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仮投下・修正用スレ

1欲望まみれの名無しさん:2011/10/20(木) 22:15:27 ID:LZKpu5rs
そのまま投下するのが不安な場合や、規制で書き込めないという場合は此方をご利用下さい。
放送案や、その他各部修正案の投下なども此方のスレでお願いします。

2セカイノハカイシャ(修正版) ◆mLCV9heyEc:2011/11/08(火) 20:43:58 ID:Or2NEZEQ
修正版を投下します。

3セカイノハカイシャ(修正版) ◆mLCV9heyEc:2011/11/08(火) 20:44:34 ID:Or2NEZEQ

 ――世界の破壊者、ディケイド。
 ――いくつもの世界を巡り、その瞳は何を見る。


 仮面ライダーディケイド、門矢士は仮面ライダースーパー1と仮面ライダーカブトを倒した直後にこのバトルロワイアルに招かれた。今、その彼は手に握った名簿を見ている。


「アポロガイスト…」


 名簿に記された名前を見て士は思考する。
 恐らく主催者の真木は、死者を蘇生させる技術を持っているか、並行世界を行き来できる能力を持っていると推測した。
 何故なら、アポロガイストは仮面ライダーディエンドと共闘して倒したからだ。
 それなのにアポロガイストの名は確かに名簿に記されている。
 つまり、それは真木が蘇らせたか、並行世界のアポロガイストということになる。


「ユウスケ、海東…」


 次に見つけた知り合いの名前は小野寺ユウスケと海東大樹。
 彼らと旅した思い出の日々が少しだけ士の中で蘇る。
 通りすがりの仮面ライダーとして様々な世界で巨悪と戦った。
 だが、もう通りすがることはできない。
 世界が滅びる未来を変えるためには誰が相手であろうと破壊しなければならない。迷いなど必要はない。


「最後は剣崎一真、か」


 かつて士を排除するために戦いを挑んできた男。
 あの時はブレイドキングフォームの圧倒的な力の前に敗れるしかなかった。
 しかし、激情態にパワーアップした今の自分なら互角以上の戦いができると士は確信する。


「俺は全てを破壊する…。これからも、そして何度でも…!!」


 士の目的はただ一つだ。
 このバトルロワイアルに存在する者を主催者も含めて全て破壊すること。
 仮面ライダーディケイドの存在意義は破壊にこそある。ライダー大戦が起こったあの日にそれを学んだ。
 全てを破壊し、全てを繋ぐ。そのためにも手始めにバトルロワイアルの破壊をなさなければならない。

 現時点で所持しているカードはクウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、ディケイド関連の物のみ。
それ以外のライダーの力を宿したカードは全てなくなっていた。恐らく真木の仕業だろう。
 それに加えて、武装や能力を使うためにはセルメダルを消費しなければいけないという厄介な制限がある。他の参加者からセルメダルを奪うことも考えなければいけない。


「参加者を探すか」


 世界の破壊者の新たなる戦いが幕を開けようとしていた。

【一日目−日中】
【C−5/神社】
【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【所属】無
【状態】健康
【首輪】100枚:0枚
【装備】ディケイドライバー&カード一式@仮面ライダーディケイド、
【道具】ランダム支給品1〜3
【思考・状況】
基本:方針.全てを破壊する(主催者である真木も含めて)
1.参加者を探す。
2.他の参加者を倒してセルメダルを奪う。
3.海東とユウスケが相手でも躊躇わない。
【備考】
※MOVIE大戦2010途中(スーパー1&カブト撃破後)からの参戦です。
※所持しているカードはクウガ〜キバまでの世界で手に入れたカード、カメンライド(ディケイド激情態)、アタックライド(クロックアップ、インビジブル、ギガント)、ファイナルアタックライド(ディケイド)です。

4欲望まみれの名無しさん:2011/11/08(火) 21:00:15 ID:6KgddJCs
修正乙です。
重ね重ね申し訳ないですが、クウガ〜キバ以外のディケイドの所持カードは断定しない方がいいかもと思いました。
基本戦術のスラッシュとブラストや、イリュージョンなんかもあるので…
確か議論段階では、烈火大斬刀やガガの腕輪のようなカードさえなければ他は構わないという事だったと思います。

5 ◆mLCV9heyEc:2011/11/08(火) 21:25:21 ID:Or2NEZEQ
>>4
分かりました。

では、

【備考】
※MOVIE大戦2010途中(スーパー1&カブト撃破後)からの参戦です。
※ディケイド変身時の姿は激情態です。
※所持しているカードはクウガ〜キバまでの世界で手に入れたカード、
 ディケイド関連のカードだけです。

これで大丈夫でしょうか・・・?

6欲望まみれの名無しさん:2011/11/08(火) 21:35:50 ID:6KgddJCs
>>5
大丈夫だと思います。
二度の修正お疲れ様でした。

7欲望まみれの名無しさん:2011/11/11(金) 16:39:58 ID:ycUJD9BY
本スレ>>83の修正稿を投下します。
これでご意見頂いた問題はクリア出来たかと思いますが、一応確認お願いします。

8欲望まみれの名無しさん:2011/11/11(金) 16:40:34 ID:ycUJD9BY
 暁美ほむらに支給されたものは、ソウルジェムと、たった一つの「鍵」だけだった。
 鍵にはテープで一枚の紙が貼られており、そこには「Gトレーラーの鍵」と書かれている。
 最初は飛んだ外れ支給だと思った。武器もないのに、これだけで一体どうやって戦えと云うのかと。
 せめてほむらが集めた重火器だけでも支給されて居ればと思うが、無い物ねだりをした所で仕方がない。
 さてどうするかと周囲を見渡す。どうやらここは、警視庁の地下駐車場らしかった。
 警視庁である事を示す標識があちこちにあるのだから、まず間違いのない事だろう。
 駐車場に停まっている車は一台。警察のマークが描かれた、青いトレーラーだ。
 それがGトレーラーなのだろうと考えたほむらは、Gトレーラーの鍵を使い、内部へ入る。
 そして、トレーラーの中に拡がる光景を見たほむらは、軽く驚愕した。

「これは……」

 まず視界に入って来たのは、一台のバイク。
 白と青で塗装された、赤色灯付きのそれは、恐らくは白バイ。
 それは、警察が開発した世界最高峰のスーパーマシン、ガードチェイサーだった。
 しかし、ほむらが驚いたのはそれだけではない。ガードチェイサーの周囲に設置された様々な機材。
 いくつものモニターと、何らかのオペレーションルームを彷彿とさせるそれらは、ほむらに希望を与える。
 これは中々の「当たり」を引いたのではないか、と。支給品が鍵だけだったのも、これならば許せるというものだ。
 本来ならオペレーターの為に用意されたのであろう席を座り、ほむらはそこに置いてあった書類を手に取った。

「G3ユニット……? 未確認生命体……?」

 正式名称「GENERATION-3 eXtension」――通称G3-X。
 曰く、G3-Xとは未確認生命体を殲滅し得る人類最強の強化装甲服との事だった。
 未確認生命体というのが一体何なのかをほむらは知る由も無いが、今はそんな事はどうでもいい。
 肝心なのは、G3-Xに装備された魅力的な武装の数々だ。
 鉄球すらも粉々に撃ち抜く、絶大な威力を誇るの自動小銃、GM-01スコーピオン。
 未確認生命体を一撃で爆砕する事を想定されて開発されたグレネード砲、GG-02サラマンダー。
 命中すればどんな対象をも易々と裂断する超高周波振動ブレード、GS-03デストロイヤー。
 そして最高威力を誇るは、数々の未確認生命体を屠ってきたとされるガトリング銃、GX-05ケルベロス。
 他にもいくつか武装があるが、ほむらが特に興味を惹かれたのは、この四つだった。
 寧ろ、この四つだけでも、元の時間軸で使用していた銃器よりも凶悪な兵装とも思える。

「与えられた武装は有効活用させて貰うわ」

 左腕の盾内部の四次元空間にG3-Xの武装を詰め込み、ほむらは一人ごちる。
 支給されたデイバッグよりも、自前の盾の収納機能の方がよっぽど便利だった。
 どうやら収納能力程度の使用でセルメダルを消費するという事もないらしく、そこに関しては安心する。
 一方で、全ての武装のロックも既にGトレーラーの機器を操作し外しておいた。これでいつでも使用可能だ。
 最後にガードチェイサーとG3-Xユニット本体はどうするかと考え……結局放置する事にした。
 これは今の自分には邪魔な鎧だ。使用するとしても、もっとこの鎧を有効活用出来そうな仲間を見付けてからだ。
 となれば、次にするべき事は、この殺し合いのルールを確認する事。
 席に腰掛け、支給された名簿とルールブックに目を通す。
 
(まどかも参加させられている……)
 
 そして真っ先に見付けたのは、鹿目まどかの名前だった。
 自分が参加させられている時点で想像はしていたが、やはりまどかも参加させられている。
 それだけではない。美樹さやかも、巴マミも、佐倉杏子も、志筑仁美までもが参加させられている。
 自分は無所属、まどかは白陣営。各々振り分けられた陣営の中でも、肝要なのはその二つだけだ。
 そして次にルールブックを確認し――一つの問題に気付く。
 
(無所属には、対応するグリードが居ない。つまり、私が勝利する可能性はない)
 
 どう頑張った所で、自分は無所属だ。無所属の参加者には、最初から勝利という選択肢はないのだ。
 ならば白陣営に属すまどかを勝利させる為、白以外の陣営を全て殺すという選択肢も考えはした。
 だけれども、本当にそれでまどかが助かる保証もないし、真木とか言う男は信用ならない。
 今はまだ積極的に動くべきではない。情報を集めるのが先決だと考えた。
 当然、この身に降り掛かる火の粉は払わせて貰うつもりではあるが。
 ともあれ、まずは誰かと会わなければならない。
 そう考えたほむらは、一先ず地上に出る為に歩き出した。

9 ◆MiRaiTlHUI:2011/11/11(金) 16:41:25 ID:ycUJD9BY
申し訳ありません、酉付け忘れです。

10欲望まみれの名無しさん:2011/11/11(金) 19:06:00 ID:biSBqWv6
修正乙です。
僕はこれで大丈夫だと思います。

11欲望まみれの名無しさん:2011/11/11(金) 19:50:24 ID:wshcb4PI
修正乙です
収納の問題はそれで大丈夫だと思いますよ
所属の問題は、
(3)名簿…全参加者の名前が列記されている。ただし、所属陣営は不明
と記されてますし私個人の意見では、決める事が出来ませんね…

12 ◆qp1M9UH9gw:2011/11/12(土) 02:38:07 ID:WnZICNZ2
状態表にミスがあったので修正します

【一日目-正午】
【D−2/大桜跡地】
※バーサーカーのデイパック(基本支給品一式)、剣崎のデイパック(基本支給品一式、不明支給品0〜2)、
 ラウズカード(ジョーカー)が放置されています。
※大桜跡地にて火災が発生しました

【バーサーカー@Fate/zero】
【所属】赤陣営
【状態】ダメージ(中)、狂化
【首輪】所持メダル「130」(増加中):貯蓄メダル「0」
【装備】なし
【道具】無毀なる湖光(アロンダイト)@Fate/zero(封印中)
【思考・状況】
基本:▅▆▆▆▅▆▇▇▇▂▅▅▆▇▇▅▆▆▅!!
※参加者を無差別的に襲撃します。
 但し、セイバーを発見すると攻撃対象をセイバーに切り替えます


予約の件につきましては、本当に申し訳ありませんでした。
今後は二度とこのような事が起こらないように努めます。

13 ◆qp1M9UH9gw:2011/11/12(土) 02:53:24 ID:WnZICNZ2
「基本的な装備は募集されない」というルールを失念していました。
エリアの情報を下記のものに再度修正します。

【D−2/大桜跡地】
※バーサーカーのデイパック(基本支給品一式、不明支給品0〜1)、剣崎のデイパック(基本支給品一式、不明支給品1〜3)、
 ラウズカード(ジョーカー)が放置されています。

14 ◆MiRaiTlHUI:2011/11/12(土) 18:15:22 ID:6wlpPwAU
>>11
申し訳ありません、名簿の欄を完全に見落してました。
それではその点に関して修正を加えましたので、此方に投下致します。

15 ◆MiRaiTlHUI:2011/11/12(土) 18:17:07 ID:6wlpPwAU
まずは本スレ>>83の修正稿。

 暁美ほむらに支給されたものは、ソウルジェムと、たった一つの「鍵」だけだった。
 鍵にはテープで一枚の紙が貼られており、そこには「Gトレーラーの鍵」と書かれている。
 最初は飛んだ外れ支給だと思った。武器もないのに、これだけで一体どうやって戦えと云うのかと。
 せめてほむらが集めた重火器だけでも支給されて居ればと思うが、無い物ねだりをした所で仕方がない。
 さてどうするかと周囲を見渡す。どうやらここは、警視庁の地下駐車場らしかった。
 警視庁である事を示す標識があちこちにあるのだから、まず間違いのない事だろう。
 駐車場に停まっている車は一台。警察のマークが描かれた、青いトレーラーだ。
 それがGトレーラーなのだろうと考えたほむらは、Gトレーラーの鍵を使い、内部へ入る。
 そして、トレーラーの中に拡がる光景を見たほむらは、軽く驚愕した。

「これは……」

 まず視界に入って来たのは、一台のバイク。
 白と青で塗装された、赤色灯付きのそれは、恐らくは白バイ。
 それは、警察が開発した世界最高峰のスーパーマシン、ガードチェイサーだった。
 しかし、ほむらが驚いたのはそれだけではない。ガードチェイサーの周囲に設置された様々な機材。
 いくつものモニターと、何らかのオペレーションルームを彷彿とさせるそれらは、ほむらに希望を与える。
 これは中々の「当たり」を引いたのではないか、と。支給品が鍵だけだったのも、これならば許せるというものだ。
 本来ならオペレーターの為に用意されたのであろう席を座り、ほむらはそこに置いてあった書類を手に取った。

「G3ユニット……? 未確認生命体……?」

 正式名称「GENERATION-3 eXtension」――通称G3-X。
 曰く、G3-Xとは未確認生命体を殲滅し得る人類最強の強化装甲服との事だった。
 未確認生命体というのが一体何なのかをほむらは知る由も無いが、今はそんな事はどうでもいい。
 肝心なのは、G3-Xに装備された魅力的な武装の数々だ。
 鉄球すらも粉々に撃ち抜く、絶大な威力を誇るの自動小銃、GM-01スコーピオン。
 未確認生命体を一撃で爆砕する事を想定されて開発されたグレネード砲、GG-02サラマンダー。
 命中すればどんな対象をも易々と裂断する超高周波振動ブレード、GS-03デストロイヤー。
 そして最高威力を誇るは、数々の未確認生命体を屠ってきたとされるガトリング銃、GX-05ケルベロス。
 他にもいくつか武装があるが、ほむらが特に興味を惹かれたのは、この四つだった。
 寧ろ、この四つだけでも、元の時間軸で使用していた銃器よりも凶悪な兵装とも思える。

「与えられた武装は有効活用させて貰うわ」

 左腕の盾内部の四次元空間にG3-Xの武装を詰め込み、ほむらは一人ごちる。
 支給されたデイバッグよりも、自前の盾の収納機能の方がよっぽど便利だった。
 全ての武装のロックは既にGトレーラーの機器を操作し外されている。これでいつでも使用可能だ。
 最後にガードチェイサーとG3-Xユニット本体はどうするかと考え……結局放置する事にした。
 これは今の自分には邪魔な鎧だ。使用するとしても、もっとこの鎧を有効活用出来そうな仲間を見付けてからだ。
 となれば、次にするべき事は、この殺し合いのルールを確認する事。
 席に腰掛け、支給された名簿とルールブックに目を通す。
 
(まどかも参加させられている……)
 
 そして真っ先に見付けたのは、鹿目まどかの名前だった。
 自分が参加させられている時点で想像はしていたが、やはりまどかも参加させられている。
 それだけではない。美樹さやかも、巴マミも、佐倉杏子も、志筑仁美までもが参加させられている。
 だが、彼女らの陣営までは分からない。肝要なのはまどかが何処の陣営に所属しているかなのだが。
 窓ガラスに映った自分自身の首輪のランプは――紫色だった。
 ルールブックを確認する限り、紫は無所属。
 
(……無所属には、対応するグリードが居ない。つまり、私が勝利する可能性はない)
 
 どう頑張った所で、無所属の参加者には勝利という選択肢はない。
 ならば、何とかしてまどかの陣営を調べ、その陣営以外の全てを殺すという選択肢も考えはした。
 だけれども、本当にそれでまどかが助かる保証もないし、真木とか言う男は信用ならない。
 色々と考えたが、今はまだ積極的に動くべきではないという結論に達した。情報が少なすぎる。
 この身に降り掛かる火の粉は払わせて貰う心算だが、積極的に殺し合いに乗るつもりもない。
 一先ずの行動方針を決めたほむらは、まずは地上に上がろうとGトレーラーを後にした。

