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吸血王の島<知念×北斗中心>
206
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/23(土) 20:57:12 ID:2KlcS6Xo
な、中山――!?
「どうして? だって、その子は君をいじめたんだよ? 君が死にたくなるくらいにね。それに、ずっと望んでいたじゃないか。高地くん達、クラスメートに復讐する事を――」
知念くんの言葉が、俺の胸に突き刺さった。
そう、俺は彼をいじめた。
壊れるまで――いじめ抜いた。
『確かに、俺はいじめられました。毎日毎日、辛かった――でも、それは全て俺のせい。俺が、高地くんに罪を着せたから、彼の心は歪んでしまったんだ――』
「高地くんのせいで、君は死んだ。周りから、忘れ去られたんだよ? つまり、君は高地くんに殺されたも同然だ」
『俺が死んだのは――高地くんのせいじゃないです。俺が、自分の意思で決めた事――そして、俺自身が弱かったからです』
中山――もしかして、死んだ後はずっと俺を――?
207
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/23(土) 21:02:35 ID:2KlcS6Xo
「ふふっ――高地くん。彼は、死んだ後、どこに行ったと思う?」
「えっ――」
死んだ後って――まさか!
「そう、そのまさかだよ。生きる権利を放棄した人には、もれなく地獄行きが待っているのさ。君のせいで、優馬は地獄へ堕ちたんだ――!」
「そ、そんな…っ!」
やっぱり、俺のせいで!
体の鎖は、罪の証だったんだ――!
けれど、中山は――。
『高地くん、もう自分を責めないでほしいんや。確かに、俺は地獄へ堕ちた。でも、後悔はしてへん。自分の罪に気づけて、向き合う決心がついたから――』
「中山――!」
『俺は、ある人にここへ呼ばれた。でも、もうすぐ再び地獄に戻るんや。その前に、謝っておきたかったんや。カンニングの罪を被せたりして――本当にごめん! 許してとは言わへん。でも、どうしても謝りたかったんや』
「――許す。許すよ! 俺も、君をいじめた事を謝りたい! 本当に、ごめんなさい――!!」
気がつけば、俺は泣いていた。
中山も、泣いていた。
『――ええよ。俺も、許すで。だから――仲直り、しよ?』
「――うん!」
208
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/23(土) 21:10:09 ID:2KlcS6Xo
俺と中山は、お互いの右手を握り合った。
『――何で、あの時、嘘をついてしもたんやろ。本当にごめんな、高地くん。そして――さよなら』
「中山――俺、君の事、忘れないから! 絶対に――!」
『うん――ありがとう、高地くん――!』
俺の右手から、中山の温もりが消えた。
そして、中山は――光となった。
そのまま――消えていった。
「中山――」
「あーあ。せっかく、復讐のチャンスを与えてあげようと思ったのに」
「!?」
俺の背後で、知念くんがつまらなそうに欠伸していた。
「復讐されて、みすぼらしくなった君の魂をいただこうと思っていたのに――更に魂は強くなってくる」
「俺は――もう、誰もいじめたりしない。中山の為にも!」
俺は、誰かを苦しめたりしない。
強くなりたい!
「――気が変わったよ。君を飼ってあげる。永遠に主人を待ち続ける、可愛い可愛いペットとしてね――!」
「っ…!?」
知念くんの手が、俺に向かって伸ばされた。
もう、ここまでか――!
俺は、ギュッと目を瞑った。
209
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/23(土) 21:17:40 ID:2KlcS6Xo
「やめてください!」
突然、声が聞こえた。
中山でも、知念くんでもない。
知らない声だ。
俺は、そっと目を開けた。
俺と知念くんの間に、知らない男の子がいた。
真っ白な髪が、印象的だ。
「これはこれは――我らが王。ご機嫌麗しゅう――でもないね」
その子に向かって、知念くんは恭しく頭を下げた。
でも、その子は厳しい態度を崩さない。
真っ直ぐ、知念くんを睨んでいる。
「もう、やめにしませんか? 優吾くんと中山くんの問題は、解決しました。もう、2人の間に入る必要は、ないはずです」
「えー? せっかく、良い生け贄を、君に捧げようとしたのになぁ――」
「俺は、誰かを犠牲にするつもりはありません」
一体、この子は――何者なんだ?
知念くんよりは、位が高そうだけど――。
我らが王。
知念くんは、そう言っていた。
「ふふっ、高地くん。頭が高いよ。彼こそ、僕ら吸血鬼、そして吸魂鬼の王――吸血王だよ」
「!?」
な、何だって!?
この子が――吸血王!?
吸血王って、知念くんじゃなかったのか!
210
:
風海人
:2013/03/24(日) 18:54:41 ID:sTFDruFc
続き待ってます
211
:
智:★
:2013/03/24(日) 19:26:34 ID:yNZhV4rk
優吾君命拾い?しましたねぇ。優馬君と北斗君に助けてもらえてよかったよかった!
ただ松村母は大丈夫なんでしょうか?
それも気になります。
この先どうなるのかドキドキしながら楽しみにしています(^O^)
212
:
ひー
◆2nWshnhXe2
:2013/03/24(日) 19:52:30 ID:8N6q9feI
吸血王だ〜(゜Д゜≡゜Д゜)
続き気になりますぅ〜(*´∇`)
213
:
美男
◆f5g8KxgXDU
:2013/03/24(日) 23:36:42 ID:NeMPufcc
めっちゃ面白ーい!
続き待ってまーす!
214
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/27(水) 21:52:53 ID:2KlcS6Xo
皆さんにお知らせです。
パス付きサイトを解説する方法を勉強していたのですが――この度、サイトを開設致しました。
『お願い』スレに書かれていたとおり、この掲示板が事務所の目に触れる危険性が高いのです。
なので、この作品を最後に、私は掲示板での創作活動を終了させようと思います。
あ、勿論、この小説は、最後まで書きますよ!
サイト名は、ジャンルがジャンルなので、教える事はできませんが――皆さんが、こんな私を見つけてくれると信じています。
明後日の金曜日、更新できたら更新しに来ますので。
215
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/29(金) 21:26:50 ID:2KlcS6Xo
「確かに――かつては、僕が吸血王になるはずだった。でも、僕はこの宿命が嫌いでね。辞退させてもらったんだ。代わりに、彼が吸血王となった」
知念くんの話が本当だとするなら、この人は――敵、なのか?
でも、『誰かを犠牲にするつもりはない』と言っていた。
「知念くん。あなたは、初めから優吾くんを狙っていたんですね。彼の血と魂を喰らう為に――!」
「そうだよ。でも、君の為でもあったんだ。高地くんの血と魂なら、君も食べるだろうと思ってね」
「言ったはずです。俺は――誰かを犠牲にするつもりはないと」
知念くんから庇うように、吸血王――吸血王さんは俺の前に立った。
「大丈夫です、優吾くん。俺は――君を助けます」
「ど、どうして――!? だって、あなたは吸血王でしょ!?」
じいちゃんが言っていた。
吸血王は、残虐だって――!
なのに、目の前の彼は、俺を助けようとしている。
一体、どうして――!?
216
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/29(金) 21:31:15 ID:2KlcS6Xo
「俺にあるこの力は、人を襲う事に使うつもりはないです」
「へぇ? じゃあ、何の為に使うわけ?」
吸血王さんは、真っ直ぐに知念くんを睨んだ。
そして――。
「知念くん、あなたを――止める為に使います!」
「ふふっ、来なよ!」
吸血王さんの突き出された拳を、知念くんは回避した。
けど、彼はめげない。
更に格闘技を繰り出していく――!
「君の力はそんなもの? いいや、違う。吸血王の力はもっと大きいはずだ!」
「ぐぁっ…!」
知念くんの蹴り技が、吸血王さんの鳩尾に命中した。
こ、このままじゃ――!
「きゅ、吸血王さん――!」
「――大丈夫。俺は、負けるつもりはありませんから」
俺が思わず駆け寄ると、吸血王さんは――微笑んだ。
217
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/29(金) 21:37:00 ID:2KlcS6Xo
そして、そのまま顔を知念くんに向けた。
「知念くん。本当は、退屈だったんですよね? なら、俺が一緒に遊んであげます。勿論、翔央くんや玲央くん、博貴さんも一緒に――それで手を打ちませんか?」
「面白い事言うね。じゃあ、遊び疲れたら、高地くんの血を杯に注いで飲むとするかい?」
「あはは。おっかないなぁ――知念くん、は!」
「!?」
知念くんと言葉を交わした後、吸血王さんは俺を抱き寄せ、窓から外に飛び出した。
「優吾くん、ちょっと離れててください!」
「は、はい――!」
そして、俺を離れさせ、窓を閉めて押さえつけた。
「何のつもり?」
「これ以上、優吾くんに手出しさせません。俺は――吸血王として、この島の人達を守ります!」
「――あぁ、なるほど。いるんだね。そこに――」
すると、中にいる知念くんはわけのわからない事を言い始めた。
「昼行灯の君じゃない。あいつから、吸血王の座を勝ち取った君が――いるんだね」
「知念くん、もう終わりです――」
218
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/29(金) 21:45:36 ID:2KlcS6Xo
吸血王さんは、窓を押さえる手に力を込めた。
知念くんの話は、終わらない。
「やっぱり、君だけだよ。僕と遊んでくれるのは! 僕はやっぱり、君が好きだ!」
「俺も――大好きです、知念くん! ですから、今日はもう帰りましょう。俺達の、帰るべき場所に――」
「ふふっ、そうだね。こんな人間を相手にしていても、仕方ないしね。いいよ、今夜は君に免じて退いてあげる! その代わり、絶対に僕の所へ来るんだよ!」
そして、吸血王さんと知念くんは同時に、お互いにこう言い放った。
「「愛してる――!」」
言い終わるのと同時に、知念くんの高笑いが響き渡る。
そして、段々と静かになっていった。
「――ふぅ。もう、大丈夫です。知念くんは帰りました。もう、君にちょっかいは出してこないでしょう」
「あ、あの――ありがとうございました!」
吸血王さんの言うとおり、もう知念くんの気配は感じられなかった。
俺は、ぺこりと頭を下げながら、お礼を言った。
219
:
風海人
:2013/03/29(金) 21:47:41 ID:sTFDruFc
続きまってます
220
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/29(金) 21:49:51 ID:2KlcS6Xo
「あの、吸血王さん――中山をここに連れて来たのって、あなたですか――?」
「――はい。知念くんが、不穏な動きを見せていたので、あの世から、彼を見つけてここに連れてきました。あ、そうだ! まだ、やっていない事があった」
まだ、やっていない事――?
