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仮投下・修正用スレ

1欲望まみれの名無しさん:2011/10/20(木) 22:15:27 ID:LZKpu5rs
そのまま投下するのが不安な場合や、規制で書き込めないという場合は此方をご利用下さい。
放送案や、その他各部修正案の投下なども此方のスレでお願いします。

946【Y】/こころにすみついていたもの ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:04:33 ID:XLjNw8AI

「――ネウロ!」
「下がっていろ。今の貴様では足手纏いだ」

 駆け寄って来ようとしたさやかを制し、ネウロは続ける。

「我が輩腐っても未だ魔人の領域。それがたかが、地上の存在に遅れを取るとでも?」
「……さっき、思いっ切りぶっ飛ばされてたじゃん」
「その場のノリという奴だ」
 半信半疑、と言った様子のさやかをそれで黙らせ、渋々ながらの後退を容認させる。

(……とは言ったものの)

 しかし――実のところネウロは、今の自分が、この敵に正面から勝てるとは考えていなかった。

 生物に限らずとも、疑う余地はない。魔界の外で経験した中では、ライジングアルティメットと化したクウガの一撃が最も強力な攻撃力(パワー)を有していた。
 ――それこそ、電脳空間で受けた“スフィンクス”三機分の妨害さえも大きく上回るほどに。

“惰性の超特急5(イビルレイピッド)”を葬った炎を帯びた拳の威力は、目測ながら最初の一撃の更に数倍。戦いの舞台が地上の真っ向勝負である限りは、仮にネウロが全快でも殺す気でかからねば苦戦しかねないほどの難敵だ。

 今のメダル数――夕方にXと交戦した際と同程度の魔力量では、この敵を相手取るにはあまりにも足りない。
 怪力や敏捷はともかく、無防備では通常の人類が個人で携行できるような低火力の銃火器や少量の爆弾で穴を空けられてしまうほど柔な今の肉体では、このクウガを前にすれば泥より脆いと言わざるを得ないのだ。

 無論、魔力で補強するか魔人本来の肉体へと変化させれば、個人兵装の銃弾どころか搭乗型兵器の砲弾とて跳ね返せる強度はまだ十分確保できる。またどれだけ手酷い傷を受けても、そこから本当に泥人形のように再生可能なのが魔人という種族だ。現時点でも総合的な耐久力では、仮面ライダーら超人にも遅れは取らない。
 しかし、現在の魔力量では基礎的な身体能力が既にクウガを下回っている上、変形や強化、傷の再生には貴重な魔力をその度に消費する。魔力が減れば減るほどに現状から身体能力が低下し、防御力も治癒力も損なわれて行くため、被弾を許すたび加速度的に不利となってしまう。
 しかも、生き返ってからのネウロの体は一層の弱体化が進んでいるのだ。トドメとばかりに戦闘向けの中でも扱い易い能力(どうぐ)は夕刻、楽しいという感情に任せ、無意味に浪費し過ぎて使用不能と来ている。

 これだけの悪条件下で、正面から満足に戦えると思う方がどうかしている。そして正面から戦えない以上、誰かを庇っている余裕がないというのは紛れもない真実だ。



 ――故に、ここは一人自由に、搦手で攻める。

「『謎』に繋がりもしない失敗と手順を繰り返すのは、正直徒労のようで好まないのだが……」
 立ち込める粉塵の中、そんな嘆息を漏らしていたネウロの蟀谷(こめかみ)を陥没させたのは、文字通り瞬く間に繰り出されていたクウガの横殴りの一撃だ。
 咄嗟に左側頭部だけ魔人化させ、硬化した皮膚で受け止めてなお、鈍い轟音と共に頭蓋が割れて血が噴き出す。この僅かな時間で自身が明確に弱体化している事実を、ネウロは実感を伴って再認識する。

 脳震盪に視界を揺らし、足を地から浮かせながらも。しかしネウロは既に、次の能力を発動し終えていた。
「……“射手の弛緩(イビルスリンガー)”」
 クウガの強靭な首筋に巻き付かせる形で発動していたのは、パチンコ状に展開された魔界の発条(バネ)だ。
 その出現に気づいたクウガが両端を掴んで拘束を緩め、縛鎖から抜け出すまでは一瞬の出来事だ。絞め落とすには到底至らなかったが、しかし長さを調整していたそれはクウガが拘束から抜け出すまでの間に、殴られた方向に成す術なく飛ばされていたネウロを引き止め、クウガの顔面目掛けて再射出するだけの役割を見事果たしていた。

 ――もう一つ能力を発動しながら、“射手の弛緩”から解き放たれたネウロは、その右手をクウガの頭部目掛けて繰り出す。

 魔人の指先が、真黒き双眸に沈み込むその寸前。艦砲射撃に等しい腕の一振りが、三度目の大地への接吻をネウロに強要していた。
 肩甲骨を変形させ用意した即席の装甲板のおかげで、撃墜されても目が回る程度で済んでいた。しかし携行ミサイルぐらいなら軽く防げるそれも、容易く粉砕されてしまっていた。

947【Y】/こころにすみついていたもの ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:05:55 ID:XLjNw8AI

 故に追撃を躱すための時間も、防ぐ手段も尽きたこの瞬間。限りなく致命的だったはずのその隙を、しかしクウガは衝いて来なかった。

 誰もいない虚空目掛けて、何かに翻弄されるかのようにしてその手足を振るい、ネウロから離れ始めていたのだ。

 その奇妙な行動の原因は無論、敵対者であるネウロに由来する。

(――“卑焼け線照射器(イビルロウビーム)”……)

 接触の寸前まで、ネウロはその魔界能力を発動し――その光線を、クウガの両目に注いでいたのだ。
 対象者の網膜に特定の映像を焼き付ける力を持ったこの指先により、クウガは突如現れた偽の敵影との戦いに視覚情報を埋め尽くされ、幻の中に囚われてしまっていたのだ。

(……どれだけ優れた感覚器官と反応速度を持っていようと、所詮は地上の者ということだ)

 魔人の本領が発揮される魔界の生存競争に放り込んでも、ゼラ辺りの下級魔人になら打ち勝てそうな怪物ではあったが――あくまで地上の法則に拠って立つ限り、いくつか明確な限界が存在する。
 文字通り光速で作用する、視覚情報として知覚した時点で術中に嵌ってしまうこの目潰しには、如何にライジングアルティメットクウガとはいえ対処できなかったのだ。
 もちろん、例えば“目潰し目薬(イビルドロップ)”で放つような、単なる破壊光線であれば予兆を察知され、対処を許してしまうのだろう。しかし何の破壊力も伴わない能力であるために警戒が遅れた上、顔面に迫る残りの指が刃物に変化していたという事情もあって、クウガは魔のレンズを注視してしまっていたのだ。

 アポロガイストが操っている以上、長持ちする時間稼ぎではないが――それでも確かにこの瞬間、厄介な護衛(クウガ)を無力化することができた。
 クウガに悟られぬよう、幽鬼のようにして立ち上がった満身創痍の魔人は、その全身を構成する肉を蠢かせ盛り上がらせ、内部の露出していた傷口を隠して行く。

「……これで残るは貴様だけだ、アポロガイスト」

 口の中だけで囁いた宣告と同時、地を蹴って――操り人形の奇行に困惑していた迷惑な怪人へと、ネウロは肉迫する。
 ライジングアルティメットの瞬発力は凄まじいが、最高速度そのものは今のネウロとも大差ない。もしすぐに追って来られたとしても、こちらが加速するに足る隙を稼げた以上、その間に地の石を砕けるとネウロは確信した。

「――ぬぅっ、甘いわぁっ!」

 ただそこで、ネウロが計算を誤ったのは。
 ダメージの蓄積と魔力の消耗による、自身の弱体化の度合――ではなく。
 ネウロが知らぬ間に果たされた、アポロガイストのパワーアップが勘定に漏れていたためだ。

 不意打ちに近い状況から閃いた魔の爪を、アポロガイストは易々と楯で弾き返していた。先程までとは段違いの反応速度と膂力の向上を前に、押し返されたネウロも微かに瞠目する。
 その一瞬の隙は、怪人に至近距離から巨大なマグナム銃を発砲させるのを許すのに、十分な隙となってしまっていた。

 一撃で戦車を破砕するその弾丸もまた、通常のショットガンで穴の空く状態のネウロが無防備に受けるには、過剰に威力があり過ぎた。
 暗黒掌波動の時同様、前面に集めた魔力を楯として受け止めたその瞬間、右肩に灼熱が走る。

「――っ!!」

 食い破られたのは、背後から。
 防御の間に合わなかった右肩は、杭のようにして打ち込まれたクウガの肘、その先端の突起の流れるままに切り裂かれ――そちらに気を取られた隙に、今度は左からの回し蹴りが襲来する。
 緩衝材として巨大な刃状に変化させた左腕は、蹴りへの迎撃に間に合った。激突の際に脛を切り裂いてやったが、力負けしたネウロは横滑りに発射されることとなった。歪に曲がった刃を突き立て地を削り、勢いを殺して持ち堪えたネウロが、脱落しかけた右腕を垂らしたまま視線を巡らせた時には――クウガは既に、パックリ割れていた脛を再生し終えていた。軽傷に対する再生能力は、今のネウロ以上――Xにも劣らぬ驚異的な速度のようだ。

948【Y】/こころにすみついていたもの ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:07:45 ID:XLjNw8AI

「待て……何か、妙な手品を目に受けたようだな」

 完治と同時、またも虚空に向けて走り出そうとしていたクウガを制止したアポロガイストが、意外にも聡く絡繰を見抜いてみせた。

「ならばその目、潰すのだ」
 他者を軽んじた躊躇いのない命令の実行は、これまた一瞬の躊躇もなく。
 暗黒の波動を蓄えた掌を、自らの顔面に押し当てたクウガは、その真黒い両目を焼き潰した。

 常人ならば目を背けるような狂行。しかし、その程度の沙汰に躊躇うような魔人はいない。隙を逃すまいとネウロは駆け出したが、同時にクウガも淀みなく飛び出したのを見、微かに瞠目する。

 例え視力を失ったとしても、どうやらその他の情報だけで十分に戦闘可能な感覚を備えているらしい。それでも流石に視力を失った分、初撃はそれまでより容易く回避できた。しかし沈んだ上体を反撃のために起こそうとしたネウロは、既に殆どを復元された暗黒の双眸を前にして反射的に飛び退る。

「目の異常が残っていたらパンチ、治っていたらチョップで追撃なのだ!」
 アポロガイストの気の抜けるような指示を受けたクウガは即座に手刀を横薙ぎして、変化させたままだったネウロの左腕を再びへし折り、魔人の体を弾き飛ばす。どうやら、“卑焼け線照射器(イビルロウビーム)”の影響を受けた網膜を自ら破壊し新たな眼を再生することで、クウガはアポロガイストを通さずとも済む健常な視力までも取り戻したようだ。

 容易く全快した凄まじき生物兵器に対し。短時間とはいえ、両腕を使い物にならなくされた魔人は距離を取り、荒い呼吸の中で表情を険しくする。
「……勝てないな」
 そしてただ一言。小さく小さく、誰にも聞き取れないほどの声で、密かに現状認識を吐き出した。

 今のネウロに残されていた策は、通じなかった。
 無駄に浪費した能力が残されていれば。せめてDR戦前の魔力があれば。あるいは、蘇生後に感じている不調さえなければ……結果は、変えられていたかもしれない。
 しかしそのいずれも足りない弱り果てた魔人の打てる手では、この怪人達には通じなかったのだ。

 ……否。
 この苦境を覆す方法は、本当になかったわけではない。魔界777つ能力の上位、魔帝7つ兵器(どうぐ)を以てすれば、クウガを戦闘不能に追い込むこと自体は可能なはずだった。
 しかし、召喚(ローディング)に要する時間に受けるだろう攻撃、及び発動そのものに伴う自身の消耗を考えれば、アポロガイストを討つ余裕が残らない。クウガを倒したとしても、あのバカ丸出しの怪人に抗う術をなくし、高確率で殺される羽目となる。

 加えて、クウガはこれまで相手にしてきた犯罪者どもとはスペックが違い過ぎる。魔帝兵器でも、加減して通じる相手ではなく――故に場合によっては、殺してしまいかねない。
 それでもより強大な敵であるクウガだけでも何とかできるなら、するべきかもしれない。しかし、クウガこと小野寺ユウスケは洗脳された被害者に過ぎず、何より――どんな突然変異だろうが、彼もまた今この体を動かす命の主の、同族だ。
 自身に降りかかるリスクのみならず、可能な限り彼の死を避けたいという躊躇いが、知らず知らずネウロの内で膨らんで――その選択を、忌避させていた。

(それにこれは、そのための魔力は……アポロガイストを仕留めるのに残しておかねばな)

 アンクの言によれば、アポロガイストはコアメダルと融合済み――即ちグリードと化している。
 グリードはコアメダルがある限り存在し続けるという。単純に撃破するだけでも一度は無力化できるのだろうが、ウヴァに関連してコアを残す危険性を聞かされたばかりだ。可能ならばできるだけ早く、最低でも本体となるコアメダルを砕いておくに越したことはない。

 欲望の結晶であるために、物理的に破壊することはできないとされているコアメダル――しかしネウロは、自身の切札ならその前提を覆せると目していた。

 魔帝七つ兵器(どうぐ)の中でも最強を誇る、絶対無敵の刃。過程がなく結果だけを創り出すその斬撃は、対象が実際に切断可能か否かという命題を、全くの無意味とする。
 発動さえすれば防御不能、必中必殺の一撃というだけではなく――コアメダルの特性すら突破し得る、二重の意味での切札が、ネウロにはあった。

 クウガを解放した後、その一撃をアポロガイストに叩き込む。それが理想的な展開だった。

949【Y】/こころにすみついていたもの ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:08:30 ID:XLjNw8AI

 しかし、現実には未だクウガを突破する目処が立たないまま、着実に追い詰められている。最早ネウロの葛藤に関わらず、クウガを無力化するために魔帝兵器を用いることすら困難な状況だ。



 残る勝ち筋は――ネウロよりも先に、クウガのメダルが尽きて無力化される、その隙を突くこと。
 しかし、戦いが長引くほどネウロ側が不利になるのは先述の通り。それを実現できる可能性もまた、絶望的だ。

(だが、退くことはできない。ここで我が輩が倒れれば……)

 脳裏を過るのは、インキュベーターの漏らした言葉。
 そして――ネウロを向いて眠ったまま、二度と瞼を開けることのなくなってしまった、奴隷の顔。

 ――次は勝つと、そう決めた。

 彼女が命を代価に繋げたのは――きっと、ネウロが彼女の同族に、人間に齎す可能性だ。
 一定の敬意を払っていたとはいえ、あれだけの扱いを重ねてきたネウロのためにあの時期の彼女が命まで擲つとしたら、そんな理由しか人あらざる身には思いつけない。