16 ◆MiRaiTlHUI:2011/11/12(土) 18:18:03 ID:6wlpPwAU
続いて本スレ>>85の修正稿になります。

 


 岡部倫太郎と名乗った男の経験は、暁美ほむらにとって衝撃的なものだった。
 曰く、彼はたった一人の少女の命を救う為に、何度も何度も時間を繰り返したのだという。
 だけれども、何度繰り返しても少女は死んだ。どんなにその可能性を排除しても、少女の死は変えられなかった。
 数えるのも嫌になる程、何度も何度も何度も何度も繰り返し、そして何度目かのループで、岡部は知った。
 どんなに時間を巻き戻し、過去を改変し可能性を変えても、行きつく結果は変わらないのだと。
 椎名まゆりという少女がその日のその時間に死ぬと云う事実は、どんなに書き換えても変わらない。
 世界によって決め付けられた、絶対に変動する事のない結果だというのだ。

(……じゃあ、私がまどかを救うおうと、何度も時間を繰り返しても、まどかは魔法少女になったのは――)

 世界によって決められた事実、だというのか。
 鹿目まどかが魔法少女となり、そして最悪の魔女となる事は、絶対に変えられないのか。
 いや、そんな運命論染みた話を信じたくは無い。繰り返し続ければ、いつかは変えられる筈だ。
 事実、最終的にこの岡部倫太郎は椎名まゆりを救ったと言っていたではないか。

「……なら、貴方は一体どうやって椎名まゆりを救ったというの?」
「何度目かのループで、俺は知らされた。確定された未来を改変する為には、世界線を越えなければならない。
 ダイバージェンス1%の壁を越えて、向こう側の世界線……α世界線からβ世界線へ到達しなければならないのだと」
「世界線……? ダイバージェンス1%……?」

 ほむらの問いに、岡部は世界線の説明を簡潔にしてくれた。
 世界は幾つもの可能性に分岐しているが、それらは全て一つの結果に辿り着いてしまう。
 これは先程語られた「椎名まゆりは世界によって殺される」という話から、既に理解している。
 仮に世界線を数値化するとして、些細な変化では、どう頑張ってもその結果を変える為の数値には満たない。
 小数点未満の変化程度では行きつく結果は変わらないし、世界が進む大まかな歴史が変わる事もない。
 だが逆に……小数点以上、つまり1%以上の変化を齎せば。世界全土に及ぶ歴史そのものを書き変えれば。
 その時は、一つの結果にしか到達し得なかった筈の世界線が、別の世界線へと切り替わる。
 世界が行きつく歴史そのものを捻じ曲げて、岡部倫太郎は椎名まゆりを救ったのだ。

「……世界線そのものを越える事が出来れば……まどかを……」
「は……?」

 気付いた時には、ぽつりと呟いていた。
 岡部倫太郎は意味が分からないと言った様子でちらりとこちらを一瞥するが、構う事はない。
 ほむらは思考する。確かに自分は今まで、誰が魔法少女になるかならないか、そんなレベルでの改変しか行っては居ない。
 だが、もしもこの岡部倫太郎のように、世界の歴史を変える程の何かを成したとすれば、或いは――。

(今度こそ、まどかを救える……)

 まだ確かめて居ない可能性が残されているのだ。こんな所で殺し合いに興じている場合では無い。
 なればこそ、一刻も早く元の世界に戻りたいと思うが、そう簡単に脱出など出来る訳もないのだろう。
 仮に自分がまどかの陣営を優勝させたとしても、このままでは最終的にまどかが魔法少女になる事実は変わらない。
 だとするなら、時間の仕組みを知った今のほむらが生還し、自分自身の力で世界線の壁を越えた方がよっぽど合理的だ。
 だが自分がグリードの居ない無陣営である限り、勝利はない。帰還出来る可能性も、ない。
 詰まる所、まどかを救うためには、この殺し合い自体を破綻させて脱出するしかないのだ。

(今はこの男と手を組んで生き残り――真木を打倒する)

 それこそがまどかを救う為の近道なのだろうとほむらは判断した。
 だとするならこの男、岡部倫太郎は重要な情報源だ。ここで殺すには惜しい。
 中々に頭も切れるようだし、時間の仕組みも熟知しているのだから役にも立つ。
 まどかを救う為の「鍵」の一つは、この男にこそあるのだ。

17 ◆MiRaiTlHUI:2011/11/12(土) 18:19:59 ID:6wlpPwAU
以上です。
主に「陣営を明記しない」という方向で修正しました。
修正に時間が掛かってしまい、申し訳ありませんでした。
これで今度こそクリア出来たかと思いますが、一応ご確認お願いします。

18欲望まみれの名無しさん:2011/11/13(日) 20:55:17 ID:rA6GWZKY
修正お疲れ様です。
問題はないと思います。

19 ◆eBcz2IT0Gk:2011/11/30(水) 01:38:58 ID:LTGkUAlE
本スレで指摘された部分を直したので投下します

20 ◆eBcz2IT0Gk:2011/11/30(水) 01:39:47 ID:LTGkUAlE
舗装されている道を一人の男が座っていた。
彼は手早く持っている荷物の中身を確認し何枚かの紙といくつかの道具を取り出してノロノロと立ち上がり歩き出す。
彼、笹塚衛士は正義感を持ち合わせるて居る方ではなかった。だがこのような犯罪を容認できる男でもなかった。
普段の勤務態度こそ褒められたものではないが彼はこう見えても刑事だ。このような犯罪は見逃すべきではない。
名簿を見ようと思いそれを広げる。
見る限りでは怪物だけではなく怪盗Xや葛西、至郎田など犯罪者等の危険人物が何人か紛れ込んでいるらしい。
彼らに桂木弥子のような無力な一般市民などを躊躇いも無く殺すだろう。
それだけはなんとしても避けなければ無かった。
まぁ彼が動かなくてもあの魔人脳噛ネウロ全て返り討ちにしそうだが。でもやるしかない。だって警察だし。
次はどこに行くかだが今現在いる地区はG-6らしい。少し進めば警視庁が見えてくるはずだ。まあ地図が正しければだが。
いきなりこんな所に連れてこられたのだ、普通の人間ならある程度混乱し助けを求めようとするだろう。
そして常識的に犯罪から助けてくれる存在『警察』に助けを求める。
実際にあるのは警視庁なのでちょっと違うのだがそこに向かう者が出てきても可笑しくは無い。
そう考えながら歩いていた彼は急にその足を止める。歩いていた道の少し先で歩いてる人影が見える。
接触を図ろうと思い用心の為予めにデイパックから出していた支給品の一つである『AM』と刻印された44オートマグを構える。

21 ◆eBcz2IT0Gk:2011/11/30(水) 01:40:24 ID:LTGkUAlE
「…そこの君!警察だ!聞こえたら返事をしてくれ!!
妙な事は思わないほうがいい、こちらは銃を持っている!!」

彼は内心焦っていた。今接触する相手がもし怪盗Xのような素手で人間一人を屠れる危険人物であったら準備不足もいいところだ。
大口径とはいえ悪名高きAM社の44オートマグでは少し心許無かった。
返事は無かったが声を掛けたからには接触しないわけには行かずゆっくりと距離を縮めていく。
近づいてからわかった事だがどうやら女性のようだった。
後ろを向いていたが手に持つ携帯の明かりのおかげで近くの民家の窓に顔が映っている。
確かに銃を持った男にいきなり声を掛けられたらこうなるかも知れないが彼女は手に持っている携帯の画面ばかり見つめておりこちらには目も向けない。
携帯を見ていた彼女の顔色は急に酷くなっていき肩が小さく震え始めていた。
いやな予感のしてきた、と彼は接触を図った事に半ば後悔し始めていた。

「…なぁアンタ聞いてる?こんな状況だし混乱するのは分かるし信用できないのも当たり前だが…そのなんだ…会話くらいしてくれなきゃ困る」

そう言いながら彼は頭をポリポリと掻く。
彼はコミュニケーション能力が無い分けではないがこのような相手との交渉ごとは不得意だった。
やはり返事は返ってこず彼はすっかり困り果てていた。

22 ◆eBcz2IT0Gk:2011/11/30(水) 01:41:49 ID:LTGkUAlE
「…さい」
「ん?」

彼は声が聞こえた気がしたので彼女を見ていみる。
いつの間にかこちらを向いていた彼女は小声で何かを喋っていた。

「…なさい」
「出来ればもっと大きな声で話してくれるとありがたい」

そう言いながら額の汗を拭い銃を構えなおす。
柄にも無く彼は彼女が出す不気味な雰囲気に完全に呑まれていた。

「…」
「何とか言ったらどうなんだ?」
「…ごめんなさい」
「なぜ謝るんだ」

やっと聞こえたその声はかすかに震えていた。
だがなぜか彼は彼女の雰囲気にある懐かしさを覚えた。いや懐かしさと言うより既視感に近い。
かつて自分はこの感覚を何度も味わったような気がする。

「…私はやらなきゃいけないの。FBの命令だから」
「いったい何をやるんだ?」
「…貴方を殺さなきゃ」
「そうかい!」

交渉決裂だなと続けて言いながら彼は銃を構えなおし目の前の女を撃つ。
はずだった。

23 ◆eBcz2IT0Gk:2011/11/30(水) 01:42:41 ID:LTGkUAlE
「…?」

引き金を引こうとしても一向に音が鳴らない。
なぜか銃を持っていた右腕が上がらない。
というか物凄く痛い。当たり前だ。肘から先が無くなっていたのだから。
女が何かしたのかと思い彼女を見ると女は空を指出した。
不思議な光景だった。今さっきまであった腕が『何か』に咥えられ空中に浮いている。
そしてその『何か』というのは…

「鮫?」

彼と彼女の間を二匹の鮫がぷかぷかと浮いている。
そしてさっきまで彼の右腕だった物を奪い合い食べていた。

「…鮫じゃない」

彼の先ほどの発言に少し彼女は怒っているようだった。

「…アビスラッシャーとアビスハンマ」
「…名前?」
「…かわいい?」
「…」

二匹を愛しげに撫でる彼女の事をまるでペットを自慢する飼い主だと彼は思った。
撫でる腕から逃げるように二匹の鮫が彼女の周りをくるくる回っている。
実際には嫌がる様子はなくこれも一種の飼い主とペットのスキンシップのようなものなのだろうと彼は思った。
彼の意識が次第に薄れていく。
当然だ。無残にも食いちぎられた右腕からは随分血が流れてしまった。
多分彼は助からないだろう。

24 ◆eBcz2IT0Gk:2011/11/30(水) 01:43:24 ID:LTGkUAlE
「…最後に質問というか突っ込ませてもらうけど」
「…なに?」
「鮫って飛ぶもんじゃないだろ」
「…」
「…」

それが笹塚衛士最後の言葉だった。
そして同時に思い出すのだった。
彼女の感覚。それは今まで対峙して来た犯罪者によく似た物だと。
その中でも特にあの『シックス』を妄信している選ばれし血族の連中とよく似た雰囲気だった。

(ヤコちゃん、気を付けて…)

そう思いながら彼は目を閉じた。

☆☆☆

一人の女性が佇んでいる。
彼女はつい今しがた殺した男の支給品を自分のデイパックに詰めていた。
それが終ると近くで満足そうにぷかぷかと漂っている二匹のミラーモンスターに近づき頭を撫でる。

「…いい子」

アビスラッシャーは甘えるように顔を近づける。
アビスハンマは口からポロっと男の持っていた銃を彼女の手の上に出した。
一分ほど撫で回した後二匹は彼女から離れ近くの民家の窓の中に戯れるようにして入っていった。
その姿を見て優しく微笑みながら彼女はポケットから自分の支給品である携帯電話を取り出してメールを打つ。

『FBへ』
『言われた通りに一人殺しましたよ』
『私はこの後は何をすればいい?』

☆☆☆

25 ◆eBcz2IT0Gk:2011/11/30(水) 01:44:03 ID:LTGkUAlE
☆☆☆

IS学園の屋上に一人の男性が日光浴を楽しんでいた。俗に言うひなたぼっこである。
格好こそ今風の若者であるがその只者ならざる雰囲気は彼が常識では計り知れない何かだと物語っていた。
彼の名はカザリ。黄の陣営のリーダーにして五人のグリードの一人でもある。
彼は他の参加者と違い今の状況を楽しんでいた。
真木博士も面白いゲームを思いついたものだ、とカザリは思う。
限られた敷地内での殺し合い。陣営通しの潰し合い。なるほどとても楽しそうだ。
何人かのグリードと組んで特定の陣営を集中的に潰すのもいい。
オーズと組んで他の陣営を敵に回すのもいいだろう。
コアメダルを奪い合うだけではなくこのようなゲームにするなど自分たちグリードでは考え付かない事だ。
やはり博士はボクたちとは少し違うね、と独り言を呟いていると何処からか音が鳴った。
思わず身構えるカザリだったが鳴ったのは自分の支給品の携帯電話だった。
彼はデイパックから取り出し使い慣れぬ感じで携帯を開く。
送られてきたのは一通の写真付きメールだった。

「へぇ〜、中々期待してなかったけど使えるね桐生萌郁」

26 ◆eBcz2IT0Gk:2011/11/30(水) 01:45:02 ID:LTGkUAlE
彼女から送られてきた写メールを見ながらカザリは彼女への評価を改める。
今より少し前支給品のチェックをしていた時にその一つ携帯電話に有り得ない量のメールを送りつけられた時は流石のカザリも困惑したものだ。
送り主が誰だかはすぐ分かった。グリード用の名簿には参加者の軽い説明が載っているからだ。

【桐生萌郁】
年齢:20歳。生年月日:1990年6月6日(ふたご座)。血液型:B型。身長:167cm。体重:54kg。3サイズ:B88/W59/H88。
未来ガジェット研究所のラボメンNo.005だがラウンダーでもある。また極度の携帯依存症でメール魔。
あだ名は『閃光の指圧師(シャイニング・フィンガー)』

ラボメンやらラウンダーやらが何かは分からなかったが彼女がこの携帯の正式な持ち主である天王寺と言う男性に忠実であると言う事はわかった。
カザリはこの『FB』に成りすまして精々利用してやろうと思った。
参加者減らしの捨て駒。しかも自分の陣営ではなくメズールの陣営である。もし死んでもこちらの陣営には損害は一切無い。
結果は予想外だった。彼女は見つけた相手を無傷で倒したのだ。

「手駒は従順で有能な方がいいよね
 ま、これからもよろしく頼むよ桐生萌郁」

そうだ指示を考えなきゃ、と言いながら猫科の王は無邪気に笑う。
ゲームはまだ始まったばかりだ。焦る必要など無い。
出来るだけゲームを面白くするよう知恵をめぐらす事だけを考えればいい。
そう考えながらなぜかふとこうも思った。
あだ名に『閃光の指圧師(シャイニング・フィンガー)』はないだろうと…

27 ◆eBcz2IT0Gk:2011/11/30(水) 01:46:48 ID:LTGkUAlE
【一日目-日中】
【G-7/IS学園屋上】
【カザリ@仮面ライダーOOO】
【所属】黄
【状態】健康
【首輪】100枚:0枚
【装備】なし
【道具】基本支給品、天王寺裕吾の携帯電話@Steins;Gate、ランダム支給品1〜2(確認済)
【思考・状況】
基本:黄陣営の勝利、その過程で出来るだけゲームを面白くする
1.桐生萌郁への指示を考える
2.『閃光の指圧師(シャイニング・フィンガー)』(笑)
【備考】
※参戦時期は本編終盤からとなります。

【G-6/舗装された路上】
【桐生萌郁@Steins;Gate】
【所属】青
【状態】健康
【首輪】99枚(増量中):0枚
【装備】44オートマグ@現実
【道具】基本支給品、桐生萌郁の携帯電話@Steins;Gate、アビスのカードデッキ@仮面ライダーディケイド、ランダム支給品0〜1(確認済)、笹塚衛士の支給品1〜2(確認済)
【思考・状況】
基本:FBの命令に従う
1.FBの指示を待つ
2.二匹ともいい子
【備考】
※α世界から参戦
※FBの命令を実行したためメダルが増えています。
※どの程度増えたかは次の人に任せます。

【笹塚衛士@魔人探偵脳噛ネウロ 死亡】

28 ◆eBcz2IT0Gk:2011/11/30(水) 01:48:35 ID:LTGkUAlE
多分これで修正終了
タイトルは『ゲームスタート』でお願いします

29欲望まみれの名無しさん:2011/11/30(水) 10:37:46 ID:2/.OxmMQ
修正お疲れ様です。
まだ二点程気になる箇所があるので、指摘させていただきます。

>>21
>後ろを向いていたが手に持つ携帯の明かりのおかげで近くの民家の窓に顔が映っている。
この一文も修正した方がいいかも?