何だろう?
吸血王さんは、急に真顔になった。
そして、ゆっくりと俺に近づいていく。
「あなたから、松村北斗の記憶を消さなければいけない――」
「あっ――そうだ! 俺、『彼』のお母さんに――!」
「その事なら、大丈夫です。さっき、俺の力で――また、忘れてもらいました」
「えっ――!?」
じゃあ、俺のした事はやっぱり――!
松村北斗は、思い出しちゃいけない存在だったのか!?
「君にも、忘れてもらわなければいけません。松村北斗に関する記憶を、消します――」
「ま、待ってください!」
吸血王さんが、俺に手を伸ばしかけると、俺はその手を掴んだ。
そして――ある事を頼み込む。
221
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/29(金) 21:56:34 ID:2KlcS6Xo
「俺から――松村北斗の記憶を消さないでください!」
「――何故です? 憶えていたって、何もいい事はありません」
「いい事なんかなくたって――俺は、憶えていたいんです! 彼だけじゃない、中山の事も忘れたくない――!」
「………」
俺は、その手をギュッと掴んだ。
体が、震えている。
でも、怖いわけじゃなかった。
「今日の事、誰にも言いません! ずっと秘密にします――だから、お願いです! 2人を、憶えていたいんです――!」
「優吾くん――それを、松村北斗が望んでいないとしても?」
「はい――!」
例え、『彼』が憶えていなくても、俺は憶えていたい。
顔は思い出せなくても、その名前を覚えていたい。
中山だって、そうだ。
彼に誓ったじゃないか。
俺は、絶対に忘れたりしないって――!
222
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/29(金) 21:58:33 ID:2KlcS6Xo
吸血王さんは、暫くの間、黙っていた。
そして――。
「――わかりました。君だけ、記憶を消さないようにします」
「あっ――ありがとうございます!」
吸血王さんは、一瞬だけ泣きそうな顔になった。
「――ありがとう、優吾――」
ボソッと何かを呟いた。
「え? 何か言いました?」
「――いいえ、何でもないです。それじゃ、俺はこれで帰ります。今の君の友達を、大切にしてくださいね。これは、俺からのお願いです」
「は、はい! ありがとう、吸血王さん!」
吸血王さんは、フッと姿を消した。
俺は、暫く見送っていた。
そして、家の中に入り――ドアを閉めた。
223
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/29(金) 22:02:01 ID:2KlcS6Xo
<北斗視点>
「ふぅ――ただいま帰りました」
「「おっかえりなさーい♪ 北斗様ー♪」」
屋敷――家に戻ると、翔央くんと玲央くんが出迎えてくれた。
いい意味で、俺に纏わり付いてくる。
「おかえりなさいませ、北斗様。お疲れ様でございました――」
「ありがとうございます、博貴さん。知念くんは?」
「侑李様でしたら、お部屋で拗ねています。恐らく、北斗様の顔を見たら、ご機嫌を直すでしょう」
博貴さんの言っている事は、俺が想像していたものと同じだった。
まぁ、確かに拗ねるだろうな、あれじゃ;
後で、一緒に遊ぶか。
勿論、翔央くんや玲央くん、博貴さんも一緒に――な。
224
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/03/29(金) 22:03:53 ID:2KlcS6Xo
風海人さん>ありがとうございます。
優吾くん編は、これで一段落しました。
次回は、大我くん編に入ります。
前に書いたとおり、この作品を最後に掲示板での創作活動は終了します。
勿論、最後まで書くので、お楽しみに!
225
:
智:★
:2013/03/30(土) 02:34:12 ID:yNZhV4rk
こんばんは!
とりあえず吸血王のおかげで助かりましたね。そして、北斗君のわずかに残っている記憶を留めておいてほしいと願ったことで北斗君も救われたんじゃないかなって思いました!
ただ松村母は忘れさせるんですね。北斗君親孝行なんだか親不孝なんだか…(泣)
…にしても翔央君・玲央君兄弟可愛すぎです!あぁまたもや北斗君の周りを無邪気に駆け回る仔犬たちの妄想が―――――(」゜□゜)」
あの話は変わるんですが、後々ここを去るのに反対する気も文句もないのですが、ただ華乃さんの新設サイトを見つけられる自信が正直ないです(←範囲がちと広すぎで(-.-;))
なので「タイトル教えろ」とは言わないのでヒント的なもの教えて頂けたら嬉しいのですが、どうでしょう?
もし「ダメだ!」と仰るのならヒントは諦めます!
無茶苦茶続きが気になる話があるので読むのは諦められないので…(笑)
お考え頂けたら嬉しいです。
226
:
風海人
:2013/03/30(土) 18:25:45 ID:sTFDruFc
続きまってますよ!
227
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/01(月) 21:11:48 ID:2KlcS6Xo
風海人さん>ありがとうございます。
次回の更新をお楽しみに!
智さん>ありがとうございます。
吸血王のおかげで、優吾くんは危機を免れました。
確かに――吸血王である北斗くんのした事は、親孝行か親不孝か、わかりませんね。
でも、これは彼なりに決断した事なのです。
次回は、大我くん編に入ります。
サイトについてですが、サイト名は教えられません。
『〓○菌only乱苦〓』というランキングがあります。
↑の○は、あるアルファベットを入力してください。
これは、調べればすぐわかると思います。
その中のJr.コーナーの12位に、私はいます。
228
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/01(月) 21:39:49 ID:2KlcS6Xo
あ、書き忘れです;
↑のランクについてですが、さっき見たら、11位になっていました;
229
:
智:★
:2013/04/01(月) 21:44:09 ID:yNZhV4rk
こんばんは!連続投稿みたいになっちゃってすいません(^_^;)
そうなんですよね、吸血王もとい北斗君が松村母の記憶を消すのもお母さんを思ってのことなんですよね。
かと言って北斗君をすごく大事に思ってる松村母の母心を思うとそれがまた悲しくて…(´・ω・`)
それも含めて、北斗君の記憶を唯一持ってるお隣さんの少年は見守って行くのかなと思ってみたり…(;_;)
わがままを聞いて下さって、ありがとうございますm(_ _)m
230
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/01(月) 22:17:58 ID:2KlcS6Xo
智さん>ありがとうございます。
そうですね…優吾くんだけは、北斗くんの事を憶えています。
でも、誰にも言わないという条件付きで――。
このまま、誰も思い出さなくなるのか――どうなるのでしょう←おいby北斗
次回の更新をお楽しみに!
