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新西尾維新バトルロワイアルpart6

610 ◆ARe2lZhvho:2015/08/17(月) 21:25:00 ID:tFRdSwtQ0
「大方予想はついているが、生憎過負荷については門外漢だ」
「都城さんに同じく。ですが、私は輪をかけて専門外ですよ」

片や元十三組の十三人、片や元澄百合学園の策士。
屈指の頭脳を持つ者たちだ、一文を聞いただけで二人は意図を察する。
鑢七実の過負荷習得、重し蟹の出現などもあったがこれらは想定外とまで言えるものではない。
十中八九、球磨川禊の『却本作り』についてだろう。

「もちろん承知の上です。ですがそういった方たちの視点が突破口になるというのはままあることですのでね」
「今回はそういう『調整』だったのでしょう? 失敗していなかったとするなら、外部の干渉でしょうか」

まず答えたのは子荻だ。
しかし、スキルなど存在しない世界出身である彼女に話せる事柄はない。
自然と、当たり障りのないものになる。

「やはりそうお考えになりますか。ですが会場のセキュリティーに異常はありませんし……都城君は?」
「俺には皆目見当もつかんな。それでも意見を述べるなら、『あの人外』が関わっているとしか」

続いて王土も意見を求められるが、『異常』しか持たぬ王土に『過負荷』について子荻同様深くは話せない。
結局、一つの可能性を述べるに留まる。
その可能性もかなり突飛なものだが。

「そうだとすると、まだ失敗していてくれた方が状況はよいのですがね……」

ずず、と不知火袴は湯飲みの茶を啜る。
今回の実験はイレギュラーが多い。
当然、実験にイレギュラーは付き物で、イレギュラーから思わぬ成功を生み出すことがあるというのもわかってはいるが。

「用件はこれだけか? 俺はそろそろ戻りたいのだが」
「おっと、つい考えに没頭してしまいました。もう大丈夫ですよ、お呼び立てしてすみませんでした」
「では失礼するとしよう。ときに萩原」
「はい、なんでしょうか」
「『仕事』が終わった後の予定を聞いておきたいのだが」
「早急なものは特になかったはずですが」
「そうか」

部屋を後にしようと王土が扉を開くと、少女がいた。
ちょうどノックをするところだったのだろう、握られた左手は胸の前で止まっている。
一方、右手には会場の参加者が持つものと同じデイパックが複数、ぶら下がっていた。

「ありゃ、都城先輩じゃないですか。放送お疲れ様でした」
「不知火か。理事長と萩原なら中にいるぞ」
「それはどうも」

不知火半袖は出口を譲るように一歩ずれると、他愛のない会話を交わす。
振り返ることなく王土はそのまま立ち去っていった。

「ただいまー、おじいちゃん」
「おお、袖ちゃん。おかえりなさい」

入れ替わるように部屋に入った不知火半袖は、不知火袴が座るソファーの対面、萩原子荻の隣にどっかりと腰を下ろした。
そのままテーブルの上にあった羊羹を断り無くもぐもぐと食べ始める。
羊羹を取られ、お茶請けにするつもりだった不知火袴は少し残念そうにしていたが気を取り直して団子をつまんだ。

「それで、どうでした?」

食べ終わる頃合いを見計らい、子荻が訊く。

「あたしが連絡入れるって聞きましたけど。まだいってませんでした?」
「いえ、報告は聞いていますよ、だからこそあの放送です。その上で訊ねているのです」


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