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複数ジャンルバトルロワアルR2

27兵士と士官 ◆.J6vxcKjNU:2016/07/16(土) 22:13:14 ID:s6JKGoLg0

 汗がぽたぽたと滴って、空間が熱気で歪む。溶鉱炉における熱さというのは、その他屋内におけるものではなく、
屋外蒸し暑さと同じ、逃れたくともどうしようもできない、包み込まれるような感触なのだ。

 艦娘たちにとって溶鉱炉という場所は、ある種の特別な意味を持っている。
彼女の肢体を取り巻く艤装、あるいは彼女たち自体を構成する、その素材として、鉄鋼は欠かすことができない。
彼女たち――羽黒と那智――は、今までにこんな場所など訪れたことはなかったが、
それでも、なにか、自分たちの出自を刺激するような感覚だとか、始まりの感覚を覚えていた。その逆のものも。

 羽黒と那智は艦娘である。妙高型重巡姉妹の次女と四女、人類の味方として日夜、敵対する深海棲艦と戦っている。
艦娘に対する定義として、明確なものはない。見た目は少女から女性、麗しく、あるいは可愛らしく、
彼女たちが日々を送る基地、巡る時間の中での平和な時間は、彼女たちは外見相応の個性を持っている。
食事に舌包みをうったり、甘味に目を輝かせたり、梅雨空に憂いて見たり――、それこそ何ら生産性のない話に興じたりもする。
しかし、戦場においては、目測で敵を測り、身体に纏う、火器その他、大砲から魚雷までを放ち、敵を容赦なく撃滅する。

 彼女たちは、アンバランスだ。あどけなく振る舞いながら、一般人類の小集団を軽く超える戦力を持つ。
出自も公開されず、ただそうあるから、命、存在を掛けて、指揮官に従い、人類に味方し、敵をなぎ倒す。
定義について、明確でないのも、あるいは故意によるものかも知れない、人類はまた、彼女たちを扱いかねているのかもしれない。

 さて、二人の話に戻る。彼女たちは、平時から姉妹艦の縁として、長女の妙高、三女の足柄も加え、仲良く暮らしていた。
彼女たちはバランスの良い姉妹だった、しっかりものの妙高に、武人然としてどこか抜けている那智、
活発で周囲を元気づける足柄、気弱ながらも芯には強さを持つ羽黒。彼女たちは彼女達の指揮官、提督を取り巻きながら日常を築く。
海軍としての性質上、明日をも知れない生活ではあったが、それでも、それなりの日々を過ごしていた。

 しかし、環境は変わって、殺し合いの舞台に呼ばれ、彼女たちの提督は死に、彼女たちの立場、目的、使命は宙に浮く。
彼女たちの目線からすれば、この場には滅ぼすべき深海棲艦はいない。 いるのは同じ艦娘と人間、判別着きがたい者だけだ。
ここに至って、艦娘は、使命や命令とは違う、独自の判断を問われることとなった。ここにいる二人、那智はいまだに思案にふけり、
羽黒は玉座を目指す道を選んだ。だから、溶鉱炉の二人は、姉妹たる彼女たちは、手を取りあうことはなく――互いに砲をむけている。


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