231
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/01(月) 23:02:30 ID:HS1nWYAY
携帯から、失礼します。
ランクは、4位に入りました。
多分、暫くはベスト10にいると思います。
232
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/05(金) 22:00:06 ID:2KlcS6Xo
<大我視点>
「大我ー、慎太郎くーん、そろそろ起きなさい」
「んっ…」
母さんの声に、俺はそっと瞼を開いた。
もう、朝か――。
「慎太郎、起きよ? 朝だよ」
「……おはよう、大我」
そっと慎太郎の肩を揺すると、彼は目を覚ました。
まだ眠いのか、瞼を擦っている。
「ほら、顔を洗って。それから、制服着ようね」
「――うん」
ベッドから降りると、先に慎太郎が顔を洗いに行った。
俺は、クロゼットから、制服を2着取り出す。
いつもと変わらない日常だ。
「――お待たせ、大我。次は大我の番だよ」
「うん、ありがと。慎太郎」
顔を洗い終えた慎太郎が、部屋に戻ってきた。
よし。
俺もさっさと顔を洗ってこよう。
233
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/05(金) 22:07:56 ID:2KlcS6Xo
そして、俺と慎太郎は、制服に着替えた後、食卓へとやってきた。
「おはよう、母さん」
「――おはようございます」
「おはよう、大我、慎太郎くん。よく眠れたかしら?」
俺と慎太郎が挨拶すると、母さんは目玉焼きをお皿に乗せながら、振り返った。
食器は全部で3人分。
父さんは、単身赴任だから、この小夜鳴島にはいない。
ちょっと寂しいけど、我慢しなくちゃね。
父さんは、また家族一緒に暮らせるよう、仕事を頑張っているんだ。
俺達は、父さんが帰って来た時に、笑顔で出迎えてあげないと。
「さ、朝ご飯できたわよ。食べましょう」
「「はい」」
俺達が椅子に座ると、母さんも座った。
そして、3人同時に「いただきます」と言った。
うん、これもいつもと変わらない。
「どう、慎太郎くん。美味しい?」
「――美味しいです。いつも、すみません」
「いいのよ。家族なんだから」
慎太郎が頭を下げると、母さんは笑顔でその髪を撫でた。
234
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/05(金) 22:12:35 ID:2KlcS6Xo
俺は、母さんと慎太郎と3人で暮らしている。
ちなみに、俺達は兄弟じゃない。
ちょっと嫌な言い方で言うと、慎太郎は居候だ。
でも、俺は慎太郎と一緒にいる時間が大好きだ。
「今日は、夕方から仕事だから、夕飯は先に食べててね」
「うん、わかった」
「――わかりました」
じゃあ、夕飯は慎太郎と2人だな。
今日は、俺がご飯を作ろう。
「「ごちそうさまでした」」
「はい、お粗末様でした。お弁当、用意できてるからね」
母さんの言うとおり、キッチンには、俺と慎太郎用のお弁当箱が包まれて置いてあった。
よし、そろそろ行こうか、慎太郎。
「――うん。それじゃ、行ってきます」
「行ってきます、母さん」
「いってらっしゃい!」
お弁当をそれぞれの鞄にしまうと、俺と慎太郎は玄関に向かった。
そして、靴を履き、ドアを開ける。
――そのまま、辺りを見回す。
235
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/05(金) 22:20:58 ID:2KlcS6Xo
「よし! 今日もいないな」
「――大我、いつも周りを見るね。慎のせい、だよね――」
「ううん、違うよ。慎太郎は何も悪くない。さ、行こう」
「――うん」
俺が手を差し出すと、慎太郎はその手を握った。
そして、そのまま学校に向かう。
慎太郎は、元々、町長さんの親戚の子だ。
兄の龍太郎と一緒に引き取られていたんだけど――待遇が良くなかった。
次第に、実の兄である龍太郎から虐待を受けるようになってしまった。
え?
何故、俺がそれに気づけたのかって?
きっかけは、俺が男子トイレに入った時の事だった。
そこで――龍太郎から、何度も引っぱたかれ、頭を踏まれている慎太郎を見つけたんだ。
俺は、思わず慎太郎を庇った。
そして、彼を連れて保健室に連れて行ったんだ。
事情を聞こうとしたけど、慎太郎はひたすらに――『慎が悪いの。全部、慎のせい――』と繰り返すだけだった。
そう――自虐的になるくらいに、追い詰められていたんだ――。
母さんと話し合い、俺は――慎太郎を家に匿う事にした。
236
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/05(金) 22:24:46 ID:2KlcS6Xo
それからだった。
龍太郎や、その仲間である深澤くん達から――いじめを受けるようになったのは。
彼らから受けるいじめは、ハードだった。
でも、俺は後悔はしていない。
だって、慎太郎は何も悪い事なんて、してないんだから。
学校へ行く途中で待ち伏せされ、暴力を受けても――耐えられた。
今も、こうして辺りの様子を窺ってから、学校に行くようにしているからね。
慎太郎を守る為なら、俺は何でもする。
そう決めているんだ。
絶対に、傷つけさせやしない――!
「おはよう、優吾、樹、ジェシー」
「あ、おはよう、大我、慎太郎!」
学校に無事到着し、教室に入ると、友達の優吾と樹、ジェシーが出迎えてくれた。
彼らは、俺と慎太郎の味方だ。
深澤くん達には適わないみたいだけど、それでも、側にいてくれている。
「どうだ、慎太郎? 大我の家にはもう慣れたか?」
「――うん、慣れたよ」
ジェシーの問いに、慎太郎は頷きながら言った。
237
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/05(金) 22:28:19 ID:2KlcS6Xo
慎太郎は、学校では相変わらず表情を固くしているけど、家では子供らしさを出すようにしているみたい。
だから、家では、結構話をするんだ。
いつか、優吾達にも話せるといいな。
自分の事を――。
と、その時だった。
「おうおう、相変わらず仲が良いなぁ、慎太郎くんと大我ちゃん」
「っ…」
続いて入ってきたのは、深澤くんのグループにいる渡辺くんや岩本くんだった。
彼らも、俺をいじめてくる。
――いつもの事だ。
「優吾、慎太郎をちょっとお願い」
「大我っ――!」
優吾に慎太郎を託した。
彼は、俺を助けられない事に、もどかしさを感じているんだ。
でも、大丈夫だよ。
「すぐ戻るから。慎太郎、ちょっと行ってくるね」
「――ごめん」
238
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/05(金) 22:33:02 ID:2KlcS6Xo
<???視点>
昇降口をくぐった時、彼を見かけた。
ちょうど良い長さの黒髪。
真っ白な腕。
あぁ、今日も可愛いよ――大我くん。
僕は、隣のクラスの京本大我くんの事が好きだ。
でも、告白はできていない。
話した事も、挨拶した事もない。
つまり、向こうは僕を知らないという事だ。
――知らない方が良いかもしれない。
だって、僕は男で、大我くんも男だ。
男が男を好きになるなんて、気持ち悪いと思われるに決まっている。
だから、こうして遠くから見つめる事しかできない。
でも、どこか片思い生活を満喫している自分がいる。
「どうしたんだよ、如恵留? 早く教室行こうよ」
「あ、ごめん。何でもないよ、美勇人」
親友の森田美勇人に呼ばれ、僕――川島如恵留は、一緒に教室に入った。
――いつか、挨拶できよるようになれたらいいな、大我くんと――。
239
:
風海人
:2013/04/06(土) 11:00:41 ID:sTFDruFc
続きまってます
240
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/15(月) 01:29:05 ID:2KlcS6Xo
風海人さん>ありがとうございます。
今回は更新できませんでしたが、また次回をお楽しみに!
241
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/19(金) 16:58:59 ID:2KlcS6Xo
<大我視点>
今日もだ。
「おら、立てよ」
「うっ…!」
龍太郎に髪を掴まれ、顔を上げさせられる。
男子トイレで、俺は今日もいじめられていた。
「何だよ、その目は。この泥棒が!」
「ぅあっ…!」
ドカッ
バキッ
床に押さえつけられ、何度も踏まれる。
こんなの、いつもの事だ。
もう、慣れてしまった。
「大我ちゃぁん、いい加減に楽になったら? ほら、言えよ。『慎太郎をお返しします』って」
「――そんなの、言えないっ…言うつもりはないっ…!」
「っ…やれ!」
俺が抵抗すると、龍太郎は深澤くん達に指示した。
242
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/19(金) 17:03:08 ID:2KlcS6Xo
<如恵留視点>
しまった。
トイレに、ハンカチを忘れてしまった。
「ごめん、美勇人。先に教室に戻ってて。僕、ハンカチ取ってくる!」
「うん、わかった」
美勇人と別れ、僕は男子トイレに向かった。
男子トイレに入った途端――。
バキッ
鈍い音が、聞こえてきた。
まるで、何かを殴ったような音だ――。
「誰かいるの――っ!?」
そっと覗くと、僕はある光景に驚いた。
同じクラスの森本くんと、隣のクラスの深澤くん達。
そして――床に倒れている大我くんの姿があったんだ――。
「何だ、お前? 何か用か?」
渡辺くんが、僕に近づいてきた。
ど、どうしよう――!
大我くんが、いじめられている所に出くわすなんて――!
243
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/19(金) 17:08:31 ID:2KlcS6Xo
「え、えっと、その――!」
「何だよ? 言いたい事があるなら、はっきり言えよ」
大我くんを踏みながら、森本くんは僕を睨んできた。
い、言わなきゃ。
大我くんをいじめるなって――!
「そ、その――ハンカチ、忘れちゃって」
「ハンカチ? あぁ、そこの手洗いに置いてあるやつか。なら、持ってけよ」
岩本くんが、手洗い場にあるハンカチに気付き、それを僕に投げた。
僕は、何とかそれを受け止めた。
「じゃ、じゃあ、僕はこれで――!」
僕は、そのまま後ずさり、男子トイレを飛び出した。
嗚呼――僕は何て、臆病者なんだ。
好きな人、1人も守れないなんて――!
森本くんの圧力は凄い。
逆らったら、多分――この学校では生きていけないだろう。
それぐらいに、森本くんは強いんだ。
ごめんね、大我くん――。
僕がこんなに弱いばかりに、君を守れないなんて。
でもね。
いつか、強くなるから。
そうなった時は、必ず助けるから――!
守るから――!