 覚悟と共に弥子が全てを託したこの魔人ネウロは、ここで敗走することなど許されない。
 そうなれば誰がこの脅威から人間の命を、“謎”を、未来の可能性を庇護できるというのか。

 そんな強迫観念にも似た、他者に背負う必要がないと説いた感情を――自身が生まれて初めて抱えていることを、理解すらしていないまま。
 魔界一の頭脳が、相棒の願いという簡単な真実に辿り着くことができないほどに……体だけではなく、心にこそ不調が残っていて――なのに、それに気づくこともないまま。絶望的な暴力に晒される最前線へと、意固地になって立ち続けているその間に。



 朽ちて行く魔人に残された魔力(メダル)は、既に、一割(三十枚)を切りつつあった。






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






 ――僕の心に弱さは住み着いていた。






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○







「……あいつはもう保たないな」
 遠巻きに戦況を見守っていたアンクへと近づきながら、エターナルは苦境に晒された魔人を指してそう言葉を掛けていた。
「……置いて逃げられるんなら、別にそれでも良いんだがなぁ」
 アンクの返答には忌々しさ。それはネウロに対する執着ではなく、単純にこれ以上離れた際に、アポロガイストが自分達を見逃さないだろうということを示していた。

「勘違いするな。壁として期待できない、という意味だ」
 対しエターナルは、自らの発言の意図を正しく伝える必要性を感じていた。
「魔人の命がどこまで保つものなのかは俺も知らん。ただあいつよりは、俺の方がまだ削り役になるだろうと思っただけだ」
 戦場に逆走するまでの僅かな時間で、ネウロは明らかに被ったダメージ以外の要因により、目に見えて弱体化している。今の彼に持久戦を望むのは無茶というものだろう。
 また、先の突撃をあしらわれてしまったことから、クウガを足止めすることも、その後アポロガイストを倒すことも、今のネウロには困難だとエターナルは判断していた。
 しかしそんなエターナルの様子が余程意外だったのか、アンクは白亜の仮面をまじまじと見つめていた。

「……勝てるつもりか?」
 退却する、のではなく――そう言いたげな顔のアンクに、エターナルの仮面の中、克己は当然だとばかりに鼻を鳴らす。
「少なくともアポロガイストの好きにさせるつもりはない」
 生きている小野寺ユウスケの心を捻じ曲げ、明日を奪う戦いを強要する悪の存在を、克己は許容することができずにいた。

950【Y】/こころにすみついていたもの ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:09:34 ID:XLjNw8AI

 しかし、現実には未だクウガを突破する目処が立たないまま、着実に追い詰められている。最早ネウロの葛藤に関わらず、クウガを無力化するために魔帝兵器を用いることすら困難な状況だ。



 残る勝ち筋は――ネウロよりも先に、クウガのメダルが尽きて無力化される、その隙を突くこと。
 しかし、戦いが長引くほどネウロ側が不利になるのは先述の通り。それを実現できる可能性もまた、絶望的だ。

(だが、退くことはできない。ここで我が輩が倒れれば……)

 脳裏を過るのは、インキュベーターの漏らした言葉。
 そして――ネウロを向いて眠ったまま、二度と瞼を開けることのなくなってしまった、奴隷の顔。

 ――次は勝つと、そう決めた。

 彼女が命を代価に繋げたのは――きっと、ネウロが彼女の同族に、人間に齎す可能性だ。
 一定の敬意を払っていたとはいえ、あれだけの扱いを重ねてきたネウロのためにあの時期の彼女が命まで擲つとしたら、そんな理由しか人あらざる身には思いつけない。

 覚悟と共に弥子が全てを託したこの魔人ネウロは、ここで敗走することなど許されない。
 そうなれば誰がこの脅威から人間の命を、“謎”を、未来の可能性を庇護できるというのか。

 そんな強迫観念にも似た、他者に背負う必要がないと説いた感情を――自身が生まれて初めて抱えていることを、理解すらしていないまま。
 魔界一の頭脳が、相棒の願いという簡単な真実に辿り着くことができないほどに……体だけではなく、心にこそ不調が残っていて――なのに、それに気づくこともないまま。絶望的な暴力に晒される最前線へと、意固地になって立ち続けているその間に。



 朽ちて行く魔人に残された魔力(メダル)は、既に、一割(三十枚)を切りつつあった。






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






 ――僕の心に弱さは住み着いていた。






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○







「……あいつはもう保たないな」
 遠巻きに戦況を見守っていたアンクへと近づきながら、エターナルは苦境に晒された魔人を指してそう言葉を掛けていた。
「……置いて逃げられるんなら、別にそれでも良いんだがなぁ」
 アンクの返答には忌々しさ。それはネウロに対する執着ではなく、単純にこれ以上離れた際に、アポロガイストが自分達を見逃さないだろうということを示していた。

「勘違いするな。壁として期待できない、という意味だ」
 対しエターナルは、自らの発言の意図を正しく伝える必要性を感じていた。
「魔人の命がどこまで保つものなのかは俺も知らん。ただあいつよりは、俺の方がまだ削り役になるだろうと思っただけだ」
 戦場に逆走するまでの僅かな時間で、ネウロは明らかに被ったダメージ以外の要因により、目に見えて弱体化している。今の彼に持久戦を望むのは無茶というものだろう。
 また、先の突撃をあしらわれてしまったことから、クウガを足止めすることも、その後アポロガイストを倒すことも、今のネウロには困難だとエターナルは判断していた。
 しかしそんなエターナルの様子が余程意外だったのか、アンクは白亜の仮面をまじまじと見つめていた。

「……勝てるつもりか?」
 退却する、のではなく――そう言いたげな顔のアンクに、エターナルの仮面の中、克己は当然だとばかりに鼻を鳴らす。
「少なくともアポロガイストの好きにさせるつもりはない」
 生きている小野寺ユウスケの心を捻じ曲げ、明日を奪う戦いを強要する悪の存在を、克己は許容することができずにいた。

951【Y】/こころにすみついていたもの ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:10:22 ID:XLjNw8AI

 仮に逃げられたところで、互いが互いである以上、いつか倒さなければならないことに変わりはない。
 逆に、他の参加者を襲われ、十分なメダルを補充されてしまうことの方が厄介だと克己は考えていた。

「……俺にメダルを寄越せ。あいつのメダルが切れるまで粘れるだけのな。潤沢なメダルさえあれば、アポロガイストに補充させる隙も与えん」
 脱臼していた肩も既に完治している。治癒力ではさやかに及ばないかもしれないが、NEVERである克己の再生力と、何より打たれ強さは元より一級品だ。
 それをエターナルへの変身で底上げし、更に多用できないとはいえエターナルローブの絶対防御を合わせれば、守りにおいてこそ圧倒的な性能を発揮する――それこそ、メダルに糸目をつけなければ今のクウガを相手に、アポロガイストの横槍を考慮に入れたとしても、防戦なら互角の立ち回りも可能なほどに。
 そしてクウガさえどうにかできれば、今のアポロガイストが相手でもエターナルならば勝てる。石を砕いてすぐ正気に戻せるなら、あのクウガもこちらの戦力として勘定できる可能性すらある。何にしても、まずはクウガを操っているとアポロガイスト自ら明かしたあの石を砕くのが勝利条件だと、克己は考えていた。

「どうせおまえじゃ敵わないんだ。そこで腐らせておくよりは俺に投資しろ」
「……タダで叶う望みはない、か」
 舌打ちの後、自らの異形の右腕を見つめていたアンクは、エターナルに向き直ると首輪からセルメダルを放出した。

「……これだけか?」
「貰っておいてそれか」
 しかし提供されたのは、わずか三十枚ほどのセルメダルのみ。

 いくらクウガにコアを奪われたとはいえ、グリードとして桁違いに多くのメダルを有するはずのアンクから提供されたにしては、あまりにも乏しい量。仮にローブを用いてライジングアルティメットクウガの攻撃を防ぐとなれば、単なる拳数発で使い切ってしまう程度でしかない。如何にエターナルとはいえこれだけではとても、クウガとアポロガイストを同時に相手取った持久戦で勝利を掴める目処など立てられない。
「もう少し寄越せ」
 故に要求を重ねたエターナルに対し、アンクは忌々しそうにそっぽを向いて答えた。

「……これ以上は、俺を維持できなくなる」

 ――つまり、まだメダルはあるわけだ。

 多くが生き残るために必要な糧が。しかしそれを提供することに、己の命運が懸かる以上、持ち主であるアンクは合意できないと。
 そのことを意識した瞬間、知らずエターナルエッジを握る手に力が篭った。

(……綺麗事じゃあ生き残れない、か)
 克己の心の中に住み着いた何かが、そんな囁きを漏らした。

 誰も犠牲にせずに、最後には愛と正義が勝つ大団円。そんな夢ばかりを見てはいられないのだと。
 ……そんなものを見る人間性(資格)すら、克己からは一瞬ごとに失われて行っているのだから。

 なのにまだ、自分は――何も、成し遂げてはいないのだ。

(――悪いな、アンク)

 まだ、何も刻み込めてはいない。自分の存在を、この世界に。
 永遠に刻みつけるその時まで、死ぬわけにはいかない――そしてそのための贄は、目の前にある。

(……どうせこの先俺は、悪魔になっちまうらしいからなぁ)

 今は悪の操り人形と化してしまった、正義の仮面ライダーからぶつけられた罵倒の言葉が脳裏を過る。
 ネウロ達が、真木が時間操作の技術を持っているのではないかと疑っているのを、克己もまた聞いていた。
 確証があったわけではないが、ユウスケの言葉が正しいなら――そして、自分が死体であるという疎外感に常に悩まされていた克己にとって、故郷の人々を皆NEVERにしてしまうという計画には確かに惹かれるものを感じていて。それが未来の自分の選択なのだと言われても、否定することができずにいたから――

 いつか、己は本当に、完全に人間性を喪ってしまうのだと。そんな、確信めいた予感があった。

952【Y】/こころにすみついていたもの ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:11:26 ID:XLjNw8AI

 本当ならユウスケを問い詰めて、真実を明らかにして、違うのだと思いたかった。心を揺らがされたと感じていても、それは勘違いだったのだと。

 しかし――今この瞬間、まだ何の罪もないアンクを前にして閃いた冷めたい思考が、ユウスケの仄めかされた未来が真実であることの、何よりの証明のように克己には思えていた。

(どんな形になろうと……俺は俺を永遠にする。そのためには……あいつが必要なんだ)

 そうして――訝しむようにして仮面越しの表情を覗き込んでいたアンクの、隙だらけの喉元を掻き切ろうとした、その瞬間。

「――やめろぉおおおおおおおおっ!!」

 怒りに満ちた声が鼓膜を叩いて。
 まるで母に叱られた幼子のようにして、びくりと手を止めた克己はエターナルの仮面を被ったまま、声の主を探して視線を巡らせていた。
 そして――






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






 振り返ると 幼き僕に あの日の勇気(melody)






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






 克己が戦場に視線を戻した、その時。
「これ以上、やらせるもんか!」
 既に言葉を発する余力もなく、まるで惨殺死体のような有様で倒れ込んだネウロを庇って――さやかが一人、クウガと対峙していた。

 魔人を終始圧倒した絶対的な暴力の化身を前にして、さやかは竦む体をそれでも割り込ませ――その細い剣を構えて、無謀にもクウガの攻撃を受け止めようとしていたのだ。
 拳そのものは、横向きの刀身に触れる前に寸止めされる。しかしその動作で生じていた暴風は、少女一人を吹き飛ばすのに十分過ぎる威力を有していた。

 さやかという障害が離れた後、クウガは改めてネウロへと距離を詰める。
 しかし少女はその剣を地面に突き刺して持ち堪え、刀身の撓みを利用して体勢を立て直し、蹴り飛ばしたネウロに追撃を仕掛けようとしていたクウガの腰に抱きついた。

「ねえ、やめてよ……っ! あんた、あたしには本気で攻撃してないよね? まだ意識があって、人を傷つけたくなんかないって思ってるんだよね!?」
 アポロガイストの言葉がなくとも。ネウロの惨状と自身とを見比べれば、それは素人と侮られるさやかからも明らかな事実だったのだろう。
「だったら負けないでよ、あんな石ころなんかに!」
「――小娘が、図に乗るな!」
 涙を湛えての懇願に対し、アポロガイストの一括と共に、クウガが手を一振りする。
 地べたを舐めたさやかはしかし軽傷だ。その様に舌打ちしながらも、手加減されても抗うことのできない少女の非力さを悪は嘲笑う。

953【Y】/こころにすみついていたもの ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:12:20 ID:XLjNw8AI

「情けで生かされているだけのゾンビが、一丁前に正義の味方気取りとは片腹痛いのだ」
「気取りなんかじゃない……!」

 そんなアポロガイストの言葉に、立ち上がりながらさやかは強く言い返していた。

「あたしは……もう、認めて貰ったんだよ。だからそう生きるって、決めたんだ……! もう誰にも、大切なものを失わせたりなんかしない、正義の味方になるんだって――っ!」

 奪われたことへの怒りと悲しみと。そして認められたという誇りによって吐き出された言葉と共に駆け出したさやかの、左腕が宙を舞う。
 マグナム銃を構えたアポロガイストの攻撃を躱しきれず、掠めた細腕が千切れ飛んでしまっていたのだ。
 クウガの攻撃とは異なり、一片の容赦も挟まれていない銃弾の威力にさやかは吹っ飛ばされ転倒する。

「愚か者めが。貴様がどう思おうが、今更貴様如きに何をできる力があるというのだ!」
「――だけど、あたしはもう、一人じゃない……っ!」
 追撃の銃弾は、トドメとばかりに腰を狙っていた。しかしそれを読んでいたさやかは跳躍して躱し様、転がっていた自身の腕を拾って露出した肩口に押し当てる。NEVERさえ上回る再生力によって蒸気を上げて腕と肩が接合されて行き、滑らかな肌が刷毛で塗られるようにして傷跡を埋めて行く。

「今のあたしがどんなに弱くたって、足掻き続けてやる。最後の、最後まで! あたし達が信じた、明日のためにっ!」

 叫んださやかは、傷口が完全に塞がるのも待たずに、再びその痩身を両足で送り出した。
 全く敵へ及ばない不利に臆する本能を、抱えた願いに応えた心で押さえ込んで――どんなに困難でも、孤独ではない限り存在するはずの希望を信じて。



 ――きっと彼女は、エターナルがすぐ傍まで戻って来ていることに気づいていない。
 それでも、自分を認めてくれた仲間は、戻って来るのだと信じきったまま――自身の信念のために、足掻き続けている。

