習を続けていた。

313華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/15(土) 22:02:18 ID:2KlcS6Xo
<嶺亜視点>

昼食の時間の時だった。

「中村ぁ。今日のお前の弁当、見せてみろよ」

有岡くんが、僕のお弁当を取り上げた。

「………」

でも、僕は取り返そうともしない。
どうせ、いじめが返ってくるだけだから――。

「うわっ、くっせー! バイ菌だらけじゃん!」

そう言うと、有岡くんは僕のお弁当箱を開け、中身をひっくり返しながら落とした。
――いつまで、このいじめは続くんだろう。
いつになったら、諦めてくれるの?

「ほら、中村。お茶飲ませてやるよ」

安井くんが、やかんに入った麦茶を僕の頭の上からかけてきた。
その隣では、萩谷くんが嗤っている。
他のクラスメート達も。
――もう嫌だ!
今まで無視してきたけど、耐えられないよ!


夕方。
僕は、思い切って母さんに頼み込んだ。

「――え? 今、何て言ったの嶺亜?」

母さんは、いまいち聞き取れなかったのか、もう一度訊ねてきた。

314華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/15(土) 22:08:39 ID:2KlcS6Xo
「――もう、学校には行きたくない。そう言ったんだ」

「何言ってるのよ。ズル休みでもする気?」

「そうは言ってない! 新島の方で塾があるから、そっちに行きたいんだ! 塾だけじゃない、勉強なら家でもできるでしょ!?」

「っ――!」

ムチャを言っているのは、自分でもわかっている。
でも、学校には行きたくない!

「僕――学校でいじめられてるんだ。点取り虫って呼ばれて、仲良かった子達にも裏切られて――もう嫌なんだ! これ以上、いじめられるのは! だから、お願い、母さん――!!」

僕は、必死に頼み込んだ。
母さんは、暫くの間――黙り込んでいた。
そして――。

「――だめよ」

「!?」

「不登校になるなんて、認めません。ちゃんと、学校に行きなさい」

母さんの口から出たのは、予想外の言葉だった。
どうして――!?
ちゃんと言ったんだよ、いじめられてるって!
母さんは、僕がいじめられてもいいっていうの!?
こんな時――!

「こんな時――父さんがいてくれたらっ…!」

「!?」

僕が、父さんの事を口にした時だった。

315華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/15(土) 22:16:06 ID:2KlcS6Xo
「いい加減にしなさい! お父さんはもういないのよ!」

バシンッ

母さんから平手打ちを喰らい、僕はその場に倒れ込んだ。
何で?
どうして、父さんの事を口にしちゃいけないの!?

「全く、あの人は――最期まで嶺亜に甘かったんだから。だから、いつまで経っても強い男になれないのよ! それに、いじめの事だって――あんたがいじめられるような事、したんでしょ!?」

「っ――!?」

僕の心に、母さんの言葉が突き刺さった。
まるで、ナイフのように――。

「いい? もう二度と、『学校に行きたくない』なんて言わないで!」

そう言い放つと、母さんはリビングから出て行った。
残されたのは、僕と静寂のみ――。
そんな――酷いよ、母さん!
いくら、元学校の先生だったからって、僕の叫びを聞いてよ!
僕は、たまらずに部屋に駆け込んだ。
そしてベッドに飛び込み、枕に顔を押しつけて泣いた。
この時、僕はふと思った。


死にたい――。


そう、死にたくなったんだ。

316華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/15(土) 22:21:07 ID:2KlcS6Xo
「いっそ、死んで――父さんの所に逝く事ができたら」

僕は、ぽつりとそう呟いた。
すると――。


――やめておけ。


突然、聞いた事もない声が聞こえてきた。

「だ、誰!?」

僕は、バッと顔を上げた。
そして、窓を見た。
すると、そこには知らない男の人がいたんだ。
真っ白な髪を持つ、若い男の人だ。
僕より少し上くらいか。

「我は、吸血王――この島の支配者だ。今、死にたいと思ったな?」

「――は、はい」

その男の人は、吸血王を名乗った。
幼い頃、父さんから聞かされた事がある。
この島には、血と魂を喰らう吸血王がいるって。
だから、夜中になったら、外に出てはならないって決められていた。
その吸血王が、どうして僕の部屋に!?

317華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/15(土) 22:29:40 ID:2KlcS6Xo
まさか、僕を食べる為に!?
でも、この吸血王からそんな気を感じ取れなかった。
顔は無表情だけど、どこか優しいような――。

「何故、死にたいと思った?」

吸血王さんが、僕に問いかけてきた。

「――僕、学校でいじめられているんです。勉強を頑張ったのに、それが原因で――いじめられるようになったんです」

不思議だ。
この人には、話せそうな気がする。
けれど――。

「ならば、助けを求めればいい。担任の教師や母親とかに」

「そんなの――もうやりました! でも、先生からは『無視しろ』とだけ言われて、母さんからは僕のせいだって言われて――その時、わかったんです。僕は、頼みの綱である先生からも、母さんからも無視されたんだって――!」

「………」

吸血王さんの言う事に一理はある。

318華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/15(土) 22:30:52 ID:2KlcS6Xo
でも、藤ヶ谷先生や母さんからは、理解を得られなかった。
やっぱり、僕の一番の支えは、死んだ父さんだけだ!

「あなたは吸血王でしょ!? なら、今すぐここで僕の血と魂を食べて! そして、父さんの所へ連れて行ってください! 僕はもう嫌なんだ、有岡くん達からいじめられるのは――!!」

僕は吸血王さんに掴みかかり、泣き崩れた。
すると――。

「――ごめんなさい」

そっと僕を引きはがすと、吸血王さんは悲しげな顔になった。
そして、そのまま姿を消した。

「吸血王さん――?」

僕は、彼の名を呼んでみた。
でも、返事はない。
完全に、姿を消したんだ――。

「――僕は、どうしたらいいんだ?」

床に崩れ落ち、僕は再び泣き出した。
声を押し殺して、泣き続けた。

319華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/15(土) 22:37:09 ID:2KlcS6Xo
<有岡視点>

「――ったく、お袋の奴、おかずを買い忘れるってどういう事だよ?」

あれから、家に帰った俺は、お袋から買い忘れがあったからという事で、買い物を頼まれた。
もう時間は遅いってのに。
俺はぶつぶつ文句を言いながら、港近くのスーパーで買い物をした。
そして、自転車に跨がり、自宅へ向かう。

「本当、ムシャクシャする――ま、明日も中村という玩具がいるから、ストレス発散できるけどな」

そう、中村嶺亜はちょうど良い玩具だった。
むかつくんだよな。
自分はいじめられていません、って顔をしているのを見ていると。
明日は、中村で何して遊ぶかな?
そう考えると、学校が楽しみで仕方が無い。
だんだんと、俺は上機嫌になってきた。
と、その時。

ボゥッ――!

白い人影が、目の前に現れた。

「うわっ…!」

ガシャンという音と共に、俺は自転車から転げ落ちた。
真っ白な人影は、だんだん姿を見せてくる。

「我は、吸血王――夜の吸血島の支配者だ」

「!?」

320華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/15(土) 22:41:19 ID:2KlcS6Xo
吸血王って、あの夜中に現れるという吸血王か!?
な、何でここに!?

「有岡大貴。お前は、中村嶺亜をいじめているな――?」

「なっ…!?」

何でそれを知ってるんだ!?
吸血王の伝説は、知っていた。
だからこそ、逃げないと!
でも、体が動かない。
震え上がってしまっているんだ。

「警告する。血と魂を喰われたくなければ、これ以上――中村嶺亜をいじめるな――!」

「ご、ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさい! もういじめません、いじめませんからっ――!!」

俺は、慌てて土下座した。
すると、吸血王は――。

「ならば良い。だが、次はないと思え――!」

吸血王の目が、光り出した。
ひっ――!
このままじゃ、喰われる!
そう思った俺は、目を瞑った。
と、その時。

「あれ? 君、どうしたんだ?」

駐在所のお巡りさんの声が、聞こえてきた。

321華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/15(土) 22:46:41 ID:2KlcS6Xo
<北斗視点>

駐在所のお巡りさんに送ってもらっている有岡くんを見届けた後、俺は安堵の息をついた。

「「お疲れ様、北斗様ー♪」」

「うわっ…!」

俺の両隣に、翔央くんと玲央くんが現れた。

「何でここに!? 留守番しててって言っただろ!?」

「留守番なら、博貴様がしてくれてるから大丈夫だよー♪」

「それより北斗様、さっきの子の魂、美味しかった?」

玲央くんが俺の腕に自分の腕を絡め、翔央くんは俺の首に腕を回してきた。

「――食べてないよ」

「うっそだぁ! あの子の魂、かじられてたもん。脅しと同時にかじったんでしょ?」

――翔央くんには、バレていたか。

「いじめのリーダー格である有岡くんがやめれば、他の子達もいじめをやめてくれるだろう。これで、嶺亜くんはもう大丈夫――」

「本当にそう思う?」

「え? それ、どういう事?」

玲央くんの言葉が気にかかり、俺は問いかけた。

「「ま、見ていればわかるよ♪」」

いつものように、翔央くんと玲央くんはいい意味で、俺に纏わり付いてきた。

322風海人:2013/06/16(日) 17:00:42 ID:sTFDruFc
続きまってます

323華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/21(金) 21:40:36 ID:WCV9cb5A
風海人さん>ありがとうございます!
変な事を聞いてしまいますが、このお話、面白いですか?
直した方が良い所があったら、教えてくださいね。
これからも頑張ります!

