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アニメキャラ・バトルロワイアルV

118 ◆J5IZ9694XQ:2019/05/22(水) 00:59:08 ID:jZJzu3kg0
投下終了します。
あとついでにちょっとwikiの裕太の支給品数修正しときます。

119名無しさん:2019/05/22(水) 18:51:52 ID:gaOnBu0I0
投下乙です。
対主催ルートもあり得るかこれ…?
ドラゴンボールはどうなるかわからんな

120名無しさん:2019/05/22(水) 21:20:25 ID:15KT9GT20
なにげにまだ死者0なんだよな
ドラゴンボールも殺し合いを加速させる装置になるかね……

121 ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:28:35 ID:4RoZbgYc0
少し遅れました申し訳ない。
投下開始します。

122二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:29:09 ID:4RoZbgYc0
地図のF-3、サーカス場。
背の高いサングラスをかけた男がサーカス場の外壁にもたれている。
彼の名は伊集院隼人、またの名はファルコンや海坊主とも。

隼人は考える。特にスイーパーとして依頼を受けたわけではない。
自分が気づかないうちに無理やり連れてこられたのだ。
ならばこんな殺し合いに乗ってやる義理など全く以て無い。
むしろ最初の会場にいた時、周りには小さい子供の気配も感じていた。
参加者の各々がどんな理由で連れてこられたかは分からないが、
そんな子供まで殺し合いに巻き込む主催に怒りすら感じている。

だが主催者から与えられた条件は厳しい。
ただ脱出しようとしても首輪が爆発する。
主催者に反抗しても駄目だ。
どの程度で反抗と見られるかは分からないが、本拠地に乗り込んだりはまず出来ない。
何にするにせよ首輪を外す必要がある。
だが様々な機械に触れて来た器用な隼人でも、この首輪の内部構造が分からない以上、
下手に外そうとすれば爆発するのでまだどうにも出来ないのだ。

そして今の隼人には帰らなければならない場所がある。
パートナーの美樹。二人で営む喫茶店。
もちろん彼女だって子供を含む大勢を殺して戻ってきたら隼人のことを軽侮するだろう。
だが彼女も裏の世界で生きてきたプロだ。
いずれ時間が解決して、受け入れてくれる時も来るはずだ。
長年傭兵やスイーパーをやってきた隼人には後ろ暗い過去もいくつかある。
そのような過去の一部となっていくのかもしれない。

それでも、少なくとも今は主催者の言いなりになり殺し合いに乗ってやるつもりも無い。
同じように考えて殺し合いに乗ろうとしない参加者が他にもいるはずだ。
彼らと協力して技術を結集し、何とか首輪を外す方法を探らなければならない。

とりあえずはそのために生き残ることを考えなければならない。
主催者からの支給品を確認していく隼人。
視力の弱い隼人は時間をかけ目を凝らして名簿の名前を辿っていく。
そして名簿に載っている名前の中に、自分の名前と並んでよく知る二人、
冴羽リョウと槇村香の名前を発見してしまう。

まさかあの二人もこの殺し合いに連れてこられているとは。
主催者の正体は自分たちに因縁のある相手なのだろうか。
いや70人中の3人だ。他の可能性も高そうだ。
安心できることとしては、二人とも殺し合いに乗る選択をするとは思えないことだ。
協力、保護して主催者を打倒する術を一緒に考えたい。

地図を確認すると、なんと新宿駅が島の中に存在している。
あの東京の、何度も訪れた新宿駅がこの場にあるというのか。
孤立した島だから同じ名前の別の駅の可能性もあるが……、
本当に新宿駅だとしたらあれと同じものを作ることを考えると、
主催者はどれだけの力があるのだろうか。
とりあえずは実際に訪れて確認しないことにはどうにもならないか。

そしてそれ以外の個別のもの……を確認していくことにする。
デイパックを漁ってみるとボタンのついたカプセルが2つ出てきた。
とりあえず1つ、ボタンを押して暫く待ってみる。

「うわっと!」

カプセルが音ともに割れ煙が経つ。そして手には何かを握る感触。
煙が晴れてくる。

「何だこりゃ……? 動物の手か?」

動物の手のようなものが棒の先についている。
しっかり先端には爪のようなものがついている。
慎重に触ってみたが、切れ味はしっかりしており下手に触ると指を切りそうだった。

「一応……これは武器なのか?」

個別のものは多くとも3つしか支給されないのだ。
自分にはあまり合わない気がする装備だが、貴重な武器として取っておかねばならない。

もう一つのカプセルもボタンを押してみる。
今度は目の前で出さず、押してから少し離れてみる。
出てきたのはコーヒーミル、充電式のコーヒーサイフォン、コーヒーカップ。
コーヒー豆の袋と水もついてきた。まとめて棚に入っている。
隼人はコーヒーの袋を読んでみる。

「ルブランという喫茶店で出してるコーヒーね……。
 喫茶店員の俺にこれでコーヒーを作れってことかい」

戦いに役立たない道具であることに少し苛つくが、
まあコーヒーは心を落ち着かせ集中力を高める事もできる飲み物だ。
殺し合いに役立つ物と一応言えなくもない。
技術に少しは自信のある隼人は、いつかこのコーヒーを作ってやると決めた。

まだ支給品がないか置くまで漁ってみる。
なにか小さいものが手に触れた。取り出して見る隼人。

「これは……」

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123二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:29:44 ID:4RoZbgYc0
とりあえず謎の武器を持ち警戒しながら、サーカス場の周りを歩く隼人。
他の人物がいるなら接触したいが、今の状態で戦うのはまずい。感覚を研ぎ澄ます。

壁伝いに歩いていると、彼の警戒網に声が入ってきた。
プロのスイーパーや傭兵としての経験がある彼は、
会話している二人の参加者に相手より早く先に気づくことができた。
自分の音を潜め聞き耳を立ててみる隼人。
この二人は少なくとも殺し合いに積極的に乗る気はないらしい。
しかも二人とも子供と言える年齢のようだ。
本心がどうであれとりあえずこちらも殺し合いに乗る気がないと伝えれば、
友好的に接触できる可能性が高いのだ。
情報を得られる相手は非常に重要だ。
海坊主は察知されないよう、相手からも見える距離まで近づいていく。

「そこのお二人さん。
 失礼するが俺も相談に混ぜてもらいないだろうか」

二人の会話が止まり、緊張した空気となる。やがて少女の方が答える。

「失礼ですが、あなたは殺し合いに乗っていますか?
 私たちが子供という事に気付いて話しているのですよね?
 安心させるために姿を見せてください。
 一応こちらには武器もあります。
 姿を見せないようなら攻撃することも考えます」

「殺し合いに乗る気は無いんだ。安心してほしい。
 そもそも殺し合いに乗っているならお前たちを奇襲してるところさ」

サーカス場の幕の裏から隼人が姿を現す。

「うわあぁぁっ!!」

「ひゃぁぁぁっ!!」

伊集院隼人の出で立ちは恐ろしくも、奇妙であった。
身長2mを超える色黒でサングラスをかけた男が、
動物の手のようなものが棒の先についた謎の武器を持ち、
スキンヘッドに花の髪飾りをしているのだ。
出木杉は恐ろしくて手に持った手榴弾をまだ離すことが出来ない。

「あっと! 驚かせて悪い。
 さすがにこれだけ図体がでかいと驚かれても仕方ないよな……」

周りにバレバレの怪しい変装をしたことがあるように、隼人は衣装に関しては天然気味である。
花の髪飾りを付けたのも、怖い見た目をごまかし安心させようという意図でしかないのだ。
でも、そういう問題ではないというように二人は首を横に振る。

「そうか。一応信頼してくれるか。
 俺は視力が弱い代わりに他の感覚は鍛えていてな、
 君たちの会話はよく聞こえていた。
 殺し合いに乗るつもりがないと容易に判断できたさ」

「そ、そうですか……」

「伊集院隼人だ。よろしくな。
 名簿だと下の方に書かれているようだ」

隼人は本名を伝えた。
名前が伝わって困る相手はいないし、
名簿がある以上コードネームや嘘を話しても怪しまれるだけだ。

「スイーパーや傭兵としては、ファルコンや海坊主という通り名でも呼ばれている。
 まあ裏の世界も知らない子供にその名で呼ばれるのも違う気もするし、
 どう呼んでくれても構わねえよ」

傭兵という言葉を聞いて出木杉は少し身構えてしまう。
金銭のため自分に関係ない戦争に参加する戦争屋というイメージが、
現代の常識では強いので仕方ないことだ。
もちろん出木杉はそういう存在だけでなく、しっかりビジネスの礼儀を持っていたり、
戦争地帯を通過するときの護衛などをする良識のある者もいることは知識として知ってはいるが。

「スイーパーとは、始末屋ということですよね?
 法で裁けない悪人を処分したりされるのですよね」

一方テッサはミスリルに雇われに来る傭兵たちのように、
正義のために雇われ戦うということに誇りを持っている人種を想像した。
今までの態度からするに、少なくともならず者のような傭兵でないことは明らかだからだ。

「ああ。他にもボディガードみたいなこともやってるし、
 危険な依頼を受ける何でも屋みたいなもんさ。
 そっちの坊やは少し怯えてるみたいだが、
 少なくとも俺は悪事に手を貸さない程度の分別はあるつもりだ」

「わかりました。テレサ・テスタロッサと申します。
 テレサやテッサと呼んでください。
 伊集院さん、よろしくお願いします」

テッサが隼人を信用して名前を告げるのを見ると、
出木杉も続いて信用することにしたようだ。

「出木杉英才といいます。よろしくお願いします、伊集院さん」

三人は会場に来てから今までのこと、知り合いの情報なども含めて情報交換を行う。

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124二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:30:18 ID:4RoZbgYc0
テレサ・テスタロッサ、出木杉英才の二人が出会ったのは完全な偶然。
二人とも転移先がサーカスの観客席であったのだ。