 彼女が抱えているのは、きっと――陽の沈む直前に、克己と交わした約束。

 それに思い至った時、克己――エターナルは、アンクを置いて戦場のど真ん中へと駆け出していた。

954W/弱き僕らの祈りの風 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:13:40 ID:XLjNw8AI





「――小賢しいゾンビめが、死ねぇっ!」
 苛立ちを顕にしたアポロガイストが、ネウロの下に向かおうとするさやか目掛けた追撃を続ける。
 翼から放たれた火炎は、それ自体が中途半端に大きいために、目にしてからの横っ飛びで回避できた。
 しかし同時に放たれていた銃弾はそれより速く、小さい故に躱し難い。しかして秘めた威力のほどは、先程腕をもがれた際に把握済みだ。

 そこでさやかは、くっつけ直したばかりの左腕を用い、自身のマントをはためかせていた。
 翻った白い暗幕は、焦慮から急所であるソウルジェムを狙っていたアポロガイストの銃口を惑わせる。推測から放たれた一発が通過する位置さえ予想できていれば、銃弾の伴った衝撃波にマントを引き裂かれながらも、さやかの痩身は直撃を躱すことができていた。

(――できた……!)
 ナスカ・ドーパントとの戦いの時同様。マントを用いた幻惑という、克己の得意とする技術を再現することができている。
 もうアポロガイストのような強敵が相手でも、無意味に攻撃を喰らうような無様は晒さない。己の確かな成長を実感し、さやかは微かな喜悦を発露させていた。

 とはいえアポロガイストが言うように、ガタックの力を失くした自分が今の奴を倒すことは困難だ。そもそも仮にそれが可能としても、その際にはクウガによる妨害も予想される。
 成長できているとは言っても、未ださやかは彼らには届いていない。だから今は、とにかくできることを――時間稼ぎをやってみせる。
 このまま放っておけば、間違いなくネウロは殺されてしまう。あの小野寺ユウスケという青年も、まるで魔女の口づけを受けた被害者のように、望まぬ罪に手を染めてしまう。

 悪いことをしていない皆が悲しい思いをして、得をするのはアポロガイストと真木達だけ――そんなことは許せないと、さやかは闘志を滾らせる。
 もう――音楽や、夢や、命や。誰かの大切なものを、理不尽に奪われたくない。誰にも、自分と同じ痛みを覚えて欲しくない。
 二人の親友との別れを経験したさやかの願いは、一層強いものと化していた。

「――甘いのだ!」
 そんな決意と共にアポロガイストを振り切ろうとしていたさやかだったが、しかし。まだ未熟な魔法少女は、銃撃を躱したところで油断してしまっていた。
「ハイパーガイストカッター!!」
 故に、三撃目――マントを構えられた時点で投擲の準備がされていた、刃の生え揃った日輪の楯の襲来に、気づいた時には思考を塗り潰されていた。

「しまっ――」
 縦ではなく、横に動き出したばかりだったさやかは、この一撃を躱せる体勢にはなかった。また、防げるだけの力も持ち合わせていなかった。
 狙いは過たず腰のベルト。その奥に隠された、さやかの魂そのものである青い宝石(ソウルジェム)。
 運良く即死は免れても、胴を両断されてしまう運命からは逃げられない。そうなれば、次のアポロガイストの攻撃で確実に死んでしまう。

「サヤ――っ!?」
 その様子に気づいたらしいネウロが、名を呼ぶ途中にクウガに殴打され、吹き飛んで行く。家屋を倒壊させる音を聞く限り、そもそも救出に向かおうとしていた魔人からの助けを期待することはできそうにない。

「――はぁああっ!」

 絶体絶命のその時。さやかの頭上を飛び越えたそいつは、蒼炎を纏った爪先でさやかの眼前に迫っていた飛輪を、見事一撃で蹴り落とした。
 着地と同時、自らの足元に突き刺さっていた楯を蹴り上げて掴み、さやかを庇うような姿勢で佇んだその男は、さやかが誰より待ち望んでいた人物だった。

「――克己!」
「むぅ、ライジングアルティメットに恐れを成したと思っていれば、貴様……!」
「生憎だが、俺はとっくに死人でな。そういう感情は忘れちまってるんだよ」
「もう……」
 またそうやって嘯くエターナルに、思わず叱咤を漏らしてしまいそうになりながらも。今はそういう状況ではないと、さやかは傷んでいた剣を具現し直す。
 さやかは克己が帰って来てくれると、疑う余地なく信じていた。しかし彼でもクウガの相手は楽ではない。
 だから、と。既にネウロへの追撃を止め、こちらへと踵を返していたクウガへとさやかは向き直った。

955W/弱き僕らの祈りの風 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:14:33 ID:XLjNw8AI

 生身の人間そのものな姿のさやかに対してだけは、石の魔力に囚われながらもユウスケも意地を見せ、邪悪な支配に抗ってくれている。動きを多少なりとも妨げられる自分がサポート役になれば、今度こそきっと、克己なら……
「受け取れ」
 そう考え、俄かに汗を滲ませていたさやかに投げ渡されたのは、エターナルが掴んでいたアポロガイストの楯だった。
「うわっ、ちょ克己!?」
 慌てて具現化したばかりの剣を捨てて、さやかは真っ赤な楯を受け止める。掴んだ両手が重さに沈むが、何とか堪えて持ち上げる。
「クウガは俺がやる。おまえはその間、それでアポロガイストから俺を守れ」
 自身の魔法で作ったサーベルよりも強靭だが、全く不慣れな武器を渡されて困惑していたさやかへと、エターナルの仮面越しに克己は端的に指示を下す。

「無理に攻めなくて良い。ただあいつの横槍さえ防いでくれていれば、後は俺が何とかしてやる」
「いきなりそんなこと言われても……あたし、楯とか使ったことないし……」
「さっきのマントの使い方を思い出せ。アレで良い」

 さやかの戦いぶりを評価した克己は、未だネウロにも注意を払っているらしいクウガと改めて対峙しながら、続ける。
「俺の背中は、おまえに任せた」
「……しょうがないなぁ」

 不承不承、と言ったような口ぶりながらも。本当は小躍りしたいぐらいの喜びに胸を滾らせながら、さやかは受諾を表明する。

「やってあげるよ。弱虫な克己は、一人じゃ戦えないもんね」
「おまえほどじゃない」

 先の戦いの後に交わした言葉を思い出して、不利へ臨む相方の気持ちを軽くしようと。さやかとエターナルは、互いに冗談を口にする。
 いや、全くの冗談ではないかもしれないが――だからこそ、何でもないことのように会話できたことが、さやかの心から余計な重荷を取り除いてくれていた。



 ――いける。

 弱くても、力が足りなくても……同じ志を持った仲間と、それを補い合って戦うことができる。
 もう、さやかは――一人じゃ、ないのだから。



 確信したさやかの背後で、エターナルが地を蹴ったのが聞こえた。ほとんど同時に、大地を破裂させるようにしてクウガが迫って来ていたのも。
 どこで途切れているのかもわからないような、連続した打撃音が響いて来る。しかしどこで途切れているのかわからないということは、それは先の二回とは異なり、此度の激突は拮抗していることを示していると、さやかにも判断できた。

 それを証明するかのように、アポロガイストが手元に残された銃を構える。対してさやかも、ガイストカッターを抱えて走り出していた。
「余計な邪魔を……っ!」
「それが役目なんでね!」
 着弾の衝撃に手を痺れさせ、危うくひっくり返りそうになりながらも。射線上の障害物として立ち塞がったさやかは奪った楯を用い、エターナルへ向けられたアポロガイストの一撃を防いでいた。

「引っ込んでおるのだ!」
 続いた連射の威力に、さやかはその場に釘付けにされた。しかし堅牢な楯の機能は損なわれず、さやかの無事は保たれている。
 業を煮やしたアポロガイストが接近を開始する。そのために銃撃の間隔が微かに拡がった瞬間、さやかは体勢を立て直し、身体能力の強化のみに全魔力を回して重い楯を持ち上げた。
(さっきみたいに……っ!)
 巨大なガイストカッターを前面に掲げて、疾走。先のように正面から受ければ体勢を崩されることを学習したさやかは、射線と着弾面が直角にならぬよう斜めに楯を構え、背後の音の移動に合わせてアポロガイストの視界を阻むようにして縦横無尽に飛び跳ねる。

956W/弱き僕らの祈りの風 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:16:19 ID:XLjNw8AI

「ぬぅ、大きな楯が目の前でヒラヒラと……」
「迷惑かけられる人の気持ちがわかった!?」

 取り返そうと接近するアポロガイストに、隙を見て具現化した剣を投げつける。直撃したところで致命傷には程遠い一撃は容易く弾かれるが、地の石を砕くのに十分な威力のそれは、不用意な接近を躊躇わせる牽制として機能した。
 結果、再び遠巻きな攻撃を試みるアポロガイストだが、飛び道具では彼自慢のガイストカッターを砕けない。
 何とかさやかは、アポロガイストの足止めに成功していた。

 だがそれも、アポロガイストの頭に血が上っている間でしか成り立たないことだ。
 奴が冷静さを取り戻せば、アンクから奪った翼で飛ぶという選択肢を思いつくはず。今の状況でも余裕はないのに、上空から攻められるとなればとてもさやかでは守りきれない。
(――急いでよ、克己……っ!)
 さやかが防いでいる間に何とかすると、彼は言ったのだ。ならきっと何とかしてくれると、さやかはこれまでの彼を見て疑うことなく信じている。
 ただ、そのためにさやかが稼げる時間は、現実的に考えれば決して長くないのだ。
 おそらくそのことは、克己とて理解しているはずだ。

 それでも――仮面ライダーの力もない、素人の魔法少女である自分が、それでも彼の背中を任された。
(あたしも、やれるだけのことはするから……!)
「どうした!? ど素人の小娘も倒せないの、大迷惑な大幹部さん!」
「貴様ッ、私の楯を使っておいて図に乗るなぁあっ!」
 その期待に応えるためにと、力も知恵も意志の下に総動員して、言葉さえも武器にして。怒り任せに乱射される銃弾を防ぎ、時に反撃しながら――さやかは全力を、尽くし続けた。






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






 クウガの繰り出した拳を、エターナルは横合いから蒼炎を纏った手刀で外側に弾く。
 蒼炎で強化を施している分、完全な素手で受けていた時に比べれば遥かに軽いが、それでも手に痺れが残る恐るべき剛力だ。おそらくは正面からの打ち合いでは、こちらだけ強化している状態でもまだ届いていないだろう。
 しかし、それでもエターナルは、ライジングアルティメットの猛攻を凌ぐことができていた。



 怪力や敏捷性でエターナルを上回っていた時期のネウロでも圧倒されていたクウガに、それでも克己が食い下がれているのは、防御力だけの問題ではなく、両者の技量の差が要因だ。

 ネウロは地上においてはもちろん、魔界でも圧倒的な存在として君臨していた。故に魔人ネウロはどこまで行っても互角の勝負を経験したことがなく、また努力という概念のない魔界ではそんなものを学ぶこともできなかったために、同格の敵との戦いに入ってから優位に立つための戦術や技術というものを修められていなかった。生まれながらに圧倒的であり過ぎたが故に、その強さはどこまでも直線的だった。
 それが地上という環境や、殺し合いにおける制限や、身を動かす命の炎の不足や、相棒を喪った動揺といった要因で損なわれてしまえば。初めて得た弱さを持て余し、その結果相対的に自身を上回るようになった敵と突発的に戦うとなると、策が不発に終わってしまえばどうしようもなく脆かったのだ。

 対して大道克己は、元は音楽が好きだっただけの、争い事とは縁遠かった人間だ。
 悲運な事故からネクロオーバーとなり、死の商人である財団Xに死体兵士の有用性を証明するために、後付けでその強さを高めて来た。
 不死性だけに頼ることなく、元の弱さを補うために、人類が研鑽し続けてきた戦いの術を、ひたすらその身に修めて来た。
 故にネウロと異なり、自身を上回る強敵との戦闘経験も、そこから逆転するための術も、克己には備わっていたことが、エターナルを今もクウガの前に立たせ続けている理由となっていた。



「――おぉぉおおおおおおおおおあぁああああああああっ!!」

 拳をいなし、蹴りを逸らし、手刀を捌く。微かに開いた暴風雨の目を見逃さず、空隙目掛けて全力で拳の矢を放つ。
 しかし堅い。重厚だったタイタンフォームを遥かに凌駕する金の装甲は、エターナルの拳を正面から受けて小動(こゆるぎ)もしない。装甲に覆われていない漆黒の肉体も、それ自体が圧倒的な強靭さと弾力を併せ持つ筋繊維が鎧となって、生半可な攻撃を跳ね返し、寄せ付けない。
 一瞬で再生する程度とはいえ、傷を与え得るエターナルエッジの直撃を許してくれるほど、究極を超えた暴力の化身は甘くない。そんな欲を掻けば、刹那のうちに攻守は入れ替わる。

957W/弱き僕らの祈りの風 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:17:26 ID:XLjNw8AI

 パワーの差は文字通りに桁違い。敵の一撃一撃が、受け損ねれば勝敗を決し得る威力。それに比べれば地獄の傭兵も、何と弱々しいことか。

 だがそんなことは百も承知。元よりNEVERは、大道克己は最強無敵などではなかった。ガイアメモリの生む怪物ドーパントに比べれば劣るとして、財団Xに切り捨てられた存在だ。
 しかし、もしも最初から、ドーパントにも勝る完成した強さを自分が持っていれば。己の弱さを知らなければ。克己は自分を救ってくれた母の研究のためでも、あんなに辛い訓練など積まなかった。
 もしも自分だけで完結してしまっていたのなら、きっと克己は泉京水や、芦原賢や、堂本剛三や、羽原レイカを求めはしなかっただろう。
 ミーナとも、そして美樹さやかとも、出会うことはなかっただろう。

 克己が一人だけで完全ならば。己の欠落する人間性を繋ぎ止めてくれる者達を、今も残っているこのメロディを伝えるための他者を、求める必要などどこにもなかった。あらゆるものが抜け落ちて行くこの身を、こんなにもたくさんのもので補うことはなかった。



 そう――弱かったからこそ、大道克己は戦える。

 時にその弱さが言い訳をして、諦めを促す悪魔になることがあるとしても。弱さとは、それだけのものではない。
 幼き日の克己は弱かったからこそ、同じく弱い人々を思い遣る勇気を与えてくれるものの尊さが、理解できた。
 揺るぎない強さに支えられた自信ではなく、補える弱さを知っているからこそ生まれる願いが、どんなに辛く苦しい時でも克己を足掻き続けさせていたのだ。

