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新西尾維新バトルロワイアルpart6

872 ◆xR8DbSLW.w:2023/06/27(火) 23:57:26 ID:Scku84iU0
 ◆Ⅱ  首獲再繰


「不知火理事長が未だ《実験》を続けるということは、大願成就する見込みがあるということです」

 《策師》は涼やかな顔で言う。
死体を前にするに所作としては場違いなほど冷徹であった。

「望みがないと踏めば、即座に次へ乗り換える性質でしょう、あれは」

 《策師》の観察の通り、不知火袴はそういった性分の人間である。
過去にも黒神めだかの勧誘が破綻を迎えた直後、最悪の《過負荷》を巻き込む計画に切り替えてきた。
結果のためならば経路を問わない目的至上主義。
そんな彼が今なお《実験》を続行させるということは、それだけの価値があるということだ。

「骨子である《完全なる人間》――本来の定義もその実、明かされていますよね」
「都城王土の告解か」
「いわく、誰も悩むこともなく、誰も困ることもない平等で平和な世界を作るための架け橋たりうる人間」
「それが不知火袴の願う《完全》だと」
「少なくとも以前の――黒神舵樹の影武者たる不知火理事長はそうお考えだったのでしょう」
「そんな世界、俺はついぞ《視た》ことがないがな」

 《鍛冶師》は冷たく言葉を返す。
あしらうというよりは、そも関心がないといった様相だ。
ぶっきらぼうな物言いに気をかけることもなく、《策師》はフェミニンな雰囲気で相好を崩し、

「ふふっ、おかしなことをおっしゃいます。
 不可能を可能に代えることこそ――《フラスコ計画》の要だったのでしょう。お分かりの通りですよ」
「はんっ、そりゃあ然り。いずれいずこで可能なことであれば、俺が再現できるからな」

 起こると決まっている事象は、必ず起きる。
いつであるか、どこであるか、だれであるか。些細な違いはあれど、逃れる術はない。
《人類最悪》の持論のひとつ、《時間収斂(バックノズル)》。
《鍛冶師》が誇る十二の傑作、完成形変体刀のノウハウとは突き詰めればこの思考実験の延長線上にある。
何よりも固きモノを創造することがいずれ出来る。ゆえに絶刀・《鉋》は鍛えられた。
何よりも鋭きモノを創造することがいずれ出来る。ゆえに斬刀・《鈍》は鍛えられた。
遥か未来を、果ては《世界》を見通す《刀鍛冶の眼》は、あらゆるパラダイムシフトを可能とする。
ひるがえるに、《刀鍛冶》が不可能だと断ずる事象は、未来永劫に実現叶うはずがない――本来であれば。


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