また、アビスラッシャーとアビスハンマーはとても鮫には見えない人型の二足歩行モンスターです。浮かぶ事もありません。
恐らく二体の姿を知らずに書いたのではないかなとは思いますが、軽くググって貰えるとすぐにわかると思います。
個人的には鮫をペット扱いして可愛がりながら人を食うという展開はとても面白いと思うので、その展開が出来なくなるくらいなら常時アビソドン状態であるという説明を入れた方がいいかなとは思います。
というかディケイド本編でもアビソドンが融合する条件などはかなり適当だったと思いますので、幾らでも理由は付けられるかなと。

何度も申し訳ありませんが、気になった点はこの二つくらいです。

30 ◆qp1M9UH9gw:2011/11/30(水) 20:55:00 ID:uuvbCqMg
「誓いと笑顔と砕けた絆」で矛盾点があったので修正します

ユウスケのデイパックに入っていたコアメダルを、自身の首輪に投入。
これにより、士はセルメダル50枚分の余裕を手に入れた。
この行為は、今後の戦いで大きなアドバンテージになるだろう。
ユウスケからデイパックを強奪したのは、士に想像以上の恩恵をもたらした。

作中でのこの文を、

ユウスケのデイパックに入っていた紫色のコアメダル。
本来ならば、この殺し合いで重要な要素を含んでいる支給品の一つなのだが、
主催者も破壊の対象にしている士にとっては、こんなものを手に入れても嬉しくも何とも無い。
これを道端に捨てないのは、一応「セルメダルの代用」という使い道が残されているからに過ぎなかった。
しかし士は、その事実に対してそれ程落胆はしていない。
何故なら、これ以外にもユウスケの支給品は存在しており、それらは捨てるべきものではない代物だったからだ。
彼からデイパックを強奪したという選択は、間違いなく正しい。

に差し替え、状態表を

【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【所属】無
【状態】健康
【首輪】115枚:0枚
【コア】ティラノ:1
【装備】ディケイドライバー&カード一式@仮面ライダーディケイド、
【道具】ユウスケのデイパック(基本支給品一式、ランダム支給品0〜2)、基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
   (これら全て確認済み)
【思考・状況】
基本:「世界の破壊者」としての使命を全うする。
 1:「仮面ライダー」と殺し合いに乗った者を探して破壊する。
 2:邪魔するのなら誰であろうが容赦しない。仲間が相手でも躊躇わない。
 3:セルメダルが欲しい。
 4:最終的にはこの殺し合いそのものを破壊する。
【備考】
※MOVIE大戦2010途中(スーパー1&カブト撃破後)からの参戦です。
※ディケイド変身時の姿は激情態です。
※所持しているカードはクウガ〜キバまでの世界で手に入れたカード、
 ディケイド関連のカードだけです。

に修正しました

31 ◆eBcz2IT0Gk:2011/12/02(金) 05:17:27 ID:FMAjqQs2
>>29
指摘サンクス

というわけで三度目の正直になればいいなと修正作を投下

32 ◆eBcz2IT0Gk:2011/12/02(金) 05:18:10 ID:FMAjqQs2
舗装されている道を一人の男が座っていた。
彼は手早く持っている荷物の中身を確認し何枚かの紙といくつかの道具を取り出してノロノロと立ち上がり歩き出す。
彼、笹塚衛士は正義感を持ち合わせるて居る方ではなかった。だがこのような犯罪を容認できる男でもなかった。
普段の勤務態度こそ褒められたものではないが彼はこう見えても刑事だ。このような犯罪は見逃すべきではない。
名簿を見ようと思いそれを広げる。
見る限りではあの会場に居た怪物だけではなく怪盗Xや葛西、至郎田など犯罪者等の危険人物が何人か紛れ込んでいるらしい。
彼らは桂木弥子のような無力な一般市民などを躊躇いも無く殺すだろう。
それだけはなんとしても避けなければ無かった。
まぁ彼が動かなくてもあの魔人脳噛ネウロ全て返り討ちにしそうだが。でもやるしかない。だって警察だし。
次はどこに行くかだが今現在いる地区はG-6らしい。少し進めば警視庁が見えてくるはずだ。まあ地図が正しければだが。
いきなりこんな所に連れてこられたのだ、普通の人間ならある程度混乱し助けを求めようとするだろう。
そして常識的に犯罪から助けてくれる存在『警察』に助けを求める。
実際にあるのは警視庁なのでちょっと違うのだがそこに向かう者が出てきても可笑しくは無い。
そう考えながら歩いていた彼は急にその足を止める。歩いていた道の少し先で歩いてる人影が見える。
接触を図ろうと思い用心の為予めにデイパックから出していた支給品の一つである『AM』と刻印された44オートマグを構える。

「…そこの君!警察だ!聞こえたら返事をしてくれ!!
妙な事は思わないほうがいい、こちらは銃を持っている!!」

33 ◆eBcz2IT0Gk:2011/12/02(金) 05:19:05 ID:FMAjqQs2
彼は内心焦っていた。今接触する相手がもし怪盗Xのような素手で人間一人を屠れる危険人物であったら準備不足もいいところだ。
大口径とはいえ悪名高きAM社の44オートマグでは少し心許無かった。
返事は無かったが声を掛けたからには接触しないわけには行かずゆっくりと距離を縮めていく。
近づいてからわかった事だが女性のようだった。
確かに銃を持った男にいきなり声を掛けられたらこうなるかも知れないが彼女は手に持っている携帯の画面ばかり見つめておりこちらには目も向けない。
携帯を見ていた彼女の顔色は急に酷くなっていき肩が小さく震え始めていた。
いやな予感のしてきた、と彼は接触を図った事に半ば後悔し始めていた。

「…なぁアンタ聞いてる?こんな状況だし混乱するのは分かるし信用できないのも当たり前だが…そのなんだ…会話くらいしてくれなきゃ困る」

そう言いながら彼は頭をポリポリと掻く。
彼はコミュニケーション能力が無い分けではないがこのような相手との交渉ごとは不得意だった。
やはり返事は返ってこず彼はすっかり困り果てていた。

「…さい」
「ん?」

彼は声が聞こえた気がしたので彼女を見ていみる。
いつの間にかこちらを向いていた彼女は小声で何かを喋っていた。

34 ◆eBcz2IT0Gk:2011/12/02(金) 05:19:53 ID:FMAjqQs2
そう言いながら額の汗を拭い銃を構えなおす。
柄にも無く彼は彼女が出す不気味な雰囲気に完全に呑まれていた。

「…」
「何とか言ったらどうなんだ?」
「…ごめんなさい」
「なぜ謝るんだ」

やっと聞こえたその声はかすかに震えていた。
だがなぜか彼は彼女の雰囲気にある懐かしさを覚えた。いや懐かしさと言うより既視感に近い。
かつて自分はこの感覚を何度も味わったような気がする。

「…私はやらなきゃいけないの。FBの命令だから」
「いったい何をやるんだ?」
「…貴方を殺さなきゃ」
「そうかい!」

交渉決裂だなと続けて言いながら彼は銃を構えなおし目の前の女を撃つ。
はずだった。

「…?」

引き金を引こうとしても一向に音が鳴らない。
なぜか銃を持っていた右腕が上がらない。
というか物凄く痛い。当たり前だ。肘から先が無くなっていたのだから。
女が何かしたのかと思い彼女を見ると女は空を指出した。
不思議な光景だった。今さっきまであった腕が『何か』に咥えられ空中に浮いている。
そしてその『何か』というのは…

35 ◆eBcz2IT0Gk:2011/12/02(金) 05:21:20 ID:FMAjqQs2
「鮫?」

彼と彼女の間を鮫がぷかぷかと浮いている。
そしてさっきまで彼の右腕だった物を美味しそうに食べていた。
と言っても鮫の表情など分からないが。

「…鮫じゃない」

彼の先ほどの発言に少し彼女は怒っているようだった。

「…アビソドン」
「…名前?」
「…そう、かわいい?」
「…」

アビソドンとか言う鮫?を愛しげに撫でる彼女の事をまるでペットを自慢する飼い主だと彼は思った。
撫でる腕から逃げるように鮫が彼女の周りをくるくる回っている。
実際には嫌がる様子はなくこれも一種の飼い主とペットのスキンシップのようなものなのだろうと彼は思った。
彼の意識が次第に薄れていく。
当然だ。無残にも食いちぎられた右腕からは随分血が流れてしまった。
多分彼は助からないだろう。

「…最後に質問というか突っ込ませてもらうけど」
「…なに?」
「鮫って飛ぶもんじゃないだろ」
「…」
「…」

それが笹塚衛士最後の言葉だった。
そして同時に思い出すのだった。
彼女の感覚。それは今まで対峙して来た犯罪者によく似た物だと。
その中でも特にあの『シックス』を妄信している選ばれし血族の連中とよく似た雰囲気だった。

(ヤコちゃん、気を付けて…)

そう思いながら彼は目を閉じた。

○○○

36 ◆eBcz2IT0Gk:2011/12/02(金) 05:22:10 ID:FMAjqQs2
○○○

一人の女性が佇んでいる。
彼女はつい今しがた殺した男の支給品を品定めしていた。
三分ほど迷った挙句結局全て持っていくことに決め自分のデイパックに詰める。
それが終ると近くで満足そうにぷかぷかと漂っているミラーモンスターに近づき頭を撫でる。

「…いい子」

アビスドンは甘えるように顔を近づける。そして口からポロっと男の持っていた銃を彼女の手の上に出した。
一分ほど撫で回した後アビソドンは彼女から離れる。
そして鮫を模した二匹の人型ミラーモンスターへと姿を変える。
するとなぜか彼女の表情が険しくなる。二匹は突然態度を変えた主に不安を覚え近づこうとする。
だがその途端彼女が二匹に銃を放つ。さらに戸惑う二匹に向かって彼女はまるでペットを叱り付ける様に言った。

「…それはかわいくない!」

叱り付けられた二匹は嫌々元のアビソドンへと合体する。
それを見ると彼女の顔は元通り優しげに微笑みかける。
そしてアビソドンに近づき頭を撫でながらまるで母親が子供に言い聞かすような優しい声で語りかける。

「…あれは駄目、分かった?」

アビソドンは彼女の目を見ながらまるで肯いている様に頭を動かす。
それを見て彼女はまたいい子だねと言いアビソドンの頭にチュッと軽く口付けをする。
アビソドンはうれしそうにクルクルと彼女の近くを回る。
その姿を見て優しく微笑みながら彼女はポケットから自分の支給品である携帯電話を取り出してメールを打つ。

『FBへ』
『言われた通りに一人殺しましたよ』
『私はこの後は何をすればいい?』

○○○

37 ◆eBcz2IT0Gk:2011/12/02(金) 05:23:33 ID:FMAjqQs2
○○○

IS学園の屋上に一人の男性が日光浴を楽しんでいた。俗に言うひなたぼっこである。
格好こそ今風の若者であるがその只者ならざる雰囲気は彼が常識では計り知れない何かだと物語っていた。
彼の名はカザリ。黄の陣営のリーダーにして五人のグリードの一人でもある。
彼は他の参加者と違い今の状況を楽しんでいた。
真木博士も面白いゲームを思いついたものだ、とカザリは思う。
限られた敷地内での殺し合い。陣営通しの潰し合い。なるほどとても楽しそうだ。
何人かのグリードと組んで特定の陣営を集中的に潰すのもいい。
オーズと組んで他の陣営を敵に回すのもいいだろう。
コアメダルを奪い合うだけではなくこのようなゲームにするなど自分たちグリードでは考え付かない事だ。
やはり博士はボクたちとは少し違うね、と独り言を呟いていると何処からか音が鳴った。
思わず身構えるカザリだったが鳴ったのは自分の支給品の携帯電話だった。
彼はデイパックから取り出し使い慣れぬ感じで携帯を開く。
送られてきたのは一通の写真付きメールだった。

「へぇ〜、中々期待してなかったけど使えるね桐生萌郁」

彼女から送られてきた写メールを見ながらカザリは彼女への評価を改める。
今より少し前支給品のチェックをしていた時にその一つ携帯電話に有り得ない量のメールを送りつけられた時は流石のカザリも困惑したものだ。
送り主が誰だかはすぐ分かった。グリード用の名簿には参加者の軽い説明が載っているからだ。

【桐生萌郁】
年齢:20歳。生年月日:1990年6月6日(ふたご座)。血液型:B型。身長:167cm。体重:54kg。3サイズ:B88/W59/H88。
未来ガジェット研究所のラボメンNo.005だがラウンダーでもある。また極度の携帯依存症でメール魔。
あだ名は『閃光の指圧師(シャイニング・フィンガー)』

ラボメンやらラウンダーやらが何かは分からなかったが彼女がこの携帯の正式な持ち主である天王寺と言う男性に忠実であると言う事はわかった。
カザリはこの『FB』に成りすまして精々利用してやろうと思った。
参加者減らしの捨て駒。しかも自分の陣営ではなくメズールの陣営である。もし死んでもこちらの陣営には損害は一切無い。
結果は予想外だった。彼女は見つけた相手を無傷で倒したのだ。

「手駒は従順で有能な方がいいよね
 ま、これからもよろしく頼むよ桐生萌郁」

そうだ指示を考えなきゃ、と言いながら猫科の王は無邪気に笑う。
ゲームはまだ始まったばかりだ。焦る必要など無い。
出来るだけゲームを面白くするよう知恵をめぐらす事だけを考えればいい。
そう考えながらなぜかふとこうも思った。
あだ名に『閃光の指圧師(シャイニング・フィンガー)』はないだろうと…

38 ◆eBcz2IT0Gk:2011/12/02(金) 05:24:08 ID:FMAjqQs2
【一日目-日中】
【G-7/IS学園屋上】
【カザリ@仮面ライダーOOO】
【所属】黄
【状態】健康
【首輪】100枚:0枚
【装備】なし
【道具】基本支給品、天王寺裕吾の携帯電話@Steins;Gate、ランダム支給品1〜2(確認済)
【思考・状況】
基本:黄陣営の勝利、その過程で出来るだけゲームを面白くする
1.桐生萌郁への指示を考える
2.『閃光の指圧師(シャイニング・フィンガー)』(笑)
【備考】
※参戦時期は本編終盤からとなります。

【G-6/舗装された路上】
【桐生萌郁@Steins;Gate】
【所属】青
【状態】健康
【首輪】99枚(増量中):0枚
【装備】44オートマグ(残り6発)@現実
【道具】基本支給品、桐生萌郁の携帯電話@Steins;Gate、アビスのカードデッキ@仮面ライダーディケイド、ランダム支給品0〜1(確認済)、笹塚衛士の支給品1〜2(確認済)
【思考・状況】
基本:FBの命令に従う
1.FBの指示を待つ
2.アビソドンはかわいい
3.アビスハンマとアビスラッシャーはかわいくない
4.上記の姿に成らないよう厳しく躾ける
【備考】
※α世界から参戦
※FBの命令を実行したためメダルが増えています。
※どの程度増えたかは次の人に任せます。

【笹塚衛士@魔人探偵脳噛ネウロ 死亡】

39 ◆eBcz2IT0Gk:2011/12/02(金) 05:26:32 ID:FMAjqQs2
投下終了
これで大丈夫かな?
自分で書いておきながらアレだけどミラモンに銃撃ったら普通に殺されそうだなww

40 ◆lx1Zn8He52:2011/12/10(土) 23:11:16 ID:86So95Ns
投下スレの371-372を以下の物に修正します
「マスターは…マスターは……私のマスターは……」
誰かを傷付ける様な事を望んだりしない、絞りだす様に続ける

「なら…なんでお前にそんな命令するんだよ!?」

「マスターは…優しくて……。マスターは……」


(なにが優しいだ!この子の気持ちに漬け込んで人殺しを強要するなんてよ!)

