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90's バトルロイヤル
155
:
一瞬の花火
◆V1QffSgaNc
:2015/11/02(月) 23:40:48 ID:6PYifF5M0
ポップは、この時、一度、座り込んでしまった。
彼の周りは、一面、紫色の植物に囲まれている。鼻が詰まっていて気にならなかったが、凄く温かい香がした。
紫の綺麗な植物、この香り……なんという名前なのだろう。
それで……少し落ち着いてから、ポップは手元にあったデイパックの中身を確認した。
そう、考えてみれば、この中に入っているものは、今日を生きる糧だ。上手くすれば、意外な使い方をする事で主催打倒の手がかりになるかもしれない。
少なくとも、どれだけ打ちのめされていようとも、ポップは「正義感」だけは捨てない人間だった。
こんな時でも、大魔王バーンや、ノストラダムスを倒す事は頭から外していないのである。
むしろ、それを強く願っていたからこそ、しるしが光らなかった事や、クロコダインが死んだ事にあまりに強いショックを受けていたのだろう。
──みんなでやり遂げる、という事が出来なくなったからだ。
「ん? 名簿……?」
ポップは、この殺し合いに招かれた者の名前が載ったリストを手に取っていた。
ダイを探す彼の意思が呼応したのかもしれない。
すると、その名簿には、ダイ以外にも、ポップの知る名前が幾つか載っているのがわかったのだった。
「キルバーン……バーン……ハドラー……だって!?」
そこにあったのは、今、ダイやポップたちが倒そうとしている者たちの名である。
大魔王や、かつての魔王が敵になっている。一応、名目上、ポップはダイや彼らと「最後の一人」の座をかけて争っている事になるわけだ。
ノストラダムスの言葉に乗る気はないが、もしポップが最後の一人を志す場合、実力の時点で大きな壁が出来ている。
流石に正攻法での勝利は不可能なのは明らかである。
彼らが同名の別人や偽物でない限りは、ポップの実力の遠く及ばない所にあるだろうし、現状ではポップも負けを認めよう。
ダイですら、バーンなどとは今、真正面から一対一で戦って勝てるのかは微妙な所であるといっていい。
だが……それ以上に気になったのは──。
「ノストラダムスは……あいつらより強いってのかよ!」
そう、あの三人を拉致して連れてくるノストラダムスの実力だ。
おそらくは、彼らより上にあるといっていい。何らかの魔法や術でも使えば別だが、彼らがそんな物に引っかかるだろうか。
大魔王を倒すには、クロコダインを含めた何人もの仲間が絶対的に必要だった。
……いや、しかし、考えようによってはプラスな部分もある。
バーンやハドラーがここに連れてこられてきているという事は、元の世界で戦っている者たちも大破邪呪文の中断以上の混乱に見舞われているわけだ。魔王軍も地上侵攻を進める事ができないという事になる。
それに、ポップの目的は最後の一人になる事ではなく、ノストラダムスを倒す事だ……。
もし、バーンやハドラーが同じ目的を持っているとするなら──いや。
ハドラーはともかく、バーンやキルバーンともなると、ポップや弱者は必要とせず、そもそも協力して脱出を寝返るほど対等な関係とはしないかもしれない。
やはり。
ポップがすべきは、ダイとの合流だ……。
仮にバーンたちと出会っても、上手く行くかはわからない以上、うっかり遭遇しない限りは、上手にバーンたちを避けながらダイたちを見つけたい。
(よしっ! ……泣いてても仕方ねえよな。
今俺がやるのは、大破邪呪文(ミナカトール)を完成させる事じゃなくて、ノストラダムスを倒す事だ!
それなら、こいつが光らなくたって……これまで通り、ダイと一緒に、勇気で乗り越えればいいんだ!)
ポップは、そう思って思い切り立ち上がった。
すると、ポップの視界には、先ほどまで全く見えなかった、“別の参加者”の姿があった。背の高いラベンダーたちに囲まれた場所では、お互いの姿が見えにくかったが、確かにポップはそれを確認した。
どうやら──ポップより多少年上程度の女性である。
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