 そんなことを、とっくに忘れてしまっていた克己に思い出させてくれたのは――母の名と同じ姓を持つ、克己と同じ死人の少女だった。



 世界の不条理に、誰も悲しまずに済むような幸せな未来が欲しい。
 誰かの心を豊かにする、人間の育む素晴らしい音楽(可能性)を、もっとたくさんの人々に届けたい。



 そんな願いを抱えて戦う美樹さやかは、大道克己が失くした過去そのもの――幼き日の、自分自身だった。

 ――正しく言えば、今も思い出したわけではない。克己の記憶は本当に、抜け落ち消えてしまっているのだから。
 それでも、変わらず克己の中に響いているこの曲が共鳴したものこそが、在りし日の自分がこのメロディに懐いた祈りだったのだと、そう理解できていた。
 幼き己を知る母と、同じ言葉を掛けてくれた少女の願いこそが、と――



 だから克己は、足掻き続ける。どれだけ絶望的だろうと、幼き日から懐いたままだった望みを叶えるために――明日へ、向かって。

 ――それを阻む敵は強大だが、勝機は実に単純明快な形で存在する。
 一人では足りないのならば、二人で。
 そしてメモリが一つでは足りないのなら、二つで。
 数多のメモリスロットを持つエターナルもまた、克実と同じように、足りない物を補い合える力を持っていた。



 ただ一つ、問題は――それを活かす機会が、見えないことだ。



 さやかがアポロガイストを足止めしてくれているおかげで、エターナルはクウガの相手に専念できている。
 しかし掠めるだけで徐々に蓄積されてきた手足の痺れは、確実にその動作を遅らせ、精密性を損ねて行く。

958W/弱き僕らの祈りの風 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:18:17 ID:XLjNw8AI

 やはり完全に防ぐには、絶対防御のエターナルローブに頼るしかない。だが持久戦ではなく正面からの勝利を目指す場合、自己強化に回すだけなら惜しむ必要はないが、ローブに頼り切るには心許無いメダルしか、今のエターナルには残されていない。

 しかしセルメダルの猶予以前に、打ち合うたびに断裂していく筋組織の修復が、NEVERの再生力を以てしても追いつかない。最低限の使用に止めている絶対防御のローブすらも、徐々に割り込む余裕を無くして行く。

 このままでは遠からず、クウガの攻撃を捌ききれなくなる。
 次に一度でも、芯に直撃を許せば――逆転どころか拮抗すら、もう永遠に作り出せないだろうに。

 そんな事実を意識した瞬間、ふとした考えが過ぎった。

 今のままでは一撃でも受ければ、勝つことは難しい。引き際を誤れば、待っているのは全てを失う敗北だ。
 だが……メダルを補充すれば、彼女を連れて――

「――黙っていろ!」

 とっくに滅びたものが、往生際も悪く残響させていた妄言を、克己は一刀の下に両断する。



 ……心の弱さは、他者を思い遣る優しさを生むと同時に、諦めを齎す悪魔でもある。

 かつてさやかが、その気高さ故に他人の不幸を見ないふりで済ませず、そんな人々を救えない己を許すことができず。蓄積され行く苦い記憶が、明日を求める指針としての後悔を通り越し、押し寄せる闇の澱となって。懐いた祈りを見失い、諦めかけてしまったように。つい先程、克己は心の中の弱さ(悪魔)に屈しかけた。さやかが仲間と信じているアンクを、自身の欲望のために殺そうとしてしまった。
 どうして己は、そこまで目を曇らせてしまっていたのか――



 ――それはきっと、さやかを喪うことを恐れたからだ。



 克己はただ、彼女に覚えていて欲しかった。親子の情を想起させる少女に――死人の身では得られるはずのない、未来への系譜を感じさせてくれた幼き日の自分に。
 ……きっと、あまりにも自分らしくなく。彼女には妙に甘かったのも、そんな感覚のせいなのだろう。
 だから克己は自分だけでなく、彼女を生かすための力を求め、悪魔の囁きに耳を貸してしまうところだったのだ。



 だが、さやかが己の祈りを取り戻して、自身を取り込もうとしていた闇を振り払ったように。結局は克己も、悪魔にはならなかった。

 それこそがさやかに対する裏切りなのだと、他ならぬ守ろうとした相手に気づかされたのだ。
 彼女に受け継いで欲しいのは、誰かの明日を奪うような悪魔の所業ではなく――皆に平和で幸せな明日が来て欲しいという、切なる願いであるはずだと。

 誰かに賢しげに諭されるまでもない。それが叶うわけがない夢だということは、わかっている。
 それでも、最初に誰かがそうなって欲しいと望まなければ、祈らなければ。何も生まれず、始まらない。



 だから。

「おまえもすぐに取り戻してやる……小野寺ユウスケ!」

959W/弱き僕らの祈りの風 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:19:19 ID:XLjNw8AI

 その願いを、どこで聞いた何の歌だったのかももう覚えてない――それでも確かに、心に住み着いていた弱さ(優しさ)が今も歌っているこの曲を、祈りを。己の手で壊すような真似だけはするまいと。克己は強く、強く、決意していた。

 ――少なくとも、さやかの前では。

 あるいは今見せている姿は、偽りなのかもしれない。殺したのは悪魔のような連中ばかりとはいえ、克己はとっくに血に塗れ、罪過を背負った存在だ。そしていつかの未来に、正義の味方に倒されるべき悪魔に成り果ててしまうような輩なのだ。
 なのに、己の姿を綺麗に偽り過ぎてはいないかと、彼女を騙してはいないのかと、そんな疑問が心の内にあることは、無視できない。

 だが――だったら、嘘を、例え嘘でも、貫き通す。
 もしも今の姿が偽りでも、そうさせている願いだけは、疑いの余地なく大道克己の本心なのだ。

 なら、これこそを――誰にも見せられなかった、本当の姿にできるように。失われた過去を、未だ見ぬ明日へ繋ぐために――最後の瞬間まで、足掻き抜いてみせる!

 だからこそ、自由を奪われ、嫌々戦わさせられているユウスケを見捨てて逃げるなど、克己には許されない。
 どんな大義のためだろうと、罪もない他の誰かの明日を奪うこともまた、許されるはずがない。

 そうさせぬために、抗う(戦う)のだから。



 気高き少女の導きにより、己の中の悪魔に打ち克った仮面ライダーエターナル――大道克己は、この時。確かに在りし日の、人間に戻っていた。



 しかし、それでも――それでも、及ばない。

 欲さなければ、望まなければ。何も生まれないのだとしても、それだけでは何も変えられない。
 現実は詰将棋のようにして、徐々に活路が閉ざされて行く。

 まだ凌げている。だが完全には捌ききれない。クウガの打撃が掠める際、接触する面積が増え始めた。じりじりと、足の裏が街路を抉って後退る距離が、伸び始めた。
 勝機を掴むために温存しておくべきメダルの残量すら、限界に達しつつある。

「うぉおぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」
 だとしても。克己は吠えて、足掻き続ける。少しでも前へ進もうとする。
 愚直なまでに。内から響く勇気(メロディ)に、従うがまま。

 叫びを発する顔面を目掛け、急上昇していた拳を弾いた結果、エターナルの体勢が大きく崩れた。三度目の激突が始まってから、エターナルが見せた中では最大の隙。
 当然、クウガは見逃さない。更なる破壊力を秘めたその右足を撓め、超絶の威力を解放する。
 意図して作った隙ではなかった。エターナルでも躱せない。正面からでは、素手で防げるような攻撃でもない。
 だが、エターナルローブを掴むのは、刹那の差で間に合わない。その程度のことは、クウガも織り込み済みだからこその、勝負を決める大振りだ。

 それでも――間に合わないとしても、エターナルは手を伸ばした。

(届け……っ!)

 ここでやられるわけにはいかない。さやかは役目を果たしてくれているのだから。
 克己が何とかしてくれるのだと信じて、自身よりも遥かに強大な悪へと、たった一人で立ち向かってくれているのだから。

 ――幼き己のあの日の勇気に、応えたい。

 そんな想いが、届くはずがない切札に、それ以外にない活路を求めて、エターナルの手を伸ばさせていた。

(届けぇええええええええええええっ!!!)






 ――エターナルローブは、どんな攻撃をも遮断する絶対防御のマントだ。
 ひらりひらりと頼りない所在とは相反し、自身のメモリの効力すら含めありとあらゆる害なる物を無力化し、その身を守り抜く無敵の加護。

 そんな絶対防御のマントが、受け入れるものがあるとすれば、それは即ち――装着者に決して、害を齎すことのないものだけだ。






 そして通り過ぎた風は、ローブの端を微かに持ち上げて。



 クウガの蹴りに先んじて、それをエターナルの指先に引っかけた。

960W/弱き僕らの祈りの風 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:20:44 ID:XLjNw8AI

「――――――ッ!!」
 無我夢中だった。紙一重だった。
 翻すのが刹那の差で間に合ったマントは、エターナルを打ち上げるはずだったクウガの蹴りを見事に無力化していた。

(――この、風は)



 それは、明日の来る方向から届いた風。

 南東の――風都から吹き抜けて来た、風だった。



 圧倒的な超感覚を誇る今のクウガでも、微弱で気まぐれな自然現象である風が――それが届くはずがないのに、決して足掻くことをやめなかったエターナルに、大道克己に味方して。一瞬にも満たない刹那だけ、時を縮める奇跡を起こすなど……完全に予測することは、不可能だったのだ。

(やはり風都は、良い風が吹きやがる――っ!)

 かつてあの街で出会い愛したメロディのために、あの街で懐いた祈りのために戦う大道克己の――仮面ライダーのために故郷から届けられた応援を、どうしてエターナルローブが弾くものか。

 その風によって生まれた、エターナルの限界を超えたたった一度限りの動作は。
 移動に使う足を攻撃に用い、更に正面を完全に遮断されてしまったクウガにその時、一瞬限りの明確な隙を作らせていた。

 ――チャンスは、今しかない。

 勢いを増した風がマントを靡かせ、クウガに対する壁を作っているその影で――克己はエターナルエッジのマキシマムスロットにメモリを差し込み、その秘めたる力を解放する。

《――ETERNAL!! MAXIMUM DRIVE!!――》

 当然、クウガも風が止むまで待ち惚けてくれなどしない。
 風都から届く風を断ち切る烈風と化して、ローブに庇護されていない隙間へと回り込んで来る。
 だが――足掻き続けた末に掴んだ活路はもう、拓けていた。

 ――更に、もう一本。

《――UNICORN!! MAXIMUM DRIVE!!――》

 予めロストドライバーのマキシマムスロットに挿しておいたユニコーンのメモリもまた、その中に秘めたエネルギーを最大にする。

 ……本来、エターナルのマキシマムドライブは物理的な破壊力を持たない。
 しかしそれでもこのメモリは全てのガイアメモリの王者。その秘めたるエネルギーは、他のメモリの追随を許さない。
 本来の用途のために効率化される前の、漏れ出したエネルギーを攻撃に纏わせたという変則使用ですら、他のメモリのマキシマムドライブに匹敵する威力を発揮できる。
 だがそんな不完全な攻撃では、今のクウガには届かない。

「導け、ユニコーン」

 だからここで、ユニコーンの力を借りる。
 ユニコーンのマキシマムによる物理攻撃に、エターナルのエネルギーを同調させる。漏れた物を再利用するのではなく、元より攻撃用の一撃に丸ごと同化させれば、そのエネルギーを直接叩き込むことが可能なはずだ。

 とはいえ、マキシマムの同期発動は本来T2ガイアメモリ全てで同調し、負担を分配して行うもの。単独でエターナルに付き合わなければならないユニコーンのメモリはこれで何かしらの障害が生じてしまうかもしれないが、他に手がない以上は見逃して貰うしかない。
 互いのマキシマムドライブの指向性と、出力をそれぞれ補い合うこの一撃――如何にライジングアルティメットクウガとはいえ、直撃させれば行動に支障を与えられるはずだ。

 番えられていた拳に対し、既に踏み込んで来ていたクウガは回避の間に合わないことを悟ると全身のバネを駆使して更に加速し、先手を取って叩き潰さんとばかりに豪腕を振り翳す。
「――はぁあああああああああああああぁあああぁああああああっ!!」
 応じて克己も、全力を乗せた拳を振り切った。

961W/弱き僕らの祈りの風 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:21:48 ID:XLjNw8AI

 そして、一角馬が王者を導いたツインマキシマム――巨大な突撃槍と化した蒼炎の拳は、燃え盛る彗星と化した紅蓮の拳と交錯し――金と黒へと、同時に到達していた。






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






 さやかの背後で、蒼と紅、夜気を払う二色の炎が、双子の嵐のように吹き荒れた。
「――馬鹿なっ!?」
 それを正面から目の当たりにしたアポロガイストは、さやかに向けていた苛立ちの全てを、驚愕に押し流されていた。
「ライジングアルティメットが――ッ!?」

 背後で響くのは小さく地を揺らし、何者かが派手に転がる音。
 何が起こったのか、さやかには振り返らずとも理解できていた。

 仲間の活躍を誇らしく思いながら、さやかは隙を逃すまいと具現化させたサーベルを投擲する。
 これに気づいたアポロガイストは自身の剣で軽々とさやかの投剣を砕くが、同時、十字に交錯するようにして短い刃物が彼の首元に迫っていた。
「ぬぅ――う、ぉおおおおおおっ!」」
 アポロガイストが雄叫びと共に高速展開した翼は、飛来したエターナルエッジに裂かれながらもその軌道を逸らし、弾き返す。

「……冷や汗を掻かされたぞ、エターナル。だが見よ! ライジングアルティメットは健在なのだ!」
 アポロガイストの宣告に、思わずさやかは視線を巡らせる。
 その先では、左胸の金の装甲を穿孔され流血しながらも、その傷を見る見る塞ぎながら立ち上がろうとする、未だ戦闘続行可能なクウガの姿があった。

 しかしその事実に対して、さやかが臍を噛む暇はなかった。

 それはさやかとエターナルによる連続攻撃を凌いだ自らの勝利を誇示するため、そして傀儡の無事を確認するためにアポロガイストが見せた最大の隙に。クウガが全快するのを待たずに放たれた、一発の銃声が鳴り響いていたからだ。

「な――っ!?」
「……馬鹿が」
 再び驚愕に染まり、声を詰まらせたアポロガイストへ向けられたのは、嘲弄と喜色の入り混じった男の声。
「――アンク!」
 ここぞという場面で手助けしてくれた仲間の名を、さやかは喝采するようにして呼んでいた。

「ち、地の石がぁあああぁぁぁあああああああっ!?」
 アポロガイストが悲痛な叫びを上げると同時。シュラウドマグナムの着弾により、全体に蜘蛛の巣状の亀裂を走らせていた地の石が、砕け散る。
 真黒い水晶のような石が割れた次の瞬間。その全身に小さな稲妻を走らせたかと思うと、アポロガイストを庇いに走り出そうとしていたクウガの体から、闇の波動が放出された。
「うっ……わぁああああああっ!?」
 叫びの直後、クウガはその漆黒の肉体を闇に還したかのようにして、一人の青年の――小野寺ユウスケの姿へと戻っていた。
 ユウスケは自身から放射された力の反動を受けたかのようにして、更にその場でもんどりを打って転がる。
「うっ……みん、な」
 しかし、心配は無用だった。一度ひっくり返った後に放たれた、謝意と気遣いが滲んだその声は、確かに正気に戻った彼の物だったのだから。
 そう……心配は、無用だった。
「……っ、大道さん!」
 小野寺ユウスケに、対しては。

962W/弱き僕らの祈りの風 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:22:27 ID:XLjNw8AI



「……………………えっ?」



 逼迫したユウスケの声に釣られ、視線を巡らせたさやかが見た彼は既に、エターナルへの変身を解いていた。
 しかし生身を晒したその体から、淡い粒子が大気中へと溶け出している――まるで、エターナルへの変身を逆再生しているのかのように。

「……ここまで、か」
 彼自身は、そんな風に溶けていく己の掌を目にして、ポツリとそれだけを漏らした。

「お別れだ、さやか」
「何、言ってんの、よ……?」

 妙に晴れ晴れとした表情で、徐々に輪郭の揺らいで行く克己が告げて来るのに、さやかは掠れた声を返すのが精一杯だった。
 お別れ、だなんて。体が消え始めたからって、何を急に言っているのか、彼は。
 それではまるで……そんな、まさか――克己が、死ぬ? NEVERなのに?