324華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/21(金) 21:45:03 ID:WCV9cb5A
翌日。
俺は、再び学校に潜入した。
嶺亜くんのいる教室に入り込んだ俺は、彼の姿を捜す。

「………」

あ、いた。
嶺亜くんは、自分の席に座り、予習をしていた。
昨日見た時より、机の落書きが酷い事になっている。

「有岡くん、さっきから机に突っ伏してるよな」

「どうしたんだろう?」

クラスメート達は、有岡くんの事を口々にそう言っていた。
俺の警告が効いたのか、嶺亜くんをいじめなくなったみたいだ。
そこまではよかった。
けれど――。

「じゃあさ、安井くん。今日は俺達で中村を――」

「そうだな」

有岡くんがいじめなくなった代わりに、他のクラスメート達が嶺亜くんをいじめる相談をし始めた。

325華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/21(金) 21:49:22 ID:WCV9cb5A
そんな――どうして!?
どうして、いじめが続いているんだ!?

「「やっぱりね」」

俺の両隣に、翔央くんと玲央くんが現れた。
やっぱりって――2人はこの事、知ってたのか!?

「まぁね。彼らからのいじめは、もはや中毒症状になっている。北斗様がいじめている子1人を脅しても、他の子達がいる」

「そして、第二、第三のいじめのリーダーは生まれていくんだ」

「そ、そんなっ…!」

翔央くんと玲央くんの言葉に、俺はショックを受けた。
このままじゃ、嶺亜くんはずっといじめられ続けるって事になるじゃないか!
――落ち着け。
落ち着くんだ、俺。
嶺亜くんを助ける方法を、考えるんだ。
今はまだ、考えが浮かばない。
嶺亜くん、もう少しだけ耐えてくれ。
必ず、助けるから――!

326華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/21(金) 21:53:48 ID:WCV9cb5A
<嶺亜視点>

今日もだ。
僕へのいじめは、続いている。

「中村さぁ、いい加減にイイ子ちゃんぶるのやめたら?」

「すっげぇムカツクんだけど」

萩谷くんや安井くんから、悪口を言われた。

「誰かさんのせいで、教室は暗いんだよなー」

「どうしてくれるんだよ、中村」

「………」

神宮寺や羽生田にも、わざとらしい嫌みを言われた。
でも、僕は無視を続ける。
いつもの事だ。
今日も、無視していればいい。
そうすれば、苦しまずに済むから。
と、そこへ。

「はい、お前ら席につけよー」

出席簿を持った藤ヶ谷先生が、入ってきた。

「今日は、転校生を2人紹介する。さ、自己紹介して」

転校生?
先生に呼ばれ、「はい」と2人分の返事が返ってきた。
そして、ゆっくりと教室に入ってくる。

327華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/21(金) 22:00:16 ID:WCV9cb5A
入ってきたのは、2人の男の子だった。
僕と同い年ぐらいか、少し下ぐらいかな。

「はじめまして、真田佑馬です」

「野澤祐樹です。よろしくお願いします」

2人共、綺麗な顔をしている。
僕は、思わず見惚れてしまっていた。

「じゃあ、席は――」

「先生、僕達、あの子の隣と前がいいです」

先生が空いている席を探そうとすると、真田くんが僕を指しながら言った。
確かに、僕の隣と前は空いている。
誰も、僕に近寄ろうとしないのに――。

「ああ、いいぞ。いいよな? 中村」

「あ、はい!」

先生に聞かれ、僕は返事をした。
すると、真田くんと野澤くんは、ホッと安堵の息をした。


「中村くん、下の名前は何て言うの?」

休み時間になり、野澤くんが僕に訊ねてきた。

「え、えっと――嶺亜だけど」

「そっかぁ。じゃあ、嶺亜くんって呼んでいい?」

他のクラスメート達が見ている中、真田くんと野澤くんは僕にひたすら話しかけてきた。
まるで、僕が転校生みたい。

328華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/21(金) 22:05:47 ID:WCV9cb5A
って、そうじゃなくて!

「真田くんと野澤くん、だよね。あまり僕に話しかけない方がいいよ――」

「「え、どうして?」」

僕が俯くと、2人は同時に聞き返してきた。
だって、だって――!

「僕は――いじめられているから」

僕に関わると、きっと2人共いじめられる。
それが嫌なんだ。
すると、真田くんと野澤くんは――。

「大丈夫。僕と祐樹は、いじめをするような人達と仲良くするつもりないから」

「それに、僕と佑馬は、君がいいんだ。友達になりたいの」

「真田くん、野澤くん――」

そう言ってもらえたのは、初めてだった。
向こうでは、安井くん達が睨んでいるけど、あまり気にしなかった。
それくらい、嬉しかったんだ。

「それじゃあ、わからない事があったら聞いてね。できる限り、答えるから」

「ありがとう、嶺亜くん。実は、登下校する際の道に、まだ自信が無くて――」

「よかったら、一緒に帰ってくれる?」

申し訳なさそうに、真田くんと野澤くんは僕にお願いしてきた。

329華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/21(金) 22:12:38 ID:WCV9cb5A
「うん、いいよ。僕で良ければ!」

「「ありがとう!」」

僕が快く引き受けると、2人は嬉しそうに微笑んだ。


そして、下校になり、僕達は学校を出た。

「よかった。2人共、ちょうど僕と同じ方向だったんだね」

「家、近いといいね」

「うん!」

他愛もない話をしながら、僕達3人は足を進めていた。
と、その時。

「ねぇ、嶺亜くん」

野澤くんが、足を止めた。
どうしたの?

「さっき、言ってたよね。『自分はいじめられている』って――」

「あ、うん――」

「実はね、僕と佑馬も、前の学校でいじめられていたんだ――」

「えっ!?」

野澤くんの衝撃的な言葉に、僕は驚愕した。
まさか、真田くんと野澤くんもいじめられていたなんて!

330華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/21(金) 22:19:30 ID:WCV9cb5A
――そっか。
だから、いじめをするような人達と仲良くしたくないって言ってたんだ。

「――どうして、いじめなんてあるんだろうね? そんなもの、最初からなければいいのに」

「仕方ないよ。人は、自分の強さを証明する為に、弱い人を傷つけなくちゃいけないんだよ」

「え、自分の強さ――?」

真田くんの言葉に、僕は振り返った。
すると、彼は野澤くんと共に頷く。

「どの子にも同じ事なんだけど、両親は――自分の子に強くなって欲しいと願うでしょ? でも、その言葉の意味や強くなる方法がわからない子が多いんだ」

「その自分の強さがどれぐらいか確認する――それが、いじめだと思う。人ってね、弱さを捨てなきゃいけない生き物なんだよ」

「あっ――」

真田くんと野澤くんの言葉が、何故か僕の心に染みた。

「今のうちに謝っておくね。嶺亜くんを見た瞬間、僕達と同じ気を感じ取ったんだ。いじめられっこという気をね」

「それを感じた時、嬉しかったんだ。僕達と同じ立場の子がいるって――」

真田くん、野澤くん――。

331華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/21(金) 22:25:50 ID:WCV9cb5A
そう思わなきゃいけない程、酷いいじめを受けてきたんだね。
だからこそ、僕と友達になりたかったんだ――。

「僕も――同じ気持ちを持っている子達と出会えて、嬉しいよ」

「「――よかった!」」

僕が微笑むと、真田くんと野澤くんも、嬉しそうに微笑み返してくれた。
そして、こう話し始める。

「僕達、きっとこの先もいじめられると思う。もし、そうなった時は――嶺亜くんを強くしてあげるね」

「そんなっ…! 僕は、誰もいじめたりしないよ! 大丈夫、絶対君達はいじめられない! だって、いじめられているのは僕だけだから――!!」

僕は、もういじめに慣れているから、いくらでも耐えられる。
でも、こんなにも優しい真田くんと野澤くんを、いじめさせたりしない!

