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オリロワアース

1名無しさん:2015/05/06(水) 16:45:35 ID:pYFZnHTQ0
ここは、パロロワテスト板にてキャラメイクが行われた、
様々な世界(アース)から集められたオリジナルキャラクターによるバトルロワイアル企画です。
キャラの死亡、流血等人によっては嫌悪を抱かれる内容を含みます。閲覧の際はご注意ください。

まとめwiki
ttp://www9.atwiki.jp/origin2015/

したらば
ttp://jbbs.shitaraba.net/otaku/17154/

前スレ(企画スレ)
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/13744/1428238404/

・参加者
参加者はキャラメイクされた150名近い候補キャラクターの中から
書き手枠によって選ばれた50名となります。

また、候補キャラクターの詳細については以下のページでご確認ください。

オリロワアースwiki-キャラクタープロファイリング
ttp://www9.atwiki.jp/origin2015/pages/12.html

企画スレよりキャラメイク部分抜粋
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/13744/1428238404/109-294



地図
ttp://www9.atwiki.jp/origin2015/pages/67.html

14イントロダクション( 作者:◇5Nom8feq1g氏):2015/05/06(水) 16:58:37 ID:pYFZnHTQ0
 
 捨て台詞を吐いて西崎が受話器を切った。
 いつも通りの光景。いつも通りの流れ。
 
「――いつも通りに解決して、いつも通りに戻らなきゃなぁ」

 私立探偵は首をゴキリと鳴らし、肩を回転させて、腕をまくった。
 だがどうやって解決すると言うのだろう。『旗』を出している犯人は、この世界にはいないと言うのに。
 

【世界座標(0,0,500000000)――アースセントラル】


『こちら世界観測管理システムAKANEです。
 世界座標(0,0,300) アースBR(ブレイク)への世界統合試験を行います。
 統合対象の主な世界は
 アースR
 アースP
 アースH
 アースMG
 アースF
 アースM
 アースD
 アースA
 アースE
 アースSR
 アースSF
 アースEZ 以上の12世界です。
 その他、小さなアースや観測不可能なアースの混入可能性も数%存在します。』

『統合準備には一週間ほどの期間と莫大なエネルギーを使用します。
 さらに、統合が完了した場合、アース内にはもとあったアースの内1つのアースしか残りません、
 他のアースは世界の構成エネルギーとなって霧散します。
 よってAKANEからの提案ですが、
 統合準備の間、各アースからランダムにメンバーを選出し、
 統合後に残るアースがどれなのかを決めるというのはどうでしょうか?』

『了解いたしました。
 では各アースからランダムにメンバーを選出し、決定試験を開始いたします。
 なおこれに際し、アースDではフラグの大量発生が確認されますが、よろしいでしょうか?
 ……はい。では行います。
 方法は――アースRでのわたくしの意向に準拠し――アースの名称を一時的に変更――』



『殺し合いによる、選出といたします』



【世界座標(0,0,300)――アースBR(バトルロワイアル)】



 かくして、殺し合いのために造られた世界にて。
 選ばれた命たちによる、殺し合いが開始される。



※殺し合いは、アースセントラルにサン・ジェルミ伯爵が働きかけたことにより開始された世界統合実験です。
※OPおよび登場話で出てこなかったアースは遡って修正されます。

15そして世界が生まれゆく( 作者:◇aKPs1fzI9A氏):2015/05/06(水) 17:00:51 ID:pYFZnHTQ0
 


―――当再生ディバイスの電源オンを確認しました。所持者参加者番号121、承認中です………承認しました。
───世界座標確認。x=0,y=0,z=300。アースBR、確認チェック、完了。―――了解、当参加者の参加を許可します。

───これより、音声プログラムを再生致します。よく聞き取れなかったり音声の不具合を感じられた方はHELPボタンを押してください。───また、この音声プログラムは一時停止、巻き戻し、早送りが出来なくなっており、一度しか再生されません。よくお聞きくださいませ。───ピー、という発信音の後に再生を開始します。再生の準備が整いましたらSTARTボタンを押してください。───再生を受け付けました。音声プログラムを開始いたします。───ピー。





皆さま、如何お過ごしでしょうか。私は今回の進行役を務めさせていただきます『世界観測管理システムAKANE』と申します。以後お見知りおきの方をよろしくお願いします。皆さまの貴重なお時間をいただきながら皆さまの眼前に現れずこうやって外部音声のみで説明を終わらせることをどうかお許しくださいませ。さて早速本題に入らせていただきます。

唐突で申し訳ないのですが───皆さまには本日から三日間の間、お互いに殺し合いをしていただきます。突然のこちらからの提案に皆さま思う所があると思います。ですが話を進めさせていただきます。批判の方は受け付けません。

16そして世界が生まれゆく( 作者:◇aKPs1fzI9A氏):2015/05/06(水) 17:01:36 ID:pYFZnHTQ0
 
続けます。皆さまには、一人一つずつディパックを配らせていただきました。そちらの方には最低限の食料と水、この会場の地図、当プログラムの参加者候補リスト、その他役に立ちそうな物を入れさせていただきました。武器なども入っておりますので、当音声プログラム再生後、ご確認くださいませ。


次に皆さま、御自分の首の方をご確認ください。鉄製の首輪がついてらっしゃるかどうかの確認をおねがいします。もしついていない場合、当方の方までディパックの中にある携帯電話でご連絡をお願い致します。そちらの首輪は、例えばこの会場から脱出しようとした。または一定時間毎にこのディバイスに送られる音声フォルダで呼びかける禁止エリアに五分間居た。という際に爆発するようになっております。
皆さまの中には腕に覚えがある方大勢おられると思いますが、どうか私たちに反抗しようとするのはおやめください。そういった場合でもこちらから首輪を遠隔操作に爆発させますので、どうぞお気をつけくださいませ。

最後に大切な事を言わせていただきます。先ほど述べました首輪の、皆さまの喉元の近くの部分にアルファベットが一文字か二文字、書かれていると思います。そちらの方が、こちらが《一定法則》に沿って分けさせていただいた『チーム』になっております。最後の一人になるか、参加者様方が一チームのみになるか。この二つをこのゲームの終了条件とさせていただきます。
またいくつのチームに分かれるか、各チームがそれぞれ何人いるかは当システムも把握しきれておりません。申し訳ありません。把握しだい皆様になんらかの形で連絡いたします。
それと、チームに人数差や戦力差に大きな違いがある、と判断していただいたとしてその件を私達に言ってもこちらの方で調整はできない仕様となっております。予めご了承願います。

以上が今回のルールとなっております。何かご質問等ございましたら先ほど述べました携帯でご連絡をお願いいたします。なお、ルール以外のご質問は受け付けておりません。ご了承下さい。

では皆さま、また数時間後の放送でお会いできることがあれば。








───再生が終了しました。当音声プログラムファイル名「Re;Start」の方を自動消去いたします…消去しました。以後この音声プログラムを再生することは出来ません。───この音声プログラムは自動的に消去されました。この音声プログラムは自動的に消去されました───


====================================

17そして世界が生まれゆく( 作者:◇aKPs1fzI9A氏):2015/05/06(水) 17:02:23 ID:pYFZnHTQ0
 
「また随分ガサツで荒い説明じゃないかAKANE。こんな時代遅れな物まで持たせて」

暗い部屋の中であった。部屋を照らす明かりはどこも点いておらず、何百という液晶からの発光が液晶の周囲のみを照らしている。
天然パーマの眼鏡をかけた一見うだつのあがらない男、研究員名「オブザーバΔ」は多くの液晶のうちの一つにそう言い放った。
右手にはICプレイヤーのような物が握られている。彼はそのプレイヤーの「START」を押すと、そこから無機質な女性と思われる機械音が流れ始めた。

『そちらの方が、こちらが《一定法則》に沿って分けさせていただいた『チーム』になっております。最後の一人になるか、参加者様方が一チームのみになるか。この二つをこのゲームの終了条件とさせていただきます…』
「…チーム戦とはなんだ。そんな必要はない。単純に人間が殺しあう姿が見たい者だっている。それを求めた彼らがいたから【コレ】が開けたというのに」
「ではΔ(デルタ)、あなたは彼らのためにこのプログラムを開催するのですか」

オブザーバΔの言葉に返したのはその液晶の中に映るプログラムであった。
世界観測管理システム『AKANE』。アースセントラルを中心とした各世界線を総括、オート管理しているプログラム。
彼女(AKANEには正式な性別はないのだが、ここではそう呼ぶことにする)の存在を示すように、液晶に映る波長が大きく動いている。

18そして世界が生まれゆく( 作者:◇aKPs1fzI9A氏):2015/05/06(水) 17:03:07 ID:pYFZnHTQ0
 
「Δ、当プログラム中の基本的管理は私に一任したと昨日の記録音声に入っております。従いまして介入するとなるとその記録音声を一度デリートし、そこから―――」
「…分かった分かった。基本的なところはお前に任せる」

オブザーバΔは髪を掻き毟りながら、彼女の長い説明を遮るようにしてAKANEに返答した。
Δの目的である「各世界の統合化」を果たすためには、彼女の存在は不可欠なのである。故に、彼女に参加者の選択、細部のルール、まったく新しい世界軸の設計…さまざまな仕事を一任し、自分の目的を達成することができた。
だからこそここでAKANEに居なくなっては困るとΔは考える。彼女に自分の意識が無いというのは分かっているが、変に彼女の作り上げたプログラムに口出すことはこのアースBRの崩壊にも繋がりかねない。
「彼ら」、サンジェルミ伯爵やデュルド・ドエナール達の要望に逆らうようでやや気が引けるが、茶菓子でも出せばあの貴族かぶれたちは許してくれるだろう。
何より、自分のやりたいことが出来るというだけで充分である。ひとまず、それだけでもいい。

「AKANE、1stと2ndといった他オブサーバーの介入は阻止しているか」
「その点に関しては心配ありません。このアースBRは他の世界軸から観測されることはないです」
「では他の3rd研究員たちはどうした」
「三日前の発言を基にして、存在をアースセントラルから消滅させました」

Δは、自らの味方であると分かっていても時たまAKANEの計画には驚愕することがある。
確かに3rdの他の研究員たちの存在は特に邪魔であった。そのことを述べたのは事実だが、存在まで消してしまうとは知らなかったし、何よりそのような大幅な介入を起こしても、アースセントラルへの影響が皆無だということも末恐ろしい。
―――こちら側に引き入れて成功だった。
そうΔは心の底で思うと同時にAKANEに対して口を開く。

19そして世界が生まれゆく( 作者:◇aKPs1fzI9A氏):2015/05/06(水) 17:03:58 ID:pYFZnHTQ0
 
「…相変わらず恐ろしい《女》だなAKANE」
「発言の意図が読めません。私は1管理プログラムです。人間のような性別はありません」
「あぁそうだな、君はプログラムだ。だからこそ―――私の計画に必要だ」
「感謝いたします。では当音声プログラム【Re;Start】を各参加者に配布します。よろしいですか?」

無機質な音声が鳴り響く。液晶にはYESかNOかだけ映る。
音声プログラムを配布するということは、このゲームの開始を意味する。
Δの目には、迷いはなかった。

「―――じゃあ始めようAKANE。すべては世界軸の統合のためだ」

Δはそう言うと、そっとYESの方をタッチした。
液晶に文字の海が出来上がる。やがてその液晶を基点とするように部屋中の液晶にも、文字の海は広がっていく。
やがてすべての液晶に広がりきった後―――それを確認したかのように。

『管理者による承認を確認しました。これより当プログラムを開始致します』

一言、無機質な音声が部屋の中に響いた。


※主催者は
オブザーバΔ@アースセントラル
世界観測管理システムAKANE@アースセントラル
サンジェルミ伯爵@アースF
デュルド・ドエナール@アースF
の四人です。ここからAKANEが更に人を呼ぶこともあるかもしれません。
※参加者は右手に音声が入ったICプレイヤーが握られた状態で、各エリアに飛ばされます。プログラム開始と同時に送られた音声を再生する導入の案内が流れるシステムです。アースFやアースEといった世界軸の機械知らない人々対策に。
※ICプレイヤーの見た目はセンター試験の英語リスニングのときに配られる音声機器をイメージしていただいたら嬉しいです。イヤホンはついておらず、直接音が出る仕組みとなっています。
※AKANEやサンジェルミ、ドエナールたちがなんらかの形でプログラムに介入することもあるかもしれません。

20名無しさん:2015/05/06(水) 17:05:59 ID:pYFZnHTQ0
 
パロロワテスト板より転載終了です。
なお全書き手枠の関係上、今転載した前日譚の登場キャラクターでも
本編に出てこないという可能性が普通にありえますのでご了承ください。

予約解禁は本日5/6(水)の21:00から、場所はしたらばの予約スレです
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/17154/1430840201/l50

経験問わず書き手の皆様の作品をお待ちしています。

21名無しさん:2015/05/06(水) 17:17:41 ID:PrZ2tPrE0
状態表テンプレートを転載しておきます



【エリア/場所/経過日数/時間】

【キャラクター名@出身世界】
[状態]:
[服装]:
[装備]:
[道具]:
[思考]
基本:
1:
2:
3:
[備考]

22名無しさん:2015/05/06(水) 20:10:09 ID:M0S2jPRA0
スレ立て乙

23 ◆laf9FMw4wE:2015/05/07(木) 01:19:12 ID:Bm0dl3U60
投下します

24我魂為麺 ◆laf9FMw4wE:2015/05/07(木) 01:19:51 ID:Bm0dl3U60
「――――オーマイガッ! 我がパスタがどこにもないッ!」

ムッソリーニがここに訪れて最初に発した言葉がそれだった。
彼が最初にした行動はルールの確認でもなく、自分の作っていたパスタを探ること。
微粒子レベルでもデイパックにパスタが入っている可能性はあるのだ。それを確認しないムッソリーニではない。

だが現実はそう甘くない。
彼にとって命にも等しき存在はもう彼の手元に存在せず。己の総てを奪われたような喪失感と、愛人を奪われたが如き怒りがムッソリーニの全身を駆け巡る。

「パスタ――パスタパスタパスタパスタパスタパスタパスタパスタ」

愛しき名を幾度と無く呼ぶが、返事はない。
これまで情熱を捧げてきたパスタがないという残酷な現実。たったそれだけで、イタリア共和国首相はこうも不安定になってしまう。
もしも彼にパスタの麺や材料でも支給されていれば、パスタおじさんは獅子奮迅の活躍をしたことだろう。しかしそれは所詮、もしもの話で。

「ファッキンジャップ! 俺からパスタを奪うとは、あのクソビッチ断じて許せん」

だからこうして、主催者に怒りをぶつける。
自分が殺し合いに巻き込まれること自体はどうでもいいが、パスタを奪われたことが許せない。
パスタは人生だ。トイレでも、お風呂でも、寝る時も――いつも傍にはパスタがついていた。

「―――取り戻さねば」

パスタを。
燃え盛る魂を。
我が情熱を捧げてきた愛しき存在を。

「クソビッチ、貴様だけは殺す」

愛すべきパスタの為に。
再び祖国へ戻り、パスタを振る舞う為に。

「ゆえにパスタの仇を――尊厳を取り戻す戦争を始めよう」

何も知らない者が聞けば、なんとも馬鹿げている巫山戯た理由だ。されど、その覚悟に一点の偽りもなし。
彼にとってパスタは己が魂と同等の価値を見出していた存在であり。それを取り戻す為に命を懸けることは、男として至極当然。
誰に嘲笑われようが構わない。パスタ大好きおじさんと指をさすのならば、それでも良い。
しかし我が魂を――――パスタを奪うことだけは決して許さぬ。それだけは絶対に譲れない、ムッソリーニの誇りなのだから。

25我魂為麺 ◆laf9FMw4wE:2015/05/07(木) 01:20:24 ID:Bm0dl3U60

♂ ♀ ♂ ♀

パスタ大好きおじさんがパスタに情熱を燃やす一方で、甘味処の看板娘はのんびりとしていた。
この場に似つかわしくない、ふりふりの着物と頭頂部にリボンをつけた愛らしい少女――徳川家康は、だが男だ。
自分が復活した際に少女となったことや、平賀源内の意味不明な発明を始めとして摩訶不思議なことには慣れっこだし、殺し合いも元戦国武将にとっては既に経験済みのことであり。

「困ったのう。ただ看板娘として人生を謳歌していただけなのに、よもや殺し合いに巻き込まれるとは……」

それほど動揺することもなく、自分の失態に苦笑していた。
もしも平賀源内の存在を認知していなければもう少しは驚いたかもしれないが、彼女がそれなりの頻度で引き起こすハプニングの数々を聞いていれば、今回の騒動を現実だと受け入れることも難しくない。
それに最近の江戸はよくわからない異変が多いのだ。異国の者が唐突に出現するわ、柳生十兵衛がいきなりどこかへ消えるわで意味不明である。
ゆえに自分が異国へ転移する可能性や、自分が何らかの形で巻き込まれる可能性は少なからず考えていた。まさか殺し合いなどという形で実現するとは、思ってもいなかったが。

「それにしても、ちーむ制の殺し合いか。まるで戦国時代を再現しているようじゃな」

戦国時代。
それぞれの武将やその部下が己が命と誇りを懸けて戦った、群雄割拠の時代。
戦乱の世を生き抜き、天下統一を果たした家康はその時代の勝者といえるが――彼女は決して驕っていない。
様々な武将の生き様や武勇を知る彼女は、彼らを猛者と認めている。
そんな家康だからこそ――――彼女はニヤリと微笑した。

「だがしかし、それを再現しようと思っているのならば無理じゃ。
 此度の戦には夢がない。希望がない。多くの武士が求めていた浪漫がない」

そうだ。彼女の知る武士は、いつだって浪漫を追い求めていた。
各々の手段こそ違えど、天下統一という夢に向かって必死に突っ走っていたのだ。
女が見れば阿呆と思える行動であるかもしれぬが――――男が命を懸ける理由はそれだけで良い。

「命に背けば首輪を爆破する? その程度の脅しに屈するならば、誰も天下統一など夢見ておらんぞ」

天下統一を夢見て、血反吐をぶち撒けてきた男たちに下らぬ脅しは通用しない。
戦国時代は死が隣り合わせの世界だ。彼らはいつだって、自分の死を覚悟した上で戦ってきた。
それは家康とて変わらない。性別や姿形は変われど、戦国武将としての精神は魂に刻み込まれている。

「それにワシには待っている客がいる。彼らに甘味を振る舞う為にも、ここで足止めされるワケにはいかんのじゃ。
 だがだからといって、あの声の命令に従うつもりも毛頭ない。一度死んだワシが、まだ将来のある生者を無差別的に殺すというのも心苦しいからのぅ」

これでも彼女は天下統一を果たした猛者、徳川家康だ。
その気になればチームを率いて殺し合いを制することも難しくないだろう。
そんな可能性を認めた上で、敢えて彼女は別の道を選んだ。果てしなく険しい道だと理解して、それでも彼女は決めたのだ。

「ということで此度の戦は辞退しようかのぅ。
 ワシの目的はただひとつ――――お主を成敗して、この下らぬ遊戯を終わらせることじゃからな」

ゆえに彼女は、自信に満ちた表情で堂々たる宣言をする。
敵が未知の技術を有する謎の組織であっても、それに怯えるほど天下人の肝は小さくない。
そして家康は、敵陣へ征く為に一歩を踏み出し――――。

「ファッキンジャップ! 俺からパスタを奪うとは、あのクソビッチ断じて許せん」

パスタおじさんの怒声を聞きましたとさ。

「ふぁっきんじゃっぷ? ぱすた? ……もしかして、これのことじゃろうか?」

支給品を確認した際にデイパックに入っていた袋を再度確認する。
見たこともない未知の言語が複数並び、その中にご丁寧に日本語で“ぱすた”と書いてあった。

「うーむ。これは届けてやらねば、面倒なことになりそうじゃ」

これほどの大声を張り上げるということは、男にとってはこのパスタとやらが余程と大切なのだろう。
もしも届けぬまま行動して見つかれば、パスタを盗んだとかそんなことを言われて、無益な争いに発展する可能性も有り得る。ゆえにここは男に接触して自主的にこのパスタを渡すのが最善だと家康は考えた。

26我魂為麺 ◆laf9FMw4wE:2015/05/07(木) 01:21:06 ID:Bm0dl3U60

♂ ♀ ♂ ♀

「第一次パスタ戦争の幕開けだッ! チーム戦など関係ない、俺の狙いは貴様だけだクソビッチ!」

大声で戦争の開幕を宣言するパスタおじさんを見て、苦笑する家康。
一方のパスタおじさんは、流石とも言うべきか。少女の存在に気付くこともなく、ただひたすらにパスタのことや女を捕えて処刑する手段を考えている。

「さっきから何度か呼びかけておるのだが……聞こえておらぬか。
 ええい――このぱすたが目に入らぬか!」

某時代劇のように掲げられる紙袋のパスタ。
厳密に言えば麺しかない状態で、これだけでは使い道のないものだが――。

「ん? 今パスタって言ったな? パスタがどうした? パスタがパスタがパスタがパスタが、パパパパパ――――パスタだと!?」

言うまでもなく、パスタおじさんには効果抜群である。
頬を叩いて夢でないと確認した後、少年のように目をキラキラと輝かせてパスタを眺めるムッソリーニおじさん(48)。