 そこまで考えたさやかの脳裏に、ハッと閃くものがあった。
「克己、メダルをっ!」
 NEVERの正体は、特殊な技術によって生前の何倍にも強化され、蘇生した死人兵士だ。ソウルジェムのような弱点もなく、常人ならば致命傷となるダメージをもあっという間に治癒してしまえる、まさにNECRO OVER(死を越えた者)と呼ぶに相応しい存在。
 しかし、彼らは完全に死の軛(くびき)から解き放たれたわけではない。専用の細胞維持酵素を定期的に摂取しなければ、元の死体に戻ってしまう。
 この場においては、酵素の代わりにメダルが消費される。それが尽きてしまったのが原因なら、自身のメダルを分け与えれば――!

 しかし彼は、無情にも首を振った。

「無駄だ。確かにメダルも切れているが……これはもう、体がダメージで限界なんだよ」
 克己が告げたと同時、さやかともう一人、ユウスケが息を詰まらせた。
「くくっ……ふあーはっはっはっ! そうか! 貴様既に終わっていたということか!」
 そんな中、愉快で堪らないとばかりに笑声を漏らしたのはアポロガイストだ。
 耳障りな声にさやかは思考を怒りへと染め上げられそうになるが、今は克己だ。
 駆け寄ったさやかは治癒魔法を発動しようとするが、その手を他ならぬ克己によって止められる。

「もういい。自分のことは自分が一番よくわかる。おまえだって消耗が激しいんだ、メダルを無駄に使うな」
「――無駄なんかじゃないよっ!」
 さやかは思わず叫び、弱々しくなった彼の手を押し切って、癒しをその体に与えていく。
「あんたに生きていて欲しいって思うのの、何がいったい無駄なのよ!?」
 首輪からメダルを放出する。しかしそうしているのかそうなっているのか、宙に飛び出たセルメダルは克己の首輪に吸い込まれても、すぐに再放出されてさやかの中に戻って来る。
「もういいって言っているだろう」

 さやかの腕を掴む彼の手の力は、一秒ごとに弱まって行く。
 単に弱っているのではない。触れている箇所から粒子と化した克己の一部が漏れ続け、満足に掴むことすらできなくなっているのだ。
 さやかの治癒魔法ですら、その進行を微かに緩めるだけで……大道克己は少しずつ、確実に消え失せて行く。
 なのに、その――意地っ張りの克己らしからぬその優しい声は、優しいままでその力をむしろ、増して行くのだ。

「良くない……!」
 だけどそれは、さやかにとっては何も優しくなどなかった。
「あたしは、あんたに助けて貰ったんだ! 何回も何回も……やっと、仲間らしいことができたと思ったのに、できてなかった……っ!」
 何とかすると言ってくれたから、信じて役目を全うできた――そう思っていたのに。ただ彼に、押し付けただけだった。
 全てさやかが弱かったせいだ。アポロガイストを倒せる力があれば……そこまでは望まずとも、せめてそれまでの戦いで、もう少しだけ彼の負担を減らしてメダルだけでも温存させてあげられていれば――こんなことには、ならなかったはずなのに。

「あんたを、死なせちゃうなんて……まだ何も、返せてないのに……っ!」
 なのに、守られてばっかりで。
 口先では正義ぶって、勇ましいことを言いながら。いつもマミや、克己や、ガタックゼクターや――他の誰かに頼りっぱなしで、肝心な時に役に立たなくて。

963W/弱き僕らの祈りの風 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:23:28 ID:XLjNw8AI

「……もう、十分に助けて貰ったさ」
 なのに克己の声は、そんなさやかを責めることも、疎んじることもなく――ただ、感謝の色に染まっていた。
 それは、足手纏いのせいで今にも消え去りそうな男が浮かべるには、あまりに満ち足りた笑顔だった。

「……おまえがいなきゃ、俺は自分の悪魔(弱さ)に負けていた。おまえという人間のおかげで、俺は自分を取り戻せた――明日を、自分で選べたんだ」
 あれだけ明日が欲しいと口にしていた彼の顔にはもう、生への執着など一切見て取れなくて。
 あれだけ足掻き続けていたその声には、ただ他に道がないからではなく――取り戻した上で自分で選択できたという、それだけのことへの、ただひたすらの充足が溢れていた。

「だから、明日を諦めるなよ? さやか。おまえは確かに、俺に希望をくれた……おまえはまだ、未来を創ることができるんだからな」
「克、己……」
「――ならばそんな未来、今この場で砕いてくれるのだ!」

 慈しむような克己の言葉に、さやかの中で何かが弾けかけたその瞬間――鳴り響いたのはアポロガイストの嘲笑と、銃の吠える轟音だった。






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






「……大道さん――っ!」
 名前を呼ばれて目を向けると、青年――小野寺ユウスケが悲痛に歪んだ顔で息を呑む様を直視することになり、克己は知らず笑みを浮かべていた。
 克己のことをNEVERだと知っているだろうに、彼はさやかに対するのと何ら変わらぬ心配を向けてくれたのだ。
 彼を救えて……彼を見捨てない選択ができて、本当に良かったと克己は思った。

「……これで俺にトドメを刺したのは、癪だがアポロガイストってことになるなぁ」
「克己……?」
 ユウスケに向けた言葉を聞いて、腕の中に抱き寄せていたさやかが訝しむような声を上げた。

「……克己、あんた――っ!」
 視線を巡らせた彼女はきっと、見たのだろう。
 衝撃の後、完全に感覚がなくなった背中の大部分が、銃撃によって消し飛ばされている様を。

 あの時――枯渇寸前のメダルにアポロガイストに一撃加える余力を残すために、クウガの拳をツインマキシマムで打ち負けない程度にしかエターナルローブで防がなかった時点で限界を迎えたこの体はもう、以前のようにアポロガイストの凶弾に耐え得るだけの耐久性すら失っていたのだ。
 さやかを抱きしめている、というよりは……彼女を離してしまえば崩れるしかないのが、今の克己の状態だった。
 それでも……消え去る前の本当の死に損ないでも、こうしてさやかを庇えた上でまだ意識が残っているという幸運を、克己は噛み締める。

「だから、気に病むな。……後は任せたぞ、仮面ライダー」
 かつて自分やさやかを救ってくれたガタックと同じ、クワガタの仮面ライダーに向けて、克己は言う。
 倒れ伏したままだった彼は、一度衝撃に打たれたような顔をした後……震えながらも、確かに頷いてくれた。

 アポロガイストに対抗できる力が残っているのは、彼だけだ。その彼が引き受けてくれたのなら、安心できる。

「なぁにを安心しているのだ!」
「――させるかっ!」
 アポロガイストが再び銃撃して来ようとしたのに対し、ユウスケが叫ぶと同時――アポロガイストの下へと、さやかの手放していたハイパーガイストカッターが急襲した。
「何っ!?」
 攻撃を中断し、飛来した己の楯をアポロガイストが掴んだ次の瞬間、その楯と持ち主の周囲を旋回した蜘蛛型の機械が、吐き出したワイヤーでその全身を拘束していた。

「……良いもの持ってるじゃないか」
 いつの間にやら、ユウスケの着けていた派手な腕時計がなくなっていた。おそらくあの蜘蛛型のガジェットの正体だろう。
 重たいガイストカッターを容易く引き寄せ、更にはアポロガイストの身動きを封じたところを見るに、カンドロイドと比べてもかなり高性能だ。あれがこちらにあれば結果が変わっていた可能性もあったかもしれないが、過ぎたことは仕方ない。

964W/弱き僕らの祈りの風 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:24:57 ID:XLjNw8AI

 仕方ないことを考えるよりも、最後に残された時間を有効に使おうと。克己は手を伸ばして顔の見れる距離を作り、俯いているさやかと向き直った。

「おまえも……後のことは、よろしく、頼む」
「……無理、だよ」
 崩れそうになる体を必死に立たせた克己に、俯いたままのさやかが震える声で漏らしたのは、諦念だった。

「最後まで、結局あたしはあんたに守られてばっかりで……何かできたのだって、全部あんたに頼っただけで……っ!」
「……それでも、変われるさ。おまえは……確かに弱さ(昨日)を抱えたまま、明日を信じることができたんだからな」

 それが、他に道がなかっただけの克己とは違う――さやかの持つ、可能性だ。
 克己が繋げたいと選んだ――本当に望んだ、明日だった。

 告げられたさやかは息を呑み、でも、と言葉を淀ませる。
「あたしは……あんたに願いを諦めさせてまで、明日なんか欲しくなかった……っ!」
 駄々をこねるようなさやかの物言いに、思わず克己は苦笑する。
 相変わらず他の誰かのことばっかり考えて、自分のことを責めている彼女に、克己は力強く言い聞かせた。

「大丈夫だ。おまえは俺を――大道克己という人間を、忘れずにいてくれるんだろ?」
 弾かれたようにして、ようやく面を上げたさやかの見開かれた瞳と、克己は真っ向から視線を交え……その口からかつて聞いた声を、思い返していた。

 

 ――覚えておいてあげるよ、永遠に



 その言葉こそが、克己にとっての救済だった。

 悲しみや過ちが起きたとしても、それを乗り越え、より良い未来を次の誰かへと受け継いで行く。
 命を亡くして、生物ですらなくなった克己が得られるはずのなかったそれこそが。決して終わることなく続く、本当の――――

 そんな救いをくれた少女に対し、胸の内から込み上げる感情を、克己はそのまま表に出した。

「おまえのおかげで、俺はただ死体が動かなくなるんじゃなくて……人として死ねる。それで、満足だ」

 その言葉を吐いた時……きっと、克己はこれまでの人生の中で一番、綺麗に笑えていたと思う。

 しかし、それを確かめる術はもう、残されていなかった。
 既に、何も見えなくなっていた。

 暗闇に閉ざされた視界に、多くは残されていない記憶が、それでも走馬灯として駆け抜ける。

 最初に思い浮かんだのは母の顔。死んだ自分をNEVERとして蘇生し、それからも自分を生きている人間と同じように成長させ、大人にして――こうして誰かを護り、抱きしめるための力をくれた、母。
 克己だけでなく、息子の孤独を思って京水達をNEVERにしてくれた――互いに胸の寂しさを埋め合った、たった一人の肉親。

 NEVERのメンバーや、ミーナ達も……互いに失われていたものを補い合うことで、欠かすことのできない己の一部となってくれた。

965W/弱き僕らの祈りの風 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:25:31 ID:XLjNw8AI

「ありがとな……」

 その全てに向けて口にした感謝の言葉も、既に口腔が消えて、意味のある音にはなっていなかったのかもしれない。
 それでも、克己はその想いを、この声の限りに伝えたかった。
 どこまでも抜け落ちて行く空虚な自分の中身を埋めてくれた、今覚えている、そして忘れてしまってもこの胸に残ってくれていた、全ての出逢いに。

 そして――自らを崩して行く風を感じた克己が、暗闇の孤独の中、映らぬ目で最期にもう一度、見た者は。

「……さやか」

 彼らと同じように――この胸の中で奏でられているメロディを共有してくれた、過去と未来を補い合った……一人の娘の顔だった。

 向いた先は違っていても。今の自分と同じ孤独を感じながら、幼き己と同じ勇気を胸に抱いて戦うと約束してくれた彼女と、出逢えた。

 そんな彼女に、自分はきっと――本当の姿(想い)を、見せることができたはずだ。
 道半ばでも、後に続いて行ってくれる者に、本当に残したかったものを。
 あの時潰えていれば、繋がることのなかったはずの希望を。

 嗚呼――ならきっと、己は、やり遂げたはずだ。

 後は……克己が諦めてしまっていた過去(もの)まで連れて、きっと彼女が、彼女達が、その系譜が……明日に向かって足掻き続けてくれる、はずだから。

 確信となった期待に満たされて、大道克己は既に失せていたはずの瞼をそっと、閉じた。






 ――そして、燃えて消えゆく星のように。

 やがて零れ落ち、かつての夜空(記憶)を失くすのだとしても。
 いつか大地(永遠)を造る一掴みの灰となり、もう一度、青空(未来)へと芽吹く何かを生むために。

 祈りに殉じ燃え尽きた、かつて大道克己だった塵は、明日へ――風都へと駆ける、風に乗って。

 涙に濡れた美樹さやかの頬を、通り過ぎた。






【大道克己@仮面ライダーW 死亡】

966永遠のM/サヨナラの向こう側まで ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:27:21 ID:XLjNw8AI






 小野寺ユウスケの目の前で、大道克己は風に還った。
 人ならざる者と化してしまった己に絶望することなく、その力を悪用することもなく。誰かの自由で平和な明日を護るために戦い続け、見ず知らずの上一方的に攻撃してきたユウスケすら助けるために果てた男。
 翔太郎やフィリップから聞かされていた情報や、ダミーメモリで彼らの記憶から再現された複製とは、まるでその様子が異なる理由などユウスケにはわからない。

 それでも、一つだけ確かなことは。彼は、ユウスケが目にした限りの大道克己は、悪魔なんかじゃなく――紛れもなく、一人の仮面ライダーであったということだ。

 その喪失を惜しみ、彼の死を招いた己を責め立てようとする衝動を、ユウスケは意志の力で捩じ伏せる。今は、感傷に浸っている時ではない。
 何故なら――同じ仮面ライダーとして、託されたのだから。

「ふははははは! これは好い、跡形もなく消え失せるとは、薄気味悪いゾンビにはお似合いの結末なのだ!」

 ――この邪悪から、皆が笑顔で過ごせる明日を、護り抜くという使命を。

 気高き最期を、理解する能力もないまま嘲弄するアポロガイストに対峙して、ユウスケは消耗を無視して立ち上がる。
 全身から発した炎でスパイダーショックを破壊し、その拘束から脱したアポロガイストを同じく怒りに燃えた眼差しで睨む美樹さやかは、しかしまだ立ち直れてはいない様子だった。

 それで良い、とユウスケは思う。こんな奴のために、彼女がこれ以上暴力に訴える必要なんかない。
 罪を背負うのは……こんな奴に好いように操られ、大道克己の死を招いて――笑顔を消してしまった、自分だけで良い。

「……変身」

 決意を乗せて、ユウスケは静かに言葉を紡いでいた。
 これ以上、誰の身も心も傷つかずに済むように――一刻も早く、あの疑う余地のない悪の怪人を、倒すための力を求めて。
 だが、奴は手強い。消耗した今、いつもの姿では届かない。
 なら、ありったけを――――っ!

