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少女漫画キャラバトルロワイアル 第二巻

29正面衝突 ◆F9bPzQUFL.:2013/07/05(金) 00:20:10 ID:BduNxm8I0
 


「っと、それより更紗君」
「はい」
更紗が思考に耽りかけたとき、綾女の言葉が現実に引き戻してくる。
考えても仕方がないということを、暗に示してくれているのか。
更紗は軽い返事とともに、綾女の方を向き直る。
「ボクは君にお願いがある……それは」
返事を待たず、鞄から飛び出す"何か"。



「この虎娘(こむすめ)スーツを着てくれないか!!」



それは、綾女が来ている服に勝らずとも劣らないほどの強烈なインパクトを持った、全身を覆う白の虎をあしらった着ぐるみだった。
ぽかん、と再び口を開いている更紗を横に綾女は一人の世界を進める。
「言っただろう? ボクは仕事中に眠りこけてしまった、とね。
 そう、ボクは時代の最先端を行くこのスーツの制作にも携わっていたのだよ。
 偶然にも手に握りしめていたこの商品を持ったまま、この場所に呼ばれたらしくてね。
 初めの時から、実はずっと握っていたんだ。
 大事な商品を傷つけるわけにも行かないから、更紗君に会う前に用心深くしまっていたわけだけれども。
 でも、こうして目の前には偶然にも注文を受けた服のサイズとぴったりの女の子が現れた!
 これを運命と言わずして、なんと言うべきか!!
 ボクの目測に誤りはない、なぜならこの綾女の両目こそが世界の物差しであり、判断基準であるから!
 さあ更紗君! おびえることはない! 向こうの部屋で着替えて来給え!!」
顎がはずれそうなくらい口を開けたまま、綾女のマシンガントークを右から左へ受け流していく。
いや、なんだろう、このオンとオフというか、ねえ、だって、ほら、ねえ?
「……沈黙は肯定と受け取ってもよいのかな?」
「大・否・定・ですっ!!」
顔を真っ赤にしながら地面を踏む更紗に、綾女はふわりとしたステップを踏んでから更紗の顎に手を添えて囁く。
「大丈夫だ更紗君、人間は何事も気合いと気合いと気合いの三つのKで乗り越えられる。
 それに、こんなにかわいいキミをそのままにしておくのはボクの美的センスに反するからね。
 さぁ、怯えることはない、踏み越えてしまえば一瞬さ! ボクと一緒にこの美装坂を登ろう!」
「だ・か・ら!!」
照れ隠しの叫びと共に、居ても立ってもいられなくなった更紗は駆け出して行った。
特に行き先も決めず、まるで弾丸のように飛び出していく。
「まーってくれー、さぁ〜らぁ〜さぁ〜くぅ〜ん」
そんな彼女を、綾女はメイド服を着込んだまま、虎の着ぐるみを片手に追いかけていく。
傍から見れば「こんな所でバカップルが追いかけっこに勤しんでいる」とも写りがちな光景だ。
しかし、みなさんには是非覚えておいていただきたい。

得体の知れない存在から全力で走って逃げる更紗の顔が、人生で一番真剣な表情だったことを。


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