額から流れる血を軽く拭い 鏑木・T・虎徹は続ける

「お前は人殺しがしたい訳じゃ無ぇんだろ!?だったらそんな奴の命令聞く必要ねぇ!」
「でも私は…マスターの…マスターの御命令を…」

この場にいないマスターと言う奴への怒りが虎撤の中で込み上げる

「そんな悪党の命令何て聞く必要なんかないだろ!?そいつは自分の私利私欲の為にお前を利用してるだ!!」

目の前の少女を指差し突き付ける様に声を張りだす

「マスターは…そんな人じゃない……マスターは…」
男の言葉を聞きイカロスの瞳から次々と涙が零れ落ちる

「最後に一つだけ答えろ!お前はそいつが言った通りに人を殺す気か?だったら俺はお前を許さねぇ!お前もマスターって奴もだ!!」

殺したいの? この人を? みんなを? 殺すの? マスターの為に? 私は 私は―――――

41 ◆lx1Zn8He52:2011/12/10(土) 23:12:03 ID:86So95Ns
【一日目-正午】
【D-2/商店街】
【鏑木・T・虎徹@TIGER&BUNNY】
【所属】黄
【状態】ダメージ(中)疲労(大)
【首輪】85枚:0枚
【装備】ワイルドタイガー専用ヒーロースーツ(胸部陥没、頭部亀裂、各部破損)
【道具】不明支給品1〜3
【思考・状況】
基本:真木清人とその仲間を捕まえ、このゲームを終わらせる
1.目の前の少女から答えを聞く。(殺し合いに乗るなら容赦しない)
2.他のヒーローを探す
3.ジェイクとマスター?を警戒
【備考】
※本編終了後より参加
【イカロス@そらのおとしもの】
【所属】赤
【状態】健康、空の女王、混乱
【首輪】65枚:0枚
【装備】無し
【道具】無し
【思考・状況】
基本:?
1.私は―――
【備考】
※22話終了後から参加

※商店街の一部が壊滅しました

以上です

42欲望まみれの名無しさん:2011/12/10(土) 23:37:11 ID:2xeZ3e/2
修正お疲れ様でした。
これなら問題ないと思います。

43欲望まみれの名無しさん:2011/12/11(日) 00:07:22 ID:z8YVfSyU
修正乙です。
問題はありませんが、虎徹の参戦時期はある程度ぼかした方がいいと思います
本編終了後でなくても特に支障は出ませんし、話を繋ぐ書き手も書きやすくなるかと

44欲望まみれの名無しさん:2011/12/11(日) 00:25:51 ID:nD1v5Fo6
修正乙です
少し短いかなとは思いましたがこれで問題ないです
それと参戦時期は同じく本編終了後でなくても特に支障無いと思います

45 ◆lx1Zn8He52:2011/12/13(火) 10:20:51 ID:51Ro7MIs
返答遅れましたすいません。参加時期ですがこの時期は駄目などのルールはないので変えるつもりはありません…

46欲望まみれの名無しさん:2011/12/13(火) 14:23:50 ID:mBerDp5I
えっと、 ◆lx1Zn8He52氏。ちょっと修正版の状態表を確認してみたのですが
時間帯が『正午』となっています。このロワの時間帯に『正午』はありませんので、修正していただけないでしょうか?

47 ◆lx1Zn8He52:2011/12/13(火) 16:12:05 ID:51Ro7MIs
何度も何度もすいません… 一応参加時期をぼかして修正しました確認お願いします

【一日目-午後】
【D-2/商店街】
【鏑木・T・虎徹@TIGER&BUNNY】
【所属】黄
【状態】ダメージ(中)疲労(大)
【首輪】80枚:0枚
【装備】ワイルドタイガー専用ヒーロースーツ(胸部陥没、頭部亀裂、各部破損)
【道具】不明支給品1〜3
【思考・状況】
基本:真木清人とその仲間を捕まえ、このゲームを終わらせる
1.目の前の少女から答えを聞く。(殺し合いに乗るなら容赦しない)
2.他のヒーローと合流
3.ジェイクとマスター?を警戒
【備考】
※能力減退が始まって以降からの参加です。具体的参加時期は後の書き手さんにまかせます
【イカロス@そらのおとしもの】
【所属】赤
【状態】健康、空の女王、混乱
【首輪】65枚:0枚
【装備】無し
【道具】無し
【思考・状況】
基本:?
1.私は―――
【備考】
※22話終了後から参加

※商店街の一部が壊滅しました

48 ◆l.qOMFdGV.:2011/12/15(木) 02:25:29 ID:mlxsTpKI
橋田イタルの悪運
修正版投下します

49 ◆l.qOMFdGV.:2011/12/15(木) 02:26:17 ID:mlxsTpKI

 暑い、重い、辛い。暑い、重い、辛い。
 息苦しそうな喘ぎに混じって、男の口からそんな言葉が漏れる。なにか呪文のようにそう呟こうと物理的な苦痛が紛れるはずもなく、男、橋田至の豊満な巨体に食い込むデイバッグの肩紐は、
相も変わらずぎりぎりと容赦なく至の体を締め上げていた。
 その手に携えられ杖代わりにつかれる乖離剣エアの姿には、ふうふうと息を荒げて歩く目下の主人と同じく尊厳も糞もあったものではない。剣であるというなら、
雑に扱えば歯零れのひとつも起こしそうなものだが、見てくれからしてそんなものとは無縁なエアは、最早至にとって少しいびつな形の杖に他ならなかった。

「杖代わりにしたってちょいと重すぎと思われ」
 ぼやけどもぼやけども、かの剣は軽くならず。
「そもそもここどこなんだお、マジで」
 ぼやけどもぼやけども、かの者の所在地は知れず。

 ここに連れてこられて大した時間がたったわけでもなかったが、早くも帰巣本能が目を覚ます。
 何もかもを打ち捨てあの懐かしのラボで横になりたい。
 そんなちっぽけだが切実な欲望を胸に、橋田至は、正確な方向も知れない秋葉原に向かって、とりあえず歩き続けるしかないのだった。


 そんな彼について少し真面目な話をするならば、彼が考えるともなしに考えることについて、つまり、椎名まゆりについての話だ。
 助けにいくべきだったのか、それとも動かずいて正解だったのか。

「……そんなこと言ってもまゆ氏が死んじゃうなんて誰も思わんだろ、常考」
 我ながら薄情なことだとは思うが、至はまゆりの死に大きな情動を得ていなかった。
 もちろん、一応の悲しみはある。彼女を不器用ながら大切にする友人、岡部が心を痛めているだろうと思えば、我が事のごとく胸が潰れるようだ。それでもなお、だった。

「助けにいったところで死人が増えるだけだし」
 そんな陳腐な言い訳でまゆりの死が納得できてしまう。そんな自分は、本当にショックを受けているのだろうか。
 泣きわめき、憤りを拳に託して荒れ狂うのが道理ではないのか? それが本当の、友達を思いやる「優しさ」というやつなのではないか? 少なくとも、至が愛好する漫画やアニメの登場人物たちはそうしていた。
 死に別れという経験のないファクターを経て、しかし至はそれに首を傾げる。ショックを受けなければならない、とはおかしいが、友人の死にこの感じ様というのも酷く違和感が残るものだった。

 現実感の欠如というのが、この違和感をもっとも正しく言い表す言葉だろう。彼の思うところの「友人を亡くした男」と、現実の自身の感動のズレは、ひとえにこれに起因する。
 そして、ひどく致命的な感のあるその違和感を、至は結局理解せず仕舞いだった。

50 ◆l.qOMFdGV.:2011/12/15(木) 02:26:54 ID:mlxsTpKI


 理解しないまま、橋田至は出会ったのだ。

 過ぎたそれを数えることはとうに止めていた、代わり映えしない交差点のうち一つ、それに至が差し掛かったときだった。
 至の全身をなでるように吹く一筋の風に乗って、声が彼の耳朶を打った。草花のざわめきや家鳴りを聞き間違えたのでもない、確かな人間のそれだ。孤独に歩き回っていた至にとって最初の、他の参加者との出会いである。

 すぐにでも飛び出していきたかった。どんな危険に遭遇するか想像もつかないこの場所で、一人ぼっちで過ごすということがどれほどの心労であるかは、至は歩き始めてすぐ理解していたからだ。
 ただし問題が一つ。聞こえた声が、それを荒げた怒号であると思えることだ。

「殺し合いのゲームの、参加者……」
 知らずに至は身震いした。こんな場所で声を張り上げる理由など、まずひとつしかないだろう。被虐であれ嗜虐であれ、暴力にかかわること。そうでしか、きっとこんな怒りの声は出さないはずだ。
 その予想が違ったとしても、こんな場所――殺し合いの場で誰かに聞かれるような大声を上げる人間が、安全であるとは思い難い。
人恋しくなった他者を言葉巧みに、というより大声巧みにおびき出し、のこのこやってきた者を容赦なく害する。わかりやすく簡単で、それでいて強力な方法だ。

 寂しさと危機感の一瞬の鍔迫り合いは、すぐに軍配が上がった。
 この声の元に向かうのは危険に巻き込まれる可能性がある。まず間違いなく、ここは無視して通り抜けるのが得策だ。

「…………」
 だというのに、足は動かなかった。
 何を迷っているのだろう? どう考えても正解の結論だ。命あっての物種だし、そもそも自分は荒事に向いていない。もしこれが争いによる叫びだったとして、行ったところで何も変わるはずがないのだ。
争いを止めることも、ましてや死者を減らすために、悪意に立ち向かうことも……。

「……オカリンはわかんねーけど、まゆ氏はここで迷わず助けに向かうような人だと思われ」
 優しい子だったから、と独りごち、声の方向へとゆっくり体を向ける。
 非合理的甚だしい判断だ、遅くはない戻れ、と脳髄にアラートが響き渡った。それを追い払おうともせず、胸中で反響する警告と憂慮の声をそのままに、至は歩き出す。
 あるいはそれは、死んだまゆりという少女に、「その死を悲しむ優しさ」を抱けなかったことに対する、罪滅ぼしと呼ばれる行動であるのかも知れなかった。


 もし彼が初めに歩き出す時、ほんの少しでも方向を変えていたなら、なんて。
 仕方のない空想だ。橋田至はほんの少し運が悪かっただけで、彼には何の落ち度もなかった。偶然この方向を選んで、偶然この叫びを聞いた。
 そして、もし運が悪かったことを「落ち度」と呼ぶなら。
 これはもはや、ひどくご都合主義な喜劇の一幕であるとして、なんら恥じることのない、底抜けに非情な茶番劇だ。
 役者は踊る。決められた台本の通りに、カタルシスを与えるためだけの死の舞踊を、踊らされているとも思わずただ踊る。
 橋田至は、ただ「運が悪かった」だけだ――。

51 ◆l.qOMFdGV.:2011/12/15(木) 02:27:52 ID:mlxsTpKI

 声の主はすぐ見つかった。至のいる市街地の一つ先のブロックの角で、二人の男が言い争いを繰り広げていたのだ。
 言い争い、というには語弊があった。声を荒げているのは黒いライダースーツの男だけで、対する野球帽の中年は虚脱しきった表情だ。

 何の変哲もない、そんな喧嘩の光景だった。気の短い若者がいい加減な中年を怒鳴り散らす、少し町を歩けばどこだって見ることのできる、ごく普通の諍い。
 ――もしライダースーツの男の手にショットガンが握られておらず、あまつさえそれが中年の男に突き付けられていなければ、ではあるが。

「もう一度聞く! これは最後通牒だ」
 ライダースーツの男がひときわ声を張り上げる。至が隠れる街角から見れば、彼の方を向く野球帽の男、その背に銃を向けるライダースーツの男、といった具合だ。
「お前は殺し合いに乗っているのか。三十秒以内に返答しろ。でなければ撃つ」
「…………」

 問う男は何かに追い立てられるような、焦燥に満ち満ちた表情だった。対する野球帽の中年の無表情はまるで氷だ。
 言い争いの経緯は知れないが、即座に刃傷沙汰に発展するようではない。野球帽の男が「乗っていない」と一言言えば、気が立っているライダースーツも銃を収めるだろう。そのはずだ。
「言っちまえ、早く」
 生唾を呑みこんで、至は胸中で呟いた。不快な汗が腋を伝っていく。強張った表情のおかげで、満足に瞬きもできない。当事者でもないのに、彼はひどく追いつめられていた。
早鐘を打つ胸を掴む手に、独りでに力が籠っていく。もう一度我慢できず、口癖も忘れて呟いた。
「答えてくれ、おっさん……!」

「二十五、二十四、二十三」
 カウントダウンは続く。野球帽の男の表情は、深い角度のつばに邪魔されて拝めない。
「十七、十六、十五」
 これではいけない。野球帽の男はまだ答えてはいない。彼はまゆりとは違う。死を拒む権利がある。もしかしたら、恐怖のあまり固まっているだけかも知れないのに……。
 でも、どうする? 至にできることはない。銃口の前に立って代わりに打ち抜かれるなど、お笑い種にもなりはしない。
 両手に力を込める。そして得る、胸腔を突き破らんと暴れる心臓を抑える手と、その逆の手が何かを握りしめる感触。
「十、九、八」
 どうする? どうする? この殺人を止めるためできることはあるか? 暴力を押しとどめるために、至自身が振るい得る力――。

 はっと己の手を見た。その手には杖が握られている。その杖の名は、乖離剣エアといった。


 ライダースーツの男が、ぎょっとした表情と共にカウントダウンを止めた。銃を突き付けた男の向こうから、玉突きさながらに弾かれたような速度で巨躯が飛び出してきたのだから、無理もない。
そんなライダースーツと同じく唖然としているであろう野球帽の横を駆け抜けて、至は二人の間に立ちはだかった。その震える手には、とある英雄王が振るう究極の宝具が分不相応に、だが確かな決意をもって握られていた。

 橋田至は決心していたのだった。ラボで寝るのは後回しだ、と。こんな風に人が殺されかけたり、死んだりするのは絶対に間違っている、と。
 今ある力で、この争いを止める。まゆりにできなかったことを、今、ここで。

「やややめるぉっ!」
 やめろ、と叫んだつもりであったのだが、ままならないものだ。舌を噛んだことを恥じて、場違い極まりないが、至は頬を赤らめた。
エアを一層強く握り、ともすれば恐怖のあまり歪みそうな顔を引き締めて、ライダースーツを睨みつける。メガネ越しの瞳に宿る光は決して弱くない。

「そんな脅かしちゃダメだ。こ、怖いだろ、怖がってるお」
 伝えたいことはたくさんある。眼鏡の思惑に乗っちゃいけないとか、ただ単純に人殺しはいけないとか。
 言葉足らずでも支離滅裂でも、こんな馬鹿げた殺し合いを止めるために言わなければならない。
「危ないから、銃を下して。殺しちゃうのはダメだ」

52 ◆l.qOMFdGV.:2011/12/15(木) 02:29:48 ID:mlxsTpKI
「待て、違う」
 再起動に成功したコンピューターのように、突然ライダースーツは話し出す。その表情は、話の流れを知らずとも「してやられた」と読み取れるような、そんなものだった。
 至の背後に立つ野球帽の表情は見えない。そしてライダースーツのそれは、至と野球帽の間を行き来し、その度に焦りの色を深めていく。

「落ち着くんだ。俺は人を殺すつもりなんてない。俺は鴻上ファウンデーションのライドベンダー――」
「殺さないつもりだってぇ? 出会い頭に人様に銃を向けて撃ちやがったやがったのはどこのどいつだよ、火火火火火っ!」

 黙りこくって推移を見ていた野球帽が突然叫んだ。驚きに至の身体がこわばるが、それより劇的な反応を示したのはライダースーツである。その表情がくしゃりと憎悪に歪んだのだ。
 野球帽の言葉の真偽も気にかかったが、それを思索するより先にライダースーツのむき出しの感情を見て、至は直感した。
 ――この男は間違いなく撃つ。

「――出鱈目をッ!!」
「ダメだっ!」
 三様の叫びが交錯する。改めてショットガンの照準を合わせるライダースーツに、明らかに剣の間合いの外であるのにエアを振りかざす至。

 乖離剣エアの能力を知ればこそ、その外見から予測できる間合いの外で構えることの意味がわかるが、あくまで知ればこそ、だ。
だから、ただの剣――銘を知らねば剣だともわからない、槍のような棒――であれば虚仮脅しにもならないその行為は、義務感と恐怖に駆り立てられた至の、何かしらのアクションを期待してのものではない、反射的な行動だった。
 そして、それに大きく反応を見せたのは誰であろう、向かい立つライダースーツの男だ。あろうことか至や野球帽から目を反らし、何か知らないはずのエアを警戒するように全身を強ばらせたのだ。
まるで、離れた距離にいても機能する剣を他にも知るかのように。

 争いに慣れていない至にとって、ライダースーツの隙は隙とも呼べないような逡巡だった。だからこそその一瞬に、至自身も「この剣を振り下ろして断罪してもいいのか?」という疑問と向かい合う羽目になり、
「ライダースーツも恐怖に駆られてのことだったのでは?」だとか、「そもそもこいつは野球帽に何と問いかけていた? 野球帽が彼を陥れようとしている可能性は?」だといった疑問が連続して染み出してくるのを留めることもできずに、即席の戦場に一瞬の静寂が下りる。

 そのまま膠着状態に陥らなかったのは、野球帽が放った円柱状の物体のせいだった。至の脇より転がりでたそれに吸われるように至とライダースーツの視線が集まる。
 からからから、と転がりライダースーツの足元にたどり着くそれ。

「これは……っ」「へ?」「火火っ」

 そして、待ちかねたようにスタングレネードが、全てを呑み下す爆音と閃光が炸裂した。


 轟音に揺すられた脳幹が落ち着きを取り戻すまで、幾分かの時間が必要だった。音とフラッシュを身構えなく受けたライダースーツと至が即座に動けるはずもなく、
至がライダースーツのもとより逃げ出すことに成功したのは、目を瞑り耳を覆ってスタングレネードの被害を最小限に抑えた野球帽が至の手を引き、その離脱を導いたからだ。

「葛西善二郎ってんだ。よろしくな、坊主」
 たどり着いた、諍いの現場より二十ブロックほど離れたブロックに位置する一軒家。そのリビングルームで野球帽の中年、葛西善二郎は、どこか皮肉げな笑顔を、スタングレネードの影響が抜けきらず朦朧とする至に向けた。

