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オリロワ2014 part3

86THE END -Relation Hope- ◆H3bky6/SCY:2018/11/11(日) 22:21:19 ID:9FwNdzk60
永遠に変わらないような静寂。
空気が凍りついたように固まっていた。
張りつめた空気は一突きするだけで全てが弾けてしまいそうな緊張感を漂わせている。

息を呑むのは怪物と呼ばれた女と、勇者と呼ばれた幼い少年だった。
二人は驚愕と絶望を綯交ぜにした表情で目を見開いて固まっていた。

そんな彼らと対峙するのはどこにでもいるような男である。
どこにでもいて、どこにもいない。
全ての元凶。
この殺し合いの主催者。
ワールドオーダーと呼ばれる一つの厄災。
男は常と変らぬ薄い笑みを張り付けながら、言葉を失い呆然と佇む二人を見つめる。

「一応誤解がないように弁明しておくと、キミが選ばれたのは僕の意思ではないし、もちろんあちらの僕の意思でもない。
 本当に誰の意思でもない。無作為に抽出した結果でしかない。運命や定め、あるいは単純な運。キミが選ばれたのはそう呼ばれるものでしかないんだ。
 ――――いや、あるいはそれを決めた誰がいて、それこそが僕の倒そうとしてる相手なのかもしれないね」

それは此処ではない何処かへ向けた呟きだった。
最悪の体現者が告げる言葉はどこまでも空虚で意味などない。
己の中に他者の存在などない男の言葉は、己自身に語りかける言葉に他ならない。

だが、それも問題なかろう。
どちらにせよ、その言葉は二人の耳に届いてはいなかったのだから。
端的に言えば二人はそれどころではなかった。

全ての希望を打ち砕く死の宣告。
覆しようのない確定した未来。
その死の運命に少年は選ばれてしまった。

田外勇二は、この世界が定めたルールによって殺される。

変えようのない運命が二人に重くのしかかっていた。
呆然自失とした二人に、自らの言葉が届いていいない事すら気にした風もなく男は嗤う。

「だが――――――キミ達は運がいい」

笑みで歪めた口元から、乾ききったこの場にそぐわぬ愉しげな声を吐いた。
蠱惑的な悪魔の声に、焦点のぶれていた瞳が導かれるようにゆっくりと定まってゆく。
二人の目線が、目の前にいる敵をようやく映した。
吐かれた言葉の意味を租借して、大きく息を呑む。

「どういう………………意味だ?」

状況は最悪も最悪。
死の運命に選ばれた不運を前にして、運がいいとはどういう事か?

「こうして、この僕と出会った事さ」

幸運どころか最悪の塊が何をほざくのか。
誰にとってもこの男と出会った事こそが最大の不幸だ。
そんな不審の色を含んだ二人の視線を微笑で流し、ワールドオーダーは自らの首元をトントンと指で叩いた。

「僕の首輪は少し特別性でね。首輪の爆破を無力化する機能が仕込まれている。
 首輪の無効化。この意味が分かるかな? この機能が適応できるのは僕の首輪だけじゃないという事さ。
 つまりは僕を殺して首輪を剥ぎ取れば、」

その説明が終わるよりも早く、オデットの姿が掻き消えた。
現れたのはワールドオーダーの背後、僅かに上空、後頭部が狙える位置。
瞬間移動したオデットが、振り上げた踵を落とす。
その動きが神の奇跡を引き起こし、振り下ろした足から落雷が放たれる。

「ッ………………ぁあッ!?」

だが、雷に打たれたのはオデットの方だった。
落雷は昇雷となって跳ね返り、直撃を受けたオデットが墜ちる。
地面へと叩きつけられた衝撃で、閉じかけていた聖剣に両断された傷口が開き血が溢れる。

「ガ、ハッ………………!?」
「不用意だねぇ。自分が今どういう世界に立っているのかも把握せず動くだなんて」

今現在、彼らをとりまく世界は『攻撃』は『跳ね返る』世界だった。
オデットはワールドオーダーとの戦いは初めてではない、敗北したとはいえその能力は把握していた。
だが、タイムリミットを切られた勇二の命に救いの手をチラつかされ、焦りから確認を怠った。
完全にオデットの失態だ。


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