「うむ。やはりお主が探していたのはこれであったか。
 ワシには価値がわからぬし、どうやらお主の持ち物らしいから……ほら、受け取るのじゃ」
「有り難い。……先程は無礼な態度をとってしまい、済まなかった。謝罪しよう」
「なに、ワシは何も気にしておらんから大丈夫じゃ。それより、そのぱすたについて教えてくれぬか?」

「ほう! 知りたいか、パスタについて!」
「あー、乗り気なようで悪いのじゃが、出来るだけ簡単に――」
「遠慮する必要はない。パスタについて隅から隅まで教えてやる」

――そしておじさんはパスタについて熱く語り始めた。
信長であればブチ切れるレベルの至極どうでもいい話を聞かされても、しっかりと相槌を打つ家康は流石の貫禄である。

「――つまりパスタは人生だ」
「成る程。お主のぱすたに注ぐ情熱とぱすたの素晴らしさは理解した。
 ……理解したのじゃが、こうも聞かされると食べたくなるのが人間というものじゃ。ここで調理することは出来ぬのか?」
「言われなくとも調理するつもりだ。パスタの恩は、パスタで返す――それが俺の流儀さ。
 幸いにもここには学校が存在する。家庭科室まで行けば、調理器具や食材もあるだろう」
「うむ。ならばまずは、そこを目指そうかの。この遊戯を終わらせるのが目的じゃが、焦る必要はない。食材があるのなら、甘味やぱふぇを料理することも出来るし、一石二鳥じゃ」
「同感だ。俺もパスタを侮辱したビッチは許せんが――それ以上に今はこのパスタを調理したい」

「ぱすたを侮辱したびっち? 誰のことじゃ?」
「このICプレイヤーに録音された声の女だ。パスタを侮辱した罪、断じて許さん」
「ふむ、やはりお主も逆らうのじゃな。この女に」
「俺のチームはAで君はEだ。逆らうつもりじゃなければ殺しているさ」
「そうじゃのう。殺しているかどうかは兎も角、ワシを襲っていたはずじゃ。
 ……長い付き合いになりそうじゃから、名乗っておくかの。ワシの名は徳川家康じゃ」
「ベニート・ムッソリーニだ」
「うむ。これからよろしく頼むのじゃ、むっそりーに」
「ああ。共にパスタの素晴らしさを伝えよう、イエヤス」

戦国時代に天下統一を果たした武将とイタリア共和国首相。
二人の偉人は互いの素性を知らないまま、硬く握手を交わした。

【C-5/平野/1日目/深夜】

【徳川家康@アースE(エド)】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム0〜2
[思考]
基本:この下らぬ遊戯を終わらせる
1:むっそりーにと共に学校へ向かってぱすたや甘味を食す

【ベニート・ムッソリーニ@アースA(アクシス)】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム1〜3、パスタの麺
[思考]
基本:パスタを侮辱したクソビッチを処刑する
1:イエヤスと共に学校へ向かってパスタを調理する

27 ◆laf9FMw4wE:2015/05/07(木) 01:21:58 ID:Bm0dl3U60
投下終了です

28名無しさん:2015/05/07(木) 16:34:53 ID:vvLKMBEk0
投下乙!日本のトップとイタリアのトップがまさかこんな形で出会うとは。
パスタ大好きおじさんに期待しかない…wwww

29 ◆laf9FMw4wE:2015/05/07(木) 19:21:46 ID:Bm0dl3U60
投下します

30信長様の為に ◆laf9FMw4wE:2015/05/07(木) 19:22:21 ID:Bm0dl3U60
明智光秀は織田信長を慕っていた。織田信長は明智光秀をこれ以上ない程に信頼していた。
固い絆で結ばれた二人に適う敵は存在しない。織田軍は破竹の勢いで覇道を突き進み、遂に天下統一を目前とした刹那――。
本能寺にて豊臣秀吉の策略に嵌められ、織田信長は命を落とすことになる。

だがそれでも――忠臣、明智光秀は諦めなかった。彼は執念だけで敵軍の首を刎ね飛ばし、秀吉をあと一歩のところまで追い詰めた。
されど奇跡は永く続かない。自らの命惜しさに裏切った織田軍の兵が、光秀の心の臓を穿ったのだ。
そうして息絶え絶えになり、己が人生の幕引きを感じ取った光秀は、焼け焦げた信長の死骸に寄り添い共に死を選んだ――。

それがアースPで語り継がれている、明智光秀の歴史。
アースEなど様々な世界で信長を裏切ってきた光秀と違い、アースPの光秀は最期まで忠を貫き、果てた。
理由は単純。信長を誰よりも信じていたから。彼にならば、命を差し出しても構わないと思っているから。
だからこそ最期の瞬間まで信長の為に戦える。秀吉を恨むことはあれど、自らの最期に悔いはない。

その想いは今でもずっと変わっていない。
過去から現在まで、信長のことを忘れた日など一度もない。
たとえ性別が変わり、その情が別のものになりつつあったとしても――――。

♂ ♀ ♂ ♀

「……ここは?」
『───これより、音声プログラムを再生致します』
「この音声は、ICプレイヤーから? いつの間にこんなものを……」

右手に何か妙な感覚があると思えば、何故かICプレイヤーを握っていた。そこから流れる無機質な女性の音声は、不気味としか言い様がない。
アイドルとして活動していた光秀にラブレターや悪戯で音声を録音して送り付けてくる輩もいたが、今回の音声は完全に異質。恐らく自分を連れ去った者はこの女なのだろうと、直感する。

『───再生が終了しました』

耳を傾けてみれば、女の話している内容は滅茶苦茶なものだった。
批判は受け付けないが互いに殺し合え。反抗したら首輪爆破で殺す。チーム戦で、最後の一人になるか、一チームのみになれば終了。
はっきり言って頭の痛くなる内容であるが、金属のひやりとした感触が、音声の言葉は偽りではないと証明している。
もちろん首輪を爆破することなど、ただの脅し文句である可能性も有り得るが――だから反抗しようと決めるほど、光秀は思い切りがよくない。
先程の音声を何度も、何度も思い出して光秀は慎重に今後の方針を考える。

(一定法則に沿って分けられたチーム――ということは、もしや信長様もいるのでは?
 そして信長様は間違いなく、私と同じチームにいるハズ。完全ランダムなら兎も角、法則性があるのならそれ以外は有り得ない)

《一定法則》に沿って分けられたチーム。あの女はたしかに、そう言っていた。
他にも様々な言葉が流れていたが、光秀が何よりも注目した点はそこだ。

(特に根拠はないが――私があの女なら、親しい者や知人を同じチームにする。
 そうすることで他者を殺害する者も出てくるだろうし、積極的に他チームと争わせるにはそれが最も手っ取り早い。
 それに私と信長様は、深い信頼で結ばれているのだから、チームが違うということはまず有り得ないっ!)

光秀は自分と信長が同じチームだと確信した上で考える。
どのような法則で分けられているか説明されていないが、織田信長と明智光秀の二人はよくセットで紹介されている人物だ。
歴史の教科書から小説、はたまた偉人を女体化したライトノベルやゲームにも――明智光秀は織田軍の忠臣として登場する頻度が高い。
光秀が予想した親しい者や知人を同じチームに配属させる説が合っていれば、信長も同じチームでなければおかしい。

(しかし信長様が今の変わり果てた私を見て、どう思うのだろうか?
 アイドル活動している時はファンからも人気があって、容姿もよく褒められるけど……信長様の好みかなぁ?)

光秀は卑弥呼に蘇生された際に美少女へ変わった。
アイドルにスカウトされる程に優れた容姿は、男ならば誰しもが目を引くと言っても過言ではないだろう。
それは光秀自身も自覚しているし、ナンパをされた数だって数え切れないほどにある。ファンだって大量に存在する。
だけども――それでも、信長に気に入られなければ、光秀にとっては意味がないのだ。

たとえ信長以外の世界中に住まう人間が光秀のファンになったとしても、信長が褒めてくれなければ光秀は悲しむだろう。
今の彼女は忠臣であり――――そして恋する乙女でもあるのだから。

31信長様の為に ◆laf9FMw4wE:2015/05/07(木) 19:22:53 ID:Bm0dl3U60


恋心に気付いたのはつい最近で。
昔はそんなことなかったのに、少女になってからは信長の心を考えるだけで胸がドキドキとする。
卑弥呼に尋ねたところ、それは不治の病――――恋だと聞かされた。

(それ以上に。わ――私などがこ――こここここ、恋する資格はあるのでしょうか、信長様?)

そう思うだけで、思わず頬が赤くなってしまう。
何を考えているのだ。自分は織田信長の忠臣、明智光秀だというのに、どうして恋などと――――。
この場にアイドル仲間の宗矩がいれば、動揺するこの心を鎮めてくれたかもしれないが――不幸にも彼女の姿はどこにもない。まあ彼女に恋をバレるのも恥ずかしいので、幸運なのかもしれないが。

(ひ――久々に信長様に会えそうだからといって、こうも取り乱してしまうとは……我ながら情けない。
 本来ならばもっと気合を入れなければならないのに、どうしてこうも胸が高鳴ってしまう……。空気を読め、私の胸!)

一生懸命に胸の高鳴りを抑え込もうとする光秀。
アースPの信長は当然ながら故人であり、卑弥呼から蘇生もされていないのだが、それでも光秀は信長がどこかで生きているか、自分のように復活していると信じている。
だからこそ今回は彼女にとって、信長と再会する絶好の機会でもあるのだ。多少は舞い上がってしまうのも仕方ない。

「――――私のうつけがぁぁあああ!」

ぱちーん、と頬を叩く音。光秀は理性を取り戻す為に自らの頬を叩いたのだ。

「……私は信長様の忠臣なのに。信長様の為に働く必要があるのに、こうも浮かれていてどうする!
 せっかくのチーム戦で、信長様と勝利することも出来るというのに……私はどうしようもない莫迦者です、信長様!
 しかし――信長様を想う気持ちだけは誰にも負けておりません。それだけは、胸を張って云えます。
 だから信長様――――私が他のチームを殲滅して信長様を勝利へ近付けてみせますので、その時はその……お褒め下さると嬉しいです」

そして再び、今度は気合いを入れるように頬を叩いて――。

「期待してお待ち下さい、信長様。この光秀が信長様の軍を勝利へ導いてみせます!」

その表情に、もう迷いはない。
何故なら彼女は織田信長の忠臣であり、恋姫なのだから。

「……あ、そういえば私の連れていたのぶのぶもいない!? のぶのぶも探さなければぁぁあああ!」

【A-3/森/1日目/深夜】

【明智光秀@アースP(パラレル)】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム1〜3
[思考]
基本:信長様の軍を勝利へ導く
1:愛犬のぶのぶを探す
[備考]
※織田信長と同じチームだと思い込んでいます

32 ◆laf9FMw4wE:2015/05/07(木) 19:23:20 ID:Bm0dl3U60
短いですが投下終了です

33名無しさん:2015/05/07(木) 19:57:17 ID:hu6HOXj60
>パスタの恩は、パスタで返す――それが俺の流儀さ。
なんかもう逆に大物だなパスタ大好きおじさん
そしてこのパスタの流れにも動じない家康もすごい…w投下乙!
そして光秀まできたか、需要は歴史にありだったのか…?

34名無しさん:2015/05/07(木) 23:42:47 ID:bd7FoUPo0
投下乙!
え、なにこの娘かわいいんだけど
でも中身はおっさんなんだよな…うぐぐぐぐ…

35名無しさん:2015/05/08(金) 01:15:41 ID:I3YtTWrE0
代理投下します

36柳生有情剣 ◇/MTtOoYAfo:2015/05/08(金) 01:16:13 ID:I3YtTWrE0

「この音声は削除されました…」
「…おいおい、何だこりゃあどうなってる」

困ったことになっちまった。
今の俺の一言で述べてみるとそう言える。今日は久々の剣客商売、しかもおエライさんからの依頼だってのに。こんなことしてる場合じゃないだろうよ。
俺、柳生十兵衛(やぎゅう じゅうべえ)は頭を掻きむしりながらボソっと呟いた。
あの露出少女かつ俺の居候先の主人こと不死原霧人(ふじわら みすと)が、「偉い人に会うんだから身なりをしゃんとするのよサムライ!」だとかなんとかで着慣れない「すーつ」を着までしたっていうのによぉ。あーあ散々だねえ。
俺はどうもこの服が嫌いだ。なんでわざわざ体にぴったりとした服を着る必要がある。んな格好しちまってたら、いざっていう時剣を鞘から抜きにくい。単純に慣れてないだかもしれねぇがね。

(…まあいいさ。チャッチャッとあの訳わからんこと言ってる奴らを切り伏せちまおうかね)

そうだ。親父殿までとはいかんが、剣術であればそんじょそこらのモンには負けねえ自信がある。
腐ってもこちとら、柳生一派の新陰流(しんかげりゅう)の後継者なんでね。次の仕事のためにあの意味分からんヤツの居場所見つけて切り捨てるとすっか。
俺はそう思い鞘に手をかけようとした。

「…あれ?」

…かけようとしたんだ。柄の部分に手をかけようとしたんだが、その俺の手は空を切ることになった。

そこで気づいた。俺の三池典太(みいけてんた)が無い。俺の愛刀が。脇に差していた俺の刀が。

(うっわー…)

やっちまった。何処で落とした?忘れてきたか?霧人の家か?
いや、それは絶対ない。侍の魂とも言える刀だ。俺の愛刀だ。
しかも刀だけじゃない。常に持ち合わせてる鉄扇も無くなってる。衣服にいつも忍ばせてるはずのモノがだ。

…と、なると。俺の三池典太取ったのが誰か居るって訳か?
ただこんな場において、モノ取りでもされたとはどーも考えにくい。俺の刀と、ましてや懐の鉄扇を気づかれずに取る力があれば、ついでに殺すはずだ。
だとしたら…

「あのあかねってヤツが、取ったってことか」

まったく殺し合いさせる気があるならなーんで俺から武器を奪うかねえ。
…まあそりゃあさあ。正直霧人ん所に来てから俺も緩くなっちまったとは思う。けどな、流石に柳生家の一員として教えられた命とも言える、そして侍の魂とも言える刀を取りやがるってのはどういうこった。
一人知らない世界に来た俺という存在を繋ぎとめる唯一のモノが、無くなっちまった。

37柳生有情剣 ◇/MTtOoYAfo:2015/05/08(金) 01:16:37 ID:I3YtTWrE0
「かーっ、流石にオイタが過ぎるんじゃないか」

そりゃあこっちは徳川イエミツをぶん殴ったせいで親父殿から絞られた身だから、キレるのはよくねーのは知ってるさ。
ただ流石に、流石にこれはちょーっと見過ごせないだろう。

俺の魂を、侍としての魂を取り返さなくては。元の世界に帰るに帰れない。

(ぬるま湯につかりきってたみたいだが、どうもここじゃそうは行かないみたいだ)

定期的に現れる敵達を、ただ仕事と称して切り伏せる日々。
希望に満ちた学生たちに模範的な剣道を教える日々。
そんな定期的な生活慣習では生き残れないし、剣も取り返すことができない。
そんな当たり前はもう通用しない。
覚悟を決めなきゃならないみたいだ。刀を取り返して、これを開いた阿呆共を斬り捨てる。
反逆するなとかなんとか言ってるがどうでもいい。刀を返してもらった瞬間に斬ってしまえば殺される心配もねえだろうよ。
実践形式は久々だが、待ってろよ観測しすてむなんちゃら。

「と、なったらどうすっかねぇ。どっか建物の中でも入って貰ったモンの確認でも…ん?」

そうやって俺は一息つくと目の前、大体三十歩くらい先の方で少女が走っていってるのが見えた。
表情からは焦りが見えた。口は下がり、目からは涙が出ているようにも見える。
年齢は霧人よりわずかばかし年下か?しかも女子(おなご)と来た。

「はぁー、あんな子すらここに呼ぶとはねぇ。悪趣味なこった」

霧人が「せっと」した髪の毛をぐしゃぐしゃ、とまたかき回して、俺はその子の元へと向かっていったのだった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆>◆

「…はあっ、はあっ、はあっ」

怖い。
黒髪でセーラー服の少女、花巻咲(はなまき さく)の頭の中はそれ一色であった。いつも通り部活を終えて、友達たちと帰りにクレープを食べて。
明日の宿題を怒られないようにせっせとやって、いつも通り布団に入ったはずなのに。
なんだこの首輪は。なんだあの音声は。そしてどこだここは。そして、なんで自分がいるんだ。

(なんで、なんで、わたしなの?わたし、なんか悪いことした?)

自問するが、答えは帰ってこない。真夜中で一人。その状況は孤独と不安感を更に倍増させる。
更にディパックの中に入っていて、今は右手に握られた鉄パイプの冷たい感触が、非日常感を尚更強くさせているようにも感じた。
焦りからか、恐怖からか、咲の足取りはいつの間にか早くなっていた。
そして段々と、そしてまたこれもいつの間にか、咲は走っていた。
行き場も無く、打開するという訳でもなく、人を殺すという訳ではなく。ただひたすらに走っていた。
理由はない。ただ、単純に怖いのだ。『殺し合い』をさせられるということが、あまりにも非現実すぎて。

38柳生有情剣 ◇/MTtOoYAfo:2015/05/08(金) 01:17:01 ID:I3YtTWrE0
(助けて、助けて幸太せんぱい。助けて花子ちゃん。わたしもうやだよ意味わかんないよ)

つい最近付き合ったばかりの彼氏、山村幸太と、自分の友人である片桐花子の姿が頭に浮かんだ。幸太は笑顔が爽やかで、イケメンで、でも何処か抜けているのがたまにキズの男の子。
でも何より自分のことよりも咲を一番に考えて優しく接してくれる人だ。
片桐花子は、自分がジャック・ザ・リッパーの生まれ変わりだとかなんとか不思議なところはあるけれど、よく一緒に買い食いをしたりする、仲が良い友達だった。
その山村幸太も片桐花子も、今この場所に居ない。自分を守ってくれる彼は、今いるはずがないのに。
早く、安心感が欲しかった。助けが欲しかった。死にたくない、こんなところで───






「おい、そこのお前さん!ちょっと止まってくれねぇか!」





唐突に男の声が、咲を呼び止めた。後ろの方からだ。
咲は振り返るのも怖かった。自分を殺そうとしてるかもしれない。
しかし咲はその気持ちを押し殺して、走りながらゆっくりと後ろを振り返った。
もしかしたら、もしかしたら誰か助けに来てくれたのかもしれない。だから呼び止めているのだろうと。
その一抹の期待がそうさせたのか、咲は少し、頭を後ろにやった。自分をこの悪夢から目覚めさせてくれるような、ヒーローがそこにいるのを信じて。




「くそっ、待たねえかこの野郎っ!!!」





しかしそこには、ピンチを助けてくれそうなヒーローではなく、まるで獲物を狩る野獣のような眼光で、今にも自分を殺そうとするような形相のスーツで長身の男が自分を追ってきていたのだった。

「いやあああああああああああっ!!!」

咲は大声を挙げた。自分でもこんなに大声が出るのかと不思議に思うくらいに。
後ろの男はその声を聞いて驚いたのか、走るのを止めた。
そして咲も、大声を出した事で咲のさらに荒くなり、その歩みを必然的に止めることになった。
荒い息を制しながら、目の前の男に目をやる。自分と同じようにこの殺し合いに巻き込まれた証拠である鉄製の首輪を巻いている。
目を凝らす。喉元の所に書いてあるアルファベットは、『H』。
自分の文字は、最初の音声放送後確認した。『R』。つまり、この男は自分の敵だ。

「ちょ、ちょっといいか?お前さん誰かに追われてんのか?」
「やだっ!やだっ!私は帰る!こんなところから早く逃げて、帰るんだっ!花子ちゃんやせんぱいが待つ、普通の世界に帰るんだ!」
「…おいっ!落ち着け、大丈夫だ、俺は何も危害は───」

男が言い切る前に、咲は自分の持っていた鉄パイプを構えた。
咲は武道の心得はない。ましてや暴力沙汰なんて一番嫌いだ。本が友達だったような自分にとってそういったことはまったく無縁だった。
だからこそ腰は引けていて、両手でただしっかりと握り直しただけだ。
しかし、咲にはそういったことはどうでもよかった。必要なのは、元の世界に帰るために、元の平和で当たり前が続く日常に帰るために、殺られる前に殺らなきゃならなかった。
そのことに躊躇はない。自分の恐怖心よりも、使命感だとか、そういったものに近い感情が彼女を揺れ動かしていた。

「おい!お前さんやめろっ!降ろせ!」

男が静止する言葉を振り切るように、咲は男のもとに走り出した。別に狙いはない。ただこの鉄パイプを大きく振りかぶるだけ。その文章が咲の頭を支配していた。

「あああああああああっっっ!!」

自分を奮い立たせるように声を振り絞る。
優しくて大好きなせんぱいが待つあの日常に。ちょっと変だけどかわいい花子のいるあの日常に。家で待つ親や兄弟たちが待つあの日常に。
咲は大きく、大きく鉄パイプを男の頭上に振りかぶった。
その愛する日常に帰るために。