53 ◆l.qOMFdGV.:2011/12/15(木) 02:30:22 ID:mlxsTpKI

「橋田至、だお。……です」
「そうかい」
「それより聞かせてほしいんですけど……、さっきのあれ。なんだったん?」

 前述の「幾分かの時間」が過ぎ、それからもう少しの時が過ぎたころだ。食卓を囲む椅子に腰かけて、リビングの入り口付近で紫煙を燻らす善二郎に事の顛末の説明を求める至は、しかしその言葉を遮られた。

「なあお前、なんであそこに飛び出してきた?」
「え? ……いや特に深い理由はないっていうか……、それより、なんであそこで喧嘩してたのかを先にキボン――」
「いいから、先に答えろよ。俺の質問に」

 言外に、ヒヤリとした圧力が顔を見せる。それは、暴力と縁のない日常を送る至を委縮させるのに、過剰なほどの悪意だった。とたんに顔を伏せて、「だって……」と口ごもる至。
 手を引いて助けて、笑みを向けてくれた、この異常な空間で初めて出会った人。悪い出会いではなかったと高揚していた気分が、針で突かれた風船のようにしぼんでいく。
 それでも、小さくとも頼りなくとも、発した声は震えなかった。

「助けたかったから、だお……です」
「……助けたかったぁ?」

 含みを持った返事に、しかし至は臆しない。さきの決心は、場に急かされた結果とはいえ本物だ。悪意の予感に萎えた心を叱咤し、至は言葉を吐き出す。

「まゆ氏が死んじゃって、でもなんかよくわかんなくて。だから、まゆ氏の代わりに、まゆ氏だったらやりそうな希ガスってことやろうと思って」
「……そうか。もういい」
「あんなの絶対おかしいお。殺されるとか殺し合いとか間違ってるって」
「……もういいっつってるだろ」

 心の底から毀れてくる想いを言葉に変えるだけで、ふわふわと現実感のなかった想いが形を作っていく。善二郎とライダースーツの間に立ちはだかると決心したときのように、至の身体を言葉にできない熱い感情が駆け巡る。
「許しちゃダメなんだお、こんなのは。だから僕は、できることをやって、こんなおかしいことを止めさせて――」
 言葉によって形作られた決意は、まるで燃料のように言葉を燃え上がらせた。蚊の鳴くような声量はだんだん大きくなっていき、たどたどしかった声も力強い芯を得て、そして――。



「――ごちゃごちゃうるせえよ、ブタ」


 視界の端にあった善二郎の腕がブレた。高揚した至が知覚できたのはそれだけだった。
「うがっ」
 強い衝撃が走って、視界が一瞬のブラックアウトを引き起こす。逆らえず、椅子ごと倒れて後ろに転がった。
「……!? !?」
 声が出ない。暗転した視界は即座に戻ってきた。ただし、その範囲は著しく狭まっている。
 代わりに得たのは熱だ。焼けつくような、痛むような、まるで焼き鏝を突き刺されたかのような熱――。
 視界が割れている。目前に何かがある? ――眼に、刺さっている?

「あ、が、が、ああああ、ああああアアアガアアアアアあああああアアアああ」

 仰向けに倒れた至は、即座に手で熱を発する顔を覆った。眼球に突き刺さった眼鏡の破片に指が触れて、灼熱が弾けるように膨れ上がる。
もはや話を続ける余裕など影も形も残っていない。「何故こんなことを」なんて疑問を抱く余地すら残っていなかった。
 首輪から漏れる鈍色のメダルがフローリングを叩き、騒がしく散らばる。
 まゆりも岡部も己の決意も、何もかもをどうでもよくする痛みだけが、彼の全てを占めていた。

「まったく下らなくうるせえガキだ。さっきの青二才の方がまだマシだぜ」

 のたうちまわる至に、その声は届かない。呆れたように首を振った善二郎が「あばよ」と呟く。
 いかなる原理か、その手のひらに灯った炎が、至の身体に射掛けられた。一段とトーンを上げた自分の悲鳴をバックミュージックに、半分になった視界をさらに炎が覆う。
 ――めいっぱい空気を吸い込んだ肺が中から焼けていく。
 揺らめく炎の向こうで善二郎が家具に火を放ち、腰を屈めて至のデイバッグや、壁に立てかけてあったエアを掴む姿の影がかろうじて見て取れた。
 ――眼球は煮沸し、今にも弾けそうだ。
 そして至に一瞥もくれず部屋を後にするその男を、炎に包まれた視界で捉えたところで、至の意識はぷつりと途切れる。

 まゆりを失った実感を得ることなく、己の死と痛みと灼熱だけを「現実感」とし、他の全てを理解せずおいて、橋田至はあっけなく逝った。

54 ◆l.qOMFdGV.:2011/12/15(木) 02:33:58 ID:mlxsTpKI


 実際危険だったのだ、あの時は。完全に先手を取られて銃を突きつけられ、それなりに鍛えていたあのライダースーツであれば、善二郎がどのような抵抗をしようと、撃たれることは間違いなかっただろう。
強化細胞を移植しなくともハンドガン程度では足止めにもならない肉体を備える善二郎だが、やはりその肉体もショットガンとの直接対決は避けたいところであった。
 そういう意味で善二郎を助けたかったと言ったあの少年は、確かに善二郎を救っていたのだ。

「生き残るためには余計な怪我をしないことが火っす(必須)ってな。助かったぜ、至クン」

 あの場から離脱するにあたって、ライダースーツが挑発に乗ってくれる若造であったことも喜ばしいことであった。「ライダースーツが善二郎を撃った」とは、これは真っ赤な嘘だったのだから。
 至にライダースーツへの不審を抱かせるためと、単純な挑発。あの言葉が想定以上の成果を叩き出したことは、まったく幸運だった。

「まるで幸運の女神サマに『生きろ』って言われてる気分だねぇ……火火火」

 お気に入りの煙草が取り上げられなかった僥倖を噛みしめながら、善二郎は燃え上がる民家を後にする。
 まったく急な話で仕込みができず、火のエキスパートにあるまじき、ただ火をかけるだけという幼児でもできるような放火しか出来なかったことが悔やまれた。だがやむを得まい。小火小火(ぼやぼや)していると先のライダースーツに追いつかれてしまう。
真正面から相対すれば手玉に取る自信はあったが、それでもできる限り危険は排除しておきたかった。

「なにしろそのためにあんな糞餓鬼を連れてきたんだからよ」

 物資増強のため、お人好しへの肉の盾とするため。
 後者に関しては、愚にもつかない与太話始めたことで投げやりな気分になり、残念ながらふいにしてしまった。だが前者に関しては立派に果たしたのだから、とりあえずはよしとしよう。

 火災現場からしばらく歩き、離れた民家の前で至のデイバッグをぶちまける。
「うお、乞食か俺は」
 至に支給されていた食糧を己のデイバッグに移し、脳裏を過った情けない空想は頭を振って追い払い、善二郎は次に目ぼしいものを拾い上げた。
 ゴリラとわかる意匠の施された黒いメダルだ。

「コアメダル、ね」

 善二郎が操る炎は種も仕掛けもある小細工故、一切のメダルを必要としない。とはいえ、メダルは持っていて損はないだろう。「もらっておくか」と善二郎は己のデイバッグをそれを放り込んだ。まずは戦果その一。
 再び追い剥ぎのように死体からものを漁る己の惨めさがちらついたが、もはや言うまい。

55 ◆l.qOMFdGV.:2011/12/15(木) 03:18:22 ID:mlxsTpKI

 次はこれだ。
 拾い上げた、一見して何の用途に使われるのか想像するのが不可能なほど奇妙な形のそれに、善二郎は首を傾げる。そしてつかの間の思案ののち、ぽんと手を打った。ポケットに手を突っ込み、道すがら読んでいたとある紙切れを取り出す。
 橋田少年が倒れた時に彼のポケットからこぼれ落ちた紙切れだが、拾っておいて幸運だった。偶然にも、それこそがこの謎の物体X、トライアルメモリの説明書きだったのである。何の説明書きであったのかてんで理解できなかった先ほどに、くしゃりと丸めてポケットに入れておいたのだ。
 持ち出せるものは持ち出してしまえ、という乞飢精神丸出しの行動であったが、うまく当てはまってしまえばこっちのものだ。

 再び説明書きに目を通すが早いか、善二郎はそれを破り捨てた。
「ガイアメモリなんて胡散臭いもんはどうにもな」
 彼は自身の犯罪に美学を持ち合わせている。「人間の限界を超えない」というその美学に照らし合わせて――元より使う術もないのだが――、トライアルメモリは彼にとって不必要なものでしかなかったのだ。
「そら、よっと!」
 住宅地の屋根より高く、空に吸い込まれてしまえと念じてそれを投げ捨てる。残念ながら物理法則に従いどこかに落ちていったのを見届けて、善二郎はため息を吐いた。「戦果なし、と」そう呟いて、すぐさまメモリを意識の外に追いやる。そして、最後の至の支給品をみやった。
 乖離剣エアだ。

「あのライダースーツはこれを怖がってた」
 柄を握って角度を変えつつ眼を眇めて観察する。剣にすら見えないおかしな形なのに、それを構えただけで警戒した。ということは、これもなんらかの面白くない機能があるということである。

 前述した紙切れ、つまり説明書きは二枚あった。そのうち一つには「トライアルメモリ」の名と説明が、もう一つにはとある武器の名と説明が記されてた――「乖離剣エア」。

 握り潰してポケットに突っ込まれていたその説明書きには果たして、彼の想像を上回るトンデモ兵器であると記されていた。これがエアであるというのなら、説明書き通りの力を振るうのだろう。
 突拍子がなさすぎるが、説明書きとライダースーツのあの警戒……信じるに足る符合は確かに存在していた。
 口角を持ちあげて笑みを浮かべる。見る者がいれば、それはひどく邪悪な笑みと呼ばれたはずだ。
「戦果その二、だ」

 エアを肩に担ぎ、笑みを引っ込め葛西善二郎は歩きだす。つま先がじゃりじゃりとアスファルトを蹴る音が、無人の街中にいやに大きく響いた。

「真木とやらは俺たちになんの興味も抱いてないような目だった」
 ぼんやり反芻した記憶の中には、あのドームがある。中央に立っていた真木の視線は、目を合わせようと本質的にこちらという人間を見ないその目は、善二郎にある人物を連想させた。「新しい血族」、悪意の権化、善二郎をして恐れを抱かされる規格外の化け物。
「シックス……。いるのかね、この場に」

 その程度にたどり着かないまでにせよ、真木の「悪意」の方向性はシックスのそれに近いものがある。もちろんシックスには遠く及ばないだろうが、それは瑣末なことだ。問題は、この「悪意」のどこかにシックスがいるかどうか、それだけ。
 名簿にシックスの名前はなかったが、真木と共謀している可能性だって充分考えられる。なにしろ六十人ちょっととはいえ、殺し合いのゲームだ。過ぎる程の「悪意」がここには満ち満ちている。シックスがどこかで微笑んでいても、善二郎はなんの違和感も得ないだろう……。

 ――だが、ともあれ。
 シックスがいようといまいと、葛西善二郎がやることは変わらない。その己の「悪意」でもって、唯一にして無二の欲望を充たすだけだ。
 何やら愉快な気分が鎌首をもたげ、ぼんやりとしていた表情が形を結ぶ。悪意に充ちたそれをもし言葉にするなら、笑顔と呼ぶべきか。

「連中の狙いがなんだかは知らんが……さぁて。逃げて殺して殺して逃げて――おじさん、いっちょ長生きしちゃうぞぉ」





「あ。そういや同じ陣営の奴は殺しちゃダメか。あの小僧はどの陣営だったかな……参った、確認するの忘れちまってたよ。……まあいいか」

56 ◆l.qOMFdGV.:2011/12/15(木) 03:20:35 ID:mlxsTpKI

【橋田至@Steins;Gate 死亡】

【一日目-日中】
【B-5/衛宮邸以南】

【葛西善二郎@魔人探偵脳噛ネウロ】
【所属】赤
【状態】健康
【首輪】所持メダル160(増加中):貯蓄メダル0
【コア】ゴリラ×1
【装備】乖離剣エア、炎の燃料(残量95%)
【道具】基本支給品一式+一人分の食料、愛用の煙草「じOKER」×十カートン+マッチ五箱、@魔人探偵脳噛ネウロ、スタングレネード×九個@現実、《剥離剤(リムーバー)》@インフィニット・ストラトス
【思考・状況】
基本:人間として生き延びる。そのために自陣営の勝利も視野に入れて逃げもするし殺しもする。
  1:とりあえずは南に行こうかね。ライダースーツから逃げにゃならん。
  2:殺せる連中は殺せるうちに殺しておくか。
  3:鴻上ファウンデーション、ライドベンダー、ね。
【備考】
※参戦時期は不明です。
※B-5の衛宮邸以南にある民家が全焼しました。立ち上る煙は地図の周囲八マスから観察できます。
※ライダースーツの男(後藤慎太郎)の名前を知りません。
※シックスの関与もあると考えています。
※B-5の衛宮邸以南のどこかの民家の屋根の上にトライアルメモリ@仮面ライダーWが落ちています。
※「生き延びること」が欲望であるため、生存に繋がる行動(強力な武器を手に入れる、敵対者を減らす等)をとる度にメダルが増加していきます。

【全体備考】
※B-5の衛宮邸以南にある民家の焼けおちた下に橋田至の焼死体があります。
※瓦礫の下にはセルメダル70枚が散らばっています。
※B-5の衛宮邸以南にあるとある民家の前に橋田至の基本支給品(食料以外)とデイバッグが転がっています。

【支給品解説】
・《剥離剤(リムーバー)》
 四本足の装置。ISを展開している操縦者の胸部に足を巻きつけるようにして設置すると、激痛を伴う電流に似たエネルギーを流し込み、ISを強制解除しコアの状態まで戻す。ただし一度使用したコアには《剥離剤》に対する耐性が出来、二回目に効果はない。

57 ◆l.qOMFdGV.:2011/12/15(木) 03:24:19 ID:mlxsTpKI

 警察は、そして世界は無能だ。
 小事にかまけて助けを求める小さな声に手を貸さない、肥大化した組織特有の即時即応性の欠如、そして真に断罪すべきを国際的にどうだ政治的にどうだなどと、お茶を濁して放置する。
見過ごされる癒着、蔓延する怠慢、見渡せば権力の亡者しかいない会議室――平和は書類だけで得られるものじゃないのに!

 こんな自分のことしか考えないような連中に、世界の平和が守れようはずがあるものか。
 だからこそ後藤慎太郎はその輝かしい――彼自身から見れば薄汚れて鈍く照り返すだけの、もはや意味と価値をなくしたキャリアを捨てて、鴻上ファウンデーションのライドベンダー隊で世界平和のための戦いを始めた。
いや、始めるはずだった。

 メダジャリバーを彷彿とさせる兵器を構えた少年はなんなのか?
 何故セルメダルがここまで大量にある?
 ライドベンダーは鴻上ファウンデーションのもの。会長は一体何をするつもりだというのだろう?

「くそっ」
 考えれば考えるほど理解不能なことが増えていく。込み上げる苛立ちを込めて言葉を吐き捨て、その手に握るショットガンをコッキングさせた。
 命を奪うための準備を整えた死神は寡黙だが雄弁だ。その力の重さが「平和を守るには君如何」と強く語りかける。

 初遭遇した参加者、野球帽の男は危険人物だった。
 警戒しただ銃を突きつけていただけなのに、撃ってなどいなかったのに、あまつさえそれを「慎太郎が撃った」などと。
 確かに慎太郎自身にも落ち着きが足りなかったのかも知れない。野球帽との接触も、銃口ではなく笑顔を向ければ、何か違ったかもしれない。
 そうしてさえいれば、あの少年の誤解を招くことも……。

 否、と慎太郎は相変わらずの焦燥が浮く顔を歪めた。
 太った少年を焚き付けるようなあの言動を見れば、野球帽が危険人物であることは明らかだ。であるならば、どう接触しようとしたところで、奴が危険人物であることに変わりはない。
 慎太郎にあらぬ疑いを植え付けたあの叫びは大方、彼を危険人物だと印象付けることで、味方を……手駒を増やす魂胆だったのだろう。いかにもこすっからい小悪党のとりそうな手段である。

 その小悪党を、この場に於ける平和を乱す「悪」をみすみす見逃したのは、完全に慎太郎の落ち度だ。
 不手際を再認し、ショットガンの囁きがひと際大きくなる。――「平和を守るのは君しかいない」と。

「グリードもあの眼鏡も、殺し合いに乗ってこの場で平和を脅かすバカ共も」
 握りしめる黒金の死神の声に応えるため生きてきた慎太郎として、この結論は当然のそれだ。だからこれは、実に彼らしい帰着点であると言えたのだった。
「残らずこの俺が裁いてやる……!」
 その瞳に輝く正義の光は、危うさを秘めて小さく揺らめいている……。

【B-5/衛宮邸以北】

【後藤慎太郎@仮面ライダーOOO】
【所属】青
【状態】健康、強い苛立ち
【首輪】所持メダル100:貯蓄メダル0
【装備】ショットガン(予備含めた残弾:100発)@仮面ライダーOOO、ライドベンダー隊制服ライダースーツ@仮面ライダーOOO
【道具】基本支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)
【思考・状況】
基本:ライドベンダー隊としての責務を果たさないと……。
  1:誤解が広がる前に太った少年(橋田至)を確保、野球帽の男(葛西善二郎)は殺害も辞さない。
  2:とりあえず、煙が立ち上ってくる方に行こう。
【備考】
※参戦時期は原作最初期からです。
※メダジャリバーを知っています。
※ライドベンダー隊の制服であるライダースーツを着用しています。

58 ◆l.qOMFdGV.:2011/12/15(木) 03:25:42 ID:mlxsTpKI
多分もう大丈夫…のはず!
ご確認よろしくお願いいたします。
お手数をとらせてしまい申し訳ないです。

タイトルは変わらず「橋田イタルの悪運」で!