244
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/19(金) 17:15:26 ID:2KlcS6Xo
<大我視点>
「大丈夫か、大我? ごめん――こうする事しかできなくて」
漸く解放され、教室に戻ると――優吾が駆け寄った。
彼だけじゃない。
樹やジェシー、慎太郎もいる。
彼らも、龍太郎からの圧力の犠牲者だった。
いじめられているわけじゃない。
でも、逆らう事ができない。
「ううん、大丈夫だよ。こんなの、もう慣れっこさ」
「大我――ごめんね。大我がどんどん傷つく――全部、慎のせいだ」
「慎太郎――」
俺は、たまらずに慎太郎を抱きしめた。
彼の肩は、震えている。
大丈夫だよ、慎太郎。
君は、俺が守るから。
勿論、母さんや優吾達だって――慎太郎の味方だから。
「はい、おはようございます。って、京本――またびしょ濡れかい?」
そこへ、宮田先生が教室に入ってきた。
俺を見るなり、ため息をつく。
「――すみません」
「謝るのはいいから、早く体操着に着替えろよ。授業が始まるから」
俺が謝ると、クラス委員の薮くんが、着替えるよう言ってきた。
この人は――本当に、面倒くさい事が嫌いなんだな。
245
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/19(金) 17:21:53 ID:2KlcS6Xo
ふと、俺は高木くんを見た。
彼は――相変わらず、ボーッとしている。
最近、元気がない。
どうしたんだろう?
「帰りの日誌は、京本に書いてもらうよ。いいね」
「――わかりました」
体操着に着替えながら、俺は先生の言う事に従った。
深澤くん達は、ニヤニヤと笑っている。
ざまあみろ。
彼らの目が、そう語っていた。
「あいつらっ――!」
「やめろ、樹」
喧嘩っ早い樹が、席を立とうとしたけど、ジェシーに阻止された。
彼自身も、俺を助けられない事にもどかしさを抱いているようだ。
ごめんね、みんな。
心配かけさせちゃって――。
俺、もっと強くならなくちゃ。
授業中は、深澤くん達からの呼び出しはない。
唯一、学校内で安心できる時間だ。
俺は、隣で授業を受けている慎太郎を見る。
彼は、無表情だけど、真面目に聞いていた。
246
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/19(金) 17:29:46 ID:2KlcS6Xo
龍太郎は、慎太郎を連れ戻そうとしているみたいだけど――そうはさせない。
慎太郎は、俺が守るんだ。
これ以上、彼を傷つけさせてたまるか。
だから、いじめにだって耐えてみせる――耐えてみせるんだ!
下校のチャイムが鳴り、クラスメート達はそれぞれ「終わったー」や「一緒に帰ろう」など口にしながら、帰りの支度をしている。
「樹、申し訳ないんだけど、帰りは慎太郎と一緒に帰ってもらえるかな? その――龍太郎や深澤くん達に待ち伏せされてないか、心配だから」
「おう、いいよ。それぐらい、任せておけって」
俺は、帰りの方向が一緒である樹に、慎太郎を託した。
「慎太郎、俺はちょっと日誌書かなくちゃいけないから、先に樹と一緒に帰っててね。夕飯は、俺が作るから」
「――わかった。慎、いい子にして待ってるから」
俺が慎太郎の頭を撫でると、彼は小さく頷いた。
そして、樹と一緒に教室から出て行った。
「じゃ、俺達も帰るな。また明日」
「帰りは気をつけろよ、大我」
「うん。ジェシーも優吾も、また明日ね」
ジェシーと優吾も、帰って行った。
247
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/19(金) 17:34:43 ID:2KlcS6Xo
さて、俺はさっさと日誌を書いちゃおう!
俺は日誌とにらめっこしながら、今日の出来事を記した――。
「それじゃ、失礼します」
「はい、ご苦労様。気をつけて帰るんだよ」
職員室にて、宮田先生に日誌を渡すと、俺はぺこりと頭を下げ、その場から離れた。
だいぶ、陽が落ちてきてるな。
きっと、慎太郎もお腹を空かせているだろう。
早く帰らないと!
小夜鳴島は、街灯が少ない。
でも、生まれてからずっとこの島で暮らしている俺は、目が慣れていた。
帰り道は、すぐわかる。
このまま真っ直ぐ歩いて、途中の道を左に曲がれば、すぐ我が家だ。
早くご飯作らないと――そう、俺が考えていた時だった。
「ねぇ、君」
「?」
前方から、1人の男の人がこちらに向かって歩み寄ってきた。
248
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/19(金) 17:39:35 ID:2KlcS6Xo
俺の事をいってるんだよね?
他に誰もいないし。
っていうか、この人――誰?
「ちょっと、道を教えてほしいんだけど――郵便局はどこかな?」
「郵便局、ですか?」
なんだ。
道がわからないのか。
最近、引っ越してきた人なのかな?
「あ、でも――この時間だと、郵便局はもう終わってますよ」
「そっか。でも、場所を確認しておきたいんだ。悪いんだけど――案内してもらえるかな?」
「うーん――」
早く帰らないと、慎太郎がお腹空かしている。
でも、何だかこの人――放っておけないし。
それに、郵便局はこの先すぐにあるし。
「――わかりました。こっちです」
「ありがとう、助かるよ」
俺が案内し始めると、男の人はホッとしたのか、俺についてきた。
249
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/19(金) 17:43:51 ID:2KlcS6Xo
暫く歩いていると――。
「あ、いけない。鍵をそこの茂みに落としちゃった」
「えっ!?」
男の人の鍵が、近くの林の中に落としてしまったらしい。
早く探さなきゃ!
「暗くなる前に、探しましょう!」
「ありがとう」
俺は、男の人と一緒に、林の中に入って行った。
――今ここで、逃げればよかったのかもしれない。
まさか、こんな事になるなんて――。
「うーん…ないですね。そっちはどうですか――あ、あれ?」
茂みを漁っても、鍵らしき物は見つからない。
俺が顔を上げると、男の人は俺のすぐ側まで来ていた。
微笑んだまま、俺の頬に触れてくる。
「あ、あの――?」
「あぁ、可愛い。やっと、この手で触れる事ができたよ。京本大我くん――」
「!?」
250
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/04/19(金) 17:48:00 ID:2KlcS6Xo
ど、どういう事!?
何で、俺の名前を知ってるんだ――!?
「え、お、お兄さん――っ!?」
ドサッ
俺の腰に手を添えたかと思えば、その人は――俺を押し倒してきた。
え、な、何!?
「ちょっ、離してくださいっ…誰か!」
「無駄だよ。ここはもう、俺の空間の一部。誰も助けになんか来ない」
「んぅっ…!?」
突然、キスされた。
初めは、触れるだけのものだったけど――だんだんと、舌を絡めてきた。
所謂、ディープキスってやつだ。
その人は、俺の舌を弄びながら、制服のネクタイを解いていく。
そして、そのまま俺の手首を縛り上げた。
「やっ…な、何っ…!?」
「やっと、この手で抱けるよ。可愛い可愛い大我くん――」
「あっ…!」
ビリッという音と共に、俺の制服が引きちぎられた。
251
:
風海人
:2013/04/19(金) 18:31:01 ID:sTFDruFc
続きまってます
252
:
飴玉
:2013/04/20(土) 19:56:02 ID:0RVquxag
続き待ってますv(*^^*)/
コメントありがとう御座いました、返事はしましたがここで改めて挨拶します、こちらこそ長い間ありがとう御座いました、ジェネでも華乃さんと仲良く友達になれて楽しかったです、実は私も今の関西Jr.小説リクエストが終わったらこの掲示板わ卒業しようと、ななこさんがもしかしたら辞めたかも知れないので、私も別の小説占いをしているのでそっちにしようかと、まだ決めてないけどななこさんが辞めたとしたら私も続ける意味ないかなと(笑)
253
:
遥貴:★
:2013/04/25(木) 01:26:47 ID:pA9spepo
こんばんは!読まさせていただきました!
京本君大丈夫なんでしょうか・そして、京本君を襲っているのは誰なのか!
ものすごく気になります、しかも「俺の空間の一部」と言ってるって事はもしかしたらもしかして
ですよね?
でも、その中の誰かって事が気になります。
続き楽しみにしています。
あと、優柔不断だなぁとは思いつつ思う所あって以前使っていた名前に戻すことにしました。
改めてよろしくお願いします。
華乃さんが新しく作られたサイトで名前を表記する時もこちらで行こうと
思っています。
254
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/03(金) 21:07:03 ID:2KlcS6Xo
遅くなってごめんなさい;
色々やる事がありまして――;
応援コメント、ありがとうございます!
これからも頑張ります!
255
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/03(金) 21:14:09 ID:2KlcS6Xo
な、何なんだこの人!?
「やっ…!」
「こら、暴れないの。痛い思いするの、嫌だろ――?」
「ひぃっ…!」
れろーっと首筋を舐め上げられ、俺の体は硬直してしまった。
どうしよう――動けない!
俺が動けないのをいい事に、相手は俺が着ている制服やズボンを全て剥ぎ取った。
「やめてください! 大声を出して、人を呼びますよ!」
「無駄だよ。さっき言ったよね? 『ここは、俺の空間の一部だ』って。そんなに抵抗するなら――慎太郎くんがどうなってもいいの?」
「!?」
この人――どうして、慎太郎の事を知っているんだ!?
俺、全然口にしてないのにっ――!
「森本慎太郎くん――あの子も可愛いね。抱いたらどんな風に啼いてくれるか――」
「や、やめっ…やめてっ!」
俺は咄嗟に、その人の手を掴んだ。
しかも、泣きながら――。
256
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/03(金) 21:21:10 ID:2KlcS6Xo
「ん? 何?」
「お願いです、慎太郎は――慎太郎にだけは手を出さないで! 俺はどうなってもいいからっ――!」
慎太郎は、既に実の兄である龍太郎から受けた傷がある。
これ以上、増やさせるわけにはいかないんだ!