(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい)

そう、最後に罪の意識を感じながら、大きく、頭上に振りおろした。

39柳生有情剣 ◇/MTtOoYAfo:2015/05/08(金) 01:17:23 ID:I3YtTWrE0

ぐさっ。




しかし、振りかぶった後に男の姿はなかった。目の前には土に刺さったままの鉄パイプがある。

(なんで、なんで?ちゃんと振りおろしたはずなのに)

咲は目の前のことが理解できず、この状況を理解しようとする。
後ろに避けたか?鉄パイプから前に視線を向けるが、男は居ない。ならばどこへ───


「ガキが…そんなもん振り回すんじゃねえよっ!!!」

その声がした瞬間、黒い『何か』が咲の右脇に写った。そして、動く黒いそれが、先程鉄パイプを振りおろしたその男と気づくまで、多くの時間はいらなかった。

そして、右脇腹に走ったのは衝撃と聞いたことない鈍い音。
そのあと襲いかかったのは、信じられない程の激痛だった。

「かっ……はっ……」

今まで人生で体験した事無い痛み。その痛みに、ただの平凡な女子高生である咲が耐えれるはずもなく、その場に崩れ落ちた。
徐々に意識が遠くなっていく。瞼が重くなってきている。痛みは続いているが、おそらくこのあと自分は殺されるのだろう。
怖い。怖いが、その恐怖を感じずに死ねるというのなら───それはそれでいいのかもしれない。

(…幸太せんぱい、花子ちゃん、お母さん、お父さん、ごめんなさい…)

咲は諦めに近い気持ちを胸に抱きながら、闇の中へと意識を飛び込ませたのだった。

=============

「…やっちまった」

拝啓親父殿へ。またあなたの息子はやっちまいました。人生初女子の脇腹に一発殴打を加えちまいました。
いや、避けるまではよかったんだけどなあ。つい授業の体術の授業の癖でやってしまった。いけねえいけねえ。
俺がいる世界でこういう一般の子に危害を与えちまうのは、確か重罪だったかなんとかだと、霧人が授業で習ったと言っていた。
つまり、このままだと俺は元の世界に帰ったところで有罪になっちまうということになる。

…いやいやいや!それはダメじゃないか?それを防がなくては。なんとかしてこれが正当防衛と許してもらえるためにはどうすればいいんだ。

「…この子に誤解を解いてもらうしかねぇよなぁ。殺し合いに乗っちまってた場合は口封じるために殺すしかねえだろうけど…それも気が引けるしなあ…」

俺は目の前に倒れた少女を肩に担ぐと、彼女が持っていた鉄パイプを握り、辺りを見回す。
ここでこの子が目覚めるのを待つのは危険だ。何処か建物の中にでも入って、身支度を整えるついでにでも、覚めるのを待てばいい。

(ん?なんだあのはいからな建物。南蛮風?ってやつか…)

東の方角を向いた時に見つけたのが、大きな南蛮風の館だった。
ああいうところはどーも苦手だが、屋根もあって突然の雨は防げるだろうし、何より夜をこのまま迎えるのも危険だ。仕方ねえか。
ちょっくらあそこまで行ってみてこの子と話をしてみますかね。


俺はまた大きなため息を吐いた。さっさと終わらせて、元の場所に帰らないといけねえ。あと三池典太も取り返さないといけねえ。
あー。色々大変そうだなー。ちーむたとか色々あるけど頑張れ俺。

(あ、今日メシ作る当番俺だったか…こんな事してる場合じゃねえぞほんと。帰ったら何作ろうかなあ。霧人が好きな卵料理でも作ってやっかなあ)

40柳生有情剣 ◇/MTtOoYAfo:2015/05/08(金) 01:17:46 ID:I3YtTWrE0
【G-4とH-4の境/森/1日目/黎明】

【柳生十兵衛@アースH】
[状態]:罪悪感、焦り
[服装]:スーツ
[装備]:鉄パイプ@アースR
[道具]:花巻咲のディパック、支給品一式、不明支給品1~3
[思考]
基本:刀返してもらってすぐに主催者を切り伏せる
1:この子を館に連れて行ってとりあえず話を聞く
2:基本挑む奴には容赦はしない。
3:今日の献立を考える
[備考]
※ディパックの中身を見ていません。

【花巻咲@アースR】
[状態]:気絶
[服装]:学生服
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:帰りたい…
1:…
[備考]
※気絶中です。

41柳生有情剣 ◇/MTtOoYAfo:2015/05/08(金) 01:18:03 ID:I3YtTWrE0
代理投下終了です

42 ◆/MTtOoYAfo:2015/05/08(金) 01:22:59 ID:7hU66ku.0
投下&代理乙です!
咲ちゃん…相手が悪すぎる…

柳生さんつええて思ったけど
>3:今日の献立を考える
これで吹いた

43名無しさん:2015/05/08(金) 01:24:39 ID:7hU66ku.0
あ、これ俺の作品でしたすみません。いかんいかん徹夜がたたったすみません

44名無しさん:2015/05/08(金) 06:20:57 ID:xDtAuSd20
徹夜するとそういうこともあるさ
投下乙です、十兵衛さん武器没収はAKANEちゃんの外道ぶりが光る
つい手を出してしまった十兵衛さんだが良好な関係と今夜の食事を作ることはできるのか
にしてもフツーにフツーの恋する女学生花巻ちゃんの怖さと焦りが伝わってくるSSだー

45 ◆5Nom8feq1g:2015/05/09(土) 16:18:32 ID:1LvoUPDM0
皆さん投下乙です、投下します

46死線上のアリア ◆5Nom8feq1g:2015/05/09(土) 16:19:18 ID:1LvoUPDM0
 

 月の綺麗な夜の森、

「けっ……気にくわねぇな」

 と紫ツインテールの少女が言った。 
 『ではみなさま、また数時間後の放送でお会いできることがあれば――』と。
 簡素な連絡事項を流し終えたICプレイヤーを見つめて、吐き捨てた少女の名は松永久秀という。

「誰の策謀だか知らねぇが……俺様にこんな世迷事を強制させるとは、全く気に食わねぇ」

 パチパチと“たき火”の燃える森の中の開けた場所で、蜘蛛の巣柄の浴衣を火にあてつつ、
 切り株に座りICプレイヤーを聞いた松永久秀は、自分がふざけた策謀に巻き込まれてしまったことを理解した。
 理解すると同時に少女の心中に湧いてきたのは怒りである。
 殺し合いをするような状況に対しての怒りではない。殺し合いを「させられる」ことに対しての怒りだ。

 松永久秀はかつて男であり、そして武将であった。
 織田とか豊臣とか徳川とかがいる、あの戦国時代の武将であった。
 色んな濃いキャラがいる戦国時代の武将の中で松永久秀がどんなキャラだったかというと、
 長らく仕えていた織田信長からこんな言われようをするようなキャラだった。

『――松永? あいつマジでヤバいよね。普通の奴なら一生かけてやるヤバい悪事、三つもやってるからね。
 しかもワシ、二回も裏切られてっからね。一回許したのにもう一回裏切ったのって、アイツくらいのもんじゃないの?』

 策謀が得意で、茶道や礼儀にも長け、めちゃくちゃ頭が良いにも関わらず、
 自分勝手で強欲で、上を目指すためなら裏切りや虐殺などヒール行動にためらいのない超現実主義者(リアリスト)。
 それが松永久秀という武将であり――そんな久秀は、誰かの思い通りに踊らされるのを何より嫌いとする。

「1人残るかチームで残るかするまで、ただただひたすらに殺し合い。
 ひゃっはは、理由も意味も告げずにただそれだけを強制する豪胆さは嫌いじゃねぇがなァ……。
 俺様が、死にたくないなら茶器譲れって言われて茶器と一緒に自爆して死んだくらい捻くれてるってこと、
 “アカネ”とかいう女はちゃんと調べたのかァ? 調べた上でやったんなら――それこそムカつくぜ」

 そんな松永久秀に首輪を付け、殺し合いを強制すると言うことは。
 久秀からしてみれば、大々的な宣戦布告に等しかった。
 つまるところ「松永久秀は“首輪を付けて飼える取るに足らない存在である”」というアピールをしてきたということなのだから。
 怒ってもいいですよ、下手に刃向かえばもう一度「爆死」ですけどねという、挑発に相違ないのである。

「ああ、苛つく苛つく。そもそもだな、俺様が蘇らされたのも、
 安倍晴明のやつのドジかなにかだって話だったしな……いやあの陰陽師も俺様ほどじゃねーが策謀家だ、
 こういうときに俺様をここに送り込むために、わざわざ悪人であるはずの俺様を蘇らせておいた、と考えることもできるか。
 だとしたら俺様は“アカネ”とかいう女だけじゃなくて、あの陰陽師にも踊らされてるってことになるなァ、おい」

 久秀は、一度死んだ。
 織田信長に謀反をとがめられ、許すから茶器を渡せと言われたのを拒否って茶器と共に爆死して、逝った。
 自分勝手に気ままにやりたいことをやりきって死んだ。
 だが、蘇らされた。

 彼女が蘇った世界、「E」は江戸時代が終わらずずっと続いた日本。
 江戸時代までは基本「R」と同じだが、そこからひどい分岐の結果、妖怪なんかも現れるいびつな歪みが発生していた。

 そこへ安倍晴明というどえらい陰陽師が蘇って来ていて(幼女の姿で)、その陰陽師は妖怪に対抗するためか知らないが、
 日本の歴史上の偉人を手当たり次第に蘇らせる術を使っていたのである(なぜかみんな少女で)。
 松永久秀もその流れで蘇らされ、少女になった歴史人物の一人なのだ。 
 当然ながら安倍晴明の下にはつかず、久秀はアースEの現代でも少女の姿すら利用して悪の限りを尽くしていたが……。
 
「気に食わねぇ、気に食わねぇな。
 俺様、こんな紫の流れるくらい美しいツインテールによぉ、ぱっちりした目につやつや肌の小顔、
 少女じみたつんつるてん体型に驚きながらも、蜘蛛の浴衣一丁羽織りつつ、第二の人生エンジョイしてたのにさァ。
 こんな催し、踊らされるままに殺されるのも、踊らされるままに乗るのも気にくわねぇよなァ……よし決めた」

47死線上のアリア ◆5Nom8feq1g:2015/05/09(土) 16:20:57 ID:1LvoUPDM0
 
 うんうん頷きながら、腕を組んで、どうやらこれからの方針を決めたようだった。
 久秀はにこりと笑って、
 近くで燃えている“たき火”のほうに目を向けて、“たき火”に向かって間の抜けたような声を掛けた。

「悪いけど俺様、しばらく殺し合うの辞めるわァ」

 “たき火”は、久秀を憎悪のまなざしで見つめ返しながら、その言葉に言葉を返そうと試みた。
 しかしその首には強靭な紫の糸が深く食い込んでいて喉を締め上げており、“たき火”は発言することを許されなかった。
 ただ喉の底から絞り出すかのようなうめき声を漏らすのみだった。

「……アアァ、ア……」
「だからお前も別に殺さなくても良くなったんだけど、
 ま、そんな状態で生き延びても辛いだけだろうしそろそろトドメ刺してやるよ。ひゃはは、俺様、優しいよなァ!」

 久秀は糸に吊るした着物が乾いたかどうかを確認しながら、上機嫌に高笑いする。
 ――それもこれも開始直後、水を操る妖術使い? 魔法少女と名乗っていただろうか?
 ともかく怪しげな術を使う蒼髪の女に「アナタの心から邪気を感じる」とかなんとか因縁つけられて絡まれたのが始まりだった。
 否定する理由もなかったので殺し合うことになったが、水の術で服は濡れるわ、ICプレイヤーを聞く暇もないわ、
 いろいろ散々な目にあった。久秀はまずそこで非常にムカついたのだった。

「……アァ、アグ……」

 でもまあ蘇ってこっち、久秀は当然ながら安倍晴明を裏切って彼女が戦っていた妖怪側に付いたため、
 妖術にも通じるようになっており、今では不老不死じみた再生能力に加え、色んな糸を吐く蜘蛛を操ることが出来るようになっている。
 蜘蛛の糸で拘束してしまえば、水の妖術使いもただの“たき火”だ。
 “たき火”は女の四肢を糸によって縛り付けて、その上からこれまた質の違う糸で作られた布を巻いて作った。
 この布に使われている糸はよく燃える糸、四肢を拘束しているのは燃えにくい糸だ。
 久秀は被せた布――蓑とでも呼ぶべきか、それに支給されたマッチで火を点けて“たき火”を作ったのだった。

「普通なら余裕で死んでるだろうに、可哀想だなあ、対抗する術があるってのはさァ。
 お前はもはや水の力を自分の体表面に使って、火を中和し続けることしかできないんだもんな。
 でもまあ、楽しませてもらったぜェ、ひゃはは……あ、最後になんか言うことあるかァ? 喉ゆるめてやるから言うなら言えよ」
「ガ……あ……うあ、あぁぁああッ! こ、殺す!」

 すでに30分近く火だるまで踊り続けた女だが、
 水の妖術で身体を護ったためか、髪がショートになったのと全身に軽度の火傷が始まってるくらいで元気なものだった。
 
「殺す……殺してあげる……あなたは私が……私たちが必ず殺す」
「物騒なこと言うなよなァ、殺し合いに反抗? するって意味じゃ俺様とお前、志は同じなんだぜ?」
「あなたのような邪悪な存在が……善良になんてなるわけない、わ……! 何をたくらんでいるの……!!」
「いや別に企んでもねぇよ。普通に乗るのも癪だから、ちょっと様子見ようかなって思っただけ。
 チーム戦ってのも気になるしなァー。他のメンバーが嫌な名前の奴らばっかりだったらそいつらのために殺すのもバカらしいだろ?
 なにより主催に今は一番ムカついてっからな……そいつ倒すって息巻いてるやつらには協力してもいいかもとすら思ってる」
「ふざ……け……」
「ふざけてねぇふざけてねぇ。俺様はいつだって真面目に俺様の欲望に忠実に生きてきたからな。
 ただ、虐殺するのが俺の一番の欲望じゃないってだけだ。俺様の一番の欲望は、俺様より上の存在を全員俺様の下に置くこと」

 一番になるためなら何だってする。
 その序列には主催だって入ってる、それだけのことだ。と久秀は言った。

「下剋上も裏切りも略奪も虐殺も! 俺様が上だってことを教えてやるための行動だ!
 俺様のスタンスは一つだって変わっちゃいねぇ! “俺様を下に見る奴に……どちらが上かを分からせる”!」

 デイパックを開けて、久秀はもう一つ支給品を取り出す。
 それは日本刀。
 かの剣聖・柳生十兵衛も好んで使っていた刀匠、三池典太光世が作りし「天下五剣」の一つ――大典太光世であった。
 かつて松永久秀が殺した足利将軍家に伝わるこの秘刀の特徴はその切れ味にある。
 その切れ味たるや、積み重ねた死体2体の胴体を切断し、3体目の死体の背骨でようやく止まるほどだという……。

「お喋りは終わりだァ、女! お前の最期の仕事は――この名刀の試し切り要因よ!」
「……化けて、出てあげる……必ず! あなたの前に!」

48死線上のアリア ◆5Nom8feq1g:2015/05/09(土) 16:23:02 ID:1LvoUPDM0
 
 横薙ぎ一閃。
 最後まで恨み節を貫いた魔法少女・久澄アリアの首は一直線に斬れ、宙を舞った。
 これにて大典太光世の切れ味は、確かに証明されたのだった。


【久澄アリア@アースMG 死亡】


 そしてこれだけでは終わらない。

「さて」 
 
 もちろん久秀は予測済であったが、久澄アリアの「水を操る術」は自らの血すらも操る。
 死してなおその首から噴きだす血は幾本もの血槍に“化け”、呪いじみて久秀へと襲い掛かった。
 火だるまになりながら、水で火を中和しつつも、久澄アリアはこの一瞬のために魔力を練っていたのである。

「もう少しこれと遊んで……その後はどこに行こうかァ? あの城でも行ってみるか? ひゃはは!」

 飛来する血の槍が、蜘蛛柄の着物を脱いで裸体となっている松永久秀の身体をえぐるように突き刺さる。
 一本、そして二本!
 三本目は周りに展開し始めた蜘蛛が糸で止める、
 そして槍の刺さった久秀の裸体からはどくどく赤紫の血が流れる!
 それでも久秀は狂ったように笑みを止めず、飛来する四〜六本目の槍を刀で叩き折る。

「ひゃっはははははははは!!」

 蜘蛛と血の槍と名刀が織りなす赤と紫のダンスは、死した魔法少女の身体から魔力が尽きるまで行われるだろう。
 しかし久秀は槍に貫かれながらも、自分が死ぬということは計算には入れていない。
 実際に、死なない。このような恨みに任せた場当たり的な攻撃では、すでに“妖怪化”している久秀を殺すことは不可能なのだ。

 近くに城が見える月夜の森。
 赤と紫の血にまみれる松永久秀を月が無慈悲に照らす。
 かつて「乱世の梟雄」と呼ばれた強かなる悪人は、久方ぶりの血の味をしばし楽しむ。

 ――楽しんでいたので、一つだけ、彼女は気付いていなかった。
 最初に水の妖術使いから「いちゃもん」をつけられたとき、 
 女のそばに浮かんでいた“水球に入った透明な動物”が、その場から居なくなっていることには。

 
【E-4/森/1日目/深夜】

【松永久秀@アースE(エド)】
[状態]:重症(再生中)
[服装]:全裸 着物は生乾き
[装備]:天下五剣「大典太光世」@アースE
[道具]:基本支給品一式、マッチ@アースR、ランダム支給品0〜3(久澄アリアの分)
[思考]
基本:俺様を下に見る奴に……どちらが上かを分からせる!
1:しばらく血の槍と遊んでその後は様子見。
2:近くの城に行ってみようかァ?


=============

 【魔法少女の掟】

 魔法少女とマスコットは一心同体。魔法少女が死ねばマスコットは死に、マスコットが死ねば魔法少女は死ぬ。
 一度契約した魔法少女は、契約を解除することは通常許されず、使命を果たし続ける必要がある。
 ただし継続して3年戦い抜いた魔法少女は、契約を解除してもよい。その場合、マスコットは消滅する。
 また、継続して10年戦い抜いた魔法少女に限り、“他者への契約の譲渡”が可能となる。
 契約を譲渡された魔法少女は――通常、戦い続けるごとに強くなる魔力を、最初から高い状態で獲得する――。

=============

49死線上のアリア ◆5Nom8feq1g:2015/05/09(土) 16:24:31 ID:1LvoUPDM0
 

 松永久秀が見据えた地図中央の城から、少々南下した位置にある住宅地。
 地区にしてD-5エリアとなるその現代風の街並みの道を、一人の少女がふらふらと歩いていた。

「やっぱり、見えない……ひなのおともだち、みんな、見えなくなっちゃった……」

 彼女の名前は雨宮ひな、首輪に描かれた文字は「R」。
 しかしその精神はどちらかといえば、自分のいる世界ではなく、他の世界にあることが多かった。
 ――世界座標における基本世界であるアースRからは他の世界を感じることが出来る。
 空想や寓話や創作物という形で、特に感受性の高い者に対し、他の世界は影響を与え続けている。
 そして、そこにおいてこの雨宮ひなの感受性と空想力は特筆すべきものがあった。
 彼女はその高い空想力を持ってして、他の世界の様子を実際にその目で見るようなことさえ出来ていた。

「かえるさん……うさぎさん……ぶたさんも……見えない……ひなが、「きんし」されたから……?」

 しかし今は彼女がいつも見ていたかえるさんやうさぎさんやぶたさん、
 あるいは他のたくさんのおともだちの世界は見えなくなっている。
 それは、ここがアースRでなくアースBRであると共に、主催によって他の世界への干渉が断たれているからだ。
 不幸中の幸いはひな自身がそれに理由を付けられることであろうか。彼女はここに飛ばされてくる前、
 あまりの空想っぷりに業を煮やした両親や担任の先生によって、「空想禁止令」を出されていたのだから。

「ころしあい……こわい……ひな、どうすればいいの……」
 
 まだ小学四年生のひなは空想に逃げることさえ許されず街を歩く。目指すのはこの地区にある図書館だ。
 自発的な空想トリップが出来なくなっても、物語を読んでその世界を感じることくらいなら出来るかもしれないと言う発想だ。
 発想力。想像力。空想が奪われても、ひなにはまだ人よりすぐれたそれがある。
 そしてその「創造力」は――魔法少女にとって、とても大切な要素でもある。

「……え?」

 ふらふらと、歩きながら。
 雨宮ひなは、クリオネを見つけた。
 クリオネもまた、雨宮ひなを、見つける。
 空中に浮かぶ水球の中――苦しそうにもがきながら、それはひなの脳内に話しかけてきた。

(アリアは……死にました。通常なら私も消える所ですが、十年働いていた彼女は“契約譲渡”が使えた)

(だからアリアは私を逃がした。悪を討ち、この殺し合いを打破するため、アリアの力を――譲渡するため)

(よろしければ、“契約”を)

(魔法少女の――契約、を……!)