59欲望まみれの名無しさん:2011/12/16(金) 18:31:31 ID:Gnhz9ywc
修正乙です。これなら問題ないと思います

60 ◆lx1Zn8He52:2011/12/25(日) 21:37:06 ID:0Wu1p9mg
本スレの447に間違った物を投下してしまいました。正しくは此方です。申し訳ありません

「うっさいなぁ…」
その悲鳴が耳障りだったXは、数枚のメダルを消費し脹れ上がった拳を込め打ち落とす

「がァアあッ!?」
それも、一度や二度じゃない。ウヴァの叫びが止む迄叩き込む

大半のコアとセルを失い ウヴァは得意の電撃で迎撃する事も 鎌を突き立てる事も出来ず 胸の前で腕を組み 残りのコアが奪われる前に少女の助けを待つことしか出来なかった

「は…、はやぐ…たす……け……、ラ…ウ……」

OOO
繰り広げられる暴力を前にラウラは動く事は出来なかった

ウヴァが叫び 怪人に戻り地面を転がる そして一方的にメダルを掻き出されている
それを執行してるのは織斑一夏
ISを使うでもなく 腕だけでメダルを奪っている

目の前で何が起こっているのか?ラウラ・ボーデヴィッヒには、理解できなかった

我に還り 二人に近付こうとした時には、既に怪人最後のコアは掴み出され その姿を保てず崩れ堕ちた

OOO

「あ…、マズッた…ネウロの場所聞こうと思ったのに…」
最後に取り出したクワガタコアと荷物をバックに収め Xは服に着いた土を払う

「まあいいや」

そしてバックに入らないゴルフクラブだけを放り捨て 自分を見つめ立ち竦む少女に怪物は歩み寄る

「細かい事はあんたに聞くよ」

織斑一夏の姿と笑顔で

61仮投下 ◆o3VwW7hmYU:2012/01/18(水) 17:17:07 ID:r4gCCEZw
そのまま投下するのが不安なので仮投下します。
一応自分なりに頑張ってみましたが、色々と酷いかもしれません。
矛盾点、変なところなどがありましたらご指摘ください

62仮投下 ◆o3VwW7hmYU:2012/01/18(水) 17:18:01 ID:r4gCCEZw
「期待はずれだ、ヤコよ。貴様の日付はいつになったら変わるのだ?」

このとんでもない殺し合いに連れてこられる少し前に、いつも通りにネウロが吐いた暴言。
その言葉は普段の暴言よりも断然ソフトだったのに、何故か私の心を深く抉っていた。
そして、それに重なるようにして私はこの殺し合いに巻き込まれた。
正直、最初は実感が無かった。いきなり「殺し合いをしてもらう」なんて言われても、私みたいな女子高生には無縁の話過ぎて、理解が追いつかなかった。
でも現実はそんなに甘くなくて。結果的に、私は二人の首輪が爆発するのを見ることであの眼鏡の人が言っていることが本当だと思い知らされることになった。

「ああ、もう!ネウロに関わってからロクなことがないよ!」

気がつくと、私はこの状況ではあまりにも場違いなこと叫んでいた。

63仮投下 ◆o3VwW7hmYU:2012/01/18(水) 17:18:35 ID:r4gCCEZw
     OOO  OOO  OOO  OOO

「……ん?今、誰かの声がしなかったか?」

アンクから貰ったアイスキャンディーを頬張りながら、杏子は近くから聞こえてきた少女の叫び声に反応する。

「ああ、したな。それがどうした」

アンクは突然の叫び声に対してそれほど興味を示したわけでもなく、アイスを頬張っている。
杏子は強がってはいるが、間違いなく重傷だろう。それは彼女の傷を見ればわかる。
そして、アンクには自分のチームの人間を無駄死にさせるつもりなど一切ない。だからこの声の少女が敵である可能性も考慮し、杏子の傷がある程度治るまでは接触しないほうがいいと考える。
尤も、まともに治療が出来るような施設を見つけなければこの深い傷を治療することなど困難なことかもしれないが。

「接触しなくて良いのか?あんた、人を探してるんだろ?」
「今の俺がアイツと戦っても無駄死するだけだ。それに俺が探してる奴は女じゃねえ」

今の自分に必要なものは、他の参加者達に対抗出来るだけの戦力。
この場でもう一人の自分に会っても、今のアンクには逃げることしか出来ない。
この場で映司とあっても、何の抵抗も出来ることなく、ただ殺されるだけだ。
杏子という存在は大きいが、また先程敵対したような化物にあったら、今度は間違いなく殺されるだろう。

「仮面ライダー……か」

剣崎は仮面ライダーブレイドとしての誇りを……揺るぎない正義を貫いて、自分や杏子を助けてくれた。
剣崎の話によると、映司も「仮面ライダー」の括りに入るようだ。
そして映司も剣崎も、自分の身を挺してまで誰かを守ろうとしている。それがアンクにはわからなかった。
何故、自分が傷ついてまで誰かを助けようとするのか。
何故、自分が死ぬとわかっていても誰かを助けようとするのか。
何故、見知らぬ誰かのために自分の命を簡単に投げ出すことが出来るのか。
様々なことを考えたが、グリードであるアンクにはわからない。

「あんたが気に病むことはないよ。アイツは自分のやりたいことをやっただけさ」

何かに悩んでいるような、苛立っているような……そんなアンクの表情を見て、アイスを食べ終わった杏子が声をかける。
彼女にも、剣崎の気持ちが多少はわかった。アンクの気持ちも全くわからないというわけではなかった。
剣崎は、昔の自分に少し似ていて。それはつまり、さやかにも似ているということで。
重傷を負った自分を勝手な正義感で命を投げ出してまでたすけてくれた剣崎には苛立ちもあったけど、昔の自分が同じ立場だったら同じことをしていただろう。
それに、さやかが思い出させてくれた。自分のなりたかった魔法少女を。
だから、今の杏子は自分の命を散らしてまで誰かを助けようとした、剣崎一真という男の勇姿を貶すことはなく。
仮面ライダーブレイドの勇姿は佐倉杏子の記憶にハッキリと残ることになった。
これから先、佐倉杏子が彼の勇姿を忘れることは無いだろう。

何故なら、仮面ライダーブレイド――剣崎一真も、自分と同じで『最後に愛と勇気が勝つストーリー』を信じて戦ったのだから。
剣崎一真の仮面ライダーとしての『魂』は、確かに佐倉杏子へと受け継がれていた。

64仮投下 ◆o3VwW7hmYU:2012/01/18(水) 17:19:20 ID:r4gCCEZw
     OOO  OOO  OOO  OOO

「……それにしても、まさかあかねちゃんがいるなんてね」

桂木弥子は、先程までの態度が信じられないほどの上機嫌でケータイストラップのような髪の毛に話しかける。
髪の毛の名は、あかねちゃん――色々と訳ありの、生きた髪の毛だ。
あかねちゃんは、弥子の言葉に反応するように小さな身体を左右に動かす。
弥子の行動はあかねちゃんのことを知らない者からみたらただの変人にしか見えないが、そんなことが気にならない程に弥子は喜んでいたのだ。
見知らぬ場所、突然の殺人、ネウロからの厳しい一言……それらの悲惨な要素が重なったからこそ、これ程迄にこの状況を喜ぶことが出来たのかもしれない。

「お前、何やってるんだ?」

歩きながら髪の毛に話しかけるという奇妙な行動をしている少女を見て、アンクは呆れ声を出す。
散々自分が警戒していたあの叫び声の女はこんなバカなのか――そう思うと、本当に呆れてくる。
案の定、あかねちゃんと喜びを分かち合っていることに必死だった弥子はアンクや杏子の姿に気付いてはおらず、突然声をかけられ言葉に詰まる。
弥子自身、一般人からみたらただの変人にしか見えない行動とわかっていたため、少々気まずい。
そして暫くの沈黙が訪れたが、あまりにも馬鹿馬鹿しい雰囲気に耐え切れなくなったアンクは乱暴な手つきで新たなアイスを取り出し、口に運んだ。

(いいなぁ……アイスキャンディー。私も一本でいいから食べたいなぁ……)

欲望丸出しの表情で、涎を垂らしながらアイスキャンディーを見つめる弥子。
アンクはそんな弥子を見ながら、少々自慢気な表情でアイスを頬張る。
そして杏子が微妙な表情で見つめる中、アンクはアイスを一本食べ終わると共に弥子にアイスを差し向ける。

「俺の協力をするなら、このアイスをくれてやる」

「も、もちろん協力します!」

考える間もなく即答。これには提案者であるアンクも呆れ気味だったが、新たな戦力を獲得出来のだから、まあ良いとすることにした。
まるでここが戦場だとは思えないやり取りだが、アンクはアイスキャンディーを「交渉材料」として使える物だと価値を見出しつつもあった。

65仮投下 ◆o3VwW7hmYU:2012/01/18(水) 17:20:08 ID:r4gCCEZw
【D−2/民家】
【一日目-正午】
【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
【所属】赤陣営
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、全身に殴られた跡
【首輪】所持メダル「70」:貯蓄メダル「0」
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
【道具】基本支給品一式、不明支給品1〜3
【思考・状況】
基本:???
 1:主催者をぶっ倒して『愛と勇気が勝つストーリー』を達成するのも悪くない
 2:さやかが心配
【備考】
※剣崎を見て過去の自分を思い出しています

【アンク@仮面ライダーOOO】
【所属】赤陣営
【状態】健康、疲労(小)、迷い
【首輪】所持メダル「98」:貯蓄メダル「0」
【コア】タカメダル「1」
【装備】シュラウドマグナム+ボムメモリ@仮面ライダーW
【道具】基本支給品一式、大量のアイスキャンディー、不明支給品0〜1
【思考・状況】
基本:アンク(ロスト)を排除する。その後は……?
 1:アイスは交渉材料に最適だな
 2:アンク(ロスト)を排除するためにも今は戦力を集めることに集中する
 3:映司は――――。
【備考】
※カザリ消滅後〜映司との決闘からの参戦

【桂木弥子@魔人探偵脳噛ネウロ】
【所属】青陣営
【状態】健康、精神的疲労(中)、迷い
【首輪】所持メダル「100」(増加中):貯蓄メダル「0」
【装備】桂木弥子の携帯電話(あかねちゃん付き)@魔人探偵脳噛ネウロ
【道具】基本支給品一式、不明支給品1〜3
【思考・状況】
基本:殺し合いには乗らない
 1:今はとりあえずアイスキャンディーを食べたい
 2:ネウロに会いたい
【備考】
※第47話 神【かみ】終了直後からの参戦です

66欲望まみれの名無しさん:2012/01/18(水) 20:50:36 ID:z3B5PEzs
自分は特に問題ないと思いますが、ただ時間帯が正午になってます。
正午と言う時間帯はルール上存在しないので、そこは修正が必要かと。

67欲望まみれの名無しさん:2012/01/18(水) 21:52:46 ID:r4gCCEZw
>>66
ありがとうございます。
では時間を修正してから投下することに致します

68 ◆LuuKRM2PEg:2012/01/28(土) 22:53:50 ID:4NVluhKA
えっと、収録してから気付いたのですが、先日投下した拙作の「休憩!!」で時間を夕方にしましたが
他パートとの時間を見て、午後の方がいいかと思ったので夕方から午後に修正しても大丈夫でしょうか?
一度投下してからこんな事を言うのは、申し訳ありませんが。

69 ◆qp1M9UH9gw:2012/02/01(水) 23:53:20 ID:EaJQu4jM
通るかどうか不安がある内容なので、一度仮投下させてもらいます

70Re:GAME START ◆qp1M9UH9gw:2012/02/01(水) 23:55:36 ID:EaJQu4jM


OOO

桐生萌郁には、気にかかる事があった。
「FB」の命令に従って殺害した、だらしない格好をした男の事である。
生前の彼の格好や佇まいに、別段変わった部分は見られない。
萌郁に支給された「アビスのカードデッキ」の様な、
"一般常識を容易く凌駕してしまうような力"を与える支給品も、所持しているとは思えなかった。

「気に掛かる事」というのは、彼の死を確認し、メダルと支給品を回収しようとした時の事である。
支給品には、疑問符を浮かべるようなものは一つとして無かった。
デイパックの中に入っていたのは、地図や食料といった道具一式と銃の弾丸、赤色に光る、鬼の装飾が施されたメダルが一枚だけ。
恐らく、殺し合いの進行役が言っていた「コアメダル」と名付けられた代物だろう。
ルールブックには「セルメダルの代用が可能」と書かれていた事から、持っていても無駄にはならない事は確かだった。
問題なのは、その後――男の所持品を奪い、最後にメダルを頂戴しようとした時である。
男の首輪に目を向け、そこで萌郁は彼のどうにも奇妙な点に気付いた。

――この男には、セルメダルが"一枚も"無い。

本来ならば、参加者全員に100枚支給される筈のセルメダル。
しかしどういう訳か、それがこの男には無いのである。
出会う前に誰かに奪われたとしたら、何処かに傷が無ければおかしい。
あえて全てのセルメダルを首輪から放出したとしても、それならデイパックにメダルが入っている筈。
考えれば考える程、どうにも不可解な話だった。
果たして、この謎は「FB」に報告するべきなのだろうか。
思考を巡らせたようとするその寸前で、携帯の着信音が彼女の耳に入ってきた。
「FB」からメールが届いてきた合図である。
これは、送った写真で男の死を確認した「FB」が、萌郁に与える次の指令を決定した事を示していた。

送られてきたメールには、指令が二つ書かれていた。
「秋葉原駅に移動しろ」というものと、「支給品は置いて行け」というものである。
秋葉原に移動しろというのはまだ分かる、だが、支給品は持っていくなとはどういう魂胆なのだろうか。
疑問には思ったが、だからと言ってそれに背くつもりはない。
どんな理由があるにせよ、「FB」の指令に従うのが桐生萌郁という人間だ。
来た道――と言っても数歩程度なのだが――を戻り、デイパックを元の場所に放置した。
つい先程まで横たわっていた死体の姿は、どこにも無い。
それもその筈、今頃彼はアビソドンの胃の中で養分になっているからだ。

「FB」のその指令に、どんな意図があるかなど、萌郁に図れる訳がない。
いや、例え予測できても、彼女は余計な詮索など行わずに使命を果たすだろう。
それが「FB」に対して、自分が唯一できる忠誠の証明なのだから。

【一日目-日中】
【G-6/路上】
※デイパック(基本支給品、44オートマグと予備弾丸、イマジンメダル)が、路上に放置されています。

【桐生萌郁@Steins;Gate】
【所属】青
【状態】健康
【首輪】110枚:0枚
【装備】アビスのカードデッキ@仮面ライダーディケイド
【道具】基本支給品、桐生萌郁の携帯電話@Steins;Gate、ランダム支給品0〜1(確認済)
【思考・状況】
基本:FBの命令に従う。
 1.FBの指示に従い、秋葉原駅に移動する。
 2.アビソドンはかわいい。
 3.アビスハンマとアビスラッシャーはかわいくない。分離しないように厳しく躾ける。
 4.メダルの件はやはり報告するべきなのだろうか。
【備考】
※α世界から参戦
※FBの命令を実行するとメダルが増えていきます。

71Re:GAME START ◆qp1M9UH9gw:2012/02/01(水) 23:56:35 ID:EaJQu4jM
OOO   OOO 

黄陣営のグリード、すなわち現在のリーダー――カザリは、
IS学園の屋上の床に腰を落ち着けて、日の光を全身に浴びながら携帯をいじっていた。

桐生萌郁が「FB」に依存し切っており、命令なら人殺しすら躊躇しない危険人物であるいう事は、
彼女から送られてきたメールに同封された写真で、十分に理解できた。
現在カザリの携帯には、片腕が欠如している人間の死体が映し出されている。
夥しい血液の中で倒れ伏しているこの男の名は「笹塚衛士」。
彼女のすぐ近くに居たが故に、不幸にもカザリの実験の対象にされてしまった男だ。