出木杉はこんな殺し合いの場にそぐわない小学生であり、とっさに身を隠してしまう。
いくら優等生の天才小学生であろうと、こんな殺し合いの場所では最初は臆病になるのが普通だ。
そこで一応は命のやり取りの場にも場馴れしているテッサが、
出木杉に攻撃の意志がなさそうなことを見ると、戦闘の意志がないことを呼び掛けた。
テッサも怯えたい状況ではあったが流石に年下の子供をこの状況で安心させたい、
心配させるわけには行かないと気を持って頑張った。

二人である程度情報交換しその中で、
取り敢えずお互いの支給品を確認したところこのデカブツの操り人形が出てきた。
小さなボタンのついたカプセルがあり、ボタンを押すと中から突如現れたのだ。
操縦技術の分からない者でも使えるようにとの配慮か、ちゃんと解説のおまけ付きだ。

もちろん二人ともこのような巨大な操り人形など、全く知らない文化の産物だ。
これを使いこなせれば戦うための道具にもなるし、高速な移動手段にもなり得る。
ところがテッサは基本的に頭を動かす方に慣れており、
前線でこのサイズ程度のマシンを動かすことなどなかったし、
出木杉もあらゆることに秀でているといっても平和なところで暮らす小学生であり、
流石に未知の技術の産物にいきなり触れることを躊躇してしまう。
下手に扱って壊してしまっては元も子もないのだ。

テッサは双子の兄レナードのように、
ASのような人型兵器の扱いに秀でている者が使えばすぐに動かせるのかもしれないと思っていた。
でも今は敵対している兄のことを考えても仕方がない。
出木杉も同様に、そういえばあやとりの得意だったのび太ならば、
操作のコツをすぐ掴めるかもしれないのにと思っていた。

そういうことで二人はこれを使えば高速で移動できることを理解しながらも、
未だに操作方法や練習の仕方を議論しているまま先に進むことができなかったのだ。

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125二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:31:27 ID:4RoZbgYc0
「お前たち二人ともすごい良く出来た子供だな!
 ずっと戦いの中で生きてきた俺とは全然違うぜ!」

「きっとテッサさんの方が僕よりも頭はいいんじゃないかって思います。
 大変な殺し合いの中でも、こういう人と遇えたという事はとても嬉しいことですよ」

「いえいえ、私は半分くらいはウィスパードという特殊能力の賜物みたいなものですし。
 出木杉君だって小学生でそこまで出来るのはすごいと思いますよ」

テッサと出木杉があまりに理知的なので隼人は驚いている。
花飾りは二人の視線が痛々しいので外して、女の子のテッサに渡してある。

「すみません、お二人と話したお陰で推察がまとまってきました。
 僕はこの状況を説明できる術を持っています。
 信じられない話かもしれませんが、どうか聞いてください」

出木杉の真剣な表情に応えて、テッサと隼人も真剣に出木杉の方を向いた。

「この名簿に書かれているドラえもん。
 先程彼は僕の友人の野比のび太の一緒に暮らしている猫型ロボットだと言いましたが、
 実は22世紀の未来からタイムマシンで現代にやってきたロボットなんです」

「信じられないかもしれませんが、未来の技術が生かされている証拠は既にあります。
 この操り人形は手のひらに乗る程の小さなカプセルに収められて、
 テレサさんに支給されていたんです。
 伊集院さんももう自分の支給品で体験したかもしれませんが、
 小さなカプセルにこのような物を収める技術は僕のいた時代にはないですし、
 お二方の世界にも恐らく無いのではないでしょうか」

もちろん隼人は自分の支給品で見た経験がある。
テッサと隼人は顔を見合わせるが、
二人ともそんなテクノロジーは思い当たらないという顔である。

「ドラえもんのポケットは四次元空間となっていて、
 どんな大きなものでも幾らでも収められるんです。
 きっと似たような技術が支給品のカプセルでも使われているはずです」

二人は一応納得し、話の続きを促す。

126二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:32:01 ID:4RoZbgYc0
「未来の技術を信じてもらえたところですけど、次は僕らが来た世界を考えました。
 さて、皆さんの世界にはちゃんと日本がある。
 過ごしていた時代も近いみたいです。
 しかし僕と伊集院さんの過ごしていた世界は、
 表の世界と裏の世界と考えれば同じ世界ともなんとか考えられますが、
 テレサさんの過ごしてきた世界だけが大きく異質です」

出木杉も隼人も、人型ロボット兵器が活躍する近代の戦争などというものは、
全く分からない世界の出来事だったからだ。

「テレサさんの世界は僕らの世界から分岐して急に技術の発達速度が上がったような世界、
 パラレルワールドのような別世界なんだと僕は考えてます。
 タイムマシンを使えばあらゆる時間軸から人を集めることができます。
 応用すればきっと別の世界からも人を集めてくることができます」

「……なるほど。
 少なくともテッサは別の世界の出身ってわけか」

「受け入れにくい推論でしょうが、今の状況を説明できていると思います」

「名簿に書かれているガウルン、ゲイツは私たちの宿敵だったはずの人たちです。
 でも相良さんが倒してくれて今は生きていないはず。
 ……なのにどうして名簿に名前があるのか気になっていたんですが」

「そうだな。奴らがタイムマシンで連れてこられて生存してこの場にいる可能性があるというこった。
 奴らの情報も後で教えろよ。警戒するべきだぜ」

「そうですね……。後でお伝えします」

「死んだはずの人もいるという事ですね……。
 それなら他に警戒すべきことは、知り合いと遇っても同じ時期から来たとは限らないという事です。
 タイムマシンならどの時代からも人を連れてこられますから」

「ああ。俺に目の傷を負わせた時のリョウだったりしたら目も当てられねぇぜ」

「もう一つ、彼はどこでもドアという道具を使っていました。
 2つの空間を接続して瞬間移動できるというものです。
 この技術を応用したと考えれば、
 この島のあり得ない建築物の配置も説明できます」

「そうですね……。私が艦長を務めるダナンをそのまま持ってくるなんて考えられません」

テッサは思う。何より地図にはテッサが艦長を務めるトゥアハー・デ・ダナンが記載されている。
本物であるとするなら、アマルガムでも何の前触れもなしにこのようなことができるとは思えない。
もちろん地図が嘘の可能性や、本物でないレプリカの可能性も考えたい。
しかし信じがたい話ではあるがこの少年、
出来杉が語る方法ならば本物を持ってくることも可能かもしれないのだ。

「主催者に関してですが、ドラえもんやのび太君の性格ではこんなことをすると到底思えません。
 ドラえもんと同じ未来の住人のうち、
 悪意のある誰かがこの自体を引き起こしていると考えることが自然でしょう。
 それならば同じ未来の出身であるドラえもんは何らかの手掛かりを持っているかもしれません」

「よし! じゃあとりあえずはそのドラえもんを探せば良さそうだな!」

とりあえず三人の行動指針の一つが決定した。

「そういえばアレクシスの野郎の言っていたスタンドやペルソナや、
 何をしても死なない再生能力とかいう異能は本当にあると思うか?
 俺は人の心を読む超能力者を見たことはあるんだが、
 さすがにそんなレベルとは次元が違うと思うんだが……」

「私がウィスパードということも、もしかしたら異能の一部として制限対象かもしれません。
 私のようなウィスパードは、急に今まで知らなかった知識をいつの間にか得ていることもあるんです。
 例えば……首輪を外す技術の知識が急に湧いてきたりしたら困るでしょうから。
 でもそうだとしたら、主催者は私達でも解明できていない、
 ウィスパードの本質というものまでをも知っていることになります。
 あまり考えたくはないですが……」

「ええ、ウィスパードというのも僕の常識からしたらすごい異能のレベルなんですよ。
 もっとすごい異能、例えばファンタジーアニメのような、
 不思議な能力を持った人たちが存在する世界もあるかもしれないということは、
 一応想定したほうが良いかもしれないと思います」

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127二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:32:35 ID:4RoZbgYc0
情報交換も終わったところで、隼人が最初から気になっていた巨大な操り人形の方を見る。

「ところで……その道化師みたいな操り人形、動かしてみるつもりなんだろ?」

「ええ。この操り人形……グリモルディは私の支給品で、
 足の部分を車輪のように回転させることで高速移動できるみたいなんです」

テッサは地図を広げダナンの場所を指差す。

「ここにある潜水艦トゥアハー・デ・ダナン。私のダーナ。
 その実力は一つの軍事基地と戦えるくらいです。
 殺し合いを望む参加者に悪用されないように私が向かわなければならないんです。
 地図では反対側のダナンまで歩いて移動したらかなりの時間を取ってしまいますが、
 これを使いこなすことができれば、上に乗って速くたどり着けます」

「そうだな。兵器を満載した潜水艦を放置は出来ねえ。
 最優先で対処すべきだ」

「視点も高くなるから、ドラえもんも含めて人探しをするにもちょうどいいと思うんです。
 でも僕もテレサさんもこんな操り人形、今まで触ったことも見たことすらもない。
 どうすれば操作できるようになるか相談していたんですが……」

「おいおい頭で考えてるだけじゃ何にもなんないぜお前ら。
 貸してみな、これでも手先は器用な方なんだ」

流石にテッサは慌てて静止する。

「待ってください! 説明も何も読んでないのに大丈夫ですか!?」

「車輪が付いた巨大なからくり人形だろ?
 車や戦車と動かし方はそう変わらんだろ。
 視力が弱くなってると言ったが、それでも車を運転できるくらい俺は技術があるんだぜ?」

「あっ! ちょっと待ってください!」

出木杉も止めようとするが二人の静止を聞くことなく、
隼人はグリモルディを操る糸の繋がる手袋を探し出しそのまま手にはめてしまった。
とりあえず適当に指や腕を動かすと、グリモルディもふらふらと動き手や帽子を動かしている。
しかしその揺れはだんだん大きく……。