「――ありがとう、嶺亜くん」

「僕達、君と出会えてよかったよ」

そう言って、微笑む野澤くんと真田くんの笑顔は――少し、寂しそうだった。

「じゃあ、僕達はここで」

「また明日ね」

「うん、ばいばい!」

332華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/21(金) 22:29:47 ID:WCV9cb5A
途中の道で別れ、2人は帰って行った。
神様、お願いです――どうか、いじめの渦にあの子達を巻き込まないようにしてください!
僕は、そう神様に祈った。


それから、暫く――僕達の間に変化はなかった。
僕は、相変わらずいじめられている。

ドカッ

岩橋玄樹の足が、僕の太腿を蹴った。

「あ、悪い悪い。お前の足が邪魔だったから、蹴っちゃった」

「………」

わざとらしく言う岩橋を、僕は無視した。
そして、真田くんと野澤くんを見る。
2人は、あの言葉どおり、僕以外の子達と馴染めなかった。
でも、だからといっていじめられているわけじゃない。
クラスメート達の狙いは、僕だけだ。
まぁ、有岡くんはいじめをやめたけどね。
何があったかは知らないけど。
きっと、神様が2人を守ってくれているんだ。
僕は、それが嬉しくてしょうがない。
そう思っていたのに――事件は、この後、起きる事になる。

333華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/21(金) 22:31:27 ID:WCV9cb5A
IDがいつもと違うのは、一度無線LANを直したからです。
本人なので、ご安心を;

334風海人:2013/06/22(土) 17:59:37 ID:sTFDruFc
続きまってます
この小説面白いです。
これからも頑張って下さい。

335遥貴:★:2013/06/22(土) 18:18:17 ID:yNZhV4rk
こんにちは。

中村君的にはよかったですね(^_^)
ただ転校生二人よく言えば思慮深いとみれますが、何かちょっと怖い感じがしないでもないような?
う〜ん毎度の事ながら無駄な深読みでしょうか(@_@)

続き楽しみにしてます(^O^)

336華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/22(土) 20:54:26 ID:WCV9cb5A
風海人さん>ありがとうございます!
よかったです!
面白いかどうか不安だったのですが――風海人さんのその言葉に安心しました。
これからも頑張ります!

遥貴さん>ありがとうございます!
嶺亜くんに、友達ができました。
でも、悲劇はここから始まる事になります――。
遥貴さんの読みは当たるのか――お楽しみに!←おい

337華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/22(土) 21:08:05 ID:WCV9cb5A
ある日の事だった。
昼食の時間になり、みんなはそれぞれグループで集まり、和気藹々としながらお弁当を食べている。
真田くんと野澤くんの姿はない。
お茶をもらいに行ったんだな。
今日は確か、真田くんと野澤くんがお茶係だったから。

「あれ? 中村ぁ、お前の弁当はどうしたよ?」

「さっさと出せよ」

安井くんと萩谷くんが、僕の机の中を漁ろうとした。
と、その時だった。

「「うわっ…!」」

バシャァンッ

真田くんと野澤くんの声が聞こえたのと同時に、激しい水音が聞こえてきた。
僕や安井くん達が、その方向を見ると――。

「うわっ、有岡くん大丈夫!?」

萩谷くんが、有岡くんの元へ駆け寄った。
よく見ると、彼はびしょ濡れだった。

「………」

有岡くんの視線の下には、床に倒れている真田くんと野澤くんがいた。
持っていたやかんの中身だったお茶は、無残にぶちまけられていた。

338枝琉:2013/06/22(土) 21:16:27 ID:1e8qRJ1M
こんばんは!
小説、面白くていつもニヤニヤしながら見てます。←
実は私も小説を書きはじめたので、見ていただいてぜひアドバイス又は感想をいただけたらなと思います。
運命の人
というスレです。ひまな時にぜひおこしください☆

339華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/22(土) 21:19:24 ID:WCV9cb5A
「「いたたっ…あっ――!」」

痛む膝を押さえながら、真田くんと野澤くんは起き上がった。
そして、自分達が転んだ事に漸く気付く。

「――おい。お前ら、何してくれてんだよ!?」

安井くんが、2人に怒鳴り散らした。

「あ、ご、ごめんなさい――!」

「つい、つまずいちゃって――!」

真田くんと野澤くんは、必死に謝った。
涙目になりながら――。
すると、有岡くんは――。

「お前ら、許してほしいなら――土下座しろ」

「「へっ――?」」

ど、土下座だって!?
有岡くん、何を――!?

「「ど、土下座――ですか?」」

「そうだよ、早くしろ!」

「痛い目みたいのか!?」

安井くんと萩谷くんが、真田くんと野澤くんをねじ伏せた。

340華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/22(土) 21:25:05 ID:WCV9cb5A
他のクラスメート達も、「土下座、土下座!」と囃し立てる。
助けなきゃ――真田くんと野澤くんを助けなきゃ!
僕は、足を踏み出そうとした。
すると――。

『おめでとう、嶺亜』

――え?

「だ、誰――!?」

突然聞こえた声。
でも、聞き覚えのない声だ。
周りを見ても、クラスメート達の視線は真田くんと野澤くんに向けられている。

『僕の声は、君にしか聞こえないよ。それより、よかったじゃないか。君はもう、いじめられっ子じゃない』

「な、何を言って――!?」

『わかるだろ? いじめられっ子のタスキが、あの子達に渡されたんだよ』

声の言うとおりだった。
僕には見えていた。
いじめられっ子のタスキが、真田くんの野澤くんの肩にかけられているのが――。

341華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/22(土) 21:39:34 ID:WCV9cb5A
「ほら、さっさと土下座しろよ!」

「「は、はい――!」」

ダメだ、真田くん、野澤くん!
でも、体が動かない。

『君の本心は、ホッとしてるんでしょ? 今まで貶みの目が、君に向けられていたのに――今は違う。あの2人に向けられているんだ』

「そ、そんな事っ…!」

『ほら、見てごらん』

声の命じるまま、僕はその先を見る。
そこには――土下座している真田くんと野澤くんがいた。

「ほら、もっと頭下げろよ!」

「「ご、ごめんなさい、ごめんなさい――」」

有岡くんや安井くん、萩谷くん達に囃し立てられ、2人は更に頭を床に擦りつけていた。


それからだった。
いじめの標的が、僕から真田くんと野澤くんに替わったのは――。


「真田、野澤。お前らお茶臭いんだよ。洗って来いよ!」

「「ご、ごめんなさい――」」

有岡くんから野次を飛ばされ、真田くんと野澤くんは教室から出て行った。
真田くん、野澤くん――。

342華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/22(土) 21:50:27 ID:WCV9cb5A
僕が2人を気遣うと――また、声が聞こえる。

『ふふっ、浮かない顔をしているね、嶺亜』

「だって、真田くんと野澤くんは、転んだとはいえ、わざとじゃないのに――!」

『そんな言い訳、あいつらには通用しないよ』

そんなのわかってる!
でも――!

「「ただいま――」」

「うわっ、こっち来んなよ!」

「「ちゃ、ちゃんと洗ってきたよ――?」」

クラスメート達は、更に囃し立ててきた。
と、そこへ。

「お前ら、どうした?」

藤ヶ谷先生が、教室に入ってきた。
よかった!
先生なら、きっと助けてくれる!
僕は、そう思った。
けれど――その願いは、残酷にも打ち砕かれる事になる。

「先生ー、真田くんと野澤くんから、まだお茶の匂いが抜けてませーん!」

神宮寺が、わざとらしく、しかも名指しで先生に言ってきた。
すると、先生は――。

「またか? しょうがないなぁ、真田と野澤は。もう一回洗って来い」

そんな――先生まで!

343華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/22(土) 22:03:25 ID:WCV9cb5A
助けてくれると思っていたのに――!
――今思えば、藤ヶ谷先生は、積極的に生徒と関わろうとしなかった。
僕がいじめられている時も、ただ『無視しろ』とだけ言っていた。
助けてくれるわけなんて、なかった。

「や、やめてください!」

僕は、思わず席を立っていた。
クラスメート達の視線が、一気にこちらに向けられる。

「――あぁ。とりあえず、お前ら席につけ。授業、始めるぞ」

藤ヶ谷先生の言葉に、クラスメート達はそれぞれ自分の席に戻っていった。

「何だよ、中村。邪魔しやがって」

「っ…!」

有岡くんに舌打ちされ、僕は――ギュッと唇を噛みしめた。


昼食の時間になり、僕は手を洗った後、トイレから戻ろうとした。
と、その時だった。

「「おらよ!」」

バシャンッ

待ち伏せしていた安井くんと萩谷くんに、お茶をかけられた。

344華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/22(土) 22:11:10 ID:WCV9cb5A
「よかったなぁ、中村。これで真田や野澤と同じ匂いがついたじゃん」

「ぎゃはは、お茶まみれじゃん!」

周りから、クスクス嗤われた。
もう、嫌だ!
家にいても、母さんは口きいてくれなった。
学校にいても、真田くんや野澤くんと一緒にいじめられる。
藤ヶ谷先生も、味方してくれない。
もう、やめて――!


