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中学生バトルロワイアル part6

374:――ただひとつの答えがなくとも、分け合おう。 ◆j1I31zelYA:2014/09/23(火) 23:00:22 ID:rGsWCH4k0
勝負アリと言わんばかりに、赤い瞳が冷酷な目で見下ろす。
枝を切り落され、サザンクロスの余波を受けて、枝が消失した天蓋から月明かりが森に差し込んできた。
差し込まれた月光を背にして、切原の顔が翳る。
赤いようにも白いようにも見える、そんな光だった。

「研究所の時から、そうしてりゃ良かったんだ。あの時なら俺もお前の力をよく知らなかったし、不意打ちで首を切るぐらいはできただろ。
そうすりゃ、あの二人だって俺に殺されることは――」
「そうかもしれません。でも、今の私には……七原さんが、いますから」

やっと追いついてきた七原の足が、十メートルばかりの距離でぴたりと止まった。
ほかならぬ自分自身を、名指しされたのだから。

「理想の行き着く先を見せると約束したんですの。その私が、『私』を曲げたところは見せられません」
「アイツには殺させるけどテメーは殺さねぇのかよ。汚れ役を押し付けてるだけじゃねーか」

血だらけで制圧された黒子に逃げる余地を与えるために、そしてあわよくば切原を仕留めるために、肩で息をしながらもグロックを構える。
構えながら、言われてみればそうかもな、と思った。
出会ったばかりの黒子だったら、七原が誰を殺そうとしても『これ以上の殺人者にするのは見過ごせない』とか言って阻止しただろう。
だとしたら、今の七原と黒子に、『それもまた正しい』と言わせているものは――

「――そうじゃない。どんな形であれ、繋がっていたいんですの。誰もいなくていいなんていうのは、寂しいからっ」
「だったら――どうしてアイツは『居場所がない』って言ったんだよ!」

その言葉のどこが燗に触ったのか、切原は声を荒らげた。
すぐそばに七原がいるのに黒子に向かって叫んでいるのは、ただ無視されたのか、それとも黒子だけが話せる相手として認識されているからなのか。

「アイツは、自分の帰る場所なんかどこにもないって言ったんだぞ!
『俺たち』と違って、勝ち逃げされても文句ひとつ言わねぇくせに。
無念を晴らすとか、仲間を汚すなとか、言葉ばっかり強ぇくせに。
お前が一緒にいても『帰る場所がない』とかぬかすなら、現実なんてそんなもんじゃねぇか!」

――俺には何もないんだよ! 誰も『おかえり』なんて言ったりしない!

「確かにそう言ったけど、根に持つのかよ……」

切原には聞こえないようにぼそりと呟く。
この隙に背中を撃とうかとも思ったけれど、それができなかったのは動悸を自覚したからだ。もちろん、運動後の息切れが原因じゃない。

――誰も一緒にいてくれないなんてこと、絶対にない。 自分の知ってる人たちはいい人達だったってことを、あんなに必死に叫べるのに……

七原秋也にだって、思い出すだけで硬直してしまうことはある。

「七原さんの心のことは、七原さんにしか分かりません。
もしかしたら、七原さんにだって言葉にできないかもしれません」

がっしと、黒子は左手で円礫刀を掴んだ。
手のひらがざっくり裂けるのも厭わずに刀身を首から外すよう押しのける、その動きに切原は驚き、困惑から動きを止めた。

「けれど、貴方が七原さんをそんなふうに怒っているのは……居場所なんか無いと思いたいから、ですか?
居場所が無いと信じ続ける限り、貴方は止まらずにすみますから」


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