今は、俺が――慎太郎のお兄ちゃんだから!
「――やっと、素直になってくれたね。いい子だよ、大我くん」
「んぁっ…!」
再び、俺は押し倒された。
「あっ…ひ、ぁ…んんっ…!」
「真っ白で綺麗な肌だ。こんな極上な肉体を味わえるのは、何年ぶりかな――」
あれから、どれくらいの時間が経っただろう。
下着も取られ、全裸になった俺は、抱かれていた。
こんな、見ず知らずの男に――。
「ココもこんなにしちゃって――そんなに、嬉しいのかい? 大我くん――」
「ああぁんっ…!」
悔しい事に、勃っている自身を扱かれてしまう。
あぁ、慎太郎――今頃、お腹空かしているよね。
心配、しているよね。
ごめんね、母さん。
ごめんね、慎太郎――俺、汚れちゃったよ。
257
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/03(金) 21:27:25 ID:2KlcS6Xo
「だめっ…やああぁぁっ!」
何度も扱かれ、イかされている。
もう、逃げようという感覚は麻痺していた。
「そろそろ、俺も気持ちよくなろうかな」
「あっ――」
そう言って、男の人は――猛った自身を俺に向けてきた。
「やっ…こ、来ないで…来ないでよぉっ!」
あまりの大きさに驚いた俺は、顔が真っ青になっていくのがわかった。
後ずさるが、思うように動かない。
「逃げようとする子には、お仕置きが必要だね」
そう言うと、相手はパチンと指を鳴らした。
すると――信じられない事が起こった。
辺りに生えていた雑草が、俺の手首に巻き付き、高く上げさせられた。
同時に、閉じていた足も開かれてしまう。
「な、何っ…!?」
「これでもう、完全に逃げられなくなったね。じゃあ、君のココ――頂くよ」
「や、やだっ…やだあああぁぁぁっ!」
暗い森の中――俺は、純潔を奪われた。
258
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/03(金) 21:32:44 ID:2KlcS6Xo
<慎太郎視点>
時刻は、午後6時30分。
慎は、窓の外を見た。
もう、暗い――。
「――大我、遅いな」
そう呟いた所で、大我がすぐ帰って来るわけじゃない。
それは、自分でもわかっていた。
「――これも慎のせい、なの?」
どうしよう――。
夕飯の材料はあるけど――大我が作るって言ってくれたから。
勝手にいじっちゃ、悪いよね。
でも、お腹は言う事を聞かない。
ぐぅ、と鳴りっぱなしだ。
「――そうだ。大我がすぐ食べられるように、慎がご飯作ろう」
いつも、おばさんが作ってくれている所を見ていたから、大体はわかる。
慎が作ったご飯を食べたら、大我――元気になってくれるかな?
ありがとう、って言ってくれるかな?
慎は、エプロンをつけて――調理を始めた。
――大我が、大変な目に遭っているとも知らずに。
259
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/03(金) 21:38:49 ID:2KlcS6Xo
<大我視点>
「――ふふっ、そろそろ終わりにしてあげるよ」
「…あっ…」
ズルッと自身を抜かれ、俺を戒めていた雑草は――元の姿に戻った。
戒めが解け、俺はその場に倒れ込んだ。
「可愛いよ、大我くん。これからも、君を抱けるなんて――嬉しいよ」
「――えっ?」
嘘、だろ?
これで終わりじゃ――なかったのか!?
「俺は、君が気に入ったよ。これからも会わせてもらおう。そう、君が尽きるまでね――」
「…いやっ…!」
そっと抱き上げられると、深くキスされた。
俺は顔を逸らそうとするけど、強く抱きしめられ、何度もキスされる。
「あぁ、制服は元に戻しておいたよ。これで帰れるだろ?」
彼の言うように、俺の破かれた制服は、いつの間にか元に戻っていた。
でも、全然喜べない。
これからも、この男に抱かれるのか――?
「じゃあね、大我くん――また今度」
そう言うと、その人はフッと姿を消した。
俺も――帰らなくちゃ、慎太郎が心配している。
260
:
風海人
:2013/05/04(土) 11:36:45 ID:sTFDruFc
続きまってます
261
:
遥貴:★
:2013/05/04(土) 12:45:07 ID:yNZhV4rk
京本君自分の身が危険な時でも慎太郎君優先なんですね(泣)京本君にガタがこないか心配になっちゃいます。
しかし、京本君を襲ったのは誰なんでしょう?草を操ったり破った制服戻したりって人間技じゃないですもんねぇ。うわーーー気になる!!もう出たキャラかはたまたまだ出ぬ新キャラなのな(゜□゜≡゜□゜)
続き全力で楽しみにしています!
262
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/17(金) 01:01:21 ID:2KlcS6Xo
風海人さん>ありがとうございます!
日曜日に更新しますので、お待ちください。
遥貴さん>ありがとうございます!
大我くんは、慎太郎くんの心の傷をこれ以上増やさないと決め込んでいます。
だから、自分が危険に曝されても、一番に守りたいのは、やはり慎太郎くんなのです。
大我くんを襲った男――後に、正体が明らかになります。
おっしゃるとおり、彼は人間ではありません。
日曜日、更新しに来ます!
263
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/19(日) 21:24:04 ID:2KlcS6Xo
<慎太郎視点>
「――ふぅ、できた」
ご飯も炊いたし、おかずもできた。
味噌汁もできあがった。
あとは、大我が帰って来るのを待つだけだ。
「ただいま――」
「あ、大我おかえり――大我?」
大我の声が聞こえたから、慎は玄関に向かった。
あれ?
大我の様子がおかしい。
どうしたんだろう?
「大我、どうしたの?」
「ごめんね、遅くなっちゃって――ご飯、これから作るから」
「それなら、大丈夫だよ。慎が作ったから――ごめんね、勝手に先に作っちゃって」
大我は靴を脱ぎながら、慎の頭を撫でてくれた。
「いいんだよ、慎太郎。ありがとう」
「大我――?」
やっぱり、学校で別れた時と違う。
何か、あったんだ。
まさか、龍に――?
264
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/19(日) 21:32:33 ID:2KlcS6Xo
<如恵留視点>
港近くのコンビニで買い物をした後、僕は自宅へ向かっていた。
ふと、大我くんの事を思い出す。
しかも、今朝いじめられていた彼の姿を――。
「――大我くん」
僕は、臆病者だ。
弱虫だ。
本来は好きな人を守らなくちゃいけないのに――。
何て、最低な男なんだ、僕は――。
「大我くん――ごめんね」
僕は、心の中で何度も大我くんに謝罪した。
それなら、何度でもできる。
でも――実際に会って、口にする事はできない。
クラスが違うし、話した事もないから。
「――大我くん――」
「どうしかしましたか?」
「えっ?」
背後から、声をかけられた。
振り返ると、そこにいるのは1人の男の子だった。
僕と同い年か、少し下くらいか――。
白い髪が印象的だ。
265
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/19(日) 21:38:46 ID:2KlcS6Xo
「誰かに、謝っていたようですけど――大丈夫ですか?」
「あ、すみません――聞こえてたんですね。好きな人に、謝っていたんです」
「好きな人――ですか?」
その人が問うと、僕は頷いた。
「大我くんが――僕の好きな人が、学校でいじめられているんです。でも、僕は彼とは挨拶すらした事がない。助けたくても、助けられないんです」
何故だかわからないけど――初めて会ったはずのこの人には、何だか全部説明できそうな気がした。
それくらい、優しげな印象を持っていたんだ。
すると――。
「大我が!? そんなっ――俺のせいで、また彼が傷ついているなんて――!」
「え? 大我くんを、知ってるんですか?」
「あっ――」
僕が大我くんの名を口にすると、相手は戸惑ったようだ。
そっか――大我くんの、知り合いなのか。
でも、学校で見た事はない人だ。
どうして、大我くんを知ってるんだろう?
266
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/19(日) 21:41:54 ID:2KlcS6Xo
「――君の名前は?」
「僕、ですか? 川島如恵留ですけど――」
「川島くん。実は俺――ある奴を捜しているんです」
「ある、奴――?」
その人は、真剣な表情で僕に話し始めた。
「最近、この島に現れた男です。これは、ある所からの情報としか言えませんが、美しいモノの心を喰わんとするその男を――捜しているんです」
そ、そんな人がいるのか!?
今のところ、僕は知らない。
「そんな人――見た事ないですけど」
「そうですか――君も、気をつけた方がいい。俺は、この島の人達を守る。そう決めたんです――」
そう言って、その人は踵を返した。
あ、ちょっと待って!
「あなたは、誰なんですか?」
「俺は――吸血王です」
「!?」
吸血王って、この島の伝説に登場する怪物じゃないか!
でも、どう見ても人の姿をしている――本当に、吸血王なのか?
