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複数ジャンルバトルロワアルR2
45
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◆neIGTsycrM
:2016/07/19(火) 15:44:11 ID:FTsiJxV20
この殺し合いの会場に、合計で四の橋が存在している。
そのうち、今彼女が─────妙高型重巡洋艦姉妹が一番艦、妙高が立っているのは、その中でも最も南に位置するもの。
東には市街、西には平原と、真逆の世界が広がるその場所で、彼女は静かに佇んでいた。
「提督…」
呟くのは、先の一幕で勇敢なる雄姿を見せ、しかしそれ故に権謀に謀られ命を落とした勇敢なる青年の呼称。
彼は決して名を名乗る事は無く、自分達艦娘にもただ「提督」或いは「司令官」と呼ぶようにと呼びかけていた。
それが何故かと推測する者、本名を知ろうとあの手この手を試す者、秘密に触る事を良しとしない、或いは単に興味が無いが為に静観を決め込むもの─────様々な話題で盛り上がっていたものだった。
今考えれば、あの剣技もそれに関連するものだったのかもしれないな、なんてことを考える。
けれど。
彼は、死んだ。
艦娘は、深海棲艦との戦争に於ける兵器である。
それはどれだけ可愛げな外見で繕おうとも変わらない純然たる事実であり、表面上は明るく見えようと皆その認識を失ってはいない。
大破進軍という愚行を犯さぬ賢明な提督であったお陰で轟沈する艦娘こそ数少ないが、それでもその心の何処かには永遠に残りチクチクと精神を突き刺す針山がある。
仲間を失う、痛み。
永遠に、その声も温もりも共に過ごす時間もやって来なくなる、そんな苦痛。
誰かの死は、否応なくその誰かを知る人にそんな痛みを植え付ける。
それをまさか、前線に立つ仲間ではなく提督に対して抱く事になるとは思わなかったが。
「皆さんに、何と言えば良いのでしょうね…」
那智も羽黒も、あの鎮守府で過ごす姿はとても楽しそうだった。足柄はこういう事を伝えるには向いていないだろうし、大井と北上の二人に任せるというのもどことなく不安はある。特に、提督を嫌っているような素振りが多く見られていた大井には。
今この場に招かれた中では自分だけが巡洋艦姉妹の中で長女ということもあるし、伝える役目は恐らく自分が担うことになるだろう。
荷が重いとは思いつつも、しかし誰かがやらなければならないことだ。
ならば、そんな役目は妹たちに押し付けるわけにはいかない。
─────尤も。
「まあ、まずは─────帰ってから、ですね」
帰らなければ、話にならない──────話すことすら、出来ない。
殺し合い。
戦争でさえもまだ秩序があると思わせる、血と暴力に塗れていることを端的に表現するワード。
きっと、普段自分たちがしている争いよりも、もっと腥く、もっと無惨な、そしてもっと陰鬱な戦場が広がるであろうことは想像に難くない。
それでも、生き延びる。
この殺し合いを打ち破って脱出し、元居た場所に帰るのだ。
そして──────。
「…さて、行きましょうか」
まずは、この首輪だ。艦娘や妖精の技術を以てしても、簡単には解けそうにないこの首輪。
解決するためのキーワードとしては─────あの男が言っていた、黒の核晶という言葉か。あれを知る人間に会い、話を聞く必要があるだろう。
それ以外にも、仲間を集めることやあの主催の居場所を突き止めることなど、やらなければならないことは少なくない。
橋の縁に立ち、大きくひとつ深呼吸。
ひとまずの目的地は、艦娘の仲間が集まるだろうと思われる鎮守府。そしてそこへと向かうなら、やはりこの方法が一番早いだろう。
深呼吸をひとつして、方角に間違いが無いか確認し。
そうして、彼女は─────水面が眼下に広がる宙へと、その身を華麗に踊らせた。
「いや、ちょっと何やってんのよっ!?」
そして。
彼女が海面へと身を踊らせるよりも早く─────黄金の風が、その身体を攫って飛び去った。
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