「うわあっ! だから言ったじゃないですか!」

「……腕や手首の大きな動きだけじゃなくて、指もちゃんと使って腕先を制御してみてください!」

「テレサさん!?」

隼人が指示を聞き入れたのか、少しバランスを持ち直すグリモルディ。
しかしフラフラ揺れるのは落ち着かず、やがてそのまま前傾姿勢で盛大にずっこけてしまった。

「ああ、やっぱりだめなようですね……」

「流石に触ったばかりなのにバランスを取るのは無理でしたか……」

「……だがこれで、ずっこけたくらいじゃ壊れないことがわかっただろ?
 あとは特訓ありきだぜ。頑張ろうじゃないか」

失敗してしまってもとても前向きな隼人。
二人はその姿勢に勇気付けられていく。

「わかりました。伊集院さんが操作できるようになることに賭けましょう!
 伊集院さんが操縦の手順を掴めるように、私が指示を出してみたいと思います!」

「へっ、腹積もりを決めてくれたか。
 そっちの坊やはどうだ?」

「……テレサさんと相談している中で、僕が何とかやるつもりになりかけてはいたんです。
 でも伊集院さんが実際に様々な機械に触れている経験はとても大きいと思います。
 力も僕よりずっと強いし多少無理な操作もできると思います。
 伊集院さんがやったほうがきっと短い時間で操作できるようになるはずです!」

出木杉はちゃんと理由も出した上で、隼人が操作することを支持した。

「ありがたい事言ってくれるじゃねえか。
 任せてくれるってことでいいんだな?」

「はい! 僕も伊集院さんがこのグリモルディを操作できるように、
 全力でテレサさんとサポートさせてください!」

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128二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:33:09 ID:4RoZbgYc0
テッサは支給品解説を読みながら、
グリモルディの構造を素早く把握しどのような操縦が適切なのか指示を与える。
艦長を務めるダナンの構造を隅から隅まで把握している頭脳は伊達ではない。
出木杉はその補佐だ。
テッサとは反対側から動きを見たり、隼人の手に触れながら指の動きを支持したり。
弱視の隼人が支給品解説を見ながら操作を習熟するのは至難の業であるため、
この二人の補助は必須なことであった。
糸が絡まってしまったときに解すのは三人の共同作業だ(これはかなりの時間を取った)。

三人が最初に試みたのはグリモルディの変形だ。
グリモルディは通常は二足で歩くか、変形しても足首の部分の二輪のみで走る。
この状態ではバランスを取らせるのは大変で、初心者が操縦慣れするのに全く向かない。
しかしさらに変形させることにより背中の後輪が接地し、
三点で設置することによりバランスが非常に取りやすくなるのだ。
最初の状態で起き上がらせてもすぐに転んでしまうだろうが、
変形させて後輪を伸ばしておけば安定した姿勢で起き上がることができる。
そこから手をついて起き上がるのもやはり大変であったが、
一度起き上がれれば後は上半身の様々な部位の動かし方を転ばせる心配なく練習でき、
車輪も低速で動かせば転倒の心配はない。

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2時間ほど練習した頃。
隼人は何とか全ての可動部の動かし方を覚えることができた。
そしてその組み合わせによる最重要事項。
グリモルディの車輪を動かし走行すること。
急旋回などに不安はまだあるが、
隼人はグリモルディの真価である高速移動を習得できていた。
ある程度走らせてみて糸が絡むようなことは全くなくなった。
こうして三人は人間が走るより、疲れず高速に移動できる手段を手に入れたのだ。
グリモルディを使いこなせているとはまだまだ言えないが、
そろそろ切り上げてダナンへ向かっていかなければならない。

「もう走るのには十分なくらい動かせるよな!
 そろそろ動き始めたほうがいいんじゃねえのか?」

「ええ。まだ不安な点は多いですが、
 これ以上時間を取るわけにもいきません。
 ダナンに向けて出発しましょう!」

「走ってる間も続けてサポートしますね!」

三人は肩など思い思いの場所に乗り(疲れるようならポジションを変えるつもりだ)、
グリモルディは走行を始めた。

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シートベルトすらないこの状況。
障害物に当たり投げ出されたり転んだりしたら大怪我の可能性もある。
テッサと出木杉は弱視の隼人を補い前方を必死で確認し、
左右に避けるように指示している。
ちゃんとした道路の上を走るならば隼人が全てをこなしても何とかなりそうだが、
生憎とそういう道は見つけることができなかったのだ。

「やっぱり僕が動かし方を練習したほうが良かったんですかね……」

「へっ! 自分が決めたことを後悔すんなよ!
 坊やの頭や要領の良さも、いずれもっと活躍できるときが来るさ!」

しかも隼人は走らせながら帽子や腕の操作を練習する気が満々だ。
障害物の視認と操作の指導両方に追われる二人には、気が休まるときは訪れそうもない。
しばらく進み坂道を上った直後、目の前には灌木が出現した。
出木杉が最初に気付き警告する。

「20mくらい先に木があります!右によけてください!」

ところがグリモルディは坂を上り切った後ジャンプし不安定になったため、
なかなか方向を変えることが出来ない。

「右だな! 何とか動かしてるぜ!」

「う、腕を伸ばしたままです! ダメです! 避けきれません〜!」

テッサを筆頭に身構える三人。ところがそんな心配は必要なかったようだ。
グリモルディの腕は走りながら木をなぎ倒してしまった。
その丈夫さは高所から落ちても壊れず、壁を体当たりでぶち破ったりも可能なほどなのだ。
有賀村の懸糸傀儡の中では高性能を誇るだけある。
体幹もそれほどぶれず、しっかり掴まっていた三人が振り落とされることはなかった。

「へっ! どうだ俺の運転はよ!」

「ひ、非常事態じゃなければ絶対あなたには任せたりしませんっ!」

「まあまあ、これからもっと上手になってやるからよ。
 そっちも暗くて大変だろうが、急いでいかなきゃならないんだろ?
 水先案内しっかり頼んだぜ!」

掛け声とともに月夜の中、三人は珍道中を爆走していく。

「はあ……着いたら艦を知り尽くしたテレサさんの案内で、
 まずは休憩室に向かいたいですね」

129二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:33:53 ID:4RoZbgYc0
【F-3/サーカス場 黎明】
【テレサ・テスタロッサ@フルメタル・パニック!】
[状態]:健康
[装備]:リコの花の髪飾り@魔法陣グルグル
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いからの脱出を目指す
1:三人でトゥアハー・デ・ダナンを目指す
2:ガウルン、ゲイツを警戒
3:ドラえもんと接触し主催者の手掛かりを得る
4:相良さん、かなめさんは会いたいが、そう死なない人たちだと信頼してるので後でも良い

※参戦時期はIV開始以降のどこかです。詳しくは次以降にお任せします。
※参加者が様々な世界から来ていると考察しました。
 また知り合いでも呼ばれた時期が違うかもしれないと気付きました。

【出木杉英才@ドラえもん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、Mk2手榴弾×3@シティーハンター、ランダム支給品×0〜2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いからの脱出を目指す
1:三人でトゥアハー・デ・ダナンを目指す
2:ドラえもん含む友人たちと合流し情報を得たい
3:自分なりにこの殺し合いについて考察を深める

※参加者が様々な世界から来ていると考察しました。
 また知り合いでも呼ばれた時期が違うかもしれないと気付きました。

【伊集院隼人@シティーハンター】
[状態]:健康
[装備]:グリモルディ@からくりサーカス、ニホンツキノワグマの武器@けものフレンズ
[道具]:基本支給品一式、ルブランコーヒーの材料@PERSONA5 the Animation
[思考・行動]
基本方針:死ぬつもりはない。殺し合いには乗りたくないが、脱出の見込みが無いなら……
1:三人でトゥアハー・デ・ダナンを目指す
2:ドラえもんと接触し主催者の手掛かりを得る
3:冴羽リョウ、槇村香と一度会い協力したい

※参戦時期は完全に失明するより前(シティーハンター91の8話、リョウとの決闘より前)、
 超能力少女に会った後(シティーハンター2の42話より後)。詳しくは次以降におまかせします。
※参加者が様々な世界から来ていると考察しました。
 また知り合いでも呼ばれた時期が違うかもしれないと気付きました。

※三人がどのような経路でダナンに向かうかは次以降におまかせします。


【Mk2手榴弾@シティーハンター】
いわゆるパイナップルと呼ばれる形の手榴弾。
ただ手投げするだけでなく、トラップの道具としても用いられた。

【ルブランコーヒーの材料@PERSONA5 the Animation】
コーヒーミル、充電式のコーヒーサイフォン、コーヒーカップ、コーヒー豆の袋と水がセット。
まとめて棚に入っており、もう一度ボタンを押せばホイポイカプセルに戻すこともできる。
作り手によるがだいたい10杯分ほど作れる。
アニメでは認知世界内でコーヒーを飲むシーンは無かったが、
現実世界でもらったドリンク(タケミナトビオキール)を認知世界で服用して回復するシーンがあるので、
認知世界内でコーヒーを飲んでもゲームと同じようにSP回復効果があると考えられる。
この会場内でもその効果は発揮される。
SP(スピリットポイント)回復効果は魔力やスタンドパワーの回復とも互換性がある。

【ニホンツキノワグマの武器@けものフレンズ】
ニホンツキノワグマがフレンズ化した際に、元の動物の特徴の一部が武器として現れたもの。
棒の先に丸くデフォルメされたツキノワグマの手がくっついている。
ハンマーのように殴るだけでなく、カミソリの如き切れ味の爪により切り裂く効果も期待できる。
原作(1期)ではへいげんちほーの戦いごっこの際に持ち主とともに活躍、
最終決戦の時には自分の武器を壊されてしまったヒグマに託された。

【リコの花の髪飾り@魔法陣グルグル】
花の効力で一度だけ装備者を守ってくれる。
量販品であるので色々な場所で入手できた。
1話ではニケがククリにプレゼントしそれは3話で失われるが、再び購入して装備したりしている。

【グリモルディ@からくりサーカス】
2話から登場した懸糸傀儡。
足の部分が横向きに変形し、足首の突起が車輪となり高速機動できる。
横に長い帽子を動かしたり首を伸ばしたり出来るなど意外と器用。
勝を誘拐しようとする誘拐組の尾崎が最初の所有者。
4話で勝に雇い直された阿紫花英良が尾崎から奪い、
からくり屋敷に突入するのに大活躍した。
13話や23話に登場するのは阿紫花が気に入ったため作られた改良型で装備が増えている。
本ロワでは誰でも使えるようにと、支給品説明が操作法と機能が簡単に書かれたマニュアルにもなっている。
もちろん読んだからといって糸の操作は難しく、
才能や経験にもよるがどれだけの練習で使えるかは不明。

130 ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:34:28 ID:4RoZbgYc0
投下終了します。

131名無しさん:2019/05/24(金) 08:34:33 ID:jPRTMkB.0
投下乙です
出木杉は肝が座ってるなあ。
天才二人にスイーパーって中々強力な組み合わせだし支給品も当たりの部類だし中々頼もしそうだ。
でも考察係に回った方がいいのかな?