トイレに戻った僕は、個室で泣いていた。

「「嶺亜くん――」」

真田くんと野澤くんの声が、聞こえてきた。
僕が個室のドアを開けると――そこに、2人はいた。
心配そうに僕を見つめている。

「――もう、嫌だよ。いじめられるのも、いじめられている真田くんと野澤くんを見ているのも――辛すぎるよぉっ!」

僕は――2人にすがりながら啜り泣く。
そして――。

「もう、死にたい――!」

僕は、最悪の決断に出た。

345華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/22(土) 22:17:03 ID:WCV9cb5A
すると、真田くんと野澤くんは――。

「――うん、わかった」

「一緒に、死のう?」

2人の手が、僕の両肩を優しく擦ってくれた。
――うん。
3人一緒なら、怖くない。
決行は、放課後だ――。


そして、放課後。
僕達は、足早に学校を出た。
もう、こんな所とはもうお別れだ。

「こっちの方角に、崖があるんだ。飛び降りれば、一瞬で終わる」

真田くんに案内され、僕達は森の中に入った。

「あれ? 中村さんの所の嶺亜くんじゃないか」

駐在所のお巡りさんが、僕に声をかけてきた。
でも、僕は構わずに森の中へ入って行った。
今日、全てが終わる。
僕達が死ねば、きっと有岡くん達も後悔して反省するはずだ。

346華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/22(土) 22:18:23 ID:WCV9cb5A
枝琉さん>ありがとうございます!
暗い内容ですが、楽しんでいただけて何よりです。
おぉ!
枝琉さんも、小説を始めたのですね!
是非、遊びに行かせてください♪
これからも頑張りますので、枝琉さんも頑張ってくださいね。

347風海人:2013/06/23(日) 15:06:47 ID:sTFDruFc
続きまってます。
これから嶺亜君がどるなるか・・・楽しみですw

348新愛 ◆f5g8KxgXDU:2013/06/24(月) 17:52:17 ID:NeMPufcc
面白い展開になってきましたね!
野澤kと真田kとれいあはどうするんだぁ!?
続き待ってまーす★

349華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 17:49:33 ID:WCV9cb5A
風海人さん>ありがとうございます!
嶺亜くんがどうなるか――これからわかります。
続き、頑張りますね!

新愛さん>ありがとうございます!
真田くんと野澤くん、そして嶺亜くん――。
3人の運命やいかに!?←
お楽しみに!←

350華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 17:55:35 ID:WCV9cb5A
<母視点>

「――遅いわね、嶺亜」

時計を見ると、時刻は午後16時30分。
下校時間はとっくに過ぎている。
なのに、帰って来ない。
私はふと、ある言葉を思い出した。

『僕――学校でいじめられてるんだ』

あの時、学校に行きたくないと言っていた嶺亜の言葉だった。
元々、私は東京で教師をしていた。
だから、うちの子は絶対にいじめられない。
そう、変な自信を持っていた。
でも、あの子は言った。
自分は、いじめられていると。
たかが、いじめぐらいで学校を休もうなんて、私のプライドが許さなかった。
だから、あんな事を言ってしまった。

「――嶺亜」

私は、玄関のドアを見つめた。
嶺亜が帰ってくる気配はない。

「――ちょっと見てこよう」

私は、玄関へ行き、ドアを開けた。
と、そこへ――。

「あぁ、中村さん。どうも」

自転車に乗った、駐在所のお巡りさんが、家の前まで来ていた。

351華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 17:59:25 ID:WCV9cb5A
「あの、うちの嶺亜見ませんでした? まだ、学校から帰ってないんです」

「嶺亜くん? あ、やっぱりあの子はそうかな?」

「え? うちの子を見たんですか!? あの子は何処に!?」

どうやら、お巡りさんは嶺亜を見かけたらしい。
私は、思わず掴みかかってしまった。
お巡りさんは、驚きながらも頷いた。

「嶺亜くんらしい子が、学校から少し離れた森の中へ入って行くのを見たんですよ。しかも――たった1人で」

「えっ!?」

学校から少し離れた森。
その先にあるのは――崖だ!

「嶺亜ーっ!」

私はお巡りさんをその場に残し、駆け出した。
まさか――崖から飛び降りようとするわけ――ないわよね!?
嶺亜っ…!

352華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 18:06:04 ID:WCV9cb5A
<嶺亜視点>

真田くんと野澤くんに導かれるままに、僕は森の中を進んでいた。
そして、森を抜けた。

「ついたよ、嶺亜くん」

そこは、海岸になっていた。
岩場を進めば、すぐそこは崖となっている。

「ここから、飛び降りれば――全て終わる。怖い? 嶺亜くん――」

野澤くんに問われ、僕は一瞬立ち止まった。
けれど――。

「――ううん、大丈夫。真田くんと野澤くんが一緒だから、怖くない」

「そっか」

「それじゃ、こっちへ――」

真田くんと野澤くんに手を引かれ、僕はゆっくりと崖へ進んだ。
下を見ると、そこはもう大海原だ。
多分、いや絶対、落ちたら命はない。

「じゃあ、逝こう。 せぇので飛び降りるからね」

「「うん」」

僕を真ん中に、2人は両隣に立った。

「せぇの――」

僕が合図を出した時だった。

ドンッ

2人分の力が、僕の背中を押した。

「――えっ?」

グラッという音と共に、僕は崖から落ちそうになった。
すると――。

ガシッ

誰かが、僕の腕を掴んだ。

353華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 18:11:45 ID:WCV9cb5A
「――掴まれっ、嶺亜くん!」

「きゅ、吸血王――さん!?」

上を見上げると、僕の腕を掴んでいたのは、吸血王さんだった。
どうして?
真田くんと野澤くんは――?

「えいっ…!」

吸血王さんは力一杯僕を引っ張り、崖の上へと上がらせた。

「はぁっ…はぁっ…死ぬ気か!?」

「だ、だってっ――もう、いじめには耐えられないし、真田くんと野澤くんも一緒に死んでくれるって――!」

そうだよね、と僕が顔を上げた。
すると、2人は無表情だった。
そして――。

「――あーあ。やっと美味い魂にありつけられると思っていたのに」

「余計な邪魔が入ったな、佑馬」

「えっ――!?」

魂?
邪魔?
どういう事!?

「やっぱり――君達は、吸魂鬼だな!?」

吸血王さんは、僕を抱きしめながら、真田くんと野澤くんを睨んだ。
すると――。

「ほう、やはりお前だったか。我らを嗅ぎ回っていたのは――」

「そうだ。これは、仮なる姿でしかない――」

そう言うと、真田くんと野澤くんは手を叩き――大人の姿になった。

354華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 18:12:23 ID:WCV9cb5A
ちょっとこれから夕飯なので、帰って来てから更新します!

355遥貴:★:2013/06/29(土) 18:58:55 ID:yNZhV4rk
うわわ!変わった考え方という大人びた子たちだなみたいには思っていましたが、まさか吸血鬼だったとは(°□°;)

だから駐在さんは一緒にいる二人へのリアクションが皆無だったんですね!


続き驚きながらお待ちしてます!

356華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 20:12:25 ID:WCV9cb5A
遥貴さん>ありがとうございます!
そう、真田くんと野澤くんの正体は、吸魂鬼でした。
果たして、吸血王(北斗くん)は、無事に嶺亜くんを守れるのか!?
頑張ります!