 そしてひなは、理解した。
 空想は、見えなくなったのではない。自分は、空想の中に来てしまったのだと。

 
【D-5/住宅街/1日目/深夜】

【雨宮ひな@アースR(リアル)】
[状態]:普通
[服装]:かわいい
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考]
基本:ひな、どうすればいいの?
1:魔法少女って?
2:図書館で本を読んで心を落ち着けたい。

50 ◆5Nom8feq1g:2015/05/09(土) 16:26:55 ID:1LvoUPDM0
投下終了です。
書くにあたって松永久秀ちょっとだけ調べたんだけどこの人すっごいね

51 ◆pNmyKGcnVU:2015/05/09(土) 19:03:35 ID:4ps9Im/Y0
作品が完成しましたので、投下します。

52秘密を持つ二人 ◆pNmyKGcnVU:2015/05/09(土) 19:04:53 ID:4ps9Im/Y0
「どういう事だよ、これ・・・」
東光一は、その手に持ったICレコーダーから再生された音声内容を聞いて絶句した。


人類の常識を遥かに逸脱した巨大特殊生物「怪獣」が存在する世界・アースM。
そんな世界で生まれ育った東光一は、「怪獣の撃退」並びに「人命及び財産の保護」を主目的として
発足された国際機関・・・「地球防衛軍」に所属している。
入隊以来、目覚ましい勢いで頭角を現していった光一は、今では防衛軍内の精鋭部隊・「MHC」
(モンスター・ハンティング・クルー)のメンバーとして、怪獣と最前線で戦っている。
しかし、彼には誰にも言えない秘密があったのだ。

(なぁコメット、お前はどう考える?)
光一は頭の中にいる『同居人』に問いかけた。
(・・・私にそんな重大な質問をして良いのか?)
『同居人』はやや訝しげに答えた。


ある日の対怪獣戦・・・光一は瀕死の重傷を負ってしまった。
しかし、謎の光が光一の身体に溶け込むかのように入り込んだおかげで、光一は命を取り留めた。
後日、謎の光は光一の頭の中に直接語りかけてきた。
曰く、「自分は惑星アルカディアから地球人を怪獣から救う為にやって来たのだが、肉体を持たない
精神だけの存在である為に地球上では能力を十全に発揮できない。なので、地球人には手におえないような
状況になった時だけで良いから、君の肉体を貸してほしい」
とのことだった。
以来光一は、MHCだけでは事態の鎮静化が不可能な状況に陥ると、その惑星アルカディアからの平和の使者
から渡された「コスモスティック」というアイテムを使って、オレンジ色の巨人・「コスモギャラクシアン」
に変身し、怪獣と戦うようになったのだ。

そして今、光一が頭の中で話しかけた相手こそ、惑星アルカディアからやって来た件の精神体・「コメット」である。
「コメット」というのはもちろん本名ではない。
本人曰く「私の名前は地球人には発音はおろか、認識もできないが・・・あえて地球の言語に翻訳すれば・・・
『彗星』という意味になる」
という事らしいので、そこから光一が付けた便宜上の名前である。

普段、光一とコメットの人格は別々に存在しており、このように光一から話しかけたり、コメットが助言をすることもできるのだ。
以上、閑話休題。

53秘密を持つ二人 ◆pNmyKGcnVU:2015/05/09(土) 19:05:58 ID:4ps9Im/Y0
(君はどうなのだ光一?指示された通りに、自分や自分のチームのメンバー以外の参加者を殺害するのか?)
(・・・そりゃあ・・・俺だって死にたくはないけど・・・)
一度言葉を区切ると、光一は断言した。
(・・・俺はMHC隊員、人を守るのが仕事だ。だから、俺は絶対に人殺しなんかやらない。俺みたいに
巻き込まれた参加者を全員助ける。それが、ここでの俺の任務だよ)
そう語る光一の目は、晴天の空のように澄み切っていた。
怪獣を初めとする脅威から人々を守る。それが光一の根っこからの信念なのだから。
(それは良いが、どうやってだ?今君は、コスモスティックを持っていないんだぞ)
「う・・・」
コメットに指摘されて、光一はたじろぐ。
そう、先程の音声を聞く前に、光一は自身の持ち物の確認を行ったのだ。
いつものように隊員服を着ているが、腰にあるはずのMHCガンは無く、
懐に隠し持っているはずのコスモスティックも無い。
武器一つ持っていないような状況で、何をどうしろというのか・・・。
そこで光一に天啓が閃いた。
「そ、そうだ!確か、支給品があるって言ってたぞ!」
口に出して叫ぶと、光一は早速デイバッグを開けて支給品の確認を始めた。





「と、とりあえず・・・武器はあったな」
光一は使える支給品があって、ひとまず安心した。
デイバッグからは食料や地図の他に、
拳銃とその弾丸一セット、特撮ヒーローのDVDが一つ、単一電池のような物が2個入っていた。
DVDや電池はともかく、拳銃なら普段から実戦で使っているから何とか使えると思い、それは所持しておくことにした。
(それにしても・・・)
光一は改めて自分に支給された拳銃を見た。それは昔、学生時代に歴史の教科書で見かけたことがある物だったからだ。
十四年式拳銃。太平洋戦争の頃に旧日本軍で使用されていた自動拳銃。
光一にはそれが引っ掛かった。
(何でこんな骨董品なんか・・・?)
骨董品。
そう、十四年式拳銃が使われていたのは太平洋戦争の頃・・・今から70年近くも昔の話だ。
その当時は最新式だったかもしれないが、今では博物館で展示されていても可笑しくないような代物である。
むしろ、これよりもっと後代にできた性能の良い銃を支給した方が、殺し合いがスムーズに進むような気がするし、
コストもさほどかからないだろう。なのにどうして・・・?
光一の頭の中で、疑問符が渦を巻いたが・・・
(おい光一)
それはコメットの一言で遮られた。
(なんだよ。こっちは今考え事して・・・)
(君の背後の茂みに誰かいるぞ)
「・・・えっ?」
光一は後ろを振り返った。
同時に、小枝の折れるパキッ!という音が鳴った。
「誰かいるのか?」
光一が茂みの中を覗くと・・・
「あ・・・」
栗色の髪と翡翠色の瞳、狐のような耳と尻尾が印象的な小さな少女が尻餅をついていた。

54秘密を持つ二人 ◆pNmyKGcnVU:2015/05/09(土) 19:07:26 ID:4ps9Im/Y0

「どういう事・・・?」
高村和花はICレコーダーからの音声を聞くと、頭の中を疑問符で満杯にした。

超常の力を揮い、悩みを抱えた人々を救う少女達「魔法少女」が存在する世界・アースMG。
そんな世界で生まれた高村和花は、そんな困った人々を助ける事を使命とする正義の魔法少女の一人だ。
同じく魔法少女だった母・高村このはから受け継いだ力を使って、悩みを持つ人々に手を差し伸べてきた。
しかし、彼女には他人に知られたくない秘密を持っていた。

「パパ・・・ママ・・・」
和花は、自分が人助けで息詰まった時にいつも助け舟を出してくれる大好きな両親の事を思った。


和花の父親は人間ではない。
和花の母・このはを魔法少女にしたキツネ型マスコット・レイン・サクライト。それが和花の父親だ。
魔法少女とマスコットという、云わば主従関係とも言える両者にあって、二人は互いに強く惹かれあい、
その末に生まれたのが和花だった。
母からは魔法少女の力を、父からはマスコットの力を受け継いだ和花は、世界でただ一人だけの
「魔法少女とマスコットの混血児」として生まれ落ちた。

「何で・・・どうして私ばっかり・・・」
同時に和花は、今まで受けてきた自分の不運を嘆いた。

魔法少女とマスコット・・・二つの力を合わせ、母のように人々を助けるようになったの彼女だが
・・・以外な強敵がいた。
他の魔法少女達である。
もちろん年の近い夢野セレナやベテランの久澄アリアのように、友好的な魔法少女もいる。
だが、一部の・・・「マスコットは魔法少女より下位の存在」だと考える魔法少女達は違う。
和花の父=レインを「淫獣」と蔑み、その血を引く和花を「淫獣の娘」と呼ぶ彼女達は、
事あるごとに和花に嫌がらせを行ってきた。
やれ「淫獣の娘」、やれ「穢れた魔法少女」、やれ「生まれてはいけない存在」・・・
和花はたった8歳の子供にはあまりにも辛い仕打ちを受けてきたのだ・・・。

「どうしよう・・・」
そんな中でも、和花は見知らぬ誰かを助けたいという気持ちを失わなかった。
だからこそ、和花は殺し合いに即座に是ということができなかった。
ともかく、ここから移動しようとした時、またしゃがみこんだ。

すぐそばに人がいたのだ。
黒い繋ぎのような服を着た男の人。
デイバッグを漁りながらぶつぶつ言っている。

このような状況でいきなり他の参加者と遭遇するとは・・・。
和花はどうしたら良いのか判らなかった。
とりあえず、こちらに気づく前に逃げた方が良い。
そう判断し、そっと立ち上がろうとした時・・・
「・・・えっ?」
相手はいきなりこちらの方に振り向き、その拍子に小枝を踏んで音を立ててしまった。
「!」
驚いた和花は尻餅を付き、同時に普段は隠してある父譲りのキツネ耳と尻尾が飛び出てしまった。
「誰かいるのか?」
相手は茂みの中を覗き込んだ・・・
「あ・・・」

55秘密を持つ二人 ◆pNmyKGcnVU:2015/05/09(土) 19:08:15 ID:4ps9Im/Y0
そして、時間は元に戻る。



光一は隠れていたのが好戦的な相手では無かったことに安心したが、
同時に燃えるように怒りが湧いてきた。
こんな小さな女の子まで、こんなふざけた催しに参加させるなんて・・・
このゲームを企画した奴をぶん殴りたいと、心の底から思ったのだ。


(見つかっちゃった、見つかっちゃった、見つかっちゃった・・・)
一方の和花の心は、恐怖で満杯になっていた。
まだ相手が善人なのか悪人なのかわからないのに顔を合わせた・・・いや、
例え相手が善人だったとしても、キツネ耳と尻尾を見られた時点で和花にとって詰んでいたのだ。
キツネ型マスコットである父から譲り受けた耳と尻尾。両親は「チャームポイント」、
一部の学校の友達は「かわいい」と言っているが・・・他の大人は違う。
和花が驚いた拍子に耳と尻尾が飛び出るのを見た大人たちは口々に言う。
「何だこれは」、「気持ち悪い」、「バケモノかよ」・・・。
先程まで優しく接してくれていた担任の先生ですら、和花の尻尾を見ると、まるでパンダやイリオモテヤマネコ
などの珍獣を見るような目をする。
挙句、人身売買組織に誘拐され、危うく外国に売り飛ばされそうになったこともあった(危機一髪で両親に助けられたが)。
だからこそ、知らない人に耳と尻尾を見られるのは和花にとって最大の恐怖だったのだ。
溢れかえるように恐怖が湧き出て、和花の身体を支配していく。
逃げ出そうにも手足が動かない。まるで金縛りにあったかのようだ。

光一は和花に向けて手を伸ばす。
(いや・・・!パパ!ママ!)
和花は思わず目をつむった。そして・・・


ぽふっ


光一の手は和花の頭に置かれ、ワシワシと和花の頭を撫でた。
「え・・・?」
和花が恐る恐る目を開けると・・・
「怖かっただろ?もう大丈夫だからね」
光一は優しげな眼差しで和花の事を見つめていた。

「・・・どうして・・・?」
「えっ?」
和花には光一が何故自分に優しくするのか解らなかった。
「き・・・気持ち悪くないの?わ、私・・・尻尾が・・・」
「あぁ・・・そのこと?」
光一はバツが悪そうに頬を掻きながら、
「何ていうか・・・そういうの見慣れてるし、それに・・・」
光一ははっきりと告げた。
「泣きそうな女の子を慰めるのは、当たり前の事だろ?」
それは、嘘偽りのない光一の心からの言葉だった。


「う・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「おわっ!?」
生まれて初めて両親以外の大人から優しくされた和花は、
心のタガが外れ、光一に抱き着いて赤ん坊のように泣きだした。
それに光一は少し驚いたが、すぐに平静を取り戻して、優しく和花の頭を撫で始めた。
その姿はまるで・・・



(・・・誘拐犯とその被害者のようだな)
ひと言多いぞコメット。

56秘密を持つ二人 ◆pNmyKGcnVU:2015/05/09(土) 19:09:21 ID:4ps9Im/Y0
【C-1/森/1日目/深夜】



【東 光一@アースM】
[状態]:健康、少し困惑
[服装]:MHC隊員服
[装備]:十四年式拳銃(残り残弾数35/35)@アースA
[道具]:基本支給品一式、超刃セイバーZDVD一巻@アースR、
ディメンションセイバー予備エネルギータンク2個@アースセントラル
[思考]
基本:巻き込まれた参加者を助ける
1:目の前の女の子を慰める
2:コメットぉ・・・
3:何で十四年式拳銃なんか・・・?
[備考]
※コスモギャラクシアンへの変身に必要なコスモスティックを没収されています。
他の参加者に支給されているかもしれないし、会場内のどこかにあるかもしれません。
※十四年式拳銃のような古い銃が支給されていることに疑問を感じています。


【高村 和花@アースMG】
[状態]:嬉し泣き、キツネ耳と尻尾が出てる
[服装]:普段着
[装備]:無
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム0〜3
[思考]
基本:どうしたら良いの・・・ママ?
1:うわぁぁぁぁぁぁん!
2:パパとママに会いたい・・・
[備考]
※夢野セレナや久澄アリアと面識があります。
※キツネ耳と尻尾は出し入れ自由です。出しっ放しか隠すかは後の書き手さんに任せます。

57 ◆pNmyKGcnVU:2015/05/09(土) 19:10:25 ID:4ps9Im/Y0
以上、投下終了です。

58名無しさん:2015/05/09(土) 21:50:56 ID:IevutqyA0
おつです。
>死線上のアリア
1人目の退場者出ましたね……。
ひなちゃんはこれからどうなってしまうのか
>秘密を持つふたり
コメさんwwいいキャラしてますね

59名無しさん:2015/05/09(土) 22:33:05 ID:vRxdm5K.0
乙です!!!
>死線上のアリア
最初の退場者はセレナさんか影響でかそうだ
そして久秀すげえなあこいつマジでやばいやつだからな大仏かなんか燃やして足利義輝っていうめっちゃ強い将軍殺したりしてるし
ひなちゃんは魔法少女になるのかな。そして他の世界軸との交流をしていたとなるとまたどうなるか分からんなあー
>秘密を持つふたり
く…これが彼女持ちで世界を救う者の強みか。和花ちゃんよかったなあ。。。
そして※さんほんとにいい人そうで草生えた。何気に変身できないのもでかいな

60名無しさん:2015/05/10(日) 00:19:43 ID:1otjGXi60
aa

61 ◆aKPs1fzI9A:2015/05/10(日) 00:20:27 ID:1otjGXi60
おっと書き込めた
投下しまーす

62 ◆aKPs1fzI9A:2015/05/10(日) 00:22:23 ID:1otjGXi60
夜の月の光が冷たく冷えきった地面を照らしている。
普段の街の光の中では味わえない風景。
そういったのを少なくとも現代の我々は───どこか自分が異世界に迷い込んだかのように錯覚し、その情景に酔いしれる。
そういった情景にひゅぅと吹く冷たい風や季節を感じさせる虫の声があると、なおさら良い。我々が普段の生活で忌々しいと思うものでさえも、ここでは「風流」になる。
かつての文化人たちはこういった自然の産物を度々詩に綴っていた。今も昔もこういったのを好む気持ちは変わらない。今これを読んでいる読者諸氏や、著者でさえも、そんなこと分かっていることなのである。






だが、この状況下において情景に目をやる者など、いるはずもない。ある男は、この状況下で眼に炎を宿していた。
それでこそ月の光のように優しさを持ち合わせたような明るさではなく、激情的でかつすぐ燃え尽きてしまいそうなそんな明るさ。

埃一つすらついていない、真っ黒のスーツに蝶ネクタイ。綺麗にセットした髪、眼鏡の老人───この殺し合いという場においてはまったくもって不釣り合いといっても過言ではなかった。
そして何より彼の異質さを目立たせているのは、大きな車椅子である。黒を基調としたデザインで、材質は素人目からしても良い物だと分かる。車輪はまた大きく、回してこぐことはよほどの力がない限り不可能である。
わたし達が思い描くような車椅子ではなくあたかもそれは、小型戦車のようだった。
男は炎を消さないことは無い。
月に負けじとするかのように光を出すために炎を燃やし続ける。
彼のただ一つの目的のために。


================

63 ◆aKPs1fzI9A:2015/05/10(日) 00:24:50 ID:1otjGXi60
「ほらこーた着いてきなさいっ!兄さんに言いつけるわよ!」

甲高い声が辺り一面に響いた。
A-2の森をとてとてと歩く小さな少女。髪は自分の母親にセットしてもらえたのであろう、綺麗な金髪を一本に結んでいる。服は黒を基調としたゴシック調。
そして、その瞳にはどこかしら余裕が見えた。

この少女、麻生嘘子はこの殺し合いに巻き込まれた参加者の一人である。
各参加者に渡された自分の身長の半分はあろうかというディパックを背負い、慣れない夜道を進んでいる。
そんな殺し合いの場に不釣り合いとも言えるような存在、嘘子は目の前の「こーた」に向かい苛立ちの視線を向ける。

「ははは、呼び捨てだなんてひどいなあ嘘子ちゃん…」
「うっさいわねえ!あんたは犬みたいなもんよ。犬の言葉はワンだけでしょっ!」「わんわん。これでいい?」

嘘子の目の前の「犬」───高校生山村幸太は苦笑いを浮かべながらも嘘子に優しく言った。
普通の高校生男子、それでこそ幸太程の年齢であれば知り合って間もない、年の離れた幼女にそう言われると黙ってはいない。もちろん彼の言う通り、幸太は犬ではない。何処にでも居そうなちょっとイケメンのサッカー部員である。

これも若い子のワガママだろう、と嘘子の頓珍漢な発言にため息を吐きながら幸太は背筋を伸ばす。

(このくらいの子はじゃじゃ馬って言うけどさ、じゃじゃ馬すぎるよ…)

幸太は学生服のネクタイを解き、上のボタンを一つ、二つ空けた。

(…なんか大変な事になったなあ…)

====================

64 ◆aKPs1fzI9A:2015/05/10(日) 00:28:31 ID:1otjGXi60
彼女との出会いは数十分ほど前。
目を覚まし、ICレコーダーから流れた音声に呆然とし一人歩いていた幸太の目の前にいたのは、自分より幼い幼い子供であった。
幸太はそれを見て愕然とした。こんな幼い子どもまで参加させるなんて。この殺し合いは狂っている、と。

彼女を見捨ててはおけない。チーム戦だとは言っていたものの、放っておくワケにも行かず(合流した後、同じチームだと気づいたのだが)彼女を保護し、人が居そうな町に向かおうとしているのだが…どうも幸太には嘘子の対応はやりづらい。
どうやら麻生嘘子曰く。
彼女はあの鬼をも殺した伝説の男、麻生叫の妹だという。


あの麻生叫の姿とはまったく似つかない可愛らしい姿からは想像できない。だが、事実だと彼女は言い張る。
その姿は嘘とも言えないし、よもや嘘をつくメリットもないだろうと思い、幸太は信じることにした。

更に嘘子はもしかしたら自分の兄である叫がこの殺し合いに参加してるかもしれない、と幸太に告げた。確かに、その可能性はゼロではないだろうし。『あの』麻生叫を参加させない訳が無いはずである。
それを聞いた幸太は恐怖心を覚えた。恋人の咲によると自分の通う高校の空手部が活動停止になったのは麻生叫が『声がうるさかったから』壊滅させたからという事件が最近あったというからだ。普通ならばそんなこと嘘だと思うかもしれないが、麻生叫であるならばそれが平然とありえてしまう。


『長生きしたければ麻生叫とだけは関わるな』。それは幸太の通う学校の全学年の生徒、教師陣の常識であった。
幸太はそんな化け物が居る中で中で生き残れるのか不安にもなったし、尚且つもう一つの不安要素が出来た。

嘘子が自分のディパックの中に入っていたと述べながら叫の存在を示すために突き出してきた「参加者候補リスト」には、中村敦信や金本優、東雲駆に藤江桃子。以前同じクラスだった中野あざみといった自分の同じクラスの級友たちが名を連ねていたからだ。
ただそれも不安要素であったものの、そのリストの中で幸太が目を引いたのは自分の恋人花巻咲の名前があったことだった。
もしこれが同姓同名の別人ではなく、本物の咲であったら………泣いてしまってるかもしれない。殺されてしまったら?その時は自分が発狂してしまうかもしれない。いや、してしまうだろう。
そうなる前に彼女を救わなくては。

