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90's バトルロイヤル

177これが私の生きる道 ◆V1QffSgaNc:2015/11/05(木) 00:23:12 ID:XkQeIA9c0
 柔らかい感触を頬で味わい、まだ少し濡れた左の頬をゆっくりと拭った春麗は、“接吻”を終えた少女の、凛然とした瞳を見つめた。やはり、思った通りの意味であるらしい。
 そして、その気になれば本当のキスが出来てしまうほどのこの距離──何かとてつもない恐怖を覚えた。

「お前も覚えておくね、私の名はシャンプー」

 中国娘は、自らの名前を名乗る。
 ぶっきら棒で、不良めいた言い回し。黙っていれば大人しく無邪気な少女に見えるだろうが、闘争の場に相対した時、彼女の存在は悪魔にさえ見える。
 そして、彼女は即座に、再び三本の刃をぎらつかせた。仮面を外させる事に対して、この鉤爪を奪うのは格段に難易度が上がる。故に、まだシャンプーの右手は刃に覆われたままだった。
 ──殺気。
 春麗は後ろに飛ぶ。

「春麗……おまえ、殺す!」

 シャンプーの声が響くのと、鉤爪が春麗のチャイナ服の胸の下を横一文字に裂くのは、ほぼ同時だった。──今度は、肉体へのダメージはないが、少々嫌な所を破られたらしい。
 胸と腹とを繋ぐ空洞の“段差”のあたりに穴が開く。
 春麗は、もう何歩か後ろに飛び、先ほどより固く構えた。

「──フゥッ! ……あなた、やっぱり勝ち残りを望んでいるみたいね」
「……お前は違うあるか!」
「ただの格闘大会なら喜んでそうさせてもらうわ……でも、生憎、人の命を奪う趣味はないのっ!」

 春麗は、グロックを構え、シャンプーの脚を狙って引き金を引く。まずは無力化を狙った。春麗はこれでも捜査官の中で指折りの射撃の名手である。格闘戦だけでなく、警察官としてのあらゆる能力において、男性にも引けを取らない名刑事だ。
 胴のように、ずぶの素人でも命中させられるわかりやすい的を狙う必要はなかった。
 たんっ! と、銃声が鳴る。──しかし、シャンプーは、それが命中するよりも早く、右方に回避し、速度を増して春麗に肉薄した。

「アイヤァッ!」

 春麗の胸があった場所に向けて鉤爪の切っ先を向けながら、シャンプーは駆けだす。
 だが、それよりも早く、春麗は足を地面の上に置くのをやめ、飛び上がった。──シャンプーは、空中で膝を曲げる春麗の真下を駆け抜けていく。

 猪突猛進に春麗を狙ったシャンプーの一撃は、そのまま、春麗の背にあった麻袋へと突き刺さった。腹立たしそうにそれを思い切り引き抜くと、麻袋には相当大きな穴が開いたらしく、真っ白な粉が大量に零れて落ちる。
 どうやら、春麗の背にあったのは、小麦粉の山だったらしい。

「──……理由は何かしら? それだけ実力を磨きながら、こんな戦いに乗る理由は……!」
「教える必要はないあるっ!」

 再度、シャンプーの背後にいた春麗に向けて、鉤爪は空を掻く。
 春麗に接近し、一振り、二振り、鋭い刃たちが空ぶった。
 シャンプーの攻撃の角度やタイミングを読み始めていた春麗が、軽いフットワークで回避に徹したのだ。
 対して、春麗にはまだ幾つか使用していない切り札もあった。

「教えてくれなきゃ、困るのはあなたの方だけどねっ!」

 言いながら、春麗は二つの掌を床につき、倒立をするように自分の体重を持ち上げた。しかし、倒立と決定的に違うのは、両脚を開いている事である。
 そして、その手を放し、そこから繰り出されるのは、腕を床の上で回し──全身を駒のように回しながら、回転蹴りを何度も敵に叩きつける荒業。

「スピニングバードキック!」

 なんとこの技、本来なら手を一度地に着かなくてもやってみせるというのだ。
 何発もの蹴りがシャンプーの頬に命中する。春麗の脚線を見れば、まるで丸太の直撃を受けるほどのダメージを受けるのではないかという心配をする者も現れるだろう。
 シャンプーが動機を秘匿する限り、春麗も“理由なき殺人者”として、シャンプーを冷酷に追撃しなければならない。──同時に、説得も不可能になってしまうと来ている物だから、シャンプーにとってはデメリットの方が大きい。
 こんな荒業をぶつけるにも躊躇がなくなる、というわけである。


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