357華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 20:22:15 ID:WCV9cb5A
あどけなさは、多少残っているものの、あの優しげな瞳はもうない。
今の彼らの瞳は――冷酷そのものだ。

「何故、嶺亜くんを狙ったんだ――!?」

「我らは、お前とは違って非力でな。自分で直接命を奪う力はない」

「だが、ちょうど良く魂を喰らう方法を知った。それが――そう、いじめだ」

まさか、いじめを使って、いじめられている子の魂を喰らおうって事なのか!?
だから、僕の前に現れたのか。

「我らの涙は、魔力が込められている。それを見た者は――いじめずにはいられなくなるようになるのさ」

「有岡大貴らに我らをいじめさせ、ある程度のレベルになったら姿を消し、再びいじめられる中村嶺亜の魂を、喰らおうとしたんだがな――まさか、吸血王自ら助けるとは」

ククッ、と真田くんと野澤くんは、吸血王さんに向かって嗤った。

「このっ――許さない!」

僕を背中に隠し、吸血王さんは2人に向かおうとした。
と、その時だった。

「やっぱり、君達だったんだね」

聞き覚えのある声が聞こえた。

358華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 20:29:06 ID:WCV9cb5A
そう――真田くんと野澤くんが、学校でいじめられている時に、僕に囁きかけてきた声だった。
その声の主は、姿を現した。
僕より少し上くらいの、男の子だ。

「ち、知念くん!? 謹慎していろって言ったのに――!」

「だめだよ。僕を動かしていいのは、僕だけなんだから。それより、佑馬くんと祐樹くんをこのまま倒しちゃっていいの?」

男の子は、知念くんというらしい。
吸血王さんの知り合いなのか?
2人を倒しちゃってもいいのかって、どういう事!?

「――知ってたんですね、知念くん。どういう意味ですか!?」

「わかってるはずだよ。君が、このまま力を振るったらどうなるか――」

吸血王さんは、知念くんを睨んでいる。
でも、彼は上機嫌だった。
代わりに、真田くんと野澤くんが答える。

「俺と祐樹を倒したらどうなるか――もうわかっているだろう? 吸血王」

「俺と佑馬を倒す。それは即ち、明日からいじめられっ子の真田佑馬と野澤祐樹はいなくなり、いじめられっ子のベクトルは――再び中村嶺亜に向けられる事になる!」

「あっ――!」

359華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 20:34:16 ID:WCV9cb5A
2人の指が、僕に向かって指された。
そうだ。
このまま、2人がいなくなったら――再び僕がいじめられる事になるんだ!

「くっ――この卑怯者!」

「「我らの目的はただ一つ――いじめの楽しさを、世に知らしめる事だ! あっははははははっ!!」」

真田くんと野澤くんの嘲笑が、僕の脳天を突き破る。
そんなっ――僕はずっと、この2人に踊らされていたのか。
友達だと、思っていたのに――!
また、いじめられるなんて――嫌だ!
吸血王さんは、拳を握りしめていた。

「――吸血王として、警告する。この惨劇の連鎖を終わらせろ」

「無駄だって。彼らにそんな警告、通じないよ。彼らが今言っていた事、もう忘れちゃったの?」

吸血王さんに、知念くんはクスッと笑った。
すると、彼は首を横に振る。

「いいえ、知念くん。忘れてなんかいません。確かに、あの2人は倒せない。でも、止める事ならできます――!」

「「ほう、面白い! 我らを止めると!?」」

360華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 20:39:05 ID:WCV9cb5A
「俺は――嶺亜くんをいじめの連鎖から守る! そう決めたんだ!」

僕の前に立った吸血王さんは、真っ直ぐな瞳で真田くんと野澤くんを睨んだ。
どうして――?
どうして、そこまでして、僕を守ってくれるの!?

「吸血王さん――伝説では、あなたは残虐のはず。なのに、どうして僕を助けてくれるんですか!?」

僕は、吸血王さんに訊ねた。
すると――。

「――答えは一つだよ。かつて、俺もいじめられていたから。いじめの連鎖から逃れきれず、俺は死んだ。だから、嶺亜くんには俺みたいになって欲しくないんだ。だから、君を守る――!」

「っ――!!」

ずっと、味方は死んだ父さんだけだと思っていた。
でも、ちゃんといたんだ。
人間ではないけど、僕をいじめから救おうとしてくれた人が――いたんだ!

「――真田佑馬、野澤祐樹。直ちにこの狩りを止め、この島から退場しろ」

吸血王さん――!

361華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 20:43:26 ID:WCV9cb5A
「「――いいだろう。我らの狩りの邪魔をしたらどうなるか――見せてやろう!」」

「!?」

突然の事だった。
真田くんと野澤くんが消えたかと思ったら、いつの間にか吸血王さんの両隣にいた。
そして、魔法のように何かを取り出す。

「これは記憶針と言ってな。刺さると、過去の辛い、苦い、残酷な日々が甦るのさ!」

「まずは、1本!」

「ぐあっ…!」

大きな針が1本、吸血王さんの体を貫いた。
彼の返り血が、僕の顔にかかる。
きゅ、吸血王さんが――!

362華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 20:48:45 ID:WCV9cb5A
<北斗視点>

真田佑馬と野澤祐樹の放った記憶針が、1本だけ俺を貫いた。
同時に、ある事が鮮明に甦る。

『おい、松村。お前ゴミ臭いんだよ。こっち来んな!』

それは東京にいた頃、同じクラスの男子から、突然浴びせられた罵声だった。
勿論、心が痛くなるような言葉だった。

「まだだ――次だ!」

「うぐっ…!」

2本目が、再び俺を貫いた。

『松村くんってさ、高慢ちきだよね。お勉強が出来過ぎる事を自慢するっていうかさー』

今度は、女子の声が聞こえた。
甲高く、俺を嘲笑する声が――。
記憶針は、どんどん俺の体を貫いていった。

『ほら、落ちたゴミ食えよ!』

『お前の顔、雑巾で拭いてやるよ!』

363華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 20:56:06 ID:WCV9cb5A
辛い。
痛い。
苦しい。
でも、こんなの嶺亜くんが受けたいじめと比べたら――まだ耐えられる!

「ほう、まだ耐えられるか。もうハリネズミ状態なのに――」

「ならば――これならどうだ!?」

「うあぁっ…!」

今までよりも太く、大きな針が、俺の心臓部を貫いた。
同時に思い浮かんだのは、人間として死ぬ直前の事だった。
そう、高木くんに蹂躙されていたあの日々だ――。
服を脱がされ、暴力を受け、恥ずかしい写真を撮らされた。
知念くんと出会って、吸血王にしてもらえると知って粋がっていた。
その結果、俺は――高木くんに殺された。
鉄パイプで何度も殴られ、終いには斧で体をバラバラにされ――底なし沼に沈められたんだ。

「吸血王さん、吸血王さん――しっかりして!」

ハリネズミ状態の俺の元に、嶺亜くんが駆け寄ってきた。

「もうやめてっ! これ以上、吸血王さんを傷つけないでっ――!」

「嶺亜――くんっ――!」

嶺亜くんの震える肩に、俺は優しく手を乗せた。
血まみれの手を――。

364華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 21:10:43 ID:WCV9cb5A
<嶺亜視点>

僕の目の前で、吸血王さんは倒れた。

「もうやめてっ! これ以上、吸血王さんを傷つけないでっ――!」

「嶺亜――くんっ――!」

震える手で、僕の肩に触れてきた。
そして――。

「負けるな――いじめに、立ち向かってっ――!」

そう言い残して、吸血王さんはガクッと項垂れた。

「吸血王さん――!」

「あーあ。コテンパンにやられちゃったねぇ」

知念くんが指を鳴らすと、吸血王さんは彼の腕の中に移動した。

「な、何をっ――!?」

「何って、手当するんだよ。彼に死なれては困るからね。ごきげんよう、嶺亜」

吸血王さんを連れて、知念くんは姿を消した。

365華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 21:19:52 ID:WCV9cb5A
残されたのは、僕と真田くん、野澤くんの3人だけだ――。

「ふん、知念め。邪魔をしたな」

「まぁ良い。これで我らを止める者は、もういない」

「ひっ…!」

2人の視線が、僕に向けられた。
逃げなきゃ!
でも、体が動かない!

「中村嶺亜。お前に、チャンスをやろう」

「チャ、チャンス――!?」

チャンスって、何!?
すると――。

「これからも、『真田佑馬と野澤祐樹をいじめる』と誓え」

「そうすれば、いじめられっ子の役割を、我らが引き受けてやっても良い」

「っ――!?」

ほ、本当に?
2人が引き受けるとなったら、僕はもういじめられない――?
僕は、思わず頷きそうになった。

366華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/06/29(土) 21:29:27 ID:WCV9cb5A
でも、その時――吸血王さんの言葉を思い出した。

『負けるな――いじめに、立ち向かってっ――!』

そうだ。
吸血王さんは、僕を守ってくれたじゃないか。
体を張って、あんなにボロボロになって――。
それでも、僕を助けてくれた。
僕は、彼の思いを無視するなんて――できない!