───でもどうやって?自分に人を救う力なんて、無いとは知っているのに。そうやって悩む幸太を察したかの様に、嘘子は幸太に対してニヤリと口角を釣り上げて口を開く。


───兄さんはチームとか関係なく、参加者全員を素手で殺そうとするだろうし、それが出来る強さを持ってる。見たところ、あんたの大事な人もいるみたいなんでしょ?あたしを連れていったらいいよ。兄さんには『感情』はほぼないけど、あたしの話だけは聞いてくれるの。
ね、兄さんを止めることができることはあたしだけなんだよ?兄さんだって、妹を殺しはしないはずでしょ?見つけたら真っ先にあなたの彼女を守らせるから。だから───

「あたしをその間守ってよね!こーた!」

============

で、今に至ると。

65 ◆aKPs1fzI9A:2015/05/10(日) 00:33:09 ID:1otjGXi60
嘘子の足取りは先程と比べてさらに軽くなっていた。

それは幸太に荷物を持たせたからである。幸太は仕方なく、はいはいと思いながらも嘘子の重かったディパックを持ち、歩みを進める。


「…兄さん…」

軽い歩調で足を進めていた嘘子が歩みを止めて、ぽつりと小さな声で呟いた。
幸太は先程までの嘘子の声の調子と違うのを疑問に思い、嘘子にその疑問を投げかけることにした。

「お兄ちゃんが、心配?」
「なっ…!!!!」

嘘子はその幸太の発言を聞いた瞬間、目を大きく見開いて、顔を真っ赤にしながら必死に否定する素振りを見せる。

「だっ、大丈夫に決まってるでしょ!あの兄さんよ?素手で熊をも倒す兄さんよ?色々犬が言うんじゃないわよ!」


───心配なんだろうなあ。年頃で素直になれないだけの子。
普通に生活していればきっと、幸せなはずだったろうに。

(…やっぱり間違ってるよな。こんなこと。なんとかしなくちゃ)

幸太はゆっくりと上を向く。空に輝く星が、不釣り合いな程に光っていた。
その不釣り合いさが、なおさら不気味に思えたけれど、きっと大丈夫なはずだ。
まさか本当に殺し合う人なんて、いないはずだと信じたい。

幸太は心の奥底で、そう考えていた。






その時である。





「HELLO,ボーイ&ガール。いきなりの質問ですまないが…君たちはChinese(中国人)かね?Korean(韓国人)かね?それとも…Japanese(日本人)かね?」

低い、しゃがれた声がした。二人の右斜め後ろの方面からであった。
二人が振り返ると、そこには老人がいた。
頭をしっかりとセットしていて、素人目に見ても高級だと分かるスーツに蝶ネクタイ。おおよそその格好はこの殺し合いには不釣り合いとも言えた。
そんな謎の老人は顔を下に向けながら二人に問いかける。その声色はまるで朝食のメニューを妻に尋ねるように軽い様子だった。

(…何を質問しているんだこの人は)

幸太は質問の意味がどうもわからなかった。いわゆる人種差別者なのか、ただ単なる疑問か。殺し合いにおいて必要な質問だとは感じなかった。
そもそも殺し合う気であれば遭遇した人物全員に殺意を向ける方がいいだろうからだ。
殺し合うつもりなどなく、ただ単純な疑問なのだろうか。よく見ればこの老人も鉄製の首輪をつけているから参加者なのは分かるが一体なんなのだろうか、と。

何より気になったのはその下半身だ。黒く光る車椅子に乗っている。
それだけでこの殺し合いに相応しいとは言えないだろう。それで人を殺すことなど、出来るはずもない。

66 ◆aKPs1fzI9A:2015/05/10(日) 00:38:01 ID:1otjGXi60
「はーん!見て分かんないのかしらね!あたし達はじゃぱにーずよ!日本人!」
「そうかねそうかね。それはなんと《運がいい》」
目の前の老人に、嘘子が当然のようにやや小馬鹿にしたような表情で言い放つ。
それを聞いた老人は、安堵した様な声色で、しかしどこか怒気を含めたように、二人に返した。
その雰囲気は、平凡な世界であるアースRでは、感じることが出来ないモノ。

「嘘子ちゃん逃げよう」
「え?」
「逃げようっ!!!!」

幸太が叫ぶ。自分の第六感が体内に赤信号を知らせているからだ。
嘘子に対して先程までの優しい調子とは変わって強い口調で言い放つ。
だがそんな幸太に対し嘘子は驚き、その場に立ち尽くしてしまっている。
その二人を横目にしながら、目の前の老人はゆっくりと顔を上げた。

「私はフランクリン・デラノ・ルーズベルト。君たちの奴隷の国の大統領だよ」

その表情に憎しみと楽しみを灯らせながら。
アメリカ合衆国第32代大統領、フランクリン・ルーズベルトは二人の前にその顔を見せた。
そして車椅子の手すりの部分からゆっくりと、白銀に光る刃を出しながら、また軽い調子で二人に言った。

「ok.やっぱり最初は彼に限るね」

ルーズベルトはそれを右手に持つと、左手の方で膝のところにあったボタンを押した。
するとルーズベルトの車椅子からエンジン音がなり出す。
まるで原付のそれのような音である。

そして車椅子の速度とは思えない速さで、二人に迫った。

「くそっ!」
幸太はそれを確認すると嘘子を抱き抱え、横方向へと飛びよけた。
嘘子はまだなんのことか理解できないような顔をしている。先程と違ってはっきりと不安や焦りすら、伺えた。
ルーズベルトは避けられたことに舌打ちをするも、また二人の方を向き、口を上に歪ませながらも、またゆっくりと言い放った。

「yellow monkeys(エテ公ども)、逃げないでくれないか?どうもコイツの調子が今日は悪いみたいでね。気分が悪いんだ。早めに終わらせたい」

やばいやばいやばいやばいやばい。どうする。どうすればいい。体内のアドレナリンの大量放出によって、自分の鼓動が早くなり、汗がにじみ始めた。
そもそも、フランクリンルーズベルト?あのニューディール政策とかした?世界史の資料集にも居る、あの―――?
いやそれは置いておくとして、まさか、本当に殺し合う人間がいたなんて。内心多少嘘だと思ってたのに。夢だと思っていたのに。幸太の脳内がぐるぐるぐるぐると回り出す。

「こ、このクソジジイっ!兄さんに頼んだらあんたのその腹立つ顔を【自主規制】してやるんだからね!!!」

嘘子は伏していた地面から立ち上がると、震えながら捨て台詞の様にルーズベルトに言った。
完全に虚勢だと分かる。ただ嘘子も、この殺し合いに巻き込まれてしまったことへの戸惑いと、そして本当に乗る人物がいた事への不思議さ。なにより自分を殺そうとしたことに対しての怒りが、彼女を突き動かした。

「HAHAHA…元気がある事はいい事だよガール。ただ、年長者に使う言葉ではないね」

嘘子の言葉を受けてルーズベルトは剣を改めて持ち直し、左の手すりの下のレバーを引くと、二つの大きな車輪の軸からチェーンソーらしきものが出た。
金属音を上げながらチェーンソーが動き出す。ここまで来たらもはや車椅子とは言えなかった。
ルーズベルトはそれが出たのを確認すると年齢からは想像できない様な声色で、はっきりとした殺意を二人に向けながら叫ぶ。

「Remember pearl harbor!Remember Midway!(真珠湾を忘れるな!ミッドウェーを忘れるな!)」、と。

67私は貝になれない ◆aKPs1fzI9A:2015/05/10(日) 00:41:13 ID:1otjGXi60

ルーズベルトが先程よりも更に速い速度で真っ直ぐ二人に迫る。
鬼のような形相で、何かにとりつかれたように間違いなく二人の命を奪うために。

「嘘子ちゃん!!」

体がいつの間にか動いていた。幸太はすぐに立ち上がり嘘子を突き飛ばす。
抱きかかえる時間もなかった。彼女を守るために、こうするしかなかった。それにもし抱きかかえていたら、あのチェーンソーの餌食になっていたかもしれない。
そう思いながら。

「suck my dick,Jap!(くたばれ!糞日本人!)」

さらに叫んだルーズベルトは持っていた剣を剣道の突きのように構えて、やがてその剣を前に突き出した。
狙うは、目の前の男の、この『日本人』の急所───心臓。






「…こーた?」

突き飛ばされて地面に伏しながら、顔を上げる。
その嘘子の目の前に飛び込んだのは、胸を貫かれている、山村幸太の姿。
ルーズベルトの剣から真っ赤な鮮血が垂れている、その姿だった。

「日本人とは本当に頭がpussy(かわいそう)だ。流石我々白人と比べて頭蓋骨が二千年遅れてるほどはある」

ルーズベルトはその剣を更に深く、深く幸太の胸に突き刺していく。
幸太の顔は苦痛に歪み、口からは血がこぼれ出した。
学生服は黒く染まっていき、顔は青白くなっている。
その姿はまさしく、死ぬ寸前の人間の姿であった。

「こーたあっ!」
嘘子が叫ぶ。幸太を心配して。助からないとは分かっているが、それでも叫ばずにはいられなかった。
幸太はそれを見ると、人生で体験したことのないような痛みを必死に堪えながら、振り絞るように嘘子に口を開いた。

「…逃げろ…僕は、もう、ダメみたいだから…君の兄さんに…麻生叫に…花巻咲を、守って、って…言ってくれ」
「でも…でも」
「…行け…早く行けえええええっっっ!!!!」
幸太の声にならないような声を聞き、嘘子は何かを感じ取ったのかその場から走り去った。
恐怖に怯えながら、これは嘘ではなかったと知りながら、嘘子は闇の中に消えていった。
自分の兄にさえ会えれば、自分の兄にさえ会えればきっと大丈夫なはず。
それだけを信じながら、嘘子は走るのであった。

(…咲、ごめんな。こんな彼氏で。守ってやれなくて…ごめんな)
そんな嘘子の姿を確認した幸太はゆっくりとその瞳を閉じた。
自分の愛する、心優しくて自分が誇りに思う大切な彼女に懺悔しながら。

そしてその優しさを兼ね備えた瞳が開かれる事はもうなかった。
【山村幸太@アースR 死亡確認】

=======================

68私は貝になれない ◆aKPs1fzI9A:2015/05/10(日) 00:49:32 ID:1otjGXi60
「エンジンの調子が悪いな…追いつける距離だがまずはスコア1だね」

胸を貫いた目の前の男が息絶えたのを確認してから、ルーズベルトは手に持っていた刀を男の胸から引き抜いた。
男が糸の切れた人形のように崩れ落ちたのを見ず、ルーズベルトは視線を走っていった少女の方へやった。
あの走り去った少女を殺すのは容易かったが、車椅子の調子がどうも今日は悪い。
本当は対戦車ミサイルでも打ってさっさと殺したかったが、何故か押しても発射されなかった。
それにもっとこの車椅子の加速速度は早いはずであるし、まだまだ色々ある筈なのに、それが壊れたかのように使えなくなっている。
おそらくこの主催に「規制」されてしまったのだろう。

ルーズベルトの車椅子は冒頭で述べたかのような戦車、いや戦艦のような機能が多く搭載されている。それらをすべてそのままにしてしまうと、他の参加者と勝負にならないと考えたのだろう。
だがそれは許容範囲だ。それよりもルーズベルトには、一つの確固たる目的が存在していた。

「Axis Powers(枢軸国)に…Japに鉄槌を与えねばならんのだ」

アースAの世界軸における「第二次世界大戦」は、アースRの歴史で教わるような「第二次世界大戦」とは、大きく異なる。
アースRにおけるフランクリン・ルーズベルトは第二次世界大戦中のアメリカの大統領でアメリカを勝利に導き、おそらく読者諸氏も中学の歴史などで習った「ニューディール政策」を行ったりした、今もアメリカの誇る名大統領の一人として扱われる人物である。
しかし、アースAでのルーズベルトの境遇は違った。

勝利が確実と思われた日本とのミッドウェー海戦において、それまで劣勢であった日本が突如現れたロシアの援軍により息を吹き返し、アメリカ海軍は壊滅的被害を受けたのだ。
それをきっかけにしてアメリカの各地の諸拠点は奪われ、やがて日本軍の攻撃は本土にも迫ることになった。
日本軍が本土に上陸するようになり、アメリカ各地は戦場となった。
多くの国民が死んだ。
多くの罪なき国民が死んだのだ。
愛していた土地は奪われ、かつてアメリカンスピリットを持ち開拓をしていった誇り高きアメリカ人は奴隷のような生活を送ることになっていた。

ルーズベルトは、それをどうしようもできず、まるで植民地化を受け容れるような講和条件を飲み、責任を取るために大統領を辞任した。
しかし、ルーズベルトはまだ諦めていなかった。元から強かった日本への嫌悪感は更に増し、それはいつからか彼の性格を更に歪めていくようになっていった。


まずこの状況を打開するためにフリーメイソンなる秘密結社に協力を求め、車椅子の改造とそれに耐えれるような体に手術を受けた。
将来ルーズベルトが目指すのはアメリカ全土の国民の身体能力の向上化、国民皆兵である。
その身体能力強化のための手術を、身を持って体験したのだった。


手術は難航し、何日にも及んだ。
なんとか最終的には手術には成功したが、その後数週間もの間体内をムカデが蠢き続けるような激痛に襲われた。
しかしルーズベルトはそれに耐えた。
日本を、ロシアを、イタリアを、ドイツを。あの憎き枢軸国を倒すために、という執念だけで耐えきった。
老体に鞭を打っているようなものだとは分かる。だが、それでもやらねばならなかった。

彼はあのミッドウェーの敗戦を聞いたあの日から。
あんな下劣な講和条件を受け入れた日から。
ただ枢軸国、特にあの日本を倒し、アメリカの独立を果たすということだけを目標に生きてきているのだ。

「チーム戦なぞ知らん。私の味方は連合国だけなのでね」

ただでさえ老齢であったのに手術で改造された自分の命は長くないだろう。
だがこの命尽きるまで、戦い続け、そしてアメリカに帰らなくてはならない。

「私は貝になるために生まれてきたのではないのだ。それを分からせてやらねばなるまい」

貝のように引きこもったままでは何も変わらない。
人間は殻を破り、自分から行動する動物なのだ。
それは地獄を見てきたルーズベルトにとっての、一種のポリシーに近い物であった。

そしてアメリカを始めとする連合国の人間と協力し、この殺し合いを撃破することが、ルーズベルトの目的。
日本人、ロシア人、ドイツ人、イタリア人は皆殺しで、自分の理想とするメンバーだけでこの主催に打倒するのだ。

「…しばらく待っていたまえ1システム。アメリカの底力とやらを君にお見せしよう…!」

決意を決めた大統領は、手すりに手をかけて赤色のボタンを押し、逆方向へ大きく旋回すると、そのままゆっくりと進み始めるのだった。

69私は貝になれない ◆aKPs1fzI9A:2015/05/10(日) 00:52:23 ID:1otjGXi60
【A-2/森/一日目/深夜】【フランクリン・ルーズベルト@アースA】
[状態]:いたって健康、高揚
[服装]:スーツ、ネクタイなどなど
[装備]:フランクリン・ルーズベルトの車椅子@アースA
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考]
基本:連合国の人間と協力し、この殺し合いを終わらせる
1:枢軸国は皆殺し。容赦はしない
[備考]
※名簿を見ていません。
※ルーズベルトの車椅子には制御がかけられています。まだ何が使えて何が使えないか確認していません。
※一応ルーズベルトの車椅子は支給品扱いです。
※「貝になるために生まれてきたのではない」と「日本人の頭蓋骨は二千年遅れてる」は実際のルーズベルトの台詞と言われています。
参考サイトht tp://meigennooukoku.net/b log-entry-853.html(規制避けのためにスペース入れました)

【麻生嘘子@アースR】
[状態]:恐怖
[服装]:ゴシック調の服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:他人の力を借りて生き残りたい。兄と合流したい。
1:兄さんに会いたい。
2:ひながいることに驚き
3:こーた…
[備考]※支給品は確認してます。

※A-2の森に山村幸太の死体が放置されています。ディパックもそのままです。

70名無しさん:2015/05/10(日) 00:53:39 ID:1otjGXi60
以上です。
タイトル元ネタは映画「私は貝になりたい」とルーズベルトの名言から。

71名無しさん:2015/05/10(日) 00:57:40 ID:paHJBNgg0
おつです。
幸太あああああああ!

72名無しさん:2015/05/10(日) 01:15:20 ID:.cojFDpk0
乙おつ
麻生妹かわええなあ…そして麻生兄の風評被害ほんと笑うww
とか言ってたら幸太くんー!さっそくカップルに悲劇が!
ルーズベルト、すごい車いすでネタキャラかと思ってたらすごい車いすがものすごくすごい車いすで
しかも本人は超真面目に枢軸国を恨んでてめっちゃかっこよくて凄味があった…!
アースAの日本が勝利した世界ってとこが上手く効いてて面白いキャラだー

73 ◆laf9FMw4wE:2015/05/10(日) 04:11:44 ID:JEzzVfpY0
投下します

74 ◆laf9FMw4wE:2015/05/10(日) 04:12:58 ID:JEzzVfpY0
御園生優芽はアイドルだ。
幼い頃からただひたすらにアイドルを夢見て突き進んできて――そうしてやっと最近になって夢を掴んだ。
ヤクザの組長というアイドルから程遠い地位にも就いてしまったが、それでも彼女は日々を楽しんでいた。
歌って踊って、人々を笑顔にする。そんなアイドルという職業を誇りに思い、全力で取り組んでいた。

だがしかし――――素晴らしき日々は最悪な形で崩れ去る。

『唐突で申し訳ないのですが───皆さまには本日から三日間の間、お互いに殺し合いをしていただきます』
「うぇ!? な、なんだってー!? ――て、のわ!?」

唐突に殺し合いを宣言された優芽は、大袈裟に驚き、石に躓いた。顔面から転んで涙目になるアイドル。
仕返しとばかりに石を蹴り飛ばすと彼女はICプレイヤーの言葉に耳を貸した。

『───再生が終了しました』

ICプレイヤーから流れ出る現実離れした数々の言葉。それらの説明はヤクザの世界を知っている彼女でも、信じられないと思うものだった。
それでも自分に嵌められた首輪やデイパックはあるわけで。どう考えていいか解らずに困り果てる。

「あっそうだ。試しにこの首輪でも外してみるか!」

とりあえず爆破が事実なら怖いので強引に首輪を引っ張てみるが――外れない。
当然だ。ちょっと体力に自信がある程度のアイドルが簡単に外せる首輪など、何の抑止力にならない。
今度は殴って強引に壊そうとするが――なんというか自分の理想とするアイドルと正反対だし、絵面的に酷いので寸止め。

「ぐぬぬ……。あたしの力じゃ外せねえか。ま――まあヤクザの世界に身をおいてる優芽様は、こんな首輪なんて怖くないけどよ。
 この震えだって立派な武者震いなんだ。もうこれから先を考えるだけでワクワクすっぞ!」

嘘だ。実際は争い事が苦手で、殺し合いなんて言葉は聞くだけでも吐き気がする。ICプレイヤーの言葉を聞いて、強い嫌悪を示したのも事実。
されど彼女は、アイドルという仕事を誇りに思っている少女だ。だからここで逃げ出せばアイドルの恥だ――そうやって自分に言い聞かせる。
こんな場所は怖い、出来れば今すぐ逃げ出したい――そんな気持ちを抑え込むように虚勢を張ったのだ。

(それにこれってドッキリ……だよな?
 さ――さすがに殺し合いを開いたり、首輪を爆発させたり出来る超人なんているわけないよな!?)

彼女が想像したものは、バラエティ番組でよくあるドッキリ企画。
これまで一度も受けたことがない仕事で、詳しい事情は不明だが、あまりにも現実離れした一連の出来事はそれ以外に有り得ないと決め付ける。
ICプレイヤーは首輪を遠隔操作で爆発させることも可能だと語っていたが、この平和な世の中にそんな物騒なものが存在してたまるか。殺し合いなんて自分の知る限りではヤクザでも開催していないのに、堅気らしき女が開けるハズがない。
だからこれは、間違いなくドッキリ企画だ。いきなり連れ去られて動揺はしているが、それだけは理解している。

「――――うつけがっ!」
「お――おう!?」

交差する少女たちの声。
振り向いてみれば――そこには奇抜な制服を着用した、凛とした雰囲気の漂う美少女が優芽を見下すように眺めていた。

「な、なんだよお前!? あたしに何か用があるのかぁ!?」
「そう喚くな、ホトトギス。あまり騒ぐと敵襲がくるぞ」
「はあ? もしかしてお前、今流行りの電波とかいうやつか? 電波女なのか?」
「ふん、聞いて驚くなよ? 余の名は第六天魔王――――織田信長なり」

ドヤァアアアアアアアアア!
自信に満ちた表情で名乗る美少女を見て、優芽はそんな幻聴が聞こえたとか、聞こえなかったとか。
そしてあまりにも意味不明なことが積み重なり、優芽のアホ毛は立派なクエッションマークを作り上げている。

「……」
「……何か言わぬか、莫迦者」

沈黙が恥ずかしいのか、ちょっとだけ顔が赤くなる美少女。
優芽は少しだけ考えて――――ピコーンとアホ毛が直立した。

「信長? はぁん、なるほど。お前は信長キャラのアイドルなんだな!
 つーかよォ、番組の撮影にこんなコト言う資格はねえけど、こんな場所でドッキリされても困るよなあ?
 そりゃあたしはアイドルが夢だったし、こうして仕事出来ることは嬉しいけどさ。事前に連絡してくれてもいいんじゃあ――っておい、何ピクピクしてンだ?」

75スマイル全開で明日を目指そうよ ◆laf9FMw4wE:2015/05/10(日) 04:14:11 ID:JEzzVfpY0

信長を名乗る少女の容姿は、そこらの芸能人が霞んで見えるくらいに美しい。
凛と輝く金色の瞳は、この世で見たことがない程に自信に満ちていて。一目見ただけで、彼女が胸に秘めた意思の強さを感じさせられる。
ゆえに優芽は少女を見た瞬間に直感した。彼女は間違いなく、芸能人――というかアイドルだろう、と。
今まで一度も見たことのない少女ではあるが、それはきっとまだ彼女は駆け出しアイドルだからに違いない。彼女の着用している奇抜でありながら、凛とした雰囲気を一層引き立たせているあの衣装も、アイドル服だと思えば納得がいく。
そう思って、アイドル仲間として接したというのに――どうして信長はこんなにも見をプルプルと震わせているのだろうか?