132 ◆J5IZ9694XQ:2019/05/25(土) 02:01:20 ID:mMoEL9n60
wiki収録のついでに自作について若干誤字を修正したり少し表現を変えたりしました。

133 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:32:19 ID:NRf9D8VE0
フーゴ、渡辺曜、桃白白で予約していた分を投下します。

134 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:32:54 ID:NRf9D8VE0
フーゴが転送されてきたのは森の中だった。
月明かりしかない夜闇の中、周りの様子程度はわかるが遠くは見えず、
主催者からは地図が支給されていると言っても自分がどこにいるのか把握ができない。
とりあえず警戒しながら見通しの良い月明かりのよく届きそうな場所を探し歩いていた。

人影を見つけるフーゴ。暗闇の中の遭遇で姿がよくわからない。
とっさに反応して、フーゴはパープルヘイズを出現させる。

「いやっ!」

声はおそらく同年代くらいの少女。
反応したということはスタンドが見えている、だがスタンドを使う様子がない。
無自覚なスタンド使いだとでも言うのかとフーゴは考える。

「来ないで! お願い!
 絶対誰も殺したくなんてないし、出来れば傷つけたくもないの!
 でもそれ以上近づいたら、その人型や、あなたの脚を撃つよ!」

少女はよく見ると拳銃を持っている。
スタンドが戦うための存在ということは直感で理解したようだ。
だからといって、そんな程度じゃ素人以外には全く交渉にはならない。
怯えた様子で手が震えているからまともに狙いがつくと思えないし、
自分のような近距離パワー型の中でも特に破壊力に秀でたスタンドならば、
銃弾を弾くことすら可能なのだ。
戦う覚悟も生き延びる術も、スタンドの知識も何もが足りていない。
このままでは、この少女は殺し合いの中で長生きできない。
こんな少女が殺し合いに巻き込まれ、このまま死んでいくなんてあまりにも居た堪れない。
フーゴの優しさが、この少女を殺す選択肢や放置する選択肢を塞いでいた。

「確かにこの人型、スタンドは戦うための力だ。
 でも銃を警戒しただけで、君を襲うつもりはない」

フーゴはゆっくりデイパックを外して落とす。
服の中にも何ら凶器をしまっていないことを、裏返したり叩いたりしてアピールする。
パープルヘイズは凶暴性を全面に出した存在だから、
地に伏せさせたりして攻撃するつもりがないことをアピールするのは無理だ。
とりあえずはスタンドを解除して消滅させた。
それでも少女は震えた手で銃を向けたままだ。

「君、そんなことを続けていたらこの先長くないよ」

「そんな、そうかもしれないけど……」

「僕は裏社会と関わりのある人間だから言える。
 君にはこんな殺し合いの場で生きるために色々なものが欠けている」

「裏社会……? そんな怖い世界の人が何で? 何でそんなこと言ってくれるの?」

「君のような何もわからない子がこのまま死んでいくのは忍びないと思った。
 これだけでは不十分か?」

陽はまさかそんな事を言われるとは思ってなかった。
緊張が少し解れ、銃を向けた手を降ろす。

「もう一度言うが君を襲うつもりはない。分かってくれたか?
 僕はパンナコッタ・フーゴと言う。
 しばらく君を保護したい。
 もっと生きる術を学んでいく必要があるんだ」

「……で、でも私、それなら貴方に付いて行ったらきっと足手まといになっちゃう。
 それに、これからAquorsのみんなを探さなきゃいけない。
 ここで初めて会った貴方に、手伝わせるわけにはいかないよ」

フーゴは表情を変えないが優しく言う。

「……君、もっと人の好意を素直に受けたらどうだ?
 僕が君を保護するのは僕が望んだことで、君が気負う必要はない。
 それに僕はまだ目的地とかは決めていないし、
 しばらく君の人探しに付き合うくらいは出来る」

「本当に、本当にいいの……?」

「ああ。今後長く同行できるかどうかはわからないが」

「それなら……とりあえずこの森を出られるまでは一緒にいたいと思う。
 私は渡辺曜。しばらくだけど……よろしく」

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135 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:33:28 ID:NRf9D8VE0

二人は軽い自己紹介を済ませている。
曜は最初こそフーゴの凄みに気圧されていたが、
同年代、1つ年下の少年だとわかると途端に話しやすく感じた。
またフーゴが他の保護対象の参考として曜の知り合いが名簿に載っていないか聞いたことで、
曜は他の参加者でもあるAquorsのメンバーの話や、高校の話をし始めている。

「幼馴染の千歌ちゃん、東京に行ったときスクールアイドルに完全に目覚めちゃって、
 部活としてスクールアイドルを始めることになったんだ。
 私、そのとき初めて二人で同じことに熱中できると思って嬉しかったなあ。
 そして作曲のできる梨子ちゃんが入ってくれたことで、
 何とかAquorsとして活動できる形になったの」

「善子ちゃんは堕天使ヨハネって設定でインターネットで動画を配信してたり、
 その設定を活かしたままスクールアイドルをやってる面白い子だよ。
 意外なんだけど、結構私とは感性とかが合う面が多かったりして仲よくしてるかな」

「梨子ちゃんは転校生なんだけどどんどん千歌ちゃんと仲良くなって、
 Aquorsを盛り上げる中心として頑張った。
 ちょっと幼馴染として悔しくもあったけど、
 千歌ちゃんが私とスクールアイドルをやり遂げたいという気持ちは本当に強くて、
 梨子ちゃんもそれを大事にしているってわかったから、もう大丈夫なんだよ」

曜はフーゴのことも聞いてみようと、話を振り始める。
もしかしたらフーゴも同じ学校の人が連れてこられているのではと少し心配になる。

「フーゴ君も16歳なら高校生?
 イタリアの学校ってどんな感じなんだろう。
 部活とかはあるのかな」

「そうだな。イタリアでもこの歳なら普通は高校生ってところだ。
 でも、もう学校には通ってないんだ。
 ちょっとキレてしまって騒動を起こしたせいで居られなくなった。
 あまりいい思い出もない」

「えっ! 言いづらいことを言わせちゃったかな。
 フーゴ君のことも知らないで、色々学校のこと話しててごめんね……」

「いや、君の話は聞いても嫌な感じにならない。
 それにいくら殺し合いの中と言っても、
 ずっと緊張していては精神が保たないから何気ない会話も必要だ。
 一応実利的には、君の仲間と会ったときどう接するかのヒントにもなる。
 もっと話してくれてもいいんだ」

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136 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:34:02 ID:NRf9D8VE0

曜はフーゴに高校での話、スクールアイドルとして活動してきた話を話した。
イタリア人で常識の違うフーゴにも分かりやすく、面白く。

地域の人々に愛されるスクールアイドルか……。
あのスタンド使いの亀の部屋に置かれていた雑誌にも、
アイドルのことは書かれていた気がする。
アイドルにだってマフィアや裏社会が関わることはある。
でも彼女はそんなこと全く感じさせずキラキラ輝いた存在だ。
日本のスクールアイドルは裏社会など関わりようのない存在なんだろう。
フーゴはアイドル自体に興味はないが、
ねじ曲がらずに充実した学生生活を送る姿は少し眩しい。

とにもかくにも曜は色々話したお陰か、最初の状態から大分落ち着いているようだ。
今なら自分側から、裏社会の話やスタンドの話をしてもちゃんと理解してもらえそうだ。
彼女は既にフーゴのスタンドを見ている。
彼女だって他の参加者たちがどういう経緯で呼ばれたか、ちゃんと知って考察し安心する権利がある。

「先ほど僕は裏社会の人間だって言ったが、
 パッショーネというイタリアのギャングに所属している。
 学校に居られなくなり家も追い出されたところを拾ってもらったんだ」

「そうだ。さっきの銃、フーゴ君と一緒にいる今私が持っててもしょうがないと思う。
 私本当はちゃんとした撃ち方すら知らないし……。
 フーゴ君に持っててもらったほうがいいよね」

フーゴは銃の使い方くらいはギャングとして知っているが、普段はスタンドで戦うので持つことはない。
それでも今の曜が持つよりかは、少しくらいは役立つかもしれない。
そのうち銃の扱いについても教えてやろうと考えて、一度は受け取ることにする。

「そうだな。とりあえずは僕が持つことにする。
 またそのうちに、撃ち方くらいなら教えるよ」

「わかった。じゃあ……これね」

フーゴは手に取るとすぐに気付く。
この銃はミスタが使っていた物と同じモデルであると。
彼らとは離別したはずであるのに、
こんな支給品として縁を感じさせるものが周ってきてしまうとは……。
動揺しながらも、とりあえずフーゴはデイパックに銃を入れてから元の話に戻る。