「――っ」

「何だ? 聞こえないな。もう少し大きい声で言っておくれ、嶺亜」

ニヤリと嗤いながら、真田くんは僕の顎を軽く掴んだ。
顔を上げさせられた僕は――こう言った。

「――断る! 僕は、誰かを犠牲にしてまで、いじめられたくないとは思わない! 吸血王さんの為にも――いじめに怯えるのを止める。いじめと戦う!」

そう、それが僕の決断だった。
それを知った真田くんと野澤くんは――。

「「ほう、面白い! 良いだろう、見届けてやる! 再びいじめられっ子になったお前が、どういう生き様を見せてくれるかをな!!」」

そう言い残し、2人は姿を消した。

367風海人:2013/06/30(日) 14:10:42 ID:sTFDruFc
続きまってます

368華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 15:58:44 ID:WCV9cb5A
風海人さん>ありがとうございます!
嶺亜くんがどうなるのか――この先をお楽しみに!←え、ちょっと!?by嶺亜
頑張ります!
――ID、また変わってるかもしれませんが、再び無線LANを直したんです;
トリップを見てくだされば、華乃本人だとわかりますので!

369華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 16:04:14 ID:WCV9cb5A
残された僕に纏わり付いているのは、静寂のみ――。

「――僕は、何て事を言ってしまったんだ」

いじめと、戦うなんて――そんな、大それた事。
どうやって、戦えばいいんだ!?
僕は、吸血王さんみたいに、強くない――!
と、そこへ。

「嶺亜ーっ!」

「あっ…」

森の方から、知っている声が聞こえてきた。
母さんの声だ。
森を抜けると、母さんは、息を切らしながらこちらに向かって走ってくる。

「嶺亜、大丈夫!?」

「えっ――」

近づくと、母さんは――僕を抱きしめてきた。

「さっき、駐在所のお巡りさんから聞いたの。あなたが、1人で森の奥へ入って行くのを見たって――まさかと思って来たんだけど、無事でよかったっ――!」

母さんはそう言いながら、ギュッと、強く僕を抱きしめた。

「ごめんね、ごめんね――嶺亜っ!」

「母さっ…母さぁん!」

今思えば、母さんに抱きしめられたのは――久しぶりかもしれない。
そう、父さんが死んだ時以来だ――。

370華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 16:10:01 ID:WCV9cb5A
母さんは僕を抱きしめ、何度も何度も「ごめんね」と繰り返していた。
僕の中の感情が爆発し、僕もわーっと泣いた。


そして、家へ帰った後。
僕は、改めて学校でいじめられている事を話した。
無視しても、有岡くん達が執拗にいじめてくる事を打ち明けると、母さんは黙って聞いていた。

「――そうだったのね。母さんが先生をしていた時に、クラスにいじめなんてなかったから、うちの子は大丈夫――なんて自惚れていたわ。母さん、明日学校へ行って、藤ヶ谷先生や校長先生に話をしてくる。嶺亜を、いじめから解放してもらえるようにね」

「うん――!」

母さんの言葉に、僕は頷いた。
吸血王さん、父さん。
僕――いじめと戦うよ。
母さんと一緒に、戦っていく。
だから、見ていてください――!


翌日。
僕と母さんは、学校へ足を運んだ。

371華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 16:15:02 ID:WCV9cb5A
「嶺亜、大丈夫? 辛かったら、先に帰っていていいのよ?」

「――ううん、大丈夫。僕だけ、逃げるわけにはいかないから」

「――わかった。気をつけてね、嶺亜」

「はい、母さん」

昇降口で母さんと別れ、僕は――教室に向かった。
そして、教室の前で足を止める。
中からは、何も聞こえてこない。
――怖い。
さっきから、心臓がバクバクいっている。
逃げたいけど、今は逃げる事は許されない。
僕を守ってくれた吸血王さんの為にも――!
逃げるわけには――!
僕は心を決め、教室のドアを開けた。
すると――。

パシャンッ

「!?」

突然、何かをぶつけられた。

「お、安井、ナイスシュート! それにしても汚ぇな、中村よぉ」

有岡くんの第一声で、何を投げつけられたかわかった。
それは――生卵だ。

372華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 16:20:41 ID:WCV9cb5A
「ほら、どんどん投げろーっ!」

「くらえ、生卵爆弾ーっ!」

「わっ、や、やめっ…!」

クラス中から、生卵をぶつけられ、僕はその場に崩れ落ちた。
でも、相手はやめない。
更に生卵を投げつけてくる。
真田くんと野澤くんの時とは違う。
否、前に僕がいじめられた時とも違う。
――悪化してるんだ。
前と同じだと思って、侮っていた。

「あっれ〜? もう卵ないんですけどー」

「まぁまぁ、これからもっと面白くなるからさ」

神宮寺が、卵がもうない事に気付くけど、有岡くんは僕の前まで歩み寄った。

「俺さ、実は中村の事、前からいいなと思ってたんだよね」

「えっ…!?」

ど、どういう事!?
有岡くんは、何を言ってるんだ!?

「日に日にいじめられているお前を見るとさ、憐れみを覚えるんだよ。だからさ――」

有岡くんは、僕の耳元で、こう囁いた。

373華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 16:22:18 ID:WCV9cb5A



























「――脱げよ、中村――」



――えっ!?
な、何――どういう事!?
脱げって、何!?
もしかして、全部脱げって事――!?

374華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 16:31:14 ID:WCV9cb5A
<母視点>

「――ですから、本当にいじめがなかったか、ちゃんと調べてください!」

あれから、応接室代わりに職員室で校長先生や藤ヶ谷先生と話していた。
否、叫んでいたというべきか。

「心配しすぎですよ、お母さん。あの子達は遊んでいるだけです」

「どこがですか!? 嶺亜は泣きながら言ったんですよ! 『自分はクラスでいじめられている』って!!」

「それは、嶺亜くんが被害妄想を抱えているだけでは?」

しれっとした態度の藤ヶ谷先生を見ていると、引っぱたきたくなる。
でも、私は敢えてそうしなかった。
元とはいえ、教師だから。

「お母さんの仰るとおり、いじめがなかったか調べたいのですが――プライバシーの問題がありまして」

「プライバシー? そんなもの何ですか!? あの子は、自殺しかけたんですよ! いじめっ子達だけじゃない、貴方達教育者によって――!」

「し、しかし――!」

375華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 16:38:04 ID:WCV9cb5A
校長先生は、オロオロしていた。
流石の藤ヶ谷先生も、焦りを隠せなくなってきたようだ。

「とにかく、うちの子はいじめの被害者です! そちらが対処しないというなら、こちらにも考えがありますので! それじゃ、うちの子を連れて帰ります!!」

そう言い放つと、私は職員室から出て行った。
全く。
話になりやしない。
嶺亜が先生達を頼れないわけだ。
こんな学校に通わせた自分が許せない――!

376華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 16:39:04 ID:WCV9cb5A
と、その時だった。

「中村嶺亜くんの、お母様ですね?」

「だ、誰ですか!?」

前方から、1人の男性が話しかけてきた。
この学校の先生かしら――?

「私は、嶺亜くんの知り合いです。今、この学校の先生達と話してきたようですね。正直、無駄足だと思いますよ」

「ど、どういう事――!? まずは、学校を通して――!」

「嶺亜くんは、自分が死ねばあのいじめっ子達が反省すると思っていたようですが、思い違いです。何も変わりはしない。寧ろ、第二、第三の嶺亜くんが生まれるだけ――それに、嶺亜くんが助けを求めている相手は、あの無能な教育者共ではない。亡くなられたお父様でもない――他でもない、あなたです」

「えっ?」

この人は、誰なの?
本当に、嶺亜の知り合いなの!?
私は、そう問おうとした時だった。

「助けて、母さんっ!」

「!?」

突然、背後から嶺亜の叫びが聞こえてきた。

377華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 16:43:36 ID:WCV9cb5A
<嶺亜視点>

「おら、脱げよ!」

「じっとしろって!」

安井くんと萩谷くんに押さえ込まれ、僕は身動きが取れなくなった。

「ほら、有岡くん。先生が来る前にさっさとシちゃえよ!」

「っせーな、わかってるよ。ほら、大人しくしろよ中村ぁ!」

「やだああぁぁっ!」

有岡くんによって、どんどん制服を脱がされていく。
そして、下着だけになった時――僕は思いきり暴れた。

「「わっ…!」」

その力に耐えきれなかったのか、安井くんと萩谷くんが吹っ飛んだ。
同時に僕は有岡くんを押しのけ、教室から飛び出した。

「くそっ…待てよ!」

「いやっ…来ないでええぇっ!」

逃げようとする僕を、有岡くん達が追いかけてくる。
逃げなきゃ!
少しでも、遠くへ――!

