したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

90's バトルロイヤル

230灰色の男 ◆V1QffSgaNc:2015/11/13(金) 11:07:10 ID:5XOn0UoM0

 逆に、凱が相手ならば、──それこそグレイ個人にとって奇妙な共感を覚える男なのだが──最後にもう一度、一勝負行い、決着をつけたい所だ。
 いや、本来ならば凱との戦いにより散るのが最も望まれる形であると、グレイ自身も何処かで感じていた。
 それこそが本来のグレイに残っている望みであるような、そんな気が……。

「……あのぉ〜」

 と、そんなグレイの元に女性の声がかかった。
 既に人間が接近している事はグレイも感知していたので、驚く事は勿論、振り向く事もない。その参加者がどう動くかは、こちらで観察しているつもりだった。

 ──グレイを避けるか、襲い掛かるのか……。
 そして、結果的に彼女はグレイに「声をかける」という選択をしたわけだ。
 珍しい判断と言えよう。そうなるとは思わなかった。

 グレイは、ラークを指に挟み、ふぅ、と息を吐いた後で、一言。

「……用があるなら少し待て。私の一服の邪魔をするな」
「はぁ……」

 そう言われて、その少女は、グレイのすぐ隣にちょこんと座り、グレイが葉巻を吸い終えるのを待った。
 グレイは、ひとまず彼女の登場にも心を動かすわけでもなく、自分の至福を味わい続けた。

「……」
「……」

 ──しかし、やはり人間にしては珍しい、とグレイも思う。
 ただの人間ならば、グレイのようなロボットに話しかける事も、こうして無警戒に隣に座る事もない。
 年齢は、少なくとも、純粋さが薄れ始めるが、まだ少女と言って良い年代──あのジェットマンのブルースワローよりも少し年下か。
 そのくらいで、さして好奇心を持つわけでもなくグレイに当然のように声をかけ、隣にちょこんと座るというのは変わった性格だ。
 それに着ている服も、少し変わっている。巫女装束という奴だ。
 どこかの神社の巫女なのだろうか?
 ……まあ、そんな事はいい。







 時間が経てども、両者は全くお互い障らず、マイペースに自分の行動を保つ。
 グレイは、一本のラークを吸い続ける。
 彼女は、ずっと不安そうな瞳でぼーっと座り込んでいる。







「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」

 ……グレイのラークが、また一本、吸殻となるだけの時間が経った。その間、二人はただ無言を維持し続けていた。
 吸い終わるのを見計らったかのように、彼女はグレイに再び声をかける。

「あのぉ〜」
「……娘。私に何の用だ」

 まるで彼女の言葉に重ねるように、グレイは言った。
 何かの用があるから、こうしてグレイを待っていたはずだが、少なくともそれが勝負でない事は確かだった。グレイにとって、彼女に用はない。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板