「ちがぁぁぁあああううう!
 戦国†恋姫、桜花センゴク、三極姫、戦国コレクション、のぶながっ!、織田信奈の野望――現代の娯楽を見渡せば、どいつもこいつも余を勝手に女にしおって!
 余が男ってそれ一番言われているだろっ。小学生並の常識だろっ! 貴様ら余の許可も得ず、勝手に女にするでないわぁぁぁあああ!」

(へえ。すげェなこいつ、この状況でも揺らぐことなく信長系を貫いて撮影に望んでやがる。
 まったくこの優芽様ですら、柄にもなく驚いちまったっつーのに……肝が座ってるにも程があるだろ)

「余を見てニヤニヤするな、このうつけがっ!」
「あ――悪ィな、別に悪気はなかったんだ。単になんつーか――あんたをアイドルとしてちょっぴりだけ尊敬しちまった。そんだけさ」
「ほう? 余はアイドルではないが、敬うという行為自体は間違ってない。貴様、ホトトギスの分際で、なかなか見る目があるな」
「あたしはホトトギス系アイドルじゃねェよ! つーか信長系キャラをいいことにあたしに上から目線のてんこもりだなァ、おい!」
「信長系キャラではない、余は信長じゃ! なんていうかその、世の中に出回っている二次創作的な言い方はやめい!」
「はいはい。仰る通り、お前がナンバーワン信長だよ。そんで、お前はどんな曲を歌ってるんだ?」
「何度も言わせるな。余はアイドルではないっ!」

「いやアイドルや芸能人じゃなきゃドッキリなんて有り得ねェだろ。ま、お前が否定するなら別にそれでもいいけどさ。
 そんなことより、あたしの歌を聞いてくれよ。これでも歌と踊りにゃ自信あるんだぜ」
「歌、か。どこぞのキンカンも歌が大好きで――――はっきり言って、余はあまり好きじゃない。
 クラスメイトのスライムちゃんだけは別格だが、彼女の歌唱力は一線を画している。貴様のようなホトトギスとはワケがちふぁ――ふぁ、ふぁにをひゅる!?」

信長の云うキンカンとは過去に最も信頼しており、今では最も嫌う人物――明智光秀のことだ。
彼が謀反を起こした理由は今でも解明されていないし、信長にもその理由は解らない。彼の知っていることは、自分は信頼していたハズなのに――光秀は容赦なく裏切ったという事実だけなのだ。
そして光秀は和歌を愛していたゆえに、信長は歌を聞いてしまうと、つい光秀を思い浮かべてしまい、無性にイライラしてしまう。
しかしそんな彼にも例外は存在する。同じクラスに在籍するスライムちゃんの歌だけは、素晴らしい歌唱力。聞いている者を癒やす効果がある、と絶賛していた。

もっともこれは信長の事情で、そんなことを初対面の少女が知るはずもなくて。
優芽は信長をからかうように頬を引っ張ると、いつになく真剣な眼差しで彼女の瞳を見据えた。

「あんたの過去なんて知らねェけど、あたしは本気で。自分に出来る限りの全力で、歌に取り組んでるつもりだぜ?
 そりゃあプロに比べたら劣るだろうし、お前の言うキンカンやらスライムちゃんのことも知らねェけどさ――文句はあたしの曲を聞いてから言ってほしいんだ。
 なあ頼む! 同じアイドルとして。アイドル仲間としてあたしの曲を聴いてくれっ! 下手なら文句でもクレームでもなんでも聞くからさ、あたしはあんたに聴いてほしいと思ったんだ!」

「余はアイドルじゃないのに、理解力のないうつけだ。……仕方ない、一度だけじゃ。一度だけ、聞いてやってもいい。わ――わかったら早く鳴いてみせぬか、ホトトギス!」
「それじゃ、遠慮なく――」

76スマイル全開で明日を目指そうよ ◆laf9FMw4wE:2015/05/10(日) 04:14:43 ID:JEzzVfpY0

そして少女は歌い始める。
どこまでも前向きで、笑ってしまうほどポジティブ精神に満ちた曲を唄った。
状況を理解出来ていないアイドルが奏でる音楽は、あまりにも殺し合いに不向きのもので――けれども、先の真剣な眼差しや精一杯に唱っている彼女の姿から迸る熱意は、紛れもなく本物。

(……なんだ、意外と良い曲ではないか)

ゆえに信長も内心では素直に優芽を賞賛する。彼女は態度こそ無礼極まりなくて、自分の置かれている立場すら理解出来ていない阿呆だが――それでもアイドルという職業に対する情熱だけは本物なのだろう。
スライムちゃんの曲が癒やしだとするならば、優芽の曲は希望や情熱――そんなものが込められているようだ、と信長は感じた。決して口にするつもりはないが、このうつけの曲を聴いて救われる者も存在するかもしれない。

「――とまァ、こんなもんだ。あたしの曲は、どうだった?」
「スライムちゃん程ではないが――まあ、悪くはない」
「え……? ほ――本当かっ!? 本気って書いてマジなのか!?」
「無論だ。こんなつまらぬコトで余が嘘をついて何のメリットがある? その程度も理解出来ぬのか、うつけが」
「実はこの曲、ガキの頃にあたしが考えたやつでさ。昔からずっと練習してたけど……ちょいと恥ずかしくて、誰かに聴かせるのはお前が初めてだったんだ。ありがとよ」
「べ――別に貴様の為に評価をしたワケではない! 聴け聴けとうるさいから聴いてやっただけに過ぎぬことを知れ、無礼者がっ!」
「いやどこが無礼者なんだよ。まだ知り合ったばかりだけど、お前って本当に素直じゃねェなァ」

そうして優芽は信長の反応を見て苦笑した後に――。

「と――自己紹介が遅れちまったな。あたしは御園生優芽だ。
 これがどんなドッキリ企画なのか知らねェけど――二人で一緒に撮影がんばろうぜ、信長。
 ほらよ。アイドル仲間として。そしてライバルとしての、握手だ!」

満面の笑みで手を差し伸べた。
未だにドッキリ企画だと勘違いしている点は――訂正しても、どうせ理解しないだろう。
あまりにも場違いなアイドルの態度に呆れつつ、信長も手を伸ばす。

「どうせ貴様は、莫迦でうつけのホトトギスだが、曲だけは認めてやらんでもない。そんな阿呆が状況も理解出来ぬまま無駄に命を散らせることは僅かに惜しいものだ。
 それに余は、あのうつけを斬るつもりはあっても、チーム戦の殺し合いなぞを興じるつもりは一切ないからな。――貴様の同行を許可する」
「何が言いたいのかよくわからねェけど……しゃーなしだな、ドッキリが終わるまでは部下にでも何にでもなってやるよ。断るとまた怒りそうだもんな」
「ふん。余はそんなことで怒らぬわ、うつけがっ!」
「あっ、また怒った!」

【F-7/平野/1日目/深夜】

【織田信長@アースE】
[状態]:健康
[服装]:ファンクラブに作らせた格好良い女子制服(一般人が見れば奇抜な格好)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム1〜3
[思考]
基本:殺し合いを開いたうつけを斬る!
1:御園生優芽と同行。出来れば現状を理解してほしい

【御園生優芽@アースR】
[状態]:健康
[服装]:アイドル服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:信長と一緒に撮影をがんばるぜ!
1:ドッキリが終わるまでは信長の部下になってやるか
[備考]
※殺し合いをドッキリ企画だと誤解しています。
※織田信長を信長系アイドルだと誤解しています。

77 ◆laf9FMw4wE:2015/05/10(日) 04:16:29 ID:JEzzVfpY0
投下終了です
御園生優芽の男勝りな口調については彼女はヤクザの組長も兼任しているからということで

78名無しさん:2015/05/10(日) 14:18:07 ID:dUmU6vqQ0
乙です
優芽ちゃんのパッション系アイドルっぷりがたくましい
(ドッキリと勘違いしたままだけど)細けえことはいいんだよな感じが好きだぜ
信長はそりゃ女にされるのに不満あるわな…wメタ的にはこの企画でも女にされちゃったわけだし…
でも優芽ちゃんの歌を認めるあたりの度量はさすが信長だぜ今後も楽しみだ

79名無しさん:2015/05/10(日) 14:25:24 ID:ZTxfUc/Y0
のぶのぶ本当にかわいそうw
どっかではロボにも猫にもモンスターにもされてるしなあ…

優芽ちゃんたくましい。男勝りな感じもかわいいぜ

80名無しさん:2015/05/10(日) 14:35:12 ID:ZTxfUc/Y0
あと暫定参加者一覧です。
【アースR】4/5
●山村幸太/○花巻咲/○雨宮ひな/○麻生嘘子/○御園生優芽
【アースP】1/1
○明智光秀
【アースH】1/1
○柳生十兵衛
【アースE】2/2
○徳川家康/○松永久秀
【アースA】2/2
○ベニート・ムッソリーニ/○フランクリン・ルーズベルト
【アースMG】1/2
●久澄アリア/○高村和花
【アースM】1/1
○東光一
【アースC】1/1
○織田信長
13/15

あと35人!

81 ◆r.0t.MH/uw:2015/05/10(日) 17:14:26 ID:SJogUHa20
投下します

82鏡面の憎悪  ◆r.0t.MH/uw:2015/05/10(日) 17:15:40 ID:SJogUHa20
現状をふと考える。

一体何がいけなかったのか。

気まぐれに学校に行こうと思い、いつも通り教師の説教を聞き流す。
放課後、最近頻繁に出てくる邪魔者がいないか確認。
帰り道、言葉にするのもおぞましい通りすがりの『 』を見つけて……。

そこで記憶が途切れている。

次の記憶はあの部屋だ。
殺し合いがどうとか言っていたが正直言ってどうでもいい。
いつも通り『 』であれば殺す、それだけだ。
もしも『 』がいなければ……まあそれはその時に考えればいいだろう。

そして気になることを思い出す。

最近殺しの最中に興奮の絶頂で記憶が飛ぶことがよくある。
はたしてあのときの『 』は殺せていたのだろうか。

殺せていたたのならそれでいい。
しかし、もしそうでないのなら……。

考えた瞬間全身の血液が煮え立つ感触を覚える。

帰らなければ。帰って…「あの、すみません?」

思考が、中断される。

「……何?」

邪魔をされた恨みと、あとついでにありったけの憎悪を込めて声の主をにらみつける。

「あー、えっと?少し話だけでも聞いてくれたら、っと……」
「そもそも誰よ、あなたは?」

返事を返しながら相手を観察する。
動きは戦闘慣れした者のそれではなく、『 』の気配も今のところはしない。
白髪交じりなのか髪色は灰色、目には赤と青のカラコン、耳はどこかの映画で見た妖精のようにとがっている。
ずいぶんとおかしな格好だ、噂に聞くこすぷれいや?とか言う輩なのだろうか。

83鏡面の憎悪  ◆r.0t.MH/uw:2015/05/10(日) 17:16:33 ID:SJogUHa20

「あぁ、申し遅れました。私はアーゴイル、武器屋のアーゴイルといえばお分かりで……」

白か。
それならもうこの男に用は無い、そうそうに立ち去ろうと、

「あ、待ってください!」
「……」

振り返る、今度は殺意を込めてみる。

「せっかくの縁ですし名前教えてもらえませんか?」
「肩斬華…子、もういい?」

なんとなくこいつに本名そのままを名乗るのは嫌だったので適当に付け加える。

先ほどからさほどもしゃべっていないはずなのにこの男を相手にすると無性に苛々する
ここはさっさと離れた方が精神衛生のためにもいいのだろう。

「ついてきたりなんかしたら、殺すわよ」

なおも口を開こうとする男をようやくその場を離れることができた。
早く帰らなければならない、早く……。

【肩斬華@アースP(パラレル)】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考]
基本:元世界へ帰る
1:この場を離れる
2:『 』は見かけ次第殺す
3:『 』でなくても自分の邪魔をすれば殺す、かも
[備考]

84鏡面の憎悪  ◆r.0t.MH/uw:2015/05/10(日) 17:17:19 ID:SJogUHa20

「ふむ、振られてしまった……か」

去っていく少女の後姿を見送りながら男、ヘイス・アーゴイルはつぶやく。
さすがに殺すとまで言われてはついていくわけにもいかない。
周到に準備をしている普段ならともかく、今の彼は非戦闘員の半人半魔にすぎない。
服の中に仕込んでいた小さな魔道具まで没収している主催者の芸の細かさには感嘆の念を禁じ得ない。

「殺し合いか、本当に下らんことをやってくれるな、あの男は」

支給された参加者候補リストには人間側の有力者の名もちらほらと載っていた。
現行で殺し合いが始まっているのを見るに、何人かはすでにこの場にいるのだろう。
本来ならばそんなことは伝説の錬金術師であるあの男、サン・ジェルミが見逃すはずがない。
しかし殺し合いは行われている、つまりこの殺し合いにおいてサン・ジェルミは主催者、もしくはその関係者であるという図式が成り立つ。
そしてサン・ジェルミが主催者側にいるということで殺し合いの大まかな目的も察することができる。
あの男のすることだ、今回の目的も人類の繁栄につながるものなのだろう。

だから、潰す。

そもそもこの殺し合いで主催者の思惑通りに動いたところで彼自身が生き残る目は少ない。
例えチーム戦であろうとも、先の戦争の成果で警戒される程度には知名度が上がっていることは自覚している。
それになにより彼自身があの連中とともに戦うことを考えられない。
彼の根本も先ほどの少女と同じ、憎悪なのだから。

「カタギリハナコか」

見るからに憎悪に囚われた彼女に話しかけたのは単純に同類としての興味からであり、
事実彼女の憎しみは凄まじく、向けられた瞬間危うく普段から演じている店主としての仮面をはがされかけるところであった。

だが、予想外の収穫も得ることができた。
彼が経営している武器屋、アーガイル商店は先の戦争で大規模な利益と名を上げた。
気になるのはおそらく戦闘技能持ちであろうハナコがその名にノーリアクションだったこと。

「これは……ひょっとすると」

その概念の知識はあるが今まで眉唾ものだと思っていた。
だが、それを考えるとチーム戦の殺し合いという中途半端な形式にも納得がいく。
受け入れるべきかもしれない『異世界』という概念を。

【ヘイス・アーゴイル@アースF(ファンタジー)】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いをつぶす
1:『異世界』の存在を確認する
2:協力するなら『異世界』の住人と
3:自分のチームの優勝は断固として阻止する
[備考]
※サン・ジェルミ伯爵が主催者側にいる可能性が高いと考えています
※異世界が存在し、チームは世界ごとに分けられている可能性があると考えています

85 ◆r.0t.MH/uw:2015/05/10(日) 17:18:01 ID:SJogUHa20
投下終了です

86 ◆r.0t.MH/uw:2015/05/10(日) 17:40:10 ID:SJogUHa20
見直したら現在位置を入れ忘れていました
両者とも【F-5/平野/1日目/深夜】です

87名無しさん:2015/05/11(月) 00:47:45 ID:21lfYPvA0
投下乙です!
あっ…(察し)花子ちゃんに風評被害ががが
『 』ってなんだったんだろう。気になるなあ

んでアーゴイルさん鋭い。登場にしてまさかここまで見抜くとは。
恐ろしい男だ

88 ◆laf9FMw4wE:2015/05/11(月) 04:31:55 ID:f9zQQzk20
投下します

89私が戦士になった理由 ◆laf9FMw4wE:2015/05/11(月) 04:32:43 ID:f9zQQzk20
かつて夫婦仲の良い家庭に生まれた、恵まれた少女がいた。
名前はラモサ。永久の幸福を祈って名付けられた彼女は、その名の通り笑顔が絶えない元気な少女である。
この時代は決して平和とは言い難い。常人の手に負えない者が悪行の少なくない世の中であり、毎日のように凶悪犯罪が起こっている。

されどこの世界には、もう一つの勢力――ヒーローと呼ばれる者たちが存在する。
正義の代行者たる彼らは、どんな悪行も許さない。市民を護る為にも血肉を撒き散らし、悪党に対抗している。

だから、無駄な心配は必要ない。ラモサはヒーローを信じて、この素晴らしき日々が永劫に続くと思って暮らしていた――――。

                        ❀

学校の帰り道。
何の変哲もない幸せな日々を壊すように、ラモサの家から見知らぬ少年が突き飛ばされていた。
喧嘩でもしたのだろうか? 彼は酷い重傷を負っていて、立ち上がるのもやっとだという様子である。

「諦めの悪いガキだ。ヒーローに私情を挟むな」

玄関から歩き出た灰色の男が、見下すように少年を眺めた。
生気を失い濁り果てた瞳は、まるで死人のようで、見ているだけで彼が只者ではないと知らされる。
対する少年が瞳に宿しているものは――希望だ。絶体絶命の窮地であるにも拘らず、彼は一向に諦める気配がない。

「うるせェ! 政府直属のヒーローだかなんだから知らねえが――その人たちは、人間だッ!」
「それがどうした? 元が人間であろうが、今や彼らは怪物同然。殺すべき悪だと政府から連絡も入っている」
「理解も納得も出来ねェな。俺の知ってるヒーローは――――師匠は、罪のない人を殺したりしない!
 そしてそれは俺も同じだ。まだ人間の心が残ってるなら――俺はこの人達を全力で守ってやる!」

この二人は何を言っているのだろうか?
突如の事態に、頭が追いついていかない。状況を理解することが出来ない。
辛うじて解ることは、少年が対峙している男は政府直属のヒーロー、早乙女灰色だということだけだ。
だから普通に考えればヒーローが悪人を追い詰めているようにも見えるが――少年の言葉の内容から察するに彼が悪人ではないのだろう。
考えれば考えるほど、わけがわからない。そもそも少年は何を守ろうとしているのか。

「それが俺の――ヒーローの王道だぁっ!」

気合いを振り絞り、立ち上がった少年が拳を固く握り締める。
真っ直ぐな瞳が灰色を見据える。/生気の宿らぬ死人がヒーローを見据える。
実際は灰色がヒーローで少年は素性すら知らないのだが、今のラモサにはそんな風に見えた。

互いの視線が交わった刹那に――少年が疾走り、灰色が身を構える。
助走をつけて振り抜かれた正拳突きが、灰色に迫り――――数瞬後のラモサが見たものは、全身全霊で放った一撃を躱され、態勢を崩す少年だった。

「ガキが」

――――無慈悲な銃声が響き渡る。
結城陽太は政府に悪と認定されていない少年だ。命を奪う必要はないが、彼は仕事の邪魔をした。
ゆえに灰色は容赦をしない。足を撃ち抜き、少年の自由を一時的に奪うとラモサの家へ再び戻ろうとして――。

「お前も止めてみるか?」

陽太に駆け寄るラモサを一瞥した。
意味不明だ。何らかの事件に巻き込まれたことは間違いないが、どうして灰色はラモサに声を掛けたのか。

「……もしかしてラモサちゃん、か?」
「え――どうして私の名前を?」
「あの人たちが呼んでたんだ。家族3人で笑っている写真に、何度も何度も……。
 それで俺は確信した。二人はまだ意識がある。姿形は変わっても、ラモサちゃんの両親は怪物なんかじゃねェハズだっ!」

90私が戦士になった理由 ◆laf9FMw4wE:2015/05/11(月) 04:33:28 ID:f9zQQzk20

「え? それってどういう――」
「――――何も難しい問題ではない。政府に悪と認定されたから殺す、それだけのことだ」

再びラモサたちの目の前へ立ち塞がる灰色。2つの異形を手にした彼は、それらを悪と断じて殺すと宣言した。
未練がましく家族写真を抱えて涙を流す怪物たち。肉体の至る所からギロチンの突き出した形状はとても人間だとは思えないが、彼らの一挙一動はどこまでも人間臭くて――。