「僕がさっき出した紫の人型はスタンドという。
 パッショーネの入団試験の時に身につけた物だ」

フーゴは自分がパッショーネに入団してから学んだ裏社会の常識、
そしてスタンドという概念について話してゆく。

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137 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:34:36 ID:NRf9D8VE0

「そうだ、僕はブチャラティ達には付いていくことができなかった……。
 組織の庇護から抜け敵対してしまったら、僕らは生きていくことすら難しい。
 彼らの論理的には馬鹿げた考えこそが、本当は崇高なんだと理解してはいた……。
 でも僕は、正しい馬鹿にはどうしてもなれなかった……」

「フーゴ君、そんなに大変な思いをしていたんだね……」

フーゴは次々に話を広げていき、
自分がブチャラティと離別した経緯までをも全て曜に話してしまっていた。
曜がとても話しやすい雰囲気を持っていたのもあるが、
フーゴとしても誰か組織と全く関係ない者に話して、
楽になりたいという気持ちがあったのかもしれない。

「名簿によると、ブチャラティとジョルノも参加者として連れてこられているようだな……」

「私もメンバーの皆と険悪になりかけた事が一度あったけど、
 今は迷いを振り切って一緒に頑張ってる。
 ギャングとは全く違う世界の話だってわかってる。
 それでも、フーゴ君がチームの皆とまた一緒になれる日が来たらいいなと思うよ」

「僕もそういう未来が来ればいいなとは、思ってはいる。
 でも彼らからしたら、僕のほうが裏切り者だ。
 もう二度と元のように戻ることはできないんだよ……」

「フーゴ君……」

二人が暗い表情になり俯き、沈黙が流れる。
フーゴがそれを振り切り、話題を変える。

「まだ言わなきゃならないことがある。もう一人分、知る名がある。
 ギアッチョは僕らと敵対していた暗殺チームの刺客が名乗った名だ。
 そいつはミスタとジョルノが撃退したはずなんだが、なぜここに居るのか分からない。
 あの二人がとどめを刺しそこねたり見逃したりということは考えにくい。
 奴は氷を操る能力を持っていたと聞いているが、
 それを活かし何らかの方法で死を偽装したのかもしれない」

「それに続くリゾット、ディアボロも連続しているしイタリア系の名だから、
 僕らの組織に関係している者の可能性がある。
 僕も構成員を把握しきれていないから、詳細まではわからないが……」

「それって、私たちの助けになる人かもしれないってこと?」

「いや、組織内にもいろいろ立場があるからな。
 例えば暗殺チームの名前が分からないメンバーや、ボスの親衛隊の可能性がある。
 ギアッチョ達暗殺チームは僕らに恨みはあるだろうが、
 彼らもただの殺し屋じゃなくてちゃんと信念を持ったチームだ。
 殺し合いに乗るかはわからないが、強力なスタンド使いばかりだから警戒すべきだ」

「暗殺が仕事……。やっぱり恐ろしい人たちだけど、
 出来れば殺しとかが関わらない形で、協力できたらいいよね」

「もう一つの想定、ボスの親衛隊だとしたらどう動くかはわからない……。
 もしもこの殺し合いがボスに仕組まれたものだとしたら進行させようとするだろうし、
 そうでないならボスの元へ戻るため優勝するか、脱出するかどちらかを狙うだろう。
 そしてボスに反抗しているブチャラティ、ジョルノ、
 加えて暗殺チームの者を始末しようとするだろうな。
 僕も出来るだけ会いたくはない存在だ……」

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138 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:35:09 ID:NRf9D8VE0

二人はとりあえず森を抜けるために、一定の方向を変えないように意識して進んでいる。
どこへ向かうにしても、夜中にこんな森の中では遠くの様子が把握できない。
とりあえず地図には左上、右上、右下に森があるように描かれていおり、
現在地はそのどこかだとは考えられる。
建物か平原か街か、あるいは海か何処かに抜けられれば向かう場所の方針が立てられる。

「そういえばまだ聞いてなかったけど、
 フーゴ君は私を保護したりしてその後はどうするつもりなの?」

「僕は……! その……」

方針というものから逃避していたフーゴは言葉に詰まってしまう。
それを見た曜が言葉を続ける。

「私はこの殺し合いに巻き込まれてとても怖い。
 誰も殺したくないし、もちろん死にたくもない。
 フーゴ君は色々教えてくれるけど、
 それでも私のような普通の人間が生き残ることって難しいんだと思う」

フーゴはそんなことないと否定しかけるが、確かに事実なので口を挟めない。

「それでも出来るだけ誰も殺さず傷つけずに、みんなと会って一緒に頑張ってみる。
 そして頭が良くて力もある脱出を目指す人たちに協力して、
 一緒に脱出できるのが一番いいから、それを目指す」

曜はフーゴの方を向いて話す。

「それが駄目だったら、せめて生き残る人に私がここでどうしたのか、
 生き様を伝えて憶えていてもらいたい。
 そして出来ることなら殺し合いが終わった後に、
 ここに来ていない私の仲間たちに私のこと、伝えてほしいと思う」

フーゴは自分がどう動くかも決断できないのに、
一般人の少女が既にどう動くかの決断を決めていたことにとても驚く。

「まあ、そのためにどうすればいいかはまだ考えられないんだけどね。
 私って考えるのはそんなに得意じゃないけど、体が先に動いちゃうタイプだから。
 さっきはいきなり銃を向けちゃって……ごめんね」

「……ああ。そのことは特に気にしてない。
 僕も……そうだな。
 ブチャラティとジョルノがどうしているかは、知りたいと思う。
 だけれど、あれだけの大きな決断で離別した今、合わせる顔がない……」

「大丈夫、もし私がブチャラティさんやジョルノ君に会ったら、
 フーゴ君のこと、また仲間に戻れるように頼んでみるよ」

「……ありがとう。
 だが、もしもブチャラティ達と接触して協力していることが組織に知れたら、
 僕まで反逆者の仲間入りとなってしまう。
 組織の関係者が参加者にいる可能性がある以上、そうなってしまうのが怖いんだ……」

「でも……それなら私がフーゴ君とブチャラティさんやジョルノ君の間に入って、
 伝達役になったりしたらどうかな?」

曜がフーゴの方をしっかり向いて言う。向き合う二人。

「確かにそれなら組織に知れずに話ができる可能性は高くなる。
 だが、ばれてしまったら君の命までもが危険だ。
 一般人の君にそんなことを任せるわけにはいかない」

「でも一般人だからこそ、疑われにくいという考え方もできるんじゃないかな?
 それに私、フーゴ君に助けてもらっているし少しくらいは返せる事がしたい。
 私のことも信頼して頼ってくれていいんだよ?」

「……君の言うとおりだな。
 だがやはり出来るだけ君には危険を負わせたくない。
 ブチャラティ達と合える目処が確実に立つまで、この話は保留とさせてくれ」

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139 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:35:44 ID:NRf9D8VE0

フーゴは高い頭脳を持ち生まれたものの、裕福な家の両親からは過度な期待を向けられる。
凶暴な衝動を抑えながらなんとか期待に応え飛び級を繰り返したが、
同級生からは妬まれ会話は少なく社会からの疎外感を感じていた。
さらには大学で、尊敬していた教授に裏切られた事を遂に我慢できず暴行。
大学からは教授との関係を疑われ、両親からも疎まれ孤独の身となった。
そして学生という身分を失って行き着いた先がギャングだったのだ。

でもそんな自分の背景に関係なく、同年代の少年として会話してくれるこの少女。
初対面で目下の護衛として扱い、いきなり苛つかせてきたトリッシュの印象とは真逆だ。
縁のなかったはずの学生としての平穏な日常だが、
もし人生の巡り合わせが違えばこんな会話も毎日していたかもしれない。
もちろんフーゴは今までの人生に後悔など持っていないが、そう思うのを止められなかった。
ブチャラティ達と過ごした日常も落ち着く時間ではあったが、それとはまた違う。
フーゴはこんな時間をもっと過ごしていたいとすら感じ始めていた。
ブチャラティ達と離別したからこそ、さらにそう強く思うのかもしれない。
だが、この殺し合いという場ではそんな状況は長くは続かない。

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140 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:37:14 ID:NRf9D8VE0

「最初のターゲットは貴様らだ!」

森の中から何者かが襲いかかってくる!
人間とは思えないスピードで飛びかかってくる男。
まともに攻撃を食らってしまったら絶対にまずい。

「パープルヘイズ!」

フーゴの手前に紫の人型が現れ、男の勢いの乗った殴打と打ち合う。
人間からの攻撃とは思えないくらいの痺れ、同レベルのスタンドと打ち合ったかのようだ。
一体何者なんだこの男!?

