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本スレ転載用スレ

156 ◆c.g94qO9.A:2012/05/27(日) 21:16:35 ID:tRLTibJ.
再び沈黙が流れる中、口を開くものはいなかった。じんわりと熱せられた大地より薄く陽炎が立ち上り、湿った空気の臭いが男たちの鼻をくすぐる。
もう太陽が昇る時も近いのだろう。月明かりは薄れ、夜の世界は終わり告げる。傍らに立つ街灯の灯りが、やんわりと夜明け前の明るさに滲んでいった。
その時だった。誰もが足を止め、動くのをためらうような中、大男の肩が震えだした。
その表情は暗闇に隠れはっきりとしない。身体が震えているのは歓喜になのか、悲しみになのか。
彼を囲むように立つ四人の男たちは何事か、と訝しげにその様子を伺う。彼らは黙って大男を見守った。

ゆっくりと空気が震えた。その波は鼓膜を震わせ、音となり、男たちの脳を揺らす。
大男は笑っていた。やがて大きくなり始めたその声は、はっきりと笑い声となって辺りの建物に反響する。
そして身体を捩るように、彼は大口を開けて笑った。恐怖を煽るような笑いではなかった。だが、人の神経に触る、不愉快な笑いであった。

フーゴは反射的にスタンドを呼び出すと、自らを守るように戦いの構えをとる。
リンゴォはナイフを向けると、いつでも戦える臨戦態勢をとった。
苛立ち気な様子のナランチャをなだめるように、ジョナサンはその肩に優しく手を置いた。
四人の鋭い視線が一人の男に注がれる。狂乱の持ち主はあたりを知ってか知らずか、それでも笑いを止めようとしなかった。

どれほど笑いは続いただろうか。乾いた笑いは最後に一段と大きくなり、そして消えた。
息を乱し、肩で息をしながら、大男は笑顔を張り付けると捻りだすように言葉を口にする。
その声は低くドスの利いた声であった。

「お説教はおしまいか? 戯言吐くのにも満足しただろうな。あまりのくだらなさに欠伸が出るぐらいだ。
 言いたいことがあるなら今のうちに言っちまいな。じゃねーと後で言いたくなった時、その口、使い物になってねーかもしれねェからな。
 くだらねェ……誇りだ? スタンドを取り戻すだと?
 ハッ、いいだろう、やってみやがれってんだ。かかってこいよ、髭野郎、筋肉だるまにもやし小僧と阿呆チビッ
 四人同時にかかってきても俺は一向に構わないぜ? スタンド使いだろうと、なんだろうと大歓迎だッ
 文句があるならかかってこいよッ 戦おうってなら……やってやろうじゃねーかッ」

当初追いつめられ、うろたえていた様子はもう、微塵も感じられなくなっていた。
ギラギラと光る目は獣のように鋭く、戦いの興奮に合わせたかのようにその体が大きく膨らんだように見えた。
空気が圧縮され、重量を持って五人の上にのしかかる。

大男が背にした民家に拳を叩きつけた。窓が割れ、コンクリが砕け、大気が震えた。
それを合図にしたかのように、飛び出す二つの影。
血気盛んなナランチャがジョナサンの制止を振り切り、飛び出した。ナイフを構えたリンゴォが、一目散に駆けていく。

迎え撃つは超越者、『柱の男』、『エシディシ』。咆哮をあげた大男が戦場に身を躍らせる。
戦いが始まろうとしていた。




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