「お母さん? お父さん?」

血に塗れても守り抜いた家族写真が、ラモサに状況を理解させた。

「お前の両親は数時間前、Mr.イヴィルの手で怪人に成り果てた。今や政府が害と認めた、立派な怪人だ」

何一つ表情を変えることもなく、灰色は真実を告げた。
つまりそれは、ラモサの両親が理不尽に怪人にされた挙句、政府直属のヒーロー手で殺されてしまうということで。
未だ人としての意思がある生物の命を強引に奪い去ろうとしているということで。
政府は。ヒーローは、姿形が怪物になってしまえば、罪なき人々を見捨てる悪ばかりの集団なのだろう。

「……ラモサちゃんの両親を殺させるわけにはいかないッ!
 ここで負けたら――いのりみたいな子がまた増える……! だから――この戦いは絶対に引けるかぁっ!」

負傷した箇所から血を撒き散らし――それでも立ち上がるヒーローが、そこには居た。
彼は政府直属でもなければ、変身すら出来ない未熟者であるが、如何なる巨悪にも立ち向かうその姿は、正しく正義の味方。
その雄姿にラモサは感動を覚えて――――。

「やっと来たか。――――エンマ」

気が付けば一人の幼女が現れて。

「ラモ――サ?」

ラモサが瞬きをしている間に、両親の片方は呆気無く崩れ落ちていた。
母親か、父親か。もはやそれすらも解らぬ歪な風貌であるが――――最期に聞いたその呼び掛けは、よく覚えている。

「ど――してこ――なこと――に」

次いでもう片方の異形も、真紅に染められていた。
人間とは程遠い存在になっても――――やはり彼らの気持ちは不変で。それを証明するかのように告げられた遺言は、深く胸に刻み込まれている。

                            †

そして現在――――。
悪しきヒーローに人生を狂わされた少女は、自らが正義の執行者となることで悪を滅することになる。
突如として自らの内に宿った変幻自在の幻創武具――――常闇照らせし正義の柱(ボア・ドゥ・ジュスティス)が無力な少女に力を与えたのだ。

「チーム戦の殺し合い、か。悪趣味で吐き気を催す最低最悪の行事だね」

それがICプレイヤーで話を聞いた後の率直な感想だった。
ラモサは己が命を切り捨てることに躊躇のない性格である。彼女の想像する早乙女灰色や早乙女エンマと違い、正義の為に力を振るう少女だ。
この危機的ともいえる状況に怯えたりすることはないが、単純に殺し合いという行為自体が気に入らない。

「終了条件が最後の一人になるか、参加者様方が一チームのみになること?
 早乙女灰色や早乙女エンマは嬉々として他人を見捨てたり、他のチームを襲ったりだろうけど――私は無駄に被害者を増やすことなんて御免かな。あいつらと同じになるくらいなら、死んだほうがマシだ。
 だから私はAKANEや悪を断罪して、皆を救ってみせるよ。
 そして――早乙女灰色と早乙女エンマを見つけたら今度こそ裁いてやる。あの二人がいる限り、皆が笑顔で暮らせる時代は絶対に訪れないから」

「このお母さんとお父さんに託された――――常闇照らせし正義の柱(ボア・ドゥ・ジュスティス)で」

ラモサの呼び掛けに応じて右掌に顕現する正義の柱。
深淵の闇をも照らす白銀の刃は、悪の用意したICプレイヤーを斬首した後、再びラモサの体内へ戻り。

「さあ――征こうか、常闇照らせし正義の柱」

己が正義を貫く為に、戦士は征く。

【F-3/平野/1日目/深夜】

【ラモサ@アースH】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム1〜3
[思考]
基本:AKANEや悪を断罪する
1:早乙女灰色、早乙女エンマを見つけたら処刑する

91 ◆laf9FMw4wE:2015/05/11(月) 04:37:33 ID:f9zQQzk20
投下終了です。
回想というかたちで未登場キャラが登場しましたが、登場した際に口調や性格が違いましたらそれに合わせて修正します
前半の回想が大部分を占める話ですので、未登場キャラを出す手法がまずければ破棄します

92名無しさん:2015/05/11(月) 06:25:15 ID:0o6axBSM0
参加者まとめと投下乙です
>鏡面の憎悪
おおー短くまとまりつつも、肩斬さんの憎悪の謎とアーゴイルさんの切れ者っぷりがいい具合に提示されとる
彼女が殺す『』とは一体なんなのか、これから明かされるのが楽しみだ、それにしてもピンポイントな偽名をw

>私が戦士になった理由
回想から入る構成もありだなーいいと思いますラモサちゃん応援したくなった
H世界はこれ
悪の組織といのりちゃん関連と早乙女父子が繋がった形になって因縁だらけだーw

93 ◆8I7heVl7bs:2015/05/11(月) 22:25:09 ID:jsfdyFM20
ジル・ド・レェ、早乙女エンマ、柊麗華 投下します

94 ◆8I7heVl7bs:2015/05/11(月) 22:25:52 ID:jsfdyFM20
夜の街を駆ける少女がいる。
短い手足を必死に振り、顔を恐怖で引き攣らせながら、しかし大人顔負けの速さで走る少女がいる。名を、柊麗華。
なぜ、少女は逃げるのか。それは、『恐怖』に追われているから。

「ふふふふ……待ちなさい、可愛い娘……」

地獄の底から聞こえてくるような声が、少女を追いかける。

「お姉さんが、優しく、優しく、や、さ、し、く、遊んであげますからねえ」

淫靡で、上品で、それでいて狂気を感じるその声は、正に追う者、ジル・ド・レェの性質を現していた。

麗華は走る。生き残るために。生物の本能に従い、彼女は慣れない街を必死で駆ける。
追うジルも走っている。が、その走り方、距離の取り方は追いかけるというより甚振るといった方が正しいかもしれない。
すでに、ジルの遊びは始まっているのだ。少女に恐怖を与えながら、一定のペースで追いかけ、疲れ切って動けなくなったところで、第二フェイズ(拷問)へ移る。生前もそうやって自分の城で彼女は追い駆けっこを楽しんだ。
それが彼女の死因、火炙りに繋がったのは皮肉だが。そして第二の生を与えられた彼女が生前と同じようにこの行為を繰り返すのは、彼女が狂っているためか。

5分ほど続いたこの逃走劇は、少女が逃亡に成功、あるいは少女がジルの思惑道理に力尽きて捕獲される、はたまたジルが気を変えて殺害される、の三つの結末しかないはずだった。
だが、第三者が現れることで、状況は大きく変わりだす。

「ねえ」

追いかけっこを続ける二人に、上から声が降りかかった。
麗華は希望に縋り付くように上を見上げ、ジルは声の性質から予想した新たな獲物の登場に思わず舌なめずりをする。追いかけっこは一旦中断された。

「師匠、知らない?」
そう言って、少女は二人が走る舗装道路へ気軽に降り立つ。
彼女はつい先刻まで一軒家の屋根の上に立っていたのだ。

赤い髪を腰まで垂らした少女は、二人をちらちらと見据える。

「師匠?……ごめんね、あなたの師匠はどんな方なの?」
そう聞いたのは意外にもジルだった。まるで大人が迷子の子供に話しかけるように、優しく、しかしどこか嘲りを含めて。
「私の師匠は、全身灰色で、声がけっこう渋い声。あとね、でっかい」
「なるほど、残念ですが私は知らない。あなたはどうです?」
突然ジルにそう声をかけられ、麗華はびくっと肩を震わせた。
「わ……わかりません」

なんとかそう言った麗華に少女はそっか、と小さく呟いた。

「私は早乙女エンマ。師匠の一番弟子。ていっても私以外弟子いないんだけどさ」
そして、エンマは無機質な視線を二人の首元に投げかける。

「二人とも、私と違うグループだね」
ぞくりと麗華の背中を冷たいものが流れた。
ジルの不気味さ、不吉さから逃走を続けていた彼女は今更ながらここが殺し合いの場だと理解しだしたのだ。こんな自分と同じくらいの少女でも、自分を殺しに来る可能性がある。

しかし恐怖に怯える麗華を気にも止めず、エンマは興味をなくしたように二人から目を離した。

アースHのヒーロー、早乙女父子はプライベートで戦うことはめったにない。仕事の時でなければ早乙女灰色はただの無機質な男で、エンマはただの無機質な幼女なのだ。

「じゃあね」
そう言って彼女は二人に背を向ける。今はただ、師匠を探して今後の方針を聞くのみ。

「あら、そんなつまらないこと言わないでくださいな。私はあなたと遊びたいのよ、エンマちゃん」

離脱しようとしたエンマをしかしジルは呼び止めた。エンマに用がなくても、ジルはエンマに用がある。正確にはエンマが出す声や絶望に歪んだ顔、流れる血液に。

95 ◆8I7heVl7bs:2015/05/11(月) 22:27:33 ID:jsfdyFM20
「私の名前ははジル・ド・レェ。うふふ、あなたたちみたいな可愛い子を何人も、何十人も、何百人も殺して、死刑になった女。エンマちゃん、あなたは私にどんな悲鳴を聞かせてくれるの?」

恐怖を与えるために、ジルは分かりやすく、自分の異常性を、自分の危険性を伝えた。
そしてこの飄々とした少女がどんな反応をするのか楽しむためにエンマを嘗めつける。

怖がるのか、泣き叫ぶのか、逃げ惑うのか。
嘘に決まってると強気な笑みを浮かべるのか、狂人の妄言だと一笑に付すのか。
どの反応でも、それは後の拷問のスパイスになる。

そして、ジルの期待通り、エンマは立ち去ろうとした足を止め、ゆっくりとジルのほうへ向きなおる。

そこにあるのはただ明確な敵意。

エンマは知っている。善悪の判断ができないエンマでも、知っていることがある。死刑になるのは悪い奴だ。数々の『死刑』を実行してきたエンマはそう確信している。
そうじゃなければおかしいのだ。政府が『悪』だと認定した者を『死刑』にしてきたエンマからすれば、『死刑』になった者は『悪』のはずなのだから。

「悪い奴だな、お前」

早乙女エンマはジルを敵だと判断した。そして彼女の敵意と呼応するように、麗華の声が響き渡った。

「協力するよ!私、あなたの師匠探しに協力する!だから……」

少女は高らかに叫ぶ。ヒーロー番組に出てくる子役のように、彼女はただ助けを求める。

「助けて!あの女をやっつけて!」

麗華は賭けた。この場でもっとも力を持たない少女は、自分と年が近い少女にベットした。
賭けに勝てば、彼女は生きてこの場を切り抜けれる。負ければ待っているのは残酷な死。
そして彼女は神に祈る。エンマがジルを倒してくれるようにと。どうか、どうか。



ジルはバックから黄色と黒の縞々で彩られたのカプセルを取り出した。

「ふふふ……」

そしてそれを空中へ投げる。エンマは無造作にそれを目で追い、麗華は何が起きるのかと不安げに見つめる。

カプセルが強烈な光を放つ。そして光が去った後、そこには圧倒的な絶望が鎮座していた。

「あ、ああ……」

麗華の口から洩れた音は絶望ゆえ。

怪物が、そこに鎮座していた。
虎だ。ただの虎ではない。5メートル以上はある巨大虎だ。


「ふむふむ、人食い虎に怪獣ウイルスを打ち込んでできた怪獣のなりかけ、ですか。完全に怪獣化すれば50メートルを超えますが、手がつけられなくなるのでその前に処分してください、まあ、なんて無責任なんでしょう。」
カプセルについていた説明書をジルは楽しそうに読み上げ、麗華はインターネットで見つけたある一文を思い出していた。

人は、猛獣に勝てない。
刀を持った成人男性で小型犬と同等。
どれだけ鍛えた格闘家でもシマウマにさえ劣る。

まして今目の前に現れたこれは何だ?
見るからに獰猛そうな肉食獣、しかも普通の虎よりでかいし、牙とか爪とか長いし、めっちゃ鋭い。

96 ◆8I7heVl7bs:2015/05/11(月) 22:29:12 ID:jsfdyFM20
こんなの、もうどうしようもない。
大の大人が武装していても勝てそうにない怪物に、少女二人で挑むなど自殺行為だ。

麗華は逃げようとした。しかし足が縺れ、無様に転がる。
完全に腰が抜けていた。それでも生き残るために、彼女は可愛らしい服を汚しながら這って逃げようとする。

「ふっ」

その音は、麗華の耳に確かに聞こえた。
信じられない者を見るように麗華は阿呆な少女を見た。

怪獣トラと正面から相対するこの少女は、早乙女灰色の一番弟子、早乙女エンマは、
今確かに鼻で笑ったのだ。

まさか、とジルは思う。
二人を恐怖させるためにオーバーキルのような形で出した怪物だが、この反応はさすがに予想外だ。
エンマは恐怖を感じる頭脳もないのか、それとも……。
今、彼女の頭の中で一つのの可能性が浮かび上がっていた。

「怪獣トラ……名前は後でつけましょう。目の前の少女を痛みつけなさい。決して殺してはだめよ」
ぐるる……と怪獣トラは唸った。ただの唸り声なのに、まるで遠雷のようだと麗華は思う。

そして、ぐおおおおおおおおお!という叫び声と共に、怪獣トラは早乙女エンマへと躍りかかる。

筋肉を躍動させ飛び上がったその姿は正に野生の顕現。ぬめりと唾液で光る牙は少女の体など容易くバラバラにしそうである。

エンマは悠然と待ち構えた。そしてトラの動きに合わせて拳を作る。

5メートルを超すトラの跳躍は二人の距離を一瞬でゼロにする。
トラの牙がエンマを貫くことが先か、エンマの拳がトラに当たる方が先か。

大型猛獣の牙と少女の拳、同じ土俵に立てるなど正気の沙汰ではない。

ここで、一つの奇跡が起こった。トラの爪より先にエンマの拳がトラの右頬に当たったのだ。
いや、こう書くと語弊がある。

エンマの拳はトラの右頬を撃ち抜いた。

怪物トラは弾丸のような速さで住宅街へ突っ込み、建物を破壊しながらその巨体を地に晒す。

そして怪物トラが弱弱しくも立ち上がろうとする前に、エンマは怪物トラの元へと接近し、その大きな頭を両手でがっちりと掴み、強引に引き千切った。

トラの首元から溢れる血流がエンマの私服を血で汚すが、彼女はこれっぽちも気にしない。



「……え?」
麗華の声が、静かになった空間に空しく響いた。わけがわからない、今目の前で何が起きた?

逆にジルはああ、そういうことと呟く。

「その人間離れした力……あなた、魔族だったのね」

戦い、否一方的な屠殺を目の当たりにしたジルは、目にいくばくかの理性――魔族と戦争をしていた頃に宿していた眼光――を取り戻しながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

人間は獣に勝てない。
それが通用するのは数ある世界でも一つか二つくらいだろう。
だが、大型猛獣を身体スペックだけでここまで圧倒できる存在など、そう多くない。
ジルの知ってる限りだと魔族。それも100年以上生きた上級の。

「魔族?私はエンマだよ」
「ふふ、どちらにしてもあなたで遊ぶのは骨が折れそうだわ」

97 ◆8I7heVl7bs:2015/05/11(月) 22:30:29 ID:jsfdyFM20


車道を爆走するものがいる。早乙女エンマだ。
でたらめで力任せなフォームで、しかしバイク並の速さで走った彼女はやがてマラソンを終えたランナーのように道路に倒れこんだ。
仰向けで倒れることで柊麗華に無駄なダメージを与えなかったことは、彼女の希薄な人間性から考えれば十分及第点をもらえる配慮だろう。

事実、柊麗華に外傷はなく、窮地を脱したことで安心したような表情で、エンマの胸の中から脱出する。

「あの、助けてくれて本当にありがとう!」
「その代り……師匠探すの手伝ってね」
「うん、もちろん。これでも私、学校の成績はいいんだよ」

灰色の教育方針により学校に行かせてもらえないエンマはその言葉を聞いて不機嫌な顔つきになる。
麗華もそれを察して、そういえばと話題を変えた。

「さっきなんで逃げたの?あんなでっかい虎に勝てるんだったら、あの細っこい女のひとにも勝てるんじゃ……」
「むり」

ばっさり、とエンマは切り捨てた。依然として顔は不機嫌なままだ。

麗華はなぜ無理なのか彼女なりに考えた。

「電池切れ?」
「違う」
「実は重症?」
「馬鹿にするな」
「フェミニスト?」
「なにそれ」
「電気が弱点?」
「……」

恥ずかしそうに目線を逸らしたエンマを見て、麗華はキスしたくなるくらい可愛いなと思う。

「とりあえず、なんかいつもより疲れたから、私寝るね。またあいつが来たら起こして」

そう言って、エンマは動物のように体を丸めて静かに寝息をたてはじめた。戦闘自体は短時間で終わったが、その後の全力逃走は思った以上にエンマの体力を削った。

麗華はとてもトラを素手で屠殺したとは思えない寝顔を眺めながら思う。



(いい駒、ゲットしたな♪)
なんのことはない、あの場に善良な者は誰ひとりいなかったのだ。


【B-6/町/1日目/深夜】

【柊麗華@アースP(パラレル)】
[状態]:健康
[服装]:多少汚れた可愛い服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:生き残る
1:早乙女エンマを利用する。
※吸血鬼としての弱点、能力については後続の書き手さんにお任せします

【早乙女エンマ@アースH(ヒーロー)】
[状態]:疲労(中)、回復中
[服装]:血で汚れている
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:師匠と合流して、指示を仰ぐ
1:zzz
2:麗華(名前は聞いていない)と一緒に師匠を探す


【C-6/町/1日目/深夜】

【ジル・ド・レェ@アースF(ファンタジー)】
[状態]:健康
[服装]:ファンタジーっぽい服装
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2,
[思考]
基本:不明
1:子供で遊ぶ
※明確な行動方針は後続の書き手さんにお任せします

98 ◆8I7heVl7bs:2015/05/11(月) 22:32:24 ID:jsfdyFM20
投下を終了します
タイトルは「殺人鬼×少女×少女」で、お願いします

99 ◆8I7heVl7bs:2015/05/11(月) 23:27:12 ID:jsfdyFM20
申し訳ありません
 >>96>>97の間にこの一文を入れるのを忘れていました

ジルの心から嗜虐心が、そして油断が消えていく。
彼女は全盛期と比べると細く痩せ衰えた腕を後ろに引き、小声で力ある言葉を紡ぐ。
マナが動いたことを麗華は感じ取った。いや、マナの概念を理解していない麗華は、しかし何か目に見えない力がジルの両腕に集まっているのを感じる。

そしてジルの両掌からばちり、ばちりと音が響くようになり、やがてそれは小さな雷となって、視覚化された。

「まったく、戦うのは本当に久しぶり。いついらい、かしら、ね……」
「……」

もう取り戻せない何かを懐かしむようにジルは微笑するが、エンマは無言で後ずさった。

あの身体能力に加え、遠距離攻撃まで備えているのか。ジルは脳裏に魔族と、あるいは愚かな人間との魔法対決を思い浮かべる。

エンマはジルと距離をとりながら、やがて座り込む麗華の傍まで辿り着いた。

そして、片手で麗華を抱きかかえる。

まさか、とジルは思った瞬間、早乙女エンマは悪に背を向け、全力で逃走していた。

「くっ……」

慌ててジルは電撃を飛ばす。雷が二人の少女を焼き尽くさんと襲い掛かるが、ジグザグとゴキブリのように蛇行するエンマに当たらない。

そうこうしてるうちに彼女の背中はどんどん小さくなり、やがてジルの視界から完全に消えてしまった。

恨みがましい表情でジルはエンマの消えた方向を眺めていたが、やがて疲れたようにふぅと息をついた。

こうして、柊麗華、早乙女エンマの両少女は殺人鬼、ジル・ド・レェからの逃亡に成功した。

100名無しさん:2015/05/12(火) 20:29:53 ID:qdZ03oBI0
投下乙です
終始弱者のフリをする柊のヤツに乾いた笑いが出る…こいつ腹ん中真っ黒だw
ただエンマちゃんとジルドレというチート勢の前には実際このムーブで正解だから困る
虎怪獣を一撃でのすエンマちゃん無邪気強いしそのエンマちゃんを退かせるジルドレの底知れなさが伝わってきた

101名無しさん:2015/05/12(火) 23:30:11 ID:23DB/iEQ0
最初は「あれ?ヒイラギこんな感じなのね」と思ったけどなるほどそういうことか
能力は奪われてる設定らしいからやっぱ多少は弱まってるのかしら

ジルドレみたいな無差別に近いマーダーはこれが初か?これからに期待。

>恥ずかしそうに目線を逸らしたエンマを見て、麗華はキスしたくなるくらい可愛いなと思う。
俺もそう思ったが柊中身30ヒキニートだから合法だけど事案なんだよなあ

102名無しさん:2015/05/14(木) 00:27:00 ID:eADlMe7E0
代理投下します

103探偵は警察署にいる ◇nQH5zEbNKA氏 代理:2015/05/14(木) 00:28:52 ID:eADlMe7E0


A-4、警察署の一室にて。
作ったインスタントコーヒーを口に運び、口に付ける。安物なのか、苦味にしか感じられなかった。
探偵黒田翔琉は、一室の窓際にある来客用のソファに座りながらその苦味のあるコーヒーをややしかめっ面になりながらも一口、一口と飲んでいく。

「…困ったな。まだ『旗』のことすら解決しちゃいないのに」

肩をすくめながら、彼はこの殺し合いに巻き込まれる前の世界情勢について思い出していた。
突如として人々の頭上に旗が見えるようになってしまったという事件が世界各地で発生していた、というものである。
彼は相棒(と言われるのは癪に障るが)である西崎詩織に細かい調査を任せ、やがて集まってきた資料から犯人、もしくは原因を探しあてようとしたというのに、その事を始めようと事務所の机に座ったら、ここにいたのだ。

「関係性が無いわけじゃ無さそうだな」

不可解な事件を調べたということで、自分もいわば巨大な闇の組織に消されてしまうのか、とも黒田は考えたが、そんなことはどうでもよかった。
ただ「旗事件」と今回のこの殺し合いに何処か関連性が見えてきそうな気が彼にはしていた。
自分の目にも旗が見えていたのに、ここにきた瞬間見えなくなったというのもまたおかしな話である。
黒田はまたコーヒーに口をつける。相変わらず苦い。

(…となると、あの旗事件を引き起こした誰かがこの殺し合いに関わってることになるな)

見えていた旗を消せる方法を世界中において見つけた人物は居ない。
よほどの馬鹿でない限り、その『旗』を消せる方法を分かっている上で『旗』を作り出すことだろう。

いま自分の頭上に旗はない。つまり、作った張本人によって消されたということが、さきほど述べた事の可能性が高いと言える。しかし、なぜ消す必要があったのか。

(危険数値を知らせるようなものだったからか…?)