「フーゴ君!」

「何っ!? ガードしただと! なんだその人型は!」

この男まで! 二人ともスタンドが見えているだと!
だが初めて見たかのような反応、また無自覚なスタンド使いとでも言うのか!?
いや、主催者が言っていたスタンドの制限というのは、
スタンド使い以外でもスタンドを見えるようにするということなのか!?
フーゴは取り敢えず言葉を交わす。

「貴様ッ! この殺し合いに早速乗ったというのか!」

「フン。私は桃白白、世界一の殺し屋だぞ。
 私がこの殺し合いの場に呼ばれたのは、他の参加者どもを殺してほしいということだろう。
 優勝したらきっちり代金を請求してやる。
 もちろん願いを叶えてもらうのとは別件でな」

「くッ……! 貴様、あの主催者が本当に願いを叶えると思っているのか!?」

フーゴは曜を守るように後ろにやりながら後ずさる。

「7つ揃えれば何でも願いを叶えるというドラゴンボールを主催者が揃えているとすれば、
 何でも願いが叶うというのも自然なことだろうな。
 まあ貴様ごときに優勝は出来ないがな!」

フーゴは対話不能な相手だと理解する。
主催者に対する疑いを持っていない無慈悲な殺し屋に、
殺し合いの正当性を疑わせることなんて不可能だ。
こちらが殺し合いに乗っているということにして組む提案をする手もあったが、
相手はできるだけ多く殺すことを狙っている以上これも不可能。

141 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:38:12 ID:NRf9D8VE0

「僕のスタンドなら何とか出来るかもしれない! 逃げてくれッ!」

フーゴの合図とともに曜が逃げ出していく。

「ふん! 遠ざかっても無駄だ!」

何をしようというのか桃白白は腕を上に掲げる。
そこに力が集中していくのは、気という概念を知らないフーゴでも感じられた。
フーゴの直感が何らかの遠距離攻撃の危険を感じる。
フーゴは逃げる曜の方へ駆け出していた。

「どどん波!」

桃白白は指を差すような形にし、腕を振り曜が逃げた方に向けてくる。
その瞬間、指の先端から謎の光線が発射されたのだ。

「うおぉぉぉーーッ! パープルヘイズ!」

フーゴは曜が逃げる方を追いかけながら、射程5mの紫の人型を向かわせる。
間一髪、紫の人型が光線の前に立ち塞がり、守らんと腕で光線をガードする。
命中する光線。命中した箇所は強く発光して周りを照らす。
下手な銃などよりはずっと強い威力。
フーゴの腕に焼印を押し当てられるような熱い感覚が走る。

「なっ、何なの!?」

後ろからの発光に驚いた曜が足を止め後ろを振り返る。

「はぁ……はぁ……」

光線が終わった。
しかしパープルヘイズは前に出した左腕表面に広く火傷のようなダメージを負い、
余波は上半身の一部までをも焼いている。
パープルヘイズは近距離パワー型の強力なスタンドだ。
岩を砕き銃弾を拳で弾くこともできる。
それでガードしてこのダメージという事は、
人体に当たればガードした部分の余波だけでも体が焼け即死はしないでも致命的であろう。
パープルヘイズが食らった場合も、
まともに急所に食らってしまえば戦闘不能となるダメージになりかねない。

ある程度自意識のあるパープルヘイズは、怒り狂い桃白白に襲いかかろうとする。
しかし射程外なので攻撃は届かず、腕を振り回し威嚇するだけに留まる。
そこで、思いがけず桃白白が語り掛けてくる。

「貴様、不思議な能力を持っているようだな。主催者が言っていた異能の一種か。
 それでも本気を出せば私が勝つだろうが、
 私もできるだけ多く殺したいのにここでいきなり消耗するのは惜しい。
 ここは取引と行こうか。貴様の支給品を置いていけ。
 そうすれば、この場で殺すのはその女一人分で我慢してやろうじゃないか」

142 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:38:46 ID:NRf9D8VE0

まさかの提案。フーゴは必死に考える。
相手は達人の身のこなしでスタンドも見えている。
パープルヘイズの操作精度は悪く、
ほぼ怒りに任せてしか攻撃できない以上警戒されれば攻撃を当てることは期待薄だし、
本体への攻撃を守り切ることもできるか怪しい。
特に曜を守りながら戦うことはまずできない。
ウイルスをばらまけば感染させることにより倒せる可能性は高まる。
だが夜中ではウイルスを光で死滅させるのは難しい。
森の中は月明かりも陰る場所が多く、ウイルスが完全に死滅することを全く期待できない。
一般人の曜はウイルスを避けるのは難しいし、
感染させた状態で相手に触れられたら自分も非常にまずい。

相手との戦闘に役立ちそうな支給品も持っていない。
一粒で怪我を完治させるという仙豆。
ウイルス感染した状態で体を治しても、
夜では周りにウイルスが死滅せず残る以上再感染する可能性が高い。
曜から受け取った銃も相手がパープルヘイズと殴り合える実力を持つ以上、
ミスタのように銃の達人でもないフーゴが使ったところで、
短銃身で狙いがずれやすいことも含めて通用しないだろう。
そしてもう一つの支給品も、少なくとも今戦うために役立つ代物ではない。

フーゴにはこの状況をどうにかできる成功率の高い策が思いつかないことを、
すぐに理解してしまった。
トリッシュのために命を懸けることを躊躇ったフーゴは、
もちろんここで初めて会った一般人の少女のため命を懸けることもできない。

フーゴは観念したように、支給品の入ったデイパックをゆっくり降ろす。

「そんなっ?! フーゴ君!」

「なるほど、理解が早くて助かる」

殺し屋は納得するとともに、言葉を続ける。

「一つ他の奴の情報をやろう。
 知っているかもしれぬが参加者の中のピッコロ大魔王、
 奴は私の生まれるより過去に封印された存在だが、
 名簿に乗っているということは封印を解かれているかもしれぬ。
 奴は地上を恐怖に陥れた伝説の魔王、人間の命など虫けらとも思わないだろう。
 奴なら私の様に、お前を見逃すなどということは無いだろうな。
 強い仲間を集めるなぞして、せいぜい倒せるか頑張ってみることだ」

「くっ……!」

こいつも危険視するような存在がさらにこの島にいるというのかと、フーゴは恐ろしくなる。

「さあ、私の気が変わらんうちにとっとと行け!」

フーゴは逃げ出そうとするが、足がなかなか動かない。
曜の方を見ることができない。
一歩を踏み出し始めたとき、声が聞こえてくる。

「わ……私、フーゴ君のこと責めない。
 フーゴ君一人でも助かることが大事だよね……。
 どうか、もし私の仲間に会ったら私のこと、忘れないでって伝えて……」

フーゴはそれっきりすべてを振り切るように走り出し、見えなくなった。

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143 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:39:20 ID:NRf9D8VE0

フーゴは後ろを振り返らず必死に走る。

やがて逃げた方から聞こえてくる絹を裂くような叫び声。

フーゴは曜が死の恐怖からは逃れられなかったのだと推察した。
やはり一般人の少女があの場面で死の決心をするなど、到底無理なことだ。
自分を決断させて素早く逃げさせるため、一時的に感情を押し殺していても、
本当の本心では、彼女はもっと生きたかったのだ。
また元の日常に戻りたかったのだ。

フーゴは罪悪感と、死にたくないという気持ちがより強くなっていく。
フーゴがもっと馬鹿だったら、凶暴性以外にも感情豊かだったら、きっと涙を流していただろう。

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144 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:39:54 ID:NRf9D8VE0

私は、自分はどうなってもいいからフーゴ君を逃がす、そういう選択をした。
支給品の中に入っていた不気味な仮面。
少なくとも自分の恐怖を紛らわすくらいはできると信じて被ったんだ。
そうすると自然にフーゴ君を逃がすための言葉が心の中から紡がれる気がした。
そしてフーゴ君は逃げてくれた。良かった。
戦うことのできない私でも、最期に一人でも命を助けられて良かった。
迫ってくる殺し屋。とても怖い。
でも私は決心したんだ。フーゴ君に託した。
……でもどうして? 体の震えは止まらない。

自然に足が動いて殺し屋から遠ざかろうとする。
身体がまだ生きたいと言っている。
心の奥にもまだ生きたいという気持ちがある。

「あ、あっ、ああああぁぁぁぁ!」

逃げなきゃ。生き延びたい。走らなきゃ。
お願い! 私の脚、もっと速く!

……えっ? 目の前に人影。回り込まれた?

「逃げようとしたって無駄だ」

息を吐き出してしまう。
掌で体を叩き飛ばしてきたんだ。
後ろの木に叩きつけられる。

「……お、お願い! やめて! 助けて! 死にたくない!
 みんなと帰ってAquorsを続けたいんです!」

「なるほど。貴様の仲間も後であの世に送ってやるから安心してよいぞ。
 どれ、名前と特徴を言ってみろ。料金は主催者にまとめて請求するし必要ないぞ」

……今この人何を言ったの? 私の仲間もあの世に送る……?
千歌ちゃんに、梨子ちゃんや善子ちゃんも殺されるの?
でもここに来てないみんなもいつか遠い未来には死ぬんだから、
そうしたら天国で集まってスクールアイドルができるのかな。
それも悪くないのかな。

……そんなことあるわけない。
こんなところに急に連れて来られて、
こんな人に私たちの人生めちゃくちゃにされるなんて、
ものすごくものすごく悔しい。
私だってまだ生きたいけどもう駄目、でもこのまま死ぬなんてあり得ない。
せめてこの殺し屋に一矢報いたい。
少しでもAquorsのみんなや、フーゴ君が殺される可能性を下げてあげたい。
でも私にはそんな力全然無くて。
何もできない自分が本当に悔しい。

145 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:40:29 ID:NRf9D8VE0



『……反逆する力が欲しいのだな?』

急に襲ってくる頭痛。前頭部を抑えてしまう。
そして頭の中に響く謎の声。一体誰?

『我は元の魂から引き剥がされ、使役されるだけの存在と成り果てている……』

(まさか、さっき着けた仮面から私に話してるの?
 元の魂っていうのは仮面を元々付けてた人のこと?)

『だが……今のお前の仲間を守りたいという反逆の灯、我の魂と同じだ……』

(そう。私にフーゴ君みたいな戦う力があれば、
 Aquorsのみんなを殺し合いから守りたい!)

痛みをこらえて声が漏れる。殺し屋も異変を察知しているらしい。

「そうか、頼っていた男に見捨てられたショックで頭痛が苦しいのだな?
 哀れな奴だ、せめてこれ以上苦しまないよう一撃で殺してやろう」

殺し屋が攻撃の構えに入った。猶予はない。

(お願い! 力を貸して!)

『よかろう……我は汝、汝は我となる……
 覚悟して背負え……
 反逆のドクロを掲げて出航だ!』

殺し屋がとどめを刺すため、指で額を一突きにしようと突進して来る。
でも分かった。仮面を引き剥がす、それがこの声の主を呼ぶ方法!
手を掛ける。ピタリと張り付いてる気がするが、そんなこと関係ない!