 そんなユウスケの意志に応えた霊石アマダムが放出したのは、黄金の波動だった。

 金色の霞に包まれたユウスケの肉体は、戦士クウガのものへと変容する。
 一瞬の後に顕となった四本角の禍々しい姿は、あの忌まわしき石の影響によって覚醒した最強の形態。
 しかして、石の所有者ではなく自らの心でそれを制御するクウガの眼は、黒ではなく――常と同じ、暖かな赤。

 例え自分一人が闇に落ちることになるとしても、誰かを笑顔にしたい――友の信じてくれた覚悟によって、己の意志で仮面ライダークウガライジングアルティメットへの変身を遂げたユウスケは、その両足が許す限りの力で地を蹴って、己の意志でアポロガイストへと飛びかかった。

 ――そして、違和感に気づく。

「調子に乗るなっ!」
 先程までに比べて、明らかに遅い、遅過ぎる――そのことに気づいた直後、クウガはアポロガイストが迎撃に疾らせた刃に胴を薙ぎ払われ、撃墜されてしまっていた。
「ぐぁ――っ!?」
 無様に投げ出され、倒れ込んだ上体を起こそうとするが、意志と行動の間に明白なラグを感じる。不快感に手間取っている間に、視界一杯に映り込んだのはアポロガイストの爪先だ。
「大馬鹿者めが。我ら大ショッカーの切札の一つであるライジングアルティメットが敵に回るかもしれん状況で、何故この私が戦略的撤退を選ばなかったのかわからんか!?」
 顔面を激しく蹴り上げられ、ひっくり返っていたクウガに浴びせられたのは、愉悦の滲んだアポロガイストの嘲笑だった。

967永遠のM/サヨナラの向こう側まで ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:28:04 ID:XLjNw8AI

「貴様が支配に抵抗しあの小娘を殺さずに済んだのは、元々そのような地の石の仕様に因るものだ。意識は残したまま我らの傀儡とすることで、貴様ら仮面ライダーの心を苦しめるためのなぁ!」
 身を起こし、拳を振り被ったところにアポロガイストは更に一閃。強固な装甲のおかげで致命傷には程遠いが、力の入らない肉体はそれだけで何歩もの後退を余儀なくされる。
 おかしい。アポロガイストは確かに強敵で、ユウスケも謎の疲労感に襲われてはいるが、無視できないほどではない。なのに、あの仮面ライダーエターナルさえ圧倒したこの姿で……何故、未だ触れることすらできていないというのか?
 
「だが、我らがそのためだけにただ戦力を損ねかねない真似をしたと思っていたのか? 馬鹿め。その仕様の本当の目的は、こういった事態への対策なのだ!」
 そんなクウガの疑問に答えるように、アポロガイストは悪趣味な嫌がらせ以外の真相を口にする。

「何……うぁっ!?」
 アポロガイストが放った銃弾が直撃し、困惑していたクウガは踏み堪えられず仰向けに転がった。
「キングストーンである地の石で常にフルパワーを強制されながら、それを押さえ込もうと支配に抗い続けるということが、どれほど己の負担になっていたのかもわからんか。そして、クウガの力の源であるアマダムが、二つの矛盾した命令や貴様からの要求の変わり様を受けてどれだけ混乱し……その結果が、どうなるのか!」
 苦痛に呻くクウガを力任せに踏みつけて、アポロガイストは見下すままに言葉を吐く。

「今の貴様は肉体こそライジングアルティメットにできても、その力はグローイングに毛が生えた程度しか発揮できん状態にあるのだ!」
 どんな姿でもな、と付け足しながら、アポロガイストは嗜虐的な欲望を隠そうともせずにクウガへの踏みつけを連打する。
 タイタンフォームを遥かに凌ぐ強靭さを得たこの肉体なら、大したダメージにはなり得ない攻撃力だ。だが満足な抵抗も許されずに積み重なれば、高い治癒力を以てしてもいずれ致命となることは明白だ――少なくとも、変身を維持するためのメダル消費は、確実に追いつかなくなってしまう。

「クウガが奪還された際の対策として、そうなるように我ら大ショッカーの優秀な科学者達は調整しておいたのだ。アンクのメダルを奪い、魔人を弱らせ……そしてエターナルも倒した今、弱り果てた貴様を仕留めるなど容易いこと。回復の暇は与えん、このまま処刑してやるのだ!」
(待て……今こいつ、回復の暇は、って……!)
 執拗なストッピングに晒されながらも、クウガは逆転の糸口を求めていた。故に、アポロガイストの漏らした情報を聞き逃さなかった。
 奴の言う通り、この姿でもマイティフォームほどの力を発揮できなくなっていることは明白だ。だがそれも一時的な症状で、回復さえ間に合えば……!

 一縷の希望を見出したクウガは、自らの胸の上に乗っていたアポロガイストの足首を掴む。
 メダル消費に間に合うのかはわからない。だが、混乱に打ちのめされ、何の勝算もなかった頃よりは、遥かに意志の力も蘇って来ている。
 諦めない、彼のように。自分も、仮面ライダーなのだから……!

「ええい、放さんかっ!」
 しかし、やはり肉体はその意志に付いて来れない。
 顔面に銃撃を受ける。視界が揺れた隙に捕らえていた足はあっさりこちらの拘束を抜け出して、右腕ごと再び踏み付けられる。
 そしてアポロガイストが足裏から放出した火炎は、クウガの全身を呑み込んだ。

「ぐぁあああぁあああああああああああっ!?」
 全身を超高温の炎に嬲られながら、更に力強く蹴りつけられる。
 まるで見えたばかりの希望を、蹂躙するかのように。

 負けるわけにはいかない。自分だって仮面ライダーの名を背負っているのだから。
 これ以上、誰かの笑顔が失われるのを見たくないから。
 戦うべき理由がある限り――仲間が呪縛の中から救い出してくれたクウガの心はもう、何者にも屈することはない。
 だが、肉体がそれに付いて来る前に――変身を維持するために残されたメダルもまた、その猶予をじりじりと、目減りさせ始めていた。

968永遠のM/サヨナラの向こう側まで ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:28:56 ID:XLjNw8AI






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






「あっ……あ、わあぁぁぁああああああああああああっ!」
 喪失に座り込んでいたさやかは、予想外の苦戦の末に追い詰められたクウガを見、絶叫とともに弾かれたようにして駆け出した。
 先程までの圧倒的な力を、クウガはまるで発揮できていない――このままでは、成す術なくアポロガイストに殺されてしまう。
 克己が命と引き換えに解放した彼が、明日を奪われてしまう。

 そんなのは、絶対に嫌だった。

「む……ふんっ!」
 しかしさやかの投剣を、アポロガイストは翼を出現させるだけで遮断する。
 それで敵が自ら視界を塞いだ隙に、さやかは自らの体重を切っ先に乗せて飛び掛かったが、翼が開くだけで手にしていた剣までへし折られる――克己のようには、いかなかった。

「いつまでも調子に乗るな、ど素人めが!」
 そして一閃。アポロガイストの刃が、さやかの腰目掛けて振り切られる。
「さやかちゃ――うあっ!?」
 咄嗟にアポロガイストの足を引き、攻撃を妨害しようとしたクウガだったが、それでも刃が少女に届くのを阻みきれなかった。さらには羽撃きを利用して勢いを増したアポロガイストの踏みつけにより、苦嗚と共に再度大地へと沈められる。

 対照的に、切り上げられた衝撃でさやかの痩身は宙を舞っていた。
 それでも急所を狙ったアポロガイストの一撃は、少女のソウルジェムを砕くには至っていなかった。

(ごめん……ガタックゼクターッ!)

 百戦錬磨の大幹部の一振りを狂わせたのは、クウガによる抵抗だけではない。残るの恩人の正体は、さやかの腰で輝いていた銀の帯だ。
 そこに鎮座すべき相棒を失ってからも、その勇姿を忘れまいと身に着け続けていたさやかの気持ちに応えたかのように――今は亡き彼と同様、ベルトもまた、その身を楯に斬撃の進行を微かに遅らせ、さやかの命を守護していた。
 しかし正面から断たれたベルトはさやかの腰から外れ、重力に引かれて地べたに叩きつけられる。
 見事に両断され、二度と身につけることの叶わぬだろう形見を回収する余裕は、今のさやかにはなかった。

「ハイパーマグナムショット!」

 炎を纏った銃弾が、さやかの頬を裂き、髪を一摘み散らして行く。
 追撃の弾幕から、さやかは逃れるのに必死だった。
 いくら再生できるとしても、あのマグナム銃の威力に頭や足を吹き飛ばされてしまえば、露出したソウルジェムは今度こそ砕かれてしまう。

(死んで、たまるか……っ!)

 ここで自分が死ねば。誰がユウスケを助ける。誰が既に戦う力を失くしたアンクを、瀕死のネウロを護れる。
 誰が、克己の最期を――覚えて、いられるのか。

 そんなさやかの意地も虚しく、アポロガイストの射撃は徐々に精度を増して来て――そして大きく外れた家屋を吹き飛ばした。

「――貴っ様、アンクゥウウウウウウウっ!」

 アポロガイストの憤怒の先には、再びシュラウドマグナムを構えたアンクの姿があった。
 地の石はともかく、あれで今のアポロガイストは倒せない――それでも手元を狂わせる程度の力はあった。

 横槍に激怒したアポロガイストは、踵を返して物陰に隠れようとするアンクへと応射を開始した。生半可な物陰では意味のないことを知っているアンクが逃げ惑うのを、戦車すら破砕する銃弾がひたすらに追っていく。
「やめろ……っ!」
 今度は足を押し除けたクウガが手を伸ばした。アポロガイストの銃を払い飛ばすと、巨体を壁にするようにして立ち塞がる。
 しかしただでさえ劣化していた力は、度重なる暴行によって更に損なわれていた。アポロガイストの猛攻に抗えず、クウガは瞬く間に膝を着く。
「どいつもこいつも邪魔ばかりしおって……まぁ良い。どうせ奴らではこのハイパーアポロガイストは脅かせん。当初の予定通り、まずは貴様から処刑してやるのだ!」
 改めて標的をクウガに絞ったアポロガイストの宣告に、さやかは再び飛び出しそうになる己を必死に抑えた。

 奴の言う通りだ。ガタックを失ったさやかやアンクが今可能とする攻撃では、精々手元を狂わせるだけ。弱り果てた今のクウガと比べてなお劣るような力では、アポロガイストを倒すことなどできはしない。

969永遠のM/サヨナラの向こう側まで ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:29:34 ID:XLjNw8AI

 だが――切札はまだ、ある。
 ガタックゼクターの形見が思い出させてくれた、そして克己が何度も見せてくれた、正義の力が。

「……お願い、力を貸して!」
 銃撃の止んだその隙に、さやかは飛び出す前の位置――克己が果てたその場所にまで、駆け戻って来ていた。

 手にしたのは克己が腰に巻いていたロストドライバーと……自らに支給されていた、翡翠のパッケージ――T2ユニコーンメモリだった。
《――UNICORN!!――》
「なっ、貴様……!」
「変身!」

 ガイアウィスパーの囁きに、クウガから目を離したアポロガイストが驚愕の声を晒す前で――さやかはメモリを、身に着けたロストドライバーへと挿入する。
《――UNICORN!!――UNICORN……UNICOR……UNI……》
「――どうして!?」

 変身は、できなかった。
 もう一度挿し直しても、直に肌に押し付けても。ユニコーンは無意味な電子音を漏らすだけで、さやかに力を貸し与えてなどくれない。魔法少女への変身を解き、生身で試しても同様だ。

「ふふ……はーっははは! 焦らせおって! 所詮貴様のようなゾンビの小娘が、仮面ライダーの力に相応しいわけがないのだ!」

 そんなさやかの戸惑いと徒労を、アポロガイストは無様と嘲笑った。



 ――無論、ユニコーンメモリがさやかを変身させなかったのは、彼女を拒否していたからではない。
 ユニコーンは、エターナルと一対一でツインマキシマムを発動するために、メモリの王者の出力に釣り合いを取ろうとした。
 結果マキシマムドライブにメモリが特化し過ぎた弊害として、一時的に変身能力に不調を来たしてしまったというのが真相だ。

 だが、そんな事実を知る者は、この場にはおらず。

「……仮面ライダーの力にも見放された惨めな小娘よ、そこで己が無力を噛み締めているが良いのだ!」
 故にアポロガイストの嘲弄も、その後に暴力に晒される者を救えぬ己の無力さも、徹底的にさやかを打ちのめしていた。

「――お願い……!」
 それでも。
 どんなに打ちのめされても、今のさやかは、ただで絶望に屈しはしなかった。

「お願いだから、あたしに力を貸して……! このままじゃ、あの人が殺されちゃう!」

 どんなに惨めだろうと、無様だろうと。さやかは仮面ライダーの力を与えてくれる記憶の結晶に、正義のための力を懇願していた。
 足掻くことができる限りは、できる限りのことを尽くそうと決めていたからだ。

「そんなの、許せない……ずっと覚えていて欲しいっていう克己の望みを、あたしはこんなところで終わらせたくない!」

 それは、彼の思い出させてくれた祈りと――彼と交わした忘れえぬ約束が、今も力強くこの胸に響いていたからだ。

970永遠のM/サヨナラの向こう側まで ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:30:10 ID:XLjNw8AI