「信じてはもらえないと思います。でも、安心してください。俺は、誰かの血と魂を喰らうつもりはないので――」
そう言い残すと、その人――吸血王は姿を消した。
267
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/19(日) 21:49:37 ID:2KlcS6Xo
<北斗視点>
「ただいま」
「おかえりなさいませ、北斗様」
屋敷に戻ると、博貴さんが出迎えてくれた。
その頭上では、翔央くんと玲央くんが遊んでいる。
「「おかえりなさーい、北斗様ー♪」」
俺に気付いたのか、2人はそっと降り立った。
「ただいま、翔央くん、玲央くん。知念くんは?」
「侑李様なら、出かけたよ♪」
「何処へ行ったかは、知らないけどね♪」
「そっか――ありがとう」
知念くんは、出かけているらしい。
博貴さんから聞かされた、例の男の事、訊ねたかったのに――。
美しいモノの心と喰おうとする、謎の男――。
母さんや優吾達に、手を出さなければいいんだけど――。
「北斗様、今日はもうお休みになられた方がよろしいかと――おやすみなさいませ」
「そうですね。じゃあ、僕はこれから寝ます。おやすみなさい」
博貴さんや翔央くん、玲央くんに見送られ、俺は寝室に戻った。
268
:
風海人
:2013/05/20(月) 18:00:02 ID:sTFDruFc
続きまってます
269
:
DX
:2013/05/24(金) 11:57:15 ID:g7nyUMD.
今まで密かに続きを楽しみにしてました(笑)
続き楽しみにしてます♪
270
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/24(金) 20:31:29 ID:2KlcS6Xo
風海人さん>ありがとうございます!
続き、頑張ります!
DXさん>ありがとうございます!
おぉ、密かに読んでくださったのですか!
嬉しいです♪
これからも頑張りますね!
271
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/24(金) 20:52:12 ID:2KlcS6Xo
<大我視点>
それからというもの、俺はあの男と会う事が多くなった。
朝は流石に呼び出される事はなかったけど、大体は放課後だった。
「大我、帰ろう――」
「ごめんね、慎太郎。俺、ちょっと用事があるから――先に樹と一緒に帰ってね」
慎太郎を樹に託すと、俺は急いで教室を出た。
「やぁ、待ってたよ。大我くん」
あの道を通ると、その男はいた。
初めて会った時と、同じ笑顔で――。
「本当に――慎太郎に、手を出さないんだよね?」
「勿論、約束するよ。大我くんの全てをくれるならね」
どうして、この人は俺なんかを気に入ったんだろう。
わからない。
「は…ぁっ…んんっ」
「ふふっ、可愛いよ。大我くん――」
男の腕の中で、俺は啼きじゃくる。
何度も何度も――抱かれた。
272
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/24(金) 21:07:40 ID:2KlcS6Xo
<如恵留視点>
「じゃあね、如恵留。また明日」
「うん、またね。美勇人」
下校中、美勇人と別れた僕は、自宅へと向かっていた。
そんな時だった。
「…あっ…」
何処からか、声が聞こえた。
誰の声だろう。
「ひぁっ…」
あ、また聞こえた。
「あそこから聞こえる――」
僕は、その声がする方へ進んだ。
そして、見てしまった。
知らない男に抱かれている、大我くんを――。
273
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/05/24(金) 21:23:20 ID:2KlcS6Xo
「あぁっ…や、ら…ぁっ…!」
「やだって言ってる割には、感じてるけど?」
「やあぁぁっ…!」
じゅぷじゅぷっと艶めかしい音が林中に響く。
同時に聞こえてくるのは、大我くんの嬌声――。
「いやっ…やめっ、も、無理ぃっ…!」
「ほら、もっと啼いて――大我くん」
大我くんが。
僕の、大我くんが――!
「ああぁぁっ…!」
男の腕の中で、大我くんは絶頂に達した。
その姿を、これ以上見ていられない。
僕は――その場から逃げ出した。
274
:
風海人
:2013/05/25(土) 13:41:22 ID:sTFDruFc
続きまってます
275
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 17:49:57 ID:2KlcS6Xo
風海人さん>ありがとうございます!
続き、頑張ります!
もしよろしかったら、これからも読んでください。
276
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 17:56:18 ID:2KlcS6Xo
どれくらい走っただろう。
僕は、自宅付近の公園まで逃げ帰って来た。
「はぁ…はぁっ…」
息切れが激しい。
たくさん走ったんだな。
そして、ゆっくりと深呼吸する。
「――大我くん」
ぽつりと、彼の名を呟いた。
勿論、ここにはいないのだから、返事なんて聞こえるわけがない。
「うぅっ…大我くんっ――!」
さっきの光景を思い出すと、僕はその場に崩れ落ちた。
あんなに綺麗な大我くんを、見た事がなかった。
それはまだいい。
見せている相手が、あんな知らない男だなんて――!
「あっ――もしかして」
あの男が、先日吸血王さんが言っていた、『心を喰う男』なのか――!?
確証はない。
でも――もし、そうだとしたら、僕は大我くんを再び見捨ててしまった事になる。
僕は、僕は何て事をっ――!
277
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 18:01:26 ID:2KlcS6Xo
涙が、涙が止まらない――。
僕は砂を握り、泣いた。
と、そこへ。
「こんばんは」
「!?」
突然、知らない声が聞こえた。
顔を上げると、そこにいるのは、1人の男の子だった。
「だ、誰――!?」
「誰でもいいよ。そうだなぁ――知念、とでも呼んでくれればいいかな?」
男の子――知念くんは、微笑んでいた。
愛らしく、そしてどこか妖艶だ。
「君は、泣いてたね。どうして泣いてたのかな?」
「そ、それは――」
「あぁ、わかった。好きな人を、別の男に奪われたのか」
「えっ!?」
な、何でわかったんだ!?
僕、この子には一言も言ってないのに――!
「君、名前は?」
「の、如恵留――川島如恵留です」
「如恵留くん、君はいつまでそうしてるつもりなの? 欲しいモノを、奪われたままでいいの?」
奪われていいはずがない。
僕は、大我くんを助けたい。
でも、どうしたらいいのか、わからない。
278
:
風海人
:2013/06/01(土) 18:04:42 ID:sTFDruFc
続きまってます
279
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 18:08:20 ID:2KlcS6Xo
知念くんは、微笑んだまま――こう語る。
「僕だったら、奪い返すね。一度痕をつけられたとしても、それを愛でるのもまたいい。京本大我くんを救えるのは、恐らく、世界の何処を捜しても――君だけだ」
え?
大我くんを救えるのは――僕だけ?
「別の色をつけられているなら、君の色で塗り直せばいい。そうでしょ?」
――確かに、そうだ。
あの男から、大我くんを奪い返し、その後で告白しても、遅くはないんだ。
「君に、いい事を教えてあげる。ここから北の方向にある、今は誰も使われていない倉庫に、君の武器がある。それを取りに行くといい。そして、君の大我くんを、あの男から奪い返せ――!」
「大我くんを、奪い返す――!」
「そうだ。その意気だよ。君なら、やれる」
「僕なら、やれる――!」
僕は、今度こそ大我くんを守るんだ。
そして、好きだって伝えるんだ!
その為なら――僕は、戦う!
大我くんには、笑っていて欲しいから――!
「それじゃ、健闘を祈るよ。如恵留くん――ふふふっ」
そう言うと、知念くんは暗闇の中へ消えて行った。
280
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 18:15:31 ID:2KlcS6Xo
翌日。
僕と美勇人、森本くん達は、体育の授業を受ける為、体操着に着替えた後、校庭に出ようとしていた。
そんな時、僕は隣のクラスの教室を見た。
隣のクラスの子達は、宮田先生からの授業を受けている。
その生徒達の中に、大我くんはいた。
いつにも増して、沈んだ表情だ。
多分、この後もあの男に会うんだろうな。
きっと、怖くてたまらないんだろう。
でも、大丈夫だよ。
そんな日も、今日で終わりだから。
僕が、守ってあげる。
あの男を倒したら、次は森本くんや深澤くん達だ。
彼らも、大我くんを苦しめている元凶の一つ。
これ以上、僕の大我くんを傷つける事は、許さない。
「どうしたの? 如恵留」
「――ううん、何でもないよ、美勇人。ほら、行こう」
美勇人の前では、いつもの僕でいるようにしている。
さぁ、戦いの時間まで、もうすぐだ――。
授業の時間は、あっという間に過ぎていった。
もう、下校時間になっていた。
281
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 18:22:00 ID:2KlcS6Xo
「如恵留、一緒に帰ろうよ」
教科書やノートを鞄にしまい終えた美勇人が、誘ってきた。
「あ、ごめん、美勇人。今日は行く所があるんだ。また明日、一緒に帰ろう?」
「え、そうなんだ――うん、わかった。じゃ、また明日!」
「うん、バイバイ!」
美勇人を先に帰らせると、僕はすぐに教室を出た。
知念くんが言っていた方向に進むと、そこにあったのは――確かに、倉庫だった。
シャッターも、開いている。
ここに、戦う為の武器がある。
知念くんは、確かにそう言っていた。
僕は、そっと倉庫に入り、辺りを見回す。
「あっ――」
ふと、視界に入ったのは、鉄パイプだった。
それも、頑丈そうな。
僕はそっとそれを手にとり、軽く振ってみる。
――うん、大丈夫。
これなら、僕にも使えそうだ。
「今、助けに行くからね。大我くん――!」
鉄パイプを手に、僕は倉庫を飛び出した。
282
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 18:23:12 ID:2KlcS6Xo
風海人さん>ありがとうございます!
早速読んでくれたようですね。
これからも頑張ります!
ちょっと、これから夕飯なので、食べ終わり次第、また更新に来ますので!