「それにしても刑事さんも可哀想だよねぇ……まさかこんなに簡単に死ぬなんて思ってなかっただろうし」

そう言って、カザリがほくそ笑んだ。
今の彼の言葉は、「独り言」と言うよりは「誰かに聞かせる為に」言っている様に聞き取れる。
しかもそれは、笹塚の死があたかも聞かせている側に責任があるかのような口振りをしている。

「もうちょっと抵抗すると思ったんだけどなぁ……ま、どうでもいいんだけどね」

明らかに死体を軽蔑している口調で言い切ると、カザリは手に持った携帯に、再び目を向けた。
メールには写真の男を殺害した報告と、次の指令を教えて欲しいという要求が書かれている。
随分と律儀に命令を要求する様は、カザリに忠犬を連想させた。

「さてと、次はどう動かそうかな……」

IS学園周辺にはもう誰も居ないから、彼女を移動させるのは確定事項であるが、
ここで問題となってくるのが"何処を目的地にさせるか"だ。
此処から一番近い場所にいる参加者は、警察署をスタート地点とした「暁美ほむら」と「岡部倫太郎」。
さらにそこから少し移動した場所にある風都には、「美樹さやか」と「大道克己」、そして「アポロガイスト」。
萌郁がよく知る秋葉原には「鹿目まどか」、「巴マミ」、「桜井智樹」の三人。
黄陣営の参加者は「巴マミ」だけだが、彼女はとてもじゃないが殺し合いに乗るような性格ではない。
それ以外の陣営の参加者も、殺し合いに積極的になりそうなのは「アポロガイスト」くらいだ。
性格から考えて、この男と同盟を結成するのも難しいだろう。
つまり――カザリと萌郁は敵陣の真っ只中に居るも同然なのだ。
オーズ=火野映司がすぐ近くにいるガメルよりかはまだマシなものの、
それでも他のグリードよりも不利である事に変わりはないだろう。

「ちょっと難しい配置だよね……ねえ、何か良いアイデアない?」

表情に余裕を浮かべたまま彼は振り向き、その方向に声をかけた。
本来ならば、誰も居ない筈のその場所には――男が立っている。
カザリは今まで、この男に対して言葉を投げかけていたのだ。
饒舌なグリードとは対象的に、彼は沈黙を保ったまま、前方を見据えている。
その目は、今まさに襲い掛からんとする獣のような殺気を孕んでいた。

「……たまには何か言ってもいいんじゃない?敵対してる訳でもないんだし」

カザリがそう言っても、男は猛獣の気配を潜ませようとはしない。
「扱い辛いなぁ」と呟くと、立ち上がって改めて男と対面した。
格好が妙にだらしないせいで、鋭い眼光はまるで服装に似合っていない。
しかし、それは逆に言ってしまえば、身に纏う気配だけで弱者を震え上がらせてしまう事を示している。



――その男の名は「笹塚衛士」。闇に意識を埋めた筈の男が、カザリの目前で立ち尽くしていた。

72Re:GAME START ◆qp1M9UH9gw:2012/02/01(水) 23:58:05 ID:EaJQu4jM
OOO   OOO   OOO

話を進める前に、説明しなければならない事がある。
「シナプスのカード」についての話だ。
その名の通りシナプスが製造した道具で、種類は新型と旧式がある。
新型の方は、使用者が望んだあらゆる物資を調達するという機能を有している。
物資と言っても、望むものはどんな形であろうと――例えそれが実現不可能な野望であっても――叶えてしまうので、
言ってしまえばそれは、聖杯のような願望器の一種と言っても良かった。
一方の旧式は、新型と同様、常軌を逸した能力を秘めてはいるものの、一枚につき一回しか能力を発揮出来ず、
また機能も予め決められてしまっているので、新型よりも遥かに劣っていると言える。

さて、この殺し合いで笹塚衛士に支給されたのは、オートマグとコアメダル、そして"旧式の"シナプスのカードだ。
このシナプスのカードの効力は――「複製人間の製造」。
これだけ聞けば、何故笹塚がカザリと対面しているかが理解できるだろう。

――萌郁に殺害された笹塚衛士は"複製体"なのだ。死んだ笹塚の首輪にメダルが無いのは、その為である。

"複製体"を殺させたのは、笹塚本人ではなくカザリの意思によるものだ。
萌郁を利用する際、彼女が「FB」の命令にどこまで従うかを試す必要があったのである。
"本体"は所詮、彼の目的に協力したに過ぎないのだ。

能力も分からずにカードを使用した笹塚の前に現れた、もう一人の自分。
まだ死んだように眠っていたのが幸いして、面倒な事にはならなかったものの、
使い道の分からない"複製体"を前にして、彼は頭を抱えざるおえなかった。
丁度その時に彼に声をかけたのが、カザリだったのである。
彼の「"ある条件"と引き換えに"複製体"を使わせてほしい」という要求に、笹塚は首を縦に振った。
"複製体"の使い方も思いつかないし、何よりも"ある条件"が彼にとって魅力的なものだったからだ。
笹塚のやる事とすれば、デイパックを"複製体"に預けるだけで良い。
後で返してくれるかが少し不安だったが、目的の達成の為なら仕方ないだろう。
(結局、その支給品はちゃんと笹塚の元に返ってくる事になったのだが)

そこから先は、既に語られた通りである。
行動を始めた"複製体"が、カザリの操る萌郁と遭遇し、その結果片腕を捥がれて失血死した。
萌郁の覚悟が見たいというカザリの目論見は、見事達成されたのである。

……ちなみに、これはカザリと笹塚すら知らない事だが、"複製体"の性格は"本体"とはは若干違っていた。
別世界のある少年が女性と男性に分離した際に、女性の初期の性格が男性とは全く違ったケースがあったが、
恐らくはそれと似たようなものだと思われる。
何かしらの切っ掛けがあれば、"本体"の性格に忠実になる可能性は高かっただろう。

73Re:GAME START ◆qp1M9UH9gw:2012/02/02(木) 00:04:34 ID:SjtwkWbo
OOO   OOO   OOO   OOO   OOO   OOO

数分後、屋上に居るのはカザリ一人となっていた。
笹塚の姿は、もう何処にも見当たらない。

「なにもあんなに無愛想じゃなくても……」

不機嫌そうに、カザリがぼやいた。
友愛という言葉とは無縁な笹塚の態度に、少しばかり不満を感じているのだろう。
だからと言って、彼があの獣じみた男に悪印象を抱いているかと言われると、そうでもない。
カザリは笹塚に対し、好印象どころかゲームを盛り上げてくれるという期待感すら持っていた。

ああいう危険人物が、より一層ゲームの面白さを増幅させてくれるのだ。
詳細名簿には、笹塚は自分一人で復讐を果たそうと暴走気味に行動していると書かれていた。
この記述を見た途端、カザリはまず第一に彼に会おうと決心していたのである。
恐らく笹塚は、生存の為なら手段を選ばないだろう――そこが良いのだ。
敵味方関係なく、あらゆる物を利用し、無自覚の内にかき回してくれる。
カザリの"複製体を使う代わりに自身の陣営に加える"という要求に乗ったのが、その証拠だ。
上機嫌になったついでとして、笹塚に"プレゼント"を与えてやったが、きっと彼なら上手く使いこなしてくれるだろう。

「……楽しいよ、ドクター」

空を見上げ、そう呟いた。
真木がこのゲームを開いた目的は分からない。
単独犯なのか複数犯なのかすらも、カザリを含めグリードには教えられていなかった。
つまりは、自分達も所詮はゲームの駒でしかないという意味だ。
ならば――踊ってやろうではないか。
彼らと同じ駒として踊り狂い、愉しみ、そして最後には完全体として勝利を掴み取てやろう。
自分は消えない、負ける訳がないという絶対的な自信が、彼にはある。
だからこそ、カザリはこの殺し合いを"愉快なゲーム"として楽しめるのだ。

猫科の王が、一人笑い続ける。
彼に待ちうけるのは、更なる快楽か、それとも――。

74Re:GAME START ◆qp1M9UH9gw:2012/02/02(木) 00:09:56 ID:SjtwkWbo

OOO   OOO   OOO   OOO   OOO


この殺し合いは、"赤、黄、緑、青、白"の五陣営と、
それらのどれにも属さない「無所属」によるチーム戦だ。
一見すると、それらには深い意味など込められていないが、笹塚はそうとは思わなかった。
無所属を含めば、首輪の明かりの色は"6"種類存在する。
冷酷極まりない殺人ゲーム、"6つ"の陣営、そして何故か名簿に名の載っている「怪盗X」。
これらの要素から、笹塚はある人物がこの殺し合いに関わっているのだはないかという仮説を立てていた。
家族を奪った怨敵であり、人類種に巣食う新種の"病気"――「シックス」。
あの男が、ニタニタと笑いながらゲームを見物しているという可能性。
たったそれだけで、笹塚は激情に身を委ねる事を肯定した。
そう決心させてしまう程、彼の中で猛り狂う獣は暴れまわっていたのである。

――真に自分が正しいと思う時があったら、その時だけは冷静な仮面を脱ぎ捨てろ。

脳内で想起されるのは、生前の父の言葉。
家族の死が無ければ、ここまで記憶に焼きつく事は無かっただろう。
"真に自分が正しいと思う時"があるとするのなら、きっと今がそれだ。
"冷静沈着な警察官"としての笹塚衛士は、桐生萌郁に殺された。
今此処にいるのは、これまで押し込んできた激情を開放した、"復讐鬼"としての笹塚衛士。
生き残り、シックスの元に辿り着く為なら、脱出だろうが優勝だろうが、何だってしようではないか。

戦う手段なら、ある。
カザリに報酬として貰った「ギャレンバックル」なる代物。
桐生萌郁の「カードデッキ」に似た物で、使用する事で「仮面ライダーギャレン」に変身できるらしい。
偽物を掴ませてもカザリにメリットは無いだろうから、本物である事に間違いはないだろう。

改めて、自分自身を見返してみて、堕ちたものだと自嘲する。
まさか人を守る立場の警察官が、人の命を奪いかねない行動を取るとは。
二人が復讐鬼としての笹塚衛士を見たのなら、ネウロは失望し、弥子は悲しむだろう。
少なくとも、今の自分は弥子とネウロには見せられなかった――特に弥子には、絶対に。

「……さて、どうしますかね」

何はともあれ、まずは情報が必要だ。
殺し合いからの脱出は可能かという判断をつける為には、情報が必須なのだ。
路地に置かれているであろう支給品を回収したら、どこに向かうかは既に決めている――警察署だ。
深い理由はない。ただ単に、一番慣れ親しんだ場所だからである。

「それじゃ、行くか」

首輪の外された魔獣の戦いが、遂に始まろうとしている。
彼を突き動かすのは、仇に対する凄まじいまでの怨念。
今は亡き父の教えに従い、亡き母と妹を思いながら、魔獣が動き出す。


――目的の為なら、狂うことを躊躇うな。



【一日目-日中】
【G-7/IS学園前】
【笹塚衛士@魔人探偵脳噛ネウロ】
【所属】黄
【状態】健康
【首輪】90枚(増加中):0枚
【道具】基本支給品、ギャレンバックル@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本:シックスへの復讐の完遂の為、どんな手段を使ってでも生還する。
 1.まずは情報を集める。支給品を回収したら警察署へ移動。
 2.「1」の過程で、目的の達成の邪魔になりそうな者は排除しておく。
 3.首輪の解除が不可能と判断した場合は、自陣営の優勝を目指す。
 4.元の世界との関係者とはできれば会いたくない(特に弥子)。
 5.最終的にはシックスを自分の手で殺す。
【備考】
※シックスの手がかりをネウロから聞き、消息を絶った後からの参戦。
※桐生萌郁に殺害されたのは、「シナプスのカード(旧式)@そらのおとしもの」で製造されたダミーです。
※殺し合いの裏でシックスが動いていると判断しています。
※シックスへの復讐に繋がる行動を取った場合、メダルが増加します。

【G-7/IS学園屋上】
【カザリ@仮面ライダーOOO】
【所属】黄
【状態】健康
【首輪】120枚:0枚
【装備】なし
【道具】基本支給品、詳細名簿@オリジナル、天王寺裕吾の携帯電話@Steins;Gate、ランダム支給品0〜1
【思考・状況】
基本:黄陣営の勝利、その過程で出来るだけゲームを面白くする
 1.さて、どこに行こうかな?
 2.「FB」として萌郁に指令を与える。
 3.笹塚に期待感。きっと殺し合いを盛り上げてくれる。
 4.『閃光の指圧師(シャイニング・フィンガー)』(笑)
【備考】
※参戦時期は本編終盤。

75 ◆qp1M9UH9gw:2012/02/02(木) 00:14:04 ID:SjtwkWbo
投下終了です。この話を仮投下にしたのは、ほとんど蘇生に近い処置を笹塚に行っているからです。
ご意見をお待ちしております。

76欲望まみれの名無しさん:2012/02/02(木) 00:40:46 ID:5xU7DISU
これはひどい…幾ら笹塚死んだのが不服だからってこれは……

77欲望まみれの名無しさん:2012/02/02(木) 00:48:47 ID:ggeXrGGg
仮投下乙です。
感想は本投下の時にするとして、自分は別段問題はないと思います。
確かに蘇生に近い事を行っていると言うのはロワ的には非常に危険な橋ではありますが、
恐らくは氏もそれを理解した上で、一度きりしか使えない手段を取ったのだと思います。
今回の話には読んで納得するだけの説得力もあったし、次回以降で何度も出来るネタという訳でも無いし、
これは個人的な感想ですが、自分は今回の話を読んで面白いと感じたので、突っぱねる事もないかなぁと。
何もこれによって企画が停滞したり潰れたりするという訳でもあるまいし。

一つだけ気になった点を指摘させて頂くなら、イマジンメダルは「鬼」の装飾ではなく「桃」の装飾ですよ。

78欲望まみれの名無しさん:2012/02/02(木) 03:59:50 ID:Vmt9AIJw
クローン作るカードなんてあったっけ?
あとカードの設定がちょっと違うような気がする

79欲望まみれの名無しさん:2012/02/02(木) 07:09:11 ID:/W1/szac
仮投下で様子見るなら、期限よりも早めに出したほうがいいですよ
結局、こっちに投下した時間でも期限切れてるし…

80欲望まみれの名無しさん:2012/02/02(木) 08:17:58 ID:doNx4kFw
仮投下乙です
自分もそんなに問題とは思いませんね。基本的、シナプスのカードは原作でも万能でしたし。
(かといって本当の死者蘇生や首輪の解体なんかは流石にNGかもしれませんが)
今回のネタも原作の描写に基づいているので、大丈夫だと思います。

あと期限に関しても、個人的に仮投下をしてからならある程度余裕を持たせてもいいと思います
原則、仮投下してからの投下はある程度時間が必要でしょうし。

81欲望まみれの名無しさん:2012/02/02(木) 10:06:30 ID:JBBypTCU
期限については流石にフォロー出来んけど、作品自体は面白いと思う。
本当に蘇生した訳でもあるまいし、これを問題視する理由なんてのは従来のロワの常識では駄目だってだけだろうし。
元々従来にない新しいロワを作ろうって内容の企画だったんだし、それによる損失もない以上、通しでも問題ないと思う。
ただし期限についてだけは、何度も延長と破棄を重ねてるだけに今後はもうちょっとよく考えて欲しいな。

82欲望まみれの名無しさん:2012/02/02(木) 12:14:19 ID:Vmt9AIJw
いや、確かにシナプスカードはこのくらい出来るだろうけど、原作にない効果とか出しちゃっていいのか?
これがありなら、今後便利な展開のためのシナプスカードでなんでもありにならない?
今原作手元にないから、自分の勘違いだったら申し訳ないが…

あと、旧カードは一回だけしか使えないって設定はなかったと思う
量子変換器とか、ダイブゲームとか、なんども使ってるし

83欲望まみれの名無しさん:2012/02/02(木) 12:32:20 ID:ffEFULr.
投下乙
話のネタとしては面白いけど、アリかナシかは自分としては半々です。
指摘として、まず旧式のシナプスのカードは一枚につき一つの機器しか呼び出せないだけで、回数制限はありません。
(例:三話及び七話の手錠、量子変換器、四十二話の巨大化カード)
一回しか使えないと判断されたのは、カードの大半が一回しか使われてないからでしょう。
また、作中の例にあった四十三話の分裂では、本来の意識の宿ったトモ棒と性格の違うトモ子に分割された形ですし、
三十七話の完コピ人形「ともきち」も、本物の智樹と比べれば小さいですし、理性もコピーできてません。

84欲望まみれの名無しさん:2012/02/02(木) 12:47:12 ID:/W1/szac
性格が違うトモ子というか、単に男の子の部分が切り離されたから女の子っぽくなったってだけの話だしな…
クローンの性格が違う根拠としては全然別の話になると思った

