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オリロワ2014 part3
35
:
勇者
◆H3bky6/SCY
:2018/03/31(土) 17:55:53 ID:IGpGfdUc0
そして運命は大きく変わる。
何者かの悪意に弄ばれるように、殺し合いへと巻き込まれた。
拉致されたのは正真正銘の異界である。
見たこともない衣服を着た多くの人間。
見たこともない材質で作られた建造物たち。
魔法ではない謎の力を使う世界の支配者。
そして同じ舞台に立つ、魔王。
嘗てない異常事態である事は明白だった。
そしてこの地における初戦。
人類最凶の暗殺者との戦闘において醜い裏切りにあいオデットは瀕死の傷を負ってしまった。
普段のオデットは呪いによる飢餓を、強靭な理性と信念、そして聖剣による恐怖心でようやく押さえつけている。
だが、ここに聖剣はなく、瀕死にまで追い込まれたことにより理性が崩壊し魔族の本能が顔を出した。
彼女を咎めるモノは何もない。
そうして初めて人の肉を口にする。
あれ程嫌だったのに。あれ程我慢してきたのに。
どれ程に気高い理想を掲げようとも、所詮魔族は魔族。
一枚剥げばそんなものだと。自らに対する深い失意と絶望。
尤も、あの時はそんなものを感じる理性もありはしなかっただろうが。
それは決してやってはならない事だ。
そう自らに誓いを立てた。
自分がそんなことをしてしまうなど彼女にとってはどうしても受け入れがたい。
だから――――自分ではない他に理由を求めた。
己ではなく己の中に凶悪イメージを仕立て上げた。
ちょうどいい事に、そのイメージを押し付けるのに都合がいい存在がいた。
それは先ほどまで戦っていた、人を殺す事を何とも思わない凶悪なダークスーツの男。
この男ならば、冒涜的行為を行ってもおかしくはない。
血肉を喰らい取り込むという儀式的な行為も都合がよかった。
そう言った経緯があるのならば、内側にあの男が入り込むこともあるだろう、そんな自らを騙す”納得”を得た。
そうして本来のヴァイザーとも違う、自らに襲い掛かってきた男という凶悪なだけの人格に身を任せた。
だが、それも一時的なモノである。
肉体が回復すれば、精神も回復し正気を取り戻すこともあったかもしれない。
だがそうはならなかった。
決定的だったのが第二放送である。
魔王――――ディウスの死を知った。
ディウスが死んでも呪いは解けないという事実を突き付けられたのである。
唯一と言っていい希望が潰えたのだ、心が潰れるには十分な理由だった。
そこからは転がる様に堕ちていった。
人を害し、神すらも喰らい、これまで抑え付けていた衝動を晴らすように暴れまわった。
魔の頂点である邪神の肉は魔族にとっては劇薬だった。
肉体を明確に変質させ、属性に変化と安定を齎した。
もはや後戻りのできない領域で、別の自分が安定してしまった。
そうして、人類最高の暗殺者の手により再び死に瀕して。
そこで自らの醜さを自覚した。
何か恐ろしい物から逃げる様に、訳も分からず駆けだした。
駆ける両足は野太い血管が浮き出て、異常なまでに肥大している。
へし折られた首は異常な筋肉で支えられていた。
その肉体は可憐な少女の物とは呼べない。
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