283
:
智:★
:2013/06/01(土) 18:41:20 ID:yNZhV4rk
京本君の為に頑張って!と応援したい感じはしますが、あとのいじめっ子たちとかもやる気みたいですねぇ。
大丈夫かなぁ?それに武器鉄パイプでいいのか?と心配しつつ続き楽しみしています!
284
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 19:23:01 ID:2KlcS6Xo
智さん>ありがとうございます!
如恵留くんについてですが――彼は、この後、悲しい結末を迎えます。
どういう事なのかは――これから明かされます。
285
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 19:26:22 ID:2KlcS6Xo
<大我視点>
「――行かなきゃ」
今日も、慎太郎を樹に託した。
龍太郎達も、流石に手は出してこない。
それに、あの男も――。
俺は、教室を出た。
「やぁ、待ってたよ。大我くん」
いつもの道で、あの男はいた。
いつからだろう。
初めは、恐怖に震えていた。
でも、今は感じない。
もう、慣れてしまっていたのだろうか。
「さぁ、おいで」
男に導かれるまま、俺は――林の中に入って行った。
後ろからつけられている事にも気付かずに――。
286
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 19:31:29 ID:2KlcS6Xo
<如恵留視点>
倉庫を出た僕は、あの道を目指して走っていた。
すると、前方に大我くんが歩いているのが見えた。
その先にいるのは――あの男だ。
見つかってはいけない。
僕は、そっと近くの木に隠れた。
「やぁ、待ってたよ。大我くん」
男は、大我くんに夢中のようだ。
ホッ――よかった。
僕には気付いてないみたいだ。
「さぁ、おいで」
「――はい」
男に導かれるように、大我くんは――林の中に入って行った。
僕は、ゆっくりと歩き、その後に続いた。
暫く歩いていると、突然――僕の視界から2人が消えた。
否、その場に押し倒されていたんだ。
「さぁ、俺を楽しませてくれよ。大我くん――」
「んぅっ…!」
男は大我くんにキスしながら、ゆっくりと服を脱がしにかかった。
完全に、背中がガラ空きだ。
――今だ!
287
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 19:35:46 ID:2KlcS6Xo
僕は、鉄パイプを握りしめ、気付かれないように深呼吸した。
そして――。
「うおおおぉぉぉっ!」
「「!?」」
僕が飛び出すと、男と大我くんは驚いてこちらに振り返った。
「な、何だお前っ――!」
バキッ
何だお前は、と問いかける隙を与えずに、僕は鉄パイプで男の後頭部を殴った。
「ぐはっ…!」
男は、大我くんから離れ、その場に倒れ込んだ。
すかさず、僕はそいつに馬乗りになる。
バキッ
ボキッ
ドコッ
何度も何度も、鉄パイプで殴りつけた。
男が、完全に動かなくなるまで――。
やがて、男は――ぐったりとしていた。
「はぁっ…はぁっ…!」
僕はそっと立ち上がり、大我くんを見つめた。
288
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 19:40:43 ID:2KlcS6Xo
彼は、呆然としていた。
「大我くん――」
「あっ…!」
僕が名前を呼ぶと、大我くんは我に返ったようだ。
よかった――僕は、僕は大我くんを守ったんだ。
この手で、助け出す事ができたんだ!
鉄パイプが、スルリと手から抜け落ちた。
「大我くん! 僕は、やったよ。君を、救い出す事ができたんだ! 僕、僕は、君の事がっ――!」
僕は、大我くんを抱きしめようと歩み寄ろうとした。
だが――。
「い、いやっ…!」
――え?
「大我――くん?」
「いやっ…いやああぁぁっ!」
僕が近寄ろうとすると、大我くんは自分の頭を抱え、悲鳴を上げた。
否、絶叫といった方がいいか。
叫びながら、後ずさった。
「そんなっ…大我くん――!」
僕は大我くんに手を伸ばそうとするが、彼は更に距離を取った。
あぁ、こういう事か――彼は、僕を、拒絶したんだ。
289
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 19:47:20 ID:2KlcS6Xo
そんな――僕は、大我くんを助けたのに。
どうして、僕を拒絶するの!?
「あっ…あぁっ…!」
僕は、よろよろとしながら、その場から離れた。
1人震えている大我くんを残して――。
「川島くん!」
林の奥へ進んでいると、背後から声をかけられた。
振り返ると――そこにいるのは、吸血王さんだった。
「――くんが」
「えっ?」
「大我くんが、僕を拒絶した。あんなに愛していたのに――僕を拒絶した。人を殺したから、拒絶したんだ! あっ…あぁっ…僕は、僕はああぁぁっ…!」
「川島くんっ――!」
僕は、走り出した。
背後から来る、拒絶という名の気配に怯えながら――。
「待て、落ち着くんだ! 君は、人を殺してなんかいない!」
吸血王さんが、僕を追いかけながら説得している。
でも、そんなものは僕の耳に入ってこない。
290
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 19:51:23 ID:2KlcS6Xo
「大我くんは、僕を拒絶した――! 彼に拒絶されたら、もうっ…生きらていけないっ――!」
「落ち着け! 君は、あいつの魔力に翻弄されているだけだ! だから――」
僕は、更に走った。
吸血王さんの声も、僕を拒絶するかのように聞こえてくる。
みんなが、みんなが僕を拒絶するよぉ――!
怖い、怖いよぉっ!
僕は、頭を抱え、ひたすらに走った。
そして――。
「だから――飛び降りるな!!」
「――え?」
吸血王さんの意外な言葉に、僕は振り返ろうとした。
ズルッ
足を滑らせ、僕はそのまま下に落下した――。
ここで、僕の意識は――暗闇へと消えていった。
291
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 19:57:15 ID:2KlcS6Xo
<北斗視点>
「あっ…か、川島くんっ…!」
足を止めた俺は、よろよろと林の先にある崖に近づいた。
そして、下を見た。
「っ…!」
俺は、思わず目を背けてしまった。
その下にあった『モノ』は、あまりにも、無残だった――。
と、その時だった。
「ふふっ、ごちそうさま。北斗」
「!!」
僕の隣には、知念くんがいた。
ペロリと口の周りを舐めながら――。
「知念くん――川島くんの魂を、食べたんですか!?」
「うん。愛する者に拒絶された憐れな魂は、なかなか美味しかったよ」
「う、あぁっ…!」
それは即ち――川島くんはもうこの世にはいないという事だ。
「俺は――助けられなかった!」
「そんなに落ち込む事はないよ。君は、吸血王として、僕に美味しい魂を捧げてくれた。胸を張るといいよ」
「っ!!」
何で――何でそんな事を言うんですか、知念くん!
胸を張れるわけ――ないじゃないですか!
292
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 20:04:43 ID:2KlcS6Xo
「俺は――こんなにも貴方を憎んだ事はない!」
「結構な事だよ。僕は、君を愛しているけどね。それに、君は如恵留くんに何かしてあげられた?」
「そ、それは――!」
「できなかった。忠告すらしなかった。僕を責めるのはおかしいんじゃない?」
知念くんの言葉は、正しかった。
俺は、言い返せなかった。
優吾を助けられた事で、俺は――天狗になっていた。
この調子で、大我や川島くんを助けられるものだと思っていた。
でも、結局できなかった。
俺がちゃんと、腕を掴んでいれば――川島くんは死なずに済んだかもしれない。
「くっ…うぅっ…!」
俺は、その場に崩れ、泣き出した。
そこへ。
「いいね。大我くんもよかったけど、君の声も格別な美味さがある」
川島くんに殴り殺されたはずの男が――俺の逆隣に来た。
「やっぱり――貴方は、吸魂鬼だったんだな!?」
「そうだよ。あ、名前を言い忘れたね。俺は――鮎川太陽。君の言うとおり、吸魂鬼だ。それも、色欲をメインとしたね」
293
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 20:11:32 ID:2KlcS6Xo
やっぱり!
博貴さんが言っていた、心を喰わんとする男だったんだな!
「本当は、大我くんを抱いて、抱いて、抱きまくってから、その魂を頂こうと思ったんだけどね。でも、別の魂が割り込んでくれたから、そっちを美味しくいただいたよ。知念くんと分けっこしたのさ」
「僕は、初めから如恵留くんを狙ってたんだけどね。いやぁ、よかったよ。久々に太陽くんと一緒に、美味しい魂を食べる事ができて――」
「いい加減にしろ!」
好き勝手に言う太陽さんと知念くんに、俺は怒鳴り散らした。
そして、ゆっくりと立ち上がる。
「身の程をわきまえろ――吸血王は、俺だ!」
立ち上がり、2人を睨んだ。
だが、2人は怖じけない。
「ふふっ、いいね。だいぶ吸血王らしくなったよ。それでこそ、君だよ。北斗」
「貴方達の身勝手な行動のせいで、1人の命が失われたんだぞ! 吸血王として、2人に命じる。このまま俺に殺される前に――屋敷で謹慎していろ!」
初めてだった。
俺が、太陽さんと知念くん――特に、知念くんに命令するのは、初めてだった。
294
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 20:19:31 ID:2KlcS6Xo
「面白い事言うね。いいよ、今回は君の言う事に従おう。いいよね? 太陽くん」
「ああ。幸い、大我くんは向こうで気絶している。どうするかは、吸血王に任せるとしよう。来るべき惨劇に備えて、ね――」
「来るべき、惨劇だと――!? 何だそれは!?」
太陽さんの言葉に、俺は耳を疑った。
来るべき惨劇に備える。
確かにそう言っていた。
後に、この島に何かが起こるとでもいうのか!?