調査の結果、『旗』には三色種類があることを黒田は知っていた。
まず青。この間は旗が立っている人間に大きな怪我はなく、あっても擦り傷程度である。
次に黄。自分の身の回りに危険が迫っていることを示す。
最後に赤。自分に対して命の危機が迫っているということを示す。

こういった『旗』は殺し合うこの場においては予知能力のようなものになりうる。
旗を見てから行動を決めることができるという点から、殺し合いの円滑化は難しいものだろう。

「ならば、なぜわざわざ世界中に『旗』を見えさせるようにしたんだ?」

後に存在が消されるものをなぜわざわざ世界中にばらまいたのだろうか。
または、作り上げた人物が故意に参加者を集めた訳ではなく、そうしなくてはならない理由があったのだろうか。

104探偵は警察署にいる ◇nQH5zEbNKA氏 代理:2015/05/14(木) 00:29:38 ID:eADlMe7E0
(…だめだ。情報が少なすぎる)

黒田は大きなため息をついた。
元々情報収集は西崎詩織の役目であって、黒田は集められた資料から正解を探る半分安楽椅子探偵のような存在だ。
彼が真実にたどり着くためには、資料が足り無さすぎる。

「まだ夜だからな…外を出歩くのは危険だ。明るくなってから行動を開始して、情報を集めるとしようか」

大きなあくびをすると黒田はソファから立ち上がり、『シャワー室』と書かれた部屋へと向かうのであった。
彼の頭脳が動き出すのは、もう少しあとのことである。

【A-4/警察署/1日目/深夜】

【黒田翔琉@アースD】
[状態]:健康、やや眠気
[服装]:トレンチコート
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:この殺し合いと『旗』の関係性を探る
1:とりあえずシャワーを浴びて眠気を覚ます
2:早朝まではここに待機
[備考]

105名無しさん:2015/05/14(木) 00:30:08 ID:eADlMe7E0
以上です。

106 ◆/MTtOoYAfo:2015/05/14(木) 00:42:36 ID:eADlMe7E0
では私も作品投下させていただきます。
夢野綺羅星
石原莞爾
です

107瞳に炎を宿せ ◆/MTtOoYAfo:2015/05/14(木) 00:44:49 ID:eADlMe7E0
正義とは、なんなのか。


人を助けることか。
それとも悪を裁くことなのか。
または自分が正義と思えば正義になるのか。

ある少女はそのことを今日ほど感じることはなかった。
夢野綺羅星(ゆめの きらぼし)は正義感溢れる少女である。
学園の生徒会長として日々高校の為に自分ができることならなんでもしてきた。
予算案の作成だって、部活の助っ人だって、それが学園の為であるというのならなんでもやってきたのだ。
困ってる人を見捨ててはおけない、と。そんな彼女の信念に基づいて彼女は常に行動をしてきた。
そんな彼女はまず殺し合いに巻き込まれたと自分が知って強い憤りを感じていた。
いきなり集められて殺し合いをしろ?馬鹿げている、と。
そして彼女の憤りを更に倍増させたのは、ディパックの中に入っていた参加者リストらしきものに自分の妹を初めとする彼女の友人や自分の先輩たちの名前がそこにあったからだ。

高村和花。
たまに狐のコスプレをして現れるほわほわとした雰囲気を醸し出した、可愛らしい少女。
立花道雪。
常にリスのペットを連れ回している、敬語を使う礼儀正しい女の子。
久澄アリア。
自分の高校の先輩で、生徒会でお世話になった、頼れる女性。彼女もまた、クリオネのような得体の生き物を連れ回している。
そして、自分の妹である夢野セレナ。

四人とも、『綺羅星にとっては』自分と同じ戦うことなどを知らない一般人である。




そう。『綺羅星にとっては』なのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

108瞳に炎を宿せ ◆/MTtOoYAfo:2015/05/14(木) 00:45:36 ID:eADlMe7E0

夢野綺羅星は和花、道雪、アリアの3人はおろか自分の妹であるセレナが日夜平和を守るため戦う正義の魔法少女であることを知らない。
魔法少女が増えてきている中、お昼のニュースの話題を独占してしまうようなアースMGにおいて、彼女という存在はアースRの平沢茜よろしく、イレギュラーな存在なのである。

魔法少女の世界において、『夢野綺羅星』という名前はあたかも魔法少女ものの主役に相応しい名前である。
しかし彼女は物語の中で変身は出来ないし、主人公格を助ける役目を担うわけでもなく。
ただの『重要人物の一人夢野セレナの姉』としか見られていなかった。
いや、当初は名前すらなかったのだ。「夢野セレナの姉」としか見られていなかった。

彼女の名前をつけたのは、ネット上のその作品のファンたちであった。
『なんか4話でちょっと出てきた美人のセレナ姉の名前が見た目とあってないキラキラネームだったらクソ笑えるよなwwwwww』
『じゃあこの子キラキラネームみたいな名前にしようぜ』
『キラキラネームなら、綺羅星とかで行こうぜ』
『うはwwwwwwクソワロタwwwwww』

やがて姉の名前は「キラボシちゃん」となり、彼女の二次創作が多く作られるようになった。
そしてそれを受けた制作スタッフが、話題に乗るためにその名前を採用としたということである。
親からつけられた名前でもない「夢野綺羅星」は、やがて非公式から現実となった。
そしてそれが更に話題を呼び多くのファンに彼女の存在が熟知されるようになったのだ。

綺羅星の『設定』は更に付け加えられていった。
学園の生徒会長である、とか。
正義感ある女性、だとか。
基本なんでもできる女の子で、だけれども家にあるクマのぬいぐるみを大事にしてる。だとか。

やがて、それらは『公式設定』となり、『夢野綺羅星』は物語の本質には関わらない、『設定』だけで成り立っているキャラとなったのだ。


だから、大事にしているはずのセレナが魔法少女なのを知らないのは当然なのである。アースRの世界におけるアースMGのような魔法少女ものの作品において、綺羅星が『セレナやその友人たちが魔法少女であることを知っている』という描写が無かったから。
何故なら、彼女にそのような描写が施される事はなく、あくまでも敵側の精神描写に徹したために夢野綺羅星はそういった設定に陥ってしまったという訳なのである。

さらにネット上では彼女が『自分の名前』が嫌いなのは、『自分の親』がつけた名前ではないからという設定も付け加えられた。
『自分の親』は前述の通り、彼女たちを作り出した制作スタッフたちのことを暗喩しているのではないかという考察に溢れた。
勿論綺羅星がそのことを知っているはずがないが、そういった経緯がやがてアースMGに住む綺羅星に影響を与え。
成績優秀で完璧である、ヤマトナデシコの女性なのに名前が『綺羅星』で、そんな自分の名前が『嫌い』で、『家』が嫌いだということになってしまったということだ。
どこか彼女のプロフィールがちぐはぐなのは、『公式設定』が付け足されていったからであり、彼女のせいではないのである。



では夢野綺羅星のことについての話を終えた事で先ほどの状況に視点を戻すことにする。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

109瞳に炎を宿せ ◆/MTtOoYAfo:2015/05/14(木) 00:46:50 ID:eADlMe7E0

そうやって怒りを感じていた綺羅星の手にやがて握られていたのは、両刃が波打ったようなフォルムが特徴の片手剣、フランベルジェであった。
その波打った両刃が相手の止血を防ぐというドイツに実在した剣であり、剣道をやっていた綺羅星にはありがたいというのが相応しい武器。

これがあの音声が言っていた『支給品』か、と綺羅星は感じた。他の支給品らしきものは古びて錆びてしまっている『南京錠』と、『BR映画館上映作品一覧表』と書かれたパンフレット。おそらく使いどころは無いだろうからディパックの中に戻すことにした。

ふと剣を見る。
竹刀を持つことはあってもこういった真剣を握ることは人生で初めてである。
竹刀のように、面を取られても死なずに、一本を取られる訳ではないのだ。
面を取られる=頭をかち割られて死ぬ。
そのことをひしひしと剣が反射して映る自分が示しているかのようだった。

「…誰だ」

突然綺羅星が「歴史書」と書いてある本棚の方に声を投げかけた。
剣に反射している自分の後ろに、男らしき陰が映ったからだ。
勿論殺し合いの場においてそういった行動は死に直結することすらありうる。
しかし綺羅星はそれを承知で行動に移した。このまま見ているままで奇襲されるよりかは、面と向かって闘う方が割に合っていると考えたからだった。

その声のあとの数秒後。
綺羅星に呼応するかのように、一人の男が本棚の影からのそっ、と出てきた。
頭は丸めていて、目は垂れ目だが、瞳は死んではいない。部屋着であろう甚兵衛を着ており、おおよそ戦闘をする者には思えない。
手には「ナポレオン・ボナパルト」と書かれた漫画本の伝記を手にとっており、綺羅星からいきなり呼ばれたのにも関わらず、驚きもせず、ただ毅然とそこに立っていた。

「テメーこそ誰だ。先に名乗るってのが礼儀だろうが」

現れた甚兵衛の男は、綺羅星に不機嫌そうに言い放つ。
甚兵衛の男は、背中をボリボリとかきながら近くにあった勉強用の机の所の椅子に座り込むと、腕を組んだ。
その姿はまったくもってこの異常な状況にふさわしくないほど堂々としていた。
そのことが、『魔法少女でない』綺羅星にはどうも不気味に見えた。
目を凝らす。男の首輪には『A』の文字。自分の首輪の文字は先程確認した。『MG』───つまり、彼は敵である。
綺羅星は支給されたフランベルジェを持ち直すと、男に言った。

「…貴方のチームはA。私を殺す気か。その時は容赦はしない。私には守らなければならない人たちが居る」

目の前の男に対抗するように、厳しい口調で言い放つ。
勿論、殺すことはないと思うが、剣道をやっていた事もあるし腕には自信がある。また脅されたと勘違いして逃げてくれれば幸いなのだが。と綺羅星は考えていた。
だがその綺羅星の予想を大きく男は裏切ることになる。

「はぁ?何言ってんだテメー、馬鹿だな」

伺える風であったよりも今度ははっきりと不機嫌を表して男は綺羅星に言い放つ。
綺羅星の存在を無視するかのように段々とページを勧めていく手が早くなっているようにも見えた。
突如言われた暴言に対し、綺羅星は彼の態度に怯まぬように、声をやや張って口を開く。

「言っている意味が分からない」
「この殺し合いに素直に乗るやつ、だよ。テメーだよ馬鹿は」
「私は殺し合いに乗ってない!」

綺羅星のフランベルジェを握る力が、自然と強くなる。
あの子たちを守らなくては。あの子たちよりも年上である自分がなんとかしなければ、と。
だから殺し合いなんて馬鹿な事には乗らず、元の生活に戻りたい、と。
そういった決意からだった。
同時になのになぜこの男は唐突に現れるや否や私のことを決めつけるのだろうと疑問に思えてきた。だがその疑問を言葉にすることが少しはばかられたのか、綺羅星は俯く。

110瞳に炎を宿せ ◆/MTtOoYAfo:2015/05/14(木) 00:48:16 ID:eADlMe7E0

男は綺羅星のそういった様子を見て、今度は大きく息をついた。
そして持っていたナポレオンの伝記本を相変わらず読み進めながら、今度は先ほどとは打って変わって諭すように、口を発した。

「じゃあ仮にだ。俺がテメーの言う大事なものを捕まえてこれ以上近寄ったらこいつを殺す、と言ったとする。
テメーの手には自動小銃が握られている。弾は六発だ。テメーはそれを撃たないで話し合いだけで大事なもん助けようとすんのか?」
「それは…」

俯いていた綺羅星の顔に動揺が映る。
確かにそういった状況が無いとは言えない。おそらく自分は話し合いに応じなかったら相手を攻撃するだろう。
ただ、それは『殺し合いに乗った』という見方もできてしまう、それならば先ほどの自分の「殺し合いに乗ってない」という言葉が、嘘になってしまうこともありうる。
綺羅星が動揺する中、男は待ってましたというように本を読みながら立ち上がり、綺羅星の方を向かず、黙々と漫画を読みながら呟いていく。

「甘いなぁ。テメー人殺したことねーだろ?生憎だが俺はあるんだ。何万という人を殺してきたと言ってもいい」
「…」
「嘘じゃねえよ、本当さ。いわゆる軍人さんってやつ『だった』んだぜ、こないだまで」

男がパタンと本を閉じて、綺羅星の方をはっきりと向いた。
やがてまた背筋を伸ばしてから立ち上がると、本をディパックの中に入れた。
綺羅星は男の言葉のふしふしに疑問を感じたものの、そのことはどうでもいいと考える対象から外した。
綺羅星の様子を見てから、男は話を続ける。

「…話を戻すぞ。さっきの状況になって撃たねえ奴はいない。扱ったことない素人でも一か八かで
撃ってみるはずだ。そんな状況で撃つ方を選んだ段階でテメーは殺し合いに乗ったことになる。明確な殺意を人に向けるんだからな。
…どうだ。それでもお前は、こんな状況が作り出されるかもしれないと分かった上でも、『自分は殺し合いに乗らん』とほざくのか」

男の目に光が宿る。その瞳は完全に綺羅星への挑戦とも言えるような瞳である。
確かに、綺羅星のように自分の知人全員を誰も殺さずに、自分が汚れないように───殺す手段を用いずに助け出すのはというのはほぼ不可能に厳しいことだ。
しかし、綺羅星は守る必要があった。まだ幼いあの子達を、自分の信頼する先輩を、自分の最大限の力を使って守るという使命が。

「───私には…妹がいるんだ。まだ幼くて、ドジなところもあるが、心が優しい子だ。その子がこの殺し合いに巻き込まれてるかもしれない。いや、その子だけじゃない。妹の知り合いの子や、私の信頼していた先輩もいる。私は確かに貴方の言う通り甘いかもしれない。私はただの人だから。けれど…
私は負けない。こんな意味のわからない、幼い子の未来を奪うような奴らに負けるわけには行かないんだ」

答えにはなっていない、唐突な言葉だった。
男の質問の問いを無視するような内容。しかし、考えるよりも先に言葉が出ていた。
綺羅星も、自分で情けない、みっともなくて子供じみた言葉だとは感じていた。
しかし、それでも、一抹の希望を見出さないと逆に自分が潰れそうになりそうになっていた。
だからこそ、そういう言葉を言ったのだと思われる。自分の弱さを隠すために、そして本当にそうなることを願うために。

111瞳に炎を宿せ ◆/MTtOoYAfo:2015/05/14(木) 00:49:40 ID:eADlMe7E0

(………なんだ、コイツの目は。東條のヤローの、濁りきった目とは違う、現実を知らないくせに変な使命感を感じている瞳は)

男は前述の通り軍人であった。
若い時の自身が見てきたまっさきに死ぬ兵士たちこそ、目の前の女のような目をしていた。
「自分が国を守るんだ」と、言って勇敢に戦い、死んでいった者達。
男は軍人の仕事が嫌だった。そういう若者たちを、戦友を多くみてきたからだ。

しかし、男は徐々に階級が上がるにつれて、そういった瞳を持つ人物を見ることは立場上無くなっていきやがて男は兵士を駒として、戦力としてしか見れなくなっていった。

そして『軍略の天才』と呼ばれた男が権力を得た時に、日本とアメリカが戦争を始めた。
結果は日本がロシアの援軍で息を吹き返しての大勝利。国中が歓喜に湧いた。
だがこの男はそれが信じられなかった。ロシアが日本に協力する理由などまるでなかった。まるで『自分たちを駒と扱っている神々が、戦局を変えてしまったから』とも言えるようにも思えた。
男は一人、歓喜の輪から外れ、ひっそりと歴史から姿を消した。自分を戒めるために。自分の狂ってしまった目を、もう使わないようにするために。

男は綺羅星の目をもう一度見た。
透き通った瞳だ。日本人には珍しい黄色の瞳が、その透明度を更に強くしていた。
やがて男は綺羅星から図書館の天井にある窓の向こうに広がる星空を眺めながら、ずかずか、と綺羅星の元に歩き出した。

(…最初はひっそりと死のうと思ってたが…面白そうじゃねえか)

やがて、綺羅星の真正面に来て、口を開いた。

「───気が変わった。名前教えろ…ぼさっとしてんじゃねえ。教えろっつてんだ」
「…夢野綺羅星。神王寺学園3年2組出席番号27番」
「おしキラキラ。テメーに協力してやる」

呆気にとられる綺羅星。当然である。
さっきまでの敵対心のようなものを見せていた男が、突然協力すると言い出したのだから。
更に自分の事を『キラキラ女』と呼んでいる事には少しムッとするがそれを気にしている場合ではなかった。

「何をいきなりそんなことを…」
「気が変わったんだよ、別に好きに殺しあえばと思ってたが面白そうだ。こいつが開かれた理由とやらも知りたいしな」

にんまりとして笑い出す男。綺羅星はこの男を信頼していいか迷ったものの、とりあえずその本題に入る前に、男に聞いておくことがあった。

「…名前を。名前を教えていただきたい。なんと呼べばいいか、私も分からない」
「キラキラ。テメーは『俺の事を知らない』、珍しい奴だから前の役職で、わかりやすーく教えてやる」

そういうと男は、綺羅星の目の前で足を揃えて立ち、右手の手のひらを水平にして、右耳のこめかみあたりにやった。
そして、これまでのだるけが感じられた声から一転し、顔に精悍さを取り戻しながら、仰々しく綺羅星に言うのであった。

112瞳に炎を宿せ ◆/MTtOoYAfo:2015/05/14(木) 00:51:14 ID:eADlMe7E0
元大日本帝国陸軍中将。そして元関東軍作戦参謀。石原莞爾(いしわら かんじ)だ。テメー珍しい見た目だが日本人だろ?俺の事知らないとは言わせないぜ」
「…え?」

綺羅星の顔から緊張が解けて、驚きの表情を見せた。
何故ならば石原莞爾という男の名前は綺羅星は知っていたのだ。
彼女が勉強した日本史の板書ノートの中に書き込まれていた『重要語句』の一つとして。
あの満州事変を起こした関東軍の参謀として。
『設定』で作られた彼女は『事実』として知っていたのだった。


【エリア/図書館/1日目/深夜】

【夢野綺羅星@アースMG】
[状態]:健康
[服装]:神王寺学園制服
[装備]:フランベルジェ@アースF
[道具]:基本支給品、BR映画館上映映画一覧@アースBR、南京錠@?
[思考]
基本:知人たちを助け、この殺し合いを終わらせる。
1:…この人は何を言ってるんだろう。
2:セレナ…
3:石原のことを信頼していいのか…?
[備考]

【石原莞爾@アースA】
[状態]:健康
[服装]:甚兵衛
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ナポレオン・ボナパルトの伝記@アースR、不明支給品1~3
[思考]
基本;とりあえずは主催に対抗してみるか
1:キラキラ(綺羅星)に付き合う
2:東條のヤローはいんのか?
[備考]
※名簿を見ていません。

113名無しさん:2015/05/14(木) 00:53:46 ID:eADlMe7E0

投下終了です。
綺羅星の設定を膨らましすぎた感あるので修正点あれば直させていただきます。
あと歴史詳しい人石原こんな感じでいいんですかね。
一応ナポレオン好きだったらしいので伝記読んでたってことで。


感想
「探偵は警察署にいる」
初のアースD参加者クロダ。
うーんやっぱり「旗」との関係性を探しますかあ。乙です!


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