 しかし、どんなにさやかがそれを求めても、ユニコーンが応えようと望むも。願うだけでは、物理的な不調まではどうしようもない。
 魔法少女なのに、奇跡も魔法も呼び起こせないのか――そんな無力感が、気づけばまたも雫となって頬を伝う。

「あたしはあいつの、あいつの想いを、永遠に……っ!」

 どんなに願えども、それは叶わないのかと――――涙に声を詰まらせた、その、瞬間。



 ―――――――夜を染め上げるようにして輝く、蒼白い光が生まれた。



「何ィッ!?」
 あまりの眩さに、再びアポロガイストがクウガから目を逸らした時には――その発光体は、自らさやかの掌に収まっていた。

 その中心に刻まれた、無限回廊を思わせる意匠の凝らされたアルファベットを目にしたさやかは――悲しみや恐怖とは異なる感情に、もう一度だけ涙を流す。

「……ありがとう」

 ――認めて貰えたのだ、自分は。

 克己やガタックゼクターだけでなく……共に戦っていた、この子にも。
 さやかの願いは――人々の記憶に残され、永遠に受け継がれて行くべきものなのだと。

 なら、そのためにこそ戦おうと。
 昨日の弱さを抱えたまま、信じた明日を掴めるように。
 未熟を言い訳に誰かに守られてばかりだった自分から、この瞬間今度こそ変わってみせようと――さやかはその覚悟を表明するための言葉を、全霊を以て宣誓した。

「――変身ッ!!!」
《――ETERNAL!!――》

 ドライバーを介してメモリと一体化したその瞬間、力強く高らかに歌い上げられたのは、彼が願った夢。
 叶うはずのない理想を、それでも胸に足掻き続けて――少しでも昨日よりも素敵な今日を、そして未だ見ぬ明日を作って欲しいという望み。
 忘却の炎に焼かれ、記憶の内から忘れ去られても、なお灰から再生して人々の魂に受け継がれて行く尊き祈りを、途絶えさせることなく守るための力が――さやかの中に、満ち溢れて行く。

 逞しく伸びた白い四肢を彩る紅の炎が、蒼へとその色を変え――白い装甲が剥き出しだった手足や胸に、仲間と力を合わせるための帯が巻きついて。
 新たな希望の誕生を祝福するかのように吹く風が、肩から出現した黒いローブを翻す。

「克己は死んでない、死なせるもんか! あたしがあいつを永遠にするって……そう、約束したんだから!!」

 叫び終えると同時、さやかの顔を白い兜が覆い尽くし――――――ここに、仮面ライダーエターナルブルーフレアが再誕した。

971永遠のM/サヨナラの向こう側まで ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:30:58 ID:XLjNw8AI






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






 君が抱きしめているのは
 あの日の約束、一つ。






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






「馬鹿な、小娘如きが仮面ライダーに……っ!?」
 弱り果てたクウガへの暴行を止め、喫驚するアポロガイスト。

 しかし己の半身となった存在が覚えたのと、アンクが打たれた驚愕はまったく別のものだった。



 ――おまえのおかげで、俺はただ死体が動かなくなるんじゃなくて……人として死ねる。それで、満足だ



(……死んだ?)

 ただ、動かなくなったのではなく。
 ただ、消え去ったのではなく。

 元より命を無くしていた死人が、単なる化学反応の結果でもう一度動けるようになっただけで。
 次々と人間性を欠落し、そこにある花の美しさにも、暖かな日差しにも、熟れた果実の味にも……何も感じない、そこにあるだけの単なるモノに、自分達グリードに近づいていたあの大道克己が、死んだ、というのか。

 ――死んだことに、満足したと言ったのか。

 戦える力が残っていないからと、地の石を破壊した後再び距離を取っていたアンクはしかし、思わず身を乗り出してしまっていた。
 永遠を求めていた克己が最期に残した言葉は、アンクにとってそれほどの衝撃だった。

「……それがあいつのおかげ、だと?」

 克己が消えたのではなく死んだのは、あのどこか苛立たしくも扱い易い、馬鹿な娘によるものだというのか。
 魔法少女とは言え、何か特別な奇跡を持っているわけでもない美樹さやかが――大道克己に、命を与えたというのか。

 気がつけば、危険だというのにもう一度だけ手を貸してしまっていた――さやかの力で状況を打開できるはずなど、ないとわかっているのに。もう少し、彼女のことを見ていたくて。
 だがアンクが再び身を潜める間に、無視できない言葉が、もう一つ……さやかの口から、吐き出されていた。

「克己は死んでない、死なせるもんか! あたしがあいつを永遠にするって……そう、約束したんだから!!」

 そんな絶叫が、再びアンクを射抜き、身を乗り出させていた。
 彼は完全に消滅した。ただ消えただけなのか、死んだと言って良いのかはともかくとして、その存在が終わりを迎えたことは疑う余地もない。
 なのにさやかは、克己は死んでいないなどというのだ。

 それを、単なる逃避だと謗るのは簡単だ。無意味な気休めでしかないなどと、これまでのアンクなら人間の愚かさを笑うところだっただろう。
 しかし……グリードに近しい存在となっていた、克己の生命の有無と満足に関わるというのなら、話は別だ。

 ましてそれが、単なる命ではなく――『永遠の命』だと言うのなら。

972永遠のM/サヨナラの向こう側まで ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:31:45 ID:XLjNw8AI

 死ねることに――命あることに満たされたと、あの克己が漏らす一方で。それが約束なのだと、さやかが永遠を謳うそれは。

 それこそが――――アンクの果てなき欲望を満たす、一つの光明なのではないのかと。

 思わず、もう一歩。アンクはエターナルに変身したさやかへと近寄る。

 命を求める欲望の化身は、そこに命への、新たな可能性を見出していた。






 そして、今一人の人外――“謎”を喰らう魔人は、そこに進化と、一つの解を見出した。



「……我が輩は、何と愚かな思い違いをしていたのか」

 彼女は、桂木弥子ではなかった。

 美樹さやかを護り進化に導くのは、脳噛ネウロではなかった。

 弥子の死の負い目を本当に感じているのは、さやかではなかった。
 人間を魔人が救ったのではなく、魔人を救ったのが人間だった。
 人間とは、既に――魔人に食料源として護られるだけの存在では、なくなっていた。

「素晴らしいぞ、人間よ」

 そして、さやかが克己を受け継いだように。
 人間だとか、魔人だとか。何の役に立つとか立たないとか、それが得だの損だのと言った理屈などなく。託す託さないですらなく。



 相棒の命を受け継いだのは、結局のところ……相棒でしか、なかった。



「よくぞこの、愚かな魔人の目を覚まさせた……!」



 本気だの全力だの言ったところで……結局ネウロは、恐れて虚勢を張っていただけだ。何より恐怖していたのだ――再び敗北し、失うことを。
 生まれて初めての敗北は、自分でも気づかないような、しかし確かな折れ目を脳に残していた。
 
 だが、人間は。敗北すらも、喪失すらも超えるほどに強かった。一つの命に与えられた時は短くともそれを無為にせず、更には先人を礎に悠久を歩み、足掻き、前に進み続けていた。誰に何を言われるまでもなく、進化し続けていた。種族と性別しか似ていないような相手に、みっともなく喪った影を重ね縋っていた魔人に心配される筋合いなど、どこにもなかった。

 ……そもそもこの胸に空いた穴は、そんな簡単に替えが効くような、安い物ではなかったというのに。要らぬことにばかり、気を回し過ぎた。

 ならば、どれもこれもを保護(まも)らねばなどという、余計な気遣いはここまでだ。

 これより魔人探偵脳噛ネウロの――自分自身が欲する望みのためだけに、我が身に許される全ての力を費やそう――!!

「魔帝7つ兵器(どうぐ)………………!!」

 笑えるほど時間を要する切札の召喚を始めながら、ネウロは瓦礫の中から這い出した。

 タイムリミット、などと……もっともらしい言い訳で、自分自身すらも騙したその脳髄の欲望を、満たすために。

 ――一度折れた脳こそが、強くなるチャンスを秘めているのだから。

973永遠のM/サヨナラの向こう側まで ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:32:28 ID:XLjNw8AI






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






 運命を受け継ぎ、エターナルへの変身を果たした直後。一瞬だけ目を閉じ、記憶を確かめたさやかの脳裏を過ぎったのは――微かな寂寥を滲ませた彼と交わした、約束だった。

 ――せめておまえは忘れるな。何もかも

「忘れないよ。絶っ対に忘れない……誰のことも、絶対にっ!」

 見開いた目で、仮面越しに討つべき邪悪を見据えて――鮮明に思い出したその言葉に、さやかは本心からの返答を吐き出した。

 失敗して迷惑をかけて、嫌われるのが怖くて、言い訳ばかりしていた駄目なさやかでも、克己は必要としてくれた――ただ、さやかという少女の魂に、覚えていて欲しいからと。
 まどかや仁美だって、別にさやかがマミのように完璧だから一緒に居てくれたんじゃなくて――ただ、他の誰でもない美樹さやかという一人の少女を好いて、ただの級友ではなく親友になってくれたはずなのだ。
 魔法少女や、ムードメーカーや、正義の味方や――そんな、言い訳(メッキ)ではない、本当のさやか自身を、見て。

 だから…………そんなものに振り回されるのは、もうやめよう。
 彼が届けたかった音楽は、祈りは――そんな、過ちを隠した上っ面だけじゃなくて。
 輝きも穢れも等しく抱えたさやかの心にこそ、響いて欲しかったもののはずだから。

 自分を良く見せようという、言い訳のためではなく。ただ、この震えている胸が、さやかが経験した何もかも――さやかを構成する全ての中から迷い傷つき、それでも他ならぬさやか自身が愛して選び取った、祈りのために。
 見て聞いて感じた昨日を、明日へ繋いで見せるために。さやかは今日を、足掻き抜くのだ。
 克己達のように。誰かのためでも、誰かのせいでもなく――自分自身の、そうなって欲しいという望みのために。

「――忘れさせて、たまるかぁああああああああああっ!!」

 抱きしめた約束を守りたいという願いのまま、この声の限りに叫びを上げて。

 克己に。まどかに。仁美に。
 そしていつか繋げる、まだ知らぬ誰かに――サヨナラの向こう側まで、心の中で響いているこの曲が、届くように。



 エターナル=さやかは、未来を描くために。仮面の下に隠された涙も乾かぬまま、目の前の道を走り出した。






【二日目 深夜】
【F-3(北東端) 市街地】

974永遠のM/サヨナラの向こう側まで ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:32:58 ID:XLjNw8AI


【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【所属】青
【状態】健康、決意、杏子への複雑な感情、X及びアポロガイストへの強い怒り、仮面ライダーエターナルブルーフレアに変身中
【首輪】25枚:0枚
【コア】シャチ(放送まで使用不可)、ワニ(放送まで使用不可)
【装備】ソウルジェム(さやか)@魔法少女まどか☆マギカ、NEVERのレザージャケット@仮面ライダーW、T2エターナルメモリ+ロストドライバー+T2ユニコーンメモリ@仮面ライダーW
【道具】基本支給品、克己のハーモニカ@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本:克己の祈りを引き継ぎ、正義の魔法少女として悪を倒す。
 1.皆を守るために、アポロガイストを倒す。
 2.事態が落ち着いたら、小野寺ユウスケと情報交換したい。
 3. アンク達と一緒に悪を倒し、殺し合いを止める。
 4.克己やガタックゼクターが教えてくれた正義を忘れない。
 5.T2ガイアメモリは不用意に人の手に渡してはならない。
 6.財団Xの男(加頭)とはいつか決着をつける
 7.マミさんと共に戦いたい。
 8.少なくとも、暁美ほむらとは戦わなければならない。佐倉杏子は……?
【備考】
※参戦時期はキュゥべえから魔法少女のからくりを聞いた直後です。
※ソウルジェムがこの場で濁るのか、また濁っている際はどの程度濁っているのかは不明です。
※回復にはソウルジェムの穢れの代わりにメダルを消費します。
※NEVER、グリード、ネウロ関係に関する知識を得ました。
※アンク、ネウロが魔女について知っている事は知りません。
※佐倉杏子の、アンクから伝え聞いたこの場での活躍と、自身の見た佐倉杏子の差異に困惑しています。
※エターナルの制限については、第81話の「Kの戦い/閉ざされる理想郷」に続く四連作を参照。
※T2ユニコーンメモリはツインマキシマムの影響で一時的に変身機能を失っています。具体的にいつまで不調が続くのかは後続の書き手さんにお任せします。


【アンク@仮面ライダーOOO】
【所属】赤・リーダー
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、覚悟、仮面ライダーへの嫌悪感、『王』への恐怖と憎悪、さやかと克己のやり取りへの非常に強い興味
【首輪】50枚:0枚
【コア】タカ(感情A)
【装備】シュラウドマグナム+ボムメモリ@仮面ライダーW
【道具】基本支給品×5(その中からパン二つなし)、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、大量の缶詰@現実、T2ジョーカーメモリ@仮面ライダーW、不明支給品1〜2
【思考・状況】
基本:映司と決着をつけ、その後は……
 0. アポロガイストに対処する。
 1.『王』が背後にいるのなら、素直に優勝を目指すつもりはない、が……
 2.もう一人のアンク、及びアポロガイストのメダルを回収する。
 3.すぐに命を投げ出す「仮面ライダー」が不愉快。
 4. Xへの殺意、次に会った時は容赦しない。
 5.ネウロへの警戒。場合によっては肉体の真実を明かし、牽制する。
 6. 杏子を復活させられる人材とメダルを準備したい。
 7. 事態が落ち着けば小野寺ユウスケと情報交換したい。
 8. 克己は、さやかのおかげで死ねた……?
【備考】
※本編第45話、他のグリード達にメダルを与えた直後からの参戦
※翔太郎とアストレアを殺害したのを映司と勘違いしています。
※コアメダルは全て「泉信吾の肉体」に取り込んでいます。
※参加者毎に参戦時期の差異が生じることに気づきました。
※アポロガイストのグリード化、及び所持メダル数の逆転により、グリードとしての力が弱まっています。
※ネウロにコアメダルを破壊することができる能力があると推察、警戒しています。
※『王』と真木の結託に何かしら裏があり、それが主催陣営の弱点になるかもしれないと予想しています。

975永遠のM/サヨナラの向こう側まで ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:33:32 ID:XLjNw8AI