「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

生まれてから一度も出したことのないような叫び。
遠くへと森の中に響き渡る。

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146 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:41:03 ID:NRf9D8VE0

しばらく前。森の中の月明かり差す開けた場所。
二人は支給品を確認し合っていた。

曜の支給品は最初の銃とバラバラで入っていた予備弾丸の他には、
小さなカプセルから出てきた衣装ケース。
フーゴがカプセルも亀のスタンドのように大きいものを狭いところに入れられる、
何らかのスタンドなのではと推察した。
中には赤い髪のウィッグと服にヘッドホン。
ウィッグまであるとは変装しろということだろうか。

「これを私がブチャラティさんと接触するときに使えば、
 もっと組織の人たちに察知されにくくなりそうですね!」

「ああ。本当にその時が来たら……よろしく頼む」

そしてデイパックの一番下にまだある何かを取り出す曜。

「きゃっ!」

「曜、どうした?」

曜のデイパックの中から出てきたのは、頭蓋骨のような形のマスクだ。

「ううん、ちょっと驚いたけど本物の骨じゃないみたいだし大丈夫」

「そんなものを支給するとは、主催者も趣味が悪いんだな」

「待って、説明書きもある。
 えーとなになに、この仮面をトリガーにすることで、
 ペルソナ『キャプテン・キッド』を使役することができる……?」

それを聞いたフーゴが考察する。

「使役する……つまりペルソナというのはスタンドの別名だろうか?
 スタンドは持ち主の魂と関係して現れるはずだが、こんなマスクで……。
 いや、亀のスタンド使いもいたのだから物にスタンドが宿っていないとも限らないのか……?」

「つまり、このマスクを使えば私もフーゴ君みたいな人型を出せるようになるのかな?」

「そうかもしれない。
 だが、スタンドの中には本体にも危険を及ぼすデメリットを持つものもある。
 実は僕のスタンドもそれに該当している。
 無闇に試さないほうがよいだろう」

「わかった。でも一応私が持っておくね。
 フーゴ君に私に支給された危険かもしれないものを持たせるわけにいかないし」

----

147 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:41:37 ID:NRf9D8VE0

「何っ!?」

指による刺突は私の額を貫くはずだった。
でも寸前でそれは何かにより阻止され、殺し屋は跳ね飛ばされてゆく。

「貴様、先程着けた仮面の力とでも言うのか!?」

殺し屋は跳ね飛ばされたあと受け身を取り、できるだけ離れたところに着地し顔を上げた。
目の前には謎の船が浮遊して立ち塞がっている。
船の上には船長が佇む。

「こ、これが……私の心に応えてくれた、反逆の魂……」

呼び出した霊体……キャプテンキッドは出現した勢いのまま突進したんだ。
指は船のキールに当たって自分を貫くことはなく、そのまま一緒に跳ね飛ばされたみたい。
キャプテンキッドは黒ずくめの服に、顔は被った帽子のマークと同じ……骸骨。
船も黒ずくめで、掲げられた旗はドクロ。れっきとした海賊船。
私の憧れる船乗りの人々に対して、仇なす存在。
でもこの殺し合いという状況では、
殺し合いをしなければならないという決まりこそが悪。
それに反逆するんだから海賊というモチーフはぴったり。

「ふむ、有用な支給品も色々あるようだな……」

殺し屋は何かを思ったのか、フーゴ君が落としたデイパックの方へ駆け寄っている。

「そ、それはフーゴ君の……!」

デイパックから何かを取り出した。暗くてよく見えない。

「こちらも支給品の力を借りさせてもらうぞ!」

殺し屋がその何かを頭から着けるような動きをする。
ところがその瞬間、突如響くミステリアスな音楽。

「な、なんだこれは!?」

殺し屋は何故か手が勝手に動いてしまっているみたい。
前掛けを上げて裏に何もないことを確認させてくる。

「くそっ! 体が勝手にっ!」

「え? ……えっ?」

前掛けをおろし、その下に手を回し暫くすると……。
なんと持ち上げられた両手には大きな花束が抱えられている。

「ハズレもあるということか! 忌々しいっ!」

私は理解した。
あれはフーゴくんの支給品で、付けた者に手品を強制させる効果がある首飾り。
フーゴ君は後のこともしっかり考えていた。
この殺し屋を弱体化させようと、置いた支給品に罠を貼ってくれていた。
もしかしたら私が逃げられるようにと思っていたのかもしれない。
残念ながらそこまで強力な効果ではなかったみたいだけれど、今の私には充分すぎる。

148 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:42:11 ID:NRf9D8VE0

キャプテンキッドは電撃を出すことが出来るみたいだ。
電撃がうまく当たれば、感電してその部分は痺れて動きがにぶくなるはず。
そしたらフーゴ君から奪った他の支給品も、相手の支給品も奪い返してやる。
そして動けなくさせて二度と殺しはしないと誓わせてやる。

「行こう! キャプテンキッド!
 ヨーーソローー!!」

「何をふざけたことをぬかす!
 私の強さは全く弱まってはないのだぞ!」

殺し屋は手品で出した花束を私に投げつけてくる。
森の中だし近くに咲いてた花を集めて作ったんだろうか。
そんな手品の種を考える暇などない。とりあえずはキャプテンキッドに守ってもら……速い!?

花束にしては予想外すぎる速度。
ちぎれた花びらが飛んできた軌跡を描くのは、幻想的で綺麗とすら思ってしまう。
腕で守る反応すら間に合わず体に食らってしまい、一気に花びらが近くを舞い上がる。
体にダメージが入り思わず咳き込んでしまう。
とても痛い。花束なのに。体育の授業でボールを手加減なしにぶつけられたような強さ。
でも、なんとか耐えられる。
それに目を凝らすと、花束を捨てた殺し屋は次の手品の準備をしなきゃならないみたい。
しかもそれをしながら首飾りを外そうとしていて動きが止まっている。
今しかない。

「くそっ、何だこれは! 外れろ!」

「キャプテンキッド!」

キャプテンキッドが大砲となっている腕から電撃を放った。
初めて意志を持ってやり返した一撃は、
手品に戸惑っていたからかまともに殺し屋に当てることができた。

「うおおっ! 貴様っ!」

「全速前進! キャプテンキッド!」

キャプテンキッドは殺し屋に船で突撃を仕掛ける。
でも流石に警戒されていたのか屈んで避けられてしまった。

「ちょっと強くなった程度で調子に乗りおる!
 貴様ごとき手品をしながらでも倒してみせよう!」

でもこの状況、どう考えても私が有利。
手品をしているうちにどうしても大きなスキができるはず。
そこを狙って攻撃すれば……!

149 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:42:45 ID:NRf9D8VE0

そして手品の途中、相手の殺し屋が片手を上に挙げる。
なにか力が集中しているように感じるけど、手品の演出かな。
これも攻撃のチャンスだ!
キャプテンキッドにもう一度電撃を放たせる。
でもそれが届く前に殺し屋は、その手をこちらに振り下ろして来た。

「どどん波!」

「えっ……?」

指が眩しいと思った後、そこから左頬をかすめる謎の光線。
後ろ髪が少し千切られて、首筋に落ちる感触。
後ろで何かに当たって爆ぜたのか、後ろからの光がこちらを照らす。

さっきフーゴ君を襲った謎の光線と同じだ。
全く撃つ前準備がわからなかった。
フーゴ君を撃つ場面を見てなかったせいだ。

さっきの恐怖心がぶり返してくる。
あともう少し正確に撃たれていたら、頭に光線が当たっていたはず。
光線を撃ってきた腕は、電撃を受けてないから痺れてない。
つまり、少しだけ狙いがずれたのは手品を強制されているおかげ。
フーゴ君の残した首飾りが無くて相手が万全だったなら……きっと私は殺されてた。
力を手に入れた万能感に浸ってしまっていたんだ。
私バカだった。
フーゴ君の言ったブチャラティさんみたいに信念のため命を懸けるんじゃなくて、
何もわからず命を捨てようとする大バカ。
今まで人と戦ったことなんてない自分が急に強くなれるわけなんてやっぱりないよね。
既にペルソナのような能力を持っていて、
戦い慣れていそうなフーゴ君が諦めた相手に私が勝てるわけがなかった。
むかつくけど、さっき言われたちょっと強くなっただけというのは正しい分析だった。

駄目だ、今は逃げなきゃ。
もっとキャプテンキッドの使い方に慣れて、フーゴ君やその仲間、
他の殺し合いに乗ってない人たちと協力しないと危ない。
私は全力で逃げるように駆け出した。
海賊が生き残るためには略奪を無闇にするだけでなく、
敵わない相手からはとっとと逃げることも大事、
そんな考えが頭の中に入って来るようだった。
きっとこのキャプテンキッドの元の持ち主も、
準備が整うまでは強敵から撤退したりしていたはず。

「キャプテンキッド! 足止めお願い!」

でも、もう怯えるだけで何もできない私じゃない。
キャプテンキッドが、今の自分に可能な限りの早さで電撃を連発する。
流石に全部は当たらないだろうけど、避けるのに集中させて足止めくらいはできるはず。

「ぐっ……ぐう……。くそっ。これでも喰らってみろ!」

掛け声の後に、木が大きく動くような音。
そして次には後ろから何か大きな物が森の中を飛んでくるような音。
一体何? 後ろを振り返ろうとする。

150 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:43:19 ID:NRf9D8VE0

「うあっ!」

突如前にバランスを崩して体が地に叩きつけられる。
なんとか反応して手を付けたので、顔をぶつことは回避できた。
木の根が足に引っかかり転んでしまったみたいだ。まずい。
……でもその次の瞬間、背中の上を何かが高速で撫でるようにして通過していく。
そしてその先で轟く轟音。