85欲望まみれの名無しさん:2012/02/03(金) 15:23:50 ID:9exh16pk
反応ないな…

86欲望まみれの名無しさん:2012/02/03(金) 22:40:05 ID:TfMa9va.
作者の反応が無いことにはどうしようもないんだがな…

87欲望まみれの名無しさん:2012/02/03(金) 22:44:18 ID:qSbpcIgc
もうある程度の意見は出揃ってるから、後は作者の対応を待つしかないな

88 ◆qp1M9UH9gw:2012/02/03(金) 22:51:30 ID:PhfH1wt.
ご意見ありがとうございました
予約期限については完全にこちらの不手際が原因です。申し訳ありませんでした
では、挙げられた指摘点を参考に修正したものをこのスレに投下します

89 ◆qp1M9UH9gw:2012/02/07(火) 01:24:45 ID:SHzbxxGI
修正版を投下します

90 ◆qp1M9UH9gw:2012/02/07(火) 01:26:34 ID:SHzbxxGI
>>70>>71の間にこの文を追加します


OOO   OOO


骨を砕き、肉を咀嚼する音が、無音の空間の中で不気味に鳴り響く。
ミラーワールドでは、萌郁の使役するモンスター――アビソドンが、笹塚の死骸を貪っていた。
アビソドンの中で弄ばれる笹塚は、既に人の形を成していないだろう。
千切れ、潰れ、抉れ、やがては赤黒い肉塊と化しても、怪物は蹂躙を止めようとはしない。
しかし数秒後、アビソドンは突然顎の動きを止め――口から固形の物体を吐き出したではないか。
それは薄い長方形――言わばカードの形をしており、少なくとも人体を構成している物ではないのは明らかである。
アビソドンは不満そうに歯軋りを立てると、カードには目も繰れずに、何処かへと去って行った。
この怪物が見るからに不満そうだったのは、空腹が何故か満たされてはいないからである。
つい先程まで喰らっていた人間は何処に消え去ったのか。
それを知るのは、アビソドンでも、それを使役する萌郁でもない。
「FB」の名を偽る欲望の王の一人が、この謎の真相を握っていた。

91 ◆qp1M9UH9gw:2012/02/07(火) 01:30:11 ID:SHzbxxGI
>>72をこの文に差し替えます。

OOO   OOO   OOO   OOO


話を進める前に、説明しなければならない事がある。
「シナプスのカード」についての話だ。
その名の通りシナプスが製造した道具で、種類は新型と旧式がある。
新型の方は、使用者が望んだあらゆる物資を調達するという機能を有している。
物資と言っても、望むものはどんな形であろうと――例えそれが実現不可能な野望であっても――叶えてしまうので、
言ってしまえばそれは、聖杯のような願望器の一種と言っても良かった。
一方の旧式は、新型と同様、常軌を逸した能力を秘めてはいるものの、一枚につき一回しか能力を発揮出来ず、
また機能も予め決められてしまっているので、新型よりも遥かに劣っていると言える。

さて、この殺し合いで笹塚衛士に支給されたのは、オートマグとコアメダル、そして"旧式の"シナプスのカードだ。
このシナプスのカードの効力は――"複製人間の製造"。
正式に言えば、「シナプスのカード」そのものが対象と同じ姿に変化する、と言った所だろうか。
……これだけ聞けば、どうして死んだ筈の笹塚が、カザリと対面しているかが理解できるだろう。

結論から言ってしまえば、萌郁に殺害された笹塚は"複製体"なのだ。
死んだ笹塚の首輪にメダルが無いのは、その為である。

"複製体"を殺させたのは、笹塚本人ではなくカザリの意思によるものだ。
萌郁を利用する際、彼女が「FB」の命令にどこまで従うかを試す必要があったのである。
"本体"は所詮、彼の目的に協力したに過ぎない。

効力も把握しないまま、意図せずにカードを使ってしまった笹塚の前に現れた、自分と瓜二つの男。
まだ意識が無かったのが幸いして、面倒な事にはならなかったものの、
使い道の分からない"複製体"を前にして、彼は頭を抱えざるおえなかった。
丁度その時に彼に声をかけたのが、他ならぬカザリだったのである。
彼の「"ある条件"と引き換えに"複製体"を使わせてほしい」という要求に、笹塚は首を縦に振った。
"複製体"の使い方も思いつかないし、何よりも"ある条件"が彼にとって魅力的なものだったからだ。
笹塚のやる事とすれば、デイパックを"複製体"に預けるだけで良い。
後で返してくれるかが少し不安だったが、目的の達成の為なら仕方ないだろう。
(結局、その支給品はちゃんと笹塚の元に返ってくる事になったのだが)

そこから先は、既に語られた通りだ。
行動を始めた"複製体"は、カザリの操る萌郁と遭遇し、その結果片腕を捥がれて失血死する事となった。
カザリの"萌郁の「FB」に対する忠誠を確かめる"という目論見は、見事達成されたのである。

ちなみに、これは笹塚とカザリは知らない事だが、"複製人間の製造"の製造には既に前例がある。
その時の"複製体"は、肉体は縮小し、理性も存在しないも同然の状態だった。
では何故、今回の"複製体"には理性があったのだろうか。
結論から言ってしまえば、これはカードの効力の違いによるものである。
今回の場合、カードを用いて"複製体"を作っていた前回とは異なり、カードそのものが"複製体"となっっている。
つまり、この二つのケースは似ているようで全く違うのだ。
それならば、今回の"複製体"に理性があるのにも納得がいくだろう。
前例の場合は"理性のないコピー"を製造でき、今回は"理性のあるコピー"が製造できた――それだけの話に過ぎないのだ。
……尤も、それでも完全な理性の複製は難しかったようで、"複製体"の性格には若干違いが出てきてしまったのだが。

92 ◆qp1M9UH9gw:2012/02/07(火) 01:31:17 ID:SHzbxxGI
投下終了です

93欲望まみれの名無しさん:2012/02/07(火) 01:46:28 ID:Zhrwbz0Q
修正乙です…しかし結局
・オリジナル効果である
・旧カードは一回しか使えない訳ではない
という指摘された部分が直っていないように思えるのですが?

94欲望まみれの名無しさん:2012/02/07(火) 01:51:08 ID:Zhrwbz0Q
まぁカードその物が複製体となる事で結果的に一回しか使えなくする事には成功していますが
それなら一枚につき一回しか能力を発揮出来ず、というくだりはいらないのでは

95 ◆qp1M9UH9gw:2012/02/08(水) 01:38:29 ID:1QO2Od/Y
>旧カードは一回しか使えない訳ではない
該当の文を消し忘れていました。
「一枚につき一回しか能力を発揮出来ず」は削除しておいて下さい。

>オリジナル効果である
原作からして、「シナプスのカード」自体が何でもありだったので、
これに関しては修正する必要はないと判断しました。

96欲望まみれの名無しさん:2012/02/08(水) 07:48:01 ID:xpmfCHZ2
いや、だからこそそれを有りにするとカオスになりすぎて怖いと思っているんですが……
ほかの方がなんとも思っていないのであれば、別にかまいませんけど

97 ◆LuuKRM2PEg:2012/02/08(水) 22:41:11 ID:WBd8TEIY
修正案投下乙です。
自分はそこまで問題とは思いませんね、シナプスのカードは確かに何でもアリだったので。
それを使ってどんな能力を発揮するかは書き手次第だと思います。(ロワの根底を覆すような力は、流石に自重した方がいいですが)


それでは、自分も修正案を投下します。

98 ◆LuuKRM2PEg:2012/02/08(水) 22:43:07 ID:WBd8TEIY
まず、サイドバッシャー登場の部分をライドベンダーにする形から


 月影ノブヒコは憤っていた。
 創世王たる自分自身を駒と扱ってこのような下らぬ催しに放り込んだ、真木清人という愚か者に対して。
 そして、偉大なる大ショッカー大首領の名を背負った自分自身が、それを許してしまうような醜態を晒してしまった事に。
 弱き人間どもが醜い本性を現して、互いに殺し合う自体は本来ならば至高の宴として見ていただろう。他者を蹴落とすこと自体も全く躊躇うことはない。
 しかしだからと言って、真木という男やそれが率いるグリードなどという怪人に従う道理など微塵もなかった。
 自らのやるべき事は、誇り高き大首領の名に懸けて真木とその犬どもを潰す。その過程に邪魔となるであろう者達も一人残らずだ。

「それにしても、グリードか……」

 あの始まりの会場で真木と共にいた怪人の姿をノブヒコは思い出す。
 メダルを元にして生み出された存在。それは大ショッカーの資料にも一切載っていなかった。
 恐らく大ショッカーのまだ知らぬ世界に生きる者なのだろう。名簿にはあの仮面ライダーの名がいくつも載っていた事を考えるに、真木もまた数多の世界を行き来する力を持っているかもしれない。
 それこそ、仮面ライダーのいない世界から超常的存在を連れてきた可能性だってある。何にせよ、現状では戦うにしてもデータが足りなさすぎた。
 癪に障るが、この世界に放り込まれた参加者から情報を引き出す必要もあるかもしれない。負けるつもりはないが、それが原因で足を掬われては元も子もなかった。

「わざわざ当たりを置かせるとは、見くびられたものだな」

 目の前に置かれている巨大なバイクを見て、ノブヒコは微かに溜息を吐く。先程交戦した加頭順やノブナガと接触する前に、奪われないよう物陰に隠していた。
 この会場にあちこちに配置されているスーパーマシン、ライドベンダーがノブヒコのスタート地点に配置されていた。
 しかし彼自身はそれを微塵も喜んでいない。まるで主催者達から、自分に戦いの促進剤になれと言われているように思えたため。
 だがノブヒコはその感情を捨てる。戦力を与えようというなら精々、奴らの欲望に答えてやればいい。元より邪魔者を排除して、その果てに真木を握り潰す算段だ。
 そう思いながらノブヒコはライドベンダーに跨り、勢いよくハンドルを捻る。その走りは彼の信念を体現するかのように堂々としており、凄まじかった。

99 ◆LuuKRM2PEg:2012/02/08(水) 22:46:32 ID:WBd8TEIY
続いて、ノブヒコがウヴァを脅すシーンです
(作中、サイドバッシャーと表記されていた部分は全てライドベンダーに修正しただけなので省略させて頂きます)

 震える腕を伸ばすウヴァのことなど構いもせず、シャドームーンは首輪から一枚のセルメダルを左手で取り出す。
 そのまま握り潰し、あえて見せ付けるかのようにメダルの破片をウヴァの目前に落とした。
 
「な、何の真似だ……?」
「わからないのか? お前がこうなるだけだ」
「なん……だと!?」

 そう言い放っただけで、ウヴァは絶句したような声を出す。

「お前、自分が何を言ってるのかわかってるのか!?」
「お前を潰す……それがどうした?」
「何を言ってるんだ、この殺し合いはチーム戦で一人でも減ってしまっては陣営の戦力が減る! お前も、元の世界に戻れる確率が減るんだぞ!」
「仮に優勝とやらをしたところで、参加者を帰す保障が何処にある?」
「す、少なくとも俺はそうするつもりだ! これだけは嘘じゃない! だからコアを返せ!」
「どうだかな」

 相当なまでに狼狽えていた。表情を窺うことは出来ないが、ウヴァがパニックに陥ってることは容易に想像できる。
 今はこちらが絶対的有利に立っているが、ウヴァをこれ以上脅したところで話は進まない。そろそろ本題に入る必要があった。

「ならばお前の言葉が真実であると証明して見せろ」
「しょ、証明だと……!?」
「お前達は一体何を企んでいる? そして、あの真木という男のバックには何者がいるのか教えてもらうぞ」

 サタンサーベルをウヴァの眉間に突きつけて、シャドームーンは冷徹に告げる。
 大ショッカー大首領たる自身を拉致しただけでなく、力を制限する首輪を作り出せる技術を持つ輩がいる。もしも真木と戦うことになるのなら、その背後にいる強大な技術を持つ連中とも相手にすることになるので、情報は必要だった。
 そもそもウヴァに接触した理由は、その目的があってこそ。そしてグリードの力量がどれほどの物かも、確かめる必要があった。

「……何も、聞いてない」

 しかし帰ってきたのは、そんなウヴァの弱弱しい返事だけ。

100 ◆LuuKRM2PEg:2012/02/08(水) 22:50:25 ID:WBd8TEIY
最後の部分と状態票です

 ライドベンダーの座席に腰掛ける月影ノブヒコは、思案に耽っていた。
 彼はウヴァを従えた理由はただ一つ、真木清人を打ち破る上で障害となる者達を始末させるため。いくら邪魔者を始末すると言っても、能力を制限されているこの状況で無駄に戦っても自滅するだけ。
 認めるのは癪だが、徒党を組まれてはその可能性も考えられる。だからウヴァの力をある程度取り戻させた上で従わせた。
 それにウヴァはサタンサーベルの刃を耐えるほどの肉体を持つので、ここでわざわざ切り捨てるより邪魔者と潰し合わせた方がずっと有益かもしれない。もしも奴が他の参加者と徒党を組んで反旗を翻すなら、引導を渡すだけ。
 一応、バッタのコアメダルを一つだけ確保したので裏切る可能性は低いかもしれないが。

(なるほど……ここに私達全員の情報が書かれているのか)

 そしてノブヒコの手には今、真木清人からグリード全員に渡されたという紙束が握られている。ウヴァの持っていたそれに書かれているのは、ノブヒコを含めた参加者全員に関するデータとスタート地点。
 加えて大ショッカーの知らない仮面ライダー達や、セイバーやラウラとシャルロットに関する情報まで存在している。
 仮面ライダーW、仮面ライダーアクセル、仮面ライダーエターナル、仮面ライダーオーズ、仮面ライダーバース、NEVER、ドーパント、ガイアメモリ、エンジェロイド、サーヴァント、宝具、IS、魔法少女、ソウルジェム、魔人、ヒーロー……ノブヒコにとって未知の単語が数え切れないほど書かれていた。

(不意打ちを仕掛けた鎧武者の正体はノブナガだったとは……やってくれるな、あの男)

 無論、膨大なデータの中には交戦した加頭順やノブナガについても記されている。それによるとノブナガの正体は真木の技術によって復活した戦国武将、織田信長のホムンクルスかつグリードの紛い物らしい。
 その身体の維持にはセルメダルが必要で、核となっているコアメダルを奪うと消耗が早まるようだ。それなら勝手に消耗するのを待てばいいし、再び戦うことがあるなら借りを返せばいい。
 NEVERである順もそうだが、死ぬのが時間の問題となる奴をあいてにした所で時間の無駄でしかなかった。
 
(アポロガイストのスタート地点はGー5か……まずいな、奴と同じエリアに仮面ライダーと魔法少女とやらがいる)

元は『Xライダーの世界』に存在する悪の組織GOD機関の怪人であり、大ショッカー大幹部の一人であるアポロガイスト。奴はいま、ここより少し離れた風都という街にいるようだった。
 徒歩で向かうなら時間が必要だろうが、真木達が生み出したであろうこのマシンさえあれば向かうのに時間はそこまで必要ない。その気になれば数分で辿り着くことも、可能かもしれなかった。
 しかしそれよりも一つの懸念がある。あのエリアには仮面ライダーエターナルの大道克己と魔法少女の美樹さやかの二人がいるのだ。アポロガイストの戦力ならば簡単には負けないだろうが、問題がある。
 克己とさやかはそれぞれNEVERと魔法少女という、死人の肉体を持つ存在だった。Xライダーとの戦いで敗れたアポロガイストは再生手術を施した際、パーフェクターで人間の生命エネルギーを吸わなければ生きていけなくなる。
 だが、この二人はゾンビに等しい連中だから生命エネルギーなんてあるとは思えない。アポロガイストの性格上、奴らに戦いを仕掛けるだろうが相性が非常に悪かった。
 もしも長期戦になるような事になれば、アポロガイストが非常に不利になる。それで奴が負けてしまっては、大ショッカーにとって大きく痛手となるに違いない。
 こんな下らない殺し合いで奴を失うのは何としてでも避けるべきだが、最悪の想定をしても仕方がない。

(まあいい……不安など抱いたところで何も成せない。さて、何処に向かうべきか……)

 そう思いながらノブヒコはパーソナルデータをデイバッグに収める。その奥には、ウヴァより奪い取ったある宝具が眠っていた。
 それは第四次聖杯戦争でアーチャーのクラスで召喚されたサーヴァント、英雄王ギルガメッシュの保持していた王の財宝に眠っていた宝具。エルキドゥの真名を持つ天の鎖が、創世王の手に渡っていた。

「行くぞ、ついてこい」
「あ、ああ……」

 ノブヒコはもう一台のライドベンダーを発見したウヴァに移動を促す。情けない返事に苛立ちを感じるも、気にしたところで仕方がない。
 ライドベンダーのハンドルを握り締め、勢いよく回すとエンジンが轟音を鳴らして疾走を開始した。その後をついていくように、ウヴァが乗るライドベンダーも走り出す。
 全ては偉大なる大ショッカーのため。あらゆる世界を手中に収めようという欲望がある限り、月影ノブヒコは止まることがなかった。


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