【脳噛ネウロ@魔人探偵脳噛ネウロ】
【所属】黄
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、高揚、「二次元の刃」召喚中、右肩に貫通創、ボロボロの服
【首輪】25枚(消費中):0枚
【コア】コンドル:1(放送まで使用不可)
【装備】魔界777ツ能力@魔人探偵脳噛ネウロ、魔帝7ツ兵器@魔人探偵脳噛ネウロ
【道具】基本支給品一式×2、弥子のデイパック(桂木弥子の携帯電話+あかねちゃん@魔人探偵脳噛ネウロ、ソウルジェム(杏子)※黒ずみ進行度(中)@魔法少女まどか☆マギカ、 衛宮切嗣の試薬@Fate/Zero)赤い箱(佐倉杏子)
【思考・状況】
基本:己の欲望を満たす
 0. 「二次元の刃」でアポロガイストを倒す。
 1.さやかの進化に感心。
 2.怪盗Xに今度会った時はお望み通り“お仕置き”をしてやる。
 3.アンクをメダル補充の為殺す準備も必要……か?
 4. 佐倉杏子を復活させられる人材とメダルを準備したい。
 5. ラウラ・ボーデヴィッヒを探し出し、ウヴァに操られていないかを確認する。ウヴァが生きている場合は丁重にもてなした後コアを砕く。
 6. ラウラやウヴァについて、可能ならインキュベーターから情報を搾り取る。
【備考】
※DR戦後からの参戦。制限に関しては第84話の「絞【ちっそく】」を参照。二日目0時時点での維持コストはセルメダル1枚です。
※魔界777ツ能力、魔帝7ツ兵器は他人に支給されたもの以外は使用できます。しかし、魔界777ツ能力は一つにつき一度しか使用できません。
 現在「妖謡・魔」「激痛の翼」「透け透けの鎧」「醜い姿見」「禁断の退屈」「花と悪夢」「無気力な幻灯機」「惰性の超特急5」「射手の弛緩」「卑焼け線照射器」を使用しました。
※ノブナガ、キュゥべえ、アンク、克己、さやかと情報交換をしました。魔法少女の真実を知っています。
※杏子のソウルジェムについては第131話の「悩【にんげん】」を参照。
※体の維持が少しずつ困難になってきています。メダルの枚数の為なのか、最早メダル関係無しに限界なのか、弥子の命の炎ではネウロの体にパワー不足が生じているのかは不明です。
※コンドルメダルはアンクだけでなくここにいる全員に秘匿中です。
※参加者毎に参戦時期の差異が生じることに気づきました。アンクから聞いた情報によっては、ノブナガと映司にはそれ以上のものが発生していると気付いているかもしれません。
※「二次元の刃」でコアメダルを破壊することができると予想しています。
※『王』と真木の結託に何かしら裏があり、それが主催陣営の弱点になるかもしれないと予想しています。
※さやかの成長を目撃したことで、セルメダルが増加しました。


【小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】
【所属】赤
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、精神疲労(大)、克己を殺めてしまった罪悪感、仮面ライダークウガライジングアルティメットに変身中、地の石への抵抗による消耗、アマダムの不調
【首輪】20枚:0枚
【コア】クワガタ(次回放送まで使用不能)、カンガルー(次回放送まで使用不能)
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
基本:みんなの笑顔を守るために、真木を倒す。
 0. 大道さんを殺してしまった……
 1. アポロガイストを倒す。
 2. 事態が解決したら、さやか達と情報交換後、B-4に戻って千冬、切嗣達と合流する。
 3.井坂、士、織斑一夏の偽物を警戒。
 4.士とは戦いたくないが、最悪の場合は戦って止めるしかない。
 5.千冬さんは、どこか姐さんと似ている……?
 6. 大道克己の変わり様が気になる。
【備考】
※九つの世界を巡った後からの参戦です。
※ライジングフォームに覚醒しました。変身可能時間は約30秒です。
 しかし千冬から聞かされたのみで、ユウスケ自身には覚醒した自覚がありません。
※ライジングアルティメットクウガへの変身が可能になりましたが、地の石の支配に抗っていた反動からの消耗及びアマダムの不調により、暫くの間は本来の力を発揮できません。
 反動が続く具体的な時間は後続の書き手さんにお任せします。

976永遠のM/サヨナラの向こう側まで ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:34:04 ID:XLjNw8AI


【ハイパーアポロガイスト@仮面ライダーディケイド】
【所属】赤
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)
【首輪】50枚:0枚
【コア】クジャク(感情:アポロガイスト)、タカ(十枚目)、クジャク:1、コンドル:2、パンダ(次回放送まで使用不可)
【装備】龍騎のカードデッキ@仮面ライダーディケイド
【道具】基本支給品
【思考・状況】
基本:生き残る。
 0. 小娘の変身したエターナルに対処する。
 1.リーダーとして優勝する為にも、アンクを撃破して陣営を奪う。
 2. アンクの仲間もこの場で全員殺す。特にクウガは力を回復する前に殺す。
 3.ディケイドはいずれ必ず、この手で倒してやるのだ。
 4.真木のバックには大ショッカーがいるのではないか?
【備考】
※参戦時期は少なくともスーパーアポロガイストになるよりも前です。
※アポロガイストの各武装は変身すれば現れます。
※加頭から仮面ライダーWの世界の情報を得ました。
※この殺し合いには大ショッカーが関わっているのではと考えています。
※パーフェクターは破壊されました。
※ドラグブラッカーが死亡したため、龍騎のカードデッキからドラグブラッカーに関わるカードが消滅しました。
※クジャクメダルと肉体が融合しました。
 グリード態への変化が可能な程融合が進んでいますが、五感の衰退にはまだ気付かず、夜目が悪くなった程度にしか思っていません。そのため自分が受けたダメージが体感以上であることにまだ気づいてはいません。
※大道克己=仮面ライダーエターナルを、仮面ライダークウガを用いて死に追いやったことでセルメダルが増加しました。



【全体備考】
※地の石@仮面ライダーディケイド、スパイダーショック@仮面ライダーWが破壊されました。
※E-4南東端にキュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ(ネウロの支給品だった個体)が存在しています。
※F-3北西端の市街地に克己のデイパック{基本支給品、NEVERのレザージャケット×?-3@仮面ライダーW、カンドロイド数種@仮面ライダーOOO}、ライダーベルト(ガタック)の残骸が放置されています。






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






 ……僕の心に 住み着いていた 弱さが今も歌っている



 忘れぬmelody 未だ見ぬ景色 明日を越えてあの場所で……

977 ◆z9JH9su20Q:2015/03/17(火) 23:51:17 ID:XLjNw8AI

以上で仮投下分終了となります。
>>944以降タイトルをつけておりますが、名前欄に入りきらなかっただけでそれぞれ冒頭に『sing my song for you〜』が付く形となります。

仮投下を通した理由としては主に二点、クウガ及びエターナルの作中の描写となります。

まずクウガについてですが、原作における『複数のライダーを圧倒したかと思うと、生身の人間一人満足に倒せず、一主役ライダーであるWに瞬殺されるDCD版シャドームーンに圧倒される』という展開の理由付けを本SS独自で行っているため、仮投下を行う必要があると判断しました。
つまり、『設定通り複数の仮面ライダーを圧倒し得る、アルティメットフォーム以上の戦力』ですが『生身の人間を攻撃する際には操られているユウスケが抵抗し力を発揮できない』上で、『大ショッカーが裏切り対策に洗脳解除直後はほとんど力を引き出せないよう調整している』という拙作中での扱いです。
矛盾はないかと思いますが、原作で一切言及されていない点についての独自解釈のため、判断を仰ぐ必要があると判断しました。

次はエターナルについてですが、こちらも『エターナルメモリと他のT2一本でのツインマキシマムでは、T2側に負荷がかかり機能に障害が生じる』という独自設定を拙作中に盛り込んでいます。
これは一切ドーパント態、及び仮面ライダーとしての設定がないユニコーンメモリを原作通りマキシマムドライブ発生用のメモリとしてしまうために盛り込んだ設定となりますが、こちらについても通しで良いか判断を仰ぐべきだと考えました。

上記以外にも何かしらご意見・矛盾点等ありましたらご指摘の方よろしくお願い致します。

978 ◆z9JH9su20Q:2015/03/18(水) 20:41:53 ID:MmHdKN6w
すいません、二点ほど
>>950は私の不注意による>>949の多重投稿になります、無意味な消費をしてしまって申し訳ありません。
次に>>944->>953の小タイトル、「【Y】/こころにすみついていたもの」ではなく「Y【こころにすみついていたもの】」に修正します。

それと別件ですが、◆m4swjRCmWY氏の「湖が赴いた丘」において、鈴羽も緑陣営に復帰しているはずなので修正をお願いできれば、と思います。

979 ◆m4swjRCmWY:2015/03/18(水) 20:52:36 ID:UTL4Oook
了解です、後ほどwikiにて修正しておきます

そして「Y【こころにすみついていたもの】」ですが、特に問題はないと思われます
過去話との矛盾もないですし、大丈夫かと

980 ◆VF/wVzZgH.:2015/03/19(木) 07:16:20 ID:OyFZ8Rv.
仮投下乙です。
凄まじい力作ですね……、自分も問題はないかと。

あと、全く関係の無い私的な質問なのですが、今回のように分割をする場合、
どの程度の量でどの程度の分割が必要になる、などの目安はあるのでしょうか?
今聞くべきではないかもしれませんが、前々から気になっていることなので、もしよろしければお教えください。

981 ◆z9JH9su20Q:2015/03/19(木) 23:55:21 ID:lSTp.hQ6

両氏ともご意見ありがとうございます。
ただ、時間を置いてみるとエターナルの件についてはさやかとの間に運命のガイアメモリとしての絆が構築されてしまったという形で、原作の設定のみで同じ展開にできるんじゃないかと考え直したので、これより行う本投下の際にはそういった形に修正しようと思います。

>>980
多数派の目安としては、約30KBが分割の基準となっていますね。
少し前までのアットwikiの仕様として一ページがそこまでの容量しか入れられなかったので、だいたい一ページの文章が長くても30KBということになり、
以後仕様が変更されて上限が増えてもそれ以前のSSとの整合性や、慣習としてその程度で分割されることが多くなっています。
ただある程度は自分で切りたいところで切ってしまっても問題ないとかと思います。
例えば拙作でも分割する際の幅が話の転換点になるようにした場合、容量的には同じ40KBほどのSSでも分割したりしなかったりしていますので、現在は30KB前後に拘る必然性は薄いとも思います。

982 ◆VF/wVzZgH.:2015/03/20(金) 22:12:49 ID:OIVlDAWQ
ご返答ありがとうございます。
なるほど、ある程度なら自分で区切ってしまっていいんですね、勉強になりました。

あと、指摘……になるのか分かりませんが、その修正は待ったをかけさせてもらいたいかと。
今まで、さやかの運命のメモリはユニコーンであるという様な文章は多々見られてきたかと思います。
(ユニコーン初登場時の会話や、ガタックゼクター登場時の推測など)

そういった描写を蔑ろにしてまでエターナルをさやかの運命のメモリとして設定するのは色々もったいないかなぁと。
そういった意味では個人的には修正前の理由の方がいいかなと思ったので本投下の前にご一考頂ければと思います。

983 ◆VF/wVzZgH.:2015/03/20(金) 22:33:08 ID:OIVlDAWQ
……と言っておいて何ですが、もう本投下されてたんですね……すいません。
本投下後の指摘は正直面倒だとは思いますが、こういった意見もあるとご一考頂ければ幸いです。

984 ◆z9JH9su20Q:2015/03/21(土) 00:41:44 ID:lmcwjZoY
◆VF/wVzZgH.氏、ご意見ありがとうございます。
氏の仰ることは自分も最初考えていたのですが、やはり原作にある設定だけで説明がつけられるのならそれで済ませるべきだと判断しましたので、申し訳ありませんが本投下での形で通させて貰えたらと思います。
氏のご意見にお応えできる形になるかはわかりませんが、wikiに収録する際にはもう少しユニコーンとの適合率についても言及する文章を追加しようかと思います。よろしくお願いします。

985 ◆VF/wVzZgH.:2015/03/21(土) 10:32:50 ID:r5rMpIIc
ご返答ありがとうございます。
氏の意見は把握いたしました。
少しでも私の意見を取り入れていただけたなら幸いです、こちらこそありがとうございました。

986 ◆z9JH9su20Q:2015/08/12(水) 22:57:59 ID:1oGmGZtY
拙作『そんなあなたじゃないでしょう』のミスを発見しましたので、こちらに修正の報告を。
>>232のマミさんの台詞、及びイカロスの状態表における目的地がD-2となっていますが、正確にはD-4でした。
推敲不足のまま投下・収録してしまい、大変ご迷惑をお掛けしました。謹んでお詫び申し上げます。

987 ◆2kaleidoSM:2016/01/27(水) 22:10:53 ID:yX9fKWoY
『戦いの果てに待つものはなにか』において指摘を受けた口調の修正です
本スレ>>319

「私、この場所にきて数時間くらいの頃だったかな。似たような状況に遭遇したわ。
 友好そうな顔で近寄ってきて襲いかかられたことが。 と言っても、そいつすごく雰囲気がおかしかったからすぐにヤバイやつだって気付いたんだけど。
 でも逃げられなくて、仲間が、そはらが殺されたの」

「私、この場所にきて数時間くらいの頃だったかな。似たような状況に遭遇したの。
 友好そうな顔で近寄ってきて襲いかかられたことが。って言っても、そいつすごく雰囲気がおかしかったからすぐにヤバイやつだって気付いたんだけど。
 でも逃げられなくて、仲間が、月見そはらが殺されたの」

また、鈴羽のそはらに対する二人称とIS名称についてはwikiにて修正しておきます

988欲望まみれの名無しさん:2016/01/29(金) 07:50:32 ID:9YrUECwM
>>987
修正お疲れ様です
指摘された部分はもう問題ないかと思います

989こいつのコアは砕かれた:こいつのコアは砕かれた
こいつのコアは砕かれた

990欲望まみれの名無しさん:2016/04/22(金) 17:26:22 ID:uCXvOSVo
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991欲望まみれの名無しさん:2016/04/28(木) 23:44:27 ID:k0e.tWyc
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992欲望まみれの名無しさん:2016/05/10(火) 15:10:35 ID:y3VaUc0g
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993欲望まみれの名無しさん:2016/05/13(金) 03:03:22 ID:yEWbivSc
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994 ◆z9JH9su20Q:2016/08/19(金) 22:44:11 ID:79JleSwY
予約分について、一度議論を通すべき要素があると判断したので仮投下を行います。
但し、このスレッドの残りレス数では投下しきれないので、新スレを用意させて頂きます。よろしくお願いします。

995 ◆z9JH9su20Q:2016/08/19(金) 22:47:16 ID:79JleSwY
新スレを用意しました。
以後の修正、仮投下分の投下については次のスレッドのご利用をお願いします。
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