顔を起こす。
目の前の光景が信じられないし理解が追いつかない。
木が二本重なったように倒れちゃっている。
……殺し屋は森の樹を折るか抜くかして、投槍のように投げてきたみたい。
木を盾にして電撃を防ぎ、逃げる相手を追撃する一石二鳥の手。
転んだことは運が良いことだったんだ。もし転んでなかったら……。
後ろからの攻撃と足下の両方に気をつけながらもう一度走って逃げ出す。
キャプテンキッドは限界まで後ろの殺し屋に電撃を放つ。

「ぐわっ! ……憶えていろ!クソガキ共!」

でも恐ろしい攻撃はそれっきりで、捨て台詞の後はそれ以上が襲ってくることは無かった。
あれだけの攻撃をしたその後には隙が出来て、避けきれず電撃が当たったらしい。
手品と電撃による痺れで身体の自由が遂に利かなくなって、一度諦めてくれたんだろう。
痺れながらも執念深く追いかけてくるようなら持久力が切れていたと思う。助かった。
それでもいつ治ってしまうかわからない以上、今は逃げ続ける。

それにしてもこのキャプテンキッド、
私が殺し屋と戦うことを決意したとき喜んで応えてくれたようだった。
私から殺し屋に渡ったほうが活躍自体ならいくらでも出来るだろうに。
この子は支給品として配られて使役されてしまうだけの存在だけど、
きっとこの殺し合いという状況に反逆してやりたいという気持ちがあるんだ。
こんな不思議でロマン溢れた存在、
善子ちゃんが見たりしたらテンション爆上げしちゃうんじゃないかな。
でも今の自分にとっても、完璧に合っている存在だ。

……そう。今はあいつから逃げるけど、いつかもう一度戦ってその時は絶対勝ってやる。
フーゴ君の支給品を奪ったことも、顔に傷をつけられたこともやり返してやる。

絶対にみんなを傷つけさせたりなんてするもんか!

これが今の私の、この状況に対する反逆の意志!

151反逆の精神 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:44:09 ID:NRf9D8VE0


【B-1/森 深夜】
【桃白白@ドラゴンボール】
[状態]:手品の呪い、痺れ、疲労(小)
[装備]:オリーブの首飾り@魔法陣グルグル
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本方針:出来るだけ多くの参加者を殺して優勝する
1:首飾りを外す方法を知りたい
2:首飾りが外れたらあのクソガキ共(フーゴ、曜)を殺す
3:ピッコロ大魔王の危険性を広め、出来れば他の者に倒してもらう

※参戦時期は悟空に敗北してサイボーグ化するより前のどこかです。

【渡辺曜@ラブライブ!サンシャイン!!】
[状態]:気力消耗(大)、軽傷(左頬の火傷のような怪我、体の打撲)、疲労(中)
[装備]:スカルの仮面@PERSONA5 the Animation
[道具]:基本支給品一式×1、三玖の変装セット@五等分の花嫁
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止めさせ、皆で脱出する
1:今は桃白白から逃げる
2:Aquorsのみんな、フーゴ君と合流したい
3:他の人と協力して桃白白を止める
4:フーゴ君の友人や敵との仲を取り持ちたい
5:ピッコロ大魔王の危険性を伝える

※参戦時期は一期終了以降のいつかです。
※ドラゴンボールについて知りましたが、支給品として存在するとは知りません。
※スタンドについての概要を知りました。キャプテンキッドはスタンドの一種だと思っています。
※フーゴとは知り合いの情報を交換しています。

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152反逆の精神 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:44:49 ID:NRf9D8VE0

フーゴは必死に逃げていた。
早く逃げないと、支給品の罠に気付いて逆上した相手に追跡され襲われる可能性がある。
バッグを渡す前、降ろす間に桃白白に見えないよう役立ちそうな支給品を隠し持ち、
マイナスの効果を持つ支給品を押し付けたのだ。
支給品の説明書きも、誰かに盗られたときのことを考え先に捨てていた。
自分は助かり、優勝するにしても主催を打倒するにしても邪魔な殺人者を弱体化させる。
緊迫した状況でも頭が回り、最も合理的ともいえる選択をフーゴは選んだ。
でもそんな自分のことがとても嫌になる。
出来れば例の支給品の効果による隙に曜が逃げてくれればという願望もなくはなかった。
だが叫び声が結果を物語ると感じてしまう。駄目だったんだ。

「こんな殺し合いから早く逃れたい……。
 くそッ! 一体僕はどうしたらいいんだッ!」

ピッコロ大魔王のことをわざわざ伝えてきたというのは、
そいつが桃白白と同格どころか上回る存在であり、
桃白白は自分で戦いたくなく他の人々に倒してほしいということの可能性も考えられる。
そんな奴すら存在する殺し合いの中で、フーゴは一体どのように生き残ればよいのか。
フーゴは何もできない自分に対して怒りを覚えるが、
今既に怪我をしている自分に凶暴性を向けてもどうしようもないことはわかっている。
まだ抑えられる。

「ジョルノ……君が居れば、ウイルスを使いこなす事ができるのに……」

ジョルノの能力ならば、ウイルスの遺伝子は変質していくがそれに合わせた抗体を作れる。
またウイルスに体の一部が侵されても切除してパーツを作ることが出来る。
ゴールドエクスペリエンスとパープルヘイズはかなり相性が良い。
だが、チームの他の全員がボスに離反する中で、
自分だけがついていかなかったことがやはり尾を引く。
会ったとしても合わせる顔がないのである。
さらには最悪の場合、自分が追手と誤解されて戦いになる可能性すらある。

フーゴは、殺し合いに反抗し自分の生きた証を残そうと決意した少女、
自分の利益のため殺し合いに乗ることを手早く決断した殺し屋の二人と遭った。
だがフーゴは未だに自分の行動指針を決めることができない。
しかし取り敢えず目標を建てる。
この行動は現状からの逃避なのかもしれない。
でもフーゴにとってはそれだけ彼女のことは心残りだった。

「曜の仲間に会って彼女の生き様を伝えなければ……。
 それが出来るまで、僕の体をそのために動かそう……」

後ろからは木が倒れる、いや吹っ飛ぶような轟音までもが響いてきた。
殺し屋が新たな獲物を見つけたのだろうか。
正攻法では絶対自分が叶う相手ではないとの認識が強まり、焦りが強くなる。
フーゴは敵からも現状からも逃避を続けてゆく。


【B-1/森 深夜】
【パンナコッタ・フーゴ@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
[状態]:左腕表面に広く、右腕一部に火傷のような怪我、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:仙豆@ドラゴンボール、ミスタの銃@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風
[思考・行動]
基本方針:生きて帰りたい。優勝狙いか脱出狙いかは決めかねている
1:桃白白から逃げる
2:曜を見捨てたことに強い葛藤。せめて曜の仲間に生き様を伝えなければ……
3:チームの元仲間たちの様子を知りたいが、どう接すればいいかわからない
4:ピッコロ大魔王、桃白白の危険性を伝える

※参戦時期は21話、ブチャラティ達からの離別後。
※スタンド使い以外にもスタンドが視認できていると感づきました。
※渡辺曜と知り合いの情報を交換しています。桃白白に殺されたと思っています。
※ドラゴンボールについて知りましたが、支給品として存在するとは知りません。
※フーゴがミスタの銃の予備弾丸をどれだけ隠せたかは次以降にお任せします。

153反逆の精神 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:45:23 ID:NRf9D8VE0
【ミスタの銃@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
グイード・ミスタが使用していた銃。
6発装填の短銃身リボルバー。
ミスタは服のあちらこちらに弾丸を仕込んでいた。
そのため予備の弾丸もバラバラで一緒に支給されていた。

【仙豆@ドラゴンボール】
青大豆のような小さな豆。食べると10日ほどは何も食べなくてもよく、
更に体力を回復し全身の怪我をたちどころに治すことができる。

【オリーブの首飾り@魔法陣グルグル】
ぷちアニメ5話に(原作、旧アニメにも)登場。オリーブの果実のような珠で編まれた首飾り。
高名な手品師の念が込められた首飾りだという。
かけると意思に反して何らかの手品を披露してしまう。
呪いの装備なので解呪しないと外せないが、
当ロワでは制限により解呪しなくとも2時間で外せるようになる。

【スカルの仮面@Persona5 the Animation】
2話から登場。坂本竜司が認知世界でペルソナに覚醒した時に現れた仮面。
彼のペルソナ"キャプテン・キッド"との契約の証にして召喚するためのトリガー。
本ロワ内では制限により、誰が付けてもキャプテン・キッドを使役できる。
ペルソナに精神が同調していなくとも、仮面が発動のトリガーと分かっていれば使える。
召喚しないつもりで顔から剥がせば譲渡や奪取も可能。
なおアニメ内の描写ではペルソナに覚醒した者は、
認知世界内での身体能力が上がりさらに一部の武器も使えるようになる。
アニメ、ゲーム内で名言されたことはないが外部で裏設定として言及はされているらしい。
これがどこまで適用されるか、あるいは適用されないかは不明。
(メタ的には次の書き手さんが決めてください。)
竜司の使えるようになった武器はメイス類(ロッド、バット、鉄パイプ等も含む)とショットガン類。

【三玖の変装セット@五等分の花嫁】
7話に登場した五月が三玖に変装したときの道具。
ウイッグとヘッドホンに三玖の私服がセットでホイポイカプセルに入った衣装ケースにある。
姉妹以外が使っても多分遠目ならばれない……はず。
ヘッドホンはダミーでなくちゃんと機能する。

154反逆の精神 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:45:59 ID:NRf9D8VE0
投下終了します。
また途中までタイトル抜けをやらかしてますね……

155名無しさん:2019/06/02(日) 10:30:15 ID:6hV86BVg0
投下乙です。
フーゴ、ただで逃げた訳ではなかったんだね
しかし曖昧な立場だと危ないぞ
果たして覚悟を決められるのだろうか

156名無しさん:2019/09/01(日) 18:29:03 ID:z1D94tSc0
保守

157名無しさん:2021/07/19(月) 01:24:44 ID:mP7oQ3s20
なぁこれもう終わり?


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