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オリロワアース

62 ◆aKPs1fzI9A:2015/05/10(日) 00:22:23 ID:1otjGXi60
夜の月の光が冷たく冷えきった地面を照らしている。
普段の街の光の中では味わえない風景。
そういったのを少なくとも現代の我々は───どこか自分が異世界に迷い込んだかのように錯覚し、その情景に酔いしれる。
そういった情景にひゅぅと吹く冷たい風や季節を感じさせる虫の声があると、なおさら良い。我々が普段の生活で忌々しいと思うものでさえも、ここでは「風流」になる。
かつての文化人たちはこういった自然の産物を度々詩に綴っていた。今も昔もこういったのを好む気持ちは変わらない。今これを読んでいる読者諸氏や、著者でさえも、そんなこと分かっていることなのである。






だが、この状況下において情景に目をやる者など、いるはずもない。ある男は、この状況下で眼に炎を宿していた。
それでこそ月の光のように優しさを持ち合わせたような明るさではなく、激情的でかつすぐ燃え尽きてしまいそうなそんな明るさ。

埃一つすらついていない、真っ黒のスーツに蝶ネクタイ。綺麗にセットした髪、眼鏡の老人───この殺し合いという場においてはまったくもって不釣り合いといっても過言ではなかった。
そして何より彼の異質さを目立たせているのは、大きな車椅子である。黒を基調としたデザインで、材質は素人目からしても良い物だと分かる。車輪はまた大きく、回してこぐことはよほどの力がない限り不可能である。
わたし達が思い描くような車椅子ではなくあたかもそれは、小型戦車のようだった。
男は炎を消さないことは無い。
月に負けじとするかのように光を出すために炎を燃やし続ける。
彼のただ一つの目的のために。


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