378華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 16:48:17 ID:WCV9cb5A
でも――。

「うわっ…!」

つまずいた僕は、その場に倒れ込んでしまった。

「へへっ、追い詰めたぜ。中村ぁ」

「もういいよ、有岡くん。この場でヤっちゃおうぜ」

「やっ…助けて、母さんっ!」

有岡くんと安井くんが、僕に向かって手を伸ばしてきた。
と、その時だった。

「何をしているの!?」

母さんの声が聞こえた。
その声は、だんだんと僕達に近づいてくる。

「息子から離れてっ――!」

「やべっ、逃げろ!」

母さんに突き飛ばされ、有岡くん達は逃げて行った。
ふわっと母さんに抱きしめられた僕は――安心したのか、そっと意識を手放した。

379風海人:2013/07/05(金) 18:59:05 ID:sTFDruFc
続きまってます

380華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 21:36:41 ID:WCV9cb5A
風海人さん>ありがとうございます!
嶺亜くん編は、もうすぐ終わります。
お楽しみに!

381華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 21:51:19 ID:WCV9cb5A
<真田視点>

数日後。
俺と祐樹は、再びあのクラスに潜入した。
クラス中、シーンとしている。
否、何人かはペンをノートにブスブス刺したり、机を足で蹴ったりしている。

「あーもう、イライラするぅ!」

そのうち1人が、頭を掻き乱しながら声を張り上げた。

「中村の野郎、とうとう不登校になりやがって!」

「なぁ! あいつ中村のくせに生意気すぎるぞ!」

口々に、生徒達は嶺亜の名前を口にする。

「有岡くん、次にあいつが来たらどうする?」

「ハッ! 決まってるだろ。陵辱して、壊して、泣き叫ばせてやるんだよ!」

「ぎゃはは、それ最高じゃん!」

有岡の言葉と同時に、クラス中に嗤いの渦が巻き起こった。
そうだ、それでいい!
更にいじめの輪を広げろ!

382華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 22:00:39 ID:WCV9cb5A
「愉快――愉快だなぁ、佑馬!」

「ああ、祐樹。いじめの輪を広げれば、更に弱き魂を食い尽くせるからなぁ!」

嶺亜もあっさり屈服した。
あれほど、いじめと戦うとほざいていたのにな。
ふん、やはり弱き者は弱き者。
嶺亜の魂は、いじめられる事で極上の味となる。
それが楽しみで仕方が無い!
と、そこへ。

「………」

担任教師の藤ヶ谷が、教室に入ってきた。
しかも、青ざめた顔で――。

「あれ? 先生、どうしたんですか?」

「顔、青いんですけど――」

安井や萩谷が、彼に問いかけた。

383華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 22:10:11 ID:WCV9cb5A
すると――。

「みんなに、お知らせがある。このクラスが――」

「?」

何だ?
何が起ころうとしているんだ?
藤ヶ谷の次の言葉に、我らは驚愕とする事になる。


「このクラスが――訴えられる事になった」


「「!?」」

驚いたのは、俺と祐樹だけではなかった。
クラス中が、驚愕していた。

「どうやら、中村のお母さんが――裁判を起こす気のようだ。俺も含めてな」

な、何だと!?
このままでは、いかん!
俺と祐樹は、フッと姿を消した。


「あの女め――つまらん真似を!」

「佑馬、俺に考えがある。島ぐるみであの親子をいじめさせるのさ。そうすれば、親子ごと魂を喰らう事ができる!」

なるほど――流石、祐樹だ。

384華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 22:16:35 ID:WCV9cb5A
ならば、早速この島の奴らの心の闇を溢れ出させようじゃないか。
と、その時だった。

「そうはさせない!」

「ぐぁっ…!」

聞き覚えのある声が、祐樹の首筋に噛み付いた。
その声の主は――吸血王だ!
血と魂を吸われた祐樹は、その場に崩れ落ちた。

「祐樹っ…! おのれ、吸血王――!」

「っ…!」

俺の拳を、吸血王は回避した。
そして――。

ガブッ

「ぎあぁっ…!」

俺の首筋に、噛み付いてきた。
そして、俺はそのまま気を失った。

385華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 22:24:14 ID:WCV9cb5A
<嶺亜視点>

1ヶ月後――。

「じゃあ、行ってきます」

「気をつけていってらっしゃい、嶺亜」

港で母さんに見送られ、僕は定期船に乗り込んだ。
いじめを目の当たりにした母さんは、『もうあんな学校には行かなくていい』と言った。
そして、隣の島の学校に転校させてくれたんだ。

「――ふぅ。今日もいい天気でよかった」

藤ヶ谷先生やいじめっ子達を訴え、今も裁判で争っている。
これは、長期戦になると思う。
でも、もう怖くない。

「嶺亜くん」

「え? あっ――吸血王さん!」

背後から声をかけられ、振り返ると――そこにいるのは、吸血王さんだった。
また会えるなんて――!

「よかった、無事だったんですね!」

「ごめんね。あの時は、気を失っちゃって――あれから、知念くんによってあんな手当やこんな手当をされたけど;」

「そ、そうなんですか;」

386華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 22:33:27 ID:WCV9cb5A
でも、助かってよかった!

「新しい学校はどうかな? やっていけそう?」

「はい、新しいクラスメート達はみんな優しく接してくれるし、学校にはカウンセラーの先生がいるから、やっていけると思います」

「そっか、よかった!」

僕と吸血王さんは、互いを見ながら微笑んだ。
そして、僕は語り始める。

「僕、今回の事で学んだんです。いじめとは――戦わなくちゃいけないって事を。まぁ、僕は何もできなかったけど」

「いや、君は充分強いよ。きっと、これから先にいじめられる子を助ける事ができる」

「そう――かな?」

「そうだよ。もう、胸を張っていい、自信を持っていいんだ!」

吸血王さん――ありがとう。
その言葉に、僕は救われました。

「俺は、ずっと君を見守り続けるよ。嶺亜くん――!」

「はい――僕も、吸血王さんの事、忘れません!」

吸血王さんは、僕に微笑んだまま――そっと姿を消した。
そうだ――僕は、1人じゃない。
新しい仲間達がいる。
そして――母さんがいる!
この先、またいじめられても――今度は戦える、ううん、戦ってみせる!

387華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 22:39:28 ID:WCV9cb5A
<北斗視点>

「おかえりなさいませ、北斗様」

「「おっかえりなさーい♪」」

屋敷に戻ると、博貴さんや翔央くん、玲央くんが出迎えてくれた。
ただいま、みんな。

「あ、そうだ。博貴さん、嶺亜くんのお母さんの件、ありがとうございました」

「いいえ。私は――北斗様の為ならば何でも致します」

「珍しいね、博貴。普段は僕に対しては何にもしてくれないのに」

「知念様の普段の行いを考えたら、北斗様の行いに断然賛成致します」

俺が博貴さんにお礼を言うと、知念くんが話に入ってきた。
博貴さんの言葉に、彼は頬を膨らます。

「ところで、あの2人を地下室に閉じ込めたけど――どうする、北斗? 王は君だ、処分を決めていいよ」

「これから行きます。処分は――後で決めます」

知念くんと共に、俺は地下室へ向かった。

388華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/05(金) 22:47:12 ID:WCV9cb5A
地下室では、鎖に繋がれた真田佑馬と野澤祐樹がいた。

「――何故、我らにトドメを刺さなかった?」

「俺は、誰かを犠牲にするつもりはない。君達には生きて、罪を償ってもらう。嶺亜くんを傷つけた罪を――」

「ふん、甘い男だな――」

真田と野澤は、反省していなかった。
今はまだその態度でいられるだろう。
ゆっくりと、反省していけばいい。
俺と知念くんは、踵を返そうとした。
すると――真田が、ある事を言い放つ。


「――その甘さでは、生きていけないぞ? これから起こる、惨劇の中ではな――」


「――今、何て言った!?」

惨劇だって!?
太陽さんも、同じ事を言っていた。
惨劇って、君達の事じゃなかったのか!?

「ふふっ――見届けさせてもらうぞ。お前がどう生きて、どう死んでいくかをな――」

野澤が、不敵に笑った。
一体、何が起こるというんだ――!?

389風海人:2013/07/06(土) 11:12:55 ID:sTFDruFc
続きまってます

390風海人:2013/07/13(土) 17:23:53 ID:sTFDruFc
次の小説も待ってます↑勘違いしました。どもすいません

391華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/14(日) 00:34:14 ID:HS1nWYAY
携帯から、失礼します;
風海人さん、ありがとうございます!
ちょっと今週は更新できそうにありません;
次、また更新しに来ます!