「それじゃ、僕と太陽くんは先に屋敷に帰っているよ。如恵留くんと大我くんは、君に任せるさ。北斗――」
「ふふっ」
知念くんと太陽さんは、その場から姿を消した。
残されたのは――俺だけだ。
俺は、フッと下に降り立った。
そして、川島くんの髪を撫でる。
「川島くん――助けられなくて、ごめんなさい」
そして、再び上に戻った。
そのまま、大我のいる場所まで戻る。
大我は、気絶していた。
「大我――ごめんね。怖い目に遭わせてしまって――」
とりあえず、大我を家に送らないと。
それから、駐在所に川島くんの事を言わないとな。
俺は、そっと大我を抱え上げた。
295
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 20:27:33 ID:2KlcS6Xo
<大我視点>
あれから、俺は自分の家にいた。
気がつけば、慎太郎に膝枕されていたんだ。
「目、覚ました? 大我」
「慎太郎――俺は、いつから家に?」
「さっきまで家の前で、大我は倒れていたんだ。今、おばさんが水を替えに行ってくれてるよ」
――そっか。
じゃあ、さっきのは――夢?
それとも、現実――?
「大我、今は慎の側で眠って? 何も考えなくていいから――」
「う、ん――」
慎太郎の撫でられると、再び眠くなってきた。
それじゃ、もうちょっと寝ようかな。
おやすみ、慎太郎。
「おやすみ、大我――」
俺は、ゆっくりと瞼を閉じた。
あれから、あの男の子は遺体となって発見された。
名前は、川島如恵留。
どうやら、龍太郎のクラスの子だったらしい。
駐在所のお巡りさんだけでなく、新島の警察も捜査したけど――結局、自殺という事になった。
あの男と鉄パイプは――見つからなかった。
否、初めからなかったかのような扱いだった――。
296
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/01(土) 20:32:21 ID:2KlcS6Xo
今の俺は、冷静に考える事ができた。
あの時、川島くんは俺を助けようとしてくれたんだ。
でも、返り血を浴びた彼が怖くて――俺は思わず悲鳴を上げてしまった。
その結果、彼はこの世から消えた。
ごめんね、川島くん。
せめて、天国でゆっくり眠って――。
「如恵留、如恵留ーっ! 何で、何で自殺なんかしたんだよぉ!?」
隣のクラスからは、川島くんと仲が良かったらしい森田くんの泣き声が聞こえてきた。
ごめんね、森田くん。
川島くんは、自殺じゃない。
俺が、殺してしまったも同然なんだ。
でも、誰も俺を責めない。
「大我、どうした?」
「大丈夫か?」
優吾と樹が、話しかけてくれた。
ジェシーと慎太郎もいる。
――うん、大丈夫だよ。
ありがとう、みんな。
297
:
風海人
:2013/06/03(月) 18:49:48 ID:sTFDruFc
続きまってます
298
:
枝琉
:2013/06/04(火) 19:43:52 ID:1e8qRJ1M
お久しぶりです。
とても面白かったです。
これからも頑張ってください。
299
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/07(金) 17:01:48 ID:2KlcS6Xo
風海人さん>ありがとうございます!
続き、頑張りますので、もしまた読んだら感想お願いしますね♪
枝琉さん>ありがとうございます!
お久しぶりです♪
お元気でしたか?
まだまだこのお話は続きます;
もしよければ、ついてきてくださると嬉しいです。
これからも頑張ります!
300
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/07(金) 17:07:23 ID:2KlcS6Xo
<???視点>
ピピピッ――。
目覚まし時計が、部屋中に鳴り響いた。
僕は、ベッドから手を伸ばし、それを止める。
もう、朝なのか――。
「よいしょっと――」
ベッドから起き上がると、僕はカーテンを開いた。
外はいい天気だ。
海も綺麗な碧色で、キラキラ輝いている。
でも、僕はそれとは違っていた。
「学校、行きたくないな――」
ぽつりと呟いても、現状が変わるわけじゃない。
と、その時。
「嶺亜ー、起きなさい」
ドアの向こうでは、母さんが僕を呼んでいた。
このままここにいては、母さんに叱られる。
「今、起きたよ」
そう返事をしながら、僕は制服に着替えた。
僕の名前は、中村嶺亜。
小夜鳴島の学校に通っている。
学校は、小中高と一貫していて、クラスの学年はバラバラだ。
301
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/07(金) 17:13:40 ID:2KlcS6Xo
僕は、学校が嫌いだった。
何故なら――いじめられているからだ。
同じクラスの有岡くんや安井くん達によって――。
「ねぇ、母さん」
「何、嶺亜?」
「――どうしても、学校に行かなきゃだめ?」
「何言ってるのよ。勝手に休むなんて、許しませんからね。さ、早く食べちゃって、学校に行きなさい」
「――はい」
母さんに、何を期待していたんだろう。
予想していたのと同じ答えなのは、わかっているのに――。
母さんは、元々、東京の学校の先生だった。
父さんとの結婚を機に、退職したんだけどね。
でも、教師としてのプライドが高く、サボろうものなら、容赦なく怒鳴り散らす。
「じゃあ、行ってきます」
「はい、いってらっしゃい」
鞄を持つと、僕は母さんに見送られながら、家を出た。
302
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/07(金) 17:21:13 ID:2KlcS6Xo
学校へ行く足取りが軽くない。
寧ろ、重いくらいだ。
それぐらい、学校が嫌いなんだ。
でも、遅刻するわけにはいかない。
先生だけでなく、また母さんに叱られるから。
それは避けたかった。
「あ、もうついちゃった――」
気がつけば、もう教室のドアの前まで来ていた。
入りたくない。
でも、ここで帰ったら、母さんに怒られる。
僕は、ドアを開けた。
すると――。
シーン
さっきまで賑やかだった声は、僕が教室に入った途端に止んだ。
クラスメート達は、一斉に僕を見る。
好意の視線ではない。
蔑んだ瞳だ。
その視線を受けながら、ゆっくりと席に向かった。
一番端っこにある、自分の席に――。
「あーあ、来やがったよ。点取り虫が」
中央の席で、一番に声を上げたのは、有岡大貴くんだった。
303
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/07(金) 17:25:18 ID:2KlcS6Xo
その両隣には、取り巻きの安井謙太郎くんや萩谷慧悟くんもいる。
「さっきまで空気よかったのになー」
「誰かさんのせいで、汚れちゃったよ」
僕に聞こえるようにわざとらしく言う安井くんと萩谷くん。
下級生達も、それに合わせてクスクス笑っている。
それを気にしないようにしながら、僕は自分の机を見た。
「っ…!?」
机中には、落書きされていた。
『死ね』
『点取り虫』
『臭いんだよ』
『学校来んな』
など、たくさん悪口が書かれていた。
本当は言い返してやりたい。
でも、言ってもどうせまたいじめが返ってくるだけだ。
僕はそのまま、席に座り、教科書やノートを机の中にしまった。
きっかけは、僕がテストで100点を取った事だった。
その日のテストは、一番難しくて――僕は必死に勉強していたんだ。
そして、その努力が実った。
担任である藤ヶ谷先生にも褒められ、家でも母さんが褒めてくれた。
304
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/07(金) 17:33:27 ID:2KlcS6Xo
でも、それがいけなかった。
今まで一番だった有岡くんより、いい成績を取ってしまったんだ。
それが、彼らにとっては面白くなかった。
それ以来、僕は――点取り虫と呼ばれ、いじめられるようになった。
勿論、藤ヶ谷先生にも相談した。
でも、先生からの答えはこうだった。
『無視しろ。そうすれば、相手もすぐ諦めるから』
そう言われて、僕は真に受けた。
なるべく相手と視線を合わさず、反論もせず、やり返さず――無視を続けた。
でも、彼らのいじめは無くなるどころか、更にエスカレートしてきた。
「うわっ、近寄んなよ!」
「虫が移るだろ!」
クラスメートの神宮寺勇太や羽生田挙武は、初めは僕とも仲が良かった。
でも、有岡くん達からいじめを受けるようになってからは、あっさり彼ら側についた。
あぁ――ずっと友達のフリをしていたんだね。
これ以降、誰も僕を庇ってくれる人は現れなかった。
305
:
華乃
◆tJelgF5jwU
:2013/06/07(金) 17:38:58 ID:2KlcS6Xo
僕が予習をしていると、紙くずを投げつけられた。
有岡くんが、投げたんだ。
「ナイスシュート、有岡くん!」
「………」
安井くんが囃し立てるが、僕は気にしない。
これくらい、まだいい。
あ、そうだ。
ちょっと、トイレに行ってこよう。
そう考えた僕は、ゆっくりと席を立ち、教室のドアへ向かった。
「おい、逃げんなよ!」
「何処行くのかなぁ? 嶺亜きゅーん」
萩谷くんや神宮寺にからかわれても、気にせず教室を出た。
「あれ? 君、そっちは教員用のトイレだよ」
教員用の男子トイレに入ろうとすると、別のクラスの宮田先生に呼び止められた。
「え、えっと――あっちのトイレが混んでいたんです」
「あ、そっか――じゃあ、今日だけだよ」
「ありがとうございます」
先生から許可をもらい、僕はトイレに入った。
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