392遥貴:★:2013/07/22(月) 20:20:39 ID:yNZhV4rk
こんにちは!なかなかこれなくてすいません(^O^)

どうなるかと思いましたが、お母さんが味方になってくれてよかったです(*^o^*)
ただのんさな吸血鬼コンビが言っていた事も気になりますねぇ。
北斗君は優しさを武器にしている子ではありますが、それだのりきれない問題が起こっちゃうのかなぁって気にしつつ続き楽しみにしています

393華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/07/28(日) 21:21:53 ID:WCV9cb5A
遥貴さん>ありがとうございます!
2週間も更新できずに、申し訳ありません;
管理人さんからのルールの追加を見たのですが、いまいちわからなくて…;
管理人さんの返答を待つ為、ちょっと更新をストップします。
本当の惨劇は、これから始まろうとしています。
一体どうなるのか――お楽しみに!←こら

394華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/08/03(土) 17:55:02 ID:WCV9cb5A
まだ、管理人さんからの返答はありませんが、ちょっと更新します。
管理人さん、ごめんなさい;

395華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/08/03(土) 17:58:52 ID:WCV9cb5A
<優吾視点>

朝早くに目を覚ました俺は、そっと家を出た。
そして、海を眺める。

「何でだろう? 凄く嫌な予感がする――」

外の天気は良い。
でも、何故か気持ちがすっきりしない。
寧ろ、嫌な予感がするんだ。
この島に、とてつもない何かが――。

「――北斗」

俺は、ふと『彼』の名前を口にした。
禁断の名前を――。
あぁ、北斗。
俺は、君の名前は憶えているのに――顔が思い出せない。
どうして?
君は、どんな顔をしていたの?
教えて、お願い――!

「ここにいたのか、優吾」

「あ、じいちゃん――」

背後から、じいちゃんが声をかけてきた。

396華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/08/03(土) 18:03:13 ID:WCV9cb5A
じいちゃんは、そのまま俺の隣に来る。

「誰かを想っていたみたいだな」

「――うん。もういない、友達の事をね。不思議なんだ、名前は憶えているのに、顔が思い出せない。友達のはずなのに――どうしてなのか、わからないんだ」

「そうか」

じいちゃんは、深くは追求してこない。
正直、それが有り難かった。
吸血王さんと、約束したからね。
この島の人達に、北斗の事を思い出させてはいけないって。
唯一、俺だけは憶えていていいって言ってくれた。
吸血王さんは、どうして北斗の事を思い出すなと言ったんだろう。
北斗がこの世から消えた事と、何か関係があるのかな?

「さぁ、そろそろ朝ご飯にしよう。家に入りなさい、優吾」

「――はい、じいちゃん」

じいちゃんに促され、俺は家に入った。

397華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/08/03(土) 18:09:51 ID:WCV9cb5A
<北斗視点>

何故だろう。
夢に、優吾達や母さんが出てきた。
凄く、懐かしかった。

「これは――涙、か」

俺の頬に伝っているのは、涙だった。
涙、か。
もうとっくに捨てたつもりだった。
俺が、吸血王になってから――。

「――目が覚めちゃった」

もう朝だし、起きよう。
ベッドから起き上がった俺は、そっと部屋を出た。
吸血鬼や吸魂鬼は、夜中に行動するイメージが強い。
でも、知念くんや俺は、朝や昼間に行動しても、大丈夫な体をしているようだ。
階段を下りると、食卓の方から、笑い声が聞こえてきた。

398華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/08/03(土) 18:15:33 ID:WCV9cb5A
中には、聞き覚えのない声が聞こえる。
誰か、来ているのか?
俺は、そのまま食卓の方へ向かった。


「やぁ、おはよう。北斗」

中に入ると、知念くんが声をかけてきた。

「おはようございます、知念くん。さっきから騒がしいんですけど――」

「あぁ、ちょっとお客さんが来ているのさ」

お客さん?
知念くんと俺の視線の先には、少し小柄の男性が座っていた。

「おっ! どうも、あんたが吸血王様って奴かい?」

「はい。前世の名は松村北斗と言います。あなたは――?」

「俺は、小野寺一希。吸血鬼で、情報屋を営んでいる者だ」

情報屋?
じゃあ、一希さんがここにいるって事は――何か情報を持って来たという事なのか?

「そういう事だ。あんたに、警告しておかなくちゃならない事がある」

警告?
何だろう?

399華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/08/03(土) 18:21:08 ID:WCV9cb5A
すると――。


「あんたは――『ヘルシング』って奴を、知ってるかい?」


ヘルシング?
まだ俺が人間だった頃、父さんが話してくれた気がする。
確か、吸血鬼を狩る人の事を言うんだっけ?

「そうだ。そのヘルシングの今の当主が、この島を探しているらしい。もしここが見つかったら、大変な事が起きる」

「大変な事――? 一希さん、それは一体――」

「まぁ、目にすればわかる事だ。じゃ、情報料をもらうよ」

え、情報料!?
お金なんて、持ってないけど――。

「いや、金はいらないよ。博貴さん、アレちょうだい」

「かしこまりました」

一希さんに頼まれ、博貴さんがあるモノを持って来た。
ビン、か?
そのビンの蓋を開け、グラスに中身を注いでいく。
真っ赤な液体だ――って、まさか、血か!?

400華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/08/03(土) 18:28:12 ID:WCV9cb5A
「ちょっと、博貴さん! それ、誰の血ですか!?」

「ご安心ください、北斗様。これは、血に似たワインでございます」

「本当は、血そのものが欲しかったんだけどね。今の吸血王様は、それを望んでいないらしい。だから、ワインで我慢させてもらうよ」

え、それ俺のせい?
俺のせいなの!?

「北斗がもっと残虐になってくれれば、血も魂も飲み放題、そして食べ放題なのになぁ」

「ち、知念くんまで――! 俺は、この島の人達を犠牲にするつもりはありませんから!」

「ふふ、わかってるよ、北斗v」

本当に、わかってくれているのか――?
でも、不思議だ。
ここで暮らしていくうちに、この光景すら、微笑ましく思えてくる。
これが、家族なんだろうか――。

「一希さん、安易に外に出ない方がいい。しばらく、この屋敷にいたらどうですか?」

「お、優しいねぇ。じゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

「「賛成ー♪」」

一希さんや翔央くん、玲央くんは喜んだ。
それにしても、ヘルシングか――。
当主とは、一体どんな人なんだろう?

401華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/08/03(土) 18:35:29 ID:WCV9cb5A
<???視点>

「当主、遂に到着だぜ」

個室でのんびりしていると、光くんが声をかけてきた。

「もう、そんな時間ですか。早いものですね。ねぇ、圭人くん?」

「……はい」

俺の隣に控えていた圭人くんは、ゆっくり頷いた。

『まもなく、小夜鳴島に到着致します』

アナウンスも、聞こえてきた。
では、行きましょうか。


「お待ちしておりました。ようこそ、小夜鳴島へ」

船から降りると、町長らしき男が出迎えた。

「出迎え、ありがとうございます。今日からお世話になる、山田涼介です。こちらにいるのは、八乙女光くんと岡本圭人くんです」

「こんなに大勢も――いやはや、小夜鳴島も、発展する事でしょう。では、こちらへ」

町長は、光くんや圭人くん、そして大勢の部下を案内し始めた。
俺は、辺りを見回す。
そして――悟られないように呟く。

「田舎くさい所ですね。早く『仕事』を終えて、去りたいものだ――」

402風海人:2013/08/03(土) 18:46:00 ID:sTFDruFc
続きまってます

403華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/08/03(土) 22:22:06 ID:WCV9cb5A
風海人さん>ありがとうございます!
この先どうなるのか――楽しみにしていてくださると嬉しいです。
これからも頑張ります!

404ひー ◆2nWshnhXe2:2013/08/06(火) 18:51:31 ID:8N6q9feI
こんばんは(*´∇`)
久しぶり(*´∇`)
元気ですか?
わ〜気になる〜(。≧∇≦。)

あっ こことは関係ないけど向こうの掲示板でバカレアの小説 期限内?で書いてるんですね
向こうの掲示板には訳あって書き込まないけど 読みますから(。・ω・。)
無理にしないで頑張って(@゚▽゚@)

405華乃 ◆tJelgF5jwU:2013/08/10(土) 21:58:52 ID:WCV9cb5A
ひーさん>ありがとうございます!
お久しぶりです!
何とか、元気で頑張っています。
物語も、いよいよラストスパートです。
明日、更新できたら更新しますね!

シェルターで、期間限定ではありますが、書いています。
ひーさんに見守っていただけたらなと思います。


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